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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
F16K31/06 305H
F16K31/06 305Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021056233
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022153146
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】中西 智彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 洸希
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-252114(JP,A)
【文献】特開2021-006728(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第4225317(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、前記貫通孔に挿入され、軸方向に沿って移動可能に支持されたプランジャと、前記ボビンの外周部に巻回され、通電に伴い磁力を生じて前記プランジャを軸方向に沿って移動させるコイルと、前記ボビンと前記プランジャとの間に配置された筒状のヨークと、前記ボビン、前記プランジャ、前記コイルおよび前記ヨークを収納するケースとを有するソレノイドと、
該ソレノイドの軸方向一方側に連結された流路部材であって、第1流路と、第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐ中継流路と、前記中継流路に繋がる筒状空間を有する弁体収容部とを備える流路部材と、
前記弁体収容部内に収容され、前記プランジャとともに軸方向に沿って移動することにより、前記中継流路を開閉する柱状の弁体と、
前記プランジャの軸方向他方側において前記ソレノイドの前記ケースに配置され、前記プランジャが接触するシート部材とを備え、
前記シート部材は、前記プランジャが接触するコア部と、前記コア部の径方向外側の外周面から径方向外側に突出する複数の突出部とを有することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記シート部材は、径方向外側端面が前記ヨークの内側面に少なくとも一部が接触し、嵌め合わされる請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記シート部材は、複数の前記突出部とを接続する環状部と、
少なくとも前記突出部と、前記環状部とで形成される空隙部とを備える請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記ケースは、軸方向に沿って延びる筒状の胴部と、該胴部の軸方向他方側を塞ぐ壁部とを備え、
前記ヨークは、軸方向他方側の端面に、軸方向一方側に凹んだ段差部を備え、
前記シート部材は、前記ヨークの前記段差部と前記ケースの前記壁部とで形成される空間に少なくとも一部が配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記プランジャの前記シート部材に対する摩擦係数は、前記プランジャの前記ケースに対する摩擦係数より小さい請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記シート部材の弾性係数は、200MPa以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記シート部材は樹脂材料で構成される請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記樹脂材料は、フッ素系の樹脂材料である請求項1~7のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記弁体収容部内には、前記弁体を軸方向他方側に付勢する付勢部材を備える請求項1~8のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項10】
