(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】把持装置および把持装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20241022BHJP
B25J 15/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
B25J15/04 C
(21)【出願番号】P 2021039107
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】多田 匠吾
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳也
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171018(JP,A)
【文献】特開2013-018076(JP,A)
【文献】特開2013-223905(JP,A)
【文献】特開2015-000471(JP,A)
【文献】特開2016-030320(JP,A)
【文献】特開2018-099739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0344447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00-19/02
B24B 9/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転中心線について回転自在に支持され、各々前記回転中心線と垂直な方向に放射状に延伸する互いに対をなす複数の第1の把持爪及び第2の把持爪を有する第1の把持部及び第2の把持部と、
前記第2の把持部の回転角を所定の回転角に仮固定する仮固定手段と、
前記対をなす前記第1の把持爪及び前記第2の把持爪とが対向した状態で前記第1の把持部及び前記第2の把持部とを吸着させる吸着手段と、
前記吸着させた状態で、前記第1の把持部の前記回転中心線についての回転角を制御する回転角制御手段と、
前記仮固定した状態で、前記第1の把持部と前記第2の把持部とを所定の間隔に離間する把持部間隔制御手段と、
を有することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記仮固定手段が、
ボールプランジャと前記ボールプランジャに嵌合する穴とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記仮固定手段が、
第1の磁石と前記第1の磁石に吸着する第2の磁石を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1の磁石と前記第2の磁石の少なくとも一方が電磁石であり、
前記電磁石の磁力を制御する磁力制御手段を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の把持装置。
【請求項5】
前記吸着手段が
前記第1の把持部に固定された第3の磁石と、
前記第2の把持部に固定され、前記第3の磁石との間に引力を発生する第4の磁石を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記第3の磁石と前記第4の磁石の少なくとも一方が第2の電磁石であり、
前記第2の電磁石の磁力を制御する第2の磁力制御手段を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の把持装置。
【請求項7】
所定の回転中心線について回転自在に支持され、各々前記回転中心線と垂直な方向に放射状に延伸する互いに対をなす複数の第1の把持爪及び第2の把持爪を有する第1の把持部及び第2の把持部と、前記第2の把持部の回転角を所定の回転角に仮固定する仮固定手段と、前記対をなす前記第1の把持爪及び前記第2の把持爪とが対向した状態で前記第1の把持部及び前記第2の把持部とを吸着させる吸着手段と、前記吸着させた状態で、前記第1の把持部の前記回転中心線についての回転角を制御する回転角制御手段と、前記仮固定した状態で、前記第1の把持部と前記第2の把持部とを所定の間隔に離間する把持部間隔制御手段とを有する把持装置で、
前記吸着手段で前記対をなす前記第1の把持爪及び前記第2の把持爪とが対向した状態で前記第1の把持部及び前記第2の把持部とを前記吸着させ、
前記吸着した状態で、前記回転角制御手段で前記第1の把持部の回転角を制御し、前記第2の把持部の回転角を前記仮固定して把持に使用する前記第1の把持爪と前記第2の把持爪との前記対を選択する、
