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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241022BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20241022BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H05K7/20 Q
H01L23/46 A
F25D9/00 G
F28D15/02 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021037980
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138221
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 公和
(72)【発明者】
【氏名】柴田 上仁
(72)【発明者】
【氏名】河本 陽一郎
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150715(JP,A)
【文献】特開2019-016764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/295670(US,A1)
【文献】国際公開第2018/020582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/34- 23/46
F25D 9/00
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体(2)を浸漬して冷却するための冷媒液(11)を貯蔵する冷却槽(10)と、
前記冷却槽の外部で前記冷媒液を貯蔵するとともに、大気に開放する大気開口部(21)を有する貯液槽(20)と、
前記貯液槽と前記冷却槽とを接続し、前記冷媒液が通過可能となっている接続部(30)と、
を備え、
前記接続部のうち前記冷却槽側に形成された冷却槽側開口部(31)は、重力方向において、前記冷却槽内で前記冷媒液の液面の下側又は同じ高さに位置しており、
前記冷却槽内で発生した気体は前記冷却槽内の上部で貯留されて気体部(12)を形成し、
前記気体部の体積変動に応じて、前記接続部を介して前記冷却槽と前記貯液槽との間を前記冷媒液が流動し、
前記貯液槽は前記冷却槽の上方に設けられており、
前記冷却槽と前記貯液槽は、前記接続部のみによって接続されている冷却装置。
【請求項2】
前記発熱体の発熱により、前記冷却槽内の前記冷媒液が沸騰可能となっており、
前記発熱体は、前記冷媒液のサブクール沸騰によって冷却される請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却槽の前記冷媒液を冷却する熱交換器(52)と、
前記冷却槽の前記冷媒液を前記熱交換器に循環させる循環回路(50)と、
を備える請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記発熱体は電子機器であり、前記電子機器の配線(2a)は前記大気開口部から外部に取り出されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却槽側開口部は、重力方向において、前記冷却槽内における前記発熱体よりも上側に位置している請求項1ないし4のいずれか1つに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷却槽内で前記冷媒液と前記気体部に跨るように設けられ、前記冷媒液と前記気体部との熱交換を促進する伝熱部(13)を備えている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記貯液槽には、前記冷媒液の上面を覆うように油膜用オイルが設けられている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の発熱体を冷媒液に浸漬して冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の発熱体を冷媒液に浸漬して冷却する冷却装置では、発熱体の発熱で冷媒液が気化すること等によって冷媒液が減少し、発熱体の冷却不足を招く恐れがある。
【0003】
