(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】スロープ支持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20241022BHJP
E04F 11/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B60R3/00
E04F11/00
(21)【出願番号】P 2021034504
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船橋 和樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 宗志朗
(72)【発明者】
【氏名】各務 綾加
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康秀
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131012(JP,A)
【文献】特開2002-306536(JP,A)
【文献】実開平05-065668(JP,U)
【文献】特開2018-188142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/06
B60P 1/43
3/00
B60R 3/00
E04F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアから離れる方向に展開されるスロープの根元側が、前記フロアに支持される前記フロアのスロープ支持構造であって、
アルミ材により構成され、前記スロープが展開される方向における断面形状が、前記スロープが展開される方向と直交する幅方向において基本的に同一であり、前記フロアを構成するフロアパネルを含み、
前記スロープを支持する前記フロアパネルの先端部に、前記スロープ側に伸びるように前記フロアパネルと一体形成され、前記フロアパネルの内側部分より厚みが薄く、前記スロープの前記フロアパネル側の先端部を下から支持する舌片部を有
し、
前記スロープは、展開した状態において、前記フロアパネルから離れる方向において徐々に下がるように傾斜しており、
前記舌片部は水平方向に伸びているとともに、前記フロアパネルの底面より下方に位置する、
スロープ支持構造。
【請求項2】
請求項
1に記載のスロープ支持構造であって、
前記舌片部は、その先端が上下方向の断面において丸くなっている、
スロープ支持構造。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のスロープ支持構造であって、
前記舌片部は、前記フロアパネルの幅方向の両端において切り欠かれている、
スロープ支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアについての乗り降り補助用のスロープ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子の乗り降り等を容易にするためにスロープを設ける車両が知られている。スロープは、走行時は不要であり、また邪魔になるので車両のいずれかの場所に収納される。
【0003】
スロープは、人手によって設置、収容する場合もあるが、電動で展開、収容できるようにした電動スロープも知られている。このようなスロープを展開する場合、車両のフロア側はフロアの高さとなり、車外側は道路等の高さになるため、スロープは斜めになる。そして、車椅子等の移動を容易にするため、フロアとスロープの境目(接続部)はなるべく段差がないようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロアと、スロープの接続部について、より確実に段差がないようにしたいという要求があり、この場合両者を確実にかみ合わせて固定することなどが考えられる。しかし、かみ合わせ構造にすると、それぞれ構造が複雑になり、その製作が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスロープ支持構造は、フロアから離れる方向に展開されるスロープの根元側が、前記フロアに支持されるフロアのスロープ支持構造であって、アルミ材により構成され、前記スロープが展開される方向における断面形状が、前記スロープが展開される方向と直交する幅方向において基本的に同一であり、前記フロアを構成するフロアパネルを含み、前記スロープを支持する前記フロアパネルの先端部に、前記スロープ側に伸びるように前記フロアパネルと一体形成され、前記フロアパネルの内側部分より厚みが薄く、前記スロープの前記フロアパネル側の先端部を下から支持する舌片部を有し、前記スロープは、展開した状態において、前記フロアパネルから離れる方向において徐々に下がるように傾斜しており、前記舌片部は水平方向に伸びているとともに、前記フロアパネルの底面より下方に位置する。
【0009】
前記舌片部は、その先端が上下方向の断面において丸くなっているとよい。
【0010】
前記舌片部は、前記フロアパネルの幅方向の両端において切り欠かれているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロアパネルが舌片部を有するため、スロープを確実に支持することができる。また、フロアパネルをアルミ押し出し成型で形成することができ、舌片部の先端を丸くすることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車両1の出入り口周辺の構成を示す斜視図であり、(a)はスロープが収納された状態、(b)はスロープが展開された状態を示す。
【
図2】スロープ7の展開時における、スロープ7とフロアパネル10の接続部の構成を示す断面図である。
【
図3】フロアパネル10と、スロープ7の接続部の構成例を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のa-a断面図である。
【
図4】単位パネル12の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0014】
「出入り口の構成」
図1は、車両1の出入り口周辺の構成を示す斜視図であり、(a)はスロープが収納された状態、(b)はスロープが展開された状態を示す。車体4は、一側面である左側面にスライドドア2を有している。そして、車体4のスライドドア2の下側には、電動スロープ装置6が設けられている。
【0015】
スライドドア2は、2つの扉2a,2b(前方側が扉2a、後方側が扉2b)を有し、これらがドア開閉機構(図示せず)によって車両前後方向であって互いに反対の方向にスライドすることで乗降口(出入口)8を開閉する。
【0016】
また、電動スロープ装置6は、通常時には、
図1(a)に示すようにスロープが床下に収納されており、乗降時には、
