(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電力制御ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20241022BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20241022BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20241022BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241022BHJP
【FI】
H02K5/24 A
H02K11/33
B60K1/00
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2021056040
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸川 直起
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219862(JP,A)
【文献】特開2012-200108(JP,A)
【文献】特開2011-223675(JP,A)
【文献】特開2021-035163(JP,A)
【文献】特開2014-225998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
H02K 11/33
B60K 1/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCUと、
電子制御装置とDC/DCコンバータとを収容するアルミニウム製の金属筐体と、
を備え、
前記PCUは、
回転電機を
駆動する
インバータと、
前記インバータを収容するPCUケースと、を有し、
前記PCUと前記金属筐体とが前記
回転電機とトランスアクスルとを収容するトランスアクスルケース
に一体化された電力制御ユニットであって、
前記PCUケースは、
上部が開口した構造を有し、前記インバータを収容するケース本体と、
前記ケース本体の開口部を塞ぐように前記ケース本体の上部に取り付けられた鉄製のアッパーカバーと、を有し、
前記インバータは、前記ケース本体に収容された状態でケーブルを介して前記電子制御装置や前記DC/DCコンバータと電気的に接続されており、
前記ケース本体は、前記トランスアクスルケースの上面に取り付けられ、
前記金属筐体は、前記アッパーカバーの上面に取り付けられ、
前記PCUケースと前記金属筐体との間には、
前記アッパーカバーの上面と前記金属筐体の下面とに挟まれて形成された空気層が設けられ、
上下方向において前記空気層を挟んで向かい合う面は、
鉄からなる前記アッパーカバーの上面と、アルミニウムからなる前記金属筐体の下面とであり、それぞれ異なる金属部材により形成されている
ことを特徴とする電力制御ユニット。
【請求項2】
前記金属筐体は、
前記アッパーカバーの上面に取り付けられた筐体本体と、
前記筐体本体の下部に取り付けられ、前記金属筐体の下面の一部を形成するロアカバーと、を有し、
前記空気層は、前記アッパーカバーの上面と前記ロアカバーの下面とに挟まれて形成されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力制御ユニット。
【請求項3】
前記PCUと前記金属筐体とは、制振部材を介さずに一体化されており、
前記
PCUケースは、制振部材を介さずに前記
トランスアクスルケースの上面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の電力制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機を収容するケースと回転電機を制御する電力制御装置とが一体化された電力制御ユニットが開示されている。特許文献1に記載の構成では、回転電機で振動が生じた際、回転電機からの振動による放射音の共鳴を抑制するために、電力制御装置の筐体の底面とケースの上面との間に吸音部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成のように吸音部材(制振部材)を設ける場合、パーティションカバーや吸音材などの部品を追加する必要があるため、ユニット全体の大型化やコストの増大に繋がってしまう。