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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20241022BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20241022BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20241022BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20241022BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/231
B60R21/233
B60R21/2338
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021086416
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022179137
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大鉢 次郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 武司
(72)【発明者】
【氏名】古川 大貴
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】本島 治敏
(72)【発明者】
【氏名】楠原 由人
(72)【発明者】
【氏名】浦川 雅州
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昌志
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/156953(WO,A1)
【文献】特開2006-8105(JP,A)
【文献】特開2013-18378(JP,A)
【文献】特開2019-34675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0077359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバック又はヘッドレストの内部に収容され、前面衝突の予知時又は検知時にインフレータからガスの供給を受けて膨張展開すると共に、膨張展開状態で乗員の頭部を直接拘束する内側エアバッグと前記内側エアバッグを外側から保持する外側エアバッグとを備え、
前記外側エアバッグは、前記内側エアバッグに先行して乗員の頭部の片側の側方から膨張展開し、形状保持テザーによって平面視でシート前方に向かってV字状に折り曲げられており、当該外側エアバッグの反対側で乗員の頭部の片側の側方から膨張展開される前記内側エアバッグを同様に折り曲げて乗員の頭部の前方を覆うように保持可能に構成されている、
車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記形状保持テザーは、前記外側エアバッグの上部及び下部の少なくとも一方で、膨張展開時に折り曲げられる第1折り部の両側を連結しており、
前記内側エアバッグは、膨張展開時に折り曲げられる第2折り部から突出して前記形状保持テザーに係止される係止用突起部を有する、
請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記外側エアバッグは、膨張展開時において前記内側エアバッグと対向する側面が凹形状を成しており、当該凹形状の内側に前記内側エアバッグが挿入される、請求項1又は請求項2に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記内側エアバッグ及び前記外側エアバッグの少なくとも一方は、前記シートバック又は前記ヘッドレストからシート前方側に膨張展開する基端側が、前記車両用シートに着座した乗員の肩部に支持される、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記内側エアバッグ及び前記外側エアバッグの少なくとも一方は、膨張展開時に、シート前方側に展開する前方展開部と、前方展開部の展開後にシート下方側に展開する下方展開部とを有しており、
前記前方展開部は、前記車両用シートに着座した乗員の肩部に対して、シート上方側の離間した位置でシート前方側に展開し、
前記下方展開部は、前記前方展開部の展開後にシート下方側に展開して乗員の肩部に当接する、請求項4に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記内側エアバッグには、膨張展開時において乗員の頭部と対向する側面に膨張規制部が設けられている、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロントシートの背もたれ部に収容されたサイドエアバッグ装置が開示されている。このサイドエアバッグ装置では、車両用シートの背もたれ部の片側の側部から車両のボディサイド部と乗員の胸部から頭部にかけての部位との間でエアバッグ本体部が膨張展開する。また、エアバッグ本体部と、エアバッグ本体部の先端から突出したエアバッグ突出部とを面状テザーで連結することにより、エアバッグ本体部に対してエアバッグ突出部を直角に屈曲させる。これにより、エアバッグ本体部及びエアバッグ突出部によって乗員の頭部の斜め前方が覆われるため、車両が斜め前方の障害物と衝突した際に、車両の外部から侵入する侵入物から乗員の頭部を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-008105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、エアバッグ突出部がエアバッグの基布により袋状に形成されるため、膨張展開時のガスの膨張圧により、乗員の頭部と対向する対向面(拘束面)が頭部に向かって凸を成す曲面になる。このため、拘束中に、シート前方側へ慣性移動する乗員の頭部がエアバッグ突出部の拘束面で滑る可能性がある。