これに対し、特許文献1では、発熱体を冷媒液に浸漬する冷却槽の外部に封止材を収容する封止槽を設け、封止槽をトラップ又はシールとして機能させることで、冷却槽で発生する冷媒蒸気の外部への排出を抑える装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-126936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発熱体の発熱によって冷却槽の温度は封止槽よりも高くなることから、冷却槽で蒸発した冷媒液が封止槽で凝縮することが継続すると、いずれは封止槽が液で満たされ、封止槽から冷媒液もしくは封止材が外部へ溢れ出るおそれがある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、冷媒液に発熱体を浸漬して冷却する冷却槽を備える冷却装置において、冷却槽における冷媒液減少を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷却装置は、冷却槽(10)と、貯液槽(20)と、接続部(30)とを備える。冷却槽は、発熱体(2)を浸漬して冷却するための冷媒液(11)を貯蔵する。貯液槽は、冷却槽の外部で冷媒液を貯蔵するとともに、大気に開放する大気開口部(21)を有する。接続部は、貯液槽と冷却槽とを接続し、冷媒液が通過可能となっている。
【0008】
接続部のうち冷却槽側に形成された冷却槽側開口部(31)は、重力方向において、冷却槽内で冷媒液の液面の下側又は同じ高さに位置している。冷却槽内で発生した気体は冷却槽内の上部で貯留されて気体部(12)を形成する。気体部の体積変動に応じて、接続部を介して冷却槽と貯液槽との間を冷媒液が流動する。貯液槽は前記冷却槽の上方に設けられている。冷却槽と貯液槽は、接続部のみによって接続されている。
【0009】
これにより、気相冷媒が接続部を介して貯液槽の大気開口部から外部に流出することを抑制できる。この結果、冷却槽の冷媒液が減少することを抑制できる。
【0010】
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の冷却装置の構成を示す図である。
図2】第2実施形態の冷却装置の構成を示す図である。
図3】第3実施形態の冷却装置の構成を示す図である。
図4】第4実施形態の冷却装置の構成を示す図である。
図5】第5実施形態の冷却装置の構成を示す図である。
図6】第6実施形態の冷却装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態のうち、第1~第5実施形態が、特許請求の範囲に記載した発明の実施形態であり、第6実施形態は、参考例として示す形態である。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づいて説明する。図1では、紙面上下方向が重力方向となっている。
【0013】
図1に示すように、本第1実施形態の冷却装置1は、冷却槽10、貯液槽20および接続部30を備えている。冷却槽10、貯液槽20および接続部30は、例えば樹脂材料や金属材料によって構成することができる。
【0014】
冷却槽10は、冷却対象である電子機器2が収容された容器状部材である。電子機器2は、作動に伴って発熱し、冷却を必要とする発熱体である。電子機器2としては、例えば発熱素子が搭載された電子基板やインバータ等を用いることができる。本実施形態の電子機器2は板状部材であり、板面が重力方向と平行となるように配置されている。電子機器2が本発明の発熱体に相当している。
【0015】
冷却槽10には、電子機器2を冷却するための冷媒液11が貯蔵されている。電子機器2は、冷媒液11に浸漬した状態となっている。本実施形態では、冷媒液11としてフッ素系不活性液体を用いている。フッ素系不活性液体は、絶縁性、伝熱特性、安定性に優れた冷媒液である。本実施形態では、沸点が120℃程度よりも低い低沸点の冷媒液11を用いている。
【0016】
冷媒液11の沸点は、電子機器2の発熱温度よりも低くなっている。本実施形態では、電子機器2の発熱温度よりも10~20℃程度低い沸点を有する冷媒液11を用いている。このため、電子機器2の発熱で冷媒液11は沸騰可能となっており、冷却槽10では冷媒液11が沸騰して電子機器2から吸熱する沸騰冷却が行われる。本実施形態では、電子機器2と接触する冷媒液11が沸騰し、冷却槽10の冷媒液11が沸点より低温のサブクール液となっている状態で沸騰するサブクール沸騰が行われる。
【0017】
冷媒液11が沸騰して発生した気相冷媒はサブクール液で凝縮、縮小するが、凝縮できない気泡が冷媒液11の内部を上方に移動する。冷却槽10の内部で発生した気体が冷却槽10内の上部で貯留されることで気体部12が形成される。気体部12には、気相冷媒、冷媒液11から放出された溶存ガス、初期から冷却槽10に存在する空気などが含まれている。気体部12の体積は変動可能となっており、体積ゼロになることもある。
【0018】
気体部12に含まれる気相冷媒は、冷却槽10の内部で冷媒液11が気化することで生成される。冷媒液11の気化には、冷媒液11の沸騰と蒸発が含まれている。気体部12に含まれる気相冷媒は、凝縮することで液相の冷媒液11となる。
【0019】
