(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G01B11/26 H
(21)【出願番号】P 2021077741
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉井 誠
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-109440(JP,A)
【文献】特表2018-516178(JP,A)
【文献】特開2008-196989(JP,A)
【文献】特開2018-079548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G01B 5/24
G01N 21/84-21/958
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工用の工具の円錐逃げ角を測定する測定装置であって、
前記工具を回転可能に保持するホルダと、
光線を照射する投光部と、
前記投光部から照射された光線を受光する受光部と、
前記円錐逃げ角を算出する算出部と、を備え、
前記ホルダの回転軸線を第1軸線とし、前記第1軸線に直交する軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び前記第2軸線の何れにも直交する軸線を第3軸線としたとき、
前記投光部は、前記第3軸線に沿う方向に光線を照射し、
前記受光部は、前記第1軸線を挟んで前記投光部に向かい合っており、
前記工具の回転軸線が前記第1軸線と一致するように前記ホルダが前記工具を保持した状態で、前記投光部が前記受光部に光線を照射する第1照射処理と、
前記ホルダの前記工具に対する保持状態が前記第1照射処理と同じであり、且つ、前記ホルダの回転位置が前記第1照射処理とは異なる状態で、前記投光部が前記受光部に光線を照射する第2照射処理と、
前記第1照射処理によって特定される、前記工具の逃げ面上の第1特定箇所での前記第1軸線に沿う方向の位置、及び、前記第2照射処理によって特定される、前記逃げ面上における前記第1特定箇所と前記第2軸線に沿う方向での位置が同じ第2特定箇所での前記第1軸線に沿う方向の位置の差を、後退距離として前記算出部が取得する第1取得処理と、
前記第1照射処理のときの前記ホルダの回転位置、及び、前記第2照射処理のときの前記ホルダの回転位置の差を、回転角として前記算出部が取得する第2取得処理と、
前記後退距離及び前記回転角に基づいて前記算出部が前記逃げ面の前記円錐逃げ角を算出する算出処理と、を実行する
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドリル及びエンドミルといった切削加工用の工具の取り付け位置を測定する測定装置が記載されている。特許文献1の測定装置は、投光部と、受光部とを備えている。投光部は、受光部に向かって光線を照射する。このとき、工具の先端を、投光部と受光部との間に配置する。これにより、受光部には、工具の先端形状に応じた影が投影される。特許文献1の測定装置は、受光部に投影された影の位置に基づき、工作機械の主軸に対する工具の取り付け位置を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば
図7に示すように、特許文献1に記載されているようなドリル60は、2つのランド70と、2つの溝部80とを備えている。ここで、ドリル60の回転軸線60Aを中心にして切削加工の際にドリル60が回転する方向を第1回転方向R1とし、第1回転方向R1とは反対方向を第2回転方向R2とする。ランド70及び溝部80は、第1回転方向R1において交互に位置している。各ランド70は、ドリル60の回転軸線60Aを中心として螺旋状に延びている。各ランド70の巻き方向は、ドリル60の先端から基端に向かうほど第2回転方向R2に進む方向である。溝部80は、ランド70とランド70との間の空間部分である。
【0005】
図7に示すように、ランド70は、切れ刃71と、逃げ面72とを備えている。切れ刃71は、回転軸線60Aに沿う方向でドリル60の先端を視たときに、ランド70の第1回転方向R1の縁の部分である。したがって、切れ刃71は、概ねドリル60の回転軸線60Aの付近から、当該回転軸線60Aから離れるように外側に向かって延びている。逃げ面72は、ランド70の先端面のうち、切れ刃71に隣接する部分である。したがって、逃げ面72は、切れ刃71に対して第2回転方向R2に隣接している。逃げ面72では、ドリル60の回転軸線60Aに対する傾斜角度が箇所毎に異なっている。具体的には、
図8に示すように、逃げ面72とドリル60の回転軸線60Aとがなす鋭角75は、逃げ面72上を第2回転方向R2に向かうにしたがって小さくなっている。なお、上ではドリル60について説明したが、エンドミルなどの他の切削加工用の工具においても、同様に逃げ面を有している。
