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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】モータ診断装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20241022BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241022BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20241022BHJP
   H02P 29/62 20160101ALI20241022BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20241022BHJP
【FI】
H02P29/024
H02M7/48 M
H02K11/25
H02P29/62
B60L3/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021077288
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022170975
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
(72)【発明者】
【氏名】外海 憲彦
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121378(JP,A)
【文献】特開2019-037022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02M 7/48
H02K 11/25
H02P 29/62
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの劣化に影響するパラメータを、時間間隔をおいて測定する測定部と、
前記パラメータの測定値を複数の数値範囲に区分することにより前記測定値の度数分布を生成する生成部と、
前記度数分布に基づき、前記数値範囲ごとの前記モータの耐久性に応じた閾値に対する前記測定値の度数の比の合計値を算出する第1算出部と、
前記合計値から前記モータの寿命を算出する第2算出部とを有する、
モータ診断装置。
【請求項2】
前記測定部は、複数の種類の前記パラメータを測定し、
前記生成部は、前記パラメータの測定値を前記種類ごとに前記複数の数値範囲に区分することにより前記測定値の度数分布を生成し、
前記第1算出部は、前記種類ごとに前記合計値を算出する
請求項に記載のモータ診断装置。
【請求項3】
前記第2算出部は、前記種類ごとの前記合計値の平均値から前記モータの寿命を算出する、
請求項に記載のモータ診断装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記パラメータとして、前記モータの温度、前記モータが起動から停止するまでの期間内の前記モータの最高温度と起動時の温度差、前記モータの回転による応力、前記モータのトルクによる応力の少なくとも1つを測定する、
請求項1乃至の何れかに記載のモータ診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、診断装置が、電動車両に搭載された二次電池の劣化に関する情報から、二次電池の再利用の可否を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-78025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池だけでなく、電動車両に搭載されたモータも使用するうちに劣化する。モータについて、二次電池のような利用または交換を想定した場合、再利用の可否や交換時期を、例えばモータの目視などにより高精度に判断することは難しい。
【0005】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、モータの寿命を高精度に診断することができるモータ診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載のモータ診断装置は、モータの劣化に影響するパラメータを、時間間隔をおいて測定する測定部と、前記パラメータの測定値を複数の数値範囲に区分することにより前記測定値の度数分布を生成する生成部と、前記度数分布に基づき、前記数値範囲ごとの前記モータの耐久性に応じた閾値に対する前記測定値の度数の比の合計値を算出する第1算出部と、前記合計値から前記モータの寿命を算出する第2算出部とを有する。
【0008】
上記の構成において、前記測定部は、複数の種類の前記パラメータを測定し、前記生成部は、前記パラメータの測定値を前記種類ごとに前記複数の数値範囲に区分することにより前記測定値の度数分布を生成し 前記第1算出部は、前記種類ごとに前記合計値を算出してもよい。
【0009】
上記の構成において、前記第2算出部は、前記種類ごとの前記合計値の平均値から前記モータの寿命を算出してもよい。
【0010】
