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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021055784
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152853
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐野 巌根
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 良太
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0655313(KR,B1)
【文献】特開2017-024106(JP,A)
【文献】特開平10-034492(JP,A)
【文献】特開2013-119141(JP,A)
【文献】実公平04-029961(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第109590802(CN,A)
【文献】特開2013-188797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0252604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体を囲み、天井及び側壁を有するカバーと、前記側壁に設けた開口を開閉する扉とを備える工作機械であって、
前記扉の移動方向に延び、前記扉の上部に設け、且つ霧状の冷却液から発生する水滴が前記カバーの外側に流れ落ちることを妨げる第一横板部と、
前記移動方向に直交する上下方向に延び、閉じる扉が移動する方向における前記扉の端面に設けてある第一縦板部とを備え、
前記第一横板部の前記扉の端面側一端は前記第一縦板部よりも前記扉の中央側に間隙を隔てて配置してある
工作機械。
【請求項2】
前記第一縦板部と平行に上下方向に延び、且つ前記第一縦板部から開く扉が移動する方向に間隙を隔てて設けてある第二縦板部を備え、
前記第一横板部が前記第二縦板部と接続した
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第一縦板部の上端の位置は前記第二縦板部の上端の位置よりも低い
請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第二縦板部の上端は前記第一横板部よりも上方に位置する
請求項2又は3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第二縦板部の上端と前記第一横板部の前記一端が接続する
請求項2又は3に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第二縦板部の前記カバー内側の長辺側に取り付けてあり、前記扉を閉じた場合に前記側壁の内側面と前記扉との隙間を覆う部材を備える
請求項2から5の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記側壁の内側面にて前記第一横板部よりも上方に設けてあり、前記扉か閉じているときに一方の端部が前記第一縦板部の近傍に位置するように、前記第一横板部と上下方向に対向して延びる第二横板部を備え、
前記第二横板部の前記一方の端部は上側に湾曲してある
請求項1から6の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記扉にて前記第二横板部よりも上方に設けてあり、前記第一縦板部の近傍まで前記扉の移動方向に延び、前記第一横板部と平行である第三横板部を備え
前記第三横板部の一方の端部が前記第一縦板部の近傍に位置す
請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
前記第一横板部及び前記第三横板部は前記扉に設けてあり、
前記第二横板部は前記側壁の内側面に設けてあり、前記第一横板部及び前記第三横板部の間に介在する
請求項8に記載の工作機械。
【請求項10】
前記扉の下部には、前記間隙を通して流れ落ちる冷却液を前記カバーの内側に案内する傾斜面が形成してある