更に、エアバッグ本体部では、乗員の頭部からの押圧力により、フロントシートとの固定点を中心に乗員から離れる向きのモーメントが働くため、エアバッグ突出面の拘束面が乗員の頭部から離れてしまう可能性がある。従って、上記先行技術では、拘束中にエアバッグ突出部から乗員の頭部がすり抜けてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の前面衝突時における乗員の頭部拘束性能を向上させることができる車両用エアバッグ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置は、車両用シートのシートバック又はヘッドレストの内部に収容され、前面衝突の予知時又は検知時にインフレータからガスの供給を受けて膨張展開すると共に、膨張展開状態で乗員の頭部を直接拘束する内側エアバッグと前記内側エアバッグを外側から保持する外側エアバッグとを備え、前記外側エアバッグは、前記内側エアバッグに先行して乗員の頭部の片側の側方から膨張展開し、形状保持テザーによって平面視でシート前方に向かってV字状に折り曲げられており、当該外側エアバッグの反対側で乗員の頭部の片側の側方から膨張展開される前記内側エアバッグを同様に折り曲げて乗員の頭部の前方を覆うように保持可能に構成されている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置では、シートバック又はヘッドレストの内部に収容された外側エアバッグ及び内側エアバッグを備えている。外側エアバッグ及び内側エアバッグは、前面衝突の予知時又は検知時にインフレータからガスの供給を受けて乗員の頭部の両側の側方からそれぞれ膨張展開される。
【0008】
ここで、外側エアバッグは、内側エアバッグに先行して膨張展開し、形状保持テザーによって平面視でV字状に折り曲げられる。後から膨張展開する内側エアバッグは、外側エアバッグの内側で保持されることにより、V字状に折り曲げられた状態となって乗員の頭部の前方を覆う。この状態では、折り曲げられた内側エアバッグの内側の溝に入り込むようにして乗員の頭部が受け止められる。従って、内側エアバッグの拘束面が頭部の両側を覆うため、頭部の滑動を抑制することができる。ところで、衝突時の慣性力で、乗員の頭部はシート前方側へ移動する。しかしながら、内側エアバッグは、外側エアバッグによって保持されているため、展開位置を維持することができる。その結果、乗員の頭部から拘束面が離れないため、頭部の拘束中に、内側エアバッグから頭部がすり抜けることを抑制できる。このようにして、車両の前面衝突時における車両用エアバッグ装置の頭部拘束性能が向上する。
【0009】
更に、内側エアバッグの先端側は、頭部の慣性移動によって、外側エアバッグにより形成されたV字状の溝の奥(シート前方側)に前進する。この際、内側エアバッグの先端側が潰れて頭部のエネルギが吸収されるため、頭部保護性能も向上する。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置は、請求項1に記載の構成において、前記形状保持テザーは、前記外側エアバッグの上部及び下部の少なくとも一方で、膨張展開時に折り曲げられる第1折り部の両側を連結しており、前記内側エアバッグは、膨張展開時に折り曲げられる第2折り部から突出して前記形状保持テザーに係止される係止用突起部を有する。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置によれば、第1折り部の両側を連結する形状保持テザーによって平面視でV字状に折り曲げられている。他方、内側エアバッグは、第2折り部を中心にV字状に折り曲げられる。ここで、内側エアバッグは、第2折り部から突出する係止用突起部を有している。当該係止用突起部は、内側エアバッグの膨張展開時に外側エアバッグの形状保持テザーに係止されるため、膨張展開時の揺動で、外側エアバッグの外側に内側エアバッグが飛び出ることを抑制することができる。また、衝突時の慣性力で乗員の頭部が移動すると、係止用突起部を中心に回転するようにして内側エアバッグの一部が潰れる構成となっている。即ち、係止用突起部の位置に応じて、内側エアバッグの先端側の大きさを調整し、内側エアバッグによるエネルギ吸収量を調整することができる。従って、簡単な構造で、内側エアバッグによる衝突時のエネルギ吸収量を最適化させることができる。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記外側エアバッグは、膨張展開時において前記内側エアバッグと対向する側面が凹形状を成しており、当該凹形状の内側に前記内側エアバッグが挿入される。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置では、外側エアバッグには、膨張展開時において内側エアバッグと対向する側面が凹形状を成している。従って、外側エアバッグの凹形状の内側に内側エアバッグの側面が挿入されることで、内側エアバッグを安定して保持することができる。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の構成において、前記内側エアバッグ及び前記外側エアバッグの少なくとも一方は、前記シートバック又は前記ヘッドレストからシート前方側に膨張展開する基端側が、前記車両用シートに着座した乗員の肩部に支持される。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置では、内側エアバッグ及び外側エアバッグの少なくとも一方の基端側が乗員の肩部に支持されて膨張展開する。これにより、内側エアバッグ及び外側エアバッグの展開方向及び展開位置を安定させることができ、内側エアバッグの拘束面で確実に乗員の頭部を覆うことができる。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置は、請求項4に記載の構成において、前記内側エアバッグ及び前記外側エアバッグの少なくとも一方は、膨張展開時に、シート前方側に展開する前方展開部と、前方展開部の展開後にシート下方側に展開する下方展開部とを有しており、前記前方展開部は、前記車両用シートに着座した乗員の肩部に対して、シート上方側の離間した位置でシート前方側に展開し、前記下方展開部は、前記前方展開部の展開後にシート下方側に展開して乗員の肩部に当接する。