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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】冷却装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20241022BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241022BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/14
B29C45/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021010782
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114509
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】有馬 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭男
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-133461(JP,A)
【文献】特開2010-131774(JP,A)
【文献】特開昭62-083126(JP,A)
【文献】特開2007-144631(JP,A)
【文献】特開平09-039037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/00-45/84
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機により樹脂ライニングが内面に形成されたライニング管の冷却装置であって、
前記ライニング管を前記射出成形機の機外へ搬出し、かつ、前記ライニング管の軸線方向が鉛直方向に沿うように冷却台に載せる搬出部と、
前記冷却台と、前記冷却台に載せられる前記ライニング管の外周の全周囲または一部を取り囲むように、冷却媒体を噴射する複数のノズルが配列される冷却ヘッドと、を備える冷却部と、
を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷却ヘッドは、
内壁および外壁を備え、前記内壁が前記ライニング管の前記外周に対向する噴射体と、
前記内壁にマトリックス状に設けられる複数の前記ノズルと、を備える、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記噴射体は、
平面視すると、コの字形、ロの字形および円形のいずれかの形状を有する、前記ライニング管が配置される冷却領域を備える、
請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルは、
平面視して、前記冷却領域の略中央を向くように配列される、
請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却台と前記冷却ヘッドは、互いに相対的な移動が可能とされ、
前記相対的な移動は、水平方向に沿う移動、鉛直方向に沿う移動、鉛直方向に沿う中心軸線を中心とする水平回転の三つの形態の少なくとも一つを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記搬出部は、
前記冷却ヘッドの前記冷却領域に対応する位置に前記冷却台が至る前か、または、至った後に、前記ライニング管を前記冷却台に載せる、
請求項3または請求項4に記載の冷却装置。
【請求項7】
射出成形機により樹脂ライニングが内面に形成されたライニング管の冷却方法であって、
前記ライニング管を前記射出成形機の機外へ搬出し、かつ、前記ライニング管の軸線方向が鉛直方向に沿うように冷却台に載せる搬出ステップと、
前記冷却台と、前記冷却台に載せられる前記ライニング管の外周の全周囲または一部を取り囲むように、冷却媒体を噴射可能な複数のノズルが配列される冷却ヘッドから前記冷却媒体を噴射する冷却ステップと、
を備えることを特徴とする冷却方法。
【請求項8】
前記冷却ステップにおいて、
前記冷却媒体の噴射量を、噴射の開始から終了にかけて、変化させる、