また、回転電機のケースと電力制御装置の筐体とが同じ材料により構成されていると、ケースと筐体とで固有振動数が一致するため、ケースの振動と筐体の振動とが特定の周波数で共振し、振動を悪化させる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、回転電機のケースと電力制御装置の筐体とが一体化された構造において振動を低減することができる電力制御ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転電機と、前記回転電機を収容するケースと、前記回転電機を制御する電力制御装置と、を備え、前記電力制御装置の筐体が前記ケースと一体化された電力制御ユニットであって、前記ケースと前記筐体との間には、少なくとも一つの空気層が設けられ、前記空気層を挟んで向かい合う面は、それぞれ異なる金属部材により形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、空気層を挟んで向かい合う面はそれぞれ異なる金属部材により形成されているので、一方の面と他方の面とでそれぞれの共振周波数がずれる。これにより、一方の面の振動と、他方の面の振動と、その間の空気層の振動とについて、共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【0008】
また、前記筐体は、前記ケースの上面に取り付けられ、前記空気層は、前記ケースの上面から前記筐体の下面までの間のいずれかの位置に設けられてもよい。
【0009】
この構成によれば、空気層を挟んで向かい合う面をそれぞれ異なる金属部材により形成することにより、それらの共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【0010】
また、前記電力制御装置は、前記回転電機を駆動するインバータを含み、前記筐体は、前記インバータを収容し、前記ケースの上面に取り付けられたPCUケースと、前記PCUケースの上面に取り付けられた金属筐体と、を含み、前記空気層は、前記PCUケースの上面と前記金属筐体の下面とに挟まれて形成されてもよい。
【0011】
この構成によれば、PCUケースの上面に金属筐体が取り付けられた構造において、空気層が、PCUケースの上面と金属筐体の下面とに挟まれて形成されている。PCUケースの上面と金属筐体の下面とがそれぞれ異なる金属部材により形成されていることにより、それらの共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【0012】
また、前記PCUケースは、前記ケースに取り付けられた本体部と、前記本体部に取り付けられ、前記PCUケースの上面を形成するアッパーカバーと、を有し、前記空気層は、前記アッパーカバーの上面と前記金属筐体の下面とに挟まれて形成されてもよい。
【0013】
この構成によれば、空気層が、アッパーカバーの上面と金属筐体の下面とに挟まれて形成されている。アッパーカバーの上面と金属筐体の下面とがそれぞれ異なる金属部材により形成されていることにより、それらの共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【0014】
また、前記金属筐体は、前記アッパーカバーの上面に取り付けられた筐体本体と、前記筐体本体の下部に取り付けられ、前記金属筐体の下面の一部を形成するロアカバーと、を有し、前記空気層は、前記アッパーカバーの上面と前記ロアカバーの下面とに挟まれて形成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、金属筐体の下部にロアカバーが取り付けられた構造において、空気層が、PCUケースの上面とロアカバーの下面とに挟まれて形成されている。PCUケースの上面とロアカバーの下面とがそれぞれ異なる金属部材により形成されていることにより、それらの共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【0016】
また、前記筐体は、制振部材を介さずに前記ケースの上面に取り付けられてもよい。
【0017】
この構成によれば、制振部材を追加することなく振動を低減できるため、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、空気層を挟んで向かい合う面はそれぞれ異なる金属部材により形成されているので、一方の面と他方の面とでそれぞれの共振周波数がずれる。これにより、一方の面の振動と、他方の面の振動と、その間の空気層の振動とについて、共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態における電力制御ユニットを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、金属部材の振動と気柱共鳴との関係を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1変形例における電力制御ユニットを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第2変形例における電力制御ユニットを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第3変形例における電力制御ユニットを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における電力制御ユニットについて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、実施形態における電力制御ユニットを模式的に示す図である。