【0006】
さて、特許文献1に記載されているような工具に対して、検品などのために、
図8に示すように、逃げ面72と回転軸線60Aとがなす鋭角75の変化の大きさ、いわゆる円錐逃げ角EAを測定したいことがある。ここで、切れ刃71が延びる向きに対して直交する方向からドリル60を側面視したときに、回転軸線60Aに直交する線を仮想線K1とする。また、同側面視において、逃げ面72における基端側の縁と切れ刃71との交点73において、逃げ面72の縁に対して引ける接線を接線K2とする。例えば、円錐逃げ角EAは、仮想線K1と接線K2とがなす鋭角として表現される。特許文献1の測定装置では、工作機械の主軸に対する工具の取り付け位置を測定できるのみで、円錐逃げ角EAを測定することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための測定装置は、切削加工用の工具の円錐逃げ角を測定する測定装置であって、前記工具を回転可能に保持するホルダと、光線を照射する投光部と、前記投光部から照射された光線を受光する受光部と、前記円錐逃げ角を算出する算出部と、を備え、前記ホルダの回転軸線を第1軸線とし、前記第1軸線に直交する軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び前記第2軸線の何れにも直交する軸線を第3軸線としたとき、前記投光部は、前記第3軸線に沿う方向に光線を照射し、前記受光部は、前記第1軸線を挟んで前記投光部に向かい合っており、前記工具の回転軸線が前記第1軸線と一致するように前記ホルダが前記工具を保持した状態で、前記投光部が前記受光部に光線を照射する第1照射処理と、前記ホルダの前記工具に対する保持状態が前記第1照射処理と同じであり、且つ、前記ホルダの回転位置が前記第1照射処理とは異なる状態で、前記投光部が前記受光部に光線を照射する第2照射処理と、前記第1照射処理によって特定される、前記工具の逃げ面上の第1特定箇所での前記第1軸線に沿う方向の位置、及び、前記第2照射処理によって特定される、前記逃げ面上における前記第1特定箇所と前記第2軸線に沿う方向での位置が同じ第2特定箇所での前記第1軸線に沿う方向の位置の差を、後退距離として前記算出部が取得する第1取得処理と、前記第1照射処理のときの前記ホルダの回転位置、及び、前記第2照射処理のときの前記ホルダの回転位置の差を、回転角として前記算出部が取得する第2取得処理と、前記後退距離及び前記回転角に基づいて前記算出部が前記逃げ面の前記円錐逃げ角を算出する算出処理と、を実行する。
【0008】
工具の円錐逃げ角は、回転角に対して後退距離が大きいほど大きくなる。すなわち、工具の円錐逃げ角は、後退距離及び回転角から一義的に定まる。したがって、上記構成によれば、取得した後退距離及び回転角に基づいて、工具の円錐逃げ角を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】逃げ角測定方法における事前照射処理等を示す説明図。
【
図4】逃げ角測定方法における第1照射処理等を示す説明図。
【
図5】逃げ角測定方法における回転処理等を示す説明図。
【
図6】逃げ角測定方法における第2照射処理等を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<測定装置の概略構成>
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。先ず、測定装置10の概略構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、測定装置10は、テーブル11、刃物台12、支持プレート13、及びホルダ14を備えている。テーブル11の形状は、略四角板形状である。なお、以下の説明では、テーブル11の主面に沿う特定の軸線をX軸線XJとする。なお、主面とは、板状の部材の外面のうち、最も面積の大きい平面である。また、テーブル11の主面に沿う軸線であってX軸線XJに直交する軸線をY軸線YJとする。さらに、X軸線XJ及びY軸線YJの何れにも直交する軸線をZ軸線ZJとする。なお、Z軸線ZJに沿う2つの方向のうちの一方を上方向UD、その反対方向を下方向DDとする。本実施形態において、X軸線XJは第1軸線、Y軸線YJは第2軸線、Z軸線ZJは第3軸線に相当する。
【0012】
刃物台12は、テーブル11の上方向UDの面上に位置している。刃物台12の形状は、略四角板形状である。刃物台12の主面は、テーブル11の主面と向かい合っている。刃物台12は、図示しないスライダ機構により、テーブル11に対して相対移動可能である。刃物台12は、テーブル11に対して、X軸線XJに沿う方向、及びY軸線YJに沿う方向に移動可能である。
