(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】アンテナおよび非接触型データ受送信体
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20241022BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01Q9/26
G06K19/077 280
G06K19/077 156
(21)【出願番号】P 2021010313
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小田中 啓
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514462(JP,A)
【文献】特開2009-094631(JP,A)
【文献】特開2009-147560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/26
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射素子を有するアンテナであって、
前記放射素子は、
主方向に間隔をおいて並んで配置され、前記主方向に交差して延在する複数の主延在部と、
複数の前記主延在部のうち隣り合う前記主延在部の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続する複数の折返し部と、
により蛇行形状とされた線状体によって形成され、
複数の前記折返し部のうち少なくとも1つは、前記線状体が1回以上巻回されたらせん状の巻回部を有する、アンテナ。
【請求項2】
複数の前記折返し部のうち隣り合う前記折返し部は、前記巻回部の巻き方向が異なる、請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナと、
前記アンテナが設けられる基材と、
前記基材に設けられたICチップと、を備えた、非接触型データ受送信体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナおよび非接触型データ受送信体に関する。
【背景技術】
【0002】
流通管理などを目的として、RFIDタグなどの非接触型データ受送信体が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。非接触型データ受送信体は、例えば、基材と、メアンダ形状の放射素子を有するアンテナとを備える。非接触型データ受送信体は、管理対象となる物品に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のアンテナでは、例えば、非接触型データ受送信体が設置された物品に変形が生じると、放射素子に外力が加えられる可能性がある。そのため、外力が加えられた場合でも放射素子の破損を抑えることが求められている。
【0005】
本発明の一態様は、外力が加えられた場合でも放射素子の破損が起こりにくいアンテナおよび非接触型データ受送信体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、放射素子を有するアンテナであって、前記放射素子は、主方向に間隔をおいて並んで配置され、前記主方向に交差して延在する複数の主延在部と、複数の前記主延在部のうち隣り合う前記主延在部の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続する複数の折返し部と、により蛇行形状とされた線状体によって形成され、複数の前記折返し部のうち少なくとも1つは、前記線状体が1回以上巻回されたらせん状の巻回部を有するアンテナを提供する。
【0007】
複数の前記折返し部のうち隣り合う前記折返し部は、前記巻回部の巻き方向が異なることが好ましい。
【0008】
本発明の他の態様は、前記アンテナと、前記アンテナが設けられる基材と、前記基材に設けられたICチップと、を備えた非接触型データ受送信体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、放射素子の破損が起こりにくいアンテナおよび非接触型データ受送信体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る非接触型データ受送信体の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るアンテナの放射素子の平面図である。
【
図4】第1実施形態に係るアンテナの放射素子の一部の斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係るアンテナの放射素子の一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[非接触型データ受送信体]