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置では、内側エアバッグ及び外側エアバッグの少なくとも一方は、前方展開部の展開状態では、車両用シートに着座した乗員の肩部に対してシート上方側の離間した位置に展開される。これにより、乗員の体格が大柄であるか小柄であるかに関わらず、膨張展開初期の展開位置を同じ位置に設定することができる。その後、下方展開部が展開して乗員の肩部に当接することで、乗員の体格に応じた展開方向及び展開位置へ内側エアバッグ及び外側エアバッグが案内される。このようにして、乗員の体格差に左右されることなく、内側エアバッグの拘束面で確実に乗員の頭部を覆うことができる。
【0018】
請求項6に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の構成において、前記内側エアバッグには、膨張展開時において乗員の頭部と対向する側面に膨張規制部が設けられている。
【0019】
請求項6に記載の本発明に係る車両用エアバッグ装置において、内側エアバッグには、乗員の頭部と対向する側面に膨張規制部が設けられている。これにより、内側エアバッグの膨張展開時に乗員の頭部と対向する側面(拘束面)が、頭部に向かって凸形状に膨らむことが抑制される。従って、乗員の頭部と内側エアバッグの拘束面との接触面積が増加し、より確実に頭部の滑動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1に係る車両用エアバッグ装置は、車両の前面衝突時における乗員の頭部の拘束性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項2に係る車両用エアバッグ装置は、内側エアバッグによる衝突時のエネルギ吸収量を最適化することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項3に係る車両用エアバッグ装置は、外側エアバッグによって、内側エアバッグを安定して保持することができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項4に係る車両用エアバッグ装置は、内側エアバッグの拘束面で確実に乗員の頭部を覆うことができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項5に係る車両用エアバッグ装置は、乗員の体格差に左右されることなく、内側エアバッグの拘束面で確実に乗員の頭部を覆うことができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項6に係る車両用エアバッグ装置は、乗員の頭部と内側エアバッグの拘束面との接触面積を増加させ、より確実に頭部の滑動を抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る車両用エアバッグ装置の膨張展開状態を示す平面図である。
図2】本実施形態に係る車両用エアバッグ装置の膨張展開状態を示す側面図である。
図3図2の3-3線に沿って切断した状態を示す外側エアバッグ及び内側エアバッグの拡大断面図である。
図4】外側エアバッグを構成する基布の側面図である。
図5】内側エアバッグを構成する基布の側面図である。
図6】(A)~(D)は、車両の前面衝突時における車両用エアバッグ装置の膨張展開状態を説明する概略図である。
図7】本実施形態の変形例に係る内側エアバッグの基布を示す図5に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1図6を用いて本実施形態に係る車両用エアバッグ装置10について説明する。なお、各図の矢印FR、矢印UP及び矢印RHはそれぞれ、車両用エアバッグ装置10が搭載された車両用シート20のシート前側、シート上側及びシート右側を示している。前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート幅方向の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0028】
また、図1図2図3及び図6では、実際の乗員の代わりに衝突試験用のダミーが図示されており、このダミーは、一例としてTHORダミー(Test Device for Human Occupant Restraint Dummy)である。図1図2図3及び図6には、体格が小柄な乗員と同等の体格を有するダミーとしてAF05型(米国人成人女性の5パーセンタイル)ダミーを図示している。
【0029】
(車両用エアバッグ装置の全体概要)
図1及び図2に示すように、車両用エアバッグ装置10(以下、単に「エアバッグ装置10」と称する。)は、車両の前面衝突の際に、車両の衝突側(前方側)へ乗員Pの頭部Hが移動することを抑制する構成とされている。すなわち、エアバッグ装置10は、車両の前面衝突の際に、乗員Pの頭部Hを前方側から拘束する構成とされている。なお、車両の前面衝突には、車両前部の正面衝突と斜め衝突が含まれるものとする。以下、具体的に説明する。
【0030】
(車両用シート20)
エアバッグ装置10が搭載された車両用シート20は、シートクッション22、シートバック24及びヘッドレスト26を含んで構成されている。車両用シート20は、車両幅方向の中央に対して外側にオフセットして配置されており、一例として車両右側の後席を構成している。図1図6の各図では、シート前方と車両前方とが一致した状態となっている。また、シート幅方向の左右と車両幅方向の左右とが一致した状態となっている。なお、図1では、説明を分かりやすくするために、車両用シート20のシートクッション22の図示を省略している。
【0031】
シートクッション22は、シート前後方向及びシート幅方向に延在されており、乗員Pの臀部及び大腿部を支持可能に構成されている。シートバック24は、シートクッション22の後端部に回動可能に連結されてシート上下方向に延在されており、乗員Pの背部を支持可能に構成されている。ヘッドレスト26は、シートバック24の上端部に設けられて乗員Pの頭部Hを支持可能に構成されている。