上記の構成において、前記測定部は、前記パラメータとして、前記モータの温度、前記モータが起動から停止するまでの期間内の前記モータの最高温度と起動時の温度差、前記モータの回転による応力、前記モータのトルクによる応力の少なくとも1つを測定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータの寿命を高精度に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】モータシステムの一例を示す構成図である。
図2】モータ診断装置の一例を示す構成図である。
図3】検出値情報、モータ稼働情報、及び測定値情報の一例を示す図である。
図4】度数分布情報及び保証値情報の一例を示す図である。
図5】モータの診断処理の一例を示すフローチャートである。
図6】温度センサの検出値の時刻変化の一例を示す図である。
図7】レインフロー法に従って回転数及びトルクに基づくモータの応力成分を導出する方法の一例を示す図である。
図8】修正Goodman法に従った応力成分の換算の例を示す図である。
図9】温度の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。
図10】トリップ温度変化の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。
図11】回転応力の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。
図12】トルク応力の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。
図13】補正済みの寿命減少率Ra~Rdの平均値と寿命値の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(モータシステムの構成)
図1は、モータシステム9の一例を示す構成図である。モータシステム9は、例えばハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載される。モータシステム9は、モータ診断装置1、温度センサ2、回転数センサ3、トルクセンサ4、イグニッションスイッチ(IG-SW)5、駆動制御回路6、インバータ回路7、モータ8、駆動軸81、ディファレンシャルギア82、及び車輪83,84を有する。
【0014】
モータ8は、一例として車両の車輪(前輪または後輪)83,84の駆動に用いられる。モータ8は、駆動軸81を介してディファレンシャルギア82に接続されている。ディファレンシャルギア82は、モータ8のトルクを減速比に応じた駆動力として車輪83,84に伝達する。また、モータ8は発電などに用いられる。なお、車両に搭載されるモータ数に限定はない。
【0015】
インバータ回路7は3相交流電流を生成してモータ8に出力する。インバータ回路7は、それぞれ、例えば3相分の上アーム及び下アームに対応する複数個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを有する。各IGBTは、駆動制御回路6から入力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号によりオンオフ制御される。なお、インバータ回路7は、IGBTに代えて他の種類のトランジスタを有してもよい。
【0016】
駆動制御回路6は、例えばマイクロコントローラなどを含み、不図示のアクセル及びブレーキの操作量や車両の走行状態などに応じてインバータ回路7を駆動制御する。駆動制御回路6は、例えばモータ8から目標のトルクが出力されるようにPWM信号をインバータ回路7に出力する。
【0017】
IG-SW5はモータ8を始動または停止させる。IG-SW5がオンされると、オン信号が駆動制御回路6に出力され、IG-SW5がオフされると、オフ信号が駆動制御回路6に出力される。駆動制御回路6は、オン信号を受信すると駆動制御回路6を起動することによりモータ8を始動させ、オフ信号を受信すると駆動制御回路6を停止することによりモータ8を停止させる。IG-SW5のオン信号及びオフ信号はモータ診断装置1にも出力される。
【0018】
モータ診断装置1はモータ8の寿命を診断する。モータ診断装置1は、モータ8の劣化に影響するパラメータを測定して、測定値の度数分布からモータ8の寿命を算出する。本例では、パラメータとして、モータ8の温度、モータ8が起動から停止するまでの期間(以下、トリップ期間と表記)内のモータ8の最高温度と起動時の温度差(以下、トリップ温度変化と表記)、モータ8の回転による応力(以下、回転応力と表記)、モータ8のトルクによる応力(以下、トルク応力と表記)を挙げるが、これに限定されない。
【0019】
モータ診断装置1は、上記のパラメータの測定処理において、温度センサ2、回転数センサ3、及びトルクセンサ4から検出値を収集する。温度センサ2はモータ8の温度を検出する。回転数センサ3はモータ8の回転数を検出する。トルクセンサ4はモータ8のトルクを検出する。
【0020】
(モータ診断装置の構成)
図2は、モータ診断装置1の一例を示す構成図である。モータ診断装置1は、例えば、電動車両内のECU(Electronic Control Unit)、あるいは電動車両の外部に設けられたサーバなどのコンピュータである。
【0021】
