(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】内燃機関のオイルレベル検知装置
(51)【国際特許分類】
F01M 11/12 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
F01M11/12 H
(21)【出願番号】P 2021086020
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062546(JP,A)
【文献】特開平09-177617(JP,A)
【文献】特開2018-204539(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041243(WO,A2)
【文献】西独国特許出願公開第3506705(DE,A1)
【文献】特開2013-174209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧を基準とし、内燃機関が備えるオイルパン内に貯留されたオイルを汲み出すオイルポンプの吐出圧を検出する油圧センサと、
大気圧センサと、
前記油圧センサによって検出された吐出圧の値に基づいて前記オイルパン内のオイル量を評価するオイルレベルがオイル量の不足を判定する予め設定された所定値より低下していることを検知するオイルレベル検知部と、
現時点における大気圧が前記内燃機関のイグニションがオンとされた時点における大気圧よりも予め定めた値以上に低いときに前記オイルレベル検知部によるオイルレベルの検知を停止する制御部と、
を備えた内燃機関のオイルレベル検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記内燃機関のイグニションがオンとされた時点における前記大気圧センサの検出値と現時点における前記大気圧センサの検出値との差が10kPa以上であるときに前記オイルレベルの検知を停止する請求項1に記載の内燃機関のオイルレベル検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイルレベル検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルポンプの吐出圧を油圧センサで検出し、検出した値に基づいてリリーフ弁の開弁圧を切り替えて油圧低下に起因する機関運転の不安定化を抑制する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、油圧低下の一因としてオイルポンプによるエアの吸い込みが挙げられている。オイルパン内のオイルレベルが低下した場合にもオイルポンプがエアを吸い込むことがあるため、オイルポンプの吐出圧を油圧センサで検出することでオイルパン内のオイルレベルを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧力センサには、検出値を大気圧基準で示すゲージ圧センサと、検出値を真空基準で示す絶対圧センサがあるが、車両にはゲージ圧センサが採用されることが多い。しかしながら、ゲージ圧センサを用いてオイルパン内のオイルレベルを検知しようとすると、ゲージ圧センサが大気圧基準であることに起因して誤検知が生じる可能性がある。ゲージ圧センサは、車両のイグニションがオン状態とされるとその時点での大気圧を0(ゼロ)点として計測を開始する。このため、車両の走行ルートの標高が高くなるとこれに伴って大気圧が低下し、ゲージ圧センサの計測値が低く示されるようになる。そして、このように低く示された検出値がオイルレベル低下検知油圧を下回ると、オイルレベルが低下したと判定される誤検知が起こる。誤検知が起こると、実際にはオイルレベルが低下していないにもかかわらず、警告灯が点灯したり、エラーログが記録されたりする不都合が生じる。
【0005】
そこで、本明細書開示の内燃機関のオイルレベル検知装置は、車両が走行する標高が変化することに起因するオイルレベルの誤検知を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書開示の内燃機関のオイルレベル検知装置は、大気圧を基準とし、内燃機関が備えるオイルパン内に貯留されたオイルを汲み出すオイルポンプの吐出圧を検出する油圧センサと、大気圧センサと、前記油圧センサによって検出された吐出圧の値に基づいて前記オイルパン内のオイル量を評価するオイルレベルがオイル量の不足を判定する予め設定された所定値より低下していることを検知するオイルレベル検知部と、現時点における大気圧が前記内燃機関のイグニションがオンとされた時点における大気圧よりも予め定めた値以上に低いときに前記オイルレベル検知部によるオイルレベルの検知を停止する制御部と、を備える。
【0007】