前記弁体は、前記付勢部材によって付勢されることにより、前記弁体収容部の内周部に接しつつ、軸方向他方に向かって移動する請求項9に記載の電磁弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスまたは水や油等の流体の流れを切り換える電磁弁、すなわち、流体の通過と遮断とを切り換える電磁弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電磁弁は、例えば、エンジン等の内燃機関を備える車両に搭載されて、ブローバイガスの通過と遮断とを切り換えることができる。
この特許文献1に記載の電磁弁は、流体が通過する流路を開閉する弁体を有するノズル部と、励磁によって弁体を移動させるプランジャを有するソレノイド部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-56419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁弁では、プランジャがソレノイド部内に配置されたヨークに直接接触することで生じる打音を防止するために、緩衝部材を備える場合があるが、プランジャが緩衝部材に接触する際の応力により緩衝部材が破損する虞がある。
本発明の目的は、緩衝部材の応力による損傷を防止することができる電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電磁弁の一つの態様は、軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、前記貫通孔に挿入され、軸方向に沿って移動可能に支持されたプランジャと、前記ボビンの外周部に巻回され、通電に伴い磁力を生じて前記プランジャを軸方向に沿って移動させるコイルと、前記ボビンと前記プランジャとの間に配置された筒状のヨークと、前記ボビン、前記プランジャ、前記コイルおよび前記ヨークを収納するケースとを有するソレノイドと、該ソレノイドの軸方向一方側に連結された流路部材であって、第1流路と、第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐ中継流路と、前記中継流路に繋がる筒状空間を有する弁体収容部とを備える流路部材と、前記弁体収容内に収容され、前記プランジャとともに軸方向に沿って移動することにより、前記中継流路を開閉する柱状の弁体と、前記プランジャの軸方向他方側において前記ソレノイドの前記ケースに配置され、前記プランジャが接触するシート部材とを備え、前記シート部材は、前記プランジャが接触するコア部と、前記コア部の径方向外側の外周面から径方向外側に突出する複数の突出部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電磁弁の一つの態様によれば、緩衝部材の応力による損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の電磁弁の使用状態の一例を示す図(開状態)である。
図2図2は、本発明の電磁弁の使用状態の一例を示す図(閉状態)である。
図3図3は、本発明の電磁弁の一実施形態を示す断面図(開状態)である。
図4図4は、シート部材の構成を示す正面図である。
図5図5は、シート部材の構成例を示す断面図(開状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1図5を参照して、本発明の電磁弁の実施形態について説明する。
なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定する。一例として、X軸とY軸とを含むXY平面が水平、Z軸が鉛直となっている。
また、X軸方向が「軸方向(軸O1方向)」であり、軸O1を中心とする径方向を単に「径方向」と言い、軸O1を中心とする周方向を単に「周方向」と言うことがある。
【0009】
そして、X軸方向正側が「軸方向一方側」に対応し、X軸方向負側が「軸方向他方側」に対応する。
本明細書中において、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対的な位置関係を説明するために使用する用語である。したがって、各部の実際の位置関係等は、これらの用語で示される位置関係等と異なっていてもよい。
【0010】
図1および図2に示すように、電磁弁1は、例えば、エンジン等の内燃機関10を備える車両100に搭載して用いられる。
内燃機関10は、燃焼室111、クランク室112およびバッファ室113を有するハウジング11と、燃焼室111内に移動可能に設けられたピストン12と、クランク室112内に設けられ、ピストン12の往復運動を回転運動に変換するクランク13とを備える。
また、ハウジング11内では、クランク室112とバッファ室113とが内部流路114を介して接続されている。
