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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241022BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J19/18 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021012436
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115709
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】堀 祐二
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110920(JP,A)
【文献】特開2018-014864(JP,A)
【文献】特開2017-051071(JP,A)
【文献】特開平03-021480(JP,A)
【文献】特開2004-358707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
インクを吐出するプリントヘッドを有し、前記本体内で所定の移動方向に往復移動可能なキャリッジと、
前記本体に、前記キャリッジの前記移動方向に沿って並べられて配置された複数の1次コイルと、
前記1次コイルに交流電力を供給する電源と、
前記キャリッジに設けられるとともに、前記1次コイルとの間で非接触での電力伝送を行う2次コイルと、
それぞれの前記1次コイルごとに設けられる、磁場に応じた信号を出力する複数のセンサと、
前記複数のセンサから受けた前記信号に基づいて、前記2次コイルの位置を検出する制御部と、を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記キャリッジは、前記キャリッジの位置を検出するためのエンコーダを、さらに有し、
前記制御部は、前記エンコーダの検出結果に基づいて、前記キャリッジの位置を検出するとともに、
前記キャリッジの可動範囲内に、前記エンコーダを用いて前記キャリッジの位置を検出することができない検出不能区間が生じた場合に、前記検出不能区間において、前記キャリッジの位置を、前記信号に基づいて検出した前記2次コイルの位置に基づいて、決定する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、
複数の前記1次コイルのうちの最も端に配置された1次コイルに前記2次コイルが接近したことを検出した場合に、前記キャリッジを反対方向に移動させる、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記キャリッジの移動を終了させる場合に、複数の前記1次コイルのうちの最も端に配置された1次コイルに、前記2次コイルが接近した位置で前記キャリッジを停止させる、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記プリントヘッドがインクを吐出する間、前記1次コイルのそれぞれに、前記電源から交流電力が供給される、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記1次コイルのそれぞれには、当該1次コイルの前記電源への接続の開閉を行うスイッチが設けられ、
前記制御部は、
前記プリントヘッドがインクを吐出する間、複数の前記スイッチの開閉が順次行われるように制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記制御部は、
前記1次コイルのそれぞれを、前記キャリッジの前記移動方向に沿って配置された複数のブロックのいずれかのブロックに割り当てるとともに、
前記スイッチの開閉を、前記ブロック単位で制御する、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ブロックに割り当てる前記1次コイルの数を、前記キャリッジの移動速度に応じて、変更する、請求項7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の各1次コイルにおいて、前記キャリッジの前記移動方向で隣接する1次コイルに対して、前記2次コイルが近接したことを検知した場合に、対応するスイッチの開動作を行わせることにより、前記電源からの交流電力の供給を停止させる、請求項6から8のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクを吐出するプリントヘッドを有するキャリッジを備えており、印刷対象の記録媒体に対して、キャリッジを移動させつつ、プリントヘッドからインクを吐出することで当該記憶媒体に文字や画像などの印刷を行う。キャリッジの位置は、インクジェットプリンタの本体側に設けられたエンコーダ用スケールを、キャリッジに設けられたエンコーダで読み取ることによって検出され、制御される。
【0003】
キャリッジの移動方向に沿って本体に並べられた複数の1次コイルとキャリッジ側に設けられた2次コイルとの間で電力供給を非接触状態で行わせることにより、キャリッジへの電力供給用ケーブルの設置を不要とする技術も、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010‐228447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、インクのミストやグリスなどに起因してエンコーダ用スケールが汚損などの異常が生じたときに、キャリッジの位置を適切に検出することができないという問題点を生じることがあった。
