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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/362 20210101AFI20241022BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241022BHJP
   B22F 12/13 20210101ALI20241022BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20241022BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241022BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20241022BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20241022BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20241022BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241022BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241022BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241022BHJP
【FI】
B22F10/362
B22F10/28
B22F12/13
B22F12/90
B29C64/153
B29C64/245
B29C64/268
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021069716
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164304
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】清水 六
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-071323(JP,A)
【文献】特開2019-045221(JP,A)
【文献】特開2019-210534(JP,A)
【文献】特開2021-031719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105,3/16,10/20,10/28,10/30,
10/362,12/10,12/13,12/30,12/90
B29C 64/153,64/245,64/268,64/393,
67/00
B33Y 10/00,30/00,50/02
G01B 11/16
G01D 5/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料及び前記粉末材料により構成された造形物を支持するプレートと、
前記プレート上に配置された前記粉末材料に対してビームを照射し加熱により前記粉末材料を溶融させるとともに、前記粉末材料を溶融させる前記加熱を行う前に、前記プレート上の前記粉末材料に対して前記ビームを照射し、前記粉末材料の融点未満の温度で前記粉末材料を加熱する予備加熱を行うビーム照射部と、
前記プレートの歪量分布を計測する状態センサと、
前記状態センサによって計測された歪量分布に基づいて、前記プレート内において歪が発生している歪位置を特定し、特定された前記歪位置における歪みが減少するように前記ビーム照射部による予備加熱の入熱量を制御する制御装置と、を備える、三次元造形装置。
【請求項2】
前記状態センサは、光ファイバセンサである、請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記光ファイバセンサは、平面視において前記プレートに渦巻き状に配置されている、請求項2に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記光ファイバセンサは、平面視において前記プレートに格子状に配置されている、請求項2に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記光ファイバセンサは、平面視において前記プレートに往復配置されている、請求項2に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
