(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】水処理装置、及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 65/10 20060101AFI20241022BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20241022BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20241022BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20241022BHJP
C12Q 1/06 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
B01D65/10
C02F1/44 A
C12Q1/04
C12Q1/686 Z
C12Q1/06
(21)【出願番号】P 2021054161
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】松井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩之
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/047926(WO,A1)
【文献】特開平08-252440(JP,A)
【文献】特開2000-046721(JP,A)
【文献】特開2009-000673(JP,A)
【文献】特開2010-054335(JP,A)
【文献】特開2015-134327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0220940(US,A1)
【文献】特開2005-262048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C12Q 1/04
C12Q 1/686
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、測定部と、制御部とを備え、
前記測定部は、
前記フィルタでろ過された処理水に含まれるウイルスの遺伝子核酸をPCR法によって増幅し、
増幅した核酸と蛍光核酸プローブとのハイブリタイゼーションを実行して発光を検出することによって、前記フィルタでろ過された処理水に含まれるウイルスの種類を検出し、
前記制御部は、前記フィルタでろ過された処理水に含まれる
ウイルスに関する測定結果に基づいて前記フィルタの健全性を評価し、評価結果に関する情報を出力する
、
水処理装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記フィルタでろ過された処理水に含まれるウイルスの量又は濃度を最確数法に基づいて検出する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記フィルタのろ過性能に基づいて定められる所定値以上の粒径の
ウイルスが前記処理水に含まれる場合、前記フィルタに関するアラームを出力する、請求項1
又は2に記載の
水処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理水に含まれる
ウイルスとして特定の種類の
ウイルスが検出された場合、前記フィルタに関するアラームを出力する、請求項1
から3までのいずれか一項に記載の
水処理装置。
【請求項5】
互いに並列に接続される複数の前記フィルタと、
前記測定部が前記互いに並列に接続される各フィルタの二次側が合流する配管から前記複数のフィルタでろ過された処理水をまとめて採取可能に構成されるバルブと
を更に備える、請求項
1から4までのいずれか一項に記載の
水処理装置。
【請求項6】
測定部が、フィルタでろ過された処理水に含まれるウイルスの遺伝子核酸をPCR法によって増幅することと、
前記測定部が、増幅した核酸と蛍光核酸プローブとのハイブリタイゼーションを実行して発光を検出することによって、前記フィルタでろ過された処理水に含まれるウイルスの種類を検出することと、
制御部が、前記フィルタでろ過された処理水に含まれる
ウイルスに関する測定結果に基づいて前記フィルタの健全性を評価
し、評価結果に関する情報を出力することと
を含む
水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ評価装置、浄化装置、及びフィルタ評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄化装置に含まれるフィルタの不具合の有無をPDT(Pressure Decay Test)によって判定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PDTを実行するために浄化装置を停止する必要がある。浄化装置の停止は、浄化装置の稼働率を低下させるなど、浄化装置の利便性を低下させる。浄化装置の利便性の向上が求められる。