【0032】
また、図示はしないが、乗員Pは、シートバック24の右斜め後方に配置されたシートベルト装置によって車両用シート20に拘束されている。シートベルト装置は、乗員の上体及び腰部を拘束する帯状のウェビングを含んで構成されている。ウェビングは、装着された状態で乗員Pの右側の肩部S1から左側の腰部にかけて斜めに延在するショルダベルトと、乗員の腰部の左側から右側に延在するラップベルトとを備えている。シートベルト装置は、ショルダベルトで乗員Pの上体をシートバック24に拘束し、ラップベルトで乗員の腰部をシートクッション22に拘束する。
【0033】
(車両用エアバッグ装置10)
図1及び図2に示されるように、エアバッグ装置10は、外側エアバッグ12と、内側エアバッグ14と、ガス発生装置としてのインフレータ30とを含んで構成されている。外側エアバッグ12、内側エアバッグ14及びインフレータ30は、モジュール化された状態で箱状のエアバッグケース15の内部に収容されている。
【0034】
エアバッグケース15は、シートバック24の内部において、シートバック24の骨格を構成するシートフレーム28に取り付けられている。シートフレーム28は、シート前後方向から見て矩形枠状に形成されており、その上端部は、シート幅方向に延在するアッパフレーム28Aで構成されている。このアッパフレーム28Aは、シート前方側の側面に図示しない支持ブラケットを有しており、支持ブラケットを介してヘッドレスト26の骨格を構成する図示しないヘッドレストステーが連結されている。
【0035】
ここで、エアバッグケース15は、アッパフレーム28Aのシート後方側の側面にボルト締結等の方法を用いて固定されている。従って、エアバッグケース15は、アッパフレーム28A及びヘッドレストステーに対してシート後方側に配置されている。
【0036】
外側エアバッグ12と内側エアバッグ14は、折り畳まれた状態でエアバッグケース15に収容されている。外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14は、インフレータ30からガスの供給を受けて膨張する。そして、外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14のそれぞれは、ガスの膨張圧によってエアバッグケース15の図示しない開裂部及びシートバック24の表皮を破断することで乗員Pの頭部Hの側方からシート前方側に膨張展開される。
【0037】
(外側エアバッグ)
外側エアバッグ12は、乗員Pの頭部Hの片側の側方(図1では左側方)からシート前方側へ膨張展開する。外側エアバッグ12は、膨張展開方向の中間部が折り曲げられて、平面視でV字状を成す構成となっている。
【0038】
外側エアバッグ12の上端部には、帯状の形状保持テザー18が接合されている。形状保持テザー18は、外側エアバッグ12において長手方向の中間部に形成された第1折り部32の両側を連結している。この形状保持テザー18は、外側エアバッグ12の膨張展開時に張り詰めることで、外側エアバッグ12の基端部12Aと先端部12Bを引き寄せる構成となっている。形状保持テザー18が張り詰めると、外側エアバッグ12の基端部12Aと先端部12Bが第1折り部32を曲げ中心にして折り曲げられるため、外側エアバッグ12が、平面視でシート前方側に向かって凸を成すV字状に形成される。この状態では、外側エアバッグ12の基端部12Aと先端部12Bの膨張部によって乗員Pの頭部Hの前方側が覆われている。
【0039】
ここで、図3に示されるように、外側エアバッグ12は、上下方向の中間部におけるシート幅方向の厚みが上下方向の上部及び下部におけるシート幅方向の厚みよりも小さく設定されている。これにより、外側エアバッグ12は、シート幅方向内側の側面(内側エアバッグ14と対向する側面)が、シート幅方向外側に窪んだ凹状を成し、凹部13を形成している。当該凹部13には、後述する内側エアバッグ14の側面部が挿入される。
【0040】
図3及び図4に示されるように、上記構成の外側エアバッグ12は、例えばナイロン系又はポリエステル系の布材をシート前後方向(膨張展開方向)に長い略矩形状(長円形状)に切り出して形成された二枚の基布40,41をシート幅方向に重ね合わせて構成されている。外側エアバッグ12は、二枚の基布40,41の外周縁部を縫製部T1において縫製されることにより袋状に形成されている。なお、図1及び図2では、基布40の符号及び縫製部T1~T9の図示を省略している。
【0041】
外側エアバッグ12の第1折り部32は、例えば、外側エアバッグ12の長手方向の中間部で二枚の基布40が縫い合わされた縫製部T2~T4で構成されている。縫製部T2は、外側エアバッグ12の上下方向の中間部に形成され、上下方向に長い長円形状の縫製部とされている。縫製部T2の内側は、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。一方、縫製部T3及びT4は、縫製部T2の上方と下方に離間して形成されている。縫製部T3は、上方側に開口した形状のU字状の縫製部であり、外側エアバッグ12の上端部に設けられている。縫製部T4は、下方側に開口した形状のU字状の縫製部であり、外側エアバッグ12の下端部に設けられている。縫製部T3,T4の内側も、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。
【0042】
上記構成の縫製部T2~T4は、外側エアバッグの上下方向に間隔を空けて配置されている。これらの縫製部T2~T4によって外側エアバッグ12における長手方向中間部の厚みが基端部12A及び先端部12Bよりも小さく設定される。このため、外側エアバッグ12の膨張展開時に第1折り部32の両側を連結する形状保持テザー18が張り詰めると、縫製部T2~T4が形成された第1折り部32を曲げ中心として外側エアバッグ12が折れ曲がる構成となっている。
【0043】