上記構成の内燃機関のオイルレベル検知装置において、前記制御部は、前記内燃機関のイグニションがオンとされた時点における前記大気圧センサの検出値と現時点における前記大気圧センサの検出値との差が10kPa以上であるときに前記オイルレベルの検知を停止する態様とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に開示された内燃機関のオイルレベル検知装置は、車両が走行する標高が変化することに起因するオイルレベルの誤検知を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態のオイルレベル検知装置が組み込まれたオイル循環システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は実施形態のオイルレベル検知装置で実行されるオイルレベル検知制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は実施形態のオイルレベル検知装置を搭載した車両の走行ルートの標高の変化とオイルレベル検知制御の実行及び停止の切り替えの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されて描かれている場合もある。
【0011】
(実施形態)
[オイル循環システム]
まず、
図1を参照して、実施形態の内燃機関のオイルレベル検知装置(以下、単に「検知装置」という)101が組み込まれているオイル循環システム100の概略構成について説明する。
【0012】
オイル循環システム100は、エンジンオイル(以下、単に「オイル」という)を貯留するオイルパン10、メインギャラリ11、オイルストレーナ12、オイルフィルタ15及びオイルクーラ16を含む。また、オイル循環システム100は、油圧センサ20、可変バルブタイミング機構(以下、「油圧VVT」という)30及び内燃機関(以下、「エンジン」という)各部40にオイルを供給する流路を含む。エンジン各部40には、例えば、クランクジャーナルやカムジャーナルが含まれる。さらに、オイル循環システム100は、エンジンが備えるピストン(不図示)に向けてオイルを噴射し、ピストンを冷却するピストンオイルジェット41、可変容量オイルポンプ50及びOCV(Oil Control Valve)51を含む。また、オイル循環システム100は、ECU70を備える。
【0013】
メインギャラリ11には可変容量オイルポンプ50が作動することによってオイルパン10内から汲み上げられたオイルが送られる。メインギャラリ11からは油路が枝分かれしている。枝分かれした油路の先には油圧VVT30、エンジン各部40及びピストンオイルジェット41が設けられており、これらに対してメインギャラリ11を通じてオイルが供給される。オイルストレーナ12はオイルパン10内に設置され、可変容量オイルポンプ50によってオイルが汲み上げられるときに、オイル内の異物が吸い込まれないようにする。メインギャラリ11から枝分かれして各部に供給されたオイルは、再びオイルパン10内に戻される。オイルは、オイル循環システム100によってこのような循環を繰り返す。
【0014】
オイルフィルタ15はオイルストレーナ12とメインギャラリ11とを接続する油路61に設置されており、メインギャラリ11に向かうオイルを濾過し不純物を取り除く。オイルクーラ16は油路61のオイルフィルタ15の下流側(メインギャラリ11に近い側)に設置されており、メインギャラリ11に向かうオイルを冷却する。
【0015】
油圧センサ20は、メインギャラリ11に設置されており、可変容量オイルポンプ50から吐出されたオイルの吐出圧を検出する。後に説明するように、油圧センサ20は、オイルパン10内のオイルレベル低下の検知に用いられる。油圧センサ20は、検出値を大気圧基準で示すゲージ圧センサである。つまり、油圧センサ20は、大気圧を基準として可変容量オイルポンプ50の吐出圧を検出する。
【0016】
油圧VVT30は、可変容量オイルポンプ50の発生する油圧により、図示しないエンジンの機関バルブ(吸気弁及び排気弁)のバルブタイミングを可変とする油圧式の可動弁機構である。オイルは油圧VVT30の作動油となる。
【0017】
可変容量オイルポンプ50はエンジンが備えるクランクシャフト(不図示)と機械的に連結され、クランクシャフトの回転によって回転駆動される。本実施形態の可変容量オイルポンプ50はギヤを介してクランクシャフトに駆動されるが、チェーンやベルトによる駆動としてもよい。可変容量オイルポンプ50はメインギャラリ11とオイルストレーナ12とを接続する油路61、より具体的には、オイルストレーナ12とオイルフィルタ15との間に配置されている。本実施形態における可変容量オイルポンプ50は、公知の可変容量型のオイルポンプである。可変容量オイルポンプ50は、吐出量を可変とするための機構の一例として、トロコイド式のポンプに制御室、インナーロータ及びアウターロータ(いずれも、不図示)を備える。そして、OCV51によって制御室内の油圧を制御することで、インナーロータに対するアウターロータの偏心量を調整し、オイルの吐出量を連続的に制御する。このような容量可変機構を備えるオイルポンプの詳細は、例えば、特開2017-190681号公報に開示されているため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0018】