【0005】
本開示は、浄化装置の利便性を向上できるフィルタ評価装置、浄化装置、及びフィルタ評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係るフィルタ評価装置は、フィルタでろ過された処理水に含まれる微生物の測定結果に基づいて前記フィルタの健全性を評価し、評価結果に関する情報を出力する制御部を備える。このようにすることで、浄化装置を稼働させたままでフィルタの健全性が評価され得る。その結果、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【0007】
一実施形態において、前記制御部は、前記フィルタのろ過性能に基づいて定められる所定値以上の粒径の微生物が前記処理水に含まれる場合、前記フィルタに関するアラームを出力してよい。このようにすることで、フィルタの交換等のメンテナンスの必要性が明確になる。その結果、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【0008】
一実施形態において、前記制御部は、前記処理水に含まれる微生物として特定の種類の微生物が検出された場合、前記フィルタに関するアラームを出力してよい。このようにすることで、フィルタの交換等のメンテナンスの必要性が明確になる。その結果、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【0009】
幾つかの実施形態に係る浄化装置は、前記フィルタ評価装置と、前記フィルタと、前記フィルタでろ過された水に含まれる微生物を測定して測定結果を前記フィルタ評価装置に出力する測定部とを備える。このようにすることで、浄化装置を稼働させたままでフィルタの健全性が評価され得る。その結果、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【0010】
一実施形態において、前記浄化装置は、互いに並列に接続される複数の前記フィルタと、前記複数のフィルタの二次側で合流する配管に位置する、前記複数のフィルタでろ過された処理水をまとめて採取するポートとを更に備えてよい。このようにすることで、フィルタの健全性の評価に費やす時間又はコスト等が低減され得る。その結果、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【0011】
幾つかの実施形態に係るフィルタ評価方法は、フィルタでろ過された処理水に含まれる微生物の測定結果に基づいて前記フィルタの健全性を評価することと、評価結果に関する情報を出力することとを含む。このようにすることで、浄化装置を稼働させたままでフィルタの健全性が評価され得る。その結果、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るフィルタ評価装置、浄化装置、及びフィルタ評価方法によれば、フィルタを有する浄化装置の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】PDTの対象となるフィルタの膜の構造の断面模式図である。
【
図3】一実施形態に係る浄化装置の構成例を示す模式図である。
【
図4】並列に接続されている複数のフィルタからまとめてサンプルを採取する構成例を示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係るフィルタ評価方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る実施形態が図面を参照して説明される。
【0015】
(比較例)
比較例として、PDT(Pressure Decay Test)によってフィルタの健全性を評価する手法が説明される。
【0016】
比較例に係る膜ろ過システムは、36系列のフィルタユニットを有する。各系列のフィルタユニットにおいて、フィルタ膜の破断、シール材の剥離、又は、フィルタユニットを構成する機械若しくは材料の不具合によって生じる機密性劣化に伴う膜ろ過水の水質不良が生じているかがPDTによる検査結果に基づいて監視される。
【0017】
比較例に係る膜ろ過システムの運転は、フィルタユニット毎に、ろ過、逆洗及びCEB(Chemically Enhanced Backwash)を含む運転シーケンスによって連続的に制御される。逆洗は、ろ過水を用いたフィルタユニットの洗浄を意味する。CEBは、薬品を用いたフィルタユニットの洗浄を意味する。
【0018】
図1としてPDTの実施概念図が示される。PDTによる検査対象のフィルタ90は、供給側(一次側)からろ過対象の水を受け入れ、透過側(二次側)へろ過した水を送り出すように構成されている。フィルタ90が水をろ過する場合、一次側のバルブ91と、二次側のバルブ92とが開かれる。
【0019】
