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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】エンジン音向上
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20241022BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F02D45/00 366
G10K15/04 302J
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021132885
(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公開番号】P2022033720
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】16/995,554
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ユー. フランク
(72)【発明者】
【氏名】スコット ダブリュ. ショップオフ
(72)【発明者】
【氏名】岡本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂樹
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-014128(JP,A)
【文献】特開2008-213760(JP,A)
【文献】特開2008-275743(JP,A)
【文献】特開2013-167851(JP,A)
【文献】特開2017-102441(JP,A)
【文献】特開2017-109635(JP,A)
【文献】特開2019-104395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0256016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための音向上システムであって、
前記車両のエンジン内への気流を測定するように構成されている気流センサと、
前記気流センサに結合され、
前記車両の前記エンジン内への前記気流に基づいて、エンジン音を模倣または向上するオーディオ信号を出力するタイミングを決定し、
前記車両の前記エンジン内への前記気流に基づいて、前記オーディオ信号を生成するように構成されている電子制御ユニットと、
前記オーディオ信号を出力する前記タイミングに基づいて、前記オーディオ信号を出力するように構成されているオーディオ装置を備えていることを特徴とする音向上システム。
【請求項2】
前記車両の前記エンジンの回転速度を測定するように構成されている速度センサと、
エンジンスロットルの位置を検出するように構成されているスロットルセンサを更に備え、
前記電子制御ユニットは、前記車両の前記エンジンの前記回転速度と、前記エンジンスロットルの前記位置に更に基づいて、前記オーディオ信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1の音向上システム。
【請求項3】
前記車両のアクセルペダルの位置を測定するように構成されているアクセルペダルセンサを更に備え、
前記電子制御ユニットは、前記アクセルペダルの前記位置に更に基づいて、前記オーディオ信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1の音向上システム。
【請求項4】
前記車両のトランスミッションのギアをシフトポジションにアップシフトまたはダウンシフトするように構成されている1つ以上のパドルシフタを更に備え、
前記電子制御ユニットは、前記シフトポジションに更に基づいて、前記オーディオ信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1の音向上システム。
【請求項5】
前記電子制御ユニットは、前記オーディオ信号の大きさを決定するように構成されており、
前記エンジン内への前記気流の増大は、前記オーディオ信号の前記大きさの増大に対応し、前記エンジン内への前記気流の減少は、前記オーディオ信号の前記大きさの減少に対応することを特徴とする請求項1の音向上システム。
【請求項6】
前記オーディオ装置は、前記車両の内部におけるスピーカであり、前記スピーカは、前記オーディオ信号から変換された音を前記車両の前記内部内に出力するように構成されていることを特徴とする請求項5の音向上システム。
【請求項7】
前記オーディオ信号の前記大きさの増大は、前記スピーカを介しての前記出力される音の音量の増大に対応し、前記オーディオ信号の前記大きさの減少は、前記スピーカを介しての前記出力される音の前記音量の減少に対応することを特徴とする請求項6の音向上システム。
【請求項8】
前記オーディオ信号を出力する前記タイミングを決定するために、前記電子制御ユニットは、
前記エンジンに入る前記気流の量または速度を決定し、
前記オーディオ信号は、前記気流の前記量または前記速度が閾値の量または速度を超えるときに出力されるべきであると決定するように構成されていることを特徴とする請求項1の音向上システム。
【請求項9】
前記オーディオ信号は、前記車両のアクセルペダルの踏込みとは独立して生成されることを特徴とする請求項1の音向上システム。
【請求項10】
車両のためのエンジン音向上システムであって、
前記車両のエンジン内への気流を測定するように構成されている気流センサと、
前記気流センサに結合され、
前記エンジン内への前記気流に基づいて、出力される前記車両のエンジン音を模倣または向上するオーディオ信号の大きさを決定し、
前記車両の前記エンジン内への前記気流に基づいて、前記オーディオ信号を出力するタイミングを決定し、
決定された大きさに基づいて、前記オーディオ信号を生成するように構成されている電子制御ユニットと、
前記車両の内部内に位置し、前記オーディオ信号を出力する前記タイミングに基づいて、前記オーディオ信号を出力するように構成されているスピーカを備えていることを特徴とするエンジン音向上システム。
【請求項11】
前記オーディオ信号は、前記車両のアクセルペダルの踏込みとは独立して生成されることを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項12】
前記車両のエンジンの回転速度を測定するように構成されている速度センサと、
エンジントルクの量を測定するように構成されているトルクセンサを更に備え、
前記電子制御ユニットは、前記車両の前記エンジンの前記回転速度と、前記エンジントルクの量に更に基づいて、前記オーディオ信号の前記大きさを決定するように構成されていることを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項13】
前記車両のアクセルペダルの位置を測定するように構成されているアクセルペダルセンサを更に備え、
前記電子制御ユニットは、前記アクセルペダルの前記位置に更に基づいて、前記オーディオ信号の前記大きさを決定するように構成されていることを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項14】
前記車両のトランスミッションのギアをシフトポジションにアップシフトまたはダウンシフトするように構成されている1つ以上のパドルシフタを更に備え、