図1は、実施形態に係る非接触型データ受送信体10の平面図である。
図2は、基材11の平面図である。
図1に示すように、非接触型データ受送信体10は、基材11と、第1実施形態に係るアンテナ12と、ICチップ13と、を備える。
【0012】
図2に示すように、基材11は、矩形板状に形成されている。基材11は、例えば、長方形状とされている。基材11の一方の面を第1主面11aという。
【0013】
以下の説明において、XY直交座標系を用いることがある。
図2に示すように、X方向は第1主面11aの長手方向である。X方向は「主方向」の一例である。Y方向は第1主面11aの短手方向である。Y方向は第1主面11aに沿う面内においてX方向と直交する。Z方向はX方向およびY方向に直交する方向である。Z方向から見ることを平面視という。X方向およびY方向に沿う平面をXY平面という。
【0014】
図2における右方はX方向の一方の向き(+X方向)である。
図2における左方は+X方向とは反対の向き(-X方向)である。
図2における上方はY方向の一方の向き(+Y方向)である。
図2における下方は+Y方向とは反対の向き(-Y方向)である。
図2における紙面手前方向はZ方向の一方の向き(+Z方向)である。
図2における紙面奥方向は+Z方向とは反対の向き(-Z方向)である。
【0015】
基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0016】
ICチップ13は、基材11の第1主面11aに設けられている。ICチップ13は、第1主面11aのX方向のほぼ中央に位置する。ICチップ13は、特に限定されず、アンテナ12を介して非接触で情報の書き込みおよび読み出しが可能であればよい。
【0017】
[アンテナ](第1実施形態)
図1に示すように、アンテナ12は、マッチング回路16と、放射素子17,18とを備える。
図2に示すように、マッチング回路16は、ループ状の閉回路20を有する。閉回路20は、第1配線21と、第2配線22とを備える。マッチング回路16は、パターン形状によってインピーダンスの調整が可能である。マッチング回路16は「回路」の一例である。
【0018】
第1配線21は、第1経路23と、第2経路24とを備える。
第1経路23の一端23aはICチップ13に電気的に接続されている。第1経路23の他端23bは第1接続箇所25に電気的に接続されている。第2経路24の一端24aはICチップ13に電気的に接続されている。第2経路24の他端24bは第2接続箇所26に電気的に接続されている。
【0019】
第1接続箇所25は、ICチップ13に対して-X方向側に離れて位置する。第2接続箇所26は、ICチップ13に対して+X方向側に離れて位置する。第1接続箇所25は、第1経路23の他端23bと第2配線22の一端22aとを電気的に接続する。第2接続箇所26は、第2経路24の他端24bと第2配線22の他端22bとを電気的に接続する。
【0020】
第2配線22の一端22aは第1接続箇所25と電気的に接続されている。第2配線22の他端22bは第2接続箇所26と電気的に接続されている。第2配線22は、接続箇所25,26の一方(第1接続箇所25)から他方(第2接続箇所26)にかけて形成されている。
【0021】
マッチング回路16は、基材11の第1主面11aに、ポリマー型導電インクを用いて、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成することができる。マッチング回路16は、導電性箔によって形成してもよい。マッチング回路16は、金属メッキによって形成してもよい。
【0022】
ポリマー型導電インクは、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子と、樹脂組成物とを含む。樹脂組成物としては、例えば、熱硬化型、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型などの樹脂組成物を使用できる。
【0023】
マッチング回路16をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。マッチング回路16をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0024】
図1に示すように、放射素子17,18の平面視形状は、概略、メアンダ形状(蛇行形状)である。放射素子17,18のうち一方である第1放射素子17は、第1接続箇所25から蛇行しつつ-X方向に延出する。放射素子17,18のうち他方である第2放射素子18は、第2接続箇所26から蛇行しつつ+X方向に延出する。
【0025】