【0006】
本開示は、エンコーダ用スケールに異常が生じた場合でも、キャリッジの位置を適切に検出することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の第1態様のインクジェットプリンタは、本体と、インクを吐出するプリントヘッドを有し、前記本体内で所定の移動方向に往復移動可能なキャリッジと、前記本体に、前記キャリッジの前記移動方向に沿って並べられて配置された複数の1次コイルと、前記1次コイルに交流電力を供給する電源と、前記キャリッジに設けられるとともに、前記1次コイルとの間で非接触での電力伝送を行う2次コイルと、それぞれの前記1次コイルごとに設けられる、磁場に応じた信号を出力する複数のセンサと、前記複数のセンサから受けた前記信号に基づいて、前記2次コイルの位置を検出する制御部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、1次コイルを利用して、制御部がキャリッジに設けられた2次コイルの位置を検出する。これにより、エンコーダ用スケールに異常が生じた場合でも、キャリッジの位置を適切に検出することができる。
【0009】
本開示の第2態様は、第1態様のインクジェットプリンタであって、前記キャリッジは、前記キャリッジの位置を検出するためのエンコーダを、さらに有し、前記制御部は、前記エンコーダの検出結果に基づいて、前記キャリッジの位置を検出するとともに、前記キャリッジの可動範囲内に、前記エンコーダを用いて前記キャリッジの位置を検出することができない検出不能区間が生じた場合に、前記検出不能区間において、前記キャリッジの位置を、前記信号に基づいて検出した前記2次コイルの位置に基づいて、決定してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、上記検出不能区間が生じても、キャリッジの位置を適切に検出することができる。
【0011】
本開示の第3態様は、第1態様または第2態様のインクジェットプリンタであって、前記制御部は、複数の前記1次コイルのうちの最も端に配置された1次コイルに前記2次コイルが接近したことを検出した場合に、前記キャリッジを反対方向に移動させてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、非接触の給電を実現しつつ、専用の検出手段を設けなくてもキャリッジ往復動作のためのキャリッジ位置の検出を行うことが可能となる。
【0013】
本開示の第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つのインクジェットプリンタであって、前記制御部は、前記キャリッジの移動を終了させる場合に、複数の前記1次コイルのうちの最も端に配置された1次コイルに、前記2次コイルが接近した位置で前記キャリッジを停止させてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、印刷開始時に直ちに1次コイルから2次コイルへの電力伝送を行わせることができる。
【0015】
本開示の第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つのインクジェットプリンタであって、前記プリントヘッドがインクを吐出する間、前記1次コイルのそれぞれに、前記電源から交流電力が供給されてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、複数の1次コイルへの電力供給制御などを簡単化することができ、タイムロスが発生する可能性を低減することができる。
【0017】
本開示の第6態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つのインクジェットプリンタであって、前記1次コイルのそれぞれには、当該1次コイルの前記電源への接続の開閉を行うスイッチが設けられ、前記制御部は、前記プリントヘッドがインクを吐出する間、複数の前記スイッチの開閉が順次行われるように制御してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、電源からの電力供給が順次切り替えて行われることとなり、常時給電する場合に比べて、電力消費の削減をすることができる。
【0019】
本開示の第7態様は、第6態様のインクジェットプリンタであって、前記制御部は、前記1次コイルのそれぞれを、前記キャリッジの前記移動方向に沿って配置された複数のブロックのいずれかのブロックに割り当てるとともに、前記スイッチの開閉を、前記ブロック単位で制御してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、キャリッジが高速で移動する場合でも、キャリッジの移動に追従する、1次コイルのスイッチの開閉の制御を容易に行うことができるようになる。
【0021】
本開示の第8態様は、第7態様のインクジェットプリンタであって、前記制御部は、前記ブロックに割り当てる前記1次コイルの数を、前記キャリッジの移動速度に応じて、変更してもよい。
【0022】
上記の構成によれば、印刷速度に対応させて、1次コイルへの交流電力の供給を行わせることができ、様々な印刷速度において、2次コイルへの給電を効率よく行わせることができる。
【0023】