電力制御ユニット1は、モータを制御する電力制御装置である。この電力制御ユニット1はバッテリからモータに供給される電力を制御する。電力制御ユニット1はモータと電気的に接続されているとともに、バッテリと電気的に接続されている。このモータは電動機および発電機として機能することが可能な回転電機(モータ・ジェネレータ)である。例えば電力制御ユニット1は、モータが動力源となる電動車両に搭載される。
【0022】
電力制御ユニット1では、シールド機能を有する筐体2の内部に、複数の機器が収容されてユニット化されている。筐体2の内部には、モータを駆動するインバータ3や、モータを制御する電子制御装置(以下「ECU」という)4や、高電圧を降圧するDC/DCコンバータ5などが収容されている。
図1に示すように、電力制御ユニット1は、パワーコントロールユニット(以下「PCU」という)10と、電気部品を収容する金属筐体20とを備える。電力制御ユニット1では、PCU10と金属筐体20とが一体化されている。
【0023】
PCU10は、インバータ3と、インバータ3を収容するPCUケース11とを備える。インバータ3は高電圧部品である。このPCU10は、PCUケース11の内部にパワー半導体などの高電圧部品が収容された構造を有する。そして、PCU10は高電圧部品として、少なくともインバータ3を含んで構成されている。
【0024】
インバータ3は、モータを駆動する電力制御装置である。このインバータ3は、6つのトランジスタ(例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)と、各トラジスタに逆方向に並列接続された6つのダイオードとにより構成されている。6つのトランジスタは、バッテリの正極に接続された正極側電力ラインとバッテリの負極に接続された負極側電力ラインとに対してソース側とシンク側とになるよう2つずつ対をなしている。この対となるトランジスタ同士の接続点の各々にはモータの三相コイル(U相、V相、W相)が電気的に接続されている。インバータ3はトランジスタおよびダイオードをモジュール化した状態でPCUケース11の内部に収容されている。
【0025】
PCUケース11は、ケース本体12と、アッパーカバー13とを含んで構成されている。筐体2は、第1筐体としてPCUケース11を有する。
【0026】
ケース本体12は、インバータ3を収容する本体部である。インバータ3はケース本体12に収容された状態でケーブル等を介してバッテリやECU4やDC/DCコンバータ5と電気的に接続されている。例えば、インバータ3とバッテリとを電気的に接続するケーブルと、インバータ3とDC/DCコンバータ5とを電気的に接続するケーブルとを設けることができる。つまり、インバータ3と他の電気部品とを電気的に接続するケーブルがPCUケース11から外部へと延在している。
【0027】
また、このケース本体12は、例えばモータを収容するモータケースの上面に取り付けられる。この場合、PCUケース11はモータケースと一体化され、インバータ3はバスバーを介してモータと電気的に接続される。さらに、ケース本体12は、上部が開口した構造を有する。この開口部を塞ぐようにしてケース本体12の上部にアッパーカバー13が取り付けられている。
【0028】
アッパーカバー13は、PCUケース11の上面11aを形成する金属製のカバー部材である。このアッパーカバー13は、例えば鉄からなるカバー部材(例えば鉄板)である。アッパーカバー13とケース本体12とはボルト締結により一体化されている。また、アッパーカバー13の上面13aには、金属筐体20が取り付けられている。
【0029】
金属筐体20は、ECU4とDC/DCコンバータ5とを収容する金属製の筐体である。この金属筐体20は、筐体の内外を電磁波遮断できるものであって、例えばアルミニウムからなる筐体である。筐体2は、第2筐体として金属筐体20を有する。
【0030】