モータ診断装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、ROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、ストレージメモリ13、通信ポート14、及び出力デバイス15を有する。CPU10は、互いに信号の入出力ができるように、ROM11、RAM12、ストレージメモリ13、通信ポート14、及び出力デバイス15と、バス19を介して電気的に接続されている。
【0022】
ROM11は、CPU10を駆動するプログラムが格納されている。RAM12は、CPU10のワーキングメモリとして機能する。
【0023】
通信ポート14は、例えばCAN(Controller Area Network)あるいは無線LAN(Local Area Network)の通信回路であり、CPU10と温度センサ2、回転数センサ3、トルクセンサ4、及びIG-SW5の間の通信を中継する。CPU10は、温度センサ2、回転数センサ3、及びトルクセンサ4から通信ポート14を介してモータ8の温度、回転数、及びトルクの各検出値をそれぞれ取得し、IG-SW5から通信ポート14を介してオン信号またはオフ信号を受信する。
【0024】
出力デバイス15は、CPU10からバス19を介して入力された情報を外部の表示装置などに出力する。出力デバイス15の出力先の装置としては、例えばディスプレイ及びタッチパネルなどが挙げられる。出力デバイス15は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現される回路である。
【0025】
ストレージメモリ13は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュロムなどの不揮発性メモリである。ストレージメモリ13は、検出値情報130、モータ稼働情報131、測定値情報132、度数分布情報133、及び保証値情報134を保持する。
【0026】
CPU10は、ROM11からプログラムを読み込むと、機能として、動作制御部100、測定処理部101、度数分布生成部102、寿命減少率算出部103、及び寿命値算出部104を生成する。動作制御部100はモータ診断装置1の動作を全体的に制御する。動作制御部100は、プログラムに規定されたシーケンスに従って測定処理部101、度数分布生成部102、寿命減少率算出部103、及び寿命値算出部104の各動作を制御する。測定処理部101、度数分布生成部102、寿命減少率算出部103、及び寿命値算出部104は、動作制御部100を介して情報を互いに入出力する。
【0027】
測定処理部101は、測定部の一例であり、モータ8の劣化に影響するパラメータを、時間間隔をおいて測定する。測定処理部101は、温度センサ2、回転数センサ3、及びトルクセンサ4から通信ポート14を介してモータ8の温度、回転数、及びトルクの各検出値をそれぞれ取得し、IG-SW5から通信ポート14を介してオン信号またはオフ信号を受信する。
【0028】
測定処理部101は、温度センサ2、回転数センサ3、及びトルクセンサ4の各検出値を例えば周期的に取得して、その取得時刻とともに検出値情報130としてストレージメモリ13に記録する。なお、測定処理部101は例えばCPU10のタイマ回路により時刻を検出する。測定処理部101は、例えば所定回数分の検出値を取得するたびに測定処理を行う。
【0029】
また、測定処理部101は、IG-SW5から出力されるオン信号及びオフ信号に基づいてモータ稼働情報131をストレージメモリ13に記録する。モータ稼働情報131はモータ8の起動時刻または停止時刻を示す。
【0030】
測定処理部101は、各検出値に基づきモータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力を測定する。例えば測定処理部101は、温度センサ2の検出値とモータ稼働情報131からトリップ温度変化を測定する。また、測定処理部101は、回転数センサ及びトルクセンサ4の各検出値からレインフロー法及び修正Goodman線図を用いて回転応力及びトルク応力をそれぞれ測定する。測定処理部101は、モータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値を測定値情報132としてストレージメモリ13に記録する。
【0031】
測定処理部101は測定処理の終了を動作制御部100に通知する。動作制御部100は測定処理の終了通知を受けると、度数分布生成部102に各測定値の度数分布の生成を指示する。
【0032】
度数分布生成部102は、生成部の一例であり、動作制御部100の指示に従い、モータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値をそれぞれ複数の数値範囲(階級)に区分することにより各測定値の度数分布を生成する。度数分布生成部102は、各測定値の度数分布を示す度数分布情報133をストレージメモリ13に記録する。度数分布生成部102は度数分布の生成処理の終了を動作制御部100に通知する。動作制御部100は、度数分布の生成処理の終了通知を受けると、寿命減少率算出部103にモータ8の寿命減少率の算出を指示する。
【0033】