本開示の第9態様は、第6態様から第8態様のいずれか1つのインクジェットプリンタであって、前記制御部は、前記複数の各1次コイルにおいて、前記キャリッジの前記移動方向で隣接する1次コイルに対して、前記2次コイルが近接したことを検知した場合に、対応するスイッチの開動作を行わせることにより、前記電源からの交流電力の供給を停止させてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、各1次コイルにおいて、2次コイルへの給電動作を終了した時点で当該1次コイルへの交流電力の供給を停止させることができ、省電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様によれば、エンコーダ用スケールに異常が生じた場合でも、キャリッジの位置を適切に検出することができるインクジェットプリンタが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の実施形態1に係るインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
図2】インクジェットプリンタの要部構成を説明する平面図である。
図3】(A)は、図2のA-A線断面図であり、(B)は、図2のB-B線断面図である。
図4】インクジェットプリンタに含まれる1次コイルと2次コイルとの関係を説明する図である。
図5】インクジェットプリンタに含まれる1次コイルの具体的な回路構成を説明する図である。
図6】(A)は、インクジェットプリンタに含まれるエンコーダ用スケールに異常が生じていない場合でのエンコーダの出力波形を説明するための図であり、(B)は、インクジェットプリンタに含まれるエンコーダ用スケールに異常が生じた場合でのエンコーダの出力波形を説明するための図である。
図7】インクジェットプリンタの動作の一例を説明するフローチャートである。
図8図7のステップS2に示したコイル位置検知動作のサブルーチンを説明するフローチャートである。
図9図7のステップS3に示したエンコーダ補正動作のサブルーチンを説明するフローチャートである。
図10】インクジェットプリンタの動作の他の一例を説明するフローチャートである。
図11】本開示の実施形態2に係るインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
図12図11に示したインクジェットプリンタに含まれる1次コイルの具体的な回路構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について図1図10を参照しつつ説明する。本実施形態では、画像形成装置としてのインクジェットプリンタ1について説明する。また、画像形成とは、印刷である場合について説明する。
【0028】
〔インクジェットプリンタの概略構成〕
図1は、本開示の実施形態1に係るインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、本体2と、本体2に対して可動に設けられて、紙等の記録媒体P(図2)に印刷処理を行うキャリッジ14とを備えている。本体2は、通信部3、本体メモリ4、表示部5、および給紙部6を有する。また、本体2は、エンコーダ用スケール7、コントローラ8、電源9、1次コイル10、およびセンサ11を具備する。更に、本体2は、インクカートリッジ16、およびキャリッジ駆動部17を有する。
【0030】
キャリッジ14は、後に詳述するように、本体2内で所定の移動方向に往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ14は、プリントヘッド14a、2次コイル14b、蓄電池14c、および印刷データ受信部14dを有する。また、キャリッジ14には、エンコーダ12が設けられている。
【0031】
通信部3は、有線形式または無線形式のネットワークを介してインクジェットプリンタ1の外部の機器(例えば、コンピュータ端末)との間で双方向のデータ通信を行う。また、通信部3は、コントローラ8の指示に従って、印刷処理される印刷データをキャリッジ14の印刷データ受信部14dに送信する。
【0032】
本体メモリ4は、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。本体メモリ4は、例えばフラッシュROMまたはEEPROM(登録商標)である。本体メモリ4には、印刷枚数などの所定の情報が記憶される。
【0033】
表示部5は、液晶ディスプレイやランプ等を備えており、所定の情報表示を行う。また、表示部5は、タッチパネルと一体に構成されることにより、ユーザからの指示を受け付ける入力部として機能するように構成されてもよい。
【0034】
給紙部6は、図示を省略した、記録媒体を格納した給紙トレイ、及び給紙トレイからキャリッジ14側に記録媒体を給紙する給紙ローラを備える。また、給紙部6は、キャリッジ14に対向するように設けられるとともに、給紙ローラによって給紙された記録媒体を搬送する搬送路、および記録媒体を搬送路上で搬送する搬送ローラを備える。
【0035】
エンコーダ用スケール7及びエンコーダ12は、キャリッジ14の位置を検出するための検出装置であり、エンコーダ用スケール7は本体2側に固定される。また、エンコーダ12はキャリッジ14とともに移動し、エンコーダ用スケール7を読み取ることにより、キャリッジ14の位置を検出可能になっている。
【0036】
コントローラ8は、インクジェットプリンタ1の各部を制御する制御部であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)を有する。コントローラ8は、種々の処理を実行することによって、インクジェットプリンタ1に印刷処理およびそれに付随する処理を行わせる。
【0037】
なお、コントローラ8は、CPU等のプロセッサを備えてもよい。この場合、本体メモリ4に印刷制御方法を実現する制御プログラムが記憶されていてもよい。そして、コントローラ8のプロセッサが、本体メモリ4が記憶する制御プログラムにしたがって動作することにより、インクジェットプリンタ1における印刷処理が実行されてもよい。