前記電子制御ユニットは、前記トランスミッションの前記ギアに更に基づいて、前記オーディオ信号の前記大きさを決定するように構成されていることを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項15】
前記エンジン内への前記気流の増大は、前記オーディオ信号の大きさの増大に対応し、前記エンジン内への前記気流の減少は、前記オーディオ信号の大きさの減少に対応することを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項16】
前記オーディオ信号の前記大きさの増大は、前記スピーカを介しての前記出力される信号の音量の増大に対応し、前記オーディオ信号の前記大きさの減少は、前記スピーカを介しての前記出力される信号の前記音量の減少に対応することを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項17】
前記オーディオ信号を出力する前記タイミングを決定するために、前記電子制御ユニットは、
前記エンジンに入る前記気流の量または速度を決定し、
前記オーディオ信号は、前記気流の前記量または前記速度が閾値の量または速度を超えるときに出力されるべきであると決定するように構成されていることを特徴とする請求項10のエンジン音向上システム。
【請求項18】
エンジン音を出力するための方法であって、
気流センサを使用して、車両のエンジン内への気流の量または速度を測定することと、
プロセッサにより、前記エンジン内への前記気流の量または前記速度に基づいて、生成され、前記車両のエンジン音を模倣または向上するオーディオ信号の大きさを決定することと、
前記プロセッサにより、前記車両の前記エンジン内への前記気流に基づいて、前記オーディオ信号を出力するタイミングを決定することと、
前記プロセッサにより、前記決定された大きさに基づいて、前記オーディオ信号を生成することと、
前記車両の内部内に位置しているスピーカを介して、前記オーディオ信号を出力する前記タイミングに基づいて、前記オーディオ信号を出力することを備えていることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記プロセッサにより、および1つ以上のパドルシフタから、前記車両のトランスミッションのギアのシフトポジションを変更するための1つ以上の信号を得ることと、
前記プロセッサにより、前記トランスミッションの前記ギアの前記シフトポジションに更に基づいて、前記オーディオ信号の前記大きさを決定することを更に備えていることを特徴とする請求項18の方法。
【請求項20】
前記オーディオ信号は、前記車両のアクセルペダルの踏込みとは独立して生成されることを特徴とする請求項18の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、車両の自然なエンジン音を出力するシステム、方法、装置、および/または機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が、燃料に関してより効率的良くなるにつれて、エンジンノイズは相当に減少した。しかし、何人かの車両所有者にとっては、エンジンノイズは望ましい特性であり得る。運転手の中には、より新しく、より良好なエンジンのトルクと燃料効率を所望する者もいるが、彼らは同時に、より古いガス(ガソリン)燃焼エンジンの古典的な音を守っていくことも所望している。これは種々の課題をもたらし、車両製造業者は、あるタイプのノイズは区別して抑制するが、他のタイプのノイズは可能にし、更には向上するための作業を行わなければならない。
【0003】
エンジン音向上システム(ESE)は、車両のエンジンと排気音を、オーディオシステムを使用して向上または増幅する。音は予め録音することもでき、しなくてもよい。音は更に、車両のアクセルペダルが踏み込まれるときに機械的構造が発する轟音を聞くことによる聴覚的快感を得るために、車両が生み出す音を更に向上できる。これは、運転手にエンジンに対するより良好な感じを与え、耳による運転手のシフトを支援する。
【0004】
現在のエンジン音向上(ESE)システムは、車両のアクセルペダルの位置を入力として使用する。これは、パドルシフティングまたは積極的なトランスミッションシフティングなどのような遷移事象の間に不自然なエンジン音を作成する可能性がある。更に、これは、積極的なペダルシフティングの間に不自然なエンジン音を作成する可能性がある。
【0005】
従って、システム、装置、および/または方法が、エンジン音がより自然になるように、車両のエンジン音をより良好に模倣または向上するために、音向上システムの動作を改良する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
一般的に、この開示において記述される主題の1つの態様は、エンジン音向上システム(「音向上システム」)において具現化できる。音向上システムは、気流センサを含んでいる。気流センサは、車両のエンジン内への気流を測定するように構成されている。音向上システムは、電子制御ユニットを含んでいる。電子制御ユニットは、気流センサに結合されている。電子制御ユニットは、車両のエンジン内への気流に基づいて、エンジン音を模倣または向上するオーディオ信号を出力するときを決定するように構成されている。電子制御ユニットは、車両のエンジン内への気流に基づいて、オーディオ信号を生成するように構成されている。音向上システムは、オーディオ装置を含んでいる。オーディオ装置は、オーディオ信号を出力するタイミングに基づいてオーディオ信号を出力するように構成されている。
【0007】
これらの、および他の実施形態は、下記の特徴の1つ以上を随意的に含むことができる。音向上システムは、速度センサを含むことができる。速度センサは、車両のエンジンの回転速度を測定するように構成されている。音向上システムは、スロットルセンサを含んでいる。スロットルセンサは、エンジンスロットルの位置を検出するように構成されている。電子制御ユニットは、エンジンの回転速度とエンジンスロットルの位置に更に基づいて、そのオーディオ信号を生成するように構成されている。
【0008】
音向上システムは、アクセルペダルセンサを含むことができる。アクセルペダルセンサは、車両のアクセルペダルの位置を測定するように構成できる。電子制御ユニットは、アクセルペダルの位置に更に基づいてオーディオ信号を生成するように構成できる。
【0009】
音向上システムは、1つ以上のパドルシフタを含むことができる。1つ以上のパドルシフタは、車両のトランスミッションのギアをシフトポジションにアップシフトまたはダウンシフトするように構成できる。電子制御ユニットは、シフトポジションに更に基づいてオーディオ信号を生成するように構成できる。
【0010】
音向上システムは、オーディオ信号の大きさを決定できる。エンジン内への気流の増大は、オーディオ信号の大きさの増大に対応できる。エンジン内への気流の減少は、オーディオ信号の大きさの減少に対応できる。オーディオ装置はスピーカであってよい。スピーカは車両の内部に位置することができ、スピーカは、車両の内部内にオーディオ信号を出力するように構成できる。オーディオ信号の大きさの増大は、出力される音の音量の増大に対応できる。オーディオ信号の大きさの減少は、出力される音の音量の減少に対応できる。
【0011】
音向上システムは、エンジンに入る気流の量または速度を決定できる。音向上システムは、気流の量または速度が閾値の量または速度を超えるときにオーディオ信号は出力されるべきであると決定できる。オーディオ信号は、車両のアクセルペダルの踏込みとは独立して生成できる。
