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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241022BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021090491
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182767
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英貴
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜太
(72)【発明者】
【氏名】古賀 圭一
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-102899(JP,A)
【文献】特開2011-145720(JP,A)
【文献】特開2007-018384(JP,A)
【文献】特開2002-230091(JP,A)
【文献】纐纈晃稔,見えてきたブロックチェーンのサプライチェーン適用性~トヨタG向け商取引DX基盤構築を通じて~,企業のDXとブロックチェーンの実用化,,あたらしい経済 編集部[online],2020年10月19日,[令和6年5月10日検索],インターネット<URL:https://www.neweconomy.jp/features/dxbc/70269>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を、分散型台帳技術を用いて管理する情報管理システムであって、
前記サプライチェーンに含まれる複数の企業にそれぞれ帰属する複数の装置と、
前記複数の装置を互いに接続するネットワークとを備え、
前記複数の装置の各々は、
前記情報管理システムで管理する化学物質を示すリストを有する分散型台帳を記憶する記憶部と、
ユーザからの入力情報を受ける入力部とを含み、前記入力情報は、前記情報管理システムで管理することが提案される新たな化学物質を示す第1情報と、前記新たな化学物質が規制物質であるか否かを示す第2情報とを含み、前記規制物質は、法規制により指定された化学物質であり、
前記複数の装置の各々は、
前記サプライチェーンにおける下流の企業の装置に対して、前記下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、前記リストに含まれている化学物質の情報を開示し、
前記複数の装置の各々は、
前記新たな化学物質の前記リストへの追加要求を示す第1トランザクションデータを他の装置へ送信し
他の装置から受けた追加要求を否認する第2トランザクションデータを送信する、ように構成されており、
前記追加要求は、前記第2情報を含み
前記複数の装置の各々は、
前記第1トランザクションデータを他の装置から受けると、前記法規制の情報を管理する外部装置から取得した情報に基づいて、前記第1トランザクションデータを検証し、前記第1トランザクションデータを検証することは、前記外部装置から取得した情報に基づいて前記第2情報を確認することを含み、
前記第1トランザクションデータの検証の結果、前記第2情報に誤りがある場合、前記第2トランザクションデータを他の装置へ送信する、情報管理システム。
【請求項2】
前記複数の装置は、
第1製品を製造する第1企業の第1装置と、
前記第1製品に含まれる第2製品を前記第1企業に供給する第2企業の第2装置と、
前記第2製品に含まれる第3製品を前記第2企業に供給する第3企業の第3装置とを含み、
前記第1装置、前記第2装置および前記第3装置は、それぞれ、第1分散型台帳、第2分散型台帳および第3分散型台帳を有し、
前記第1分散型台帳と前記第2分散型台帳とは、前記第2製品に含有されている化学物質の情報を含むトランザクションデータを共有し、
前記第2分散型台帳と前記第3分散型台帳とは、前記第3製品に含有されている化学物質の情報を含むトランザクションデータを共有し、
前記第1分散型台帳と前記第3分散型台帳とは、トランザクションデータを共有しない、請求項に記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記複数の装置の各々は、表示装置をさらに含み、
前記複数の装置の各々は、
他の装置から前記第2トランザクションデータを受けると、前記追加要求が否認されたことを示す情報を前記表示装置に表示させ、
前記追加要求が否認されたことを示す情報が前記表示装置に表示された後に前記入力情報が修正された場合、前記第1トランザクションデータを再度送信する、請求項1に記載の情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-70257号公報(特許文献1)には、完成品メーカおよび当該完成品メーカに部品を供給するサプライヤを含むサプライチェーンにおいて取引される部品の含有化学物質の情報を管理する情報管理システムが開示されている。この情報管理システムは、上記サプライヤが利用するサプライヤ端末、および、他のサプライヤが利用する他のサプライヤ端末とネットワークで接続されている。他のサプライヤは、上記サプライヤに、上記サプライヤが完成品メーカに納品する部品を構成する子部品を供給する。サプライヤは、上記部品が含有する化学物質の情報を完成品メーカに報告するために、子部品が含有する化学物質の情報の開示を他のサプライヤに要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-70257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された情報管理システムにおいて管理される化学物質は、たとえば、当該情報管理システムに参加する何れかの企業(たとえば完成品メーカ)の端末から指定されることが考えられる。しかしながら、入力内容に誤りがあり、たとえば、法規制等によって規制されていない化学物質が規制されている化学物質として指定されたり、法規制等によって規制されている化学物質が規制されていない化学物質として指定されたりするケースも考えられる。誤った内容に基づいて情報が管理されると、情報管理システムにおいて、化学物質を適切に管理できなかったり、サプライヤ等に必要以上の情報開示を求めてしまったりしてしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を管理する情報管理システムにおいて、管理対象となる化学物質の情報を適切に設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る情報管理システムは、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を管理する情報管理システムである。この情報管理システムは、サプライチェーンに含まれる複数の企業にそれぞれ帰属する複数の装置と、複数の装置を互いに接続するネットワークとを備える。複数の装置の各々は、情報管理システムで管理する化学物質を示すリストを有しており、サプライチェーンにおける下流の企業の装置に対して、下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、リストに含まれている化学物質の情報を開示する。複数の装置の各々は、新たな化学物質のリストへの追加要求を他の装置へ出力する第1の処理と、他の装置から受けた追加要求を否認する処理を含む第2の処理とを実行可能に構成される。
【0007】
上記構成によれば、複数の装置の各々は、他の装置から受けた、新たな化学物質のリストへの追加要求を否認することができる。たとえば、他の装置の要求内容に誤りがあるような場合に、複数の装置の各々は、追加要求を否認する。他の装置からの追加要求を、当該追加要求を受けた装置がダブルチェックし、要求内容に誤りがある場合に要求を否認することで、管理対象となる化学物質の情報を適切に設定することができる。
【0008】
(2)ある実施の形態においては、上記追加要求は、新たな化学物質が規制物質であるか否かを示す情報を含む。規制物質は、法規制により指定された化学物質である。複数の装置の各々は、追加要求を他の装置から受けると、法規制の情報を管理する外部装置から取得した情報に基づいて、追加要求を検証し、規制物質であるか否かを示す情報に誤りがある場合、追加要求を否認する。
【0009】
規制物質であるか否かを示す情報が誤って設定される場合もある。新たな化学物質が規制物質であるか否かは、重要な情報である。規制物質に対しては報告の義務(法的な義務)が生じ得る一方で、規制物質でない化学物質に対しては報告の義務は生じないからである。たとえば、規制物質である化学物質が「非規制物質」と設定されると、報告の漏れを生じさせ得る。また、規制物質でない化学物質が「規制物質」と設定されると、上流の企業等に必要以上の情報開示を求めてしまう可能性がある。上記構成によれば、法規制の情報を管理する外部装置から取得した情報に基づいて、追加要求を検証し、規制物質であるか否かを示す情報に誤りがある場合、追加要求が否認されるので、新たな化学物質が規制物質であるか否かを示す情報を適切に設定することができる。
【0010】
(3)ある実施の形態においては、情報管理システムは、分散型台帳技術を用いて、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を管理する。
【0011】
上記構成によれば、分散型台帳技術を用いて製品に含有されている化学物質の情報を管理することにより、各企業の装置間で情報伝達が迅速に行なわれる。よって、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を、たとえば、電子メール、電話またはファックス等による通信手段を用いて管理する場合に比べ、迅速な情報伝達を行なうことができる。
【0012】
また、分散型台帳技術を用いることにより、情報の耐改ざん性を向上させることができる。
【0013】
(4)ある実施の形態においては、複数の装置は、第1製品を製造する第1企業の第1装置と、第1製品に含まれる第2製品を第1企業に供給する第2企業の第2装置と、第2製品に含まれる第3製品を第2企業に供給する第3企業の第3装置とを含む。第1装置、第2装置および第3装置は、それぞれ、第1分散型台帳、第2分散型台帳および第3分散型台帳を有する。第1分散型台帳と第2分散型台帳とは、第2製品に含有されている化学物質の情報を含むトランザクションデータを共有する。第2分散型台帳と第3分散型台帳とは、第3製品に含有されている化学物質の情報を含むトランザクションデータを共有する。第1分散型台帳と第3分散型台帳とは、トランザクションデータを共有しない。
【0014】
たとえば、第2企業からすると、第2製品に含まれる第3製品をいずれの企業から購入しているか等の情報を第1企業に知られたくない場合がある。上記構成によれば、第1分散型台帳と第3分散型台帳とは、トランザクションデータを共有していない。トランザクションデータには、送信元の情報等が含まれるところ、トランザクションデータを共有する範囲を直接の取引関係がある企業間に限定し、直接の取引関係がない企業間ではトランザクションデータを共有していないことにより、第1企業に対して、第3企業の情報を秘匿することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を管理する情報管理システムにおいて、管理対象となる化学物質の情報を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る情報管理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】サプライチェーンにおける企業間の取引関係を説明するための図である。
図3】情報管理装置のハードウェア構成を概略的に示す図である。
図4】分散型台帳を説明するための概念図である。
図5】規制リストを更新するケースを説明するための図である。
図6】規制リストの更新過程の一例を説明するための図である。
図7】規制リストの更新過程の他の例を説明するための図である。
図8】問い合わせを登録するケースを説明するための図である。
図9】新規製品の情報を登録するケースを説明するための図である。
図10】規制リストを更新する機能に関連する制御装置(ノード)の機能ブロック図である。
図11】問い合わせ機能、および、回答機能に関連する制御装置(ノード)の機能ブロック図である。
図12】規制リストへの対象物質の追加要求が伝搬する流れを示すシーケンス図(その1)である。
図13】規制リストへの対象物質の追加要求が伝搬する流れを示すシーケンス図(その2)である。
図14】規制リストへの対象物質の追加要求が伝搬する流れを示すシーケンス図(その3)である。
図15】他のノードから規制リストへの新たな対象物質の追加要求(規制リストの更新の要求)を受けたで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図16】問い合わせ、および、回答の流れを示すシーケンス図である。
図17】新規製品の登録の流れを示すシーケンス図(その1)である。
図18】新規製品の登録の流れを示すシーケンス図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
<情報管理システムの全体構成>
図1は、本実施の形態に係る情報管理システム1の概略的な構成を示す図である。本実施の形態に係る情報管理システム1は、複数の企業を含んで構成されたサプライチェーンにおいて、サプライチェーンで流通する製品(部品、原材料等を含む)に含有されている特定の化学物質(以下「対象物質」とも称する)の情報を、分散型台帳技術を用いて管理するためのシステムである。本実施の形態においては、一例として、4つの企業(たとえば、A企業、B企業、C企業およびD企業)を含むサプライチェーンを想定する。対象物質は、情報管理システム1において、サプライチェーンにおける下流企業への報告対象となる化学物質である。対象物質には、たとえば、REACH規則において有害性の高い物質としてSVHC(Substance of Very High Concern)に指定されている化学物質、および/または、世界共通で管理される化学物質リストであるGADSL(Global Automotive Declarable Substance List)で指定されている化学物質が含まれる。以下では、SVHCに指定されている化学物質、および/または、GADSLで指定されている化学物質を「規制物質」とも称する。なお、規制物質には、他の法規制によって指定される化学物質等が含まれてもよい。さらに、情報管理システム1に参加する企業は、任意の化学物質を対象物質に含めることも可能である。すなわち、情報管理システム1で管理される対象物質には、規制物質および参加企業が任意に指定した化学物質を含み得る。対象物質に含められる任意の化学物質としては、たとえば、今後規制されると見込まれる化学物質が挙げられる。
【0019】