可変容量オイルポンプ50には、可変容量オイルポンプ50とメインギャラリ11とを接続する油路61から分岐した油路61aが接続されている。OCV51は、この油路61aに設けられている。OCV51は後述するECU(Electronic Control Unit)70の制御により開閉する。OCV51の開閉によって可変容量オイルポンプ50の制御室に導入されるオイル流量(油圧)が変更される。これにより、可変容量オイルポンプ50の容量が変更され、オイルの吐出量が変更される。可変容量オイルポンプ50のオイルの吐出量が変更されると、これに伴ってその吐出圧も変化する。
【0019】
なお、本実施形態ではOCV51との組み合わせによって吐出圧を変化させる可変容量オイルポンプ50が採用されているが、オイルポンプの形式はこれに限定されず、従来公知の他の形式のオイルポンプを採用することもできる。
【0020】
ECU70は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、バックアップRAM及びその他の記憶装置を備える。ECU70は、CPU、ROMやその他の記憶装置に記憶されたプログラムやマップに基づいて演算処理や各種制御を実行する。RAMは、CPUによる演算結果や各種センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは内燃機関の停止時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0021】
ECU70には油圧センサ20の他、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサ21やアクセル開度センサ22が電気的に接続されている。クランク角センサ21の検出値に基づいて、エンジン回転数が取得される。アクセル開度センサ22の検出値に基づいて、アクセルの開度を検出することができる。また、ECU70はOCV51と電気的に接続されており、エンジン回転数に基づいてOCV51を作動させる。またECU7070には大気圧センサ23が電気的に接続されている。大気圧センサ23は検知装置101を搭載した車両が置かれている環境の大気圧を検出する。大気圧センサ23は検知装置101を搭載した車両の走行ルートの標高に応じて刻々と変化する大気圧を検出する。
【0022】
ECU70は、オイルレベル検知部70a及び誤検知回避部70bを含む。誤検知回避部70bは後に詳細に説明するようにオイルレベル検知部70aによるオイルレベルの検知を停止する制御部に相当する。ECU70はオイルレベル検知部70aとして機能することで、オイルパン10内のオイルレベルが予め設定された所定値より低下しているか否かを判定する。ここで、オイルレベルとは、オイルパン10内のオイル量を評価するものである。また、ECU70は誤検知回避部70bとして機能することで車両の走行ルートの標高の変化(大気圧の変化)がオイルレベルの誤検知が生じさせると判断される場合に、オイルレベルの検知を停止する。これらの制御については、後に詳説する。
【0023】
[検知装置]
図1を参照すると、上述したオイル循環システム100に含まれる構成要素のうち、油圧センサ20、大気圧センサ23及びECU70が検知装置101に含まれる。以下、検知装置101におけるオイルレベルの検知の一例について
図2及び
図3を参照しつつ、説明する。
図2は検知装置101で実行されるオイルレベル検知制御の一例を示すフローチャートである。
図3は実施形態の検知装置101を搭載した車両の走行ルートの標高の変化とオイルレベル検知制御の実行と停止の切り替えの例を示すグラフである。
【0024】
まず、ECU70は、ステップS1においてエンジンのイグニションがオンとされたか否かを判定する。ECU70は、ステップS1で否定判定(No判定)をした場合は、ステップS1で肯定判定(Yes判定)するまでステップS1の処理を繰り返す。イグニションがオンとされると、ECU70はステップS1で肯定判定し、ステップS2へ進む。
【0025】
ステップS2では、ECU70は油圧センサ20の0(ゼロ)点調整を実施する。つまり、イグニションがオンとされたときの状態を圧力の基準点となる0点に設定する。これにより、イグニションがオンとされたときに車両が位置している標高にかかわらず、油圧センサ20の出力値は一旦0kPaを示し、その後、エンジンが始動して可変容量オイルポンプ50が作動すると、その吐出圧を示す。