【0011】
燃焼室111には、ハウジング11の外側から外部流路14が接続されている。外部流路14の途中には、スロットル弁である電磁弁15が設置されている。
外部流路14の電磁弁15よりも下流側とクランク室112とは、第1補助流路16を介して接続されている。
第1補助流路16の途中には、PCV弁である電磁弁17が設置されている。
【0012】
外部流路14の電磁弁15よりも上流側とバッファ室113とは、第2補助流路18を介して接続されている。そして、第2補助流路18には、外部流路14との境界部に、本発明の電磁弁1が設置されている。
電磁弁1は、外部流路14の開閉を切り換える弁である。この電磁弁1は、車両100の通常走行時には、外部流路14を開状態(図1参照)とし、混合気AR等の漏れ(以下、単に「漏れ」とも言う。)を検出するリーク検出時には、外部流路14を閉状態(図2参照)とする。
【0013】
図1に示すように、開状態では、混合気ARは、外部流路14を通過して、燃焼室111に流入し、燃焼に供される。混合気ARの燃焼により、ピストン12が移動する。
また、外部流路14を通過する混合気ARの一部は、外部流路14の途中から第2補助流路18に流入し、バッファ室113、内部流路114を順に経て、クランク室112に至る。
クランク室112に流入した混合気ARは、第1補助流路16を経て、外部流路14に戻ることができる。
【0014】
図2に示すように、閉状態では、内燃機関10への混合気ARの供給が停止する。
そして、燃焼室111が混合気ARの燃焼により高圧となった際に、燃焼室111内のブローバイガスQの一部がピストン12を越えてクランク室112に流入する。
その後、クランク室112内のブローバイガスQは、第1補助流路16を経て、外部流路14に流入する。
【0015】
このとき、漏れが生じていない場合、クランク室112内の圧力が経時的に減少することとなる。そして、クランク室112内の圧力が閾値を下回った場合、漏れが生じていないと判断される。
一方、漏れが生じている場合、クランク室112内での圧力が減少せずに、上記閾値を下回ることがないか、または、圧力の減少傾向が緩やかとなり、上記閾値を下回るまでに時間を費やすこととなる。この場合、漏れが生じていると判断される。
【0016】
図3に示すように、電磁弁1は、X軸方向負側に配置されたソレノイド2と、X軸方向正側に配置された弁機構3とを備える。以下、各部の構成について説明する。
ソレノイド2は、ボビン21と、プランジャ22と、コイル23と、ケース24と、コア25と、ヨーク26とを有する。
【0017】
ボビン21は、貫通孔211を有する筒状の部材である。貫通孔211は、X軸方向に沿って貫通している。また、貫通孔211の内径は、X軸方向に沿って一定である。
ボビン21は、X軸方向正側で、径方向に突出したフランジ212と、X軸方向負側で、径方向に突出したフランジ213とを有する。
ボビン21は、例えば、ポリエステルやポリイミド等の各種樹脂材料で構成されている。
【0018】
ボビン21の外周部214には、導電性を有する線材が巻回されることにより形成されたコイル23が配置されている。
このコイル23への通電に伴って、ボビン21とコア25とヨーク26とで磁気回路が構成されて磁力が生じる。これにより、プランジャ22をX軸方向に沿って移動させることができる。
【0019】
ボビン21の貫通孔211には、コア25とヨーク26とが挿入され、さらに、これらの内側にプランジャ22が挿入されている。換言すれば、コア25およびヨーク26は、それぞれボビン21とプランジャ22との間に配置されている。
コア25は、X軸方向正側に配置され、ヨーク26は、X軸方向負側に配置されている。
【0020】
コア25は、全体として円筒状または筒状であり、X軸方向に沿って配置されている。また、ヨーク26も、全体として円筒状または筒状であり、X軸方向に沿って配置されている。
コア25およびヨーク26は、例えば、鉄のような軟磁性材料(軟磁性の金属材料)で構成されている。これにより、プランジャ22を十分に移動させ得る程度の磁気回路を生じさせることができる。
【0021】
また、ソレノイド2は、貫通孔211内で、コア25とヨーク26とをX軸方向に離間させた状態で連結する連結部材201を有する。連結部材201は、円筒状であり、内側にコア25のX軸方向負側の端部とヨーク26のX軸方向正側の端部とが嵌め込まれている。
連結部材201は、非磁性であり、錆に対する耐性を有する材料(例えば、オーステナイト系のステンレス鋼等の金属材料)で構成されている。
【0022】
プランジャ22は、コア25とヨーク26とに跨って配置され、X軸方向に沿って正側と負側とに交互に移動可能(すなわち、往復動可能)に支持されている。