【0038】
また、コントローラ8自体が、制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えていてもよい。記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、磁気ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを利用してもよい。
【0039】
また、制御プログラムは、制御プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。
【0040】
また、コントローラ8は、エンコーダ12の検出結果に基づき、キャリッジ14の位置を検出する位置検出部8a、複数のセンサ11から受けた信号に基づいて、2次コイル14bの位置を検出するコイル位置検出部8bを有する。2次コイル14bの位置を検出する方法については後述する。また、コントローラ8は、コイル位置検出部8bが検出した2次コイル14bの位置に基づいて、複数の1次コイル10のうちの最も端に配置された1次コイル10を判別する判別部8cを備える。
【0041】
また、コントローラ8では、位置検出部8aがエンコーダ12の検出結果を基にキャリッジ14の位置を検出不能である場合に、位置検出部8aはコイル位置検出部8bで検出された2次コイル14bの位置を用いてキャリッジ14の位置を決定して検出する。
【0042】
1次コイル10は、本体2に、キャリッジ14の移動方向に沿って並べられて配置された複数、例えば、9個の1次コイル10a~10i(図4)を有する。
【0043】
センサ11は、例えば、磁気センサであり、それぞれの1次コイル10ごとに設けられて、磁場に応じた信号を出力する。つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、複数、例えば、9個のセンサ11が対応する1次コイル10の近傍に設けられており、各センサ11は、1次コイル10と2次コイル14bとの間に磁場が発生したときに、その発生した磁場に応じた信号をコイル位置検出部8bに出力する。
【0044】
なお、センサ11としては、感知部が磁場に応じた信号を出力するセンサを用いることができる。しかしそれ以外にも、電圧計、電流計、あるいはコンデンサを適宜組み合わせた検出回路やその他のセンサであって、1次コイル10の近傍の磁場に応じた信号を出力するセンサであれば、センサ11として適用が可能である。
【0045】
プリントヘッド14aは、例えば、先端に設けられたノズルからインクを吐出する。また、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、フルカラーの画像形成を行うために、例えば、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各色)のインクを吐出する4個のプリントヘッド14aが設けられている。
【0046】
2次コイル14bは、キャリッジ14の移動に伴って、上記9個の各1次コイル10a~10iと順次対向するように、キャリッジ14に設けられている。2次コイル14bは、例えば、各1次コイル10a~10iの鉛直方向上側で各1次コイル10a~10iと対向するように設けられており、各1次コイル10a~10iとの間で非接触での電力伝送を行う。つまり、2次コイル14bは、いずれか1つの1次コイル10と対向したときに、2次コイル14bは、当該1次コイル10から生じた磁場に応じて、電圧を発生する。
【0047】
蓄電池14cは、2次コイル14bからの電力を充電する。また、蓄電池14cは、キャリッジ14に搭載されたプリントヘッド14aや印刷データ受信部14dなどの電気部品に電力を供給する。
【0048】
印刷データ受信部14dは、本体2の通信部3からの印刷データを受信する。そして、キャリッジ14では、プリントヘッド14aが受信された印刷データに基づいて、インクを吐出することによって記録媒体Pに印刷処理を行われる。
【0049】
インクカートリッジ16には、インクが充填されている。また、インクカートリッジ16は、インク供給用チューブT(図2)を介在させてプリントヘッド14aに接続されている。つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ1には、上記4色のいずれかの色のインクを充填した4個のインクカートリッジ16が設けられており、4色の各インクは、インクカートリッジ16からインク供給用チューブTを経てプリントヘッド14aに供給される。
【0050】
キャリッジ駆動部17は、コントローラ8からの指示に従って、本体2内でキャリッジ14を所定の移動方向に移動させる。
【0051】
〔インクジェットプリンタの要部構成〕
図2は、インクジェットプリンタの要部構成を説明する平面図である。図3の(A)は、図2のA-A線断面図であり、図3の(B)は、図2のB-B線断面図である。
【0052】
図2に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1には、記録媒体Pに対して、印刷処理を行う印刷部13が設けられている。印刷部13では、記録媒体Pは上記給紙部6によって図2の下側から上側に適宜搬送されるようになっている。また、印刷部13では、キャリッジ14がキャリッジ駆動部17によって駆動されて図2の左右方向に往復移動する。
【0053】
また、印刷部13には、所定の間隔をおいて互いに対向して配置された2個のガイド部材18、19が設けられており、キャリッジ14は、ガイド部材18、19の上方に配置された状態でガイド部材18、19に沿って移動する。
【0054】