放射素子17,18は、線状体によって形成される。放射素子17,18は、例えば、スチール、ステンレス鋼、銅、銅合金などの金属で形成されている。放射素子17,18は、例えば、硬鋼線、銅合金線などで形成することが好ましい。
放射素子17,18を構成する線状体は、エナメル線などの絶縁被覆線材であってもよい。線状体として絶縁被覆線材を使用すれば、巻回部33において線状体どうしの通電を抑えることができるため、インダクタ成分を生成することができる。
【0026】
第1放射素子17は、(i)半田付け、(ii)ハトメまたはカシメ留め、(iii)超音波接合、などによって、第1接続箇所25に電気的に接続するとともに、第1接続箇所25に固定することができる。第2放射素子18は、(i)半田付け、(ii)ハトメまたはカシメ留め、(iii)超音波接合、などによって、第2接続箇所26に電気的に接続するとともに、第2接続箇所26に固定することができる。
【0027】
以下、放射素子17,18の形状について詳しく説明する。
図3は、第1放射素子17の平面図である。
図4は、第1放射素子17の一部の斜視図である。
図3に示すように、第1放射素子17は、基延出部30と、複数の主延在部31と、複数の折返し部32とを備える。
基延出部30は、第1接続箇所25から-X方向に延出する(
図2参照)。
【0028】
主延在部31は、Y方向に沿う直線状とされている。主延在部31の延在方向(Y方向)は、X方向に交差する方向である。複数の主延在部31は、互いにほぼ平行である。複数の主延在部31は、X方向(主方向)に間隔をおいて、X方向に並んで配置されている。この実施形態では、主延在部31の数は14である。これらの主延在部31を、第1接続箇所25に近い主延在部31から並び順(-X方向の順)に、第1~第14主延在部31(31A~31N)という。第1主延在部31Aは、基延出部30の先端から-Y方向に延出する。
【0029】
折返し部32は、X方向に隣り合う主延在部31を接続する。この実施形態では、折返し部32の数は13である。これらの折返し部32を、第1接続箇所25に近い折返し部32から並び順(-X方向の順)に、第1~第13折返し部32(32A~32M)という。第n折返し部32は、第n主延在部31と、第n+1主延在部31とを接続する(nは1以上の整数)。
【0030】
複数の折返し部32は、複数の主延在部31のうち隣り合う主延在部31の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続する。詳しくは、第m折返し部32は、第m主延在部31の一端(-Y方向の端)と、第m+1主延在部31の一端(-Y方向の端)とを接続する(mは1以上の奇数)。第m+1折返し部32は、第m+1主延在部31の他端(+Y方向の端)と、第m+2主延在部31の他端(+Y方向の端)とを接続する。
【0031】
例えば、第1折返し部32Aは、第1主延在部31Aの一端(-Y方向の端)と、第2主延在部31Bの一端(-Y方向の端)とを接続する。第2折返し部32Bは、第2主延在部31Bの他端(+Y方向の端)と、第3主延在部31Cの他端(+Y方向の端)とを接続する。第3折返し部32Cは、第3主延在部31Cの一端(-Y方向の端)と、第4主延在部31Dの一端(-Y方向の端)とを接続する。
【0032】
第4、第6、第8、第10、第12折返し部32D,32F,32H,32J,32Lは、第2折返し部32Bと同様に、隣り合う主延在部31の他端(+Y方向の端)どうしを接続する。
第5、第7、第9、第11、第13折返し部32E,32G,32I,32K,32Mは、第1折返し部32Aおよび第3折返し部32Cと同様に、隣り合う主延在部31の一端(-Y方向の端)どうしを接続する。
【0033】
このように、複数の折返し部32は、隣り合う主延在部31の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続するため、第1放射素子17は、全体として蛇行形状となっている。
第1放射素子17は、蛇行形状とされているため、形状可変性を有する。第1放射素子17は、例えば、X方向に沿って基材11に対して離間または接近する方向の外力が作用したとき、その外力に応じてX方向に伸縮可能である。
【0034】
図4に示すように、折返し部32は、巻回部33を有する。巻回部33は、平面視において円形状とされている。
例えば、第1折返し部32Aの巻回部33(第1巻回部33A)は、第1主延在部31Aの一端31Aa(-Y方向の端)を始点とし、第2主延在部31Bの一端31Ba(-Y方向の端)を終点とするらせん状に形成されている。第1巻回部33Aは、Z方向に沿う軸(図示略)の周りを-Z方向に前進しつつ周回する、右ねじ方向のらせん状とされている。
【0035】