【0026】
ここで、
図3を参照して0点調整について例示する。
図3を参照すると、例えばP1地点は標高0mであり、P5地点は標高2500mである。大気圧は標高が1000m高くなる毎に10kPaずつ低下するため、P1地点の大気圧はP5地点の大気圧よりも25kPa高い。しかしながら、車両のイグニションがP1地点でオンとされた場合、P5地点でオンとされた場合のいずれの場合であってもECU70はイグニションがオンとされたときの状態が0kPaを示すようにする。このような0点調整は、他のどの地点でイグニションがオンとされた場合であっても同様に実施される。ECU70は、ステップS2の工程を実行後、ステップS3へ進む。
【0027】
ステップS3では、ECU70、より具体的には、オイルレベル検知部70aがオイルレベル低下検知制御を開始する。ここで、ECU70は予め設定されたオイルレベル検知油圧を記憶しており、オイルレベル検知部70aは油圧センサ20の検出値がオイルレベル検知油圧よりも低くなった場合には、オイルレベルが低下していると判定する。そして、図示しない警告灯を点灯させて、オイルパン10内のオイルレベルが低下していることを運転者に通知する。ここで、オイルレベル検知油圧の値は、予め実施した実機による実験やシミュレーションに基づき、オイルパン10内のオイルレベルがエアを吸い込む程度まで低下した場合に油圧センサ20が示すことがある値として設定されている。ECU70はステップS2においてオイルレベル検知部70aがオイルレベル低下検知制御を開始した後、ステップS4へ進む。
【0028】
ステップS4では、誤検知回避部70bが、大気圧センサ23の検出値の変化に基づいて大気圧が0点調整時からP[kPa]以上変化したか否かを判定する。本実施形態では、P[kPa]は、10[kPa]に設定されている。つまり、本実施形態では、イグニションがオンとされた時点から車両の位置が標高1000m分上昇したり、下降したりしたか否かを判定する。
【0029】
なお、本実施形態の目的は、油圧センサ20の検出値が標高の上昇に伴って低下し、検知装置101がオイルレベルの低下を誤検知することを回避するものである。このため、車両が位置する地点の標高が高くなって大気圧が低下したことを判定すればよく、大気圧が上昇したことを検知する必要はないが、制御の複雑化を回避する為に、本実施形態では大気圧の低下及び上昇の双方について判定している。
【0030】
ECU70は、ステップS4で肯定判定した場合ステップS5へ進み、ステップS4で否定判定した場合ステップS6へ進む。
【0031】
ステップS5において、ECU70、具体的に誤検知回避部70bはオイルレベル低下検知制御を停止する。誤検知回避部70bがステップS4で肯定判定する場合、油圧センサ20の検出値は大気圧の低下分だけ低くなった値を示し、この結果、何らの措置も取られない場合、オイルレベル検知部70aによってオイルレベル低下が生じていると判定されることが想定される。この判定は、オイルパン10内のオイルレベルが保たれているにもかかわらず、大気圧が低下したことに起因して油圧センサ20の検出値が低く提示されたために生じる誤検知である。そこで、ステップS5においてオイルレベル検知部70aによって行われる油圧センサ20の検出値に基づくオイルレベル低下の検知を停止することで、誤検知を回避することができる。
【0032】
一方、ステップS6において、ECU70はオイルレベル低下検知制御を実施する。なお、既にオイルレベル低下検知制御が実施されている状態である場合、ステップS6はオイルレベル低下検知制御を継続する工程となる。これに対し、一旦、ステップS5を経由し、オイルレベル低下検知制御が停止されている場合、ステップS6はオイルレベル低下検知制御を再開する工程となる。
【0033】
ここで、
図3を参照して0点調整の実施地点の標高と車両走行ルートの標高との相違に起因する大気圧変化と、この大気圧変化に基づくオイルレベル低下検知制御の実行と停止の切り替えにつき、幾つかのパターンを例示しつつ、説明する。
【0034】
<パターン1>
パターン1は、P1地点においてイグニションがオンとされ、0点調整(ステップS2)が行われた場合を想定する。P1地点の標高は0mである。P1地点においてイグニションがオンとされると、ステップS3でオイルレベル低下検知制御が開始される。その後、エンジンを始動させ、走行を開始した車両は、P2地点で登坂を開始する。そして、車両はP3地点を通過する。P3地点は標高1000mであるため、車両がP3地点を通過すると、大気圧がP1地点と比較して10[kPa]以上低下する。従って、パターン1では標高1000mがオイルレベル低下検知制御の停止と実行とを切り替える切替線(第1切替線)となる。車両が登坂状態で第1切替線を越えた場合、誤検知回避部70bはステップS4において肯定判定を行い、ステップS5においてオイルレベル低下検知制御を停止する。