【0012】
他の態様においては、主題は、車両に対する音向上システムにおいて具現化できる。音向上システムは、気流センサを含んでいる。気流センサは、車両のエンジン内への気流を測定するように構成されている。エンジン音向上システムは、電子制御ユニットを含んでいる。電子制御ユニットは、気流センサに結合され、エンジン内への気流に基づいて、出力される車両のエンジン音を模倣または向上するオーディオ信号の大きさを決定するように構成されている。電子制御ユニットは、車両のエンジン内への気流に基づいて、オーディオ信号を出力するタイミングを決定するように構成されている。電子制御ユニットは、決定された大きさに基づいてオーディオ信号を生成するように構成されている。エンジン音向上システムは、スピーカを含んでいる。スピーカは車両の内部内に位置しており、オーディオ信号を出力するタイミングに基づいてオーディオ信号を出力するように構成されている。
【0013】
他の態様においては、主題は、エンジン音を出力ための方法において具現化できる。方法は、気流センサを使用して、車両のエンジン内への気流の量または速度を測定することを含んでいる。方法は、プロセッサにより、エンジン内への気流の量または速度に基づいて、生成され、車両のエンジン音を模倣または向上するオーディオ信号の大きさを決定することを含んでいる。方法は、プロセッサにより、車両のエンジン内への気流に基づいて、オーディオ信号を出力するタイミングを決定することを含んでいる。方法は、プロセッサにより、決定された大きさに基づいてオーディオ信号を生成することを含んでいる。方法は、車両の内部内に位置しているスピーカを介して、オーディオ信号を出力するタイミングに基づいて、オーディオ信号を出力することを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他のシステム、方法、特徴、および利点は、下記の図と詳細な記述を精査することにより当業者には明白となるであろう。図面において示される構成要素部品は必ずしも一定の比率で縮小/拡大されているとは限らず、本発明の重要な特徴をより良好に例示するために誇張されることもあり得る。
図1】発明の態様に係るエンジン音向上システムのブロック図である。
図2】発明の態様に係る図1のエンジン音向上システムを使用して、車両の内部客室への車両のエンジン音を模倣または向上するオーディオを出力するための例としてのプロセスのフロー図である。
図3】発明の態様に係る図1のエンジン音向上システムを使用して、オーディオ信号の大きさ、従って、出力される音の音量を決定するための例としてのプロセスのフロー図である。
図4】発明の態様に係る図1のエンジン音向上システムを使用して、オーディオを出力するタイミングを決定するための例としてのプロセスのフロー図を示している。
図5】発明の態様に係る、図1のエンジン音向上システムが、エンジン音を模倣または向上するオーディオを出力するために使用できる種々のセンサデータを、エンジンに入る気流と比較する例としてのグラフを示している。
図6】発明の態様に係る図1のエンジン音向上システムを使用するときに、車両のトランスミッションのシフトポジションのダウンシフトの、車両の振舞いに対する効果の例としてのグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここにおいては、車両のエンジン音を模倣するために生成される音または他のオーディオを向上するエンジン音向上システム(または「音向上システム」)のためのシステム、装置、および方法が開示される。音向上システムは、種々の運転パターンに対して、エンジン音のより自然な感じを作成する。オーディオ信号を生成するために使用される主入力を、エンジン内への気流速度に変更することにより、音向上システムは、車両の加速などのような時間の経過における車両の振舞いにより良好に整合または同期し、より自然な感じのエンジン音を作成する。
【0016】
例えば、従来のエンジン音向上システムにおいては、運転手が車両を停止位置から加速するとき、従来のエンジン音向上システムは、ペダル位置に基づいて音を生成する。そのため、従来のエンジン音向上システムは、車両を停止位置から加速するには時間がかかるため、車両はゆっくりとしか加速できないのに、踏み込まれたペダル位置に対応する大きなエンジン音を出力してしまう。これは、エンジン音は、アクセルペダルの踏み込まれた位置を反映し、徐々に車両の加速を増大することを反映していないので、不自然に大きく、ほとんど即時のエンジン音を作成してしまう。主入力を、エンジン内への気流速度に変更することにより、音向上システムは、車両の加速を徐々に増大するなどのように、時間の経過における車両の振舞いに整合するようにエンジン音を徐々に増大するので、より自然なエンジン音を作成する。
【0017】
更に、主入力は、エンジン内への気流速度なので、出力されるエンジン音は、車両の動きと同期している。典型的には、ペダルが踏み込まれるときは、ペダルが踏み込まれるときと、車両の車輪が動くときの間に遅延がある。従来のエンジン音向上システムにおいては、ペダルが踏み込まれると、動きがほとんどない、またはまったくなくても音は出力されてしまう。ところが、音向上システムは、エンジン音が、車両の車輪を動かす動力を生成するエンジントルクと一致するようにエンジン音の出力を遅らせる。そのため、エンジン音はより自然になり、車両の実際の動きにより良好に整合する。
【0018】
他の恩恵および利点には、トランスミッションのアップシフティングまたはダウンシフティングを考慮する能力が含まれる。音向上システムは、エンジン音の音量を増大することなどにより、車両のエンジン音を模倣または向上するオーディオ信号を生成するときに、トランスミッションのシフトポジションを使用できる。トランスミッションのシフトポジションを考慮することにより、音向上システムは、トランスミッションの運転手のダウンシフティングまたはアップシフティングを考慮するために、生成されるエンジン音の音量を調整でき、それは更に、生成されるエンジン音をより自然にし、エンジンにより生成されるトルクの実際の量をより反映させるようにする。
【0019】
図1は、エンジン音向上システム(または「音向上システム」)100のブロック図である。音向上システム100またはその一部は、車両102に後付けでき、結合でき、車両102を含むことができ、または、車両102内に含めることができ、または、車両102とは別個であってよい。音向上システム100は、車両102の内部内にエンジン音を模倣するオーディオを出力するために、車両102の1つ以上の車両構成要素を使用できる。音向上システム100は、外部データベース104を含むことができ、または外部データベース104に結合できる。
【0020】
音向上システム100は、車両102および/または外部データベース104間などのような、異なる構成要素間で通信するためにネットワーク134を有する、または使用することができる。ネットワーク134は、音向上システム100の異なる構成要素間を接続し、結合し、および/またはそれらの間で通信する専用狭域通信(DSRC)ネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、セルラネットワーク、インターネット、または、それらの組み合わせであってよい。
【0021】