情報管理システム1は、A企業に帰属する情報管理装置10-1と、B企業に帰属する情報管理装置10-2と、C企業に帰属する情報管理装置10-3と、D企業に帰属する情報管理装置10-4と、プラットフォームプロバイダ50とを備える。本実施の形態において、A企業は、完成品メーカであり、サプライチェーンにおける所謂「川下企業」に相当する。本実施の形態において、B企業は、部品メーカであり、サプライチェーンにおける所謂「川中企業」に相当する。本実施の形態において、C企業およびD企業は、材料メーカであり、サプライチェーンにおける所謂「川上企業」に相当する。
【0020】
図2は、サプライチェーンにおける企業間の取引関係を説明するための図である。C企業は、自社製品であるC製品をB企業に供給している。D企業は、自社製品であるD製品をB企業に供給している。B企業は、C企業から購入した(供給を受けた)C製品およびD企業から購入したD製品を用いて自社製品であるB製品を製造し、当該B製品をA企業に供給している。A企業は、B企業から購入した製品を用いて自社製品であるA製品を製造し、A製品をエンドユーザに販売している。A企業は、たとえば自動車メーカであってもよい。
【0021】
なお、川中企業には商社が含まれてもよい。たとえば、A企業とB企業の間、B企業とC企業の間、および/またはB企業とD企業の間には、商社が介在してもよい。
【0022】
各企業には、自社が販売する製品に含有されている対象物質の情報を管理することが求められる。各企業は、サプライチェーンにおける上流の企業から、購入製品に含有されている対象物質の情報の開示を受け、自社が販売する製品に含有されている対象物質の情報を管理する。たとえば、A企業は、B企業からB製品に含有されている対象物質の情報を受けて、当該情報を用いてA製品に含有されている対象物質の情報を管理する。
【0023】
本実施の形態に係る情報管理システム1では、直接の取引関係がある企業間でのみ情報の伝達が行なわれる。たとえば、製品の需給関係がある川下企業(A企業)と川中企業(B企業)とは直接の取引関係がある。製品の需給関係がある川中企業(B企業)と川上企業(C企業,D企業)とは直接の取引関係がある。一方、川下企業(A企業)と川上企業(C企業,D企業)とは直接の取引関係がない。すなわち、川下企業(A企業)と川中企業(B企業)との間、および、川中企業(B企業)と川上企業(C企業,D企業)との間では情報の伝達が行なわれる一方で、川下企業(A企業)と川上企業(C企業,D企業)との間では情報の伝達は行なわれない。なお、たとえば、A企業とB企業との間に商社であるE企業が介在する場合には、A企業とE企業との間、および、E企業とB企業との間で情報の伝達が行なわれ、A企業とB企業との間では情報の伝達が行なわれない。
【0024】
たとえば、B企業とC企業との間でC製品の取引が開始されると、C製品に含有されている対象物質の情報がC企業からB企業に提供される。後に詳しく説明するが、C製品に含有されている対象物質の情報は、C企業が自発的にB企業に提供する場合もあれば、B企業からの要求に応じてC企業がB企業に提供する場合もある。これは、A企業とB企業との間、B企業とD企業との間においても同様である。B企業とD企業との間でD製品の取引が開始されると、D製品に含有されている対象物質の情報がD企業からB企業に提供される。A企業とB企業との間でB製品の取引が開始されると、B製品に含有されている対象物質の情報がB企業からA企業に提供される。このように、各企業は、直接の取引関係がある上流の企業から購入製品に含有されている対象物質の情報の提供を受けて、当該購入製品を含む自社製品に含有されている対象物質の情報を管理する。各企業間での情報の伝達は、情報管理装置10-1~10-4を含んで形成された分散型台帳ネットワーク2(図1)において行なわれる。
【0025】
再び図1を参照して、情報管理装置10-1~10-4の各々には、分散型台帳基盤のソフトウェアが導入されている。分散型台帳基盤は、トランザクションデータの共有範囲を当事者間に限定することを可能にするスマートコントラクトを含んで構成されている。それゆえに、情報管理装置10-1~10-4がそれぞれ有する分散型台帳14-1~14-4は、互いに異なるトランザクションデータを保持する。分散型台帳14-1~14-4の詳細については、後述する。分散型台帳基盤としては、たとえばCORDA(登録商標)を採用してもよい。
【0026】
導入された分散型台帳基盤のソフトウェアが機能することにより、情報管理装置10-1~10-4に含まれる制御装置110-1~110-4(後述の図3)が、それぞれノード12-1~12~4として機能する。ノード12-1~12-4がネットワークNWを介して相互に通信することにより、分散型台帳ネットワーク2が形成されている。なお、情報管理装置10-1~10-4は、基本的には同様の構成を有する。そのため、情報管理装置10-1~10-4を特に区別しない場合には、「情報管理装置10-N」と記載する場合がある。ノード12-1~12-4についても、ノード12-1~12-4を特に区別しない場合には、「ノード12-N」と記載する場合がある。
【0027】
情報管理システム1における分散型台帳ネットワーク2は、コンソーシアム/プライベート型のネットワークである。プラットフォームプロバイダ50は、分散型台帳ネットワーク2の管理者として機能する。プラットフォームプロバイダ50は、ドアマンノード51と、ネットワークマップノード53と、ノータリノード55とを含む。
【0028】
ドアマンノード51は、分散型台帳ネットワーク2への参加を希望するノード12-Nからの参加申請の承認を行なう。また、ドアマンノード51は、ノード12-Nへの証明書の発行を行なう。分散型台帳ネットワーク2に参加したノード12-Nは、初回起動時に秘密鍵および公開鍵のペアを作成し、証明書付与の要求をドアマンノード51に送信する。ドアマンノード51は、ノード12-NのID等を検証し、証明書を発行する。
【0029】
ネットワークマップノード53は、登録されたノード12-Nの情報(たとえばIPアドレス)を記憶する。ネットワークマップノード53は、分散型台帳ネットワーク2において、DNS(Domain Name System)として機能する。分散型台帳ネットワーク2を形成するノード12-1~12-4は、たとえば、ネットワークマップノード53から提供された情報に基づいて、トランザクションデータの送信先を認識する。
【0030】
ノータリノード55は、ノード12-Nによって提案されたトランザクションデータを検証し、トランザクションデータに署名を付加する。トランザクションデータにノータリノード55が署名を付加することにより、トランザクションデータにファイナリティが与えられる。ノータリノード55が、トランザクションデータに署名するタイミングは、分散型台帳基盤の仕様に応じて、適宜設定することができる。たとえば、ノータリノード55が、トランザクションデータに署名するタイミングは、トランザクションデータの送信元のノードがトランザクションデータに署名した後であってもよいし、トランザクションデータの送信元のノードとトランザクションデータの送信先のノードとの双方がトランザクションデータに署名した後であってもよい。
【0031】
ノード12-Nは、トランザクションデータを生成する。上述のとおり、分散型台帳基盤のソフトウェアが機能することにより、情報管理装置10-Nに含まれる制御装置110-N(図3)がノード12-Nとして機能する。
【0032】
図3は、情報管理装置10-Nのハードウェア構成を概略的に示す図である。情報管理装置10-Nは、たとえば、サーバ装置およびPC(Personal Computer)等を含む計算機である。情報管理装置10-Nは、制御装置110-Nと、ROM(Read Only Memory)120-Nと、RAM(Random Access Memory)130-Nと、通信装置140-Nと、記憶装置150-Nと、記憶装置160-Nと、入力装置170-Nと、表示装置180-Nとを含む。制御装置110-N、ROM120-N、RAM130-N、通信装置140-N、記憶装置150-N、記憶装置160-N、入力装置170-N、および、表示装置180-Nは、バス190-Nに接続されている。
【0033】
制御装置110-Nは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む集積回路によって構成される。制御装置110-Nは、ROM120-Nに格納されている各種プログラムをRAM130-Nに展開して実行する。各種プログラムには、たとえば、分散型台帳基盤のソフトウェアが含まれる。RAM130-Nは、ワーキングメモリとして機能し、各種プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。制御装置110-Nは、分散型台帳基盤のソフトウェアを実行することにより、分散型台帳ネットワーク2においてノード12-Nとして機能する。ノード12-Nとしての初回起動時には、制御装置110-Nは、所定の規格に準拠した秘密鍵および公開鍵を生成する。公開鍵は、たとえば、プラットフォームプロバイダ50のネットワークマップノード53に送られる。また、制御装置110-Nは、トランザクションデータを生成する機能を有する。制御装置110-Nは、秘密鍵を用いて電子署名を生成し、トランザクションデータに付加する。また、制御装置110-Nは、他のノードが提案したトランザクションデータを承認する機能を有する。制御装置110-Nは、他のノードが提案したトランザクションデータを検証し、検証結果に問題がなければ当該トランザクションデータに電子署名を付して、当該トランザクションデータを他のノードに返信する。
【0034】
通信装置140-Nは、外部の機器との通信が可能に構成される。外部の機器は、たとえば、分散型台帳ネットワーク2に含まれる他の情報管理装置およびプラットフォームプロバイダ50等を含む。通信装置140-Nと外部の機器との通信は、インターネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イーサネット(登録商標)ネットワーク、パブリックネットワーク、プライベートネットワーク、有線ネットワークまたは無線ネットワーク等、あるいは、これらの組み合わせを用いて行なわれる。また、外部の機器には、たとえば、インターネット上に規制物質を公表する外部団体のサーバ装置等が含まれる。たとえば、制御装置110-Nは、通信装置140-Nを介して、所定の周期で外部団体のサーバ装置から規制物質の情報を取得することにより、新たな規制物質が追加されていないかを監視する。
【0035】
入力装置170-Nは、入力デバイスを含む。入力デバイスは、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、および/または、ユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。
【0036】
表示装置180-Nは、ディスプレイを含む。表示装置180-Nは、制御装置110-Nからの制御信号に従って、ディスプレイに各種の画像を表示させる。ディスプレイは、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、または、その他の表示機器である。
【0037】
記憶装置150-Nは、たとえば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等の記憶媒体を含んで構成される。記憶装置150-Nに記憶される情報は、オフチェーン(分散型台帳ネットワーク2の外部)で管理される。記憶装置150-Nは、自社製品の製品組成データ151-Nおよび許諾リスト153-Nを記憶する。たとえば、A企業の情報管理装置10-1であれば、製品組成データ151-1には、A製品の組成データが含まれる。たとえば、B企業の情報管理装置10-2であれば、製品組成データ151-2には、B製品の組成データが含まれる。たとえば、C企業の情報管理装置10-3であれば、製品組成データ151-3には、C製品の組成データが含まれる。たとえば、D企業の情報管理装置10-4であれば、製品組成データ151-4には、D製品の組成データが含まれる。
【0038】
許諾リスト153-Nは、情報の開示を許可する企業の情報を含む。具体的には、許諾リスト153-Nには、サプライチェーンにおいて直接の取引のある下流の企業が登録されている。たとえば、A企業の情報管理装置10-1であれば、許諾リスト153-1には、いずれの企業も登録されていない。たとえば、B企業の情報管理装置10-2であれば、許諾リスト153-2には、A企業が登録されている。たとえば、C企業の情報管理装置10-3であれば、許諾リスト153-3には、B企業が登録されている。たとえば、D企業の情報管理装置10-4であれば、許諾リスト153-4には、B企業が登録されている。許諾リスト153-Nに登録されていない企業からの問い合わせに対しては、回答が行なわれない。なお、情報管理装置10-1の記憶装置150-1には、許諾リスト153-1が記憶されていなくてもよい。
【0039】
また、記憶装置150-Nは、制御装置110-Nにより生成された秘密鍵および公開鍵を記憶する。また、記憶装置150-Nは、プラットフォームプロバイダ50のドアマンノード51から発行された証明書を記憶する。
【0040】
記憶装置160-Nは、たとえば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等の記憶媒体を含んで構成される。記憶装置160-Nに記憶される情報は、オンチェーン(分散型台帳ネットワーク2の内部)で管理される。記憶装置160-Nは、分散型台帳14-Nを記憶する。分散型台帳14-Nは、たとえば、DAG(Directed Acyclic Graph)構造を有する分散型台帳である。分散型台帳14-Nに含まれるトランザクションデータは、半順序型のデータモデルを形成する。トランザクションデータは、トランザクションを示すデータであり、その詳細は後述する。
【0041】
分散型台帳14-Nには、規制リスト141-N、問い合わせデータ142-N、および、回答データ143-Nが含まれる。
【0042】
規制リスト141-Nは、対象物質の情報、すなわち、情報管理システム1において、下流企業への報告対象となる化学物質を示す情報である。規制リスト141-Nには、1つ以上の対象物質の情報が含まれている。対象物質の情報には、たとえば、CAS番号、物質名称、規制更新日、および、報告閾値が含まれる。CAS番号は、米国化学会のCAS(Chemical Abstracts Service)における化学物質登録システムで付与される化学物質に固有の識別番号である。物質名称は、対象物質の名称である。規制更新日は、対象物質が規制リスト141-Nに追加された日(下流の企業への報告対象となった日)である。対象物質が規制物質である場合には、規制更新日は、法規制等によって規制された日(たとえばSVHCに指定された日)であってもよい。報告閾値は、製品の単位量あたりに含まれる対象物質の割合(含有率)の閾値である。含有率が報告閾値を上回る場合、その製品についての対象物質の情報が下流の企業への報告対象となる。含有率が報告閾値以下である場合、対象物質の情報は報告対象とならない。
【0043】