【0013】
支持プレート13は、刃物台12における上方向UDを向く面に固定されている。支持プレート13の形状は略四角板形状である。支持プレート13の主面は、X軸線XJに沿う方向を向いている。したがって、支持プレート13は、刃物台12から立ち上がっている。
【0014】
ホルダ14は、支持プレート13に連結している。ホルダ14の形状は略円筒形状である。ホルダ14は、X軸線XJに沿う方向において支持プレート13を貫通している。したがって、ホルダ14の回転軸線14Aは、X軸線XJと平行である。ホルダ14は、当該ホルダ14の回転軸線14Aを中心にして、支持プレート13に対して回転可能である。なお、以下では、ホルダ14の回転軸線14Aは、X軸線XJと一致しているものとして説明する。また、ホルダ14の一端は、切削加工用の工具を保持可能である。したがって、ホルダ14は、切削加工用の工具を回転可能に保持する。切削加工用の工具の一例は、ドリル60、及びエンドミル等である。なお、上述したとおり、刃物台12はテーブル11に対して、X軸線XJに沿う方向及びY軸線YJに沿う方向に移動可能である。したがって、ホルダ14も、刃物台12及び支持プレート13と共に、X軸線XJに沿う方向及びY軸線YJに沿う方向に移動可能である。
【0015】
測定装置10は、投光部21、受光部22、及び第1ディスプレイ23を備えている。投光部21は、X軸線XJから視て、下方向DD側に位置している。また、投光部21は、ホルダ14のうちの工具を保持する側の端の直下に位置している。投光部21は、上方向UDに向けて光線を照射する。
【0016】
受光部22は、X軸線XJから視て、投光部21とは反対側、すなわち上方向UD側に位置している。受光部22は、投光部21から照射された光線を受光する。受光部22及び投光部21は、X軸線XJを挟んで、向かい合っている。
【0017】
第1ディスプレイ23は、受光部22に接続している。第1ディスプレイ23は、受光部22に投影された工具の影などを表示する。
図3に示すように、第1ディスプレイ23は、X軸線XJに沿う仮想線X1と、Y軸線YJに沿う仮想線Y1と、これらの仮想線X1及び仮想線Y1の交点としての原点25とを表示する。これら仮想線X1、仮想線Y1、及び原点25は、第1ディスプレイ23上での方向及び位置の基準となる。
【0018】
図1に示すように、測定装置10は、X軸検出センサ31、Y軸検出センサ32、回転位置検出センサ33、算出部41、入力器42、及び第2ディスプレイ43を備えている。X軸検出センサ31は、刃物台12をスライド移動させるためのスライダ機構に内蔵されている。X軸検出センサ31は、X軸線XJに沿う方向での、テーブル11に対するホルダ14の位置を、X軸値XVとして検出する。Y軸検出センサ32は、刃物台12をスライド移動させるためのスライダ機構に内蔵されている。Y軸検出センサ32は、Y軸線YJに沿う方向での、テーブル11に対するホルダ14の位置を、Y軸値YVとして検出する。回転位置検出センサ33は、ホルダ14に連結している。回転位置検出センサ33は、支持プレート13に対するホルダ14の回転位置RVを検出する。回転位置RVは、基準となる回転位置を0度とし、0度以上360度未満の範囲で変化する。すなわち、ホルダ14が1回転すると、回転位置RVは元の値に戻る。回転位置検出センサ33の一例は、ロータリーエンコーダである。
【0019】
算出部41は、X軸値XVを示す信号をX軸検出センサ31から取得する。算出部41は、Y軸値YVを示す信号をY軸検出センサ32から取得する。算出部41は、回転位置RVを示す信号を回転位置検出センサ33から取得する。
【0020】
入力器42は、算出部41に接続している。入力器42は、当該入力器42を操作する作業者の指令等を算出部41に入力するためのデバイスである。入力器42の一例は、キーボードである。第2ディスプレイ43は、算出部41に接続している。第2ディスプレイ43は、各種の情報を表示するデバイスである。
【0021】
上記の算出部41は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。なお、算出部41は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0022】
<逃げ角測定方法>
次に、測定装置10を用いて円錐逃げ角EAを測定する逃げ角測定方法について説明する。なお、測定対象となるドリル60は、ランド70及び溝部80を備えている。また、ランド70は、切れ刃71及び逃げ面72を備えている。なお、ドリル60の構成は、上述した従来技術と同じであるため、詳しい説明を省略する。
【0023】