請求項7に記載の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、射出成形機により内面に樹脂ライニングが形成された金属製のライニング管を機外で冷却するのに用いられる冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管端にフランジを有する金属管の内面から管端のフランジ面にかけて射出成形により樹脂がライニングされたライニング管が、例えば特許文献1に開示されている。このライニング管は金属管の腐食防止等の観点から、ライニングが形成されている。ライニングは、ライニング管内に中子を挿入して、開口部には蓋を装着する。この状態で、ライニング管の内面と中子との間に、ライニング用のキャビティが形成される。中子や蓋が装着されたライニング管は、直接、射出成形機に取り付けられる。取り付け部位の中子の一部に樹脂流路が形成されており、そこに射出成形機の樹脂吐出ノズルを接触させて溶融樹脂を射出充填することにより、ライニング用のキャビティに溶融樹脂が充填され、金属管の内面に樹脂によるライニングが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-039037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライニングに適用される樹脂の融点が高い場合には、射出成形機から機外へライニング管を搬出してから、冷却媒体、典型的には水をかけて冷却する。射出成形機の機内で冷却するには相当の時間が必要だからである。特に、融点の高いフッ素樹脂をライニングに適用した場合には、その融点が300℃を超えるために、機内での冷却には長時間が必要である。
一方で、冷却にムラがあると、成形されたライニングに歪が生じてしまい、金属管内面からライニングが剥離する等して、その耐久性に悪影響を与える。
【0005】
以上より、本発明は、樹脂によるライニングが形成されたライニング管を、射出成形機の機外で冷却する際に冷却ムラを抑えることのできる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、射出成形機により樹脂ライニングが内面に形成されたライニング管の冷却装置に関する。
この冷却装置は、ライニング管を射出成形機の機外へ搬出し、かつ、ライニング管の軸線方向が鉛直方向に沿うように冷却台に載せる搬出部と、冷却台と、冷却台に載せられるライニング管の外周の全周囲または一部を取り囲むように、冷却媒体を噴射する複数のノズルが配列される冷却ヘッドと、を備える冷却部と、を備える。
【0007】
本発明に係る冷却ヘッドは、好ましくは、内壁および外壁を備え、内壁がライニング管の外周に対向する噴射体と、内壁にマトリックス状に設けられる複数のノズルと、を備える。
【0008】
本発明に係る噴射体は、好ましくは、平面視すると、コの字形、ロの字形および円形のいずれかの形状を有する、ライニング管が配置される冷却領域を備える。
【0009】
本発明に係る複数のノズルは、好ましくは、平面視して、冷却領域の略中央を向くように配列される。
【0010】
本発明において、冷却台と冷却ヘッドは、好ましくは、互いに相対的な移動が可能とされる。この相対的な移動は、水平方向に沿う移動、鉛直方向に沿う移動、鉛直方向に沿う中心軸線を中心とする水平回転の三つの形態の少なくとも一つを含む。
【0011】
本発明に係る搬出部は、好ましくは、冷却ヘッドの冷却領域に対応する位置に冷却台が至る前か、または、至った後に、ライニング管を冷却台に載せる。
【0012】
本発明は、射出成形機により樹脂ライニングが内面に形成されたライニング管の冷却方法を提供する。
この冷却方法は、ライニング管を射出成形機の機外へ搬出し、かつ、ライニング管の軸線方向が鉛直方向に沿うように冷却台に載せる搬出ステップと、冷却台と、冷却台に載せられるライニング管の外周の全周囲または一部を取り囲むように、冷却媒体を噴射可能な複数のノズルが配列される冷却ヘッドから冷却媒体を噴射する冷却ステップと、を備える。
【0013】
本発明に係る冷却ステップにおいて、好ましくは、冷却媒体の噴射量を、噴射の開始から終了にかけて、変化させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却台に載せられるライニング管の外周の全周囲または一部を取り囲むように、冷却媒体を噴射可能な複数のノズルが配列される冷却ヘッドを備えるので、ライニング管の冷却ムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る射出成形設備の概略構成を示す平面図である。
図2図1の冷却部を構成する冷却ヘッドを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図3図2の冷却ヘッドによりライニングが形成された管の冷却を行う手順を示し、(a)、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図4】本実施形態に係る冷却装置による冷却水の噴射パターンを示す図である。