さらに、対象物質の情報には、規制物質であるか否かを示す情報が含まれている。規制物質であるか否かを示す情報は、たとえば、規制リスト141-Nへの追加が提案されている化学物質が、規制物質であるのか、任意の化学物質であるのかを認識するために用いられる。
【0044】
たとえば、いずれかの企業の情報管理装置10-N(ノード12-N)が、SVHCに新たな規制物質が指定されたことを検知すると、当該情報管理装置10-N(ノード12-N)は、SVHCに新たに指定された規制物質を規制リスト141-Nに追加することを提案するトランザクションデータを生成し、直接の取引関係のある企業の情報管理装置(ノード)にトランザクションデータを送信する。トランザクションデータを送受信した両方のノードが送受信されたトランザクションデータに署名することにより、トランザクションデータが両方の情報管理装置が有する分散型台帳に追加される。さらに、トランザクションデータを受けた情報管理装置(ノード)は、自身と直接の取引関係のある企業の情報管理装置(ノード)にトランザクションデータを伝搬させることで、分散型台帳ネットワーク2を形成する全てのノードに、SVHCに新たに指定された規制物質を規制リストに追加することを提案するトランザクションデータが送られる。すなわち、規制リスト141-Nの更新の情報は、直接の取引関係がある企業間での情報伝達によって、情報管理システム1に含まれる(分散型台帳ネットワーク2を形成する)全ての企業間で共有される。
【0045】
問い合わせデータ142-Nは、下流企業からの、製品(下流企業に供給している製品)に含有されている対象物質に関する問い合わせ内容を示す情報を含む。たとえば、入力装置170-Nへの操作によって問い合わせを行なう処理がなされると、当該処理を示すトランザクションデータが情報管理装置10-N(ノード12-N)によって生成され、問い合わせ先の企業の情報管理装置(ノード)に当該トランザクションデータが送信(提案)される。当該トランザクションデータに両方のノードが署名することにより当該トランザクションデータが両方の情報管理装置が有する分散型台帳に追加される。
【0046】
回答データ143-Nは、たとえば、下流の企業へ納品する製品に含有されている対象物質の情報(CAS番号、物質名称および含有率、等)を含む。回答データ143-Nは、問い合わせデータ142-Nに対する回答として送信される場合もあれば、規制リスト141-Nに新たな対象物質が追加されたことによって、自主的に下流の企業に送信される場合もある。なお、A企業の情報管理装置10-1が保有する回答データ143-1は、たとえば、A製品に含有されている対象物質をエンドユーザに開示するための情報であってもよい。
【0047】
たとえば、入力装置170-Nへの操作によって、または、制御装置110-Nによる自動処理によって、問い合わせに対する回答を行なう処理がなされると、当該処理を示すトランザクションデータが情報管理装置10-N(ノード12-N)によって生成され、問い合わせ先の企業(下流の企業)の情報管理装置(ノード)に当該トランザクションデータが送信(提案)される。当該トランザクションデータに両方のノードが署名することにより当該トランザクションデータが両方の情報管理装置が有する分散型台帳に追加される。
【0048】
本実施の形態に係る分散型台帳14-Nは、主観的なものであり、分散型台帳14-1~14-4は、互いに異なるデータを保持している。これは、上述したとおり、トランザクションデータの共有範囲が当事者間に限定されるからである。
【0049】
図4は、分散型台帳14-Nを説明するための概念図である。図4には、情報管理装置10-1~10-4にそれぞれ記憶されている分散型台帳14-1~14-4の互いの関係が概略的に示されている。
【0050】
分散型台帳14-1と分散型台帳14-2とは、A企業の情報管理装置10-1(ノード12-1)とB企業の情報管理装置10-2(ノード12-2)との間で送受信されたトランザクションデータを共有している(領域S1)。領域S1には、たとえば、ノード12-1,12-2間で送受信された規制リストに関するトランザクションデータ、B製品に含有されている規制物質の問い合わせのトランザクションデータ、および、問い合わせに対する回答のトランザクションデータ、等が含まれている。
【0051】
分散型台帳14-2と分散型台帳14-3とは、B企業の情報管理装置10-2(ノード12-2)とC企業の情報管理装置10-3(ノード12-3)との間で送受信されたトランザクションデータを共有している(領域S2)。領域S2には、たとえば、ノード12-2,12-3間で送受信された規制リストに関するトランザクションデータ、C製品に含有されている規制物質の問い合わせのトランザクションデータ、および、問い合わせに対する回答のトランザクションデータ、等が含まれている。
【0052】
分散型台帳14-2と分散型台帳14-4とは、B企業の情報管理装置10-2(ノード12-2)とD企業の情報管理装置10-4(ノード12-4)との間で送受信されたトランザクションデータを共有している(領域S3)。領域S3には、たとえば、ノード12-2,12-4間で送受信された規制リストに関するトランザクションデータ、D製品に含有されている規制物質の問い合わせのトランザクションデータ、および、問い合わせに対する回答のトランザクションデータ、等が含まれている。
【0053】
たとえば、サプライチェーンにおける川中企業であるB企業からすると、B製品に含まれているC製品およびD製品を、どの企業から仕入れているかの情報をA企業に知られたくない場合がある。トランザクションデータには送信元および送信先のノードの情報等が含まれるところ、たとえば、分散型台帳ネットワーク2を形成する全てのノードにトランザクションデータがブロードキャストされると、A企業にC製品およびD製品の仕入れ先を知られ得る。本実施の形態に情報管理システム1では、トランザクションデータの共有範囲が当事者間に限定されることで、直接の取引関係がある企業間以外に取引先の情報(企業名等)が開示されることを抑制することができる。
【0054】
情報管理システム1が備える種々の機能を、トランザクションデータの共有範囲を当事者間に限定しながら実現することにより、情報の秘匿性を担保しながら、分散型台帳技術を用いた迅速な情報伝達が可能となる。以下では、情報管理システム1で実行される主な3つのケースを例にして、情報管理システム1における具体的な処理を説明する。主な3つのケースは、(1)規制リストを更新するケース、(2)問い合わせを登録するケース、および、(3)新規製品の情報を登録するケースである。
【0055】
<(1)規制リストを更新するケース>
図5は、規制リスト141-Nを更新するケースを説明するための図である。規制リスト141-Nの更新は、規制リスト141-Nに対象物質を追加することを指す。なお、規制リスト141-Nの更新は、規制リスト141-Nから対象物質を削除することを含んでもよい。規制リスト141-1への対象物質の追加の提案は、たとえば、外部団体のサーバ装置等から取得された規制物質の情報に基づいて、規制物質が追加されたと情報管理装置10-Nが判断した際に自動でなされたり、情報管理装置10-Nのユーザが、入力装置170-Nを介して、任意の化学物質を対象物質とする要求を入力した際になされたりする。ここでは、一例として、たとえばSVHCに新たな規制物質が追加され、これをB企業のノード12-2が最初に検知したことを想定する。なお、B企業の情報管理装置10-2のユーザが、任意の化学物質を対象物質に追加することを提案する場合にも、以下に説明する処理と同様の処理が実行される。
【0056】
B企業のノード12-2は、新たな規制物質を規制リスト141-2に追加して、規制リスト141-2を更新する。そして、B企業のノード12-2は、他の規制リスト141-1,141-3,141-4にも新たな規制物質を対象物質として追加するために、新たな規制物質を規制リスト141-1,141-3,141-4に追加することを提案するトランザクションデータを生成する。具体的には、B企業のノード12-2は、直接の取引関係があるA企業のノード12-1、C企業のノード12-3およびD企業のノード12-4のそれぞれに送信する3つのトランザクションデータを生成する。A企業のノード12-1へ送信されるトランザクションデータには、たとえば、トランザクションデータの送信元の情報(B企業)、トランザクションデータの送信先の情報(A企業)、トランザクションの種別、CAS番号、物質名称、規制更新日、報告閾値、および、規制物質であるか否かを示す情報、等が含まれる。トランザクションの種別は、トランザクションが提案する内容を示すものである。この場合におけるトランザクションの種別は、「対象物質の追加」を示すものである。C企業のノード12-3およびD企業のノード12-4に送信されるトランザクションデータでは、上記のA企業へ送信されるトランザクションデータに対して送信先の情報が、それぞれC企業のノード12-3およびD企業のノード12-4に変更される。
【0057】
ノード12-2は、生成されたトランザクションデータに電子署名を付加して、トランザクションデータを他のノード12-1,12-3,12-4に送信する(矢印A1)。受信したトランザクションデータ(提案されたトランザクションデータ)をノード12-1,12-3,12-4が承認することにより、トランザクションデータが分散型台帳14-1~14-4に追加される。具体的には、ノード12-1は、ノード12-2からトランザクションデータを受けると、トランザクションデータを検証する。検証の手法は、たとえば、トランザクションデータに付加された電子署名(B企業の電子署名)を用いた検証手法でもよいし、他の公知の検証手法であってもよい。本実施の形態においては、ノード12-1は、規制物質であるか否かを示す情報の正確性も検証する。規制物質に対しては回答の義務(法的な義務)が生じ得る一方で、任意の化学物質に対しては回答の義務は生じない。企業秘密であり得る組成データを極力開示したくないという企業ニーズの観点から、対象物質が規制物質であるのか、任意の化学物質であるのかは企業にとって重要な関心事であるためである。たとえば、ノード12-1は、トランザクションデータに含まれている規制物質であるか否かを示す情報が規制物質を示す場合、外部(外部団体のサーバ装置等)から規制物質のデータを取得して、提案されている化学物質が規制物質であることを確認する。また、ノード12-1は、トランザクションデータに含まれている規制物質であるか否かを示す情報が任意の化学物質を示す場合、外部から規制物質のデータを取得して、提案されている化学物質が規制物質でないことを確認する。トランザクションデータの内容の検証を終えると、ノード12-1は、トランザクションデータに電子署名を付加してトランザクションデータを承認し、当該トランザクションデータをノード12-2に返信する。ノード12-1,12-2は、それぞれ、トランザクションデータ(ノード12-1,12-2の両方の電子署名が付加されたトランザクションデータ)を分散型台帳14-1,14-2に追加する。分散型台帳14-1にトランザクションデータが保持されることによって、A企業の規制リスト141-1が更新される。ノード12-1がトランザクションデータを承認しない場合には、トランザクションデータが分散型台帳14-1,14-2に追加されず、A企業の規制リスト141-1は更新されない。
【0058】
同様にして、ノード12-3がノード12-2からのトランザクションデータを承認することにより、トランザクションデータが分散型台帳14-2,14-3に追加される。分散型台帳14-3にトランザクションデータが保持されることによって、C企業の規制リスト141-3が更新される。
【0059】
また、ノード12-4がノード12-2からのトランザクションデータを承認することにより、トランザクションデータが分散型台帳14-2,14-4に追加される。分散型台帳14-4にトランザクションデータが保持されることによって、D企業の規制リスト141-4が更新される。
【0060】
なお、規制リスト141-Nの更新をA企業が最初に提案した場合には、規制リスト141-Nの更新を提案するトランザクションデータが、A企業のノード12-1からB企業のノード12-2へ伝搬される。そして、B企業のノード12-2は、自身がトランザクションデータを承認するか否かにかかわらず、規制リスト141-Nの更新を提案するトランザクションデータをC企業のノード12-3およびD企業のノード12-4に伝搬する。
【0061】
本実施の形態に係る情報管理システム1では、規制リスト141-Nの更新の提案に対して、各ノードは、当該提案を承諾、および、否認することができる。図6および図7を用いて、具体的に説明する。なお、提案の否認については、図7で説明する。
【0062】
図6は、規制リスト141-Nの更新過程の一例を説明するための図である。ここでは、図5で説明したように、いずれかのノード12-N(たとえば、B企業のノード12-2)によって規制リスト141-Nへの対象物質の追加を提案するトランザクションデータが生成され、このトランザクションデータがすべてのノードに伝搬されたことを想定する。なお、以下では、対象物質としての追加が提案された化学物質を「新たな対象物質」とも称する。図6では、上記トランザクションデータに含まれている規制物質であるか否かを示す情報は、正しく入力されているものとする。
【0063】
図6に示される例では、B企業およびD企業は、規制リスト141-Nの更新の提案を承諾している。A企業およびC企業は、規制リスト141-Nの更新の提案を承諾していない。
【0064】
D企業のノード12-4は、B企業のノード12-2から、新たな対象物質についての問い合わせを受けてはいないが、規制リスト141-4の更新の提案を承諾したことをトリガとして、新たな対象物質の情報を追加したD製品の組成データをB企業のノード12-2に報告する(矢印B0)。具体的には、D企業のノード12-4は、規制リスト141-4の更新の提案を承諾すると、製品組成データ151-4を用いて、新たな対象物質の情報を追加したD製品の組成データを回答データ143-4として作成する。そして、D企業のノード12-4は、作成された回答データ143-4を報告するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する。
【0065】
B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4から受けた、回答データ143-4を報告するトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-4の内容が、回答データ143-2としてB企業の分散型台帳14-2に保持される。B企業のノード12-2は、D製品の組成データに含まれるD製品に含有されている新たな対象物質の情報を用いて、B製品の製品組成データ151-2を更新する。
【0066】