前記状態センサは、前記歪量分布を計測するとともに、前記プレートの温度分布を計測する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記状態センサによって計測された歪量分布に基づいて、前記プレートに歪が生じていないと判定された場合に、前記温度分布に基づいて前記プレートの温度が均一になるように前記ビーム照射部による予備加熱の入熱量を制御する、請求項6に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業テーブル(造形プレート)上に原料である粉末を層状に配置して、この粉末層の選択した部分に電子ビームを照射して順次溶融し、三次元製品(造形物)を製造する装置がある(例えば特許文献1参照)。このような三次元製品を製造する装置では、一つの粉末層の選択した部分を溶融させ、溶融した粉末が硬化した後に、その上に形成された別の粉末層の選択した部分を溶融し硬化させる。このように、溶融(硬化)と積層とが繰り返されることによって、三次元製品が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2017/081812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元造形装置では、積層された粉末層の予備加熱が行われながら、造形物が製造され得る。この場合、例えば、粉末層のうち、造形物に相当する部分に対する入熱量が他の部分に対する入熱量に比べて大きくなることにより、造形プレートにおける温度分布が一様ではなくなることがある。これにより、造形プレートに歪が発生し、適切な造形が困難になることが考えられる。
【0005】
本開示の一形態は、造形プレートに歪が発生することを抑制できる三次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る三次元造形装置は、粉末材料及び粉末材料により構成された造形物を支持するプレートと、プレート上に配置された粉末材料に対してビームを照射し、粉末材料の予備加熱を行うビーム照射部と、プレートの歪量分布を計測する状態センサと、状態センサによって計測された歪量分布に基づいて、プレート内において歪が発生している歪位置を特定し、特定された歪位置における歪みが減少するようにビーム照射部による予備加熱の入熱量を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
上記の三次元造形装置は、プレートの歪量分布を計測する状態センサを有している。そのため、造形物の造形工程におけるビームの照射によってプレートに歪が発生したときに、歪量分布に基づいて歪位置が特定される。粉末材料の予備加熱に際しては、歪位置における歪が減少するように予備加熱の入熱量が制御されるため、プレートにおける歪を抑制できる。
【0008】
一例の状態センサは、光ファイバセンサであってもよい。この構成では、少ない数(例えば1つ)の状態センサによって、プレートの歪量分布を取得できる。
【0009】
一例の光ファイバセンサは、平面視においてプレートに渦巻き状に配置されていてもよい。この構成では、光ファイバをプレートの面内に容易に張り巡らせることができる。
【0010】
一例の光ファイバセンサは、平面視においてプレートに格子状に配置されていてもよい。この構成では、光ファイバをプレートの面内に容易に張り巡らせることができる。
【0011】
一例の光ファイバセンサは、平面視においてプレートに往復配置されていてもよい。この構成では、光ファイバをプレートの面内に容易に張り巡らせることができる。
【0012】
一例の状態センサは、歪量分布を計測するとともに、プレートの温度分布を計測してもよい。この構成では、例えば、歪位置における温度データを取得することができる。
【0013】
一例の制御装置は、状態センサによって計測された歪量分布に基づいて、プレートに歪が生じていないと判定された場合に、温度分布に基づいてプレートの温度が均一になるようにビーム照射部による予備加熱の入熱量を制御してもよい。この構成では、プレートの温度が不均一になることによってプレートに歪が生じることが抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一形態によれば、造形プレートに歪が発生することを抑制できる三次元造形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一例の三次元造形装置を示す縦断面図である。
図2】一例の造形プレートを下側から見た平面模式図である。
図3】一例の三次元造形装置の制御系統を示すブロック図である。
図4】三次元造形装置における入熱量制御の動作の一例を説明するフロー図である。
図5】他の例の造形プレートを下側から見た平面模式図である。
図6】さらに他の例の造形プレートを下側から見た平面模式図である。