第1巻回部33Aは、第1周回部分34Aと半周回部分35Aとを有する1.5周回の構造を有する。第1周回部分34Aは、始点34Aa(一端31Aa)から延出し、1周回して、平面視において始点34Aaと重なる中間点34Abに至る部分である。第1周回部分34Aは、平面視において円形状とされている。中間点34Abは、始点34Aaに対して-Z方向側に位置する。
【0036】
半周回部分35Aは、中間点34Abから延出し、終点(一端31Ba)に至る部分である。半周回部分35Aは、平面視において第1周回部分34Aと同心かつ同径の半円形状とされている。半周回部分35Aは、平面視において第1周回部分34Aと重なる。
【0037】
第3、第5、第7、第9、第11、第13折返し部32C,32E,32G,32I,32K,32Mは、それぞれ、第1巻回部33Aと同様の構成の巻回部33(第3、第5、第7、第9、第11、第13巻回部33C,33E,33G,33I,33K,33M)を備える(
図3参照)。
【0038】
第2折返し部32Bの巻回部33(第2巻回部33B)は、第2主延在部31Bの他端31Bb(+Y方向の端)を始点とし、第3主延在部31Cの他端31Cb(+Y方向の端)を終点とするらせん状に形成されている。第2巻回部33Bは、Z方向に沿う軸(図示略)の周りを+Z方向に前進しつつ周回する、右ねじ方向のらせん状とされている。
【0039】
第2巻回部33Bは、第1周回部分34Bと半周回部分35Bとを有する1.5周回の構造を有する。第1周回部分34Bは、始点34Ba(他端31Bb)から延出し、1周回して、平面視において始点34Baと重なる中間点34Bbに至る部分である。第1周回部分34Bは、平面視において円形状とされている。中間点34Bbは、始点34Baに対して+Z方向側に位置する。
【0040】
半周回部分35Bは、中間点34Bbから延出し、終点(他端31Cb)に至る部分である。半周回部分35Bは、平面視において第1周回部分34Bと同心かつ同径の半円形状とされている。半周回部分35Bは、平面視において第1周回部分34Bと重なる。
【0041】
第2巻回部33Bが+Z方向に前進しつつ周回するらせん状とされているのに対し、第1巻回部33Aは-Z方向に前進しつつ周回するらせん状である。そのため、第2巻回部33Bは、第1巻回部33Aとは巻き方向が異なる。
【0042】
第4、第6、第8、第10、第12折返し部32D,32F,32H,32J,32Lは、それぞれ、第2巻回部33Bと同様の構成の巻回部33(第4、第6、第8、第10、第12巻回部33D,33F,33H,33J,33L)を備える(
図3参照)。
【0043】
第1、第3、第5、第7、第9、第11、第13折返し部32の巻回部33は、-Z方向に前進しつつ周回するらせん状である。第2、第4、第6、第8、第10、第12折返し部32の巻回部33は、+Z方向に前進しつつ周回するらせん状である。そのため、第1~第13折返し部32A~32Mのうち、隣り合う折返し部32は、巻回部33の巻き方向が異なる。
【0044】
巻回部33は、らせん状であるためトーションバネとしての弾性を有する。巻回部33は弾性的に変形可能である。
【0045】
第1放射素子17は、基延出部30の一部を除き、平面視において基材11の外に延出している(
図1参照)。
第2放射素子18は、第1放射素子17と同様の構成である。基材11の長手方向の中央を通り、Y方向に沿う中央線を想定する。第1放射素子17と第2放射素子18とは、この中央線を対称軸とする線対称形である。第2放射素子18は、基延出部30の一部を除き、平面視において基材11の外に延出している(
図1参照)。
放射素子17,18は、線状体にフォーミング加工を施すことによって作製することができる。
【0046】
非接触型データ受送信体10は、例えば、ゴム、樹脂などで構成される弾性体である成形品に設置することができる。成形品に伸び、曲げなどの変形が生じた場合、放射素子17,18に、外力が作用する可能性がある。例えば、放射素子17,18には、X方向に沿って基材11から離れる方向の引張力が作用することが考えられる。放射素子17,18には、X方向に沿って基材11に近づく方向(圧縮方向)の力が作用することも考えられる。放射素子17,18には、X方向に沿う軸の周りのねじれ方向の力が作用することも考えられる。
【0047】
[実施形態のアンテナが奏する効果]
アンテナ12は、折返し部32がらせん状の巻回部33を有する。そのため、折返し部32の機械的強度を高め、折返し部32に応力耐性を付与することができる。したがって、放射素子17,18に外力が作用した場合に、折返し部32への応力集中を抑えることができる。よって、放射素子17,18の破損を起こりにくくすることができる。
【0048】