PDTの実行時において、一次側のバルブ92が閉じられる。そして、圧力空気の配管が接続されているバルブ93が開かれる。これによって、フィルタ90の一次側を加圧するように圧力空気が注入される。フィルタ90の一次側が空気で加圧された状態において、所定時間にわたって圧力の変動が監視される。フィルタ90のろ過膜、及び、フィルタ90を含むモジュール内の機械部材に破断又は破損が存在する場合、一次側に注入された圧力空気は、二次側に漏洩する。圧力空気が漏洩した場合、一次側の圧力の減少又は二次側の圧力の上昇が検出される。一次側又は二次側の圧力の変化を検出することによって、フィルタ90の不具合が検出され得る。また、二次側に漏洩した空気は、二次側の水中で気泡になる。二次側の配管が透明配管94を含む場合、空気の漏洩が気泡95として目視で観察され得る。フィルタ90の二次側を加圧するように圧力空気が注入されてもよい。この場合、フィルタ90の一次側で漏洩を観察することによって、フィルタ90の不具合が検出され得る。
【0020】
フィルタの一次側を加圧して圧力の変動を監視するために、膜ろ過システムの運転を停止する必要がある。膜ろ過システムの停止は、膜ろ過システムの稼働率を低下させるとともに、運転の停止及び再開等の制御を複雑化させる。膜ろ過システムを稼働させたままで、フィルタの不具合の検出等を含む、フィルタの健全性の評価を実行することが求められる。
【0021】
また、Membrane Filtration Guidance Manual (EPA 815-R-06-009) (EPA(Environmental Protection Agency), 2005)によれば、PDTによって検査できる理論的な膜破断径は3μmである。3μm径に該当する水中微生物はクリプトスポリジウムである。そうしてみると、PDTによる検査で異常ではないと判定されるフィルタでろ過できる微生物は、クリプトスポリジウム又はクリプトスポリジウムより大きい微生物である。逆に言えば、PDTによる検査で異常ではないと判定されたフィルタは、3μm未満の径の微生物、例えば、大腸菌等の細菌又はウイルスをろ過できない。つまり、PDTによるフィルタの検査は、3μm未満の径の微生物の除去性能を担保できない。
【0022】
PDTによる検査の理論が以下の式4.1に基づいて説明される。以下の式4.1によって、PDTによってフィルタの一次側に生じる気泡の加圧圧力Ptestと、フィルタに設けられている孔の形状係数κと、空気と液体との間で発生する表面張力σと、液体と膜との間で発生する摩擦角θと、フィルタの二次側で発生する背圧BPmaxと、および膜の破断径3μmの単位換算係数との間の関係が特定される。単位換算係数は、式4.1において0.193という数値で表されている。
【数1】
【0023】
なお、式4.1は、以下の式B.1を原型とするBubble Point Theoryを応用したものである。Bubble Point Theoryは、水の粘性と表面張力により気泡を保持できる圧力理論である。Bubble Point Theoryにおいて、気泡を保持できる圧力Pbpは、表面張力σに比例し、孔径dcapに反比例する。
図2にPDTの対象となるフィルタ90の膜の構造の断面模式図が示される。フィルタ90の膜は、孔96を有する。孔96の径は、
図2においてdで表される。フィルタの膜の詳細は、上述した文献EPA 815-R-06-009のAppendix Bにおいて説明されている。膜に破断97が生じている場合、膜に設けられている孔96及び膜に発生した破断97で保持できる圧力は、以下の式B.1で表される。式B.1の各パラメータを単位換算するとともに、3μm径の気泡に対応する係数を適用することによって、式B.1が式4.1に変換される。
【数2】
【0024】
上述した、ろ過、逆洗及びCEBの各運転シーケンスの間に、フィルタの健全性を評価するためにPDTの実行シーケンスが組み込まれる。PDTが実行される場合、膜ろ過システムの各運転シーケンスが停止される。つまり、PDTの実行によって、膜ろ過システムの稼働率が低下する。また、PDTの実行シーケンスを組み込むための運転シーケンスの制御が複雑になる。また、PDTを実行するための専用設備の追加が必要になる。
【0025】
以上述べてきたように、比較例に係る膜ろ過システムにおいて、フィルタの健全性を評価するためにPDTを実行することによって、稼働率の低下、制御の複雑化、及び設備の追加等の影響がシステムに及ぼされる。これに対して、後述する、本開示の一実施形態に係るフィルタ評価装置30及びフィルタ評価方法によれば、フィルタ10を備える浄化装置1(
図3参照)を稼働したままでフィルタ10の健全性が評価される。このようにすることで、フィルタ10の健全性の評価の実行が稼働率、及び、運転シーケンスの制御に影響を及ぼしにくい。また、フィルタ10の健全性を評価するために専用設備が必要とされない。その結果、浄化装置1の利便性が向上する。
【0026】