図7】さらに他の例の造形プレートを下側から見た平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1に示す三次元造形装置は、いわゆる3D(三次元)プリンタである。以下の説明では、三次元造形装置を単に、「造形装置」と称する。造形装置1は、粉末材料2に電子ビームを照射して粉末材料2の予備加熱をする工程と、粉末材料2に対し電子ビームを照射し、粉末材料2を溶融させて物体の一部を造形する工程とを繰り返し、凝固した粉末材料を積層させて物体の造形を行う。予備加熱は、物体の造形前に、粉末材料2の融点未満の温度で粉末材料2を加熱する処理である。この予備加熱により、粉末材料2が加熱されて仮焼結され、電子ビームの照射による粉末材料2への負電荷の蓄積が抑制されて、電子ビームの照射時に粉末材料2が飛散して舞い上がるスモーク現象を抑制することができる。なお、以下の説明では、予備加熱を予熱と称する場合がある。
【0018】
造形物3は、例えば機械部品などである。なお、造形物3は、その他の構造物であってもよい。粉末材料2は、例えばチタン系金属粉末、インコネル(登録商標)粉末、アルミニウム粉末、ステンレス粉末等の金属粉末であってよい。なお、造形物3の材料である粉末材料は、金属粉末に限定されない。粉末材料は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)など、炭素繊維と樹脂を含んでもよい。また、粉末材料は、その他の材料を含んでもよい。例えば、粉末材料は、導電性を有する導電体材料を含んでもよい。
【0019】
造形装置1は、真空チャンバ4と、作業テーブル5と、昇降装置6と、粉末供給装置7と、電子線照射装置8(ビーム照射部)と、造形タンク10と、制御装置18と、を備える。真空チャンバ4は、内部を真空(低圧)状態とすることが可能な容器である。真空チャンバ4には、図示しない真空ポンプが接続されている。作業テーブル5の形状は、例えば板状である。作業テーブル5の形状は、平面視において、例えば円形である。作業テーブル5の形状は、円形に限定されない。作業テーブル5の形状は、矩形でもよい。また、作業テーブル5の形状は、その他の形状でもよい。
【0020】
作業テーブル5上には造形プレート15が配置される。造形プレート15上には、造形物3の材料である粉末材料2が配置される。造形プレート15上の粉末材料2は、例えば層状に複数回に分けて配置される。図2は、造形プレート15の下面を模式的に示す平面図である。一例の造形プレート15は、平面視において略円形状を有する板状をなしている。例えば、造形プレート15は、金属製の板部材であってよく、一例としてステンレス鋼(例えばSUS304)であってよい。また、造形プレート15のZ方向における厚さは、特に限定されないが、一例として10mm程度であってよい。造形プレート15には、光ファイバセンサ16(状態センサ)が設けられている。光ファイバセンサ16は、造形プレート15の温度分布を計測するとともに、造形プレート15の歪量分布を計測する状態センサである。
【0021】
一例の光ファイバセンサ16は、計測器17に接続された光ファイバ16aを含む。例えば、光ファイバセンサ16では、計測器17に含まれる光源から光ファイバ16aに入力光が入力される。光ファイバ16aの長手方向における各位置では、入力光によってレイリー散乱光が生じる。レイリー散乱光は、反射光となって計測器17に入力される。計測器17は、取得されたレイリー散乱光を解析することにより、光ファイバ16aの長手方向の各位置における温度及び歪量を導出する。一例において、反射光の解析には、光周波数領域反射測定法(OFDR:Optical Frequency Domain Reflectometry)が用いられてよい。計測器17は、導出された温度及び歪量を制御装置18に出力する。なお、歪量は、光ファイバの長さの変化量の割合であってよい。歪量は、光ファイバの長さの変化量が正の場合(膨張による歪)に正の数値として導出されてよく、光ファイバの長さの変化量が負の場合(収縮による歪)に負の数値として導出されてよい。
【0022】
光ファイバ16aは、造形プレート15の下面に固定されている。図2に示すように、光ファイバ16aは、平面視において造形プレート15の面内に張り巡らされている。例えば、造形プレート15の下面を略均等に複数の解析領域に仮想的に分割した場合、光ファイバセンサ16は、全ての解析領域を通過するように下面に固定されている。一例において、光ファイバ16aは、造形プレート15の下面に渦巻き状に配置されている。渦巻き状に配置とは、外周から中心に向かって、中心までの距離が漸次又は段階的に小さくなるように配置されること、又は、中心から外周に向かって、中心からの距離が漸次又は段階的に大きくなるように配置されることをいう。図示例では、光ファイバ16aは、径方向に隣り合う光ファイバ16a同士の間隔がいずれの位置でも同じになるように、造形プレート15の外周から中心に向かって渦巻き状に湾曲して配置されている。例えば、解析領域が正方形である場合、解析領域の一辺の長さは、径方向に隣り合う光ファイバ同士の間隔と同じであってもよい。分解能を高くしたい場合、すなわち、解析領域を小さくしたい場合には、光ファイバ16aが密に配置される。