ここで、第1折り部32では、外側エアバッグ12の基端部12A及び先端部12Bの部位よりも厚みが小さく設定されている。従って、図2に示されるように、第1折り部32を構成する基布40,41の上端部及び下端部が外側エアバッグ12の基端部12A及び先端部12Bの部位よりも上方側及び下端側に突出している。また、第1折り部32では、各縫製部の間に形成されるガス流路(膨張部)を通って外側エアバッグ12の基端部12Aへ供給されたガスの一部が先端部12Bに供給される。
【0044】
図4に示されるように、外側エアバッグ12には、二枚の基布40,41を縫い合わせた縫製部T5~T9が第1折り部32の両側に形成されている。縫製部T5~T9は、膨張展開時、外側エアバッグ12のシート幅方向内側の側面を凹状に形成するために設けられている。
【0045】
縫製部T5~T7は、第1折り部32に対して外側エアバッグ12の基端部12Aに形成されている。縫製部T5~T7は、外側エアバッグ12の上下方向中間部に集中して配置されている。縫製部T5~T7は、上下方向に間隔を空けて配置され、それぞれが外側エアバッグ12の膨張展開方向に長い長円形状の縫製部となっている。縫製部T5~T7の内側は、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。これにより、外側エアバッグ12が膨張展開すると、外側エアバッグ12の基端部12Aにおいて上下方向中間部の厚みが上部及び下部と比較して小さくなり、外側エアバッグ12のシート幅方向内側の側面が凹状に形成される(図3参照)。
【0046】
一方、縫製部T8及びT9は、第1折り部32に対して外側エアバッグ12の先端部12Bに形成されている。縫製部T8及びT9は、外側エアバッグ12の上下方向中間部に集中して配置されている。縫製部T8及びT9は、上下方向に間隔を空けて配置され、それぞれが外側エアバッグ12の膨張展開方向に長い長円形状の縫製部となっている。縫製部T8及びT9の内側は、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。これにより、外側エアバッグ12が膨張展開すると、外側エアバッグ12の先端部12Bにおいて上下方向中間部の厚みが上部及び下部と比較して小さくなり、基端部12Aと同様に外側エアバッグ12のシート幅方向内側の側面が凹状に形成される。
【0047】
上記構成の外側エアバッグ12は、折り畳まれた状態でエアバッグケース15の内部に収容されている。ここで、外側エアバッグ12は、重ね合わせた二枚の基布40,41を所定の折返し線L1,L2に沿って折り畳むことで、外側エアバッグ12の内部を複数の展開部C1~C3に区画している。
【0048】
具体的に、外側エアバッグ12は、二枚の基布40,41の下部と上部を第1折返し線L1と第2折返し線L2に沿って折り返すことにより、基布40,41の上部と下部を中間部に重ねている。これにより、外側エアバッグ12の内部空間は、第1折返し線L1より下方側の下方展開部C1と、第2折返し線L2より上方側の上方展開部C2と、第1折返し線L1と第2折返し線L2の間の前方展開部C3と、に区画される。外側エアバッグ12は、第1折返し線L1及び第2折返し線L2に沿って基布40,41を折り畳んだ後、先端部12Bから基端部12Aへ向かってロール巻、又は、蛇腹折りした状態でエアバッグケース15の内部に収容される。
【0049】
上記のように折り畳まれた外側エアバッグ12は、インフレータ30からガスの供給を受けて膨張展開する際、先ず初めに前方展開部C3が展開する。前方展開部C3は、シートバックの上端から、シート前方側に膨張展開する。この時、下方展開部C1及び上方展開部C2は、第1折返し線L1及び第2折返し線L2によって区画され前方展開部C3と連通しないため、外側エアバッグ12はシート前後方向に長尺な帯状に膨張展開する(図6(A)参照)。その後、前方展開部C3の膨張展開が完了すると、ガスの膨張圧で第1折返し線L1及び第2折返し線L2が解除されて、前方展開部C3に供給されたガスの一部が下方展開部C1と上方展開部C2に供給される。これにより、下方展開部C1がシート下方側に展開し、上方展開部C2がシート上方側に展開する(図6(B)参照)。
【0050】
(内側エアバッグ)
図1及び図2に示されるように、内側エアバッグ14は、外側エアバッグ12の内側で膨張展開する。内側エアバッグ14は、外側エアバッグ12の反対側で乗員Pの頭部Hの片側の側方(図1では右側方)からシート前方側へ膨張展開する。内側エアバッグ14は、先行して膨張展開した外側エアバッグ12に外側から覆われるようにして保持されることにより、膨張展開方向の中間部が折り曲げられ、平面視でV字状を成す構成となっている。
【0051】
内側エアバッグ14の膨張展開方向の中間部には、上下方向に沿って第2折り部34が形成されており、第2折り部34を曲げ中心として内側エアバッグ14の先端部14Bが基端部14Aに近づく方向へ折り曲げられる。この状態では、内側エアバッグ14が平面視でV字状に形成されており、内側エアバッグ14の基端部14Aと先端部14Bの膨張部によって乗員Pの頭部Hの前方及び側方が覆われている。これにより、内側エアバッグ14の基端部14A及び先端部14Bにおけるシート幅方向内側の側面が頭部Hをシート前方側から受け止める拘束面を構成する。
【0052】
ここで、図3に示されるように、内側エアバッグ14の膨張展開状態では、内側エアバッグ14のシート幅方向外側の側部が外側エアバッグ12のシート幅方向内側の側面に形成された凹部13内に挿入される。これにより、内側エアバッグ14は、外側エアバッグ12に対する上下方向の相対移動が規制される。
【0053】
さらに、内側エアバッグ14における上下方向の中間部には、膨張規制部38が形成されている。膨張規制部38により、内側エアバッグ14は、上下方向中間部におけるシート幅方向の厚みが上部及び下部におけるシート幅方向の厚みよりも小さく設定されている。換言すると、内側エアバッグ14は、膨張規制部38により、シート幅方向内側の側面(乗員Pの頭部Hと対向する側面)が、シート幅方向外側に窪んだ凹状に形成されている。内側エアバッグ14の膨張展開時、膨張規制部38には、乗員Pの頭部Hの側面が当接する。膨張規制部38の詳細な構成は、後述する。
【0054】