ECU4は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェースなどを備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。このECU4は、PCU10のインバータ3を制御する電子制御装置である。例えば、PCUケース11の内部には、インバータ3にゲート信号を出力する電子制御装置(モータECU)が収容されている。この場合、ECU4とモータECUとは通信可能に接続されているため、ECU4がモータECUに指令信号を出力することによりモータECUからインバータ3にゲート信号が出力され、インバータ3の複数のトランジスタをスイッチング制御することができる。電力制御ユニット1が車両に搭載された場合には、ECU4は車両全体を制御する電子制御装置(メインECU)として機能するものである。さらに、ECU4はDC/DCコンバータ5を制御する電子制御装置でもある。
【0031】
DC/DCコンバータ5は、低電圧電力ラインを介して低電圧バッテリおよび複数の補機と電気的に接続されている。低電圧バッテリは上述したバッテリ(高電圧バッテリ)よりも低電圧のバッテリである。さらに、DC/DCコンバータ5は、高電圧バッテリの正極側のシステムメインリレーとインバータ3との間で正極側電力ラインに接続されているとともに、高電圧バッテリの負極側のシステムメインリレーとインバータ3との間で負極側電力ラインに接続されている。そして、DC/DCコンバータ5は、正極側電力ライン側、すなわち高電圧バッテリおよびPCU10(インバータ3)側の電力を降圧して低電圧電力ライン側、すなわち各補機や低電圧バッテリに供給する。また、DC/DCコンバータ5は、低電圧バッテリからの電力を昇圧して正極側電力ライン側、すなわち高電圧バッテリおよびPCU10(インバータ3)側に供給することができる。この場合、DC/DCコンバータ5は電圧変換回路の出力電圧が目標電圧となるようECU4により制御される。
【0032】
また、金属筐体20は、ECU4とDC/DCコンバータ5とを収容した状態でPCUケース11のアッパーカバー13に取り付けられている。例えば、金属筐体20とアッパーカバー13とはボルト締結により一体化されている。この場合、金属筐体20はアッパーカバー13の上面13aに載置された状態でPCUケース11に固定されている。そして、金属筐体20とPCUケース11との間には、空気層30が設けられている。
【0033】
空気層30は、PCUケース11の上面11aと金属筐体20の下面20aとに挟まれて形成されている。PCUケース11の上面11aはアッパーカバー13の上面13aにより形成されている。アッパーカバー13は鉄製であるため、その上面13aは鉄により構成された面となる。一方、金属筐体20はアルミニウム製であるため、その下面20aはアルミニウムにより構成された面である。このように、上下方向において空気層30を挟んで向かい合う面は、それぞれ異なる金属部材により形成されている。
【0034】
さらに、空気層30は、金属筐体20とアッパーカバー13とに囲まれた状態でPCU10の幅方向に延在しており、PCU10の幅方向両側に開口している。つまり、空気層30は幅方向両端に開口部を有する開空間に形成されている。そのため、PCU10で振動が発生した場合に、空気層30を形成する部分において気柱共鳴が発生する。なお、
図1には、PCU10の幅方向から電力制御ユニット1を見た場合が示されている。
【0035】
ここで、空気層30で生じる振動と、この空気層30を挟んで向かい合うアッパーカバー13の上面13aと金属筐体20の下面20aとでそれぞれに生じる振動とについて説明する。
【0036】
まず、空気層30で生じる振動である気柱共鳴について説明する。空気層30の開口部間の長さをLとする。この場合、波長λは、λ=2L/n(n=1,2,3,・・・)により表される。基本振動ではn=1となり、2倍振動ではn=2となり、3倍振動ではn=3となる。周波数fは、音速をV[m/s]とすると、f=V/λ={(2n-1)/4L}Vにより表される。このように、空気層30で生じる気柱共鳴について、開空間である空気層30の長さLによって波長λと周波数f[Hz]とが決定される。
【0037】
次に、アッパーカバー13の上面13aで生じる振動と、金属筐体20の下面20aで生じる振動とについて説明する。空気層30を挟んで向かい合う面は、アルミニウムと鉄とにより形成されている。アルミニウムと鉄とでは共振周波数(固有振動数)が異なり、アルミニウムは鉄よりも共振周波数が高い。そのため、アルミニウム製の金属筐体20の下面20aは鉄製のアッパーカバー13の上面13aに比べて共振周波数が高い。つまり、PCUケース11で生じた振動がアッパーカバー13から金属筐体20へ伝播する際、金属筐体20とアッパーカバー13とで共振周波数がずれていることにより、アッパーカバー13の共振と金属筐体20の共振とが重畳することを回避できる。このように、空気層30を挟んで向かい合う面がそれぞれ異なる金属部材により形成されることによって、PCU10で生じた振動による共振を抑制することができ、振動を低減することができる。
【0038】