図5】本実施形態に係る冷却装置による冷却水のその他の噴射パターンを示す図である。
図6】本実施形態に係る冷却ヘッドと冷却台の他の動作例を示す図である。
図7】本実施形態に係る冷却ヘッドと冷却台の他の動作例を示す図である。
図8】本実施形態に係る冷却ヘッドと冷却台の他の動作例を示す図である。
図9】本実施形態に係る冷却ヘッドの変形例を示す図である。
図10】本実施形態に係る冷却装置の対象となるライニング管の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る射出成形設備1は、図1に示すように、金属製の配管素材に樹脂材料からなるライニングを施す射出成形機10と、射出成形機10で作製されたライニング管100を射出成形機10から搬出するとともに冷却台51に載せる搬出部30と、搬出部30で移送されるライニング管100を冷却する冷却部50と、射出成形機10、搬出部30および冷却部50の動作を制御する制御部70と、を備える。射出成形設備1は、射出成形機10でライニングが施された直後のライニング管100を冷却部50により冷却ムラを抑えることを目的とする。なお、搬出部30と冷却部50が本発明における冷却装置を構成する。
【0017】
[ライニング管100:図10
射出成形設備1が対象とするライニング管100の一例を図10に基づいて説明する。
ライニング管100は、主管部101から枝管部102が分岐された配管素材103の内面から管端フランジ面101b、102bにかけて射出成形により樹脂ライニング104が形成される。このライニング管100のように複数方向へ分岐するものはチーズ管と称されるが、本実施形態の対象となるライニング管は、チーズ管に限るものではない。
なお、以下の説明においては、単純な筒形状のライニング管100を示す。
【0018】
[射出成形機10:図1
本実施形態に係る射出成形機10は、中子が挿入される配管素材そのものを金型として扱う。そして、配管素材の内側に中子を挿入し、配管素材の内面と中子との間にキャビティを形成する。このキャビティに溶融された樹脂が射出充填されることにより、樹脂によるライニングが形成される。ライニングが形成されたライニング管は、射出成形機10の機外へ搬出された後に冷却される。なお、ライニング管100を形成する射出成形機10については、射出成形機そのものの他、対象となる空間(キャビティ)に溶融樹脂を充填可能な装置を含み、これらは、公知の構成を適用できるので具体的な構成の説明を省略する。
【0019】
[搬出部30:図1
搬出部30は、図1に示すように、基台31と、基台31に対して正転および逆転が可能でかつ昇降可能とされる回転軸33と、回転軸33に対して伸縮可能に取り付けられる揺動アーム35と、揺動アーム35に取り付けられるライニング管100を把持するグリッパ37A、37Bと、を備える。
【0020】
冷却装置を構成する搬出部30は、射出成形機10からライニング管100を移送する際には、図1の実線で示すように、揺動アーム35が射出成形設備1の右側(R)を向いた状態で、グリッパ37A、37Bがライニング管100を把持する。グリッパ37A、37Bがライニング管100を把持した後に、一点鎖線で示すように、揺動アーム35が射出成形設備1の左側(L)を向くように回転軸33を回転させる。ライニング管100が冷却台51に載る位置まで回転軸33が回転したならば、回転動作を止めるとともに、グリッパ37A、37Bを開いてライニング管100を冷却台51に載せる。ライニング管100を冷却台51に載せたならば、ライニング管100の冷却に妨げにならない位置に揺動アーム35およびグリッパ37A、37Bを退避させて、ライニング管100の移送を完了する。この一連の動作は、制御部70からの指示に従って行われる。また、ここでは説明を省略したが、ライニング管100の射出成形機10から冷却台51への移送の過程で、必要に応じて回転軸33を昇降させることができる。
【0021】
射出成形機10から冷却台51へライニング管100を移送できるのであれば、搬出部30は以上に限るものではなく、例えば、コンベア装置や、先端にグリッパ等の把持手段を有する多軸制御ロボットを本体とする装置を用いて移送することもできる。
【0022】
[冷却部50:図1図2図3
次に、図1図2および図3を参照して、冷却部50について説明する。
冷却装置を構成する冷却部50は、射出成形機10に近接して設けられ、搬出部30により移送されるライニング管100を冷却する。この際、ライニング管100の樹脂ライニング104に局所的な冷却が生じないようにする。