【0023】
作業テーブル5及び造形プレート15は、真空チャンバ4内において、造形タンク10内に配置されている。造形タンク10内において、作業テーブル5は、Z方向(上下方向)に移動可能である。そして、作業テーブル5は、粉末材料2の層数に応じて順次降下する。造形タンク10の側壁10aは、作業テーブル5の移動をガイドする。側壁10aの形状は、作業テーブル5の外形に対応する。例えば、作業テーブル5の形状が円板状であるとき、側壁10aの形状は、円筒形状であってよい。また、作業テーブル5の形状が矩形であるとき、側壁10aの形状は、角筒形状であってよい。造形タンク10の側壁10a及び作業テーブル5は、粉末材料2及び造形された造形物3を収容する収容部を形成する。作業テーブル5は、造形タンク10の底部を構成してもよい。
【0024】
昇降装置6は、作業テーブル5を昇降させる。昇降装置6が作業テーブル5を昇降させることにより、作業テーブル5上の造形プレート15、造形プレート15上の粉末材料2及び造形物3は、昇降する。昇降装置6は、例えばラックアンドピニオン方式の駆動機構を含む。これらの機構により、昇降装置6は、作業テーブル5をZ方向に移動させる。昇降装置6は、上下方向部材6a(ラック)と、駆動源6bと、を含む。上下方向部材6aは、作業テーブル5の裏面に連結されて下方に延びる棒状の部材である。駆動源6bは、上下方向部材6aを駆動する。駆動源6bとしては、例えば電動モータを用いてよい。電動モータの出力軸にはピニオンが設けられる。そして、上下方向部材6aの側面にはピニオンと噛み合う歯形が設けられる。電動モータが駆動されると、ピニオンが回転する。このピニオンの回転によって動力が伝達される。その結果、上下方向部材6aが上下方向に移動する。電動モータの回転を停止すると、上下方向部材6aが位置決めされる。その結果、作業テーブル5のZ方向の位置が決まるので、作業テーブル5の位置が保持される。昇降装置6は、ラックアンドピニオン方式の駆動機構に限定されない。例えば、昇降装置6は、ボールねじ、シリンダなど、その他の駆動機構を備えてもよい。
【0025】
粉末供給装置7は、原料タンク11を含む。原料タンク11は、原料である粉末材料2を貯留する貯留部である。原料タンク11は、真空チャンバ4内に配置されている。原料タンク11は、Z方向において作業テーブル5より上方に配置されている。原料タンク11は、例えば、Z方向と交差するX方向において、電子線照射装置8による電子線の照射領域Dの両側に配置されている。原料タンク11の底部には、吐出口が設けられている。吐出口は、例えばY方向に連続している。Y方向は、X方向及びZ方向に交差する方向である。
【0026】
原料タンク11よりも下方には、造形タンク10の側壁10aの上端部から側方に延びる張出板12が設けられている。張出板12は、作業テーブル5の周囲において、Z方向に交差する平面、すなわちX方向及びY方向に沿った平面を形成している。
【0027】
粉末供給装置7は、粉末材料2を均す粉末塗布機構であるリコータ7aを含む。リコータ7aは、作業テーブル5及び張出板12の上方で、X方向に移動可能である。リコータ7aは、この移動によって、張出板12上に堆積する粉末材料2を作業テーブル5上に掻き寄せる。さらに、リコータ7aは、この移動によって、作業テーブル5上の粉末材料2の積層物の最上層の表面2a(上面)を均す。以下、「粉末材料2の積層物」を粉末床Aという。リコータ7aは、粉末床Aの表面2aに当接して、粉末床Aの高さを均一にする。リコータ7aは、Y方向に所定の幅を有する。粉末塗布機構のY方向の長さは、例えば作業テーブル5のY方向の全長に対応している。粉末供給装置7は、リコータ7aを水平方向に沿って移動させる機構として、例えばラックアンドピニオン方式の駆動機構を含んでもよい。
【0028】
電子線照射装置8は、エネルギビームとしての電子ビーム(電子線)を照射する電子銃(不図示)を含む。図1では、出射された電子ビームが通過する照射領域Dを2点鎖線で示している。電子銃から出射された電子ビームは、真空チャンバ4内に照射される。電子ビームは、粉末材料2を加熱する。つまり、電子線照射装置8は、粉末材料2にエネルギを付与する。
【0029】
電子線照射装置8は、電子ビームの照射を制御するコイル装置を含んでもよい。コイル装置は、例えば収差コイル、フォーカスコイル及び偏向コイルを備える。収差コイルは、電子銃から出射される電子ビームの周囲に設置され、電子ビームを収束させる。フォーカスコイルは、電子銃から出射される電子ビームの周囲に設置され、電子ビームのフォーカス位置のずれを補正する。偏向コイルは、電子銃から出射される電子ビームの周囲に設置され、電子ビームの照射位置を調整する。偏向コイルは、電磁的なビーム偏向を行う。電磁的なビーム偏向によれば、電子ビームの照射時における走査速度が機械的なビーム偏向よりも高速になる。電子銃及びコイル部は、真空チャンバ4の上部に配置されている。電子銃から出射された電子ビームは、コイル部によって、収束され、焦点位置が補正され、走査速度が制御され、粉末材料2の照射位置に到達する。