請求項2から6の何れか一項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、ワーク加工時に発生する熱を冷却し、切削屑を洗い流すために、工具又はワークに冷却液を噴射する。工作機械は、冷却液及び切削屑の飛散防止のために、工作機械本体を囲むカバーを備えるが、カバーの内側面に切削屑が付着するおそれがある。工作機械は、カバーの内側面に付着した切削屑を除去するために、カバーの内側面にも冷却液を噴射する。
【0003】
特許文献1は、使用済みの冷却液を回収し、ろ過処理を行った後、再使用することによって、冷却液の補充の頻度を低減する工作機械を開示している。
特許文献2は、カバーの側壁の開閉扉と、カバーの外側に位置し、開閉扉の開閉に連動して、ワークのカバーの内側への搬入、及びカバーの外側への搬出を行うワーク交換装置とを備え、作業者がカバーの内側に侵入する必要をなくし、作業の安全性を高めた工作機械を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-182176号公報
【文献】特開2015-205385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工具又はワークを冷却する際、冷却液の一部が霧状になってカバー及び開閉扉の内側面に付着する。付着した霧状の冷却液は凝結して液状(液滴)になる。液状になった冷却液は、開閉扉の開閉に伴う振動及び衝撃等により、開閉扉と側壁の間からカバーの外側に流れ出すおそれがある。外側に流れた冷却液は床に落ちて床を汚す。また、冷却液が外側に流れると、再使用できる冷却液の量が減少するので、冷却液の補充の頻度は増え、作業効率が低下する。しかし、特許文献1,2の工作機械はこのような問題について考慮しておらず、解決できない。
【0006】
本開示は、カバー及び開閉扉の内側面に付着して凝結した冷却液がカバーの外側に流れ出すことを防止できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、工作機械本体を囲み、天井及び側壁を有するカバーと、前記側壁に設けた開口を開閉する扉とを備える工作機械であって、前記扉の移動方向に延び、前記扉の上部に設け、且つ霧状の冷却液の移動を妨げる第一横板部と、前記移動方向に直交する上下方向に延び、前記移動方向における前記扉の端面に設けてある第一縦板部とを備え、前記第一横板部の前記移動方向側一端は前記第一縦板部よりも前記扉の内側に配置してある。
【0008】
本発明にあっては、前記第一横板部の前記移動方向側一端が前記第一縦板部よりも前記扉の内側に隔てて配置してある。よって、霧状から凝結した冷却液(液体)が前記第一横板部の上を流れる時、前記第一縦板部を超えて外側に流れ落ちることを防止できる。
【0009】
本発明に係る工作機械は、前記第一縦板部と平行に上下方向に延び、且つ前記第一縦板部から前記移動方向に間隙を隔てて設けてある第二縦板部を備え、前記第一横板部が前記第二縦板部と接続した。
【0010】
本発明にあっては、前記第一縦板部と前記第二縦板部が平行に上下方向に延び、前記扉の移動方向にて前記第二縦板部と前記第一縦板部の間に間隙が介在しており、前記第二縦板部が前記第一横板部の一端と接触している。よって、霧状から凝結した冷却液が前記第一横板部の上を流れる時、前記第二縦板部と前記第一横板部の間から漏れず、前記間隙から下方に落ちる。従って、凝結した冷却液が前記第一縦板部を超えて外側に流れ落ちることを防止できる。
【0011】
本発明に係る工作機械は、前記第一縦板部の上端の位置は前記第二縦板部の上端の位置よりも低い。
【0012】
本発明にあっては、前記第一縦板部の上端の縁の位置が前記第二縦板部の上端の縁の位置よりも低い。よって、前記扉の開閉時に、前記第一横板部よりも上側に設けてある部材の下面にぶら下がっている冷却液の水滴に前記第一縦板部の上端の縁が当たり、冷却液の水滴が前記第一縦板部を超えてカバーの外側に落ちることを未然に防止できる。
【0013】
本発明に係る工作機械は、前記第二縦板部の上端は前記第一横板部よりも上方に位置する。
【0014】
本発明にあっては、前記第二縦板部の上端は前記第一横板部よりも上方に延びるので、前記第一横板部の上を流れる冷却液を前記第二縦板部の上端部がせき止め、前記第一縦板部を超えてカバーの外側に落ちることを未然に防止できる。
【0015】
本発明に係る工作機械は、前記第二縦板部の上端と前記第一横板部の前記一端が接続する。
【0016】