【0023】
冷却部50は、冷却対象のライニング管100が載せられる冷却台51と、冷却台51に載せられるライニング管100に対して冷却媒体、例えば冷却水を噴射する冷却ヘッド60Aと、冷却ヘッド60Aを冷却台51に対して進退移動させるアクチュエータ53と、冷却ヘッド60Aに対して冷却水を供給する冷却水供給源55と、を備える。この冷却部50は、冷却台51の位置が固定される一方、冷却ヘッド60Aの位置が移動する。
【0024】
冷却ヘッド60Aは、図2に示すように、アクチュエータ53が連結される基体61と、基体61に連なり平面視するとコの字形の噴射体63と、を備える。基体61および噴射体63は、金属材料、樹脂材料などの適宜の材料から構成される。
基体61は、冷却水供給源55から供給される冷却水を噴射体63に向けて流す通水路62を備える。通水路62を流れる冷却水は、噴射体63に設けられる通水路64A~64Hに達する。
【0025】
噴射体63は、図2に示すように、内壁63INと外壁63OUTを備え、基体61に対して直交するように設けられる第1噴射体63Aと、第1噴射体63Aの幅方向Wの両端部から進退方向Lに対して平行に延びる一対の第2噴射体63B、63Bと、を備える。
第1噴射体63Aの内部には、図2(a)、(b)、(c)に示すように、通水路62の先端から鉛直方向Vに分岐する通水路64A、64Bが設けられる。また、第1噴射体63Aの内部には、通水路62の先端から幅方向Wに分岐する通水路64Cが設けられるとともに、通水路64Aの鉛直方向Vの先端から幅方向Wに分岐する通水路64D、64Eが設けられる。
第2噴射体63B、63Bのそれぞれには、通水路64Cの幅方向Wの両端部から前後方向F延びる通水路64F、64Fが設けられる。また、第2噴射体63B、63Bのそれぞれには、通水路64Dの幅方向Wの両端部から前後方向F延びる通水路64G、64Gと、通水路64Eの幅方向Wの両端部から前後方向F延びる通水路64H、64Hと、が設けられる。
【0026】
通水路64A~64Hの適宜の位置には、図2(a)、(b)、(c)に示すように、噴射ノズル65が取り付けられている。噴射ノズル65は、第1噴射体63Aにおいて鉛直方向Vに3段階に設けられるとともに、幅方向Wに3段階に設けられる。また、第2噴射体63B、63Bのそれぞれにおいて鉛直方向Vに3段階に設けられるとともに、進退方向Lに3段階に設けられる。このように、冷却ヘッド60の噴射体63の内壁63INを展開すると、噴射ノズル65がマトリックス状に配列される。
【0027】
冷却水供給源55から供給される冷却水は、通水路62を経由してからその先端から通水路64A、64Bに分岐し、さらに通水路64C、64D、64Eを通って通水路64F、64G、64Hに至る。この冷却水の流れの過程において、通水路64A~64Hのそれぞれに繋がる噴射ノズル65、65…から噴射体63に取り囲まれる冷却領域67に向けて噴射される。噴射ノズル65、65…は、平面視すると冷却領域67の略中央に向けて冷却水を噴射する。この冷却領域67の略中央は、冷却されるライニング管100の中心軸線Cと略一致する。また、噴射ノズル65、65…は、鉛直方向Vの3段階のそれぞれから冷却水を噴射する。
【0028】
アクチュエータ53は、例えばエアシリンダからなる水平移動機構であって、冷却ヘッド60Aでライニング管100を冷却するときには、冷却台51に載せられるライニング管100を取り囲む冷却位置(図3(b))まで前進させる。そうすると、噴射体63の内壁63INがライニング管100の外周に対向する。また、アクチュエータ53は、ライニング管100の冷却が完了したならば、冷却ヘッド60Aを冷却位置から退避位置(図3(a))まで後退させる。このアクチュエータ53による冷却ヘッド60Aの前進および後退の進退動作は、制御部70の指示に従って行われる。
なお、冷却ヘッド60Aの前進および後退の進退動作を、アクチュエータ53で行わせる形態ではなく、冷却ヘッド60Aを先端に取り付けた多軸制御ロボットで行わせる形態であってもよい。この形態であれば、後述する、ライニング管100や冷却台51に対する、冷却ヘッド60A~60Dの様々な移動動作を容易に設定できる。また、先に説明したチーズ管のような、複雑な形状のライニング管であっても、ライニング管に対する噴射ノズル65の位置を冷却中においても、任意に移動させることができ、後述する、冷却水の経時的な噴射量の変更と組み合わせて、ライニング管100の冷却を、ムラを抑えてさらに均等に近づけることができる。
【0029】