図2に示すように、逃げ角測定方法では、ステップS11の処理を行う。ステップS11において、作業者は、ドリル60の保持処理を実行する。具体例としては、作業者は、ドリル60をホルダ14に挿入する。このとき、作業者は、ドリル60の回転軸線60Aをホルダ14の回転軸線14Aと一致、すなわちX軸線XJと一致させる。また、X軸線XJに沿う方向からドリル60を視たときに、ドリル60の切れ刃71がZ軸線ZJと直交するように、ホルダ14を回転させる。その後、処理をステップS20に進める。
【0024】
図2に示すように、ステップS20において、作業者は、事前移動処理を実行する。具体例としては、作業者は、刃物台12をスライド移動させる。このとき、
図3に示すように、Y軸線YJに沿う方向において、ドリル60の回転軸線60Aを、第1ディスプレイ23の原点25と一致させる。その後、処理をステップS21に進める。
【0025】
図2に示すように、ステップS21において、測定装置10は、事前照射処理を実行する。具体的には、
図3に示すように、投光部21及び受光部22の間にドリル60の回転軸線60Aが位置した状態で、投光部21は受光部22に光線を照射する。その後、処理をステップS22に進める。
【0026】
図2に示すように、ステップS22において、作業者は、Y軸値YVのリセット処理を実行する。具体例としては、作業者は、入力器42を操作することにより、ステップS22の処理時点におけるY軸値YVの値を「0」にリセットする。その後、処理をステップS30に進める。
【0027】
図2に示すように、ステップS30において、作業者は、第1移動処理を実行する。具体例としては、作業者は、刃物台12をスライド移動させる。このとき、
図4に示すように、X軸線XJに沿う方向及びY軸線YJに沿う方向において、ドリル60の逃げ面72上の任意の点を、第1ディスプレイ23の原点25と一致させる。このとき定めた任意の点は、第1特定箇所T1である。その後、処理をステップS31に進める。
【0028】
図2に示すように、ステップS31において、測定装置10は、第1照射処理を実行する。具体的には、
図4に示すように、投光部21及び受光部22の間にドリル60の逃げ面72が位置した状態で、投光部21は受光部22に光線を照射する。この第1照射処理により、ドリル60の逃げ面72上の第1特定箇所T1でのX軸線XJに沿う方向の位置が特定される。なお、第1照射処理では、ドリル60の回転軸線60AがX軸線XJと一致するようにホルダ14がドリル60を保持した状態である。その後、処理をステップS32に進める。
【0029】
図2に示すように、ステップS32において、作業者は、X軸値XVのリセット処理を実行する。具体例としては、作業者は、入力器42を操作することにより、ステップS32の処理時点におけるX軸値XVの値を「0」にリセットする。このステップS32の処理により、ステップS31の第1照射処理で特定された第1特定箇所T1でのX軸線XJに沿う方向の位置を「0」に定義する。その後、処理をステップS33に進める。
【0030】
ステップS33において、作業者は、回転位置RVのリセット処理を実行する。具体例としては、作業者は、入力器42を操作することにより、ステップS33の処理時点における回転位置RVの値を「0」にリセットする。すなわち、第1照射処理のときのホルダ14の回転位置RVを「0」に定義する。その後、処理をステップS41に進める。
【0031】
図2に示すように、ステップS41において、作業者は、ホルダ14の回転処理を実行する。具体例としては、作業者は、ホルダ14を把持して当該ホルダ14を第1回転方向R1に回転させることにより、ホルダ14の回転位置RVを変化させる。このとき、
図5において破線で示すように、ドリル60の逃げ面72とドリル60の回転軸線60Aとがなす鋭角75の影の角度75Bは、
図5において実線で示す回転前の鋭角75の影の角度75Aに比べて小さくなる。その結果、X軸線XJに沿う方向において、ドリル60の逃げ面72は、第1ディスプレイ23の原点25からずれる。なお、ステップS41においてホルダ14を回転させる角度の一例は、10度程度である。その後、処理をステップS50に進める。
【0032】
図2に示すように、ステップS50において、作業者は、第2移動処理を実行する。具体例としては、作業者は、X軸線XJに沿う方向において刃物台12をスライド移動させる。このとき、
図6に示すように、X軸線XJに沿う方向において、ドリル60の逃げ面72を、第1ディスプレイ23の原点25と一致させる。また、このとき、作業者は、Y軸線YJに沿う方向において、刃物台12をスライド移動させない。なお、逃げ面72上で原点25と一致した点は、第2特定箇所T2である。そして、上述のとおり、ステップS50においてはY軸線YJに沿う方向に刃物台12をスライド移動させない。したがって、この第2特定箇所T2は、第1特定箇所T1に対してY軸線YJに沿う方向での位置が同じである。その後、処理をステップS51に進める。