音向上システム100は、外部データベース104を含むことができ、または外部データベース104に結合できる。データベースは、コンピュータによるなど、検索と回復のために構成されている情報の部分の集合体であり、データベースは、表、図表、クエリ、レポート、または任意の他のデータ構造において構成できる。データベースは、任意の数のデータベース管理システムを使用できる。外部データベース104は、情報を格納または提供する第三者サーバまたはウェブサイトを含むことができる。情報は、リアルタイム情報、定期的に更新される情報、またはユーザが入力した情報を含むことができる。サーバは、ファイルにアクセスすること、または周辺機器を共有することなどのようなサービスを、ネットワークにおける他のコンピュータに提供するために使用される、ネットワークにおけるコンピュータであってよい。
【0022】
外部データベース104は、音データベースを含むことができる。音データベースは種々の音を含むことができ、それらの種々の音は、音向上システム100によりダウンロードできる。音向上システム100は、エンジン音を模倣または向上するために種々の音またはオーディオ(これ以降、種々の音またはオーディオを「オーディオ」と称する)を出す、または使用することができる。エンジン音を模倣するために使用されるオーディオは、車両102のタイプまたは種類に基づくことができる。音データベースはまた、出力される音量を示す値と、生成されるオーディオ信号の大きさとの間のマッピング(対応関係)または関連付けも含むことができる。これは、ユーザが、エンジン音を模倣または向上するために使用されるために生成されるオーディオを構成することを可能にする。
【0023】
音向上システム100は、車両102を含むことができ、車両102内に含めることができ、または、車両102に後付けできる。車両102は、人間、対象物、または永続的に、または一時的に取り付けられている装置を輸送できる搬送体である。車両102は、自動車、スポーツ汎用車、トラック、バス、バンまたは他のモータ、バッテリまたは燃料電池駆動の車両などのような自己推進車輪付き搬送体であってよい。例えば、車両102は、電気自動車、ハイブリッド車両、水素燃料電池車両、プラグインハイブリッド車両、または燃料電池スタック、モータ、および/または発電機を有する他のタイプの車両であってよい。車両の他の例としては、自転車、列車、飛行機、またはボート、および輸送が可能な搬送体の任意の他の形状であってよい。車両102は半自律的または自律的であってよい。つまり、車両102は、人間の入力のない、自己操縦および操舵型であってよい。自律車両は、自律運転のために1つ以上のセンサおよび/またはナビゲーションユニットを有する、および使用することができる。
【0024】
音向上システム100は、電子制御ユニット(ECU)106などのような1つ以上のプロセッサを含んでいる。ECU106などのような1つ以上のプロセッサは、シングルプロセッサまたはマルチプロセッサとして実現できる。例えば、1つ以上のプロセッサはマイクロプロセッサ、データプロセッサ、マイクロコントローラまたは他のコントローラであってよく、車両102内の幾つかの、またはすべての他の構成要素に電気的に結合できる。1つ以上のプロセッサは、エンジン音を模倣または向上するオーディオを出力するときを決定するために、1つ以上のセンサからセンサデータを得ることができる。音向上システム100は、オーディオを車両102の内部内に出力できる。車両102の内部内へオーディオを生成して出力することにより、音向上システム100は、車両102が加速を開始して、車両のアクセルペダルが踏む込まれるときに機械的構造が発する轟音を聞くことによる聴覚的快感を作成する。これは、運転手にエンジン122に対するより良好な感じを与え、耳による運転手のシフトを支援する。
【0025】
メモリ108は、ECU106に結合できる。メモリ108は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、または他の揮発性または不揮発性メモリの1つ以上を含むことができる。メモリ108は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートディスクドライブ、ハイブリッドディスクドライブ、または他の適切なデータ格納装置などのような非一時的メモリまたはデータ格納装置であってよく、ECU106によりロードおよび実行できる機械読取り可能命令を更に格納できる。メモリ108は、出力されるオーディオの音量を示す値と、エンジン音を模倣または向上するために生成されるオーディオ信号の大きさとの間のマッピング(対応関係)を格納できる。
【0026】
音向上システム100は、ユーザインタフェース110を含むことができる。ユーザインタフェース110は、車両102の一部であってよい。ユーザインタフェース110は、ユーザインタフェース要素、ボタン、ダイヤル、マイクロフォン、キーボード、またはタッチスクリーンからのユーザ入力を受信する入力装置を含むことができる。ユーザインタフェース110は、ユーザがユーザ入力を提供するためのインタフェースを提供できる。ユーザ入力は、1つ以上の構成設定を含むことができる。1つ以上の構成設定は、車両102の車輪を動かすためにエンジンのスロットル量が調整されるときに、より自然な音を作成するために、オーディオが車両の振舞い、例えば、エンジントルクまたは速度に整合するように、オーディオを出力するための遅延量を示すことができる。遅延量は、エンジンが車両102の車輪を動かすようにさせる、車両102のエンジン内への気流の量または気流の速度などのような閾値であってよい。
【0027】
ユーザインタフェース110は、オーディオ装置112などのような出力装置を含むことができ、出力装置を提供でき、または出力装置に結合できる。オーディオ装置112は、スピーカまたは他のオーディオインディケータであってよい。オーディオ装置112は、車両102の内部内に位置させることができる。ユーザインタフェース110は、ディスプレイまたは他の視覚インディケータなどのようの他の出力装置を含むことができ、または提供できる。ユーザインタフェース110は、例えば、通知、警告、または警報を提供できる。
【0028】
音向上システム100は、ネットワークアクセス装置114を含むことができる。ネットワークアクセス装置114は、専用狭域通信(DSRC)ユニット、WiFiユニット、ブルートゥース(登録商標)ユニット、無線周波数識別(RFID)タグまたはリーダ、またはセルラネットワーク(3G、4G、または5Gなどのような)にアクセスするためのセルラネットワークユニットの1つ以上などのような通信ポートまたはチャネルを含むことができる。ネットワークアクセス装置114は、車両102および/または外部データベース104などのような、音向上システム100の異なる構成要素にデータを送信でき、そこからデータを受信できる。
【0029】
音向上システム100は、1つ以上のセンサ116を含むことができる。1つ以上のセンサ116は、気流センサ116a、エンジン速度センサ116b、エンジンスロットルセンサ116c、および/またはアクセルペダルセンサ116dを含むことができる。気流センサ116aは、エンジン122の空気入口に位置させることができ、エンジン122内への気流の量、および/または、気流の速度を測定できる。エンジン速度センサ116bは、エンジン122のクランクシャフトの回転速度を測定できる。エンジン速度センサ116bは、エンジンクランクシャフトの回転の毎分回転数(RPM)を測定できる。エンジンスロットルセンサ116cは、エンジン負荷を決定するために、スロットルの位置を測定または決定できる。アクセルペダルセンサ116dは、アクセルペダル132に結合できる。アクセルペダルセンサ116dは、車両102のアクセルペダル132が踏み込まれた量を決定するために、アクセルペダル132の位置を測定、検出、または決定できる。1つ以上のセンサ116は、エンジントルクセンサ116eを含むことができる。エンジントルクセンサ116eは、エンジン122のトルクまたは回転力を測定または決定できる。1つ以上のセンサ116は、トランスミッション124のシフトポジションまたはギアポジションを検出するためのシフトポジションセンサ116fなどのような1つ以上の他のセンサを含むことができる。