プランジャ22は、円筒状のプランジャ本体222と、プランジャ本体222に挿入されたプランジャピン221とを有する。プランジャピン221は、X軸方向の正負両側に突出している。
【0023】
ヨーク26のX軸方向負側の端面261には、X軸方向正側に凹んだ段差部262が形成されている。
プランジャ22は、コア25内では、プランジャピン221がブッシュ202によって支持され、ヨーク26内では、プランジャピン221がブッシュ203によって支持されている。これにより、プランジャ22は、円滑に往復動することができる。
【0024】
ケース24は、ボビン21、プランジャ22、コイル23、コア25およびヨーク26を収納している。ケース24は、ケース本体241と、コネクタ部材242と、リング部材243とを有する。
ケース本体241は、X軸方向に沿って延びる筒状の胴部241aと、胴部241aのX軸方向負側を塞ぐ壁部241bとを備える有底筒状の部材である。壁部241bには、X軸方向正側からヨーク26が接触している。
【0025】
この状態で、ヨーク26の段差部262とケース本体241の壁部241bとで形成される空間に、シート部材(緩衝部材)62が配置されている。このシート部材62は、プランジャ22を介して、後述する弁体5に配置される第2のシート部材61のX軸方向反対側に配置されている。
弁体5が後述するコイルバネ31によりX軸方向負側に向かって付勢され、中継流路44を開放した状態(開状態)で、シート部材62にプランジャピン221が接触(衝突)することにより、プランジャ22のX軸方向負側への移動が規制される。
また、シート部材62は、径方向外側端面がヨーク26の内側面263に少なくとも一部が接触することにより、シート部材62の径方向への移動が規制される。
【0026】
図4に示すように、シート部材62は、プランジャ22のX軸方向負側と接触するコア部と、コア部621の径方向外側の外周面622から径方向外側に突出する複数の突出部623と、少なくとも複数の突出部623とで形成される空隙部624を有する。これにより、プランジャ22がシート部材62へ衝突し、シート部材62に生じる応力によるひずみ(運動エネルギー)が空隙部624で発散され、シート部材62の損傷を防止することができる。
【0027】
また、シート部材62は、径方向外側端面がヨーク26の内側面263に少なくとも一部が接触し、嵌め合わされることで、シート部材62をヨーク26に固定することができ、シート部材62の径方向のズレを低減することができる。
また、シート部材62の弾性係数は、ケース24の弾性係数より小さくなっている。これにより、プランジャピン221によるケース24の摩耗や、ケース24に直接衝突する際(開弁時)に生じる可能性のある衝突音(打音)を吸収すること、すなわち衝突音の発生を防止することもできる。
【0028】
また、図5に示すように、シート部材62が壁部241bのX軸方向正側に接触するように配置されること、特に、段差部262と壁部241bとで形成される空間に少なくとも一部が配置されることにより、シート部材62をケース24に強固に固定することができる。なお、段差部262のシート部材62と対向する対向面262’は、少なくとも一部がコア部621とX軸方向に重なることが好ましい。これにより、シート部材62をケース24により強固に固定することができる。なお、図5においては、突出部623の外周はヨーク26の内側面263に少なくとも一部が接触している。
シート部材62の弾性係数の具体的な値は、200MPa以上であることが好ましく、200~1000MPaであることがより好ましい。この場合、上記打音の発生を低減する効果がより高まる。
【0029】
プランジャピン221(プランジャ22)のシート部材62に対する摩擦係数は、プランジャピン221のケース24(ケース本体241)の壁部241bに対する摩擦係数より小さいことが好ましい。これにより、シート部材62に対してズレた位置にプランジャピン221が接触しても、本来の位置に容易に復元させることができる。
シート部材62は、樹脂材料で構成されることが好ましい。これにより、上記効果をより効果的に発揮し得るシート部材を得易い。特に、樹脂材料は、フッ素系の樹脂材料であることが好ましい。この場合、第2シート部材62の摩擦係数をより低減することができる。
【0030】
なお、前者の場合のシート部材62は、好ましくは図4(a)に示すように、コア621の周方向に沿って互いに離間して配置された複数の円弧上の突出部623が構成されるが、その他の構成とすることもできる。なお、突出部623を円弧状とすることで、ヨーク26の内側面263との接触面積を大きくすることができ、より強固に固定することができる。