ことを特徴とする把持装置の制御方法。
【請求項8】
前記把持に使用する前記第1の把持爪と前記第2の把持爪との前記対を選択した状態で、
前記第1の把持部と前記第2の把持部との間隔を制御して把持対象物を前記把持する
ことを特徴とする請求項7に記載の把持装置の制御方法。
【請求項9】
前記把持対象物を前記把持した状態で、前記回転角制御手段を用いて前記第1の把持部の回転角を制御する
ことを特徴とする請求項8に記載の把持装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置および把持装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の生産現場では、ワークを把持するための、把持装置を持つ産業用ロボットが多用されている。昨今、生産現場では、少品種多量生産から多品種少量生産、さらには変種変量生産への移行が進んでいる。これに伴い、把持装置には、様々な姿勢でワークをピックアップし、異なる姿勢でプレイス(載置)することが求められるようになってきている。
【0003】
上記のように、様々な姿勢のワークのピックアップやプレイスに対応する把持装置の技術が、例えば特許文献1に開示されている。この把持装置は、スライド軸に沿って間隔が変化するようにスライドする一対の支持部と、スライド軸と平行なスプラインシャフトと、スプラインシャフトを軸心まわりに回転させる回転用サーボモータとを有する。また、支持部の先端部に取り付けられ、スプラインシャフトの回転に従動してスライド軸と平行な回転軸まわりに回転自在に設けられる回転部と、回転軸と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに取り付けられる複数の把持爪とを備えている。具体的には、複数のプーリとベルトとの組み合わせによって、把持爪の回転を、スプラインシャフトの回転に従動させている。この従動により、把持爪の角度を変更できるので、異なるワークの姿勢のピックアップ、プレイスに対応することができる。また、複数の把持爪を切り替えて、ワークに適した把持爪を選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、把持爪の回転を、プーリとベルトを用いた従動で行っている。このため、部品点数が多く、構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、複数の把持爪の中から所望の把持爪を選択できる把持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の把持装置は、所定の回転中心線について回転自在に支持され、各々前記回転中心線と垂直な方向に放射状に延伸する互いに対をなす複数の第1の把持爪及び第2の把持爪を有する第1の把持部及び第2の把持部と、前記第2の把持部の回転角を所定の回転角に仮固定する仮固定手段と、前記対をなす前記第1の把持爪及び前記第2の把持爪とが対向した状態で前記第1の把持部及び前記第2の把持部とを吸着させる吸着手段と、前記吸着させた状態で、前記第1の把持部の前記回転中心線についての回転角を制御する回転角制御手段と、前記仮固定した状態で、前記第1の把持部と前記第2の把持部とを所定の間隔に離間する把持部間隔制御手段とを有する。
【0008】
また、本発明の把持装置の制御方法は、所定の回転中心線について回転自在に支持され、各々前記回転中心線と垂直な方向に放射状に延伸する互いに対をなす複数の第1の把持爪及び第2の把持爪を有する第1の把持部及び第2の把持部と、前記第2の把持部の回転角を所定の回転角に仮固定する仮固定手段と、前記対をなす前記第1の把持爪及び前記第2の把持爪とが対向した状態で前記第1の把持部及び前記第2の把持部とを吸着させる吸着手段と、前記吸着させた状態で、前記第1の把持部の前記回転中心線についての回転角を制御する回転角制御手段と、前記仮固定した状態で、前記第1の把持部と前記第2の把持部とを所定の間隔に離間する把持部間隔制御手段とを有する把持装置で、前記吸着手段で前記対をなす前記第1の把持爪及び前記第2の把持爪とが対向した状態で前記第1の把持部及び前記第2の把持部とを前記吸着させ、前記吸着した状態で、前記回転角制御手段で前記第1の把持部の回転角を制御し、前記第2の把持部の回転角を前記仮固定して把持に使用する前記第1の把持爪と前記第2の把持爪との前記対を選択する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、簡素な構成で、複数の把持爪の中から所望の把持爪を選択できる把持装置を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態の把持装置の構成を示す側面模式図である。