【0035】
P3地点を通過し、その後、P4地点及びP5地点を通過した車両は、P6地点から降坂を開始する。そして、第1切替線が設定されている標高1000mとなるP8地点を超えると、誤検知回避部70bはステップS4において否定判定を行い、ステップS6においてオイルレベル低下検知制御を再開する。オイルレベル低下検知制御を再開するのは、車両が降坂状態でP8地点を超えることで、この時点での大気圧とP1地点での大気圧との差が10[kPa]よりも小さくなり、誤検知の可能性が低下した為である。
【0036】
さらに走行を継続する車両が、P9地点、P10地点を超え、P11地点で再び第1切替線を越えた場合、誤検知回避部70bは再びステップS4において肯定判定を行い、ステップS5においてオイルレベル低下検知制御を停止する。
【0037】
このように車両の走行ルートに登坂及び降坂が含まれる場合、その標高、換言すると大気圧に応じてオイルレベル低下検知制御の実行と停止を切り替える。
【0038】
<パターン2>
パターン2は、P5地点においてイグニションがオンとされ、0点調整(ステップS2)が行われた場合を想定する。P5地点の標高は2500mである。P5地点においてイグニションがオンとされると、ステップS3でオイルレベル低下検知制御が開始される。その後、エンジンを始動させ、走行を開始した車両は、P6地点で降坂を開始する。そして、車両はP7地点を通過する。P7地点は標高1500mであるため、車両がP7地点を通過すると、大気圧がP5地点と比較して10[kPa]以上上昇する。従って、パターン2では、標高1500mがオイルレベル低下検知制御の停止と実行とを切り替える切替線(第2切替線)となる。車両が降坂状態で第2切替線を越えた場合、誤検知回避部70bはステップS4において肯定判定を行い、ステップS5においてオイルレベル低下検知制御を停止する。
【0039】
P7地点を通過し、その後、P8地点からP11地点を通過した車両は、第2切替線が設定されている標高1500mとなるP12地点を超えた場合、誤検知回避部70bはステップS4において否定判定を行い、ステップS6においてオイルレベル低下検知制御を再開する。
【0040】
さらに走行を継続する車両はP13地点を通過する。P13地点は標高3500mであるため、車両がP13地点を通過すると、大気圧がP5地点と比較して10[kPa]以上低下する。従って、パターン2では、標高1500mだけでなく標高3500mもオイルレベル低下検知制御の停止と実行とを切り替える切替線(第3切替線)となる。車両が登坂状態で第3切替線を越えた場合、誤検知回避部70bはステップS4において肯定判定を行い、ステップS5においてオイルレベル低下検知制御を停止する。以下、車両の位置する標高の変化に伴う大気圧の変化に応じて、オイルレベル低下検知制御の実行と停止を切り替える。
【0041】
このように、ECU70はイグニションがオンとされた時点における大気圧センサ23の検出値と現時点の大気圧センサ23の検出値との差が予め定めた値以上であるときにオイルレベル検知部70aによるオイルレベルの検知を停止する。これにより、オイルレベル低下の誤検出が回避される。
【0042】
ステップS5の処理が終了した後、及び、ステップS6の処理が終了した後、ECU70はステップS7へ進む。ステップS7において、ECU70はエンジンのイグニションがオフとされたか否かを判定する。ECU70は、ステップS7で否定判定をした場合、ステップS4からの処理を繰り返す。これにより、車両の位置する標高に応じてオイルレベル低下検知制御の実行と停止とが適宜切り替えられ、オイルレベル低下の誤検知を回避しつつ、オイルレベル低下検知を行うことができる。一方、ECU70はステップS7で肯定判定した場合、一連の処理を終了させる(エンド)。
【0043】
本実施形態によれば、イグニションがオンとされた時点における大気圧センサ23の検出値と現時点の大気圧センサ23の検出値との差が予め定めた値以上であるときにオイルレベルの検知を停止する。これにより、実際にはオイルパン10内のオイルレベルが低下していないにもかかわらず、大気圧が低下したことによって生じるオイルレベル低下の誤検知を回避することができる。
【0044】
上記実施形態は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0045】
10 オイルパン 11 メインギャラリ
20 油圧センサ 50 可変容量オイルポンプ
51 OCV 70 ECU
70a オイルレベル検知部 70b 誤検知回避部
21 クランク角センサ 23 大気圧センサ
100 オイル循環システム 101 オイルレベル検知装置