寿命減少率算出部103は、動作制御部100の指示に従い、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値について、度数分布情報133及び保証値情報134に基づきモータ8の寿命減少率を算出する。保証値情報134は、各測定値の度数分布における数値範囲(階級)ごとに予め定められた保証値を示す。保証値はモータ8の耐久性に応じた度数の閾値の一例であり、度数分布の何れかの階級の度数がその保証値を超えない限り、仕様上で目標とするモータ8の寿命が保証される。
【0034】
寿命減少率は、各測定値の度数分布における階級ごとの度数の保証値に対する比であり、モータ8の寿命の減少量を示す指標値である。寿命減少率は、モータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各々の測定値について算出される。寿命減少率算出部103は、各測定値について寿命減少率の算出処理の終了を動作制御部100に通知する。動作制御部100は、寿命減少率の算出処理の終了通知を受けると、寿命値算出部104にモータ8の寿命値の算出を指示する。
【0035】
寿命値算出部104は、各測定値についての寿命減少率からモータ8の寿命値を算出する。寿命値は、モータ8の寿命、つまりモータ8が劣化により使用不可能となるまでの期間の目安を示す指標値である。寿命値算出部104はモータ8の寿命値を出力デバイス15に出力する。これにより、モータ8の寿命値が例えばディスプレイなどの外部装置に表示される。
【0036】
次にストレージメモリ13に格納される検出値情報130、モータ稼働情報131、測定値情報132、度数分布情報133、及び保証値情報134の例を挙げる。
【0037】
図3は、検出値情報130、モータ稼働情報131、及び測定値情報132の一例を示す図である。検出値情報130は、時刻(一例として「1」,「2」,「3」,・・・とする。)、モータ8の温度の検出値T1,T2,T3,・・・、モータ8の回転数の検出値N1,N2,N3,・・・、及びモータ8のトルクの検出値Q1,Q2,Q3,・・・を示す。取得時刻は、測定処理部101が各検出値を取得した時刻を示す。例えば測定処理部101が一定の時間間隔をおいて各検出値を取得する場合、取得時刻同士の間隔も一定であるが、一定でなくてもよい。
【0038】
モータ稼働情報131は時刻及びモータ8の稼働状態を示す。時刻は、測定処理部101がIG-SW5からオン信号またはオフ信号を受信した時刻を示す。モータ8の稼働状態は、オン信号の受信時、起動となり、オフ信号の受信時、停止となる。測定処理部101は、モータ8の起動時刻(「1」)及び停止時刻(「10000」)からトリップ期間を判定する。
【0039】
測定値情報132は、モータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値を示す。温度の測定値は温度センサ2の検出値と同一である。トリップ温度変化は、トリップ期間内の最初の温度の検出値と最高温度の検出値の差分として算出される。回転応力は、回転数の検出値の二乗を簡易的に応力とみなし、レインフロー法及び修正Goodman線図を用いて算出される。トルク応力は、トルクの検出値を簡易的に応力とみなし、レインフロー法及び修正Goodman線図を用いて算出される。なお、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値の算出方法は後述する。
【0040】
図4は、度数分布情報133及び保証値情報134の一例を示す図である。度数分布情報133は、モータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値の度数を範囲(階級)ごとに示す。例えば温度の測定値の度数分布において、a1以上a2未満の範囲(a1~a2)の度数はFa[1]であり、a2以上a3未満の範囲(a2~a3)の度数はFa[2]である。トリップ温度変化の測定値の度数分布において、b1以上b2未満の範囲(b1~b2)の度数はFb[1]であり、b2以上b3未満の範囲(b2~b3)の度数はFb[2]である。
【0041】
回転応力の測定値の度数分布において、c1以上c2未満の範囲(c1~c2)の度数はFc[1]であり、c2以上c3未満の範囲(c2~c3)の度数はFc[2]である。トルク応力の測定値の度数分布において、d1以上d2未満の範囲(d1~d2)の度数はFd[1]であり、d2以上d3未満の範囲(d2~d3)の度数はFd[2]である
【0042】
保証値情報134は、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各測定値の範囲ごとの度数の保証値を示す。例えば温度の測定値について、a1以上a2未満の範囲(a1~a2)の保証値はFa_g[1]であり、a2以上a3未満の範囲(a2~a3)の保証値はFa_g[2]である。トリップ温度変化の測定値について、b1以上b2未満の範囲(b1~b2)の保証値はFb_g[1]であり、b2以上b3未満の範囲(b2~b3)の保証値はFb_g[2]である。
【0043】
回転応力の測定値について、c1以上c2未満の範囲(c1~c2)の保証値はFc_g[1]であり、c2以上c3未満の範囲(c2~c3)の保証値はFc_g[2]である。トルク応力の測定値について、d1以上d2未満の範囲(d1~d2)の保証値はFd_g[1]であり、d2以上d3未満の範囲(d2~d3)の保証値はFd_g[2]である。
【0044】