【
図2】第1の実施形態の把持装置の第1の動作状態を示す側面模式図である。
【
図3】第1の実施形態の把持装置の第2の動作状態を示す側面模式図である。
【
図4】第1の実施形態の把持装置の第3の動作状態を示す側面模式図である。
【
図5】第1の実施形態の把持装置の第4の動作状態を示す側面模式図である。
【
図6】第2の実施形態の把持装置の構成を示す斜視図である。
【
図7】第2の実施形態の把持装置の第2の把持部と第2の把持部支持機構との関係を示す分解図である。
【
図8】第2の実施形態の第2の把持部の仮固定手段の一例を示す断面図である。
【
図9】第2の実施形態の第2の把持部の仮固定手段の別の一例を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態の第2の把持部の構成の一例を示す平面図である。
【
図11】第3の実施形態の把持装置の第1の動作状態を示す斜視図である。
【
図12】第3の実施形態の把持装置の第2の動作状態を示す斜視図である。
【
図13】第3の実施形態の把持装置の第3の動作状態を示す斜視図である。
【
図14】第3の実施形態の把持装置の第4の動作状態を示す斜視図である。
【
図15】第3の実施形態の把持装置の第5の動作状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の把持装置10の構成を示す模式図である。把持装置10は、第1の把持部1と、第2の把持部2と、吸着手段3と、回転角制御手段4と、仮固定手段5と、把持部間隔制御手段6とを有する。
【0013】
第1の把持部1は、回転中心線7について回転自在に支持された第1の基部1aと、第1の基部1aから放射状に延伸する複数の第1の把持爪1b、1cを有する。
【0014】
第2の把持部2は、回転中心線7について回転自在に支持された第2の基部2aと、第2の基部2aから放射状に延伸し第1の把持爪1b、1cの対となる複数の第2の把持爪2b、2cを有する。
【0015】
吸着手段3は、対となる第1の把持爪1bと第2の把持爪2b、第1の把持爪1cと第2の把持爪2cとが対向した状態で第1の把持部1と第2の把持部2とを吸着させる。
【0016】
回転角制御手段4は、第1の把持部1と第2の把持部2とが吸着した状態で、第1の把持爪1b、1cと第2の把持爪2b、2cの向きを制御するために、第1の把持部1の回転中心線7についての回転角を制御する。
【0017】
仮固定手段5は、第2の把持部の回転角を複数の所定値のいずれかに仮固定する。
【0018】
把持部間隔制御手段6は、把持対象物を把持するために、第2の把持部2の回転角を複数の所定値のいずれか一つに仮固定した状態で、第1の把持部1と第2の把持部2との間隔を制御する。
【0019】
なお、図示はしていないが、把持装置10は制御部を有し、回転角制御手段4、把持部間隔制御手段6の動作は、この制御部によって制御される。制御部は、例えば、プロセッサやメモリを有するコンピュータとすることができる。また、
図1の例では、把持爪の対を2つとしているが、3つ以上であっても良い。
【0020】
上記の構成により、回転制御を第1の把持部1について行うだけで、対となる複数の第1の把持爪と第2の把持爪の対の中から把持に使用する対を選択することができる。以下に、その方法について説明する。
【0021】
図2は、複数の把持爪の中から、第1の把持爪1bと、第2の把持爪2bを選択する構成を示す側面図である。この状態を作るためには、まず、把持部間隔制御手段6を用いて、第1の把持部1と第2の把持部2とを接触させる。次に回転角制御手段4を用いて、第1の把持部1を回転させて、対となる第1の把持爪1bを第2の把持爪2bと同じ方向に向ける。この動作によって、他の対である第1の把持爪1cと第2の把持爪2cも同じ方向を向く。つまり、複数の把持爪の対のそれぞれの向きが揃う。吸着手段3は、この状態で、第1の把持部1と第2の把持部2とを吸着させる。
【0022】
そして、回転角制御手段4を制御し、第1の把持爪1bと第2の把持爪2bを、把持対象物(ワーク)を把持する向きに向ける。そしてこの向きで、仮固定手段5により、第2の保持部の回転角を仮固定する。
図2の例では、図面の下方であるとしている。以上の動作により、把持装置10は
図2の状態に制御される。
【0023】