本発明にあっては、前記第二縦板部の上端は前記第一横板部の一端と接し、前記第二縦板部の上端面は前記第一横板部の上面に連続する。よって、霧状から凝結した冷却液が前記第一横板部の上を流れる時、前記第二縦板部と前記第一横板部の間から漏れず、前記間隙から下方に落ちる。従って、凝結した冷却液が前記第一縦板部を超えて外側に流れ落ちることを防止できる。
【0017】
本発明に係る工作機械は、前記第二縦板部の前記カバー内側の長辺側に取り付けてあり、前記扉を閉じた場合に前記側壁の内側面と前記扉との隙間を覆う部材を備える。
【0018】
本発明にあっては、前記第二縦板部の長辺に、前記カバーの内側へ延びた前記部材が、前記扉を閉じた場合に前記側壁の内側面と前記扉との隙間を覆うので、霧状の冷却液がカバーの外側に移動することを未然に防止できる。
【0019】
本発明に係る工作機械は、前記第一横板部よりも上方に設けてあり、前記第一縦板部の近傍まで延びる第二横板部を備え、前記第二横板部の端部は上側に湾曲してある。
【0020】
本発明にあっては、前記第一横板部よりも上方に設けてある前記第二横板部の前記第一縦板部側の端部が上側に湾曲している。よって、前記第二横板部の前記端部の下面に霧状の冷却液が付着したとしても、凝結して液滴になった時は自重により下方、即ち、前記第一縦板部から遠ざかる方向へ流れる。従って、冷却液の水滴が前記第一縦板部を超えてカバーの外側に落ちることを未然に防止できる。
【0021】
本発明に係る工作機械は、前記第二横板部よりも上方に設けてあり、前記第一縦板部の近傍まで延び、前記第一横板部と平行である第三横板部を備える。
【0022】
本発明にあっては、前記第一横板部よりも上側に前記第二横板部が配置してあり、前記第二横板部よりも上側に前記第三横板部が配置しているので、霧状の冷却液がカバーの外側に移動することを抑制できる。
【0023】
本発明に係る工作機械は、前記第一横板部及び前記第三横板部は前記扉に設けてあり、前記第二横板部は前記側壁の内側面に設けてあり、前記第一横板部及び前記第三横板部の間に介在する。
【0024】
本発明にあっては、前記第一横板部及び前記第三横板部を前記扉に設け、前記第二横板部を前記側壁に設けており、前記第二横板部が前記第一横板部及び前記第三横板部の間に介在する。よって、前記第一横板部、前記第二横板部及び前記第三横板部が所謂ラビリンス構造を形成する。従って、霧状の冷却液がカバーの外側に移動することを抑制できる。
【0025】
本発明に係る工作機械は、前記扉の下部には、前記間隙を通して流れ落ちる冷却液を前記カバーの内側に案内する傾斜面が形成してある。
【0026】
本発明にあっては、凝結した冷却液が前記間隙を通して下方に流れ落ちると、前記傾斜面が冷却液を前記カバーの内側に案内するので、凝結した冷却液が前記カバーの外側に流れることを未然に防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、カバー及び開閉扉の内側面に付着して凝結した冷却液がカバーの外側に流れ出すことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1の工作機械を略示する斜視図である。
図2】工作機械本体を略示する斜視図である。
図3】扉ユニットの正面図である。
図4】扉ユニットの正面図である。
図5】扉ユニットの背面図である。
図6図3のVI-VI線による扉ユニットの断面斜視図である。
図7図3のVII-VII線による扉ユニットの上部拡大断面図である。
図8図3のVIII-VIII線による扉ユニットの下部拡大断面図である。
図9】開閉扉の斜視図である。
図10図9の円部分を拡大して示す拡大図である。
図11】実施形態2の工作機械本体において、開閉扉の構成を示す部分的斜視図である。
図12】実施形態3の工作機械本体の扉ユニットの背面側を部分的に拡大表示する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。以下の説明では、図において矢印で示す上下、左右、及び前後を使用する。図1は、実施形態1の工作機械100を略示する斜視図である。工作機械100は、工作機械本体1と、工作機械本体1を囲む本体カバー2と、ワーク交換装置3とを備えている。
【0030】
図2は、工作機械本体1を略示する斜視図である。工作機械本体1は、基台11を備える。基台11の後部上に、上下方向に延びたコラム12が設けてある。コラム12は、前部に主軸ヘッド13を支持している。
【0031】