例えば温度の測定値について、a1以上a2未満の範囲の度数Fa[1]が保証値Fa_g[1]を越えた場合、あるいはa2以上a3未満の範囲の度数Fa[2]が保証値Fa_g[2]を越えた場合、モータ8の寿命は尽きるとみなすことができる。また、トリップ温度変化の測定値について、b1以上b2未満の範囲の度数Fb[1]が保証値Fb_g[1]を越えた場合、あるいはb2以上b3未満の範囲の度数Fb[2]が保証値Fb_g[2]を越えた場合、モータ8の寿命は尽きるとみなすことができる。なお、回転応力及びトルク応力の各測定値についても、上記と同様に度数が保証値を越えた場合、モータ8の寿命は尽きるとみなすことができる。
【0045】
(モータの診断処理)
図5は、モータ8の診断処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、例えばモータ8の使用中、繰り返し実行される。
【0046】
まず、測定処理部101は、モータ8の温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の測定処理を実行する(ステップSt1)。このとき、測定処理部101は、温度センサ2、回転数センサ3、及びトルクセンサ4の各検出値を例えば周期的に取得して検出値情報130をストレージメモリ13に記録する。また、測定処理部101は、IG-SW5からオン信号及びオフ信号を受信してモータ稼働情報131をストレージメモリ13に記録する。
【0047】
また、測定処理部101は、温度センサ2、回転数センサ3、及びトルクセンサ4の各検出値に基づきトリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力をそれぞれ算出することで測定する。測定処理部101は、温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の測定値情報132をストレージメモリ13に記録する。
【0048】
次に度数分布生成部102は、測定値情報132から温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の度数分布情報133を生成する(ステップSt2)。このとき、度数分布生成部102は、温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の測定値の範囲(階級)を判定し、その範囲の度数を測定値の個数分だけ加算する。
【0049】
次に寿命減少率算出部103は、度数分布情報133及び保証値情報134から、温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各度数について寿命減少率を算出する(ステップSt3)。なお、寿命減少率の算出方法は後述する。
【0050】
次に寿命値算出部104は、温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力の各寿命減少率からモータ8の寿命値を算出する(ステップSt4)。このとき、出力デバイス15は寿命値を例えばディスプレイなどに出力する。なお、寿命値の算出方法は後述する。
【0051】
このようにモータ8の診断処理は実行される。以下に各処理の詳細について述べる。
【0052】
(トリップ温度変化の算出方法)
図6は、温度センサ2の検出値の時刻変化の一例を示す図である。測定処理部101は、IG-SW5のオンオフをオン信号及びオフ信号の受信により検出してモータ稼働情報131として記録する。IG-SW5は、例えば、時刻Ts1,Ts2でオンになり、時刻Te1,Te2でオフとなる。時刻Ts1~Te1をトリップ#1と表記し、時刻Ts2~Te2をトリップ#2と表記する。
【0053】
測定処理部101は、モータ稼働情報131からトリップ#1,#2を判定し、温度センサ2の検出値情報130から各トリップ#1,#2内の最初の温度Tf1,Tf2及び最高温度Tp1,Tp2を特定する。ここで、トリップ#1,#2内の最初の温度Tf1,Tf2はモータ8の起動時の温度に該当する。測定処理部101は、温度Tf1と最高温度Tp1の差ΔT1、温度Tf2と最高温度Tp1の差ΔT2、及び温度Tf2と最高温度Tp2の差ΔT3をトリップ温度変化として算出する。
【0054】
このように、測定処理部101はトリップ温度変化を測定する。このため、モータ診断装置1は、トリップ温度変化がモータ8に与える負荷に基づきモータ8の寿命値を算出することができる。
【0055】
(回転応力及びトルク応力の算出方法)
図7は、レインフロー法に従って回転数及びトルクに基づくモータの応力成分を導出する方法の一例を示す図である。測定処理部101は、検出値情報130から回転数及びトルクの検出値を取得する。測定処理部101は、回転応力として、モータ8に作用する遠心力(=質量×回転半径×角速度)に基づき回転数の検出値の二乗を用い、トルク応力としてトルクの検出値を用いる。
【0056】
符号G1aは、回転数の検出値の二乗(以下、単に回転数と表記)、またはトルクの検出値の時刻変化の例を示す。測定処理部101は、ポイントPa~Piで示されるように回転数及びトルクの波形の山及び谷を検出する。
【0057】