具体的には、シート部材62は、コア部621の周方向に沿って互いに離間し、コア部621を中心に対向する位置に配置された複数の円弧状の突出部623で構成(図4(b)参照)してもよい。これにより、互いに対向した突出部623がヨーク26の内側面263と接触するため、ヨーク26の内側面263との接触面積を大きくすることができ、より強固に固定することができる。
また、コア部621から径方向外側に向かって突出した複数(図示の構成では、4つ)の突出部623と、突出部623に接続された環状部625と、少なくとも突出部623と環状部材625とで形成される空隙部624’と、で構成してもよい。これにより、ヨーク26の内側面263との接触面積を大きくすることができ、より強固に固定することができる。
【0031】
リング部材243は、円環状をなし、コア25の径方向外側に、コア25と同心状に配置されている。リング部材243は、コア25に対してX軸方向正側から接触している。
ケース本体241およびリング部材243は、コア25と同様に、例えば、鉄のような軟磁性の金属材料で構成されている。
コネクタ部材242には、コイル23への通電を行うコネクタ(図示せず)が接続される。コネクタ部材242は、ボビン21と同様に、例えば、樹脂材料で構成されている。
【0032】
また、ソレノイド2は、ケース24内で、リング部材243とボビン21のフランジ212との間に配置されたガスケット204と、ケース本体241の壁部241bとボビン21のフランジ213との間に配置されガスケット205とを有する。
ガスケット204は、リング状をなし、コア25の外周側に、コア25と同心状に配置されている。ガスケット204は、リング部材243とボビン21のフランジ212との間で圧縮された状態となっている。これにより、ガスケット204は、リング部材243とフランジ212との間を気密的に封止している。
【0033】
ガスケット205は、リング状をなし、ヨーク26の径方向外側に、ヨーク26と同心状に配置されている。ガスケット205は、ケース本体241の壁部241bとボビン21のフランジ213との間で圧縮された状態となっている。これにより、ガスケット205は、壁部241bとフランジ213との間を気密的に封止している。
なお、ガスケット204およびガスケット205は、弾性材料で構成されている。弾性材料としては、特に限定されず、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料が挙げられる。
【0034】
弁機構3は、流路部材4と、弁体5と、コイルバネ(付勢部材)31と、ガスケット33とを備える。
流路部材4は、ソレノイド2のX軸方向正側に連結されている。流路部材4は、ボビン21と同様に、例えば、樹脂材料で構成されている。
【0035】
流路部材4内には、第1流路41と、第2流路42とが形成されている。
第1流路41は、Z軸方向(X軸方向と交差する方向)に延び、Z軸方向負側に向かって開口している。第1流路41は、外部流路14に接続されており、外部流路14を介して燃焼室111に繋がっている。
また、流路部材4には、外部流路14を構成する配管との間を気密的に封止するガスケット45が外側から嵌められている。
【0036】
第2流路42も、Z軸方向(X軸方向と交差する方向)に延び、Z軸方向正側に向かって開口している。
なお、第2流路42の中心軸O42は、第1流路41の中心軸O41に対して、X軸方向正側に位置している。
また、第2流路42は、例えば、第2補助流路18に接続されている。
【0037】
さらに、流路部材4内には、X軸方向に沿って直径が一定の筒状空間48を有する弁体収容部49が形成されている。この筒状空間48に、弁体5がX軸方向に沿って移動可能に収容されている。
第1流路41は、Z軸方向負側から開口部410を介して筒状空間48に繋がり、第2流路42は、X軸方向X側から中継流路44を介して筒状空間48に繋がっている。したがって、第1流路41と第2流路42とは、中継流路44および筒状空間48を介して繋がっている。
例えば、電磁弁1が搭載された内燃機関10が自然吸気型のエンジンの場合、図3に示すように、ブローバイガスQは、第1流路41から、筒状空間48および中継流路44を順に経て、第2流路42に向かって流れる。
【0038】
また、図3に示すように、流路部材4は、そのX軸方向負側の端部に、リング状の連結部32を有する。連結部32には、ソレノイド2のケース本体241が、例えば、カシメによって固定されている。これにより、ソレノイド2と流路部材4とが連結された状態となっている。