【0030】
音向上システム100は、車両102の1つ以上の車両構成要素に結合できる。1つ以上の車両構成要素は、ナビゲーションユニット118を含むことができる。ナビゲーションユニット118は、車両102と統合でき、またはそれとは別個のユニットであることができる。車両102は、ナビゲーションユニット118の代わりに、車両102の現在の位置および日時情報を含んでいる位置データを検出するための全地球測位システム(GPS)ユニット(示されていない)を含むことができる。幾つかの実現形態においては、ECU106は、GPSユニットから受信したデータに基づいて、ナビゲーションユニット118の機能を実行できる。ナビゲーションユニット118またはECU106はナビゲーション機能を実行できる。ナビゲーション機能は、例えば、ルートおよびルートセット予測を含むことができ、ナビゲーション命令を提供し、予測されたルートおよびルートセットまたは目的地の検証などのようなユーザ入力を受信する。ナビゲーションユニット118は、ナビゲーションマップ情報を得るために使用できる。ナビゲーションマップ情報は、車両102の出発位置、車両102の現在位置、目的地位置、車両102の出発位置と目的地位置との間のルート、および/または日時情報を含むことができる。
【0031】
1つ以上の車両構成要素は、モータおよび/または発電機128を含むことができる。モータおよび/または発電機128は、電気エネルギーを、トルクなどのような機械的動力に変換でき、機械的動力を電気エネルギーに変換できる。モータおよび/または発電機128はバッテリ120に結合できる。モータおよび/または発電機128は、バッテリ120からのエネルギーを機械的動力に変換でき、エネルギーを、例えば、回生制動を介してバッテリ120に提供して戻すことができる。1つ以上の車両構成要素は、エンジン122または燃料電池スタック(示されていない)などのような1つ以上の追加的動力生成装置を含むことができる。エンジン122は、モータおよび/または発電機128により供給される動力の代わりに、および/またはその動力に加えて、動力を提供するために燃料を燃焼する。
【0032】
バッテリ120は、モータおよび/または発電機128に結合でき、電気エネルギーをモータおよび/または発電機128に供給でき、モータおよび/または発電機128から電気エネルギーを受け取ることができる。バッテリ120は、1つ以上の再充電可能バッテリを含むことができ、動力を音向上システム100に供給できる。
【0033】
バッテリ管理制御ユニット(BMCU)130は、バッテリ120に結合でき、バッテリ120の充電と放電を制御および管理できる。BMCU130は、例えば、バッテリセンサを使用して、バッテリ120の充電状態(SOC)を決定するために使用されるパラメータを測定できる。BMCU130はバッテリ120を制御できる。
【0034】
1つ以上の車両構成要素は、トランスミッション124を含むことができる。トランスミッションは、1つ以上のギア、ドライブトレイン(動力伝達経路)、クラッチおよび/またはドライブシャフト(駆動軸)を有することができる。トランスミッション124は、車両102の車輪を動かすために、エンジン122からの動力を変換する。1つ以上の車両構成要素は、1つ以上のパドルシフタ126を含むことができる。1つ以上のパドルシフタは、オートマティックトランスミッション内のギアのシフトポジションを調整できる。1つ以上のパドルシフタ126は、手動でトランスミッション124のギアを電気的に変更するために、手動で押し下げる、押す、引く、または位置させることができる。
【0035】
図2は、車両102のエンジン音を模倣または向上するオーディオを出力するためのプロセス200のフロー図である。1つ以上のコンピュータまたは1つ以上のデータ処理装置、例えば、適切にプログラムされている図1の音向上システム100のECU106は、プロセス200を実現できる。音向上システム100は、車両102のエンジン音を模倣または向上するオーディオ信号を生成および/または出力するために使用できる。音向上システム100は、オーディオ信号を生成でき、および/または、例えば、車両102の既存のエンジン音の大きさを増幅することにより、または、車両102のエンジン音の音量を増大するオーディオを提供することにより、車両102の既存のエンジン音を更に向上することができる。音向上システム100は、気流の量または速度、エンジン速度、スロットル位置、エンジントルク、アクセルペダル位置、および/またはそれらの組み合わせなどのような種々のセンサデータを、車両102のエンジン音を模倣または更に向上するオーディオ信号を生成するために使用できる。
【0036】
音向上システム100は、車両102のエンジン122内への気流の量または速度を得る、または測定する(202)。音向上システム100は、車両102のエンジン122内への気流の量または速度を測定するために、気流センサ116aなどのような1つ以上のセンサ116を使用できる。気流センサ116aは、エンジン122の空気入口の近くまたはその近傍に位置させることができ、ある期間における気流を測定できる。気流センサ116aは、エンジン122に入る気流の量または速度を検出できる。音向上システム100は、エンジン音を模倣または向上するためのオーディオを出力するタイミングと、出力されるオーディオの音量を決定するために、気流の量または速度を使用できる。
【0037】
他のセンサデータを、車両102のエンジン音を向上または模倣することを支援するために収集できる。音向上システム100は、車両102のアクセルペダル132の位置を決定できる(204)。音向上システム100は、アクセルペダル132の位置を決定するために、アクセルペダルセンサ116dを使用できる。アクセルペダルセンサ116dは、アクセルペダル132に結合でき、アクセルペダル132が踏み込まれる、および/または、開放される量および/または速度、および/または、アクセルペダル132の位置を測定できる。アクセルペダル132の位置、および/または、アクセルペダル132が踏み込まれる、および/または、開放される量および/または速度は、オーディオ信号の大きさに影響を与えることができ、従って、出力されるオーディオの音量に影響を与えることができる。アクセルペダル132が更に踏み込まれると、エンジン122は更に回転数が上がり、そのため、エンジン122と関連付けられているオーディオはより大きくならなくてはならない。従って、音向上システム100は、更に回転数が上がったエンジン122を表わしているエンジン音を模倣するために、オーディオ信号の大きさを増大でき、同様に、アクセルペダル132が開放されると、音向上システム100はオーディオ信号の大きさを減少できる。
【0038】