冷却水供給源55は、例えば、図1に示すように、冷却水を蓄える貯水槽55Aと、貯水槽55Aに蓄えられる冷却水を汲み上げる給水ポンプ55Bと、を備える。冷却水供給源55は、これに限るものではなく、冷却水を冷却ヘッド60Aに向けて供給できる機構を備えていればよい。あるいは、射出成形設備1が設置される工場等の建屋内に配置され、工場内の各種設備に、所定の圧力で工業用水等を常時供給可能な工業用水配管の冷却水が供給される形態であってもよい。
【0030】
冷却ヘッド60Aと冷却水供給源55の間は、冷却水が流れる供給配管57で接続される。供給配管57の途中には冷却水の流量を調整する制御弁59が設けられている。制御弁59の流量の調整は、冷却水の流れを止めることを含んでいる。制御弁59による冷却水の流量の調整は、制御部70の指示による制御弁59の開度の制御によって行われる。
ここでは制御弁59が一つだけ設けられる例を示すが、通水路64A~64Hのそれぞれに対応して制御弁を設けて、それぞれの噴射ノズル65、65…から独立して冷却水を噴射することができる。また、通水路64A~64Hを複数のゾーンに区分し、区分されたゾーンに対応して制御弁を設けて、複数のゾーンから独立して冷却水を噴射することができる。ゾーンによる独立した冷却水の噴射の例は、追って図5を参照して説明する。
【0031】
[冷却ヘッド60Aによるライニング管100の冷却方法:図3
次に、図3を参照して、冷却ヘッド60Aによるライニング管100の冷却手順を説明する。なお、この例は、冷却ヘッド60Aの冷却領域67に対応する位置に冷却台51が至る前に、ライニング管100が冷却台51に載せられている。
搬出部30によって、射出成形機10から搬出され、図3(a)に示すように冷却台51にライニング管100が載せられると(搬出ステップ)、図3(b)に示すようにアクチュエータ53の駆動により冷却ヘッド60Aが冷却位置まで前進して噴射体63(第1噴射体63A、第2噴射体63B)でライニング管100の外周を取り囲む。これで冷却ヘッド60Aの位置的な準備が完了する。冷却ヘッド60Aは、平面視した形状がコの字形であるため、ライニング管100の外周の一部を取り囲む。
【0032】
冷却ヘッド60Aが図3(b)の冷却位置まで移動したならば、給水ポンプ55Bを稼働させるとともに、制御弁59を開く。そうすると、図3(b)、(c)に示すように、冷却水CWは冷却ヘッド60Aが備える複数の噴射ノズル65からライニング管100に向けて噴射される(冷却ステップ)。
【0033】
ライニング管100に噴射される冷却水CWは、鉛直方向Vにおいてライニング管100の上部、中央部および下部に散水されるので、ライニング管100の鉛直方向Vの冷却能力が均等になるか、または均等に近づく。また、冷却水CWは、ライニング管100の外周の一部を除いて取り囲むように散水されるので、ライニング管100の周方向の冷却能力も均等になるか、または均等に近づく。
【0034】
[効 果]
以上説明したように、本実施形態に係る冷却ヘッド60Aを用いることにより、ライニング管100の冷却を、ムラを抑えて均等または均等に近づけることができる。特に、噴射体63の内壁63INにマトリックス状に複数の噴射ノズル65を配列することにより、ライニング管100の外周の広い範囲に略均等に冷却水を噴射できるので、冷却ムラを抑えることができる。
また、本実施形態によれば、搬出部30を設けることにより、射出成形機10から冷却台51へのライニング管100の移送を自動的にできるので、ライニング管100の冷却を効率よくできる。
【0035】
[変更例]
以上では本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。以下、変更例について説明する。
【0036】
[冷却水の経時的な噴射量の変更:図4
冷却水の噴射量は、噴射の開始から終了までの間で一定にすることもできるし、噴射の開始から終了までの間で変更させることができる。冷却水の噴射の時間が経過すると、ライニング管100の温度が下がるので、これに応じた噴射量を選択することができる。
【0037】
一例として、図4(a)に示すように、開始の際の量を最大とし、以後は終了の際の量が最小(ゼロ)となるように、噴射量を連続的に下げることができる。変更の他の例として、図4(b)に示すように、開始の際の量を最大とし、終了の際の量が最小となるようにするのは図4(a)と同じであるが、噴射量を段階的に下げることができる。
さらに他の例としては、図4(c)、(d)に示すように、冷却水の噴射を間欠的に行うこともできる。間欠的な冷却水CWの噴射は、図4(c)に示すように噴射量を一定にしてもよいし、図4(d)に示すように噴射量を変更してもよい。