キャリッジ14では、プリントヘッド14aがガイド部材18、19の間で記録媒体P上に配置されており、インクがプリントヘッド14aの下面に設けられたノズルから下方の記録媒体Pに対して吐出されることによって印刷処理が実行される。
【0055】
図2図3の(A)、及び図3の(B)に示すように、ガイド部材18は、断面形状がL字状の板材を用いて構成されている。ガイド部材18は、キャリッジ14の移動時にキャリッジ14に設けられた摺動面14gが摺動する摺動面18aと、摺動面18aの一端部でキャリッジ14側に突出する突出部18bとを有する。
【0056】
ガイド部材19は、断面形状がC字状の板材を用いて構成されており、一方の端部及び他方の端部でそれぞれキャリッジ14側に突出する突出部19a、19bを有する。突出部19aは、キャリッジ14の移動時にキャリッジ14に設けられた摺動面14eが摺動する摺動面19a1を有する。突出部19bは、キャリッジ14の移動時にキャリッジ14に設けられた摺動面14fが摺動する摺動面19b1を有する。
【0057】
また、ガイド部材18、19では、グリスが摺動面18a、19a1、19b1に塗布されており、キャリッジ14を円滑に移動可能となっている。
【0058】
キャリッジ駆動部17は、ガイド部材19上に設けられるとともに、キャリッジ14が固定された駆動ベルト17aと、ガイド部材19に回転自在に設けられるとともに、駆動ベルト17aが巻回されたプーリ17b、17cとを具備する。また、キャリッジ駆動部17では、図略の駆動モータがプーリ17bに接続されており、プーリ17bが駆動モータによって回転されることにより、駆動ベルト17a及びプーリ17cが回転する。これにより、キャリッジ14は、図2の左右方向に往復移動する。
【0059】
エンコーダ用スケール7が、突出部19bと駆動ベルト17aとの間のガイド部材19上でキャリッジ14の移動方向に沿って配置されている。エンコーダ用スケール7は、例えば、合成樹脂などの可撓性を有する材料を用いて構成されており、一端部がガイド部材19に固定されている。また、エンコーダ用スケール7の他端部は、バネなどの架張部材を介してガイド部材19に取り付けられており、エンコーダ用スケール7は、撓みなどの変形が生じるのを極力低減された状態で、ガイド部材19に設けられている。
【0060】
これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、エンコーダ12によるキャリッジ14の位置の検出精度がエンコーダ用スケール7での変形に起因して低下することが低減されている。
【0061】
エンコーダ用スケール7には、キャリッジ14の移動方向に沿って、所定の間隔で開口された複数のスリット7a(図6の(A))が設けられている。
【0062】
エンコーダ12は、キャリッジ14の下面に固定されている。エンコーダ12には、例えば、透過型の検出器が用いられており、エンコーダ12は、図3の(A)及び図3の(B)に示すように、所定の光を発光する発光部12aと、発光部12aからの光を受光する受光部12bとを有する。発光部12a及び受光部12bは、エンコーダ用スケール7を挟むように設けられている。
【0063】
また、受光部12bは、発光部12aがエンコーダ用スケール7のスリット7aと対向したときに、発光部12aからの光を受光して、受光したことを示すハイレベルの信号を位置検出部8aに出力する。これにより、コントローラ8は、エンコーダ12の検出結果に基づき、キャリッジ14の位置を検出することができる。
【0064】
なお、上記の説明以外に、例えば、上記発光部及び受光部がエンコーダ用スケール7の表面に対して並んで配置された、受光部がエンコーダ用スケール7で反射された発光部からの光を受光する反射型のエンコーダを用いることもできる。
【0065】
保護フィルムTPが、エンコーダ用スケール7とガイド部材19の摺動面19b1との間で、エンコーダ用スケール7の全面をカバーするように設けられている。保護フィルムTPは、エンコーダ用スケール7に対して、摺動面19b1、記録媒体P、あるいはユーザの手などが接触する可能性を大幅に低減する。
【0066】
これにより、エンコーダ用スケール7に摺動面19b1に塗布されたグリスが付着したり、撓みなどの変形が生じたりする可能性を極力小さくして、エンコーダ12によるキャリッジ14の検出精度の低下を低減することができる。
【0067】
エンコーダ用スケール7の下方には、図2に2点鎖線にて示すように、1次コイル10が設置された設置領域PAが設けられている。つまり、設置領域PAでは、キャリッジ14の移動方向に沿って所定の間隔で複数の1次コイル10が設けられている。
【0068】
上述のように、キャリッジ14では、図2及び図3の(A)に例示するように、2次コイル14bが設置領域PAの上方で1次コイル10と対向するように、キャリッジ14の下面でエンコーダ12の近傍に設けられている。これにより、2次コイル14bは、キャリッジ14の移動に応じて、いずれか1つの1次コイル10と対向することができる。
【0069】
なお、上記の説明以外に、ガイド部材18、19の他の箇所に1次コイル10を設置する構成でもよく、例えば、突出部18bのキャリッジ14側の表面に、1次コイル10を設置する構成でもよい。このように1次コイル10を設置した場合には、2次コイル14bは、1次コイル10とプリントヘッド14aとの間で1次コイル10と対向するように、キャリッジ14の下面に設置される。
【0070】
更に、上記の説明以外に、キャリッジ14の上面に対向する、当該キャリッジ14の上方の本体2の上面カバー(図示せず)の裏面に、1次コイル10を設置するとともに、当該1次コイル10と対向するように、キャリッジ14の上面に2次コイル14bを設置する構成でもよい。
【0071】
〔1次コイル及び2次コイルの構成例〕