また、比較例に係る膜ろ過システムにおいて、PDTの実施によって膜ろ過の物理的機能の健全性を把握したとしても、クリプトスポリジウムの他に3μm以上の粒径の微生物がろ過した水に存在しないこと、又は、クリプトスポリジウムの除去率が99.99%(4log10)であることを確認するにとどまっている。つまり、PDTは、ろ過膜の機械的かつ物理的な性状を把握する手法に過ぎず、水中の病原微生物の制御に対して極めて限定的にしか貢献しない。これに対して、後述する、本開示の一実施形態に係るフィルタ評価装置30及びフィルタ評価方法は、膜ろ過システムのろ過水の急性毒性に関連し、ろ過水に含有するウイルス、細菌又は原虫等の微生物において、人体にとって病原体となりうる微生物由来の遺伝子に着目し、ろ過した水のサンプリングを実施する。サンプリングによって、病原微生物の有無の確認、及び、病原微生物の定量的な測定が実行される。病原微生物の測定によって、膜ろ過システムによる病原微生物の阻止性能が把握される。また、膜ろ過システムの現状の性能及びろ過水の品質を把握することによって、膜ろ過システムが本来発揮すべき性能と比較される。そして、現状の性能に基づいて、膜ろ過システムが制御され得る。
【0027】
以下、本開示の一実施形態に係る浄化装置1、フィルタ評価装置30、及びフィルタ評価方法が説明される。
【0028】
(浄化装置1の構成例)
本開示の一実施形態に係る浄化装置1は、浄水場、下水処理場、水再生施設、又は海水淡水化施設等の水処理インフラで採用されてよい。水処理インフラに適用される、精密ろ過膜(Microfiltration:MF膜)、限外ろ過膜(Ultrafiltration:UF膜)、ナノろ過膜(Nanofiltration:NF膜)、逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane Filtration:RO膜)等の膜による処理の水質を担保する必要がある。水質を担保するため、水中微生物のうち毒性の高いクリプトスポリジウム及び他原虫の阻止性の観点から、膜処理の機能を把握する必要がある。
【0029】
図3に示されるように、本開示の一実施形態に係る浄化装置1は、フィルタ10と、フィルタ10でろ過された水に含まれる微生物を測定する測定部20と、制御部32とを備える。
【0030】
<フィルタ10>
フィルタ10は、水をろ過する膜を含む。フィルタ10の膜は、有機膜素材又は無機膜素材等を含んで構成されてよい。有機膜素材は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、4フッ化エチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)等を含んでよい。無機膜素材は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等を用いたセラミック膜を含んでよい。無機膜素材は、ステンレス(SUS)又はガラス(SPG)製の膜を含んでよい。
【0031】
フィルタ10において水をろ過するために膜がモジュールとして構成される。モジュールは、有機膜素材を用いた中空糸を含んで構成されてよい。モジュールは、平膜スパイラル形状で構成されてよい。モジュールは、水を加圧して通過させる加圧方式に適用可能に構成されてよい。モジュールは、水槽において水に浸漬される浸漬型ろ過方式に適用可能に構成されてよい。モジュールは、無機膜素材を用いたモノリス又は平膜形状等で構成されてもよい。
【0032】
<制御部32>
制御部32は、各構成部を制御する。また、制御部32は、浄化装置1の各構成部から情報を取得したり各構成部に情報を出力したりする。制御部32は、後述するように、フィルタ10の健全性を評価する。制御部32は、フィルタ評価装置30の一部とみなされ得る。フィルタ評価装置30は、浄化装置1に含まれてもよいし、浄化装置1と別体として構成されてもよい。制御部32は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。制御部32は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。制御部32は、記憶部を備えてもよい。記憶部は、制御部32の動作に用いられる各種情報、又は、制御部32の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、制御部32のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、制御部32に含まれてもよいし、制御部32と別体として構成されてもよい。
【0033】