【0030】
制御装置18は、造形装置1の動作を制御する。制御装置18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアと、を含むコンピュータである。制御装置18は、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含む。制御装置18の各機能は、CPUの制御の下で入出力部を動作させ、データの読み出し及び書き込みを行うことによって実現される。制御装置18の形態及び配置場所については特に限定されない。
【0031】
図3は、一例の三次元造形装置の制御装置を説明するためのブロック図である。図3に示すように、制御装置18は、電子線照射装置8、粉末供給装置7、昇降装置6及び計測器17と電気的に接続されている。また、制御装置18は、機能部として、駆動制御部18aと、粉末供給制御部18bと、照射制御部18cと、を含む。
【0032】
駆動制御部18aは、昇降装置6に対して制御信号を出力し、昇降装置6の動作を通じて作業テーブル5の昇降制御を行う。例えば、駆動制御部18aは、造形の初期において作業テーブル5を造形タンク10の上部の位置に配置させ、造形物3の造形が進むに連れて作業テーブル5を降下させる。
【0033】
粉末供給制御部18bは、粉末供給装置7に対し制御信号を出力し、粉末材料2の供給制御を行う。例えば、粉末供給制御部18bは、作業テーブル5の上面に一定量の粉末材料2が供給されるように原料タンク11を制御する。また、粉末供給制御部18bは、作業テーブル5上の粉末材料2の表面層が敷き均されるように、リコータ7aの動作を制御する。
【0034】
照射制御部18cは、電子線照射装置8に対して制御信号を出力し、電子ビームの出射制御を行う。一例の照射制御部18cは、設定された照射位置に電子ビームが照射されるように、電子線照射装置8を制御する。例えば、照射制御部18cは、収差コイルを制御して、電子ビームを収束させる。照射制御部18cは、フォーカスコイルを制御して、電子ビームのフォーカス位置を制御する。照射制御部18cは、偏向コイルを制御して、電子ビームの照射位置(照射方向)を制御する。
【0035】
一例において、照射制御部18cは、電子ビームの照射によって造形物3の造形と粉末材料2の予熱とが実施されるように、電子線照射装置8に対して制御信号を出力する。造形物3を造形するための電子ビームの照射位置は、造形物3の断面のスライスデータに基づいて設定され得る。一例において、造形物3のスライスデータは、造形物3の三次元CAD(Computer-Aided Design)データに基づいて取得され得る。例えば、造形物3の上下の位置に応じて複数のスライスデータが取得され得る。1層分のスライスデータは、粉末材料2の1層分に対応している。スライスデータに基づいて設定された照射位置に電子ビームが照射されることにより、造形物3の造形が実施される。
【0036】
また、粉末材料2の予熱を実施するために、照射制御部18cは、造形プレート15上に配置された粉末材料2に対する電子線照射装置8による予熱の入熱量を照射位置ごとに制御する。一例において、照射制御部18cは、光ファイバセンサ16によって計測された造形プレート15の温度分布、及び、光ファイバセンサ16によって計測された造形プレート15の歪量分布に基づいて、予熱の入熱量を制御する。
【0037】
例えば、照射制御部18cは、計測器17によって導出された温度データ及び歪量データを取得する。一例において、温度データ及び歪量データは、光ファイバセンサ16における光ファイバ16aの長手方向の位置に対応したデータである。そこで、照射制御部18cは、温度データ及び歪量データに基づいて、造形プレート15における温度分布及び歪量分布を取得する。温度分布は、造形プレート15上の位置ごとにおける温度データであり、歪量分布は、造形プレート15上の位置ごとにおける歪量データであってよい。例えば、照射制御部18cは、光ファイバセンサの長手方向の位置と造形プレート15上の位置との対応関係を示すデータを参照することにより、造形プレート15における温度分布及び歪量分布を導出してもよい。
【0038】
照射制御部18cは、取得された歪量分布のデータに基づいて、造形プレート15内に歪が発生しているか否かを判定する。例えば、照射制御部18cは、歪量分布のデータを所定の閾値と比較し、閾値以上の歪量が計測されている場合に、造形プレート15内に歪が発生していると判定する。
【0039】