次に、把持部間隔制御手段6を用いて、第1の把持部1と第2の把持部2との間隔を広げて、第1の把持爪1bと第2の把持爪2bを把持対象のワークの外側に配置させた後、間隔を狭めることで、ワークを把持することができる。
図3は、このようにして、第1の把持爪1bと第2の把持爪2bで、ワークA91を把持した状態を示す側面図である。この状態から、回転角制御手段4によって第1の把持部1を回転させる。すると、第1の把持爪1bとワークA91、および第2の把持爪2bとワークA91との間に働く摩擦力によって、ワークA91と第2の把持爪2bは、第1の把持部1の回転に追従して回転する。その結果、2つの把持部を連結する軸を持たず、かつ、一方の把持部の回転角を制御する機構だけを持つ構成でも、把持したワークの姿勢を制御することができる。なお、ここでは、仮固定する力の大きさを、回転角制御を行う力より小さく、また第2の把持爪2bとワークA91との間に働く摩擦力より小さくしている。すなわち、仮固定力<回転角制御力、仮固定力<摩擦力としている。仮固定力が摩擦力より大きいと、第1の把持爪の回転に第2の把持爪の回転が追従しないため、ワークA91が落下する。したがって、この場合は、ワークA91の姿勢を変えることができない。ただし、この場合も把持自体は可能である。
【0024】
上記した、第1の把持部1の回転角の制御を用いて、別の把持爪を選択することもできる。
図4は、ワークを把持する把持爪として、第1の把持爪1cと第2の把持爪2cを選択した状態を示す側面図である。
図2の、第1の把持部1と第2の把持部2とを吸着させ、第1の把持爪1b、第2の把持爪2bを選択した状態から、回転角制御手段4を用いて、第1の把持部2と第2の把持部5を同時に180°回転させることで、
図4の状態を作ることができる。ここでは、第1の把持爪1cと第2の把持爪2cは、第1の把持爪1bと第2の把持爪1bの対よりも、小さなワークの把持に適しているものとする。
【0025】
図5は、ワークA91よりも小さいワークB92を、第1の把持爪1cと第2の把持爪2cの対で把持している状態を示す側面図である。このようにワークB92に適した第1の把持爪1cと第2の把持爪2cを選択して把持を行うことができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の把持装置10によれば、2つの把持部に共通する回転軸を持たず、かつ2つの把持部の一方のみの回転を制御する簡素な構成で、複数の把持爪の対の中から、使いたい把持爪の対を選択することができる。また、把持した後のワークの姿勢を任意に制御することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態の把持装置の具体的な構成例と動作例について説明する。
【0028】
図6は、本実施形態の把持装置1000の一例を示す斜視図である。把持装置1000は、ベース100と、第1の把持部200と、第1の把持部支持機構300と、回転制御部400と、第2の把持部500と、第2の把持部支持機構600と、スライド機構700とを有している。第1の把持部200と第1の把持部支持機構300は、第1実施形態の把持部1の一例であり、第2の把持部500と第2の把持部支持機構600は第2の把持部2の一例である。また、回転制御部400は回転角制御手段4の一例であり、スライド機構700は把持部間隔制御手段7の一例である。
【0029】
ベース100は、把持装置1000の土台となる。
【0030】
第1の把持部200は、基部210から放射状に延伸する複数の第1の把持爪a220a、第1の把持爪b220bを有する。
【0031】
第1の把持部支持機構300はベース100に対して、第1の把持部200を支持する。
図6には示されていないが、第1の把持部支持機構300は、その主面に垂直な方向を向く第1の回転軸を有し、この第1の回転軸について、第1の把持部200の基部210を回転自在に支持する。
【0032】
回転制御部400は、上記の第1の回転軸について、第1の把持部支持機構300に対する第1の把持部200の回転角を制御する。回転制御部には、例えば、サーボモータやステッピングモータを用いることができる。
【0033】
第2の把持部500は、基部510と、基部510から放射状に延伸する複数の第2の把持爪a520a、第2の把持爪b520bを有する。第2の把持爪a520a、第2の把持爪b520bは、それぞれが、第1の把持爪a220a、第1の把持爪b220bの対となる。なお、
図6の例では、把持爪の対の数を2つとしているが、3つ以上であっても良い。
【0034】