浄化装置1は、ろ過モードで動作する。ろ過モードにおいて、浄化装置1は、貯水タンク11等に貯えられている被処理水をフィルタ10でろ過し、ろ過した処理水を貯水タンク15等に送り込む。浄化装置1は、貯水タンク11等に貯えられている被処理水をフィルタ10の一次側に送り込むろ過ポンプ12と、フィルタ10の一次側とろ過ポンプ12との間に接続されているバルブ13と、フィルタ10の二次側に接続されているバルブ14とを更に備える。被処理水は、バルブ13が開いている状態でろ過ポンプ12によってフィルタ10の一次側に送り込まれ、フィルタ10でろ過されて処理水になる。処理水は、バルブ14が開いている状態でフィルタ10の二次側から貯水タンク15等に向けて送り出される。つまり、ろ過モードにおいて、浄化装置1の制御部32は、バルブ13及び14を開き、ろ過ポンプ12を駆動する。
【0034】
浄化装置1は、逆洗モードで動作してよい。逆洗モードにおいて、浄化装置1は、フィルタ10の二次側に洗浄水を送り込み、洗浄水を二次側から一次側に流すことによって、フィルタ10を逆洗浄する。例えば貯水タンク15等に貯えられている処理水が洗浄水として用いられてよい。また、フィルタ10を逆洗浄した水は、廃液として廃液タンク56に送り出される。浄化装置1は、貯水タンク15に貯えられている処理水等の洗浄水をフィルタ10の二次側に送り込む逆洗ポンプ51と、フィルタ10の二次側と逆洗ポンプ51との間に接続されているバルブ52と、を更に備える。浄化装置1は、フィルタ10の一次側と廃液タンク56との間に接続されているバルブ55を更に備える。洗浄水は、バルブ52が開いている状態、かつ、バルブ14が閉じている状態で、逆洗ポンプ51によってフィルタ10の二次側に送り込まれる。フィルタ10の二次側に送り込まれた洗浄水は、一次側に流れることによってフィルタ10を逆洗浄し、廃液になる。フィルタ10を逆洗浄して生じた廃液は、バルブ55が開いている状態、かつ、バルブ13が閉じている状態で廃液タンク56に流れ込む。つまり、逆洗モードにおいて、浄化装置1の制御部32は、バルブ13及び14を閉じ、バルブ52及び55を開き、逆洗ポンプ51を駆動する。
【0035】
逆洗モードにおいて、浄化装置1は、フィルタ10の二次側に送り込む洗浄水に薬品を添加してよい。浄化装置1は、バルブ53と薬液54とを更に備える。薬液54は、洗浄水が流れる逆洗ポンプ51とバルブ52とを接続する配管に、バルブ53を介して接続される。浄化装置1は、逆洗モードにおいて、バルブ53が開いている状態にして、洗浄水に薬品を添加してよい。つまり、逆洗モードにおいて、浄化装置1の制御部32は、バルブ53を開いてよい。
【0036】
<測定部20>
浄化装置1は、ろ過モードにおいて、処理水の一部をサンプリングして、サンプルに含まれる微生物を測定する。具体的に、浄化装置1は、処理水が送り出される配管に接続されるバルブ21を更に備える。測定部20は、バルブ21を介して処理水の一部をサンプリングする。測定部20は、バルブ21の開閉を制御することによってサンプリングを制御してよい。測定部20は、採取したサンプルに含まれる微生物を検出し、検出した微生物の種類、又は、微生物の濃度若しくは量等を測定する。
【0037】
<<サンプリング>>
測定部20は、例えば以下の手順で処理水の一部をサンプリングしてよい。
【0038】
測定部20は、処理水の水質が悪化した場合に、処理水の一部をサンプルとして採取してよい。具体的に、測定部20は、処理水の水質指標値を監視し、水質指標値が条件を満たした場合に、処理水の一部をサンプルとして採取してよい。測定部20は、処理水の水質指標値として、電気伝導率(EC)、フローサイト粒子、濁度、色度、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、全有機炭素(TOC)、溶存酸素量(DO)、浮遊物質(SS)、クロロフィル濃度、全窒素(T-N)、全リン(T-P)、有機性汚濁物質濃度、アデノシン三リン酸(ATP)等を監視してよい。このようにすることで、サンプルに含まれる微生物が多くなる可能性が高くなる。その結果、サンプルに含まれる微生物の検出効率が向上し得る。
【0039】
測定部20は、処理水の一部をサンプリングする際に、採取する処理水の流量及び流速を制御しながら連続して処理水を採取してよい。このようにすることで、長期間にわたって処理水がサンプリングされ得る。
【0040】
測定部20は、採取したサンプルを冷却して、サンプルの温度を所定温度に制御して保管する設備を備えていてもよい。測定部20は、サンプルを採取する配管を冷却する設備を備えていてもよい。このようにすることで、サンプルに含まれる微生物の検出精度が向上し得る。
【0041】
測定部20は、処理水の一部を採取する際に、希釈のための水の添加等によって、処理水を採取する配管の流量を所定量以上に制御してよい。このようにすることで、配管が詰まりにくくなる。
【0042】
測定部20は、上述した方法に限られず、種々の方法でサンプルを採取してよい。
【0043】
<<微生物の検出>>
測定部20は、サンプルに含まれる微生物を検出する。測定部20は、微生物として、ウイルス、細菌又は原虫等を検出してよい。測定部20は、サンプルに含まれる微生物の大きさを測定してよい。測定部20は、例えば、サンプルに含まれる微生物の画像を取得し、微生物の大きさを測定してもよい。