音向上システム100は、エンジン速度、エンジントルク、および/または、エンジンスロットル位置を測定または検出できる(206)。音向上システム100は、エンジンクランクシャフトの回転速度を測定するために、エンジン速度センサ116bを使用できる。例えば、音向上システム100は、エンジン速度を測定または決定するために、エンジンクランクシャフトの毎分回転数(RPM)を測定できる。音向上システム100は、スロットルが開いているとき、部分的に開いているとき、または閉じているときなどのような、車両102のエンジンスロットル位置および、スロットルが開いている、または部分的に開いている程度を決定するために、エンジンスロットルセンサ116cを使用できる。音向上システム100は、エンジン122の回転力またはトルクを測定または決定するために、エンジントルクセンサ116eを使用できる。エンジン速度、エンジントルク、および/または、エンジンスロットル位置は、車両102のエンジン音を模倣するために生成されるオーディオ信号の大きさを決定するために使用できる。
【0039】
音向上システム100は、パドルシフトを検出できる(208)。音向上システム100は、1つ以上のパドルシフタ126が押し下げられ、押され、引っ張られ、または、切り替えられるときを検出できる。音向上システム100は、トランスミッションン124のギアのシフトポジションをアップシフトまたはダウンシフトするために、1つ以上のパドルシフタ126の何れが押し下げられ、押され、引っ張られ、または切り替えられたかを検出できる。1つ以上のパドルシフタ126の入力は、シフトポジションがアップシフトされたかまたはダウンシフトされたかを示すことができる。車両102のトランスミッションン124のシフトポジションを変更すると、トランスミッションン124のギアが変更される。例えば、パドルシフタを引っ張ることで、シフトポジションをアップシフトでき、パドルシフタを押すことで、シフトポジションをダウンシフトできる。他の例においては、1つのパドルシフタを動かすことで、シフトポジションをアップシフトでき、他のパドルシフタを動かすことで、シフトポジションをダウンシフトできる。
【0040】
音向上システム100は、シフトポジションを決定できる(210)。音向上システム100は、パドルシフトが検出されるときにシフトポジションを決定できる。音向上システム100は、トランスミッションン124のシフトポジションを検出するためにシフトポジションセンサ116fを使用できる。シフトポジションは、エンジン122内への気流の量と車両102のエンジン速度に影響を与えることができるので、音向上システム100は、例えば、図6に示されているように、生成されるオーディオ信号の大きさを調整する必要があり得る。
【0041】
音向上システム100は、車両102のエンジン音を模倣または更に向上するためのオーディオとして生成され、その後に変換されて出力されるオーディオ信号の大きさを決定する(212)。音向上システム100は、気流の量または速度、エンジン速度、エンジントルク、エンジンスロットル位置、シフトポジション、および/または、アクセルペダル位置に基づいてオーディオ信号の大きさを決定する。音向上システム100は、オーディオ信号の大きさを決定するために、センサデータの1つまたはそれらの組み合わせを使用できる。例えば、音向上システム100は、オーディオ信号の大きさを計算するために、気流の量または速度のみを使用でき、または、オーディオ信号の大きさを決定するために、それらの組み合わせを使用できる。オーディオ信号の大きさを決定するために気流を使用することは、アクセルペダル位置などのような他の要因とは独立していることができる。オーディオ信号の大きさは、オーディオ装置112から出射されるオーディオ信号の音の音量に対応している。図3は、オーディオ信号の大きさ、従って、出力される音の音量を決定するためのプロセス300を更に記述している。
【0042】
オーディオ信号の大きさが決定されると、音向上システム100は、オーディオを出力するタイミングを決定できる(214)。音向上システム100は、出力されたオーディオが、車両102のエンジン音を模倣または更に向上し、エンジンのスロットル量および車両102の動きに一致する自然な音を形成するように、オーディオの出力がエンジンのスロットル量と一致するように、オーディオ信号を出力するときを決定できる。オーディオを出力するタイミングは、気流の量または速度、エンジン速度、エンジントルク、エンジンスロットル位置、シフトポジション、および/または、アクセルペダル位置などのようなセンサデータに基づくことができる。特に、音向上システム100は、気流が車両の振舞いおよび応答により近く対応、一致、または整合するので、タイミングを決定するために、気流の量または速度を使用できる。例えば、音向上システム100が、アクセルペダル、エンジントルク、エンジン速度、および/または、エンジンスロットル位置のみに依存する場合は、オーディオの出力は、車両の応答と整合しなくなり、代わりに、オーディオは、例えば、図5において示されているように、車両が動く前に出力されてしまう。気流の測定値を使用することにより、音向上システム100が、例えば、気流の量および/または速度が、車両102の車輪を動かす閾値量以上のときに、車両の振舞いに整合するためのオーディオを出力するように、タイミングは、車両の振舞いより近く一致できる。
【0043】
タイミングを決定することにより、十分な空気がエンジン内に流入する前に、そして、車両102の車輪を動かすエンジントルクが十分になる前にオーディオが出力されないようにして、オーディオを出力できる。図4は、オーディオ信号を出力するタイミングを決定するためのプロセス400を更に記述している。
【0044】
オーディオ信号の大きさと、オーディオ信号を出力するタイミングが決定されると、音向上システム100はオーディオ信号を生成する(216)。出力されるオーディオ信号は、車両102のエンジン音を模倣または更に向上できる。音向上システム100は、オーディオ信号の大きさと、オーディオ信号を出力するタイミングに基づいて、オーディオ信号を生成できる。例えば、オーディオ信号は、タイミングに到達すると生成される。音向上システム100は、オーディオの出力が、エンジン122のスロットル量および、そしてその後の、車両102の車輪への動力供給に一致および対応するように、オーディオ信号の生成を遅延できる。そのため、より自然に近いエンジン音が出力される。
【0045】
音向上システム100は、生成されるオーディオのタイプまたは種類を得ること、または決定することができる(218)。音向上システム100は、外部データベース104から、オーディオのタイプまたは種類を得ること、またはダウンロードすることができる。音向上システム100は、エンジン122のタイプまたは種類、および/または、車両102のタイプまたは種類に基づいて、オーディオのタイプまたは種類を選択できる。幾つかの実現形態においては、生成される音を、予めプログラムすること、または、メモリ108内に格納することができる。
【0046】
音向上システム100は、オーディオ信号をオーディオに変換してオーディオを出力する(220)。音向上システム100は、オーディオサウンドトランスデューサなどのようなオーディオ装置112を、オーディオ信号をオーディオに変換して、オーディオを、スピーカなどを介して出力するために使用できる。例えば、オーディオ信号の大きさは、オーディオの音量に対応できる。オーディオ信号の大きさと、オーディオの音量は正比例することができる。オーディオ信号の大きさが増大すると、オーディオの音量もまた増大する。そして、オーディオ信号の大きさが減少すると、オーディオの音量も減少する。
【0047】