B企業のノード12-2は、A企業のノード12-1から、新たな対象物質についての問い合わせを受けてはいないが、規制リスト141-2の更新の提案を承諾しているので、新たな対象物質の情報を追加したB製品の組成データをA企業のノード12-1に報告する。B企業のノード12-2は、D製品に含有されている新たな対象物質の情報を反映させたB製品の組成データを回答データ143-2として作成する。この回答データ143-2には、D企業を特定するための情報は含まれていない。B企業のノード12-2は、作成された回答データ143-2を報告するトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する(矢印B1)。この回答データ143-2には、C製品に含有されている新たな対象物質の情報が反映されていないため、B企業のノード12-2は、上記回答データ143-2を一部報告として、A企業のノード12-1に報告する。
【0067】
A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-2の内容が、回答データ143-1としてA企業の分散型台帳14-1に保持される。
【0068】
C企業のノード12-3は、規制リスト141-Nの更新の提案を承諾していないため、新たな対象物質の情報を追加したC製品の組成データをB企業へ送信していない。B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3から新たな対象物質の情報を追加したC製品の組成データを未だ得ていないことを認識すると、新たな対象物質の情報を追加したC製品の組成データを得るために、問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2の内容の回答を要求するトランザクションデータをC企業のノード12-2に送信する(矢印B2)。なお、この際には、B企業のノード12-2は、既に新たな対象物質の情報を追加したD製品の組成データを得ているD企業のノード12-4に対しては、問い合わせしない。
【0069】
C企業のノード12-3は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、問い合わせデータ142-2の内容が、問い合わせデータ142-3としてC企業の分散型台帳14-3に保持される。新たな対象物質の情報を開示することについて、たとえば、情報管理装置10-3の管理者あるいはユーザによって検討される。検討の結果、新たな対象物質の情報を開示することが問題ないと判断されると、情報管理装置10-3の管理者あるいはユーザによって規制リスト141-3の更新を承諾する操作がなされる。規制リスト141-3の更新が承諾されると、C企業のノード12-3は、製品組成データ151-3を用いて、新たな対象物質の情報を追加したC製品の組成データを回答データ143-3として作成する。そして、C企業のノード12-3は、作成された回答データ143-3を報告するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印B3)。
【0070】
B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-3の内容が、回答データ143-2としてB企業の分散型台帳14-2に保持される。B企業のノード12-2は、C製品に含有されている新たな対象物質の情報を用いて、B製品の製品組成データ151-2を更新する。そして、A企業に報告するため、C製品に含有されている新たな対象物質の情報を反映させたB製品の組成データを回答データ143-2として作成する。この回答データ143-2には、B製品に含まれるC製品およびD製品の両方に含有されている対象物質の情報が反映されている。よって、B企業のノード12-2は、作成された回答データ143-2を完全な報告とし、作成された回答データ143-2を報告するトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する(矢印B4)。なお、この回答データ143-2には、C企業およびD企業を特定するための情報は含まれていない。
【0071】
A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-2の内容が、回答データ143-1としてA企業の分散型台帳14-1に保持される。
【0072】
B企業のノード12-2は、規制リスト141-2の更新に応答したA企業のノード12-1への完全な報告を終えると、完了フラグを設定する。そして、B企業のノード12-2は、規制リスト141-2の更新に対する完全な報告を終えたことを示すトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する。A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これにより、規制リスト141-Nの更新に対する処理が完了となる。
【0073】
図7は、規制リスト141-Nの更新過程の他の例を説明するための図である。図7においても、いずれかのノード12-N(たとえば、B企業のノード12-2)によって規制リスト141-Nへの対象物質の追加を提案するトランザクションデータが生成され、このトランザクションデータがすべてのノードに伝搬されたことを想定する。また、図7では、上記トランザクションデータに含まれている規制物質であるか否かを示す情報は、「規制物質」を示すが、この入力が誤りであり、正しくは「任意の化学物質」であるものとする。なお、上記トランザクションデータに含まれている規制物質であるか否かを示す情報が「任意の化学物質」を示すが、正しくは「規制物質」であるケースにおいても、以下に説明する処理と同様の処理が実行される。
【0074】
図7に示される例では、B企業は、規制リスト141-Nの更新の提案元であるため、規制リスト141-Nの更新の提案を承諾している。A企業は、規制リスト141-Nの更新の提案を未だ承諾(検証)していない。C企業およびD企業は、規制リスト141-Nの更新の提案を否認している。
【0075】
C企業のノード12-3は、B企業のノード12-2から受けた、規制リスト141-3への対象物質の追加を提案するトランザクションデータを検証し、この提案が誤りであると判断する。具体的には、C企業のノード12-3は、たとえば、外部(外部団体のサーバ装置等)から規制物質のデータを取得して、提案されている新たな対象物質が規制物質であるか否かを確認することによって、規制物質であるか否かを示す情報が誤りであると判断する。C企業のノード12-3は、規制リスト141-3への新たな対象物質の追加の提案を承諾せず、提案を否認するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印B5)。
【0076】
B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3から否認するトランザクションデータを受けると、否認されたことを示す情報を表示装置180-2に表示させ、B企業のユーザの入力を待つ。たとえば、B企業のユーザは、規制リスト141-3への対象物質の追加を提案した時の入力情報を検証し、誤りを発見した場合には、入力情報を修正して、再度提案することが可能である。誤りの例としては、たとえば、規制物質であるか否かを示す情報の入力誤り、CAS番号の入力誤り、物質名称の入力誤り、等が挙げられる。
【0077】
規制リスト141-Nへの対象物質の追加を提案するトランザクションデータを受けたノード(たとえば、D企業のノード12-4)が、当該トランザクションデータを検証するタイミングによっては、当該トランザクションデータを受けたノードがトランザクションデータを否認するより前に、当該トランザクションデータを送信したノードからの問い合わせが送られる場合もある。
【0078】
D企業のノード12-4は、規制リスト141-4への対象物質の追加を提案するトランザクションデータの検証を終えていない。B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4から新たな対象物質の情報を追加したD製品の組成データを未だ得ていないことを認識すると、新たな対象物質の情報を追加したD製品の組成データを得るために、問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2の内容の回答を要求するトランザクションデータをD企業のノード12-4に送信する(矢印B6)。
【0079】
D企業のノード12-4は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、問い合わせデータ142-2の内容が、問い合わせデータ142-4としてD企業の分散型台帳14-4に保持される。D企業のノード12-4は、B企業のノード12-2から受けた、規制リスト141-3への対象物質の追加を提案するトランザクションデータを検証する。そして、D企業のノード12-4は、当該当該トランザクションデータが誤りであると判断する。D企業のノード12-4は、規制リスト141-4への新たな対象物質の追加の提案を承諾せず、提案を否認するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印B7)。
【0080】
否認するトランザクションデータを受けたB企業のノード12-2が行なう処理は、C企業のノード12-3から否認するトランザクションデータを受けた場合の処理と同様である。
【0081】
あるノードによってなされた規制リスト141-Nの更新の提案が誤っている場合もあり得る。ノード12-Nが、他のノードからの規制リスト141-Nの更新の提案を否認する機能を有することにより、謂わば情報管理システム1として提案内容をダブルチェックすることができる。誤った提案を否認できることにより、必要以上の情報開示が行なわれることを抑制することができる。
【0082】
<(2)問い合わせを登録するケース>
問い合わせは、サプライチェーンにおける下流の企業から直接の取引関係がある上流の企業に対して行なわれる。下流の企業は、任意のタイミングで直接の取引関係がある上流の企業に、購入製品の組成に関する問い合わせをすることができる。問い合わせの登録は、たとえば、規制リスト141-Nに含まれている対象物質について報告を受けていないものがある場合に実行される。たとえば、サプライチェーンにおける、いずれかの企業で規制リスト141-Nの更新の承諾が行なわれていないような場面が想定される。ここでは、A企業からB企業へB製品についての問い合わせが行なわれるケースを一例として説明する。
【0083】
図8は、問い合わせを登録するケースを説明するための図である。図8では、A企業からB企業へのB製品についての問い合わせがなされている。ここでは、B製品に含有されている対象物質は、全てのノード12-1~12-4で承諾されて規制リスト141-1~141~4に登録されているものとする。B製品に含有されている対象物質として、第1~第3対象物質があるものとする。A企業は、B製品について、第1対象物質および第2対象物質の組成データ(ここでは含有率)の報告を受けてるが、第3対象物質の組成データの報告を受けていないものとする。
【0084】
まず、A企業のノード12-1は、問い合わせ目的の第3対象物質が規制リスト141-1に含まれているか否かを確認し、規制リスト141-1に含まれていない場合には、当該第3対象物質を規制リスト141-1に追加するための上述処理(規制リストの更新の処理)を実行する。問い合わせ目的の第3対象物質が規制リスト141-1に含まれていることを確認すると、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2に対して、B製品についての問い合わせを行なう問い合わせデータ142-1を作成し、問い合わせデータ142-1の内容の回答を要求するトランザクションデータを生成する。トランザクションデータには、たとえば、トランザクションデータの送信元の情報(A企業)、トランザクションデータの送信先の情報(B企業)、トランザクションの種別、B製品を特定するための品番情報、および、問い合わせ目的等が含まれる。トランザクションの種別は、「組成の開示の要求」を示すものである。B製品を特定するための品番情報は、たとえば、B企業においてB製品を管理するための品番情報であってもよい。たとえば、A企業においてB製品を管理する品番情報と、B企業においてB製品を管理する品番情報との対応表を予め用意しておき、A企業のユーザは、問い合わせ情報の作成時には、A企業においてB製品を管理する品番情報を入力できるものとしてもよい。たとえば、入力されたA企業においてB製品を管理する品番情報を、ノード12-1がB企業においてB製品を管理する品番情報に変換してトランザクションデータに含めてもよい。問い合わせ目的は、たとえば、「含有率」および「存在有無」から選択可能であってもよい。問い合わせ目的に「含有率」が選択されると、問い合わせに対する回答には、B製品に含有されている対象物質毎の含有率が、たとえばリスト形式で回答される。また、問い合わせ目的に「存在有無」が選択されると、問い合わせに対する回答には、B製品に含有されている全ての対象物質が、たとえばリスト形式で回答される。A企業のノード12-1は、生成されたトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印C1)。
【0085】
B企業のノード12-2は、A企業のノード12-1から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、問い合わせデータ142-1の内容が、問い合わせデータ142-2としてB企業の分散型台帳14-2に保持される。B企業のノード12-2は、B製品に含まれるC製品についての問い合わせを行なう問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2の内容の回答を要求するトランザクションデータを生成する。また、B企業のノード12-2は、B製品に含まれるD製品についての問い合わせを行なう問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2の内容の回答を要求するトランザクションデータを生成する。C製品についての問い合わせを行なうトランザクションデータには、たとえば、トランザクションデータの送信元の情報(B企業)、トランザクションデータの送信先の情報(C企業)、トランザクションの種別、C製品を特定するための品番情報、および、問い合わせ目的等が含まれる。D製品についての問い合わせを行なうトランザクションデータには、たとえば、トランザクションデータの送信元の情報(B企業)、トランザクションデータの送信先の情報(D企業)、トランザクションの種別、D製品を特定するための品番情報、および、問い合わせ目的等が含まれる。B企業のノード12-2は、C製品についての問い合わせを行なうトランザクションデータ、および、D製品についての問い合わせを行なうトランザクションデータを、C企業のノード12-3およびD企業のノード12-4にそれぞれ送信する(矢印C2)。
【0086】