図2は、金属部材での振動と気柱共鳴との関係を説明するための図である。なお、
図2には、空気層が同一の金属部材により形成された比較例と、本実施形態の電力制御ユニット1のように空気層30が異なる金属部材により形成された実施例とが例示されている。
【0039】
比較例は、アッパーカバーと金属筐体とがいずれもアルミニウム製である。空気層を挟んで向かい合う面について、アッパーカバーの上面と金属筐体の下面とがいずれもアルミニウムにより形成されている。比較例では、空気層が同じ金属部材のみにより囲まれていることになる。
【0040】
この比較例では、アッパーカバーと金属筐体とで共振周波数が一致するため、
図2に示すように、アッパーカバーの振動と、金属筐体の振動と、空気層の共鳴とが重畳してしまう。つまり、同じ周波数においてアッパーカバーと金属筐体とが共振してしまい、さらに空気層での共鳴が発生してしまう。その結果、比較例では音圧が大きくなり、振動と騒音が大きく悪化してしまう。
【0041】
一方、実施例は、アッパーカバー13が鉄製であり、金属筐体20がアルミニウム製である。空気層30を挟んで向かい合う面について、アッパーカバー13の上面13aが鉄により形成され、金属筐体20の下面20aがアルミニウムにより形成されている。実施例では、空気層30が鉄とアルミニウムという異なる金属部材により囲まれていることになる。
【0042】
この実施例では、アッパーカバー13と金属筐体20とで共振周波数がずれるため、
図2に示すように、アルミニウム製の金属筐体20の共振が鉄製のアッパーカバー13の共振よりも高周波数で生じ、共振を分散できる。さらに、空気層30の共鳴が生じる周波数は、アッパーカバー13の共振周波数よりも高く、かつ金属筐体20の共振周波数よりも低い。すなわち、アッパーカバー13と金属筐体20との間の周波数域で空気層30の共鳴が発生する。つまり、アッパーカバー13と金属筐体20と空気層30とがそれぞれ異なる周波数域で共振する。その結果、実施例では比較例と比べて音圧を低減することができる。
【0043】
以上説明したように、実施形態によれば、空気層30を挟んで向かい合う面である、PCUケース11の上面11aと金属筐体20の下面20aとが、それぞれ異なる金属部材により形成されている。そのため、PCUケース11の上面11aと金属筐体20の下面20aとでそれぞれの共振周波数がずれる。これにより、PCUケース11の上面11aの振動と、金属筐体20の下面20aの振動と、その間の空気層30の振動とについて、共振を分散させることができ、振動を低減することができる。
【0044】
また、PCU10と金属筐体20とが制振部材を介さずに一体化された構造において、空気層30を形成するPCUケース11の上面11aとアッパーカバー13の上面13aとが異なる金属部材からなることにより、PCU10から金属筐体20に伝播する振動を低減することができる。例えばインバータ3の複数のトランジスタでのスイッチング動作によりPCU10で振動が生じた際、空気層30の共鳴と、PCUケース11の上面11aの振動と、アッパーカバー13の上面13aの振動とが重畳することを回避できる。
【0045】
また、金属筐体20はロアカバーを有さないため、部品点数を低減でき、コストを低減することができる。さらに、面積の大きいアッパーカバー13を安価な鉄板で構成することが可能であるため、コスト増大を抑制することができる。
【0046】
なお、PCUケース11の内部には、インバータ3の他に電気部品が収容されてよい。例えば、モータECUを構成する制御基板(モータECU)や、コンデンサや、リアクトルや、PCU側バスバーなどがPCUケース11の内部に収容されている。この場合、制御基板はECU4からの指令信号に応じてゲート信号をインバータ3に出力する。インバータ3は制御基板によって制御される。コンデンサは、直流電圧を平滑化する平滑コンデンサであり、平滑化した直流電流をインバータ3へ供給する。リアクトルは、バッテリ電圧を昇圧するために用いられる。PCU側バスバーは、モータ側バスバーと電気的に接続させる。つまり、PCUケース11には少なくともインバータ3が収容されている。
【0047】
また、金属筐体20の内部に含まれる電気部品は、ECU4やDC/DCコンバータ5に限定されない。つまり、インバータ3と電気的に接続される部品を金属筐体20に収容することが可能である。
【0048】
また、電力制御ユニット1は上述した実施形態に限らず変形例を構成することが可能である。ここで、変形例の構造について
図3~
図5に一例を示す。
【0049】
図3は、第1変形例における電力制御ユニットを示す図である。