測定処理部101は、レインフロー法に従って回転数またはトルクの応力成分を計数する。符号G1bは、回転数またはトルクの応力成分を計数結果の一例である。測定処理部101は、波形からポイントPa~Pbの区間、ポイントPb~Pcの区間、ポイントPc~Pdの区間、ポイントPd~Pe及びPe’~Pgの区間、ポイントPe~Pf及びPf~Pe’の区間、ポイントPg~Phの区間、及びポイントPh~Piの区間を応力成分として抽出する。ここで、ポイントPe’~Pgの区間は、ポイントPeの値が直前のポイントPcの値より大きいため、レインフロー法に従ってポイントPd~Peの区間とともに1つの区間に併合される(点線参照)。サイクル数は、ポイントPe~Pf及びPf~Pe’の区間が1で、それ以外の区間は0.5となる。
【0058】
測定処理部101は、区間ごとに応力振幅σa及び平均応力σmを算出する。応力振幅σaは波形の山と谷の間の大きさである。例えばポイントPa~Pbの区間の場合、ポイントPa,Pbの間の大きさの差分である。また、平均応力σmは波形の山と谷の中間の平均値である。例えばポイントPa~Pbの区間の場合、ポイントPa,Pbの中間の大きさである。
【0059】
図8は、修正Goodman法に従った応力成分の換算の例を示す図である。符号G2aは、回転応力を算出する場合の平均応力σm及び応力振幅σaの修正Goodman線図である。ポイントp1~p3は、図7の符号G1bで示される応力振幅σa及び平均応力σmをプロットした点である。
【0060】
また、修正Goodman線Lは、例えばモータ8を構成するロータやステータなどの疲労破壊対象の部品の金属材料の物性に応じた両振り引張り圧縮限度σwb(Pa)及び引張応力σB(Pa)により決定される。回転応力はモータ8に生ずる遠心力に基づくため、回転応力の作用する方向は、回転の中心から外側に向かう一方向のみである。したがって、回転応力は完全片振りの疲労限度のパラメータとして表される。
【0061】
このため、測定処理部101は、ポイントp1~p3を修正Goodman線Lと平行にσa=σmの直線上に移動したポイントp1’~p3’(矢印参照)の縦軸の座標(σa)を回転応力として算出する。
【0062】
回転応力=(σB×σa+σwb+σm)/(σB+σwB) ・・・(1)
【0063】
具体的には、測定処理部101は、各ポイントp1~p3の座標である応力振幅σa及び平均応力σmから上記の式(1)に従って回転応力を算出する。例えばσa=72.3×10(rpm)及びσm=36.2×10(rpm)の場合、σB=349(rpm)及びσwb=511(rpm)と仮定すると、回転応力は56.5×10(rpm)と算出される。このようにして、測定処理部101は回転応力を算出する。なお、測定処理部101は、回転数の検出値の二乗を応力とみなして回転応力を算出するため、回転応力の単位(rpm)は実際の応力の単位(Pa)とは異なる。
【0064】
また、符号G2bは、トルク応力を算出する場合の平均応力σm及び応力振幅σaの修正Goodman線図である。ここで、符号G2aの修正Goodman線図と共通する内容には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0065】
トルク応力はモータ8に生ずる捻じる力に基づくため、トルク応力の作用する方向にはプラス方向及びマイナス方向が存在する。したがって、トルク応力は両振りの疲労限度のパラメータとして表される。
【0066】
このため、測定処理部101は、ポイントp1~p3を修正Goodman線Lと平行にσm=0の直線上、つまり縦軸上に移動したポイントp1’~p3’(矢印参照)の縦軸の座標(σa)をトルク応力として算出する。
【0067】
トルク応力=σa+σwb/σB+|σm| ・・・(2)
【0068】
具体的には、測定処理部101は、各ポイントp1~p3の座標である応力振幅σa及び平均応力σmから上記の式(2)に従って回転応力を算出する。例えばσa=150(Nm)及びσm=70(Nm)の場合、σB=730(Nm)及びσwb=320(Nm)と仮定すると、トルク応力は181(Nm)と算出される。このようにして、測定処理部101はトルク応力を測定する。なお、測定処理部101は、トルクの検出値を応力とみなしてトルク応力を算出するため、トルク応力の単位(Nm)は実際の応力の単位(Pa)とは異なる。
【0069】
上述したように、測定処理部101は、回転応力を完全片振りの疲労限度のパラメータとして算出し、トルク応力を両振りの疲労限度のパラメータとして算出する。これにより、回転応力は、図7の符号G1aに示される波形の谷を基準とする値となるのに対して、トルク応力は、その波形の山と谷の中間点を基準とする値となる。したがって、測定処理部101は、回転応力及びトルク応力の間の作用方向の差分があるにも関わらず、同一基準の測定値を得ることができる。
【0070】
(寿命減少率の算出方法)
図9は、温度の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。横軸は、温度を示し、a1~a2、a2~a3、・・・、a(n)~a(n+1)(n:2以上の整数)の数値範囲(階級)に区分されている。縦軸は温度の測定値の度数Fa[1]~Fa[n]を示す。
【0071】
度数分布生成部102は、温度の測定値情報132から度数分布情報133を生成する。例えば度数分布生成部102は、測定値情報132が示す温度が属する数値範囲a(i)~a(i+1)(i:正の整数)を特定し、その数値範囲に属する温度の累積数から度数Fa[i]を得る。度数分布生成部102は、測定値情報132の全ての温度の測定値から度数Fa[i]を算出することにより、温度の測定値に関する度数分布情報133を生成する。