【0033】
図2に示すように、ステップS51において、測定装置10は、第2照射処理を実行する。具体的には、
図6に示すように、投光部21及び受光部22の間にドリル60の逃げ面72が位置した状態で、投光部21は受光部22に光線を照射する。このとき、ホルダ14のドリル60に対する保持状態は、ステップS31の処理時点におけるホルダ14のドリル60に対する保持状態と同じである。また、ホルダ14の回転位置RVは、ステップS31の処理時点におけるホルダ14の回転位置RVとは異なる状態である。すなわち、第2照射処理では、ホルダ14のドリル60に対する保持状態が第1照射処理と同じであり、且つ、ホルダ14の回転位置RVが第1照射処理とは異なる状態である。この第2照射処理により、ドリル60の逃げ面72上の第2特定箇所T2でのX軸線XJに沿う方向の位置が特定される。その後、処理をステップS61に進める。
【0034】
図2に示すように、ステップS61において、測定装置10は、第1取得処理を実行する。具体例としては、算出部41は、ステップS61の処理時点におけるX軸値XVの値を、後退距離D1として取得する。ここで、ステップS61の処理時点におけるX軸値XVは、ステップS32においてX軸値XVの値が「0」にリセットされてからの変化量を示す値である。したがって、ステップS61の処理時点におけるX軸値XVは、第1特定箇所T1でのX軸線XJに沿う方向の位置及び第2特定箇所T2でのX軸線XJに沿う方向の位置の差、すなわち後退距離D1として扱える。なお、
図5では、後退距離D1の一例を図示している。その後、処理をステップS62に進める。
【0035】
図2に示すように、ステップS62において、測定装置10は、第2取得処理を実行する。具体例としては、算出部41は、ステップS62の処理時点における回転位置RVの値を、回転角D2として取得する。ここで、ステップS62の処理時点における回転位置RVは、第2照射処理のときのホルダ14の回転位置RVに相当する。さらに、ステップS62の処理時点における回転位置RVは、ステップS33において回転位置RVの値が「0」にリセットされてからの変化量を示す値である。したがって、ステップS62の処理時点における回転位置RVは、第1照射処理のときのホルダ14の回転位置RV及び第2照射処理のときのホルダ14の回転位置RVの差、すなわち回転角D2として扱える。その後、処理をステップS63に進める。
【0036】
ステップS63において、測定装置10は、ドリル60の工具半径D3を取得する取得処理を実行する。具体例としては、算出部41は、ステップS63の処理時点におけるY軸値YVの値を、ドリル60の工具半径D3として取得する。本実施形態において、ステップS63の処理時点におけるY軸値YVは、ステップS22においてY軸値YVの値が「0」にリセットされてからの変化量を示す値である。したがって、ステップS63の処理時点におけるY軸値YVは、ドリル60の工具半径D3として扱える。なお、ドリル60の工具半径D3は、上記の第1特定箇所T1及び第2特定箇所T2のY軸値YVの値と同じである。また、
図5では、工具半径D3の一例を図示している。その後、処理をステップS64に進める。
【0037】
図2に示すように、ステップS64において、測定装置10は、移動距離D4を取得する取得処理を実行する。ここで、
図7では、第1特定箇所T1及び第2特定箇所T2の一例を図示している。このとき、移動距離D4は、
図7に示すように、X軸線XJに沿う方向からドリル60を視たときに、第1特定箇所T1及び第2特定箇所T2を通過する回転軸線60Aを中心とした円弧のうち、第1特定箇所T1から第2特定箇所T2までの円弧の距離である。算出部41は、工具半径D3及び回転角D2に基づいて、移動距離D4を算出する。例えば、算出部41は、以下の式を用いて移動距離D4を算出する。
【0038】
式(1):D4=D3×tanD2
なお、上記の式(1)から算出される移動距離D4は、実際の移動距離D4と僅かに異なる。ただし、回転角D2が小さい場合には上記の誤差は極めて小さいため、上記の式(1)を用いている。その後、処理をステップS65に進める。
【0039】
図2に示すように、ステップS65において、測定装置10は、ドリル60の円錐逃げ角EAを取得する取得処理を実行する。具体的には、算出部41は、後退距離D1及び移動距離D4に基づいて、円錐逃げ角EAを算出する。例えば、算出部41は、以下の式を用いて円錐逃げ角EAを算出する。
【0040】
式(2):EA=arctan(D1/D4)
上述したように、ステップS64の処理では、回転角D2に基づいて移動距離D4を算出する。したがって、ステップS64及びステップS65の処理は、後退距離D1及び回転角D2に基づいて円錐逃げ角EAを算出する算出処理に相当する。その後、処理をステップS66に進める。