第2の把持部支持機構600は、ベース100に対して、第2の把持部500を支持する。第2の把持部支持機構600は、第1の回転軸と回転中心が一致する第2の回転軸について、第2の把持部500を回転自在に支持する。
【0035】
スライド機構700は、第2の把持部支持機構600を保持するスライダ710を有し、スライダ710をスライドさせることにより、第1の把持部200と第2の把持部500との間隔を制御する。なお、
図6では、第2の把持部支持機構600だけがスライドする例を示しているが、第1の把持部支持機構300を同様な構成によってスライドする構成とすることも可能である。スライド機構700としては、例えばリニアモータやボールねじなどを用いることができる。
【0036】
なお、図示はしていないが、把持装置1000は制御部を有し、回転制御部400、スライド機構700の動作は、この制御部によって制御される。制御部は、例えば、プロセッサやメモリを有するコンピュータとすることができる。
【0037】
第1の把持爪a220aの、第2の把持爪a520aと対向する側には、磁石230が配置され、第2の把持爪a520aの磁石230に対応する位置には磁石530が配置されている。磁石230と磁石530は互いに引き合い接触すれば吸着する関係にある。磁石230と磁石530には、例えば永久磁石を用いることができるが、どちらか一方、あるいは両方を電磁石として、例えば制御部の制御によって電気的に吸引力を制御しても良い。磁石230と磁石530は、第1の実施形態の吸着手段3の一例である。なお、ここでは、吸着手段3が磁石の例について説明するが、吸着手段3は、面ファスナや、真空吸引機構であっても良い。
【0038】
また、
図6には示されていないが、第2の把持部支持機構600は、所定の複数の回転角で、第2の把持部500を仮固定する仮固定機構を有する。この仮固定機構は、第1の実施形態の仮固定手段5の一例である。この機構により、第2の把持部500の回転角を、所定の複数の回転角に仮固定することができる。
図6の例では、第2の把持爪a520aがベースと逆方向を向く位置で、仮固定されている。また第2の把持爪a520aの対となる第1の把持爪a220aも同じ方向を向くように、回転制御部400によって制御されている。
【0039】
図7は、第2の把持部500と第2の把持部支持機構600の組み合わせの一例を示す分解図である。第2の把持部500は、基部510から放射状に延伸する第2の把持爪520aと第2の把持爪520b、位置決め部540a、540b、軸穴550を有している。第2の把持爪520aには、磁石530が配置されている。第2の把持爪520aは例えば小さいワーク用、第2の把持爪520bは大きいワーク用であり、第2の把持爪520aと第2の把持爪520bとは逆向きに配置されている。第2の把持部支持機構600は、軸受620と仮固定機構630とを有し、軸受620には第2の回転軸610が嵌入されている。
図7では、軸受620の内側と、軸穴550に第2の回転軸610が挿通される構成を例示している。しかしながら、第2の回転軸610が第2の把持部500の基部510と一体に形成されている構成としても良い。
【0040】
図7に示すように、仮固定機構630を位置決め部540aに位置合わせして仮固定すると、第2の把持爪520aが図の下を向いた方向に仮固定される。また、第2の把持部500の上下を反転させて、仮固定機構630を位置決め部540bに位置合わせすると、第2の把持爪520bが下を向いた方向に仮固定される。
【0041】
なお、仮固定とは、所定の力で第2の把持部500が第2の把持部支持機構600に固定され、この所定の力以上の力が加わるとその固定が解除されることを指すものとする。
【0042】
次に、具体例を用いて、第2の把持部500を第2の把持部支持機構600に仮固定する仮固定機構について説明する。
図8は、第2の把持部500と第2の把持部支持機構600の結合部を示す断面図である。第2の把持部支持機構600が、軸受620を用いて、第2の把持部500を、第2の回転軸610について、回転自在となるように支持している。そして、第2の把持部500の回転角を仮固定する仮固定手段として、第2の把持部支持機構600がボールプランジャ631を備え、第2の把持部500が、ボールプランジャ631のボールが嵌合する位置決め穴541a、541bを備えている。ボールプランジャ631のボールが位置決め穴541aに嵌合している時は、第2の把持爪a520aが外側を向く方向(把持爪として選択された方向)に第2の把持部が仮固定される。また、ボールプランジャ631のボールが位置決め穴541bに嵌合している時は、第2の把持爪b520bが外側を向く方向(把持爪として選択された方向)に第2の把持部が仮固定される。