連結部32とソレノイド2のリング部材243との間には、ガスケット33が圧縮された状態で配置されている。また、ガスケット33は、リング状をなし、筒状空間46と同心状に配置されている。
【0039】
このガスケット33の存在により、連結部32とリング部材243との間が気密的に封止されている。その結果、流路部材4とソレノイド2との間からのブローバイガスQの漏れを防止することができる。
なお、ガスケット33は、ガスケット204と同様に、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成されている。
【0040】
弁体5は、プランジャ22とともにX軸方向に沿って移動することができる。そして、弁体5の移動により、中継流路44を開閉することができる。
弁体5が中継流路44を開いた状態(開状態)では、第1流路41から第2流路42に向かったブローバイガスQの通過が可能となる。ここで、図3は、弁体5の開状態を示す。
一方、弁体5が中継流路44を塞いだ状態(閉状態)では、第1流路41から第2流路42に向かったブローバイガスQの通過が遮断される。
【0041】
弁体5は、本体部51と弁部53とを有する。
本体部51は、柱状をなし、その中心軸がX軸方向に沿った姿勢で弁体収容部49(筒状空間48)内に配置されている。この本体部51は、例えば、アルミニウム等の軽量の金属材料で構成されている。
本体部51は、第1ガイド部513と第2ガイド部514とを有する。
第1ガイド部513は、本体部51の外周部のX軸方向正側に設けられている。第1ガイド部513は、本体部51の周方向に沿って連続して設けられた環状をなす鍔部で構成されている。また、本実施形態では、第1ガイド部513の外径は、X軸方向に沿って一定である。
【0042】
この第1ガイド部513は、弁体収容部49に接触することができる。これにより、弁体5がX軸方向に沿って移動する際、弁体収容部49の内周面490に案内されて摺動する。よって、弁体5が安定して移動可能であるとともに、内周面490に付着したデポジットを第1流路41に掻き出すことができる。その結果、弁体5の動作精度の低下を防止することができる。
なお、第1流路41が延びる方向は、Z軸方向(鉛直方向)に限らず、Z軸方向に対して所定角度で傾斜していてもよい。これにより、第1ガイド部513で掻き出されたデポジットを第1流路41により確実に排出することができる。
所定角度は、デポジットの第1流路41への排出効果をより向上させる観点から、45°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましい。
【0043】
第2ガイド部514は、本体部51の外周部の第1ガイド部513よりもX軸方向負側に設けられている。
この第2ガイド部514は、弁体収容部49に接触することができる。これにより、弁体5がX軸方向に沿って移動する際、弁体収容部49の内周面490に案内されて摺動する。よって、弁体5がさらに安定して移動可能である。
弁体5が中継流路44を閉じた状態(閉状態)で、第2ガイド部514は、第1流路41が筒状空間48に繋がる開口部410よりX軸方向負側に位置する。これにより、弁体5の第1流路41への脱落を確実に防止することができる。
【0044】
第2ガイド部514は、第1ガイド部513と同様に、本体部51の周方向に沿って連続して設けられた鍔部で構成されてもよく、周方向に離間して配置された複数の小片部で構成されていてもよい。
前者の場合、弁体5の移動時において、その姿勢の安定性を高めることができる。また、デポジットが第2ガイド部514を超えてソレノイド2側へ移動するのを防止することができる。
後者の場合、第2ガイド部514と弁体収容部49の内周面490との接触面積が低減するので、弁体5の摺動性を高め易い。
【0045】
また、弁体収容部49の内周面490は、平坦面を構成している。すなわち、内周面490に凹凸、段差等が存在しない。このため、第1ガイド部513が内周面490の周方向に沿って均等に接触することができる。また、第1ガイド部513がX軸方向に沿って円滑に摺動することができる。よって、デポジットの掻き出し効果をより高めることができる。
【0046】
また、本体部51には、そのX軸方向負側の端部に、X軸方向正側に向かって凹んだ凹部515が形成されている。また、凹部515の底面に接触して、第2のシート部材61が配置されている。
プランジャピン221は、そのX軸方向正側の端部が凹部515に入り込んで、第2のシート部材61を介して弁体5(本体部51)をX軸方向正側に向かって押圧する。このプランジャ22の押圧により、弁体5を移動させて、中継流路44を閉状態とすることができる。