主軸ヘッド13の下部には、上下方向に延びる主軸(図示略)が、上下方向に平行な軸回りに回転可能に保持してある。主軸ヘッド13の上部には、前記主軸に連結してある主軸モータ14が固定してある。前記主軸の下端部には、工具(図示略)が着脱可能に装着してある。基台11の前部上に、左右方向及び前後方向に移動可能なワーク保持部15が設けてある。
【0032】
主軸ヘッド13の前部には、タレット型の工具マガジン16が設けてある。工具マガジン16の周囲に複数の工具が保持してある。工具マガジン16は、前記主軸に対する工具の取り付け及び取り外しを行う。コラム12の後部には制御装置17が取り付けてある。制御装置17は工作機械本体1の動作を制御する。
【0033】
図1の如く、本体カバー2は、前壁21、後壁22、右壁23(側壁)、左壁24、及び天井25を有し、工作機械本体1の前側、後側、右側、左側、及び上側を囲んでいる。前壁21の中央部に正面扉211が設けてある。前壁21の右部前側には、作業者の操作を受け付ける操作部212、及び画像を表示する表示部213が設けてある。後壁22の後側に、制御装置17は配置してある。
【0034】
制御装置17の下方には、ポンプ装置4が設けてある。ポンプ装置4はタンクを有し、該タンクに貯留してある冷却液を、例えば、右壁23の左面及び左壁24の右面等の本体カバー2の内側面、並びに、主軸ヘッド13に取り付けてある噴射部(図示略)に供給する。前記噴射部は、ワーク又は工具に冷却液を噴射して加工時に発生する熱を冷却し、切削屑を洗い流す。本体カバー2の内側面にも噴射部が設けてある。該噴射部は本体カバー2の内側面に冷却液を噴射し、内側面に付着している切削屑を洗い流す。
【0035】
噴射後の冷却液は工作機械本体1の下部へ流れる。ポンプ装置4は噴射後の冷却液を回収する。ポンプ装置4は、回収した冷却液にろ過処理を施して切削屑を除去してタンクへ送り、再び噴射部へ供給する。
【0036】
右壁23の中央には、例えば矩形の開口部(図示略)が形成してある。右壁23よりも右側には、開閉扉51を有する扉ユニット5が取り付けてある。開閉扉51は、右壁23の厚さ方向と直交する方向(前後方向)に移動する。
【0037】
扉ユニット5よりも右側にワーク交換装置3が配置してある。ワーク交換装置3は、支持台31と、アーム32とを備える。支持台31は上下方向に延びた柱状をなす。支持台31の上端部に、アーム32が取り付けてある。アーム32は左右方向に移動する。アーム32の先端部には、ワークを把持する把持部321が設けてある。ワーク交換装置3は、開閉扉51の開閉に連動して、ワークの本体カバー2内側への搬入、及びワークの本体カバー2外側への搬出を行う。
【0038】
図3及び図4は、扉ユニット5の正面図である。図4では、後述する上カバー54を省略した状態を示す。
【0039】
図5の如く、扉ユニット5は、右壁23の内側面の一部を構成する取り付け板52を備える。取り付け板52は、第一板521及び第二板522を備える。第一板521は、前後方向に長寸の矩形状をなす。第一板521よりも左側に第二板522が設けてある。即ち、第一板521の内側に第二板522が取り付けてある。第二板522は、上下方向に長寸の矩形状をなす。第二板522の前後方向及び上下方向の長さは、第一板521の前後方向及び上下方向の長さよりも短い。
【0040】
取り付け板52は、第一板521及び第二板522を左右方向に貫通する開口部523を有する。開口部523は、上下方向に延びる矩形状であり、第一板521の略中央部に形成してある。開口部523の位置が右壁23の開口部の位置と整合するように、第一板521及び第二板522が例えばねじ止めによって右壁23に取り付けてある。
【0041】
扉ユニット5は開口部523を開閉する開閉扉51を備える。開閉扉51は開口部523を覆うように設けてある。図6に示すように開閉扉51は、左側が開放してある略直方体状をなし、上下方向に延びる。開閉扉51の下面は、左側が右側よりも下方となるように傾斜している。開閉扉51の後面よりも後側には第一縦板部6が取り付けてある。
【0042】
開閉扉51の上部には、開閉扉51を前後方向に移動可能に支持する上ローラ機構53(図4参照)と、上ローラ機構53を覆う上カバー54(図3参照)とが設けてある。
図7は、図3のVII-VII線による扉ユニット5の上部拡大断面図である。上ローラ機構53は、レール531、ローラ532、及びローラ支持板533を含む。レール531は、例えば金属製の細長い長方形の板であり、前後方向に延びる。レール531は第一板521の上部前側に取り付けてある。
【0043】