照射制御部18cは、歪が発生している位置(以下、歪位置という場合がある)を特定する。例えば、照射制御部18cは、歪量分布のデータを所定の閾値と比較し、閾値以上の歪量が計測されている造形プレート15内の位置を歪位置として特定してもよい。
【0040】
照射制御部18cは、入熱補正計算を実行し得る。入熱補正計算は、造形プレート15内における温度分布を均一にするために必要となる、照射位置ごとの入熱量を導出するための計算であってよい。例えば、照射制御部18cは、電子ビームによる入熱量と粉末材料の上昇温度との対応関係が示されたデータを有していてよい。照射制御部18cは、入熱量と上昇温度との対応関係に基づいて、予熱後に造形プレート15の温度分布が均一な状態に近付くように、予熱前の温度分布に基づいて入熱量を算出する。例えば、温度が高い位置における入熱量は、温度が低い位置における入熱量よりも小さくなる。なお、入熱量は、電子ビームの照射時間として算出されてもよい。
【0041】
照射制御部18cは、歪補正計算を実行し得る。歪補正計算は、造形プレート15内における歪量分布を均一にするために必要となる、照射位置ごとの入熱量を導出するための計算であってよい。例えば、照射制御部18cは、歪量と、歪量を低減するための入熱量との対応関係を示すデータを有していてよい。一例において、正の歪量を低減させるための入熱量は、通常の予熱における基準となる入熱量よりも小さく設定されおり、負の歪量を低減させるための入熱量は、通常の予熱における基準となる入熱量よりも大きく設定されていてよい。照射制御部18cは、歪量と入熱量との対応関係に基づいて、歪位置における入熱量を算出する。なお、通常の予熱における基準となる入熱量は、粉末材料の成分によって任意に決定されてよい。例えば、通常の予熱における基準となる入熱量は、粉末材料の融点未満の所定の温度であってよい。
【0042】
照射制御部18cは、予熱照射パスを生成し得る。予熱照射パスは、造形プレート15内の照射位置ごとにおける予熱動作での入熱量を示すデータであってよい。照射制御部18cは、入熱量補正計算又は歪補正計算の結果に基づいて、歪位置を含む造形プレート15内の全域における照射位置ごとの入熱量を導出する。照射制御部18cは、生成された予熱照射パスに従って予熱が実行されるように、電子線照射装置8を制御する。すなわち、電子線照射装置8によって照射される電子ビームの照射位置及びエネルギは、予熱照射パスによって決定される。
【0043】
図4は、造形装置1の予熱動作の一例を示すフロー図である。予熱動作が実行される際、まず、制御装置18の照射制御部18cによって、光ファイバセンサ16のセンサ情報が取得される(ステップS1)。すなわち、照射制御部18cは、計測器17から取得される温度データ及び歪量データに基づいて、造形プレート15内の位置ごとにおける温度を示す温度分布と、造形プレート15内の位置ごとにおける歪量を示す歪量分布とを導出する。
【0044】
続いて、照射制御部18cは、造形プレート15内に歪が発生しているか否かを判定する(ステップS2)。当該判定は、ステップS1で取得された歪量分布に基づいて行われる。ステップS2で歪が発生していないと判定された場合、照射制御部18cは、造形プレート15内の温度が均一か否かを判定する(ステップS3)。当該判定は、ステップS1で取得された温度分布に基づいて行われる。ステップS3で温度が均一であると判定された場合、照射制御部18cは、造形プレート15の位置ごとの入熱量が同じになるように、予熱照射パスを生成する(ステップS6)。照射制御部18cは、当該予熱照射パスに従って予熱が実行されるように、電子線照射装置8による電子ビームの照射を制御する(ステップS7)。
【0045】
ステップS3において温度が均一ではないと判定された場合、照射制御部18cは、歪位置を特定するとともに、入熱補正計算を実施する(ステップS4)。すなわち、照射制御部18cは、予熱後の造形プレート15の温度分布が均一に近付くように、造形プレート15の位置ごとの入熱量を算出する。照射制御部18cは、入熱補正計算の結果に基づいて予熱照射パスを生成する(ステップS6)。照射制御部18cは、当該予熱照射パスに従って予熱が実行されるように、電子線照射装置8による電子ビームの照射を制御する(ステップS7)。
【0046】
ステップS2において歪が発生していると判定された場合、照射制御部18cは、歪補正計算を実施する(ステップS5)。すなわち、照射制御部18cは、予熱後の造形プレート15の歪量分布が均一に近付くように、造形プレート15の位置ごとの入熱量を算出する。照射制御部18cは、歪補正計算の結果に基づいて予熱照射パスを生成する(ステップS6)。照射制御部18cは、当該予熱照射パスに従って予熱が実行されるように、電子線照射装置8による電子ビームの照射を制御する(ステップS7)。
【0047】