【0044】
測定部20は、サンプルに含まれる微生物の種類を測定してよい。測定部20は、例えば、サンプルに含まれる微生物の遺伝子核酸をPCR(Polymerase Chain Reaction)法によって増幅し、増幅した核酸と蛍光核酸プローブとの再形成(ハイブリタイゼーション)を実行し、発光を検出することによって、微生物の種類を検出してよい。
【0045】
測定部20は、サンプルに含まれる微生物の量又は濃度を測定してよい。測定部20は、例えば、最確数法(MPN法)に基づいて、微生物の量又は濃度を検出してよい。
【0046】
測定部20は、微生物に関する測定結果を制御部32に出力する。
【0047】
<フィルタ評価>
制御部32は、測定部20から取得した、サンプルとして採取した処理水の一部に含まれる微生物に関する測定結果に基づいて、フィルタ10の健全性を評価する。フィルタ10の健全性は、フィルタ10のろ過性能を含む。フィルタ10の健全性は、フィルタ10の膜に破断等の損傷が生じることによって低下する。制御部32は、所定の種類の微生物がサンプルから検出された場合、フィルタ10の膜に損傷が生じたと判定してよい。制御部32は、所定の大きさよりも大きい微生物がサンプルから検出された場合、フィルタ10の膜に損傷が生じたと判定してよい。制御部32は、サンプルに含まれる微生物の量が所定量以上である場合に、フィルタ10の膜に損傷が生じたと判定してもよい。制御部32は、サンプルに含まれる微生物の濃度が所定濃度以上である場合に、フィルタ10の膜に損傷が生じたと判定してもよい。
【0048】
浄化装置1が1つのフィルタ10を備える場合、測定部20は、その1つのフィルタ10の二次側からサンプルを採取する。制御部32は、測定部20によるサンプルの測定結果に基づいて、その1つのフィルタ10の健全性を評価できる。
【0049】
浄化装置1が複数のフィルタ10を備える場合であって、フィルタ10が並列に接続されている場合、測定部20は、各フィルタ10の二次側の配管からサンプルを採取してもよい。各フィルタ10のサンプルが採取された場合、制御部32は、各フィルタ10の健全性を評価できる。
【0050】
測定部20は、並列に接続されている複数のフィルタ10の二次側で合流した配管から複数のフィルタ10をまとめたサンプルを採取してもよい。例えば
図4に示されるように、3つのフィルタ10が互いに並列に接続されてよい。つまり、浄化装置1は、互いに並列に接続されている複数のフィルタ10を備えてよい。フィルタ10の数は、3つに限られず、2つであってもよいし4つ以上であってもよい。浄化装置1は、ろ過モードにおいて貯水タンク11に貯えられている被処理水をろ過ポンプ12によって並列に接続されているフィルタ10に送り込み、フィルタ10でろ過された処理水を貯水タンク15に送り込む。測定部20は、バルブ21を介して処理水の一部をサンプリングする。
図4の例において、バルブ21は、互いに並列に接続されている各フィルタ10の二次側が合流する配管から複数のフィルタ10でろ過された処理水をまとめて測定部20が採取可能に構成される。つまり、測定部20は、バルブ21を介して複数のフィルタ10でろ過された処理水をまとめて採取できる。並列に接続されている複数のフィルタ10をまとめたサンプルが採取された場合、制御部32は、並列に接続されている複数のフィルタ10全体としての健全性を評価できる。仮に、並列に接続されている複数のフィルタ10全体としての健全性が低下した場合、制御部32は、複数のフィルタ10のうち少なくとも1つのフィルタ10の健全性が低下していると判定できる。このように並列に接続されている複数のフィルタ10をまとめたサンプルに基づいて複数のフィルタ10全体としての健全性を評価することによって、フィルタ10の評価に費やす時間又はコスト等が低減され得る。その結果、フィルタ10を有する浄化装置1の利便性が向上する。
【0051】
浄化装置1が複数のフィルタ10を備える場合であって、フィルタ10が直列に接続されている場合、測定部20は、各フィルタ10の二次側からサンプルを採取してよい。制御部32は、各フィルタ10の二次側から採取したサンプルの測定結果に基づいて、各フィルタ10の健全性を評価できる。フィルタ10が直列に接続されている場合において、フィルタ10は逆浸透膜を含んでよい。
【0052】
制御部32は、フィルタ10の健全性が低下していると判定した場合、浄化装置1のろ過モードでの動作を停止してよい。
【0053】
制御部32は、フィルタ10の健全性に関する評価結果を出力してよい。制御部32は、フィルタ10の健全性が低下していると判定した場合、アラームを出力してよい。制御部32は、アラームとして、フィルタ10の交換のタイミングを知らせる情報を出力してよい。制御部32は、アラームとして、ろ過モードでの動作を停止する必要があることを知らせる情報を出力してもよい。このようにすることで、フィルタ10の交換等のメンテナンスの必要性が明確になる。その結果、浄化装置1の利便性が向上する。
【0054】