C企業のノード12-3は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、問い合わせデータ142-2の内容が、問い合わせデータ142-3としてC企業の分散型台帳14-3に保持される。C企業のノード12-3は、C製品に関して自身よりも上流の企業は存在しないので、C製品の組成データを回答データ143-3として作成する。そして、C企業のノード12-3は、作成された回答データ143-3を報告するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印C3)。
【0087】
B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-3の内容が、回答データ143-2としてB企業の分散型台帳14-2に保持される。B企業のノード12-2は、C製品に含有されている対象物質の情報を用いて、B製品の製品組成データ151-2を更新する。そして、ノード12-2は、A企業に報告するため、C製品に含有されている対象物質の情報を反映させたB製品の組成データを回答データ143-2として作成する。この回答データ143-2には、C企業を特定するための情報は含まれていない。B企業のノード12-2は、作成された回答データ143-2を報告するトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する(矢印C4)。この回答データ143-2にはD製品に含有されている対象物質の情報が反映されていないので、B企業のノード12-2は、この回答データ143-2を一部報告としてA企業のノード12-1に送信される。A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-2の内容が、回答データ143-1としてA企業の分散型台帳14-1に保持される。
【0088】
D企業のノード12-4は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、問い合わせデータ142-2の内容が、問い合わせデータ142-4としてD企業の分散型台帳14-4に保持される。D企業のノード12-4は、D製品に関して自身よりも上流の企業は存在しないので、D製品の組成データを回答データ143-4として作成する。そして、D企業のノード12-4は、作成された回答データ143-4を報告するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印C5)。
【0089】
B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-4の内容が、回答データ143-2としてB企業の分散型台帳14-2に保持される。B企業のノード12-2は、D製品に含有されている対象物質の情報を用いて、B製品の製品組成データ151-2を更新する。そして、ノード12-2は、A企業に報告するため、D製品に含有されている新たな対象物質の情報を反映させたB製品の組成データを回答データ143-2として作成する。この回答データ143-2には、B製品に含まれるC製品およびD製品の両方に含有されている対象物質の情報が反映されている。よって、B企業のノード12-2は、作成された回答データ143-2を完全な報告とし、作成された回答データ143-2を報告するトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する(矢印C6)。なお、この回答データ143-2には、C企業およびD企業を特定するための情報は含まれていない。
【0090】
A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これによって、回答データ143-2の内容が、回答データ143-1としてA企業の分散型台帳14-1に保持される。
【0091】
B企業のノード12-2は、A企業のノード12-1からの問い合わせに対する完全な報告を終えると、完了フラグを設定する。そして、B企業のノード12-2は、問い合わせに対する完全な報告を終えたことを示すトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する。A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これにより、問い合わせから回答の一連の処理が完了となる。
【0092】
<(3)新規製品の情報を登録するケース>
新規製品をリリースする場合、新規製品をリリースする企業の情報管理装置10-Nは、新規製品の組成データを製品組成データ151-Nに追加する。製品組成データ151-Nへの新規製品の組成データの追加をノード12-Nが検知すると、ノード12-Nは、新規製品に含まれる製品の購入先である上流の企業のノードから、製品の組成データを取得し、新規製品の組成データを作成する。そして、ノード12-Nは、新規製品を供給する下流の企業のノードに新規製品に含有されている対象物質の情報を提供する。ここでは、B企業が新規製品を追加するケースを一例として説明する。
【0093】
図9は、新規製品の情報を登録するケースを説明するための図である。図9では、B企業が新規製品を追加するケースが示されている。ここでは、新規製品としてB1製品が追加され、B1製品の組成データが製品組成データ151-2に追加されたものとする。そして、B1製品には、C企業が供給するC製品およびD企業が供給するD1製品が含まれているものとする。C製品は、既存製品であるB製品にも含まれているため、B企業は、既にC製品に含有されている対象物質の情報を取得している。一方、D1製品は、新規にD企業から供給を受ける製品であり、B企業は、D1製品に含有されている対象物質の情報を有していない。B1製品を購入するA企業に、B1製品に含有されている対象物質の情報を報告するためには、B企業は、D企業からD1製品に含有されている対象物質の情報(D1製品の組成データ)を取得する必要がある。
【0094】
B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4に対して、D1製品についての問い合わせを行なうトランザクションデータを生成する。トランザクションデータには、たとえば、トランザクションデータの送信元の情報(B企業)、トランザクションデータの送信先の情報(D企業)、トランザクションの種別、D1製品を特定するための品番情報、および、問い合わせ目的等が含まれる。問い合わせについては、上述の<(2)問い合わせを登録するケース>で説明したとおりであるので、ここでは繰り返し説明しない。B企業のノード12-2は、生成されたトランザクションデータをD企業のノード12-に送信する(矢印D1)。なお、C製品に含有されている対象物質の情報は既に取得されているので、B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3には問い合わせをしない。
【0095】
D企業のノード12-4は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。D企業のノード12-4は、D1製品に関して自身よりも上流の企業は存在しないので、D1製品の組成データを回答データ143-4として作成する。そして、D企業のノード12-4は、作成された回答データ143-4を報告するトランザクションデータをB企業のノード12-2に送信する(矢印D2)。
【0096】
B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。B企業のノード12-2は、D1製品に含有されている対象物質の情報を用いて、B1製品の製品組成データ151-2を更新する。そして、A企業に報告するため、D1製品に含有されている新たな対象物質の情報を反映させたB1製品の組成データを回答データ143-2として作成する。この回答データ143-2には、B1製品に含まれるC製品およびD1製品の両方に含有されている対象物質の情報が反映されている。よって、B企業のノード12-2は、作成された回答データ143-2を完全な報告とし、作成された回答データ143-2を報告するトランザクションデータをA企業のノード12-1に送信する(矢印D3)。なお、上記の回答データ143-2には、C企業およびD企業を特定するための情報は含まれていない。A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2から受けたトランザクションデータを検証した後に、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。これにより、新製品の追加の一連の処理が完了される。
【0097】
なお、仮にC製品についても新規にC企業から供給を受ける製品であった場合には、B企業のノード12-2は、D1製品と同様にして、C企業からC製品に含有されている対象物質の情報を得る。この場合には、B企業のノード12-2は、C製品に含有されている対象物質の情報、および、D1製品に含有されている対象物質の情報の両方が揃うのを待ち、両方の情報が反映されたB1製品の組成データを回答データ143-2として作成する。新規製品の情報の登録時においては、A企業は、B1製品に関しての情報を保持していないため、B企業からB1製品についての一部報告を受けても、当該情報の管理が困難である場合がある。そのため、新規製品の情報の登録時においては、B企業のノード12-2は、B1製品についての一部報告は行なわず、完全な報告を行なう。
【0098】
<ノードの機能ブロック>
図10は、規制リスト141-Nを更新する機能に関連する制御装置110-N(ノード12-N)の機能ブロック図である。図10には、ノード12-Nが他のノードに対して、規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求する機能と、他のノードから受けた、規制リスト141-Nへの対象物質の追加要求に応答する機能とが示されている。図10を参照して、ノード12-Nは、情報取得部1201-Nと、照会部1202-Nと、トランザクションデータ生成部1203-Nと、電子署名部1204-Nと、トランザクションデータ送信部1205-Nと、承認部1206-Nと、伝搬部1207-Nと、決定部1208-Nとを含む。
【0099】
<<ノードの機能ブロック:対象物質の追加を要求する機能>>
情報取得部1201-N、照会部1202-N、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-Nおよびトランザクションデータ送信部1205-Nは、他のノードに対して、規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求する機能を実現する。
【0100】
情報取得部1201-Nは、通信装置140-Nを介して、情報管理装置10-Nの外部(外部団体のサーバ装置等)から規制物質のデータ(外部データ)を取得する。情報取得部1201-Nは、たとえば、所定の周期毎に情報管理システム1の外部から外部データを取得する。所定の周期は、情報管理システム1の特性等に応じて適宜設定することができる。また、情報取得部1201-Nは、入力装置170-Nを介して入力された、任意の化学物質を対象物質とする要求(入力データ)を取得する。情報管理装置10-Nのユーザは、情報管理システム1で管理したい化学物質(対象物質としたい化学物質)を入力装置170-Nに入力し、当該入力された情報を入力データとして情報取得部1201-Nに取得させることができる。情報取得部1201-Nは、外部データおよび/または入力データを照会部1202-Nに出力する。
【0101】
照会部1202-Nは、記憶装置160-Nから規制リスト141-Nを読み出し、情報取得部1201-Nから受けた外部データおよび/または入力データを規制リスト141-Nに照会させる。外部データおよび/または入力データが示す化学物質が既に規制リスト141-Nに含まれている場合には、照会部1202-Nは、外部データおよび/または入力データを破棄する。外部データおよび/または入力データが示す化学物質が規制リスト141-Nに含まれていない場合には、照会部1202-Nは、外部データおよび/または入力データが示す化学物質を新たな対象物質として、新たな対象物質の情報をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。
【0102】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、提案するトランザクションデータを生成する。この場合に生成されるトランザクションデータには、たとえば、トランザクションデータの送信元の情報、トランザクションデータの送信先の情報、トランザクションの種別(対象物質の追加)、対象物質の名称、および、対象物質のCAS番号等が含まれる。
【0103】
また、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名部1204-Nから電子署名を取得する。そして、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名をトランザクションデータに付加する。
【0104】
電子署名部1204-Nは、秘密鍵を記憶装置150-Nから読み出す。電子署名部1204-Nは、秘密鍵を用いて、電子署名を生成する。たとえば、電子署名部1204-Nは、トランザクションデータ生成部1203-Nにより生成されたトランザクションデータを、秘密鍵を用いて暗号化することで電子署名を生成する。電子署名部1204-Nは、生成された電子署名をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。
【0105】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名を付加したトランザクションデータをトランザクションデータ送信部1205-Nへ出力する。
【0106】
トランザクションデータ送信部1205-Nは、トランザクションデータを送信するための制御信号を通信装置140-Nに出力する。上記制御信号には、トランザクションデータの送信先の情報が示すノードのアドレスが含まれる。これにより、通信装置140-NおよびネットワークNWを介して、トランザクションデータが当事者のノードに送信される。当事者となるノードは、直接の取引関係にあるノード、換言すれば、自身の分散型台帳14-Nと重なり合う領域を持つ分散型台帳を有するノードである。
【0107】
<<ノードの機能ブロック:対象物質の追加の要求に応答する機能>>
情報取得部1201-N、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-N、トランザクションデータ送信部1205-N、承認部1206-N、伝搬部1207-Nおよび決定部1208-Nは、規制リスト141-Nへの対象物質の追加の要求に応答する機能を実現する。
【0108】
情報取得部1201-Nは、通信装置140-Nを介して、分散型台帳ネットワーク2を形成する他のノードが送信したトランザクションデータを取得する。このトランザクションデータは、他のノードが提案した、規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求するトランザクションデータ(規制リスト141-Nの更新を要求するトランザクションデータ)である。情報取得部1201-Nは、取得したトランザクションデータを承認部1206-Nに出力する。