巻回部33は、弾性変形可能であるため、放射素子17,18に外力が作用した場合に、応力を吸収することができる。そのため、アンテナ12では、放射素子17,18の基端部分(接続箇所25,26に接続された部分)に作用する応力を低くすることができる。よって、基端部分の破損を抑えることができる。
【0049】
アンテナ12では、隣り合う折返し部32の巻回部33の巻き方向は異なる。例えば、第1巻回部33Aのらせん前進方向は-Z方向であり、第2巻回部33Bのらせん前進方向は+Z方向である(
図4参照)。
【0050】
放射素子17,18が載置される基準面(図示略)を想定する。第1巻回部33Aと第2巻回部33Bとは巻き方向が異なるため、第1巻回部33Aの終点(一端31Ba)と第2巻回部33Bの始点(他端31Bb)とは、基準面に近接して位置する(
図4参照)。そのため、基準面に対する第2主延在部31Bの傾斜は小さくなる。他の主延在部31および巻回部33についても傾斜は小さくなる。このように、アンテナ12では、隣り合う巻回部33の巻き方向が異なることによって、主延在部31および巻回部33の傾斜は小さくなる。よって、放射素子17,18の厚み方向の寸法を抑えることができる。
【0051】
比較形態として、隣り合う折返し部の巻回部の巻き方向が同じであるアンテナを想定する。このアンテナでは、第1巻回部の終点は基準面に近い位置にあり、第2巻回部の始点は基準面から離れて位置する。そのため、主延在部の傾斜は大きくなる。巻回部の傾斜も大きくなる。よって、放射素子の厚み方向の寸法は大きくなりやすい。
【0052】
[アンテナ](第2実施形態)
第1実施形態のアンテナ12の主延在部31(
図3参照)は、X方向(主方向)に直交する直線状に形成されているが、主延在部の形状はこれに限定されない。主延在部は、X方向(主方向)に交差する方向に形成されていればよい。主延在部は、Y方向に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0053】
図5は、第2実施形態に係るアンテナの第1放射素子117の一部の平面図である。第1実施形態のアンテナ12と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、第1放射素子117は、主延在部31に代えて、主延在部131を備える。主延在部131は、Y方向に対して傾斜する直線状とされている。主延在部131は、例えば、Y方向に対して0°を越え、90°未満の角度で傾斜している。隣り合う主延在部131の傾斜方向は異なる。
【0054】
図5において、第1主延在部131Aは、基延出部30の先端から折返し部32Aに向かって、-X方向に行くほど下降するように傾斜して延出する。第2主延在部131Bは、折返し部32Aから折返し部32Bに向かって、-X方向に行くほど上昇するように傾斜して延出する。第3主延在部131Cおよび第5主延在部131Eは、第1主延在部131Aと同様に傾斜している。第4主延在部131Dは、第2主延在部131Bと同様に傾斜している。
このアンテナは、主延在部131が傾斜しているため、放射素子117の形状は放射素子17(
図3参照)の形状とは異なる。そのため、第1実施形態のアンテナ12とは異なる送受信特性を得ることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
実施形態の非接触型データ受送信体10では、
図4に示すように、巻回部33は1.5周回のらせん状の構造を有するが、巻回部における線状体の巻回数は特に限定されない。巻回数は1回以上(例えば、1.5回以上)であればよい。巻回部は、例えば、2.5周回、3.5周回、4.5周回などのらせん状の構造を有していてもよい。2.5周回の構造は、第1周回部分と第2周回部分と半周回部分とを有するらせん状の構造である。3.5周回の構造は、第1周回部分と第2周回部分と第3周回部分と半周回部分とを有するらせん状の構造である。
【0056】
平面視における巻回部33の形状としては、円形状を例示したが、巻回部の形状は特に限定されない。例えば、巻回部の平面視形状は、楕円形状であってもよい。
放射素子は、伸縮可能な軟質の樹脂シートに積層されてもよい。
図1に示すアンテナ12では、主延在部31は直線状に形成されているが、主延在部は、一部または全部が曲線状であってもよい。
図1に示すアンテナ12では、すべての折返し部32が巻回部33を有するが、複数の折返し部のうち少なくとも1つに巻回部が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0057】
10…非接触型データ受送信体、11…基材、11a…第1主面、12…アンテナ、13…ICチップ、16…マッチング回路(回路)、17,117…第1放射素子(放射素子)、18…第2放射素子(放射素子)、31,31A~31N,131,131A~131E…主延在部、32,32A~32M…折返し部、33,33A~33M…巻回部。