冷媒液11には、主に大気からなる溶存ガスが溶解している。気体部12に含まれる溶存ガスは、冷媒液11に溶解している溶存ガスが冷媒液11から放出されることで生成する。冷媒液11に溶解している溶存ガスの溶解度は、冷媒液11の温度等によって変動する。冷媒液11の温度が上昇すると溶存ガスの溶解度が低下し、溶存ガスが冷媒液11から放出される。冷媒液11から放出された溶存ガスは気相冷媒とともに気体部12を形成する。気体部12に含まれる溶存ガスは、冷媒液11の温度低下によって冷媒液11に再度溶解することができる。
【0020】
貯液槽20は、内部に冷媒液11を貯蔵可能な容器状部材である。貯液槽20は、冷却槽10の外部に設けられている。本実施形態では、貯液槽20は、冷却槽10の上面に対向して設けられている。
【0021】
貯液槽20の上部には、大気開口部21が設けられている。貯液槽20の内部は、上方で大気開口部21を介して大気と連通している。貯液槽20は大気に開放されており、貯液槽20の内部では、冷媒液11の上部に大気が存在する。
【0022】
貯液槽20は、接続部30によって冷却槽10と接続されている。接続部30は筒状部材であり、内部を冷媒液11が通過可能となっている。接続部30は、一端側に冷却槽10が接続され、他端側に貯液槽20が接続されている。本実施形態の接続部30は、冷却槽10の上面を貫通するように設けられている。
【0023】
貯液槽20の内部は、下方で接続部30を介して冷却槽10に連通している。貯液槽20の内部は大気開口部21を介して大気に開放していることから、貯液槽20の内部および冷却槽10の内部は大気圧に維持される。つまり、本実施形態の冷却装置1は大気開放式となっている。
【0024】
接続部30のうち冷却槽10側には、冷却槽側開口部31が形成されている。本実施形態では、接続部30の重力方向下端部に冷却槽側開口部31が設けられており、冷却槽側開口部31は重力方向下方に向かって開口している。
【0025】
冷却槽10内の冷媒液11の液面は、通常は冷却槽側開口部31よりも上方に位置しており、気体部12の体積増大時に冷却槽側開口部31まで下降し得る。このため、冷却槽側開口部31は、重力方向において、冷却槽10内の冷媒液11の液面より下側または同じ高さに位置している。つまり、冷却槽側開口部31の重力方向高さH2が冷媒液11の液面高さH1よりも低い位置あるいは同じ位置になっている。
【0026】
貯液槽20の内部は、接続部30を介して冷却槽10の内部と連通している。このため、冷媒液11は、接続部30を介して冷却槽10と貯液槽20との間を流動可能となっている。冷媒液11は、気体部12の体積変動に応じて、冷却槽10と貯液槽20との間を流動する。
【0027】
冷却槽10と貯液槽20との間を冷媒液11が流動することで、冷却槽10の冷媒液11の体積と貯液槽20の冷媒液11の体積は連動して変動する。具体的には、冷却槽10の冷媒液11の体積が減少すると、貯液槽20の冷媒液11の体積が増大し、冷却槽10の冷媒液11の体積が増大すると、貯液槽20の冷媒液11の体積が減少する。
【0028】
本実施形態では、冷却槽10と貯液槽20が接触しておらず、冷却槽10と貯液槽20の間に隙間が形成されている。冷却槽10と貯液槽20の間に形成された隙間からなる空気層は、断熱部40を構成している。断熱部40は、冷却槽10と貯液槽20の間における熱の移動を抑制する。
【0029】
冷却槽10には、冷却槽10内の冷媒液11を循環させる循環回路50が接続されている。循環回路50には、循環ポンプ51と熱交換器52が設けられている。
【0030】
循環ポンプ51は、冷媒液11を圧送して循環回路50に循環させる。熱交換器52は、冷媒液11の熱を放熱して冷却する。熱交換器52としては、例えば冷媒液11を外気と熱交換して冷却するラジエータ、あるいは冷媒液11を冷凍サイクルの低温冷媒と熱交換して冷却するチラー等を用いることができる。熱交換器52で冷媒液11を冷却することで、冷媒液11の温度上昇を抑制することができ、サブクール状態を維持することができる。
【0031】
循環回路50は、循環回路入口部53および循環回路出口部54で冷却槽10と接続されている。循環回路入口部53を介して冷却槽10の冷媒液11が循環回路50に流入する。循環回路出口部54を介して循環回路50を循環した冷媒液11が冷却槽10に流出する。
【0032】
冷却槽10の内部では、循環回路出口部54から循環回路入口部53に向かう冷媒液11の流れが形成される。図1に示す例では、冷却槽10の左側に循環回路出口部54が設けられ、冷却槽10の右側に循環回路入口部53が設けられている。このため、冷却槽10の内部で左側から右側に向かう冷媒液11の流れが形成される。
【0033】