【0047】
このとき、プランジャピン221が本体部51に直接接触しないので、本体部51の構成材料の種類によらず、本体部51の摩耗を好適に防止することができる。
第2のシート部材61の弾性係数は、本体部51(弁体5)の弾性係数より大きくなっている。プランジャピン221からの押圧力を減衰させることなく、本体部51に伝達することができる。
第2のシート部材61の弾性係数の具体的な値は、200MPa以上であることが好ましく、200~1000MPaであることがより好ましい。この場合、上記押圧力の伝達効果がより高まる。
【0048】
プランジャピン221(プランジャ22)の第2のシート部材61に対する摩擦係数は、プランジャピン221の本体部51(弁体5)に対する摩擦係数より小さいことが好ましい。これにより、第2のシート部材61に対してズレた位置にプランジャピン221が接触しても、本来の位置に容易に復元させることができる。
第2のシート部材61は、樹脂材料で構成されることが好ましい。これにより、上記効果をより効果的に発揮し得るシート部材を得易い。特に、樹脂材料はフッ素系の樹脂材料であることが好ましい。この場合、第2のシート部材61の摩擦係数をより低減することができる。
【0049】
また、第2のシート部材61のX軸方向負側の面(プランジャピン221との接触面)が、X軸方向において、第1ガイド部513と第2ガイド部514との間に位置している。かかる構成により、弁体5のよりX軸方向正側の位置(より重心に近い位置)にプランジャピン221を接触させることができる。このため、プランジャピン221からの力を、弁体5を介して弁部53に安定的に伝達することができる。
【0050】
本体部51のX軸方向正側には、弁部53が配置されている。弁部53は、プランジャ22との移動に伴って、中継流路44に接近して、中継流路44を閉塞したり、中継流路44から離れて、中継流路44を開放したりすることができる。すなわち、弁部53は、中継流路44を開閉する機能を有する。
なお、弁部53は、本体部51からX軸方向正側に向かって突出する装着部511に固定されている。
この弁部53は、ガスケット204と同様に、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成されている。
【0051】
また、弁部53は、例えば、柱状をなしている。弁部53の外径は、本体部51の外径よりも小さく、X軸方向の途中から正側に向かって減少し、端部では中継流路44の内径より小さくなっている。これにより、弁部53が弁体収容部49の内周面490へ接触するのを阻止して、弁体5の円滑な移動が妨げられるのを防止することができる。
また、閉状態において、弁部53のX軸方向正側の端部が中継流路44に入り込むので、中継流路44をより高い気密性で封止することができる。
【0052】
弁体5よりX軸方向正側には、コイルバネ31がX軸方向に沿って配置されている。コイルバネ31は、弁体5をX軸方向負側に向かって付勢する付勢部材である。
弁体5は、コイル23への通電を解除すると、コイルバネ31によって付勢されることにより、X軸方向負側に向かって移動することができる。これにより、弁部53は、中継流路44から離れて、中継流路44を開放して、開状態とすることができる。
また、このとき、コイルバネ31は、弁体5を介してプランジャピン221(プランジャ22)をシート部材62に向かって押し付ける。
【0053】
コイルバネ31は、弁体5の外周側に、弁体5と同心状に配置されている。そして、コイルバネ31は、X軸方向正側が弁体収容部49のX軸方向正側の端面491に接触し、X軸方向負側が弁体5の第1ガイド部(鍔部)513(X軸方向正側の面5131)に接触して、圧縮状態となっている。これにより、コイルバネ31は、弁体5を過不足なく安定して付勢することができる。
また、第1ガイド部(鍔部)513をバネ座として使用することにより、流路部材4の小型化を図ることができる。さらに、コイルバネ31と第1ガイド部513との接触面積を増大させ、デポジットが付着し得る領域の面積を削減することができる。
また、第1ガイド部513をバネ座することにより、電磁弁1の小型化に寄与するとともに、弁体収容部49の第1ガイド部513よりX軸方向正側において、デポジットが付着する領域を削減することもできる。
【0054】
第1ガイド部513と弁体収容部49の内周面490との離間距離は、コイルバネ31の線径より小さいことが好ましい。これにより、コイルバネ31が第1ガイド部513と弁体収容部49の内周面490との隙間に入り込み、コイルバネ31が弁体5から外れるのを好適に防止することができる。