図3は、オーディオ信号の大きさ、従って、出力されるオーディオの音量を決定するためのプロセス300のフロー図である。1つ以上のコンピュータ、または1つ以上のデータ処理装置、例えば、適切にプログラムされている図1の音向上システム100のECU106は、プロセス300を実現できる。
【0048】
音向上システム100は、気流の量または速度、エンジントルク、エンジン速度、スロットル位置、アクセルペダル位置、シフトポジション、および/またはそれらの組み合わせなどのようなセンサデータのそれぞれに値を割り当てること、または値をそれぞれと関連付けることができる(302)。センサデータのそれぞれの値は、測定値の大きさ、または検出された位置に基づくことができる。例えば、気流のより大きな量または速度は、気流を表わす、より大きな割り当てられた値に対応することができ、気流のより小さな量または速度は、気流を表わす、より小さな割り当てられた値に対応する。他の例においては、より大きなエンジン速度は、エンジン速度を表わす、より大きな割り当てられた値に対応し、より小さなエンジン速度は、エンジン速度を表わす、より小さな割り当てられた値に対応する。
【0049】
音向上システム100は、センサデータを示す値に重み付けすることができる(304)。音向上システム100は、センサデータを示す値に優先度を付けること、または重み付けすることができる。より大きな重みを、オーディオ信号の大きさの最も代表的なセンサデータを示す値と関連付けること、およびその値に適用することができる。例えば、気流の量および/または気流の速度は、それが、自然なエンジン音のタイミングおよび出射される自然なエンジン音の音量に関連するときに、エンジン122の自然なエンジン音に最も良好に対応および一致するので、音向上システム100は、気流の量および/または気流の速度を示す値に、アクセルペダルの位置、エンジントルク、エンジン速度、および/または、エンジンスロットル位置などのような他のセンサデータと比較して、より大きな重みを割り当てることができる。
【0050】
センサデータを示す値のそれぞれに重みが付けられると、音向上システム100は、オーディオ信号の大きさとタイミングを決定するために使用されるセンサデータを示す合計値を計算できる(306)。音向上システム100は、センサデータのそれぞれを示す値の関数と、センサデータのそれぞれと関連付けられている重みに基づいて合計値を計算できる。例えば、各重みは、対応するセンサデータを示す各値の乗数に対応でき、その乗数として使用できる。そして、音向上システム100は、センサデータを示す合計値を形成するために、重みを付けられた値を合計できる。
【0051】
音向上システム100は、オーディオ信号の大きさを決定する(308)。オーディオ信号の大きさは、センサデータを示す合計値に基づくことができる。オーディオ信号の大きさは、センサデータを示す合計値に直接対応できる。例えば、より大きな合計値は、オーディオ信号に対するより大きな大きさに対応し、それは、オーディオの音量が大きくなることを意味する。他の例においては、より小さな合計値は、オーディオ信号に対するより小さな大きさに対応し、それは、オーディオの音量を下げることを意味する。大きさは、メモリ108に格納できる、合計値と対応する大きさとの間のマッピング(対応関係)に基づくことができる。
【0052】
幾つかの実現形態においては、大きさは、ある期間における、センサデータを示す合計値の平均であってよい。これは、音向上システム100が、ある1つの時点で決定された1つの大きさから、後続する時点で決定される他の大きさにゆっくりとスムーズに遷移することを可能にし、オーディオを増大または減少するときの安定した遷移という結果になる。
【0053】
音向上システム100は上記のように、オーディオ信号を変換し、オーディオ信号から変換されたオーディオを出力する(310)。音向上システム100は、オーディオサウンドトランスデューサを使用してなどのように、オーディオ信号をオーディオに変換し、スピーカを使用してなどのように、オーディオを出力するためにオーディオ装置112を使用できる。オーディオが出力されると、音向上システム100は、センサデータの監視を続行できる(312)。音向上システム100は、何らかの変化を決定または検出するためにセンサデータを監視することを続行でき、生成および出力されるオーディオの音量への何らかの調節を公式化するためにオーディオ信号の値の計算および決定を続行できる。
【0054】
音向上システム100は、センサデータが変化したかどうかを決定できる(314)。音向上システム100は、オーディオ信号を生成し、オーディオ信号をオーディオに変換し、オーディオを出力することを続行する。センサデータが変化すると、音向上システム100は、各センサデータを示す各値を再計算し、オーディオ信号および対応するオーディオを再生成するために、センサデータの合計値を再計算する。センサデータが変化していないと、音向上システム100は、オーディオ信号と関連付けられているオーディオを出力することを続行する。
【0055】
図4は、オーディオを出力するタイミングを決定するためのプロセス400を更に記述している。1つ以上のコンピュータ、または1つ以上のデータ処理装置、例えば、適切にプログラムされている図1の音向上システム100のECU106は、プロセス400を実現できる。音向上システム100がセンサデータを検出すると、音向上システム100は、オーディオ信号を生成するタイミングを決定でき、車両102の車輪への動力供給により近く整合するためのオーディオ信号と関連付けられている音を出力できる。タイミングは、センサデータに基づく静的遅延および/または動的遅延であってよい。
【0056】
音向上システム100は、エンジン音を模倣または向上するオーディオを出力するための遅延時間を得ることができる(402)。遅延時間は、ユーザが構成でき、工場設定などのように予め決定でき、ユーザが入力でき、および/またはユーザが計算できる。遅延時間は、オーディオ信号を生成し、対応する音を出力するタイミングを決定するために使用できる。
【0057】
音向上システム100は、閾値を得ることができる(404)。閾値は、オーディオ信号を生成し、オーディオ信号をオーディオに変換し、オーディオを出力するタイミング、例えば、遅延を表わすことができる。閾値は、ユーザが入力でき、予め決定でき、および/または、メモリ108から得ることができる。
【0058】
音向上システム100は、上記のように、センサデータを示す合計値を計算できる(404)。音向上システム100は、合計値が閾値を超えているかどうかを決定できる(408)。音向上システム100は、センサデータを示す合計値を閾値と比較できる。
【0059】
合計値が閾値を超えていると、例えば、閾値より大きいと、上記のように、音向上システム100はオーディオ信号を生成し、オーディオ信号をオーディオに変換し、オーディオを出力する(410)。幾つかの実現形態においては、音向上システム100は、オーディオ信号を既に生成しておくことができ、オーディオを変換および出力することのみを必要とすることができる。合計値が閾値を超えるタイミングは、エンジン122が車両102の車輪に動力を供給および/または車輪を動かすのに十分なスロットル量とされたことを示すことができる。そのため、音向上システム100は、オーディオ信号を生成し、オーディオ信号を変換し、および/または、エンジン音を模倣または更に向上するためのオーディオを出力できる。オーディオの出力は、合計値が閾値を超えるまで遅延されているので、出力されるオーディオは、車輪の動きと一致する。これは、より自然なエンジン音を作成する。
【0060】