【0109】
承認部1206-Nは、情報取得部1201-Nから受けたトランザクションデータを検証し、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。トランザクションデータの検証は、当該トランザクションデータが直接的および間接的に承認しているトランザクションデータを遡って検証し、不正なトランザクションデータを承認していないことを検証してもよい。直接的に承認しているトランザクションデータとは、インプットステートとなっているトランザクションデータを指す。間接的に承認しているトランザクションデータとは、直接的に承認しているトランザクションデータのインプットステートとなっているトランザクションデータ、または、直接的に承認しているトランザクションデータに繋がるいずれかのトランザクションデータのインプットステートとなっているトランザクションデータである。検証の手法は、たとえば、トランザクションデータに付加された電子署名(他のノードの電子署名)を用いた検証手法でもよいし、他の公知の検証手法であってもよい。
【0110】
承認部1206-Nは、承認したトランザクションデータを伝搬部1207-Nに出力する。また、承認部1206-Nは、承認したトランザクションデータを決定部1208-Nに出力する。
【0111】
伝搬部1207-Nは、サプライチェーンにおいて自身より上流のノードがいるか否かを判断し、上流のノードがいる場合には、承認されたトランザクションデータとともに、トランザクションデータの送信先(上流のノード)を示す情報をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。
【0112】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、伝搬部1207-Nから受けたトランザクションデータに対して、送信元の情報を自身に、トランザクションデータの送信先の情報を上流のノードに変更する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名部1204-Nから電子署名を取得する。そして、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名をトランザクションデータに付加する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名を付加したトランザクションデータをトランザクションデータ送信部1205-Nへ出力する。
【0113】
トランザクションデータ送信部1205-Nは、トランザクションデータを送信するための制御信号を通信装置140-Nに出力する。これにより、他のノードが提案した、規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求するトランザクションデータが上流のノードに伝搬される。ノード12-Nが、他のノードが提案した、規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求するトランザクションデータを、上流のノードに伝搬する機能を有することにより、当該トランザクションデータが分散型台帳ネットワーク2の全てのノードに伝搬される。
【0114】
決定部1208-Nは、承認部1206-Nにより承認されたトランザクションデータが示す処理内容を受け入れるか否か(承諾するか否か)を決定する。具体的には、決定部1208-Nは、他のノードから提案されている新たな対象物質を規制リスト141-Nに追加するか否かを決定する。まず、決定部1208-Nは、トランザクションデータに含まれている、規制物質であるか否かを示す情報が「規制物質」を示す場合、外部(外部団体のサーバ装置等)から取得された規制物質のデータを参照して、新たな対象物質が規制物質であることを確認する。また、決定部1208-Nは、トランザクションデータに含まれている、規制物質であるか否かを示す情報が「任意の化学物質」を示す場合、外部から取得された規制物質のデータを参照して、新たな対象物質が規制物質でないことを確認する(すなわち、任意の化学物質であることを確認する)。これらの確認に失敗した場合、決定部1208-Nは、対象物質の追加の要求を否認することを決定する。
【0115】
上記確認に成功した場合、決定部1208-Nは、規制リスト141-Nへの追加を要求されている新たな対象物質が、現在の規制リスト141-Nに含まれているか否か(すなわち、既に承諾されているか否か)を判断する。規制リスト141-Nへの追加を要求されている対象物質が、既に現在の規制リスト141-Nに含まれている場合には、決定部1208-Nは、トランザクションデータの受け入れを決定する。一方、規制リスト141-Nへの追加を要求されている対象物質が、現在の規制リスト141-Nに含まれていない場合には、決定部1208-Nは、受け入れの可否(承諾の可否)を問う情報を表示装置180-Nに表示させ、入力装置170-Nを介したユーザの入力を待つ。ユーザの入力情報が、受け入れを肯定するもの(要求を承諾するもの)であった場合には、決定部1208-Nは、トランザクションデータの受け入れを決定する。ユーザの入力情報が、受け入れを否定するもの(要求を否認するもの)であった場合には、決定部1208-Nは、トランザクションデータの受け入れを拒否する。
【0116】
トランザクションデータの受け入れを決定した場合には、決定部1208-Nは、承認部1206-Nにより承認されたトランザクションデータを、トランザクションデータの送信元である下流のノードへ返信するように、トランザクションデータの送信先(下流のノード)を指定する。決定部1208-Nは、承認されたトランザクションデータとともに、トランザクションデータの送信先(下流のノード)を示す情報をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。トランザクションデータの受け入れを否定した場合には、決定部1208-Nは、承認部1206-Nにより承認されたトランザクションデータを破棄する。
【0117】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、決定部1208-Nから受けたトランザクションデータの送信元の情報を自身に、トランザクションデータの送信先の情報を下流のノードに変更する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名部1204-Nから電子署名を取得する。そして、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名をトランザクションデータに付加する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名を付加したトランザクションデータをトランザクションデータ送信部1205-Nへ出力する。
【0118】
トランザクションデータ送信部1205-Nは、トランザクションデータを送信するための制御信号を通信装置140-Nに出力する。これにより、トランザクションデータが下流のノードに返信される。下流のノードに返信されたトランザクションデータには、下流のノードの電子署名と、ノード12-Nの電子署名とが付加されている。このトランザクションデータは、両者の分散型台帳(下流のノードの分散型台帳および分散型台帳14-N)に保持される。
【0119】
<<ノードの機能ブロック:問い合わせ機能>>
図11は、問い合わせ機能、および、回答機能に関連する制御装置110-N(ノード12-N)の機能ブロック図である。図11を参照して、ノード12-Nは、情報取得部1201-Nと、トランザクションデータ生成部1203-Nと、電子署名部1204-Nと、トランザクションデータ送信部1205-Nと、承認部1206-Nと、問い合わせ実行部1211-Nと、組成確認部1212-Nと、回答作成部1213-Nと、組成更新部1214-Nと、フラグ設定部1215-Nとを含む。
【0120】
情報取得部1201-N、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-N、トランザクションデータ送信部1205-N、および、問い合わせ実行部1211-Nは、他のノード(上流のノード)に対して、問い合わせを実行する機能を実現する。
【0121】
情報取得部1201-Nは、入力装置170-Nを介して入力された問い合わせ入力データを取得する。情報管理装置10-Nのユーザは、購入製品の組成について上流の企業に問い合わせたい内容を入力装置170-Nに入力し、当該入力された情報を問い合わせ入力データとして情報取得部1201-Nに取得させることができる。情報管理装置10-Nのユーザは、たとえば、表示装置180-Nに表示された問い合わせフォームにおいて、問い合わせ元(自身)の情報、問い合わせ先(上流の企業)の情報、問い合わせを行なう製品の品番情報、問い合わせ目的等の情報を入力する。これらの情報が問い合わせ入力データとなる。上述したとおり、問い合わせ目的は、たとえば、「含有率」および「存在有無」から選択可能であってもよい。情報取得部1201-Nは、問い合わせ入力データを問い合わせ実行部1211-Nに出力する。
【0122】
問い合わせ実行部1211-Nは、問い合わせ入力データに基づいて、トランザクションデータ生成部1203-Nに伝える情報を生成する。具体的には、問い合わせ実行部1211-Nは、問い合わせ入力データに基づいて、トランザクションデータの送信元(自身)の情報、トランザクションデータの送信先(上流の企業:問い合わせ対象の製品の購入元)の情報、トランザクションの種別(組成の開示の要求)、問い合わせ対象の製品の品番情報、および、問い合わせ目的を抽出し、抽出された情報をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。
【0123】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、問い合わせ実行部1211-Nから受けた情報を用いて、トランザクションデータを生成する。トランザクションデータには、トランザクションデータの送信元(自身)の情報、トランザクションデータの送信先(上流の企業:問い合わせ対象の製品を購入元)の情報、トランザクションの種別(組成の開示の要求)、問い合わせ対象の製品の品番情報、および、問い合わせ目的の情報が含まれる。
【0124】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名部1204-Nから電子署名を取得する。そして、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名をトランザクションデータに付加する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名を付加したトランザクションデータをトランザクションデータ送信部1205-Nへ出力する。
【0125】
トランザクションデータ送信部1205-Nは、トランザクションデータを送信するための制御信号を通信装置140-Nに出力する。これにより、問い合わせ対象の製品の購入元である上流の企業に問い合わせが送られる。
【0126】
<<ノードの機能ブロック:受信した問い合わせに応答する機能>>
情報取得部1201-N、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-N、トランザクションデータ送信部1205-N、承認部1206-N、問い合わせ実行部1211-N、組成確認部1212-N、回答作成部1213-N、および、フラグ設定部1215-Nは、受信した問い合わせへ応答する機能を実現する。
【0127】
情報取得部1201-Nは、通信装置140-Nを介して、分散型台帳ネットワーク2を形成する他のノード(下流の企業のノード)が送信した問い合わせのトランザクションデータを取得する。情報取得部1201-Nは、取得したトランザクションデータを承認部1206-Nに出力する。
【0128】
承認部1206-Nは、情報取得部1201-Nから受けたトランザクションデータを検証し、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。承認部1206-Nの詳細は上述しているため、その説明は繰り返さない。承認部1206-Nは、トランザクションデータを承認すると、トランザクションデータとともに、承認したことを示す情報を組成確認部1212-Nに出力する。
【0129】
組成確認部1212-Nは、問い合わせ対象の製品の組成を確認する。組成確認部1212-Nは、たとえば、記憶装置150-Nに記憶された製品組成データ151-Nを参照することにより、問い合わせ対象の製品の組成を確認する。具体的には、組成確認部1212-Nは、問い合わせ対象の製品に含まれる製品(構成製品)があるか否かを確認する。問い合わせ対象の製品に含まれる製品(構成製品)がある場合には、組成確認部1212-Nは、上述の問い合わせ入力データに相当するデータを生成して、当該データを問い合わせ実行部1211-Nに出力する。問い合わせ対象の製品に含まれる製品(構成製品)がない場合には、組成確認部1212-Nは、完全な報告が可能であることを示す情報とともに、トランザクションデータを回答作成部1213-Nに出力する。
【0130】
問い合わせ実行部1211-Nは、組成確認部1212-Nから受けたデータに基づいて、トランザクションデータ生成部1203-Nに伝える情報を生成する。具体的には、問い合わせ実行部1211-Nは、組成確認部1212-Nから受けたデータに基づいて、トランザクションデータの送信元(自身)の情報、トランザクションデータの送信先(上流の企業:構成製品の購入元)の情報、トランザクションの種別(組成の開示の要求)、問い合わせ対象の製品の品番情報、および、問い合わせ目的を抽出し、抽出された情報をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。これにより、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-Nおよびトランザクションデータ送信部1205-Nにより、構成製品の購入元である上流の企業のノードに問い合わせが送られる。
【0131】
回答作成部1213-Nは、完全な報告が可能であることを示す情報を受けると、製品組成データ151-Nと、規制リスト141-Nとを参照し、これらを用いて、問い合わせに対する回答データ143-Nを作成する。すなわち、回答作成部1213-Nは、問い合わせ対象の製品に含有されている対象物質をピックアップして回答データ143-Nを作成する。回答作成部1213-Nは、作成された回答データ143-N、および、回答データ143-Nの送信先の情報等をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。