以上説明したように、三次元造形装置1は、粉末材料2を支持する造形プレート15と、造形プレート15上に配置された粉末材料2に対して電子ビームを照射し、粉末材料2の予備加熱を行う電子線照射装置8と、造形プレート15の歪量分布を計測する光ファイバセンサ16(状態センサ)と、光ファイバセンサ16によって計測された歪量分布に基づいて、造形プレート15内において歪が発生している歪位置を特定し、特定された歪位置における歪みが減少するように電子線照射装置8による予備加熱の入熱量を制御する制御装置18と、を備える。
【0048】
上記の三次元造形装置1では、造形物3の造形工程において、予熱のために粉末材料2に電子ビームが照射されるとともに、造形物3の形状に応じた所定の位置に溶融又は焼結のために電子ビームが照射される。このように、造形プレート15上の位置に応じて電子ビームの入熱量が異なることにより、造形プレート15の温度分布が不均一になり、造形プレート15に歪が生じることが考えられる。一例の三次元造形装置1は、造形プレート15の歪量分布を計測する光ファイバセンサ16を有している。そのため、造形プレート15に歪が発生したときには、歪量分布に基づいて歪位置が特定される。粉末材料2の予備加熱に際しては、歪位置における歪が減少するように予備加熱の入熱量が制御されるので、造形プレート15における歪を抑制できる。
【0049】
一例においては、光ファイバセンサ16によって歪量分布が取得されている。このように、歪量分布の取得が光ファイバセンサによって実施される構成では、少ない数(例えば1つ)のセンサによって、造形プレート15の歪量分布を取得できる。
【0050】
一例の光ファイバセンサ16は、平面視において造形プレート15に渦巻き状に配置されている。この構成では、光ファイバ16aを造形プレート15の面内に容易に張り巡らせることができる。
【0051】
一例の光ファイバセンサ16は、歪量分布を計測するとともに、造形プレート15の温度分布を計測する。この構成では、例えば、歪位置における温度データを取得することができる。また、この構成では、温度分布に基づいて予熱の入熱量を制御することができる。すなわち、一例の制御装置18は、光ファイバセンサ16によって計測された歪量分布に基づいて、造形プレート15に歪が生じていないと判定された場合に、温度分布に基づいて造形プレート15の温度が均一になるように電子線照射装置8による予備加熱の入熱量を制御することができる。この構成では、造形プレート15の温度が不均一になることによって造形プレート15に歪が生じることが抑制される。
【0052】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0053】
例えば、図5は、他の例の造形プレートを下側から見た平面模式図である。図5に示すように、光ファイバ16aは、円板状をなす造形プレート15の下面に往復配置されてもよい。往復配置は、先端に向かう方向が互いに逆向きになる往路配置と復路配置とを含み、往路配置と復路配置とが交互に形成される配置態様である。光ファイバ16aが往復配置される構成では、光ファイバ16aを造形プレート15の面内に容易に張り巡らせることができる。
【0054】
また、図6及び図7は、さらに他の例の造形プレートを下側から見た平面模式図である。図6に示すように、光ファイバ16aは、矩形状をなす造形プレート15の下面に渦巻き状に配置されてもよい。図7に示すように、光ファイバ16aは、矩形状をなす造形プレート15の下面に格子状に配置されてもよい。格子状配置は、互いに直交する2つの往復配置によって形成されており、張り巡らされた光ファイバ16aによって格子模様が形成されている。光ファイバ16aが格子状に配置される構成では、光ファイバ16aを造形プレート15の面内に容易に張り巡らせることができる。
【0055】
また、三次元造形装置は、ヒータ等の外部熱源によって粉末材料の予備加熱を実行してもよい。この場合、造形プレート内の位置ごとに予熱による入熱量を変化させることができるように、複数のヒータが設けられてもよい。
【0056】
また、造形プレートは、中空の板状に形成されてもよい。この場合、光ファイバセンサを構成する光ファイバは、造形プレートの内側空間内に配置されてもよい。
【0057】
また、歪量分布及び温度分布は、光ファイバセンサ以外の状態センサによって取得されてもよい。例えば、複数の熱電対及び複数のひずみゲージを造形プレートに取り付けることによって、造形プレートの温度分布及び歪量分布を取得してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 造形装置(次元造形装置)
2 粉末材料
3 造形物
8 電子線照射装置(ビーム照射部)
18 制御装置
15 造形プレート
16 光ファイバセンサ
17 計測器
16a 光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7