図3及び図5に示されるように、上記構成の内側エアバッグ14は、例えばナイロン系又はポリエステル系の布材をシート前後方向に長い略矩形状(長円形状)に切り出して形成された二枚の基布50,51をシート幅方向に重ね合わせて構成されている。基布50,51のシート上下方向の寸法は、外側エアバッグ12の基布40,41の上下方向の寸法と比較して小さく設定されている。内側エアバッグ14は、二枚の基布50,51の外周縁部を縫製部T10において縫製されることにより袋状に形成されている。なお、図1及び図2では、基布50,51の符号及び縫製部T10~T15の図示を省略している。
【0055】
内側エアバッグ14の第2折り部34は、例えば、内側エアバッグ14の長手方向の中間部で二枚の基布50,51が縫い合わされた縫製部T11~T13で構成されている。縫製部T11は、内側エアバッグ14の上下方向の中間部に形成され、上下方向に長い長円形状の縫製部とされている。縫製部T11の内側は、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。一方、縫製部T12及びT13は、縫製部T11の上方側と下方側に形成されている。縫製部T12は、上方側に開口したU字状の縫製部であり、内側エアバッグ14の上端部に設けられている。縫製部T13は、下方側に開口したU字状の縫製部であり、内側エアバッグ14の下端部に設けられている。縫製部T12,T13の内側も、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。
【0056】
上記構成の縫製部T11~T13は、内側エアバッグの上下方向に間隔を空けて配置されている。これらの縫製部T11~T13によって内側エアバッグ14における膨張展開方向中間部の厚みが基端部14A及び先端部14Bよりも小さく設定されている。これにより、膨張展開時に、縫製部T11~T13が形成された第2折り部34を曲げ中心として内側エアバッグ14がV字状に折れ曲がる構成となっている。
【0057】
さらに、第2折り部34は、内側エアバッグ14の基端部14A及び先端部14Bの部位よりも厚みが小さく設定されている。従って、図2に示されるように、第2折り部34を構成する基布50,51の上端部及び下端部が内側エアバッグ14の基端部14A及び先端部14Bの部位よりも上方側及び下端側にそれぞれ突出している。本実施形態では、第2折り部34の上端部から上方側に突出した突起部で係止用突起部36を構成している。この係止用突起部36は、外側エアバッグ12の上端部に架け渡された形状保持テザー18にシート前方側から係止される。これにより、内側エアバッグ14の膨張展開時、第2折り部34から上方側に突出した係止用突起部36が形状保持テザー18に支持されるので、第2折り部34を確実に曲げ中心にすることができる。
【0058】
また、第2折り部34では、各縫製部T11~T13の間に形成されるガス流路(膨張部)を通って内側エアバッグ14の基端部14Aへ供給されたガスの一部が先端部14Bに供給される。
【0059】
図5に示されるように、内側エアバッグ14の膨張規制部38は、二枚の基布50,51を縫い合わせた縫製部T14,T15で構成されている。縫製部T14、15は、第2折り部34の両側にそれぞれ形成されている。
【0060】
縫製部T14は、第2折り部34に対して内側エアバッグ14の基端部14Aに形成されている。また、縫製部T15は、第2折り部34に対して内側エアバッグ14の先端部12Bに形成されている。縫製部T14,T15のそれぞれは、内側エアバッグ14の上下方向中間部に配置されており、内側エアバッグ14の膨張展開方向に長い長円形状の縫製部となっている。縫製部T14,T15の内側は、インフレータ30から供給されるガスによって膨張しない非膨張部となっている。これにより、内側エアバッグ14が膨張展開すると、内側エアバッグ14の上下方向中間部の厚みが上部及び下部の厚みと比較して小さくなり、内側エアバッグ14のシート幅方向内側の側面が凹状に形成される(図3参照)。本実施形態では、内側エアバッグ14の膨張規制部38が非膨張部で構成されているため、膨張規制部38において乗員Pの頭部Hに当接する拘束面がフラットになる。
【0061】
上記構成の内側エアバッグ14は、外側エアバッグと同様に折り畳まれた状態でエアバッグケース15の内部に収容されている。この際、内側エアバッグ14の基布50,51は、第1折返し線L1及び第2折返し線L2に沿って折り畳まれており、内側エアバッグ14の内部が下方展開部C4と上方展開部C5と、前方展開部C6に区画されている。内側エアバッグ14の基布50,51の折畳み方や、下方展開部C4、上方展開部C5及び前方展開部C6の各構成については、上述した外側エアバッグ12と同様であるため、詳細な説明を割愛する。
【0062】
(インフレータ)
インフレータ30は、例えば、二つのガス噴出部を備えるデュアルステージインフレータで構成されており、二段式のガス発生装置となっている。インフレータ30は、車両の前面衝突が検知又は予知された場合に、二つのガス噴出部から段階的にガスを発生させ、内側エアバッグ14に先行して外側エアバッグ12を膨張展開させる。
【0063】
図6(A)~図6(D)に概略的に示されるように、車両の前面衝突が検知又は予知されると、インフレータ30で発生したガスが外側エアバッグ12に供給される。外側エアバッグ12では、前方展開部C3がシート前方側へ向かって展開される(図6(A)参照)。図6(A)に示されるように、前方展開部C3の展開時において、外側エアバッグ12は、シート前後方向に長尺な帯状を成しており、車両用シート20に着座した乗員Pの肩部S1に対して、シート上方側の離間した位置で膨張展開される。なお、外側エアバッグ12(前方展開部C3)の展開位置は、体格が小柄な乗員としての乗員Pに限らず、大柄の乗員の肩部S2からもシート上方側の離間した位置で展開されることが好ましい。大柄な乗員とは、例えば、THORダミーのAM50型(米国人成人男性の50パーセンタイル)ダミーと同等の体格を有する乗員であり、図6(A)には、大柄の乗員の肩部S2が二点鎖線を用いて概略的に示されている。
【0064】