別の場合においては、合計値が閾値を超えていないときは、音向上システム100はオーディオ信号を生成しなくてもよく、および/または、オーディオを出力しなくてもよい。音向上システム100は、センサデータを示す計算された合計値が閾値を超えるまでセンサデータの監視を続行できる(412)。
【0061】
幾つかの実現形態においては、音向上システム100は、オーディオ信号を生成し、オーディオ信号を変換し、遅延時間に基づいて、対応するオーディオを出力する。音向上システム100は、オーディオ信号の生成、または、オーディオの出力をある時間遅延し、そして、オーディオ信号を生成および/またはオーディオを出力する。
【0062】
図5は、エンジン音を模倣または向上するオーディオを出力するために、図1のエンジン音向上システムにより使用できる種々のセンサデータを比較するグラフ500を示している。線502は、エンジン122に入る、エンジン取込み空気の気流の量および/または速度を表わしている。エンジン取込み空気の量および/または速度は、線502により表わされているように、他のセンサデータよりも車両の振舞いおよび/または応答に、より良好に対応および一致している。図5において示されているように、線504は、線502において示されているように、エンジン122に入る気流の量および/または速度からの測定値を使用して生成された音またはオーディオを表わしている。図5において分かるように、線504の傾きは、線512により表わされているエンジン速度における増大に、より良好に整合および対応しており、従って、ペダル角度位置やスロットル角度位置などのような他のファクタと比較して、全期間を通して、車両速度における加速により良好に整合および対応している。
【0063】
図5はまた、エンジン速度との、ペダル角度意位置とスロットル角度位置との間の関係も示している。線506はペダル角度位置を表わしており、線508は、ペダル角度位置の入力に対応する、生成されたオーディオまたは音を表わしている。線506と508の両者は、2秒マークの周りで初期急勾配曲線を示している。ペダル角度位置と、生成された対応するオーディオの初期急勾配曲線は、線512で表わされているエンジン速度の傾きよりも大きな角度の傾きを有している。更に、線506と508の傾きは、線502と504の傾きよりも大きく、そのため、気流の量および/または速度と、生成された対応するオーディオは、エンジン速度を表わす線512により示されているように、車両応答を、より顕著に反映している。
【0064】
音向上システム100がペダル角度位置を唯一の入力として使用する場合、出力される音は、ほぼ即時に起こり遅延はない。出力される音は、エンジン速度と整合性のある安定した傾きでゆっくりと上昇することはなく、その代わりに、より大きな傾きを有し、ピークにより早く到達し、これは、出力されるオーディオの音量において、ゆっくりではなく、より急激または突然の増大を意味する。そのため、出力されるオーディオは、車両の振舞いおよび/または応答とは整合性がない。
【0065】
同様に、線510は、スロットル角度位置を使用して生成されたオーディオを表わしている。線510は、エンジン取込み空気の量および/または速度、および/または、エンジン速度の傾きよりもより大きな角度の傾きを有している同様な急勾配曲線を有している。そのため、音向上システム100が、オーディオ信号を生成するために、スロットル角度位置を唯一の入力として使用する場合は、出力されるオーディオは、エンジン速度で自然に起こり出力されるエンジン音の音量とは整合性がない。同様に、出力される音は、スロットル角度位置が唯一の入力として使用される場合は、ほぼ即時に起こり遅延がなく、それは、車両の振舞いとは整合性がない。
【0066】
幾つかの実現形態においては、音向上システム100は、車両の振舞いに、より良好に整合するオーディオ信号を生成するために、測定された気流の量および/または速度と、他のセンサデータの組み合わせを使用できる。種々のセンサデータは、自然なエンジン音との比較において、オーディオ信号の正確さと精度を更に改良し、対応する車両の振舞いと応答に整合するために重み付けられることができる。
【0067】
図6は、図1のエンジン音向上システムを使用してオーディオを生成することに対する、トランスミッション124のシフトポジションのダウンシフトの効果の例としてのグラフを示している。線602は、車両102のトランスミッション124のシフトポジションを表わしている。点604として表わされているほぼ3.75秒のマークにおいて、トランスミッション124はダウンシフトする。1つ以上のパドルシフタ126は、パドルダウンシフトを示すユーザ入力を既に受信できている。ダウンシフトすることにより、トランスミッション124はより低いギアに遷移し、エンジン速度を上昇し、それは、線606により表わすことができ、エンジン速度と、エンジン122内への気流を増大できる。音向上システム100は、例えば、線610において示されているように、気流の量および/または速度の測定値を使用すると、車両の振舞いをより良好に反映する。線608は、気流の量および/または速度からの測定値を使用するときに出力されるオーディオを示しており、他のファクタと比較して、エンジン速度を表わす線606をより良好に反映している。例えば、ペダル角度位置に基づいて生成されたオーディオを表わしている線612は、ダウンシフトが起きたときに最小の変化しか示さない。
【0068】
1つ以上のパドルシフタ126がトランスミッション124のシフトポジションをダウンシフトすると、エンジン122内への気流の量は増大でき、そして、線610と608それぞれにより表わされているように、生成されて出力される対応するオーディオもまたは増大できる。1つ以上のパドルシフタ126は、点604においてポジションをダウンシフトし、結果として、気流の量および/または速度は、点604において増大でき、それは、エンジン122内への気流の増大を示している。そのため、音向上システム100は、増大した気流と、車両の振舞いおよび/または応答と整合するためのエンジントルクにおける結果としての増大のために、点616において示されているように、エンジン音を模倣または向上するためにオーディオとして生成、変換、および出力されるオーディオ信号の大きさを増大することにより、ダウンシフトを反映するための出力されるオーディオを調整できる。
【0069】
1つ以上のパドルシフタ126がトランスミッション124のシフトポジションをアップシフトすると、エンジン122内への気流の量は減少でき、その結果、気流の量および/または速度は減少できる。そのため、音向上システム100は、減少した気流と、車両の振舞いおよび/または応答と整合するためのエンジントルクにおける結果としての減少のために、エンジン音を模倣するためのオーディオとして生成、変換、および出力されるオーディオ信号の大きさを減少することにより、アップシフトを反映するためのオーディオを調整できる。
【0070】
発明の例としての実施形態が例示的な方法で開示されてきた。従って、全体を通して採用されている用語は、非制限的に読まれるべきである。ここにおける教示に対する小さな修正を、この技術に精通している者は思い付くと思われるが、このすぐ後に保証される特許の範囲内に含まれるべきということが意図されているものは、これにより貢献される技術への進歩の範囲内であることが合理的なすべてのそのような実施形態であり、その範囲は、付随する請求項およびその等価物を考慮することを除いて、制限されるべきではないということは理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6