図4は、インクジェットプリンタに含まれる1次コイルと2次コイルとの関係を説明する図である。図5は、インクジェットプリンタに含まれる1次コイルの具体的な回路構成を説明する図である。
【0072】
図4に示すように、9個の1次コイル10a~10iが、キャリッジ14の移動方向に沿って並べられて配置されている。また、1次コイル10a~10iは、図5に示すように、電源9が接続されている。本実施形態のインクジェットプリンタ1では、プリントヘッド14aがインクを吐出する間、1次コイル10a~10iのそれぞれに、電源9から交流電力が供給される。各1次コイル10a~10iに流れる電流によって、それぞれで磁束が発生し、近傍に磁場が生じる。
【0073】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、プリントヘッド14aがインクを吐出する間、1次コイル10a~10iのそれぞれに交流電力が供給される。この結果、複数の1次コイル10a~10iへの電力供給制御などを簡単化することができ、タイムロスが発生する可能性を低減することができる。
【0074】
また、2次コイル14bは、キャリッジ14の移動とともに、図4の左右方向に移動される。2次コイル14bでは、各1次コイル10a~10iの近傍に磁場が生じたときに、最も近接した1次コイル10との間で非接触での電力伝送が行われる。つまり、2次コイル14bでは、最も近接した1次コイル10との電磁誘導により、誘導電流が発生し、発生した誘導電流が蓄電池14cに供給されて、蓄電池14cに蓄電される。このようにして、本体2の電源9から、2次コイル14bと、2次コイル14bに電磁的に結合した1次コイル10とを介して、非接触でキャリッジ14に電力が供給される。
【0075】
また、2次コイル14bに誘導電流が流れると、2次コイル14bに電磁的に結合した1次コイル10において磁場が変化する。このことを利用して、2次コイル14bに接近している1次コイル10を特定することができる。
【0076】
このため、コイル位置検出部8bは、複数のセンサ11から受けた信号に基づいて、2次コイル14bの位置、ひいてはキャリッジ14の位置を検出することができる。
【0077】
〔位置検出部の検出結果例〕
図6の(A)は、インクジェットプリンタに含まれるエンコーダ用スケールに異常が生じていない場合でのエンコーダの出力波形を説明するための図であり、図6の(B)は、インクジェットプリンタに含まれるエンコーダ用スケールに異常が生じた場合でのエンコーダの出力波形を説明するための図である。
【0078】
図6の(A)に示すように、エンコーダ用スケール7には、スリット7aと、スリット7aの開口を閉塞した閉塞部7bとが交互に設けられている。エンコーダ12では、受光部12bがスリット7aと対向しているときに、ハイレベルの信号が位置検出部8aに出力され、受光部12bが閉塞部7bと対向しているときに、ロウレベルの信号が位置検出部8aに出力される。
【0079】
つまり、エンコーダ12は、ハイレベルの信号とロウレベルの信号とを交互に、かつ、所定の周期で出力する。また、位置検出部8aは、例えば、エンコーダ12からのハイレベルの信号の入力回数をカウントして、そのカウント結果をエンコーダ12からのパルスのカウント数とする。そして、位置検出部8aは、カウント数を用いることにより、キャリッジ14のホームポジションに設定された当該キャリッジ14の移動方向での一方の端部の位置からのキャリッジ14の移動距離を求めて、キャリッジ14の位置を検出する。
【0080】
そして、コントローラ8は、位置検出部8aによって検出されたキャリッジ14の位置に基づき、キャリッジ駆動部17を駆動して、キャリッジ14の位置制御を行う。
【0081】
また、位置検出部8aは、上記パルスのカウント数を用いて、キャリッジ14の移動速度の制御を行ったり、プリントヘッド14aでのインクの吐出タイミングの制御を行ったりする。
【0082】
また、図6の(B)に示すように、エンコーダ用スケール7に異常が発生したときには、エンコーダ12からの信号が発生した異常に応じて変化する。具体的には、インクのミストやグリスなどがエンコーダ用スケール7に付着すると、スリット7aが塞がられて、発光部12aからの光を遮光する遮光部7dが生じる場合が起こりえる。
【0083】
上記のような遮光部7dがエンコーダ用スケール7に生じると、当該エンコーダ用スケール7に異常が発生したこととなり、受光部12bが遮光部7dに対向しているときに、エンコーダ12はロウレベルの信号のみ出力する。この結果、位置検出部8aは、エンコーダ12の検出結果を用いて、キャリッジ14の位置を検出することができない。
【0084】
そこで、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、コントローラ8は、位置検出部8aがキャリッジ14の位置を検出することができない検出不能区間においては、コイル位置検出部8bにより、キャリッジ14の位置を、センサ11から受けた信号に基づいて検出した2次コイル14bの位置に基づいて、決定する。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、上記検出不能区間が生じても、キャリッジ14の位置を適切に検出することができる。
【0085】
〔インクジェットプリンタの動作例〕
図7は、インクジェットプリンタの動作の一例を説明するフローチャートである。図8は、図7のステップS2に示したコイル位置検知動作のサブルーチンを説明するフローチャートである。図9は、図7のステップS3に示したエンコーダ補正動作のサブルーチンを説明するフローチャートである。図10は、インクジェットプリンタの動作の他の一例を説明するフローチャートである。
【0086】