電子機器2の発熱で冷媒液11が沸騰して発生した気相冷媒は、気泡となって冷媒液11の流れ方向下流側に移動しながら冷却槽10の内部を上昇する。上述した接続部30の冷却槽側開口部31は、気相冷媒が流入しにくい位置に設けられている。具体的には、冷却槽側開口部31は、冷却槽10における冷媒液11の流れ方向上流側に設けられている。つまり、冷却槽側開口部31は、冷媒液11の流れ方向において、循環回路入口部53よりも循環回路出口部54に近い側に設けられている。
【0034】
次に、上記構成を備える本実施形態の冷却装置1の作動について説明する。
【0035】
冷却槽10の内部では、電子機器2の発熱によって電子機器2の近傍の冷媒液11が沸騰し、気相冷媒が発生する。気相冷媒は気泡となって冷却槽10の内部を上昇し、気体部12を形成する。冷媒液11の温度上昇によって冷媒液11から放出された溶存ガスも、気相冷媒とともに気体部12を形成する。冷媒液11が気化した気相冷媒や冷媒液11から放出された溶存ガスは、冷却槽10の内部に貯留される。
【0036】
沸騰で生成した気相冷媒は、気泡として冷媒液11の中を上昇する。冷却槽10の冷媒液11はサブクール液であるため、気相冷媒からなる気泡は冷媒液11の内部を上昇する際に冷媒液11で冷却され、気相冷媒は凝縮する。この結果、気相冷媒からなる気泡は冷媒液11の内部を上昇する途中で縮小し、冷媒液11のサブクール度が大きい場合には気泡は消滅する。
【0037】
冷却槽10の冷媒液11は、循環回路50を介して熱交換器52に供給され、熱交換器52で冷却される。熱交換器52による冷却で、冷媒液11は積極的にサブクール状態を維持することができる。
【0038】
電子機器2の近傍で冷媒液11が沸騰して発生した気相冷媒は、冷媒液11の流れ方向下流側に移動しながら上昇する。接続部30の冷却槽側開口部31は、冷却槽10における冷媒液11の流れ方向上流側に設けられているので、気相冷媒は冷却槽側開口部31に流入することなく、冷却槽10の内部で気体部12を形成することができる。
【0039】
冷却槽10の内部では、冷媒液11の気化や冷媒液11からの溶存ガスの放出によって気体部12の体積が増大する。気体部12の体積増大に伴って、冷却槽10の内部における冷媒液11の体積が減少する。冷却槽10での冷媒液11の体積減少に伴って、冷却槽10から貯液槽20に冷媒液11が流動し、貯液槽20の内部で冷媒液11の体積が増大する。
【0040】
冷却槽10では、電子機器2の発熱量低下や熱交換器52の冷却能力を増大させること等によって、冷媒液11の温度が低下する。冷媒液11の温度低下によって、気体部12に含まれる気相冷媒は凝縮が促進され、気体部12に含まれる溶存ガスは冷媒液11への溶解が促進される。
【0041】
冷却槽10の内部では、気体部12に含まれる気相冷媒の凝縮や気体部12に含まれる溶存ガスの冷媒液11への溶存によって、気体部12の体積が減少し、冷媒液11の体積が増大する。冷媒液11の体積増大に伴って、貯液槽20から冷却槽10に冷媒液11が流動し、貯液槽20の内部で冷媒液11の体積が減少する。
【0042】
以上説明した本実施形態では、接続部30の冷却槽側開口部31は、重力方向において、冷却槽10の冷媒液11の液面の下側または同じ高さに位置している。さらに、冷却槽10内で発生した気体は冷却槽10内の上部で貯留されて気体部12を形成し、気体部12の体積変動に応じて、接続部30を介して冷却槽10と貯液槽20との間を冷媒液11が流動するようになっている。これにより、気相冷媒が接続部30を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に流出することを抑制できる。この結果、冷却装置1において、長期間使用しても冷却槽10の冷媒液11が減少することを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、大気に連通する大気開口部21を有する大気開放式の冷却装置1を用いている。これにより、冷媒液11を封入するための耐圧容器を用いることなく、冷却槽10の冷媒液11が減少することを抑制できる。このため、冷却装置1を小型化することができる。
【0044】
また、本実施形態の冷却装置1では、電子機器2の発熱によって冷媒液11が沸騰する沸騰冷却を行っている。沸騰冷却では、電子機器2を効率的に冷却することが可能であるが、一方で気相冷媒の発生量が多くなり、気相冷媒が外部に流出しやすい。本実施形態によれば、冷媒液11を沸騰させる沸騰冷却を行う冷却装置1においても、冷媒液11の減少を効果的に抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、冷却槽10の冷媒液11はサブクール液であり、サブクール沸騰が行われる。このため、電子機器2の発熱で冷媒液11が沸騰して発生した気相冷媒は、サブクール液からなる冷媒液11で冷却され凝縮する。これにより、気相冷媒が循環回路50を介して循環ポンプ51や熱交換器52に流れることを抑制でき、循環ポンプ51や熱交換器52の性能を維持することでき、安定的に用いることができる。