ただし、第1ガイド部513と弁体収容部49の内周面490との離間距離は、コイルバネ31の線径より小さい限りにおいて、できるだけ大きいことが好ましい。これにより、デポジットの一部を第1ガイド部513よりX軸方向負側に移動させることができるため、第1ガイド部513よりX軸方向正側において残存するデポジットの量をより低減することができる。
【0055】
第1ガイド部513の外径は、コイルバネ31の内径より大きいことが好ましい。これにより、コイルバネ31が第1ガイド部513と弁体収容部49の内周面490との隙間に入り込むことをより確実に防止することができる。
また、閉状態では、第1ガイド部513のX軸方向の一部は、第1流路41が筒状空間48に開口する開口部410に露出する。かかる構成により、デポジットの第1流路41への掻き出し効果をより向上することができる。
【0056】
なお、第1ガイド部513は、そのX軸方向に沿った長さを小さくし、閉状態において弁体収容部49内に位置するように構成してもよい。かかる構成により、弁体5の弁体収容部49からの脱落を確実に防止することができる。
また、第1ガイド部513の軸方向に沿った長さを、径方向外側に向かって小さくなるように形成してもよい。この場合、第1ガイド部513と弁体収容部49の内周面490との接触を線接触とし(接触面積を低減し)、弁体5の摺動性の低下を防止することができる。
【0057】
特に、第1ガイド部513のX軸方向正側の面5131をX軸方向に対してほぼ垂直とし、X軸方向負側の面5132をX軸方向に対して傾斜させるのが好ましい。これにより、デポジットの掻き出し効果と、第1ガイド部513のバネ座としての機能とを良好に発揮させることができる。
第1ガイド部513を、閉状態において弁体収容部49内に位置するように構成する場合、X軸方向正側の面5131と開口部410との距離は、コイルバネ31の線径より小さいことが好ましい。これにより、弁体5の弁体収容部49からの脱落防止効果と、デポジットの掻き出し効果とをバランスよく発揮させることができる。
【0058】
以上、本発明の電磁弁を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電磁弁を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、電磁弁1は、前記実施形態ではエンジン等の内燃機関10を備える車両100に搭載して用いられた場合となっているが、電磁弁の適用箇所は、車両100に限定されない。また、電磁弁1によって通過と遮断とが切り換えられる流体も、気体(ブローバイガスQ)に限定されず、液体または気体と液体との混合物であってもよい。
【0059】
また、電磁弁1は、前記実施形態ではブローバイガスQが第1流路41から第2流路42に向かって流れる構成となっているが、電磁弁1の使用状態によっては、ブローバイガスQを第2流路42から第1流路41に向かって流すこともできる。
【符号の説明】
【0060】
1…電磁弁、2…ソレノイド、21…ボビン、211…貫通孔、212…フランジ、213…フランジ、214…外周部、22…プランジャ、221…プランジャピン、222…プランジャ本体、23…コイル、24…ケース、241…ケース本体、241a…胴部、241b…壁部、242…コネクタ部材、243…リング部材、25…コア、26…ヨーク、262…段差部、263…内側面、201…連結部材、202…ブッシュ、203…ブッシュ、3…弁機構、31…コイルバネ、32…連結部、33…ガスケット、4…流路部材、41…第1流路、410…開口部、42…第2流路、44…中継流路、45…ガスケット、48…筒状空間、49…弁体収容部、490…内周面、491…端面、5…弁体、51…本体部、511…装着部、513…第1ガイド部(鍔部)、5131、5132…面、513a…鍔部、513b…リング部、513c…連結部、514…第2ガイド部(小片部)、515…凹部、53…弁部、61…第2のシート部材、62…シート部材、621…コア部、622…外周面、623…突出部、624…空隙部、625…環状部、10…内燃機関、11…バッファ室、111…燃焼室、112…クランク室、113…バッファ室、114…内部流路、12…ピストン、13…クランク、14…外部流路、15…電磁弁、16…第1補助流路、17…電磁弁、18…第2補助流路、100…車両、AR…混合気、O1…軸、O41…中心軸、O42…中心軸、Q…ブローバイガス、L…距離

図1
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図3
図4
図5