【0038】
[上下方向のゾーン冷却:図5
また、冷却ヘッド60Aが備える全ての噴射ノズル65から冷却水CWを噴射してもよいが、全ての噴射ノズル65を複数のゾーンに区分して、ゾーンごとに冷却水CWを噴射することもできる。この場合、ゾーンに対応するように制御弁59を設ける必要がある。
例えば、図5(a)に示すように、全ての噴射ノズル65を鉛直方向Vの上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZの3つに区分する。そして、例えば、上ゾーンUZに属する噴射ノズル65からの冷却水の噴射を開始し、次いで中央ゾーンCZに属する噴射ノズル65からの噴射を開始し、最後に下ゾーンLZに属する噴射ノズル65からの冷却水CWの噴射を開始する。図5(a)に示される上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZに属する噴射ノズル65からの冷却水の噴射の終了のタイミングは同じであるが、異なってもよい。
【0039】
また、図5(b)に示すように、例えば、上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZのそれぞれに属する噴射ノズル65からの冷却水CWの噴射を開始する時期および終了する時期を同じにする。ただし、上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZに属する噴射ノズル65からの冷却水CWの噴射量をこの順に少なくする。
さらにまた、図5(c)に示すように、例えば、上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZのそれぞれに属する噴射ノズル65からの冷却水CWの噴射を開始する時期を同じにする。ただし、噴射を終了する時期は、上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZの順に噴射を終了する。また、上ゾーンUZ、中央ゾーンCZおよび下ゾーンLZのそれぞれに属する噴射ノズル65からの冷却水CWの噴射量は、噴射の開始の時点でこの順に少なくする。
【0040】
[冷却台51、冷却ヘッド60Aの移動:図6図7図8
先に説明した射出成形設備1は、冷却台51の位置が固定される一方、冷却ヘッド60Aが冷却台51に対して進退移動する。
しかし、図6に示すように、冷却ヘッド60Aの位置が固定される一方、ライニング管100を載せた冷却台51が冷却ヘッド60Aに対して進退移動することもできる。この移動は、水平方向に沿う相対的な移動に該当する。この移動は直線状のものであるが、曲線状の移動であってもよい。
【0041】
また、図7に示すように、冷却台51の位置が固定される一方、冷却ヘッド60Aが冷却台51に対して昇降するように構成することもできる。つまり、図7(a)に示すように、冷却台51の上方で待機していた冷却ヘッド60Aが、冷却台51にライニング管100が載せられると降下することで、図7(b)に示すように冷却ヘッド60Aがライニング管100を取り囲む。あるいは、図示はしていないが、冷却ヘッド60Aに対して、冷却台51が昇降するように構成することもできる。これらの移動は、鉛直方向に沿う相対的な移動に該当する。この移動についても直線状のものであるが、曲線状の移動であってもよい。
【0042】
さらにまた、図示はしていないが、冷却ステップにおいて、ライニング管100が載置された冷却台51を、冷却領域67の鉛直方向Vに沿う中心軸線Cを中心に回転する水平回転するように構成することもできる。例えば、図3(b)や図3(c)、あるいは、図7(b)に示す状態において、ライニング管100がチーズ管等、中心軸線Cに対する周方向に均等でない形状部を有する場合であっても、冷却台51を、中心軸線Cを中心に水平回転させることにより、ライニング管100の周方向における冷却能力を均等に近付けることができる。そして、この構成を、冷却台51が昇降する構成や、噴射ノズル65をゾーン毎に選択する構成と組み合わせてもよい。これにより、複雑な形状のライニング管であっても、周方向における冷却能力を均等に近付けることができる。
一方、ライニング管100が載置された冷却台51に対して、冷却ヘッド60Aを、冷却領域67の中心軸線Cを中心に水平回転するように構成することもできる。この構成においては、冷却装置として、冷却ヘッドを先端に取り付けた多軸制御ロボットが採用されることが好ましい。
【0043】