【0046】
また、本実施形態では、冷却槽10の冷媒液11を循環回路50で循環させ、冷媒液11を熱交換器52で冷却している。これにより、冷媒液11の温度上昇を抑制することができ、気相冷媒をサブクール状態の冷媒液11で効果的に冷却することができる。この結果、気体部12の体積が増大することを抑制でき、冷却槽10における冷媒液11の液面下降と貯液槽20における冷媒液11の液面上昇を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、接続部30の冷却槽側開口部31を冷却槽10の冷媒流れ方向上流側に設けている。気相冷媒からなる気泡は、冷媒液11の流れ方向下流側に移動しながら上昇するため、冷却槽側開口部31から遠ざかりながら上昇する。このため、気相冷媒が冷却槽10の冷媒流れ方向上流側に設けられた冷却槽側開口部31に流入することを抑制できる。これにより、冷却槽10の内部で発生した気相冷媒が冷却槽側開口部31を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に流出することを抑制でき、冷媒液11の減少を抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、冷却槽10および貯液槽20の間に断熱部40を設けている。これにより、冷却槽10から貯液槽20への伝熱を抑制でき、貯液槽20で冷媒液11が蒸発して外部に流出することを抑制できる。
【0049】
また、本実施形態では、冷却槽10、貯液槽20および接続部30を樹脂材料によって構成している。これにより、冷却槽10等の小型軽量化を図ることができ、冷却槽10等の製造コストを低減でき、冷却槽10等の形状の自由度を大きくすることができる。さらに、冷却槽10、貯液槽20および接続部30を樹脂材料によって構成することで、冷却槽10から貯液槽20への伝熱を抑制でき、貯液槽20で冷媒液11が蒸発して外部に流出することを抑制できる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図2に示すように、本第2実施形態の電子機器2には配線2aが接続されている。配線2aは、電源や電気信号の伝送路として機能する。配線2aは、冷却槽10から接続部30および貯液槽20に延びるように設けられている。配線2aは、貯液槽20の大気開口部21から外部に取り出されている。
【0052】
以上のように、本第2実施形態では、大気に開放した大気開口部21を利用して電子機器2の配線2aを外部に取り出している。このため、冷媒液11の外部流出を防ぐためのシール構造を設けることなく、電子機器2の配線2aを外部に取り出すことができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
図3に示すように、本第3実施形態では、接続部30の冷却槽側開口部31が電子機器2よりも重力方向の上側に位置している。つまり、接続部30の冷却槽側開口部31の重力方向高さH2が電子機器2の重力方向高さH3よりも高くなっている。電子機器2の重力方向高さH3は、電子機器2の上端部の高さである。
【0055】
以上の本第3実施形態によれば、気体部12の体積が増大しても、冷媒液11の液面は接続部30の冷却槽側開口部31までしか下降しない。このため、冷媒液11の液面は、常に電子機器2よりも高い位置に維持される。これにより、電子機器2が冷媒液11から露出することなく、常に電子機器2を冷媒液11に浸漬させることができ、冷却装置1の冷却能力を維持することができる。また、気体部12が冷却槽側開口部31まで到達した場合は、気体部12の余分な気体が冷却槽側開口部31を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に放出される。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
図4に示すように、本第4実施形態の冷却槽10には、伝熱部13が設けられている。伝熱部13は、冷却槽10の内部で冷媒液11と気体部12に跨るように配置されており、冷媒液11と気体部12との間の伝熱を促進する。伝熱部13は、冷却槽10の上面における内壁側に固定されている。図4に示す例では、3つの伝熱部13が設けられているが、伝熱部13の数は任意に設定でき、1つ以上設けられていればよい。
【0058】
伝熱部13として、熱伝達率に優れた材料を用いている。伝熱部13として、例えばアルミニウムや銅からなる金属板を用いることができる。
【0059】
以上の本第4実施形態によれば、気体部12は伝熱部13を介して冷媒液11によって冷却される。これにより、気体部12に含まれる気相冷媒の凝縮を促進することができ、気体部12の体積が増大することを抑制できる。この結果、冷却槽10における冷媒液11の液面が下降することを抑制でき、貯液槽20における冷媒液11の液面が上昇することを抑制できる。