【0072】
Ra=(Fa[1]/Fa_g[1])+(Fa[2]/Fa_g[2])+
(Fa[3]/Fa_g[3])+・・・+(Fa[n]/Fa_g[n])
・・・(3)
【0073】
寿命減少率算出部103は、数値範囲a(i)~a(i+1)ごとに温度の測定値の度数Fa[i]を保証値Fa_g[i]と比較する。例えば寿命減少率算出部103は、温度の測定値情報132及び保証値情報134から上記の式(3)に従って温度の寿命減少率Raを算出する。寿命減少率算出部103は、数値範囲a(i)~a(i+1)ごとの保証値Fa_g[i]に対する温度の測定値の度数Fa[i]の比の合計値として寿命減少率Raを算出する。このため、モータ診断装置1は、温度の測定値の数値範囲a(i)~a(i+1)ごとの温度によるモータ8の劣化を寿命値に反映することができる。
【0074】
図10は、トリップ温度変化の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。横軸は、トリップ温度変化を示し、b1~b2、b2~b3、・・・、b(n)~b(n+1)の数値範囲(階級)に区分されている。縦軸はトリップ温度変化の測定値の度数Fb[1]~Fb[n]を示す。
【0075】
度数分布生成部102は、トリップ温度変化の測定値情報132から度数分布情報133を生成する。例えば度数分布生成部102は、測定値情報132が示すトリップ温度変化が属する数値範囲b(i)~b(i+1)を特定し、その数値範囲に属するトリップ温度変化の累積数から度数Fb[i]を得る。度数分布生成部102は、測定値情報132の全てのトリップ温度変化の測定値から度数Fb[i]を算出することにより、トリップ温度変化の測定値に関する度数分布情報133を生成する。
【0076】
Rb=(Fb[1]/Fb_g[1])+(Fb[2]/Fb_g[2])+
(Fb[3]/Fb_g[3])+・・・+(Fb[n]/Fb_g[n])
・・・(4)
【0077】
寿命減少率算出部103は、数値範囲b(i)~b(i+1)ごとにトリップ温度変化の測定値の度数Fb[i]を保証値Fb_g[i]と比較する。例えば寿命減少率算出部103は、トリップ温度変化の測定値情報132及び保証値情報134から上記の式(4)に従ってトリップ温度変化の寿命減少率Rbを算出する。寿命減少率算出部103は、数値範囲b(i)~b(i+1)ごとの保証値Fb_g[i]に対するトリップ温度変化の測定値の度数Fb[i]の比の合計値として寿命減少率Rbを算出する。このため、モータ診断装置1は、温度の測定値の数値範囲b(i)~b(i+1)ごとのトリップ温度変化によるモータ8の劣化を寿命値に反映することができる。
【0078】
図11は、回転応力の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。横軸は、回転応力を示し、c1~c2、c2~c3、・・・、c(n)~c(n+1)の数値範囲(階級)に区分されている。縦軸は回転応力の測定値の度数Fc[1]~Fc[n]を示す。
【0079】
度数分布生成部102は、回転応力の測定値情報132から度数分布情報133を生成する。例えば度数分布生成部102は、測定値情報132が示す回転応力が属する数値範囲c(i)~c(i+1)を特定し、その数値範囲に属する回転応力の累積数から度数Fc[i]を得る。度数分布生成部102は、測定値情報132の全ての回転応力の測定値から度数Fc[i]を算出することにより、回転応力の測定値に関する度数分布情報133を生成する。
【0080】
Rc=(Fc[1]/Fc_g[1])+(Fc[2]/Fc_g[2])+
(Fc[3]/Fc_g[3])+・・・+(Fc[n]/Fc_g[n])
・・・(5)
【0081】
寿命減少率算出部103は、数値範囲c(i)~c(i+1)ごとに回転応力の測定値の度数Fc[i]を保証値Fc_g[i]と比較する。例えば寿命減少率算出部103は、回転応力の測定値情報132及び保証値情報134から上記の式(5)に従って回転応力の寿命減少率Rcを算出する。寿命減少率算出部103は、数値範囲c(i)~c(i+1)ごとの保証値Fc_g[i]に対する回転応力の測定値の度数Fc[i]の比の合計値として寿命減少率Rcを算出する。このため、モータ診断装置1は、回転応力の測定値の数値範囲c(i)~c(i+1)ごとの回転応力によるモータ8の劣化を寿命値に反映することができる。
【0082】
図12は、トルク応力の測定値の度数分布及び保証値の例を示す図である。横軸は、トルク応力を示し、d1~d2、d2~d3、・・・、d(n)~d(n+1)の数値範囲(階級)に区分されている。縦軸はトルク応力の測定値の度数Fd[1]~Fd[n]を示す。
【0083】
度数分布生成部102は、トルク応力の測定値情報132から度数分布情報133を生成する。例えば度数分布生成部102は、測定値情報132が示すトルク応力が属する数値範囲d(i)~d(i+1)を特定し、その数値範囲に属するトルク応力の累積数から度数Fd[i]を得る。度数分布生成部102は、測定値情報132の全てのトルク応力の測定値から度数Fd[i]を算出することにより、トルク応力の測定値に関する度数分布情報133を生成する。
【0084】