ローラ支持板533は、上下方向の幅がレール531よりも広い略矩形状の板であり、開閉扉51の上面から上方へ突設してある。ローラ532は、例えば金属製又は樹脂製の円盤であり、ローラ支持板533の左側面の上部に、前後方向に隔てて一つずつ設けてある(図9参照)。各ローラ532の回転軸は左右方向に延び、各ローラ532の外周面には全周に亘って凹部が形成してある。ローラ532は、レール531の上面上を、前後方向に摺動する。
【0044】
各ローラ532の下方に円柱状の当接部534が設けてある。当接部534は、例えば、左右方向を軸方向とする軸体に回動可能に円筒形のブッシュを嵌合して構成する。各当接部534の周面はレール531の下面と当接する。
【0045】
ローラ支持板533の左側面の下部には、前後方向に延びる第一横板部535及び第三横板部537が、上下方向に並んで取り付けてある。第一横板部535及び第三横板部537はローラ支持板533の左側面に突設してある。第三横板部537は第一横板部535よりも上側に設けてある。第二板522には、開口部523近傍に、断面視L字形状の第二横板部536が設けてある。第二横板部536は板材を屈曲してなり、前後方向に延びる。第二横板部536は、第二板522の左側面に取り付けてある一板部と、該一板部の下辺から開口部523を通って右方向に延びた他板部とを有する。前記他板部の端部が第一横板部535及び第三横板部537の間に介在している。第一横板部535、第三横板部537及び前記他板部は平行をなす。これによって、第一横板部535、第三横板部537及び第二横板部536(他板部)は所謂ラビリンス構造を形成する。
【0046】
ワーク若しくは工具、又は本体カバー2の内側面へ冷却液を噴射した場合、熱を奪った冷却液は霧状になる。霧状の冷却液の一部は、開閉扉51の上部近傍で、取り付け板52との間を通って外側へ移動しようとする。しかし、第一横板部535、第三横板部537及び第二横板部536の他板部がラビリンス構造を形成しているので、該ラビリンス構造を通過する際に時間経過と共に凝結し、霧状の冷却液は第一横板部535、第三横板部537及び第二横板部536の他板部に付着する。よって、霧状の冷却液が開閉扉51と取り付け板52との隙間を通って外側へ移動することを阻止できる。
【0047】
図8は、図3のVIII-VIII線による扉ユニット5の下部拡大断面図である。開閉扉51の下側には、下ローラ機構55が設けてある。下ローラ機構55は、下カバー551、レール支持板552、レール553、ローラ支持板554、及び複数のローラ555を備える。下カバー551は、前後方向に延び(図3及び図4参照)、第一板521の下部の開口部523近傍から右方へ斜めに突設した傾斜板部556(傾斜面)と、傾斜板部556の突出端から開閉扉51の下部まで上方へ延びる垂直板部とを有する。傾斜板部556は、左縁部が右縁部よりも下方となるように傾斜している。
【0048】
レール支持板552は、前後方向に延び、互いに垂直をなす2つの板部を有する。レール支持板552は2つの板部のうち一方が下カバー551の前記垂直板部の内側面に固定してあり、他方が前記垂直板部の内側面から垂直に立ち上がり、レール553を支持している。レール553は、前後方向に延び、レール支持板552(前記他方の板部)の下面に取り付けてある。レール553は、レール支持板552の前記他方の板部に取り付けてある取付板部と、該取付板部の長辺縁から垂直に下方へ延びたレール板とを有する。該レール板上をローラ555が摺動する。
【0049】
ローラ支持板554は、前後方向に延び、縦断面視L字形状をなす。ローラ支持板554は、開閉扉51の下端部に取り付けてある第一板部と、該第一板部の下端から右方へ水平に延びる第二板部とを備える。ローラ支持板554の前記第二板部の上方に、レール支持板552及びレール553が配置してある。ローラ支持板554の前記第二板部の上面には、回転軸方向を上下方向にして、複数のローラ555が設けてある。ローラ555は、例えば、ローラ支持板554の前記第二板部の前後方向両端部に、2つずつ左右方向に並んで設けてある。左右方向に並ぶ2つのローラ555の間には、レール553が介在してある。
【0050】
開閉扉51が前後方向に移動して開口部523を開閉する際、ローラ532及びローラ555が夫々レール531及びレール553に沿って移動する。上ローラ機構53は開閉扉51の上下方向への揺れを規制し、下ローラ機構55は開閉扉51の左右方向への揺れを規制する。
【0051】