【0043】
なお、
図8では、第2の回転軸610が棒状の部材で、第2の把持部500と第2の把持部支持機構600を貫通する構成を示しているが、第2の回転軸610は、第2の把持部500の基部510と一体に形成されていても良い。
【0044】
第2の把持爪a520aの、図示しない第1の把持部200側には磁石530が配置されている。スライド機構700と回転制御部400とを用いて、第1の把持爪220aに設けられた磁石230と、磁石530とを接触させ、互いに吸着させることができる。両者の吸着力は、ボールプランジャ631が第2の把持部500を仮固定する力より強く設定されている。このため、磁石230と磁石530を吸着させて、回転制御部400で、第1の把持部200を回転させると、仮固定が解除され、第2の把持部500が第1の把持部200に連動して回転する。つまり、第1の把持部200の回転角を制御することで、第2の把持部500の回転角を制御し、仮固定位置を切り替え、用いる把持爪の対を選択することができる。そして、所望の把持爪を選択した状態で、第1の把持部2と第2の把持部51の間隔を制御することで、ワークを把持することができる。またワークを把持した状態では、ワークと第2の把持爪との間に働く摩擦力によって、第1の把持爪と第2の把持爪の回転が連動するので、第1の把持部2の回転を制御することで、把持したワークの姿勢を制御することができる。
【0045】
図9は、
図8とは別の仮固定手段の具体例を示す断面図である。この例では、仮固定手段として、第2の把持部支持機構600が磁石632を備え、第2の把持部500は、位置決め部として、磁石542a、磁石542bを備えている。磁石632を磁石542aに吸着させることにより、第2の把持爪520aを外側に向けて仮固定することができる。また、磁石632を磁石542bに吸着させることにより、第2の把持爪520bを外側に向けて仮固定することができる。磁石632と磁石542aの吸着力、磁石632と磁石542bの吸着力は、第1の把持部200と第2の把持部500とを吸着させる磁石530と磁石230の吸着力よりも小さく設定している。このため、
図8の例と同様に、第1の把持部200の回転角を制御することで、第2の把持部500の回転角を制御し、仮固定位置を切り替え、用いる把持爪の対を選択することができる。また、
図8の例と同様に、選択した把持爪の対を用いてワークを把持し、把持したワークの姿勢を制御することができる。なお、磁石632と磁石542a、542bには、例えば永久磁石を用いることができるが、どちらか一方、あるいは両方を電磁石として、例えば制御部の制御によって電気的に吸引力を制御しても良い。
【0046】
以上の説明は、第1の把持部200と第2の把持部500が、それぞれ2つの把持爪を有する例を用いて行ったが、把持爪の数は3つ以上であっても良い。
【0047】
図10は、第2の把持部500が、3つの把持爪を備えた構成の一例を示す平面図である。第2の把持部500は、基部510から放射状に延伸する第2の把持爪521a、521b、521cと、位置決め部543a、543b、543cと、軸穴553とを有している。第2の把持爪521aには、磁石533が配置されている。
【0048】
第2の把持爪521a、521b、521cは、例えば、それぞれ大きいワーク用、小さいワーク用、それらの中間のワーク用である。第2の把持爪521a、521b、521cは、360°を3等分するように配置されている。仮固定機構630に位置決め部543aを仮固定することで、ワークを把持する把持爪として、第2の把持爪521aが選択される。同様に、仮固定機構630に位置決め部543bを仮固定することで、第2の把持爪521bが選択され、仮固定機構630に位置決め部543cを仮固定することで、第2の把持爪521cが選択される。なお説明は省略したが、対となる第1の把持爪も同様な形状を有している。また
図10では、把持爪が3つの例について説明したが、4つ以上であっても良い。また把持爪の形状は、上記に説明した例に限られるものではなく、把持対象に適した任意の形状とすることができる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態の把持装置によれば、簡素な構成で、複数の把持爪の中から所望の把持爪を選択し、選択した把持爪の回転角を仮固定した状態でワークを把持することができる。また、把持したワークの回転角を任意に制御することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、把持装置1000の具体的な動作例について説明する。