図7図9では、キャリッジ14の位置制御に関する処理を含むインクジェットプリンタ1による処理手順について説明する。ここで説明する処理手順は、コントローラ8によるインクジェットプリンタ1を制御する制御方法の一例である。
【0087】
コントローラ8が通信部3や表示部5を介して印刷動作を実行する指示を受け付けると、図7に示すように、位置検出部8aが、エンコーダ12からの信号に基づいて、エンコーダ検知動作に異常が生じているか否かについて判断する(S1)。具体的には、エンコーダ12からの信号のレベルが一定時間継続して同じレベルであったり、上記所定の周期以外でエンコーダ12からの信号がハイレベルの信号とロウレベルの信号との間で変化したりするか否かについて判別することにより、位置検出部8aは、エンコーダ検知動作に異常が生じているか否かについて判断する。
【0088】
エンコーダ検知動作に異常が生じていると判断される場合(S1でYES)、コイル位置検出部8bが後述の2次コイル位置検知動作を実行する(S2)。更に、コイル位置検出部8bは、後述のエンコーダ補正動作を実行する(S3)。
【0089】
一方、エンコーダ検知動作に異常が生じていないと判断される場合(S1でNO)、位置検出部8aは、エンコーダ12からの信号を用いて、キャリッジ14の制御を行う(S4)。
【0090】
コントローラ8は、印刷動作が終了したか否かについて判断する(S5)。印刷動作が終了していないと判断される場合(S5でNO)、フローは、ステップS1に進む。
【0091】
一方、印刷動作が終了したと判断される場合(S5でYES)、インクジェットプリンタ1は、動作を終了する。
【0092】
図8に示すように、2次コイル位置検知動作では、コイル位置検出部8bは、複数のセンサ11から受けた信号に基づいて、2次コイル14bの位置を検出する。更に、位置検出部8aは、コイル位置検出部8bが検出した2次コイル14bの位置に基づいて、キャリッジ14の位置を検出し、かつ位置の時系列を参照して、当該キャリッジ14の移動方向が、例えば、右方向であるか否かについて判断する(S6)。
【0093】
具体的には、コイル位置検出部8bは、2次コイル14bが、図4に示した9個の1次コイル10a~10iに対して、同図の右方向または左方向にそれぞれ移動していることを検出した場合に、位置検出部8aは、キャリッジ14は右方向または左方向に移動していると判断する。
【0094】
そして、キャリッジ14の移動方向は右方向であると判断される場合(S6でYES)、位置検出部8aは、ステップS1でエンコーダ検知動作に異常を検知した位置の左側及び右側に存在する1次コイル10の番号としてそれぞれA=n-1及びB=nを設定する(S7)。
【0095】
一方、キャリッジ14の移動方向は左方向であると判断される場合(S6でNO)、位置検出部8aは、ステップS1でエンコーダ検知動作に異常を検知した位置の左側及び右側に存在する1次コイル10の番号としてそれぞれC=n+1及びB=nを設定する(S8)。
【0096】
図9に示すように、エンコーダ補正動作では、位置検出部8aは、ステップS7またはステップS8で設定したB及びAまたはCで規定される1次コイル10の位置と、印刷処理に応じて予め設定されている、印刷解像度とに基づいて、キャリッジ14の移動の基準となるステップ数を求める(S10)。
【0097】
具体的には、位置検出部8aは、設定したB及びAまたはCに基づいて、エンコーダ検知動作に異常が生じている区間に含まれた1次コイル10の区間の数Kを算出する。位置検出部8aは、隣接する2つの1次コイル10の離間距離Wと、区間の数Kと、印刷解像度SP(dpi)とを乗算することにより、ステップ数を取得する。
【0098】
次に、位置検出部8aは、キャリッジ14の位置がエンコーダ検知動作に異常が生じている区間の範囲であるか否かについて判断する(S11)。
【0099】
キャリッジ14の位置がエンコーダ検知動作に異常が生じている区間の範囲であると判断される場合(S11でYES)、位置検出部8aは、ステップS10で取得したステップ数でキャリッジ14の制御を行う(S12)。
【0100】
つまり、ステップ数は、エンコーダ検知動作に異常が生じている区間に含まれた印刷処理でのドット数(プリントヘッド14aからのインク吐出数)を示しているので、位置検出部8aは、ドット数と、印刷解像度によって規定されるキャリッジ14の移動速度とを用いて、プリントヘッド14aでのインクの吐出タイミングの制御を行うことにより、キャリッジ14の制御を実行する。
【0101】
一方、キャリッジ14の位置がエンコーダ検知動作に異常が生じている区間の範囲でないと判断される場合(S11でNO)、位置検出部8aは、エンコーダ12の検出結果を用いて、キャリッジ14を制御する(S13)。
【0102】
図10では、キャリッジ14のホームポジションの設定制御に関する処理を含むインクジェットプリンタ1による処理手順について説明する。このキャリッジ14のホームポジションの設定制御は、ステップS5の印刷動作が終了した場合に実行される動作の一例である。
【0103】
図10に示すように、コイル位置検出部8bは、複数のセンサ11から受けた信号に基づいて、2次コイル14bの位置を検出し、さらには、コイル位置検出部8bは、1次コイル10a~10iのうちの2次コイル14bに最も近接する1次コイル10をX=mと設定する(S14)。
【0104】
次に、コイル位置検出部8bは、例えば、図4に示した1次コイル10a~10iにおいて、同図の左側の端部の1次コイル10aから右側の端部の1次コイル10iに対し、a=1、b=2、・・・、i=9のように順次番号を付与する。そして、コイル位置検出部8bは、ステップS14でX=mと設定した1次コイル10の番号が5以上であるか否かについて判断する(S15)。