図9は、開閉扉51の斜視図である。開閉扉51の移動方向における開閉扉51の端面のうち、後面には第一縦板部6が取り付けてある。第一縦板部6は上下方向に延びる細長い長方形の板である。第二縦板部7は第一縦板部6から前側へ間隙9を隔てて設け、且つ上下方向に延びる細長い長方形の板である。第一縦板部6及び第二縦板部7は平行であり、左右方向における第一縦板部6及び第二縦板部7の幅は略等しい。上下方向において、第一縦板部6及び第二縦板部7の中央部には切り欠きが形成してあり、右壁23の掛止部(図示略)と係合して開閉扉51の閉じ状態を維持する被掛止部が形成してある。
【0052】
図10は、図9の円部分を拡大して示す拡大図である。図10では、便宜上、後述する後端部522aを一点鎖線にて示している。第二縦板部7は、第一横板部535の幅より広い幅を有しており、第一横板部535の後端から下方向に延びる。第二縦板部7の上端は第一横板部535の後端と接し、第二縦板部7の上端面は第一横板部535の上面に連続している。第一横板部535の後端は、第一縦板部6よりも開閉扉51の内側、即ち、第一縦板部6よりも前側に配置してある。第三横板部537の後端は第一横板部535の後端から更に後方に延びている。例えば、第三横板部537は後端が第一縦板部6の真上まで延びている。
上述の如く、第二縦板部7から間隙9を隔てて後側に第一縦板部6が第二縦板部7と対向するように配置してある。第一縦板部6の上端の縁が第二縦板部7の上端の縁よりも低くなるよう設けてある。
【0053】
第二縦板部7の両長辺のうち、本体カバー2の内側、即ち左側長辺の縁部には、屈曲形状部材8が取り付けてある。屈曲形状部材8は横断面視フック形状をなしている。即ち、屈曲形状部材8は、板材を屈曲加工してなる。屈曲形状部材8は第二縦板部7の左側長辺の端部から本体カバー2の内側に延び、内側端から後側に屈曲し、該屈曲端部から本体カバー2の外側に端部81が延びる。屈曲形状部材8の端部81は、第二板522のうち後端部522aに隣接して配置してある。屈曲形状部材8の端部81は後端部522aに対して略垂直をなす。このような構成を有するので、開閉扉51を閉じた場合に屈曲形状部材8は第二板522の内側面(後端部522a)と開閉扉51との隙間を覆う。
【0054】
上述の如く、実施形態1の工作機械本体1では、霧状の冷却液が前記ラビリンス構造を通過する際に第一横板部535、第三横板部537及び第二横板部536の他板部に付着する。よって、霧状の冷却液が開閉扉51と取り付け板52との隙間を通って外側へ移動することを阻止できる。
第一横板部535、第三横板部537及び第二横板部536の他板部に付着した冷却液の水滴は自重によって落ち、主に第一横板部535の上面に溜まる。第一横板部535の上面に溜まった冷却液は、例えば開閉扉51の開閉に伴う振動により第一横板部535の上面に沿って流れる(図10の点線の矢印参照)。即ち、開閉扉51の開閉時に、第一横板部535の上面に溜まった冷却液が第二縦板部7及び第一縦板部6を超えて、本体カバー2の外側に流れ落ちるおそれがある。外側に流れた冷却液は床を汚す。また、冷却液が外側に流れると、再使用できる冷却液の量が減少するので、冷却液の補充の頻度は増え、作業効率が低下する。
【0055】
これに対して、本開示の工作機械本体1では、第二縦板部7から間隙9を隔てて後側に第一縦板部6が設けてある。即ち、第一縦板部6及び第二縦板部7の間には間隙9が形成してある。よって、第一横板部535の上面に沿って流れる冷却液が、第一縦板部6を超えて本体カバー2の外側に流れ落ちることはなく、間隙9を通して下方に落ちる。
【0056】
図8の如く、間隙9(開閉扉51)の下方には傾斜板部556が設けてあるので、間隙9を通して流れる冷却液は傾斜板部556上に落ち、傾斜板部556の案内により、本体カバー2の内側に流れる。従って、冷却液が本体カバー2の外側に流れ落ちて床を汚すことを防止でき、再使用できる冷却液の量が減少することも防止できる。
【0057】
また、本開示の工作機械本体1は、上述の如く、第一縦板部6の上端の縁が第二縦板部7の上端の縁よりも低くなるよう設けてある。よって、開閉扉51の開閉時に、第二横板部536の他板部の下面に付着してぶら下がっている冷却液の水滴に第一縦板部6の上端の縁が当たり、冷却液の水滴が第一縦板部6を超えて本体カバー2の外側に落ちることを未然に防止できる。
【0058】