【0041】
ステップS66において、ドリル60の円錐逃げ角EAを表示する表示処理を実行する。具体例としては、算出部41は、ステップS65の処理で算出した円錐逃げ角EAを示す信号を第2ディスプレイ43に出力する。そして、第2ディスプレイ43は、円錐逃げ角EAを表示する。
【0042】
<本実施形態の作用>
円錐逃げ角EAは、回転角D2に応じた移動距離D4が同じである場合、後退距離D1が大きいほど大きくなる。また、円錐逃げ角EAは、後退距離D1が同じである場合、回転角D2に応じた移動距離D4が小さいほど大きくなる。すなわち、円錐逃げ角EAは、回転角D2に対して後退距離D1が大きくなるほど大きくなる。換言すれば、円錐逃げ角EAは、回転角D2及び後退距離D1から一義的に定まる。
【0043】
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態において、算出部41は、第1取得処理により後退距離D1を取得する。また、算出部41は、第2取得処理により回転角D2を取得する。そして、算出部41は、取得した後退距離D1及び回転角D2に基づいて、円錐逃げ角EAを算出する。したがって、本実施形態では、測定装置10を用いて円錐逃げ角EAを算出できる。
【0044】
(2)本実施形態では、受光部22に投影されたドリル60の影を第1ディスプレイ23に表示する。そのため、仮にドリル60の直径が小さい場合であっても、例えば第1ディスプレイ23でのドリル60の影を拡大表示することにより、ドリル60の逃げ面72上の任意の点と、第1ディスプレイ23の原点25とを高い精度で一致させやすい。これにより、円錐逃げ角EAの測定精度の向上が期待できる。
【0045】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
・上記実施形態において、逃げ角測定方法における処理の内容は変更してもよい。例えば、ステップS20~ステップS22の処理は省略してもよい。具体例としては、逃げ角測定方法を用いて複数のドリル60の円錐逃げ角EAを測定する場合、ドリル60の種類が変わったとしても、ドリル60の回転軸線60Aは、ホルダ14の回転軸線14Aと概ね一致する。したがって、初回の逃げ角測定方法でステップS20~ステップS22の処理が実行されれば、その後の逃げ角測定方法では、ステップS20~ステップS22の処理を省略してもよい。
【0047】
・例えば、ステップS64の処理は変更してもよい。具体的には、ステップS64において用いた上記の式(1)は、移動距離D4を算出するための式の一例であり、移動距離D4を算出するための式は変更してもよい。
【0048】
・例えば、ステップS65の処理は変更してもよい。具体的には、算出部41は、上記の式(2)に代えて、以下の式を用いて円錐逃げ角EAを算出してもよい。
式(3):EA=arctan(D1/(D3×tanD2))
すなわち、上記の式(2)は、円錐逃げ角EAを算出するための式の一例であり、後退距離D1及び回転角D2に基づいていれば、円錐逃げ角EAを算出するための式は変更してもよい。なお、この構成では、上記のステップS64の処理を省略できる。
【0049】
・上記実施形態において、逃げ角測定方法における処理の実行主体は変更してもよい。例えば、作業者が関わっていた処理は、測定装置10が実行してもよい。具体例としては、測定装置10がホルダ14を回転させる電動モータを備えている場合、ステップS41において、測定装置10は、電動モータによりホルダ14を回転させてもよい。
【0050】
・また、例えば、測定装置10が行っていた一部の処理は、作業者が実行してもよい。具体例としては、測定装置10による第1取得処理の実行にあたって、作業者は、電卓等により後退距離D1を演算する。また、作業者は、入力器42を操作することにより、演算した後退距離D1を入力する。そして、第1取得処理において、測定装置10は、作業者により入力された後退距離D1を取得してもよい。すなわち、逃げ角測定方法では、複数の処理の一部に測定装置10が関わっていればよい。
【符号の説明】
【0051】
D1…後退距離
D2…回転角
D3…工具半径
D4…移動距離
EA…円錐逃げ角
XJ…X軸線
YJ…Y軸線
ZJ…Z軸線
10…測定装置
11…テーブル
12…刃物台
13…支持プレート
14…ホルダ
14A…回転軸線
21…投光部
22…受光部
23…第1ディスプレイ
25…原点
31…X軸検出センサ
32…Y軸検出センサ
33…回転位置検出センサ
41…算出部
42…入力器
43…第2ディスプレイ
60…ドリル
60A…回転軸線
70…ランド
71…切れ刃
72…逃げ面
80…溝部