制御部32は、アラーム条件が満たされた場合に、フィルタ10の健全性が低下していると判定し、アラームを出力してもよい。アラーム条件は、例えば、測定部20の測定結果において、検出された微生物の粒径が所定値以上であることを含んでよい。所定値は、フィルタ10のろ過性能に基づいて定められ得る。所定値は、例えばフィルタ10のろ過膜の孔径と同じ値、又は、孔径より小さい値に設定されてよい。アラーム条件は、例えば、測定部20の測定結果において、検出された微生物の種類が特定の種類であることを含んでもよい。アラーム条件は、検出された微生物の濃度が所定濃度以上であることを含んでもよい。アラーム条件は、これらに限られず、種々の項目を含んで構成されてよい。
【0055】
<フィルタ評価方法の手順例>
本開示の一実施形態に係るフィルタ評価方法は、
図5に例示されるフローチャートの手順として実行されてよい。浄化装置1の制御部32がフィルタ評価方法を実行してよい。また、制御部32は、フィルタ評価装置30の制御部32として、フィルタ評価方法を実行してよい。フィルタ評価方法は、制御部32を構成するプロセッサに実行させるフィルタ評価プログラムとして実現されてもよい。フィルタ評価プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0056】
制御部32は、浄化装置1をろ過モードで動作させる(ステップS1)。制御部32は、測定部20から微生物に関する測定結果を取得する(ステップS2)。制御部32は、測定結果がフィルタ10のアラーム条件を満たしたか判定する(ステップS3)。制御部32は、測定結果がアラーム条件を満たさない場合(ステップS3:NO)、ステップS2の手順に戻って測定結果を取得してよい。制御部32は、測定結果がアラーム条件を満たす場合(ステップ3:YES)、アラームを出力してよい(ステップS4)。制御部32は、ステップS4の手順の実行後、
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0057】
<小括>
以上述べてきたように、本実施形態に係るフィルタ評価装置30及びフィルタ評価方法によれば、処理水に含まれる微生物の測定結果に基づいて、フィルタ10の健全性が評価される。そして、微生物の測定は、浄化装置1がろ過モードで動作しながら実行される。このようにすることで、浄化装置1の稼働率が向上し得る。その結果、浄化装置1の利便性が向上する。
【0058】
フィルタ10の健全性が評価されることによって、MF膜及びUF膜を用いたろ過システムのろ過水質の管理の観点において、水質及びろ過システムの水中微生物にかかわる除去性能が把握される。また、ろ過水の病原リスクが把握される。また、PDTを実施することなく、MF膜及びUF膜を用いたろ過システムのろ過水質を把握することができる。したがって、ろ過システムがPDTのためにろ過を停止する必要がない。このようにすることで、稼働率の向上、PDTを実施しないことによる運転シーケンスの簡素化、及び、PDTに必要な装置の省略等が実現される。本実施形態に係る浄化装置1は、PDTを実施可能に構成されてもよい。本実施形態に係るフィルタ評価方法に加えてPDTが実施されることによって、フィルタ10の健全性がより一層確実に担保され得る。その結果、より一層ロバストな水質管理が実現され得る。
【0059】
(他の実施形態)
本実施形態に係る浄化装置1の制御部32又はフィルタ評価装置30の制御部32は、測定部20からサンプルに含まれる微生物の測定結果を取得する。サンプルに含まれる微生物の測定は、測定部20で実施されなくてもよい。例えば、サンプルに含まれる微生物の測定は、微生物の培養に基づく手法又は分子生物学的手法で実施されてもよい。
【0060】
制御部32によるフィルタ10の健全性の評価は、例えば、1日に1回以上の頻度で実行されてよい。言い換えれば、サンプルに含まれる微生物の測定は、1日に1回以上の頻度で実行されてよい。本実施形態に係る浄化装置1において、フィルタ10の健全性の評価は、ろ過モードで動作しながら実行され得る。したがって、1日に1回以上の頻度で評価が実行されても、浄化装置1の稼働率が低下しにくい。
【0061】
本開示は、上述した実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した開示の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各ステップに含まれる機能等は、論理的に矛盾しないように再構成可能である。また、複数のステップを1つに組み合わせたり、1つのステップを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 浄化装置
10 フィルタ(13、14:バルブ)
11、15 貯水タンク
12 ろ過ポンプ
20 測定部(21:バルブ)
30 フィルタ評価装置
32 制御部
51 逆洗ポンプ(52、53、55:バルブ、54:薬液、56:廃液タンク)