【0132】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、回答作成部1213-Nから受けた情報を用いて、トランザクションデータを生成する。トランザクションデータには、トランザクションデータの送信元(自身)の情報、トランザクションデータの送信先(下流の企業:問い合わせ対象の製品の供給先)の情報、トランザクションの種別(回答)、問い合わせ対象の製品の品番情報、および、回答データが含まれる。
【0133】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名部1204-Nから電子署名を取得する。そして、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名をトランザクションデータに付加する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名を付加したトランザクションデータをトランザクションデータ送信部1205-Nへ出力する。
【0134】
トランザクションデータ送信部1205-Nは、トランザクションデータを送信するための制御信号を通信装置140-Nに出力する。これにより、問い合わせをした下流の企業に、当該問い合わせに対する回答が送信される。
【0135】
また、回答作成部1213-Nは、完全な報告を行なったことを示す情報をフラグ設定部1215-Nに出力する。
【0136】
フラグ設定部1215-Nは、完全な報告を行なったことを示す情報を受けると、完了フラグを設定する。フラグ設定部1215-Nは、完全な報告を終えたことを示す情報(フラグを設定したことを示す情報)、および、トランザクションデータの送信先の情報等をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。
【0137】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、フラグ設定部1215-Nから受けた情報を用いて、トランザクションデータを生成する。トランザクションデータには、トランザクションデータの送信元(自身)の情報、トランザクションデータの送信先(下流の企業:問い合わせ対象の製品の供給先)の情報、および、完全な報告を終えたことを示す情報が含まれる。
【0138】
トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名部1204-Nから電子署名を取得する。そして、トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名をトランザクションデータに付加する。トランザクションデータ生成部1203-Nは、電子署名を付加したトランザクションデータをトランザクションデータ送信部1205-Nへ出力する。
【0139】
トランザクションデータ送信部1205-Nは、トランザクションデータを送信するための制御信号を通信装置140-Nに出力する。これにより、問い合わせをした下流の企業に、問い合わせに対して完全な報告を終えたことを示す情報が送信される。
【0140】
<<ノードの機能ブロック:受信した回答に応答する機能>>
情報取得部1201-N、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-N、トランザクションデータ送信部1205-N、承認部1206-N、回答作成部1213-N、組成更新部1214-N、および、フラグ設定部1215-Nは、受信した回答へ応答する機能を実現する。
【0141】
情報取得部1201-Nは、通信装置140-Nを介して、分散型台帳ネットワーク2を形成する他のノード(上流の企業のノード)が送信した回答のトランザクションデータを取得する。情報取得部1201-Nは、取得したトランザクションデータを承認部1206-Nに出力する。
【0142】
承認部1206-Nは、情報取得部1201-Nから受けたトランザクションデータを検証し、トランザクションデータの検証結果に問題がなければ、当該トランザクションデータを承認する。承認部1206-Nは、トランザクションデータを承認すると、トランザクションデータとともに、承認したことを示す情報を組成更新部1214-Nに出力する。
【0143】
組成更新部1214-Nは、トランザクションデータに含まれる回答データに基づいて、製品組成データ151-Nを更新する。組成更新部1214-Nは、製品組成データ151-Nを更新したことを示す情報を回答作成部1213-Nに出力する。また、組成更新部1214-Nは、対象の製品について、下流の企業に対して完全な報告が可能か否かを判断する。すなわち、組成更新部1214-Nは、対象の製品に関して、ノード12-Nが上流の企業のノードに行なっている問い合わせの回答が全て揃ったか否かを判断する。対象の製品について、下流の企業に対して完全な報告が可能である場合には、組成更新部1214-Nは、完全な報告が可能であることを示す情報を回答作成部1213-Nに出力する。
【0144】
回答作成部1213-Nは、製品組成データ151-Nを更新したことを示す情報を受けると、更新された製品組成データ151-Nと、規制リスト141-Nとを参照し、これらを用いて、下流の企業に報告するための、対象の製品の組成データ(回答データ143-N)を作成する。この際に、完全な報告が可能であることを示す情報を受けていない場合には、回答作成部1213-Nは、回答データ143-Nを一部報告とする。完全な報告が可能であることを示す情報を受けた場合には、回答作成部1213-Nは、回答データ143-Nを完全な報告とする。回答作成部1213-Nは、作成された回答データ143-N、当該回答データ143-Nの送信先の情報等をトランザクションデータ生成部1203-Nに出力する。これにより、トランザクションデータ生成部1203-N、電子署名部1204-Nおよびトランザクションデータ送信部1205-Nにより、対象の製品の供給先である下流の企業のノードに、対象の製品の組成データが報告される。
【0145】
また、回答作成部1213-Nは、完全な報告を行なった場合には、完全な報告を行なったことを示す情報をフラグ設定部1215-Nに出力する。フラグ設定部1215-Nが実行する処理は、上述したとおりであるため、繰り返し説明しない。これにより、完全な報告を終えたことを示す情報が、下流の企業に送られる。
【0146】
<シーケンス図:対象物質の追加要求の伝搬>
図12は、規制リスト141-Nへの対象物質の追加要求が伝搬する流れを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示される処理は、分散型台帳ネットワーク2を形成するノード12-1~12-4のうちのいずれかのノードが規制リスト141-Nの更新を要求した際に開始される。なお、図12では、B企業のノード12-2が、最初に規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求する例が示されている。
【0147】
S1において、B企業のノード12-2は、たとえば、SVHCに規制物質が追加されたこと、または、B企業の情報管理装置10-2のユーザによって対象物質の追加を要求する処理が行なわれたことを検知する。
【0148】
S2において、B企業のノード12-2は、A企業のノード12-1に、規制リスト141-1への対象物質の追加を要求する。
【0149】
S3において、B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3に、規制リスト141-3への対象物質の追加を要求する。
【0150】
S4において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4に、規制リスト141-4への対象物質の追加を要求する。
【0151】
なお、S2~S4の処理は、並列に実行されればよい。
【0152】
上記のようにして、B企業のノード12-2からの規制リストへの対象物質の追加の要求は、直接の取引関係がある企業間で伝搬され、分散型台帳ネットワーク2を形成する全ての他のノードに伝搬される。
【0153】
図13は、規制リスト141-Nへの対象物質の追加要求が伝搬する流れを示すシーケンス図である。図13では、A企業のノード12-1が、最初に規制リスト141-Nへの対象物質の追加を要求する例が示されている。
【0154】
S5において、A企業のノード12-1は、たとえば、SVHCに規制物質が追加されたこと、または、A企業の情報管理装置10-1のユーザによって対象物質の追加を要求する処理が行なわれたことを検知する。
【0155】
S6において、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2に、規制リスト141-2への対象物質の追加を要求する。
【0156】
S7において、B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3に、規制リスト141-3への対象物質の追加の要求を伝搬させる。
【0157】
S8において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4に、規制リスト141-4への対象物質の追加の要求を伝搬させる。
【0158】
なお、S7,S8の処理は、並列に実行されればよい。
【0159】
上記のようにして、A企業のノード12-1からの規制リストへの対象物質の追加の要求は、直接の取引関係がある企業間で伝搬され、分散型台帳ネットワーク2を形成する全ての他のノードに伝搬される。
【0160】
図14は、規制リスト141-Nへの対象物質の追加要求が伝搬する流れを示すシーケンス図である。図14では、C企業のノード12-3が、分散型台帳ネットワーク2を形成する全てのノードの規制リスト141-Nの更新を要求する例が示されている。
【0161】
S10において、C企業のノード12-3は、たとえば、SVHCに規制物質が追加されたこと、または、C企業の情報管理装置10-3のユーザによって対象物質の追加を要求する処理が行なわれたことを検知する。
【0162】
S11において、C企業のノード12-3は、B企業のノード12-2に、規制リスト141-2への対象物質の追加を要求する。
【0163】
S12において、B企業のノード12-2は、A企業のノード12-1に、規制リスト141-1への対象物質の追加の要求を伝搬させる。
【0164】
S13において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4へ、規制リスト141-4への対象物質の追加の要求を伝搬させる。
【0165】
なお、S12,S13の処理は、並列に実行されればよい。
【0166】
上記のようにして、C企業のノード12-3からの規制リストへの対象物質の追加の要求は、直接の取引関係がある企業間で伝搬され、分散型台帳ネットワーク2を形成する全ての他のノードに伝搬される。
【0167】
<フローチャート:要求の承諾、および、否認>
図15は、他のノードから規制リスト141-Nへの新たな対象物質の追加要求(規制リスト141-Nの更新の要求)を受けたノード12-Nで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【0168】
S50において、ノード12-Nは、他のノードから規制リスト141-Nへの新たな対象物質の追加の要求を受けると、外部(外部団体のサーバ装置等)から取得された規制物質のデータを参照して、要求の内容に誤りがないかを確認する。具体的には、ノード12-Nは、トランザクションデータに含まれている、規制物質であるか否かを示す情報が正しく設定されているか否かを確認する。
【0169】
S51において、ノード12-Nは、S50で要求の内容に誤りがあったか否かを判断する。要求の内容に誤りがあると判断すると(S51においてYES)、ノード12-Nは、処理をS55に進める。要求の内容に誤りがないと判断すると(S51においてNO)、ノード12-Nは、処理をS52に進める。
【0170】
S52において、ノード12-Nは、新たな対象物質が既に規制リスト141-Nに含まれているか否かを判断する。新たな対象物質が既に規制リスト141-Nに含まれている場合(S52においてYES)、ノード12-Nは、処理をS56に進める。新たな対象物質が規制リスト141-Nに含まれていない場合(S52においてNO)、ノード12-Nは、処理をS53に進める。
【0171】
S53において、ノード12-Nは、要求の受け入れの可否(承諾の可否)を問う情報を表示装置180-Nに表示させ、入力装置170-Nを介したユーザの入力を待つ。
【0172】
S54において、ノード12-Nは、ユーザの入力情報が要求を承諾するものであったか否かを判断する。ユーザの入力情報が、受け入れを否定するもの(要求を否認するもの)であった場合には、ノード12-Nは、処理をS55に進める。ユーザの入力情報が、受け入れを肯定するもの(要求を承諾するもの)であった場合には、ノード12-Nは、処理をS56に進める。
【0173】
S55において、ノード12-Nは、規制リスト141-Nへの新たな対象物質の追加の要求を否認することを決定する。
【0174】
S56において、ノード12-Nは、規制リスト141-Nへの新たな対象物質の追加の要求を承諾することを決定する。
【0175】
<シーケンス図:問い合わせ、および、回答>
図16は、問い合わせ、および、回答の流れを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示される処理は、分散型台帳ネットワーク2を形成するノード12-1~12-4のうちのいずれかのノードが上流の企業に対して問い合わせをした際に開始される。図16では、A企業のノード12-1が、B企業のノード12-2に対して、B製品について、特定の対象物質(第3対象物質)の含有率の開示を目的とした問い合わせする例が示されている。A企業のノード12-1は、任意のタイミングで直接の取引関係があるB企業のノード12-2に問い合わせすることができる。A企業のノード12-1は、B製品に関して、第1対象物質および第2対象物質についての組成データを既に得ているが、第3対象物質の組成データは得ていない場面を想定する。また、ここでは、B企業は、B製品に含まれるC製品およびD製品の第3対象物質の組成データを未だ取得していない場面を想定する。
【0176】
S20において、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2に対して、B製品の組成データの開示を要求する問い合わせデータ142-1を送信する。なお、S20における問い合わせは、B製品の第3対象物質の含有率を問い合わせるものであってもよい。
【0177】
S21において、B企業のノード12-2は、記憶装置150-2から製品組成データ151-1を読み出し、B製品の組成データを確認する。これにより、B企業のノード12-2は、C製品およびD製品の第3対象物質の組成データを未だ取得していないことを認識する。
【0178】
S22において、B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3に対して、C製品の組成データの開示を要求する問い合わせデータ142-2を送信する。なお、S22における問い合わせは、C製品の第3対象物質の含有率を問い合わせるものであってもよい。