冷却台、冷却ヘッドの移動の、他の構成としては、図8(a)、(b)に示すように、揺動運動が可能に構成される冷却ヘッド60Aが冷却可能な所定の位置に配置された後に、図8(c)に示すように、冷却台51に対してライニング管100を前進させることにより、ライニング管100を冷却ヘッド60Aで取り囲むこともできる。なお、この例は、冷却ヘッド60の冷却領域67に対応する位置に冷却台51が至った後に、搬出部30によってライニング管100が冷却台51に載せられている。
【0044】
以上のように、冷却台51と冷却ヘッド60は、互いに相対的な移動が可能とされ、相対的な移動は、幅方向Wおよび進退方向L、つまり水平方向と鉛直方向Vの一方または双方の移動を含むことができる。
また、この相対的な移動に、冷却領域67の鉛直方向Vに沿う中心軸線Cを中心とする水平回転の移動を含んでいてもよい。
【0045】
[冷却ヘッド60Aの形態:図9
先に説明した冷却ヘッド60Aは、平面視した形状がコの字形をなしているが、本発明の冷却ヘッドはこの形態に限らない。
例えば、図9(a)に示すように、平面視した形状がロの字形をなす冷却ヘッド60Bを用いることができるし、図9(b)に示すように、平面視した形状が円形をなす冷却ヘッド60Cを用いることができる。冷却ヘッド60Bおよび冷却ヘッド60Cのように、ライニング管100の外周の全周囲を取り囲むことができれば、噴射ノズル65を周方向に均等に配置できる。これにより、ライニング管100の周方向における冷却能力を均等に近付けるのに寄与する。
また、冷却ヘッド60A~60Cは、周方向に一体の部材からなるが、図9(c)に示すように、二つのヘッド部材60D1とヘッド部材60D2の組み合わせからなる冷却ヘッド60Dを採用することができる。この冷却ヘッド60Dは、ヘッド部材60D1とヘッド部材60D2のそれぞれが進退移動できる。あるいは、ヘッド部材60D1とヘッド部材60D2のいずれか一方を、冷却台51に載せられるライニング管100の略半分に冷却水を噴射可能に固定し、他方を冷却台51に進退可能に構成する形態であってもよい。
【0046】
なお、以上で説明した本実施形態は、ライニング管100の内部に中子を挿入して、開口部には蓋を装着した状態で、直接、射出成形機に取り付けられ、樹脂がライニングされる形態を前提としている。この形態の場合、基本的には、ライニングが形成された後、ライニング管100の中子や蓋が装着された状態で、射出成形機10の機外に搬出され、外面から冷却される。
一方、形状が単純な、直管のような配管部材のライニングの形成においては、金型内に配管部材をインサート(設置)させた後、金型内で可動するように構成された可動中子を、インサートされた配管部材内に挿入させてライニング用のキャビティを形成する。そして、形成されたキャビティに溶融樹脂を射出充填させる形態がある。
このような形態においては、ライニングが形成されたライニング管から、可動中子を移動(退避)させてから、金型内のライニング管が機外に搬出される。このように、中子がない状態で冷却が行われるライニング管については、本実施形態に加えて、ライニング管の内面を冷却するように構成された内面冷却ヘッドを、本実施形態の冷却ヘッド60や、冷却台51に配置されるように構成されてもよい。このような内面冷却ヘッドは、本実施形態の冷却ヘッド60と形状は異なるものの、その基本的な構成は、本実施形態に記載された内容でよいため、詳細な説明は割愛する。
また、内面冷却ヘッドは、樹脂ライニング層を冷却するため、金属製のライニング管の外面を冷却する本実施形態の冷却方法に対して、冷却対象の冷却時の収縮率等の差異が考慮された、冷却媒体(冷却水)の温度や量等が適宜採用される冷却方法が適用されることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 射出成形設備
10 射出成形機
30 搬出部
31 基台
33 回転軸
35 揺動アーム
37A、37B グリッパ
50 冷却部
51 冷却台
53 アクチュエータ
55 冷却水供給源
55A 貯水槽
55B 給水ポンプ
57 供給配管
59 制御弁
60A、60B、60C、60D 冷却ヘッド
60D1、60D2 ヘッド部材
61 基体
62 通水路
63 噴射体
63A 第1噴射体
63IN 内壁
63B 第2噴射体
63OUT 外壁
64A、64B、64C、64D、64E、64F、64G、64H 通水路
65 噴射ノズル
67 冷却領域
70 制御部
100 ライニング管
101 主管部
101b 管端フランジ面
102 枝管部
103 配管素材
104 樹脂ライニング
C 中心軸線
CW 冷却水
CZ 中央ゾーン
LZ 下ゾーン
UZ 上ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10