【0105】
X=mと設定した1次コイル10の番号が5以上であると判断される場合(S15でYES)、判別部8cは、キャリッジ14が右端に近い位置にあると判別する。そして、コントローラ8は、キャリッジ14を右方向に移動させる(S16)。更に、コントローラ8は、1次コイル10iをキャリッジ14のホームポジションに設定する(S18)。
【0106】
一方、X=mと設定した1次コイル10の番号が5以上でないと判断される場合(S15でNO)、判別部8cは、キャリッジ14が左端に近い位置にあると判別する。そして、コントローラ8は、キャリッジ14を左方向に移動させる(S17)。更に、コントローラ8は、1次コイル10aをキャリッジ14のホームポジションに設定する(S18)。
【0107】
なお、ステップS15において、X=mと設定した1次コイル10の判定値として“5”の番号を用いた理由は、本実施形態では、9個の1次コイル10a~10iが用いられており、キャリッジ14の移動方向の中心に位置する1次コイル10eに付与された番号を判定値に用いたためである。これにより、キャリッジ14のホームポジションの最適な設定動作を容易に行うことができる。
【0108】
このように、コントローラ8は、キャリッジ14の移動を終了させる場合に、複数の1次コイル10a~10iのうちの最も端に配置された1次コイル10aまたは10iに、2次コイル14bが接近した位置でキャリッジ14を停止させる。これにより、本実施形態では、次の印刷開始時に直ちに1次コイル10aまたは10iから2次コイル14bへの電力伝送を行わせることができる。
【0109】
また、コントローラ8は、印刷動作が終了していないときは、コイル位置検出部8bの検出結果を用いて、キャリッジ14を制御することもできる。
【0110】
具体的には、コイル位置検出部8bが、複数の1次コイル10a~10iのうちの最も端に配置された1次コイル10aまたは10iに2次コイル14bが接近したことを検出した場合に、キャリッジ14を反対方向に移動させることができる。これにより、非接触の給電を実現しつつ、専用の検出手段を設けなくてもキャリッジ14の往復動作のためのキャリッジ14の位置の検出を行うことが可能となる。
【0111】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、1次コイルを利用して、コントローラ8のコイル位置検出部8bがキャリッジ14に設けられた2次コイル14bの位置を検出する。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、エンコーダ用スケール7に異常が生じた場合でも、キャリッジ14の位置を適切に検出することができる。
【0112】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0113】
図11は、本開示の実施形態2に係るインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。図12は、図11に示したインクジェットプリンタに含まれる1次コイルの具体的な回路構成を説明する図である。
【0114】
図において、本実施形態と上記実施形態1との相違点は、スイッチを電源と1次コイルとの間に設けた点である。
【0115】
図11及び図12に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、本体2に、1次コイルの電源9への接続の開閉を行うスイッチ20が設けられている。スイッチ20は、複数の1次コイル10a~10iごとに設けられている。つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、9個のスイッチ20a~20iが設置されている。
【0116】
コントローラ8は、プリントヘッド14aがインクを吐出する間、複数のスイッチ20a~20iの開閉が順次行われるように制御する。これにより、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、電源9からの電力供給が順次切り替えて行われることとなり、常時給電する場合に比べて、電力消費の削減をすることができる。すなわち、2次コイル14bへの電力伝送に係わらない1次コイル10での電力消費を無くすことで、全体として電力消費の削減をすることができる。
【0117】
なお、上記の説明以外に、例えば、コントローラ8は、1次コイル10a~10iのそれぞれを、キャリッジ14の移動方向に沿って配置された複数のブロックのいずれかのブロックに割り当てるとともに、スイッチ20a~20iの開閉を、ブロック単位で制御してもよい。
【0118】
この場合には、キャリッジ14が高速で移動する場合でも、キャリッジ14の移動に追従する、1次コイル10のスイッチ20の開閉の制御を容易に行うことができるようになる。
【0119】
また、コントローラ8は、上記ブロックに割り当てる1次コイル10の数を、キャリッジ14の移動速度に応じて、変更することもできる。
【0120】
この場合には、印刷部13の印刷速度に対応させて、1次コイル10への交流電力の供給を行わせることができ、様々な印刷速度において、2次コイル14bへの給電を効率よく行わせることができる。
【0121】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 インクジェットプリンタ
2 本体
8 コントローラ(制御部)
9 電源
10、10a~10i 1次コイル
11 センサ
12 エンコーダ
14 キャリッジ
14a プリントヘッド
14b 2次コイル
20 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12