図1(b)に示すようにスロープが外方(図における斜め左手前)に向けてせり出すように展開される。
【0017】
そして、電動スロープ装置6が配置される部分の上方にフロアパネル10が配置されている。フロアパネル10は、車両1の他の部分のフロアパネルとは別部材として設けられ、独立して取り外し可能になっている。これにより、例えばフロアパネル10を取り外した状態で、下方の電動スロープ装置6の点検修理、取り外しなどの作業を行うことができる。
【0018】
「スロープとフロアの接続部の構成」
図2は、スロープ7の展開時における、スロープ7とフロアパネル10の接続部の構成を示す断面図である。スロープ7は、フロア9から離れる方向(車両1の乗降口(出入口)8から離れる方向)に展開される。スロープ7の根元側(車両1側)の先端部7aが、フロアパネル10の先端部10aに支持される。
【0019】
フロアパネル10は、板状であり、乗降口8の開閉方向(スロープ7の展開方向と直交する方向)において、複数の空洞部10bが仕切り壁10cによって仕切り形成されている。また、フロアパネル10は、乗降口8側に向けて上面10dが下方に向けて傾斜しており、一方底面10eは水平であり、従って乗降口8側に向けて厚みが徐々に薄くなっている。
【0020】
フロアパネル10のスロープ7を支持する先端部10aは、スロープ7側に伸びるように舌片部100が形成されている。この舌片部100は、フロアパネル10と一体形成され、フロアパネル10の内側部分(車室内に位置する部分)より厚みが薄く、スロープ7のフロアパネル10側の先端部7aを下から支持する。
【0021】
また、舌片部100は、フロアパネル10の底面10eと同様に水平方向に伸びており、かつ底面10eより下方に位置する。このように、舌片部100がフロアパネル10より下方に位置することで、スロープ7の先端部7aを保持した場合において、その上面7bと、フロアパネル10の上面10dの段差を小さくすることが容易になる。図示の例では、スロープ7の先端部7aについても本体より厚みを薄くしたが、厚みを比較的厚くすることもできる。
【0022】
ここで、フロアパネル10は、その幅方向の断面がいずれの位置においても同一形状となっている。言い換えれば、フロアパネル10は、紙面に垂直な方向、すなわちスロープ7が展開される方向と直交する幅方向において、その端面が基本的に直線であり、押し出し成型可能な形状になっている。そして、本実施形態においては、フロアパネル10は、アルミ材で構成され、アルミ押し出し成型で形成されている。なお、後述するように、舌片部100の両端部分については後から切断し、切り欠き部100aを設けている(
図3参照)が、この程度の簡単な後処理が施された形状は、押出成形可能な形状に含まれる。
【0023】
また、舌片部100の先端形状は、図に示されるように上下方向の断面において半円状に示されているように、丸くなっている。アルミ押し出し成型では、このような丸みを帯びた形状を製作することが容易であり、このような形状を作成するために面取り作業等が不要である。そして、舌片部100の先端形状を丸くすることで、各種作業時において扱いやすくなる。
【0024】
なお、スロープ7も、フロアパネル10と同様にアルミ押し出し成型で形成することができる。そこで、スロープ7のフロアパネル10側の先端部も図示のように丸くすることが容易であり、また、厚みが薄く、舌片部100と確実に係合できる相補的な形状にすることが容易になる。
【0025】
「リンク」
スロープ7のフロアパネル10側には、リンク20が取り付けられている。このリンク20は、スロープ7、固定材22、移動材24の先端部(乗降口8付近)の支点に係合する三角形状の部材で、移動材24が矢印方向に移動することによって、固定材22の支点Pを中心として回転し、スロープ7のフロアパネル10側の先端部7aが旋回して上下する。図は、移動材24が図における左(車外方向)側の終点まで移動した状態であり、これによってスロープ7の先端部7aがフロアパネル10の舌片部100に係合して、停止している。
【0026】
移動材24が反対方向(車室内側)に移動すると、スロープ7の先端部7aが、支点Pを中心に下方に向けて旋回し、固定材22の下側に移動する。この状態で、スロープ7を車両側に引き込むことができる。このような電動スロープの移動機構については公知のものが適宜採用可能であり、ここでは説明を省略する。
【0027】
「切り欠き部」
図3は、フロアパネル10と、スロープ7の接続部の構成例を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のa-a断面図である。なお、
図3においては、スロープ7をフロアパネル10の下側に収容している状態を示している。
【0028】
このように、フロアパネル10の先端部10aにおいて、舌片部100は、その両端が切り欠き部100aとなっており、舌片部100がない。これによって、フロアパネル10の先端部10aの下方空間が広くなっている。スロープ7の移動機構であるメカ部6aは、切り欠き部100aの下方に位置することで、その上方の空間が広くなり、メカ部6aの配置およびその動作が容易になる。
【0029】
「フロアパネル」
図4は、単位パネル12の概略構成を示す斜視図である。フロアパネル10は、単位パネル12をつなぎ合わせて構成するとよい。
【0030】
この場合、単位パネル12をアルミ押し出し成型するとよく、乗降口8に位置する単位パネル12については、舌片部100を形成し、
図2のような構成にするとよい。
図4は、車室内についての単位パネル12であって、舌片部100が形成されていないものを示してある。
【0031】
単位パネル12は、細長であり、長手方向の両端が開口し、薄い(厚みに比べ幅が広い)四角形状の閉断面を有する中空板状である。また、内部に長手方向に伸びるとともに、閉断面の表面と裏面とを接続するリブを有する。この例において、単位パネル12は、
図4において矢印で示す押出方向によるアルミ押し出し成型によって形成される。アルミ押し出し成型は、アルミ素材を型に向かって押し付け、型から押し出すことによって成型する。従って、押出方向のリブなどや丸みを帯びた形状の形成が容易であり、また押出方向の曲げなどに対する強度を大きくすることが容易である。
【0032】
なお、このような単位パネル12の側部には、隣接する単位パネル12と噛み合う鉤形部などを形成し、これらをかみ合わせてフロアパネル10を形成することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 車両、2 スライドドア、4 車体、6 電動スロープ装置、6a メカ部、7 スロープ、7a 先端部、7b 上面、8 乗降口、9 フロア、10 フロアパネル、10a 先端部、10b 空洞部、10c 仕切り壁、10d 上面、10e 底面、12 単位パネル、20 リンク、22 固定材、24 移動材、100 舌片部、100a 切り欠き部。