図3に示すように、第1変形例の電力制御ユニット1では、金属筐体20が、筐体本体21と、ロアカバー22とを含んで構成されている。筐体本体21は、ECU4とDC/DCコンバータ5とを収容する本体部である。ロアカバー22は、アルミニウムにより構成された金属製のカバー部材であり、筐体本体21の下部に取り付けられている。筐体本体21内の下部に冷却水路が設けられている場合、ロアカバー22によって冷却水路を封止する。そして、このロアカバー22の下面22aは金属筐体20の下面20aの一部を形成する。そのため、空気層30は、ロアカバー22の下面22aとアッパーカバー13の上面13aとにより挟まれて形成されている。
【0050】
この第1変形例によれば、金属筐体20がロアカバー22を有する構造であっても、ロアカバー22がアルミニウム製であるため、空気層30を挟んで向かい合う面を異なる金属部材により形成することができる。また、金属筐体20の下部に水路がある場合、ロアカバー22によって水路の封止機能も兼ねることができる。
【0051】
図4は、第2変形例における電力制御ユニットを示す図である。
図4に示すように、第2変形例の電力制御ユニット1は、PCU10と金属筐体20とがトランスアクスルケース40に一体化された機電一体型ユニットである。PCU10は、トランスアクスルケース40の上面40aに取り付けられている。トランスアクスルケース40は、アルミニウム等の金属材料を用いて構成されている。トランスアクスルケース40の内部にはモータ50とトランスアクスルとが収容されている。
【0052】
トランスアクスルケース40内のモータ50やギヤは駆動時に振動する。この振動はトランスアクスルケース40へ伝播され、モータノイズやギヤノイズとして振動と騒音を発生させる。この対策として、第2変形例では、空気層30を挟んで向かい合う面が異なる金属部材により形成することにより、アッパーカバー13の上面13aの振動と、金属筐体20の下面20aの振動と、空気層30の共鳴とが重畳することを回避できる。
【0053】
この第2変形例によれば、PCU10からトランスアクスルケース40までの間にゴムブッシュなどの制振部材がない機電一体型ユニットにおいて、トランスアクスルケース40の振動がPCU10のアッパーカバー13に伝播した場合に、空気層30の周囲において共振が発生することを抑制でき、振動を低減することができる。
【0054】
図5は、第3変形例における電力制御ユニットを示す図である。
図5に示すように、第3変形例の電力制御ユニット1は、第2変形例と同様に機電一体型ユニットであり、金属筐体20が、第1変形例と同様に筐体本体21とロアカバー22とを含む。つまり、PCU10はトランスアクスルケース40の上面40aに取り付けられた構造において、空気層30は、ロアカバー22の下面22aとアッパーカバー13の上面13aとにより挟まれて形成されている。
【0055】
この第3変形例によれば、第1変形例および第2変形例と同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、第2変形例および第3変形例について、トランスアクスルケース40の内部に収容されるモータ50の構成やトランスアクスルの構成は特に限定されない。例えば、モータ50は、第1モータと、第2モータとを含んでもよい。トランスアクスルは、単軸構造であってもよく、複軸構造であってもよい。また、トランスアクスルケース40は、モータ50を収容するモータケースと、トランスアクスルを収容する変速機ケースとが一体化されたものであってもよい。
【0057】
また、第2変形例および第3変形例のさらに別の変形例として、金属筐体20がトランスアクスルケース40に直接締結された電力制御ユニット1を構成することが可能である。すなわち、金属筐体20はPCUケース11に取り付けられる構造に限定されない。この変形例では、筐体2に含まれるPCUケース11と金属筐体20とがそれぞれトランスアクスルケース40に直接締結されている。例えば、金属筐体20はPCUケース11の上方に位置する状態でトランスアクスルケース40にボルト締結されている。つまり、空気層30は、アッパーカバー13の上面13aと金属筐体20の下面20aとの間に限らず、トランスアクスルケース40の上面40aと金属筐体20の下面20aとの間に設けられてもよい。空気層30は、トランスアクスルケース40の上面40aから筐体2の下面までのいずれかの位置に設けられている。要するに、トランスアクスルケース40と筐体2との間には、少なくとも一つの空気層30が設けられていればよい。そして、空気層30を挟んで向かい合う面が異なる金属部材により形成されていればよい。
【符号の説明】
【0058】
1 電力制御ユニット
2 筐体
3 インバータ
4 電子制御装置(ECU)
5 DC/DCコンバータ
10 PCU
11 PCUケース
11a 上面
12 ケース本体
13 アッパーカバー
13a 上面
20 金属筐体
20a 下面
21 筐体本体
22 ロアカバー
22a 下面
30 空気層
40 トランスアクスルケース
50 モータ