【0060】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0061】
図5に示すように、本第5実施形態では、冷却槽10の内部において、板状の電子機器2が水平に配置されている。つまり、冷却槽10の内部において、板状の電子機器2の板面が重力方向に交わるように配置されている。
【0062】
本第5実施形態の構成においても、冷却槽10と貯液槽20と接続部30で接続し、接続部30の冷却槽側開口部31の重力方向高さH2が冷却槽10の冷媒液11の液面高さH1よりも低くなっている。これにより、上記第1実施形態と同様、気相冷媒が接続部30を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に流出することを抑制できる。
【0063】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図6に示すように、本第6実施形態では、貯液槽20が冷却槽10の側面に対向して設けられている。本第6実施形態の接続部30は冷却槽10の側面を貫通するように設けられており、冷却槽側開口部31は水平方向に開口している。貯液槽20の冷媒液11の液面は、冷却槽10の冷媒液11の液面よりも高くなっている。冷却槽10の側面と貯液槽20の間には隙間が設けられており、この隙間が断熱部40となっている。
【0065】
本第6実施形態の構成においても、冷却槽10と貯液槽20と接続部30で接続し、接続部30の冷却槽側開口部31の重力方向高さH2が冷却槽10の冷媒液11の液面高さH1よりも低くなっている。これにより、上記第1実施形態と同様、気相冷媒が接続部30を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に流出することを抑制できる。
【0066】
また、本第6実施形態では、接続部30の冷却槽側開口部31は水平方向に開口しており、冷却槽側開口部31が重力方向下方に向かって開口している場合よりも、気相冷媒からなる気泡が冷却槽側開口部31に流入しにくくなっている。これにより、冷却槽10の内部で発生した気相冷媒が冷却槽側開口部31を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に流出することを抑制でき、冷媒液11の減少を抑制できる。
【0067】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0068】
例えば、上記各実施形態では、冷却槽10で電子機器2を冷媒液11に浸漬して冷却するように構成したが、電子機器2以外の発熱体を冷媒液11に浸漬して冷却するようにしてもよい。冷却対象となる発熱体は、発熱し、かつ、冷媒液11に浸漬して冷却可能な物体であればよい。
【0069】
また、上記各実施形態の構成において、貯液槽20における冷媒液11の上面に蒸発防止剤を設けてもよい。貯液槽20における冷媒液11の上面は、大気との接触面である。蒸発防止剤は、冷媒液11の蒸発を抑制できればよく、例えば貯液槽20における冷媒液11の上面を覆う油膜用オイルや、貯液槽20における冷媒液11の上面を覆う粒子などを用いることができる。
【0070】
また、上記第4実施形態では、冷媒液11と気体部12との間の伝熱を促進する伝熱部13を設けたが、伝熱部13を異なる構成としてもよい。例えば、伝熱部13を大気と気体部12に跨るように設け、伝熱部13によって大気と気体部12との間の伝熱を促進して、気体部12を冷却するようにしてもよい。この場合、伝熱部13を冷却槽10の外部に露出させ、伝熱部13を冷却槽10の外部と内部に跨るように設ければよい。
【0071】
また、接続部30の冷却槽側開口部31を上記第1~第5実施形態では重力方向下方に開口させ、上記第6実施形態では水平方向に開口させるようにしたが、冷却槽側開口部31を重力方向上方に向かって開口させてもよい。これにより、気相冷媒からなる気泡が冷却槽側開口部31に流入しにくくなり、気相冷媒が冷却槽側開口部31を介して貯液槽20の大気開口部21から外部に流出することを抑制でき、冷媒液11の減少を抑制できる。
【0072】
また、上記各実施形態では、冷却槽10と貯液槽20との間に隙間を設けることで、空気層からなる断熱部40を構成したが、冷却槽10と貯液槽20との間に断熱部材を設けることで、断熱部40を構成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
2 電子機器(発熱体)
2a 配線
10 冷却槽
11 冷媒液
12 気体部
13 伝熱部
20 貯液槽
21 大気開口部
30 接続部
31 冷却槽側開口部
50 循環回路
52 熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6