続いて、図6(B)に示されるように、外側エアバッグ12における下方展開部C1と上方展開部C2がシート上下方向に向かって展開する。これにより、シート下方側に向かって展開した下方展開部C1が乗員Pの肩部S1(又はS2)に当接し、外側エアバッグ12が乗員Pの肩部S1(又はS2)に支持された状態となる。上方展開部C2の展開が完了することにより、外側エアバッグ12の上端部に接合された形状保持テザー18が張り詰めて外側エアバッグ12は、平面視でV字状を成す形状に折り曲げられる。
【0065】
次に、図6(C)に示されるように、外側エアバッグ12の内側で内側エアバッグ14が膨張展開する。内側エアバッグ14は、膨張展開方向の中間部が第2折り部34で折り曲げられると共に、第2折り部34から突出した係止用突起部36が外側エアバッグ12の形状保持テザー18に係止される。これにより、内側エアバッグ14が、平面視でV字状に折り曲げられた状態となる。
【0066】
このようにして外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14の膨張展開が完了すると、乗員Pの頭部Hの前方及び側方が内側エアバッグ14によって覆われる(図1参照)。これにより、内側エアバッグ14によって乗員Pの頭部Hをシート前方側から拘束可能となる。また、図6(D)に示されるように、乗員Pの頭部Hは、衝突時の慣性力によって、二点鎖線から実線で示すようにシート前方側へ移動する。この際、内側エアバッグ14の先端部14Bは、係止用突起部36を中心に回転するようにして、シート前方側へ潰れるため、内側エアバッグ14は、頭部Hに一定の反力を付与しながら、頭部Hのエネルギを吸収する。
【0067】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態では、シートバック24の内部に収容された外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14を備えている。外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14は、車両の前面衝突の予知時又は検知時にインフレータ30からガスの供給を受けて乗員Pの頭部Hの両側の側方からそれぞれ膨張展開される。
【0068】
ここで、外側エアバッグ12は、内側エアバッグ14に先行して膨張展開し、形状保持テザー18によって平面視でV字状に折り曲げられる。本実施形態の外側エアバッグ12は、シートバック24の車両幅方向内側(車両幅方向中央側)から膨張展開するため、乗員Pと車両の後席の中央に着座した乗員との間で膨張展開し、乗員同士の直接衝突を回避するファーサイドエアバッグとして機能する。
【0069】
外側エアバッグ12の後から膨張展開する内側エアバッグ14は、外側エアバッグ12の内側で保持されることにより、V字状に折り曲げられた状態となって乗員Pの頭部Hの前方を覆う。この状態では、内側エアバッグ14により形成されたV字形状の溝に入り込むようにして乗員Pの頭部Hが受け止められる。従って、内側エアバッグ14の拘束面が頭部Hの両側を覆うため、頭部Hの滑動を抑制することができる。
【0070】
ところで、衝突時の慣性力で、乗員Pの頭部Hはシート前方側へ移動する。しかし、内側エアバッグ14は、外側エアバッグ12によって保持されているため、展開位置を維持することができる。その結果、乗員Pの頭部Hから拘束面が離れず、頭部Hの拘束中に、内側エアバッグ14から頭部Hがすり抜ける事態を抑制することができる。このようにして、車両の前面衝突時におけるエアバッグ装置10の頭部拘束性能が向上する。
【0071】
更に、図6(D)に示されるように、内側エアバッグ14の先端側は、頭部Hの慣性移動によって、外側エアバッグにより形成されたV字状の溝の奥(シート前方側)に前進する。この際、内側エアバッグの先端部14Bが潰れて頭部Hのエネルギが吸収されるため、頭部保護性能も向上する。
【0072】
また、本実施形態によれば、内側エアバッグ14は、第2折り部34から突出する係止用突起部36を有しており、当該係止用突起部36は、内側エアバッグ14の膨張展開時に外側エアバッグ12の形状保持テザー18に係止される。このため、膨張展開時の揺動で、外側エアバッグ12の外側に内側エアバッグ14が飛び出ることを抑制することができる。また、衝突時の慣性力で乗員Pの頭部Hがシート前方側へ移動すると、係止用突起部36を中心に回転するようにして内側エアバッグ14の一部が潰れる構成となっている。即ち、係止用突起部36の位置に応じて、内側エアバッグ14の先端側の大きさを調整し、内側エアバッグ14によるエネルギ吸収量を調整することができる。従って、簡単な構造で、内側エアバッグによる衝突時のエネルギ吸収量を最適化させることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、外側エアバッグ12には、膨張展開時において内側エアバッグ14と対向する側面が凹形状を成している。従って、外側エアバッグ12の凹形状の内側に内側エアバッグ14の側面が挿入されることで、内側エアバッグ14を安定して保持することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、外側エアバッグ12の基端部12Aが乗員Pの肩部S1(又はS2)に支持されて膨張展開する。これにより、内側エアバッグ14及び外側エアバッグ12の展開方向及び展開位置を安定させることができ、内側エアバッグ14の拘束面で確実に乗員Pの頭部Hを覆うことができる。
【0075】
より具体的に説明すると、外側エアバッグ12は、前方展開部C3の展開状態では、車両用シート20に着座した乗員Pの肩部S1(又はS2)に対してシート上方側の離間した位置に展開される。即ち、外側エアバッグ12は、乗員Pの体格が大柄であるか小柄であるかに関わらず、膨張展開初期の展開位置を同じ位置に設定することができる。その後、下方展開部C1が展開して乗員Pの肩部S1(又はS2)に当接することで、乗員Pの体格に応じた展開方向及び展開位置へ外側エアバッグ12が案内される。これにより、外側エアバッグ12に保持された内側エアバッグ14も、乗員Pの体格に応じた展開方向及び展開位置へ案内される。このようにして、乗員Pの体格差に左右されることなく、内側エアバッグ14の拘束面で確実に乗員Pの頭部Hを覆うことができる。