【0179】
S23において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4に対して、D製品の組成データの開示を要求する問い合わせデータ142-2を送信する。なお、S23における問い合わせは、D製品の第3対象物質の含有率を問い合わせるものであってもよい。
【0180】
なお、B企業のノード12-2は、S22およびS23の処理を並列に実行する。
【0181】
S24において、D企業のノード12-4は、製品組成データ151-4に基づいて、D製品の組成データ(回答データ143-4)を生成する。D企業のノード12-4は、D製品の組成データをB企業のノード12-2に回答する。なお、D企業のノード12-4は、D製品の第3対象物質の含有率をB企業のノード12-2に回答してもよい。
【0182】
S25において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4からの回答データ143-4に基づいて、自身のB製品の製品組成データ151-2を更新し、更新した製品組成データ151-2に基づいて、B製品の組成データ(回答データ143-2)を生成する。B企業のノード12-2は、回答データ143-2を一部報告として、A企業のノード12-1に報告する。
【0183】
S26において、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2からの回答データ143-2に基づいて、自身のB製品の製品組成データ151-1を更新する。
【0184】
S27において、C企業のノード12-3は、製品組成データ151-3に基づいて、C製品の組成データ(回答データ143-3)を生成する。C企業のノード12-3は、C製品の組成データをB企業のノード12-2に回答する。なお、C企業のノード12-3は、C製品の第3対象物質の含有率をB企業のノード12-2に回答してもよい。
【0185】
S28において、B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3からの回答データ143-3に基づいて、自身のB製品の製品組成データ151-2を更新する。これによって、B製品の第3対象物質についての組成データが全て揃う。B企業のノード12-2は、更新したB製品の製品組成データ151-2に基づいて、B製品の組成データ(回答データ143-2)を生成する。B企業のノード12-2は、回答データ143-2を完全な報告として、A企業のノード12-1に報告する。また、B企業のノード12-2は、完全な報告をすると、完了フラグを設定する。
【0186】
S29において、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2からの回答に基づいて、自身のB製品の製品組成データ151-1を更新する。
【0187】
上記のように、B企業のノード12-2からA企業のノード12-1への報告(一部報告および完全な報告)には、C企業およびD企業の情報(たとえば名称等)は含まれない。これによって、B企業は、B製品のサプライチェーンにおける上流の企業を秘匿しながら、必要な情報(B製品の組成データ)をA企業に適切に報告することができる。
【0188】
<シーケンス図:新規製品の登録>
図17は、新規製品の登録の流れを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示される処理は、分散型台帳ネットワーク2を形成するノード12-1~12-4のうちのいずれかのノードが、自身の製品組成データ151-Nに新規製品の組成データを追加した際に開始される。図17では、B企業の情報管理装置10-2において、B企業の新規製品であるB1製品の組成データが製品組成データ151-2に追加される場面を想定する。また、B1製品は、C製品およびD1製品を含む。B企業のノード12-2は、C製品の組成データは取得済みであるが、D1製品の組成データは未だ取得していないことを想定する。
【0189】
S31において、B企業のノード12-2は、情報管理装置10-2の記憶装置150-2に記憶されている製品組成データ151-2に、B1製品の組成データが追加されたことを検知する。B企業のノード12-2は、製品組成データ151-2を参照して、B1製品に含まれるC製品の組成データが取得済みである一方で、D1製品の組成データが未取得であることを認識する。
【0190】
S32において、B企業のノード12-2は、D1製品の組成データを問い合わせる問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2をD企業のノード12-4に送信する。
【0191】
S33において、D企業のノード12-4は、D1製品の組成データ(回答データ143-4)を生成し、回答データ143-4をB企業のノード12-2に送信する。
【0192】
S34において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4からの回答データ143-4に基づいて、B1製品の組成データを更新し、製品組成データ151-2を更新する。これによって、B1製品の組成データが全て揃う。B企業のノード12-2は、更新したB1製品の製品組成データ151-2に基づいて、B1製品の組成データ(回答データ143-2)を生成する。B企業のノード12-2は、回答データ143-2をA企業のノード12-1に送信する。
【0193】
S35において、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2からの回答データ143-2に基づいて、製品組成データ151-1にB1製品の組成データを追加して、製品組成データ151-1を更新する。
【0194】
図18は、新規製品の登録の流れを示すシーケンス図である。図18では、B企業の情報管理装置10-2において、B企業の新規製品であるB2製品の組成データが製品組成データ151-2に追加される場面を想定する。B2製品は、C2製品およびD2製品を含む。C2製品およびD2製品の両方の組成データをB企業のノード12-2が未取得である点が、図17と異なる。
【0195】
S41において、B企業のノード12-2は、情報管理装置10-2の記憶装置150-2に記憶されている製品組成データ151-2に、B2製品の組成データが追加されたことを検知する。B企業のノード12-2は、製品組成データ151-2を参照して、B2製品に含まれるC2製品およびD2製品の組成データが未取得であることを認識する。
【0196】
S42において、B企業のノード12-2は、C2製品の組成データを問い合わせる問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2をC企業のノード12-3に送信する。
【0197】
S43において、B企業のノード12-2は、D2製品の組成データを問い合わせる問い合わせデータ142-2を作成し、問い合わせデータ142-2をD企業のノード12-4に送信する。
【0198】
なお、B企業のノード12-2は、S42およびS43の処理を並列に実行する。
【0199】
S44において、D企業のノード12-4は、D2製品の組成データ(回答データ143-4)を生成し、回答データ143-4をB企業のノード12-2に送信する。
【0200】
S45において、B企業のノード12-2は、D企業のノード12-4からの回答データ143-4に基づいて、B2製品の組成データを更新し、製品組成データ151-2を更新する。この時点では、問い合わせの回答が全て揃っていないため、B企業のノード12-2は、回答が揃うのを待つ。
【0201】
S46において、C企業のノード12-3は、C企業のノード12-3は、C2製品の組成データ(回答データ143-3)を生成し、回答データ143-3をB企業のノード12-2に送信する。
【0202】
S47において、B企業のノード12-2は、C企業のノード12-3からの回答データ143-3に基づいて、B2製品の組成データを更新し、製品組成データ151-2を更新する。この時点で、全ての回答が揃い、B2製品の組成データが全て揃う。B企業のノード12-2は、更新したB2製品の製品組成データ151-2に基づいて、B2製品の組成データ(回答データ143-2)を生成する。B企業のノード12-2は、回答データ143-2をA企業のノード12-1に送信する。
【0203】
S48において、A企業のノード12-1は、B企業のノード12-2からの回答に基づいて、製品組成データ151-1にB2製品の組成データを追加して、製品組成データ151-1を更新する。
【0204】
上記のように、B企業のノード12-2からA企業のノード12-1への報告には、C企業およびD企業の情報(たとえば名称等)は含まれない。これによって、B企業は、B2製品のサプライチェーンにおける上流の企業を秘匿しながら、必要な情報をA企業に適切に報告することができる。
【0205】
以上のように、本実施の形態に係る情報管理システム1では、直接の取引関係のある当事者の情報管理装置間(分散型台帳ネットワークを形成するノード間)で情報を共有しながら、サプライチェーンにおける化学物質を管理する。たとえば、川中企業であれば、ある製品を供給する川下企業に対して、当該ある製品に含まれる製品の供給を受ける川上企業を知られたくない場合がある。直接の情報共有が当事者のノード間に限られることにより、たとえば、川下企業に対して川上企業の名称等の情報が開示されることを抑制することができる。
【0206】
また、分散型台帳技術を用いて製品に含有されている化学物質の情報を管理することにより、各企業のノード間で情報伝達が迅速に行なわれる。よって、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を、たとえば、電子メール、電話またはファックス等による通信手段を用いて管理する場合に比べ、迅速な情報伝達を行なうことができる。
【0207】
また、本実施の形態に係る情報管理システム1では、分散型台帳ネットワークを形成することにより、情報の耐改ざん性を高めることができる。
【0208】
また、本実施の形態に係る情報管理システム1では、規制リストに新たな対象物質が追加された場合、川中企業であるB企業は、川上企業であるC企業およびD企業に対して、購入製品(C製品,D製品)に含有されている新たな対象物質の情報の開示を要求する。一部の川上企業(C企業または企業)から回答を得ると、B企業は、A企業に供給しているB製品の組成データを作成して、当該組成データを一部報告としてA企業に報告する。A企業としては、B製品についての完全な報告でなくても、一部が揃った段階で順次、新たな対象物質についての報告を受けたい場合がある。本実施の形態に係る情報管理システム1であれば、一部報告を行なうことにより、B製品に含有されている新たな対象物質の情報をA企業に順次報告をすることができる。
【0209】
また、B企業は、新たな対象物質の情報について、A企業に完全な報告をした場合には、報告が完了したことを示す完了フラグを設定する。これにより、A企業は、新たな対象物質についての全ての報告を受けたことを認識することができる。
【0210】
また、本実施の形態に係る情報管理システム1では、ノード12-Nは、他のノードから受けた規制リスト141-Nへの新たな対象物質の追加の要求(提案)を否認することができる。あるノードによってなされた規制リスト141-Nの更新の提案が誤っている場合もあり得る。ノード12-Nが、他のノードからの規制リスト141-Nの更新の提案を否認する機能を有することにより、謂わば情報管理システム1として提案内容をダブルチェックすることができる。誤った提案を否認できることにより、必要以上の情報開示が行なわれることを抑制することができる。
【0211】
[変形例1]
実施の形態に係る情報管理システム1では、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を分散型台帳技術を用いて管理する例について説明した。そして、分散型台帳基盤としては、CORDAが採用されてもよいことを説明した。たとえば、CORDAに代えて、他の公知の分散型台帳基盤を採用することも可能である。たとえば、ブロックチェーン基盤を採用してもよい。
【0212】
また、分散型台帳技術を用いずに、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を管理してもよい。この場合には、たとえば、直接の取引関係のある企業間において、ネットワークNWを介して情報の伝達が行なわれてもよい。企業間の通信手段としては、たとえば、メール等であってもよいし、独自に構築された通信手段であってもよい。
【0213】
[変形例2]
製品組成データ151-Nに含まれる情報の各々には、開示可能レベルを示すランクが設定されてもよい。開示可能レベルは、たとえば、第1,第2の開示可能レベルが設定される。第1の開示可能レベルは、規制物質に指定された場合(すなわち、法規への対応である場合)には開示を可とするレベルである。第2の開示可能レベルは、規制リスト141-Nに登録された場合には開示を可とするレベルである。
【0214】
規制リスト141-Nには、対象物質に関連付けて、規制物質であるか否かを示す情報が設定される。
【0215】
たとえば、ある製品には第1対象物質と第2対象物質が含まれているものとする。第1対象物質および第2対象物質には第1の開示可能レベルが設定されているものとする。そして、第1対象物質は規制物質であり、第2対象物質は規制物質でないものとする。
【0216】
ある製品について組成データの開示の要求を受けた際、ノード12-Nは、規制リスト141-Nを参照する。そして、ノード12-Nは、第1対象物質の組成データを開示する一方で、第2対象物質の組成データを開示しない。
【0217】
これにより、法規制には適切に対応できる一方で、企業秘密である製品の組成データが過度に開示されることを抑制することができる。
【0218】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0219】
1 情報管理システム、2 分散型台帳ネットワーク、10 情報管理装置、12 ノード、14 分散型台帳、50 プラットフォームプロバイダ、51 ドアマンノード、53 ネットワークマップノード、55 ノータリノード、110 制御装置、120 ROM、130 RAM、140 通信装置、141 規制リスト、142 問い合わせデータ、143 回答データ、150,160 記憶装置、151 製品組成データ、153 許諾リスト、170 入力装置、180 表示装置、190 バス、1201 情報取得部、1202 照会部、1203 トランザクションデータ生成部、1204 電子署名部、1205 トランザクションデータ送信部、1206 承認部、1207 伝搬部、1208 決定部、1211 問い合わせ実行部、1212 組成確認部、1213 回答作成部、1214 組成更新部、1215 フラグ設定部、NW ネットワーク。
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