Rd=(Fd[1]/Fd_g[1])+(Fd[2]/Fd_g[2])+
(Fd[3]/Fd_g[3])+・・・+(Fd[n]/Fd_g[n])
・・・(6)
【0085】
寿命減少率算出部103は、数値範囲d(i)~d(i+1)ごとにトルク応力の測定値の度数Fd[i]を保証値Fd_g[i]と比較する。例えば寿命減少率算出部103は、トルク応力の測定値情報132及び保証値情報134から上記の式(6)に従ってトルク応力の寿命減少率Rdを算出する。寿命減少率算出部103は、数値範囲d(i)~d(i+1)ごとの保証値Fd_g[i]に対するトルク応力の測定値の度数Fd[i]の比の合計値として寿命減少率Rdを算出する。このため、モータ診断装置1は、トルク応力の測定値の数値範囲d(i)~d(i+1)ごとのトルク応力によるモータ8の劣化を寿命値に反映することができる。
【0086】
このように、度数分布生成部102は、温度、トリップ温度変化、回転応力、及ぶトルク応力ごとに、つまり測定対象のパラメータの種類ごとに測定値を複数の数値範囲に区分することにより測定値の度数分布を生成する。寿命減少率算出部103は、パラメータの種類ごとに測定値の度数Fa[i],Fb[i],Fc[i],Fd[i]を保証値Fa_g[i],Fb_g[i],Fc_g[i],Fd_g[i]と比較する。
【0087】
したがって、モータ診断装置1は、複数のパラメータによる劣化の影響をモータ8の寿命値に反映することができる。なお、寿命減少率算出部103は比較部の一例である。また、寿命減少率Ra~Rdは、保証値Fa_g[i],Fb_g[i],Fc_g[i],Fd_g[i]に対する度数Fa[1],Fb_g[i],Fc_g[i],Fd_g[i]の比の一例である。
【0088】
(寿命値の算出方法)
寿命値算出部104は、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力についての寿命減少率Ra~Rdからモータ8の寿命値Vを算出する。寿命値算出部104は、寿命減少率算出部103の比較結果からモータ8の寿命を算出する算出部の一例である。
【0089】
V=1-(Ra/Ha+Rb/Hb+Rc/Hc+Rd/Hd)/4・・・(7)
【0090】
例えば寿命値算出部104は、寿命減少率Ra~Rdから上記の式(7)に基づきモータ8の寿命値Vを算出する。式(7)において、補正値Ha~Hdは、寿命減少率Ra~Rdを補正する値である。
【0091】
モータ8の実際の寿命は、保証値Fa_g[i],Fb_g[i],Fc_g[i],Fd_g[i]が保証する仕様上のモータ8の寿命も目標値より長い。このため、寿命値算出部104は、予め試験や机上の検討により決定された補正値Ha~Hdにより寿命減少率Ra~Rdを補正することにより、実際の寿命に対する誤差を低減する。
【0092】
寿命値算出部104は、1から補正済みの寿命減少率Ra~Rdの平均値を減ずることにより寿命値Vを算出する。これにより、モータ診断装置1は、モータ8の寿命を診断する。
【0093】
図13は、補正済みの寿命減少率Ra~Rdの平均値と寿命値Vの関係の一例を示す図である。寿命値Vは寿命減少率Ra~Rdの平均値が増加するほど、低下する。このように寿命値算出部104は、寿命減少率Ra~Rdの平均値からモータ8の寿命を算出するため、温度、トリップ温度変化、回転応力、及びトルク応力によるモータ8の劣化の影響を平均的に寿命値Vに反映することができる。
【0094】
また、寿命値Vは、モータ診断装置1から外部のディスプレイなどに出力されるため、ユーザは寿命値Vからモータ8の使用可能なおおよその期間を知ることができる。なお、モータ診断装置1は、寿命減少率Ra~Rdと寿命値Vの関係をマップ情報としてストレージメモリ13に記憶しておき、寿命減少率Ra~Rdからマップ情報を参照して寿命値Vを算出してもよい。
【0095】
これまで述べたように、モータ診断装置1は、測定処理部101、度数分布生成部102、寿命減少率算出部103、及び寿命値算出部104を有する。測定処理部101は、モータ8の劣化に影響するパラメータを、時間間隔をおいて測定する。度数分布生成部102は、各パラメータの測定値をそれぞれ複数の数値範囲(階級)に区分することにより各測定値の度数分布を生成する。
【0096】
寿命減少率算出部103は、数値範囲ごとに測定値の度数Fa[i],Fb[i],Fc[i],Fd[i]を保証値Fa_g[i],Fb_g[i],Fc_g[i],Fd_g[i]と比較する。び寿命値算出部104は、寿命減少率算出部103の比較結果からモータ8の寿命を算出する。
【0097】
したがって、モータ診断装置1は、モータ8の劣化に影響するパラメータの測定値の度数分布と保証値の比較結果に基づき、モータ8の寿命を高精度に診断することができる。
【0098】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 モータ診断装置
2 温度センサ
3 回転数センサ
4 トルクセンサ
5 イグニッションスイッチ
8 モータ
10 CPU
100 動作制御部
101 測定処理部(測定部)
102 度数分布生成部(生成部)
103 寿命減少率算出部(比較部)
104 寿命値算出部(算出部)
133 度数分布情報
134 保証値情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13