【0076】
また、本実施形態では、内側エアバッグ14には、乗員Pの頭部Hと対向する側面に膨張規制部38が設けられている。これにより、内側エアバッグ14の膨張展開時に乗員Pの頭部Hと対向する側面(拘束面)が、頭部Hに向かって凸形状に膨らむことが抑制される。具体的に、本実施形態では、膨張規制部38が非膨張部で形成されているため、乗員Pの頭部Hと対向する側面(拘束面)がフラットに形成される。従って、乗員Pの頭部Hと内側エアバッグ14の拘束面との接触面積が増加し、より確実に頭部Hの滑動を抑制することができる。
【0077】
[補足説明]
以上、実施形態に係るエアバッグ装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、図1に示されるように、外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14をシートバック24の内部に収容する構成としたが、本発明はこれに限らない。外側エアバッグ12と内側エアバッグ14をヘッドレスト26の内部に収容してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、先行して膨張展開する外側エアバッグ12が乗員Pの頭部Hの車両幅方向内側(車両中央側)の側方から膨張展開する構成としたが、これに限らない。外側エアバッグ12が、乗員Pの頭部Hの車両幅方向外側の側方から膨張展開する構成としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14に縫製部T2~T4,T11~T13をそれぞれ設けて非膨張部を形成し、第1折り部32及び第2折り部34を形成する構成としたが、これに限らない。外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14における膨張展開方向中間部の厚みを基端部12A,14A及び先端部12B,14Bの厚みよりも小さく設定することできる構成であればよい。例えば、外側エアバッグ12の基布40,41の間にテザーを架け渡し、テザーの張力で外側エアバッグの上下方向の中間部の厚みを規制してもよい。内側エアバッグ14においても同様に、基布50,51の間にテザーを架け渡して厚みを規制し、第2折り部34を形成する構成としてもよい。
また、外側エアバッグ12及び内側エアバッグ14に非膨張部を形成する場合、上記実施形態のように基布同士の縫製する方法に代えて、熱溶着させる方法で形成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、外側エアバッグ12に縫製部T5~T9を設けて非膨張部を形成し、外側エアバッグ12において内側エアバッグ14と対向する側面を凹状に形成する構成としたが、これに限らない。外側エアバッグ12の上下方向中間部の厚みを上部及び下部の厚みよりも小さく設定し、側面に凹形状を形成可能な構成であればよい。例えば、外側エアバッグ12を構成する二枚の基布40,41の間にテザーを架け渡して外側エアバッグ12の上下方向中間部の厚みを上部及び下部の厚みよりも小さく設定する構成でもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、内側エアバッグ14に縫製部T14~T15を設けて非膨張部を形成し、内側エアバッグ14において乗員Pの頭部Hと対向する側面に膨張規制部38を形成する構成としたが、これに限らない。膨張規制部38は、内側エアバッグ14を構成する二枚の基布50,51の間にテザーを架け渡して構成してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、内側エアバッグ14の第2折り部34を非膨張部で構成し、第2折り部34から突出する基布50,51の上端部を係止用突起部36で構成したが、これに限らない。図7に示す変形例のように、内側エアバッグ14の上端部から突出して設けた袋状のチャンバ70(膨張部)によって係止用突起部を構成してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、外側エアバッグ12のシート上下方向の寸法を内側エアバッグ14のシート上下方向の寸法よりも大きく設定し、膨張展開時に、外側エアバッグ12の下方展開部C1が乗員の肩部に支持される構成とした。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、外側エアバッグ12のシート上下方向の寸法を内側エアバッグ14のシート上下方向の寸法よりも小さく設定し、内側エアバッグ14の下方展開部C1が乗員の肩部に支持される構成としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、形状保持テザー18が外側エアバッグ12の上端部に配置される構成としたが、本発明はこれに限らない。外側エアバッグ12の下端部に形状保持テザー18を設け、内側エアバッグ14の第2折れ部34の下端部を係止用突起部として形状保持テザー18に係止させてもよい。又は、外側エアバッグ12の上端部と下端部の両方に形状保持テザー18を設ける構成としてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、エアバッグ装置10を車両の後席に搭載したが、本発明はこれに限らず、車両の前席にエアバッグ装置10を搭載してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 車両用エアバッグ装置
12 外側エアバッグ
14 内側エアバッグ
18 形状保持テザー
20 車両用シート
22 シートバック
26 ヘッドレスト
30 インフレータ
32 第1折り部
34 第2折り部
36 係止用突起部
38 膨張規制部
C1,C4 下方展開部
C3,C6 前方展開部
P 乗員
H 頭部
S1,S2 肩部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7