図11は、把持装置1000の動作状態の第1の例を示す斜視図である。第1の把持爪a220aと第2の把持爪a520aを選択して、ワーク2000を把持した状態を示している。第2の把持爪a520aの回転角を仮固定し、スライダ710を把持部間隔が狭まる方向に制御することで、ワーク2000が把持されている。
【0051】
図12は、把持装置1000の動作状態の第2の例を示す斜視図である。
図11の状態から回転制御部400を制御して、第1の把持爪a220aを回転させている。この時、第2の把持爪a520aとの摩擦力によって、ワーク2000と第2の把持爪a520aも、第1の把持爪a220aと一緒に回転する。この動作により、ワーク2000の姿勢を制御することができる。なお、回転制御部400が回転駆動する力は、仮固定手段が第2の把持部支持機構600を仮固定する力よりも大きく設定されている。このため回転制御部400の回転制御により、第2の把持爪a520aの仮固定が解除されている。
【0052】
図13は、把持装置1000の動作状態の第3の例を示す斜視図である。第1の把持部200と第2の把持部500とが接触し、第1の把持爪a220aと第2の把持爪a520aとが選択されている。この状態では、
図13には図示されていない、磁石230と磁石530の吸着によって、第1の把持部200と第2の把持部500が互いに吸着された状態となっている。なお、第1の把持部200と第2の把持部500の回転角が違う時には磁石230と磁石530との間には吸着力が発生しない。しかし、回転制御部400によって第1の把持部200を回転させて、磁石230と磁石530の位置を合わせることにより両者を吸着させ、次いで、回転角を制御することで、
図13の状態を作ることができる。
【0053】
図14は、把持装置1000の動作状態の第4の例を示す斜視図である。第1の把持部200と第2の把持部500とが接触し、第1の把持爪b220bと第2の把持爪b520bとが選択されている。第2の把持部500は、第2の把持部支持機構600に仮固定されている。
図13の状態から、回転制御部400によって、第1の把持部200の向きを反転させている。この時、第2の把持部500は第1の把持部200に吸着されているので、第2の把持部500も第1の把持部200に連動して回転し、
図14の状態とすることができる。
【0054】
図15は、把持装置1000の動作状態の第5の例を示す斜視図である。第1の把持爪b220bと第2の把持爪b520bを選択して、ワーク2100を把持した状態を示している。第1の把持爪b220bと第2の把持爪b520bは、ワーク2000より大きなワーク2100を把持するのに適した形状を有している。
図14の状態から
図15の状態に至るには、磁石230と磁石530との吸着力に抗って、第1の把持部200と第2の把持部500とを離間させる必要がある。このため、スライド機構700のスライダ710をスライドさせる力は、磁石230と磁石530との吸着力よりも大きくなるように設計されている。また、第1の把持爪b220bと第2の把持爪b520bは、離間の際に破壊されない機械強度を有するようにしている。第1の把持爪b220bと第2の把持爪b520bを離間させた後、ワーク2100を挟むことで、ワーク2100が把持され、
図15の状態を作ることができる。また図示はしていないが、
図12の例と同様に、
図15の状態からワーク2100の姿勢を変えることも可能である。
【0055】
なお、以上の説明では第1の把持部200と第2の把持部500が、それぞれ2つの把持爪を有する場合を例にして説明を行ったが、把持爪の数はこれに限られることはなく3つ以上であっても良い。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、簡素な構成で、複数の把持爪の対の中から所望の把持爪の対を選択し、把持したワークの姿勢を制御できる把持装置を構成することができる。
【0057】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、200 第1の把持部
2、500 第2の把持部
3 吸着手段
4 回転角制御手段
5 仮固定手段
6 把持部間隔制御手段
7 回転中心線
10、1000 把持装置
100 ベース
300 第1の把持部支持機構
400 回転制御部
600 第2の把持部支持機構
700 スライド機構
710 スライダ