更に、本開示の工作機械本体1は、上述の如く、第二縦板部7に取り付けてある屈曲形状部材8は開閉扉51を閉じた場合に第二板522の内側面(後端部522a)と開閉扉51との隙間を覆う。即ち、屈曲形状部材8の端部81が第二板522のうち後端部522aに隣接して配置してあり、後端部522aと屈曲形状部材8(端部81)は所謂ラビリンス構造を形成する。従って、発生した霧状の冷却液が第二板522と開閉扉51との隙間から本体カバー2の外側に移動することを未然に防止できる。
【0059】
(実施形態2)
図11は、実施形態2の工作機械本体1において、開閉扉51の構成を示す部分的斜視図である。図11では、便宜上、第二横板部536を共に示しており、開閉扉51及び第二横板部536の一部を取り除いた状態を示している。
実施形態2の工作機械本体1でも、開閉扉51は、実施形態1と同様、開閉扉51の移動方向における開閉扉51の後面に第一縦板部6が取り付けてあり、第一縦板部6から前側へ間隙9を隔てて第二縦板部7が設けてある。第一縦板部6及び第二縦板部7は平行であり、左右方向における第一縦板部6及び第二縦板部7の幅は略等しい。第二縦板部7は、第一横板部535の後端から下方向に延びる。第三横板部537の後端は第一横板部535の後端から更に後方に延びている。第三横板部537は後端が第一縦板部6の真上まで延びており、第一縦板部6の上端の縁が第二縦板部7の上端の縁よりも低くなるよう設けてある。
第二縦板部7の左側長辺の縁部には屈曲形状部材8が取り付けてあり、開閉扉51を閉じた場合に屈曲形状部材8は第二板522の内側面(後端部522a)と開閉扉51との隙間を覆う。
【0060】
実施形態2の工作機械100では、第二横板部536の後側の端部は上側に湾曲してある。実施形態1と同様、第二横板部536の前記他板部は、第一横板部535及び第三横板部537の間に介在しており、第一横板部535及び第三横板部537と平行をなし、第一横板部535、第三横板部537及び第二横板部536(他板部)は所謂ラビリンス構造を形成する(図7参照)。第二横板部536の他板部において、第二縦板部7よりも後側の端部536aは、後端に近い程上の位置になるよう傾斜している。
【0061】
このような構成を有するので、霧状の冷却液が第二横板部536の他板部の下面に付着して冷却液の水滴を形成する場合、第二横板部536の他板部の端部536aには冷却液の水滴が存在しなくなる。端部536aが傾斜しているので、形成した水滴は自重により第二縦板部7側、即ち第一縦板部6から遠ざかる方向に間隙9の上まで移動し、間隙9を通して落ちる。
よって、例えば開閉扉51の開閉に伴う振動により冷却液の水滴が本体カバー2の外側に落ちることをより確実に防止し、冷却液の水滴が本体カバー2の外側に落ちて床を汚すことを防止でき、再使用できる冷却液の量が減少することも防止できる。
【0062】
(実施形態3)
図12は、実施形態3の工作機械本体1の扉ユニット5の背面側を部分的に拡大表示する拡大図である。
開閉扉51の移動方向の後側の端面には第一縦板部6が取り付けてある。第二縦板部7は第一縦板部6から前側へ間隙9を隔てて第一縦板部6と平行に設けてある。第一縦板部6及び第二縦板部7の形状は既に説明しており、省略する。
【0063】
第二縦板部7は上端部が第一横板部535と交差するように設けてあり、第二縦板部7の上端部は第一横板部535の後端に接する。第二縦板部7は上端面が第一横板部535の上面よりも高くなるように設けてある。即ち、第二縦板部7の上端は第一横板部535の上面よりも上側に延びる。
【0064】
上述の如く、第一横板部535の上面に溜まった冷却液は、例えば開閉扉51の開閉に伴う振動により第一横板部535の上面に沿って第一縦板部6側に流れる。しかし、実施形態3の工作機械本体1では、第二縦板部7の上端が第一横板部535の上面よりも高いので、第一縦板部6側に第一横板部535の上面を流れる冷却液を第二縦板部7の上端部がせき止め、本体カバー2の内側に落とす。たとえ、冷却液が第二縦板部7の上端部を乗り越えて流れた時でも、第一縦板部6及び第二縦板部7の間には間隙9が形成してあり、冷却液が第一縦板部6を超えて本体カバー2の外側に流れ落ちることはない。
【符号の説明】
【0065】
1 工作機械本体
2 本体カバー
6 第一縦板部
7 第二縦板部
8 屈曲形状部材
9 間隙
23 右壁
25 天井
51 開閉扉
100 工作機械
535 第一横板部
536 第二横板部
537 第三横板部
556 傾斜板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12