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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】磁石製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20241022BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20241022BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01F13/00 300
H01F7/02 E
H01F41/02 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021170159
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060516
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤中 智徳
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓二
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236724(US,A1)
【文献】特開平07-142276(JP,A)
【文献】特開平05-205959(JP,A)
【文献】特開2017-150022(JP,A)
【文献】特開2005-101437(JP,A)
【文献】特表2022-522876(JP,A)
【文献】特開2022-150689(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121917(WO,A1)
【文献】特開2001-28313(JP,A)
【文献】特開2013-105964(JP,A)
【文献】特開2017-183726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 1/04- 1/05
C22C 33/02
H01F 1/00- 1/117
H01F 1/40- 1/42
H01F 7/00- 7/02
H01F 13/00
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石製造装置であって、
磁粉(22)と樹脂材料(21)の混合物(23)を加熱して前記樹脂材料を融解させるヒータ(12)と、
一方向を軸線方向とする筒形状であり、内部に前記樹脂材料が融解した状態の前記混合物が流れる内部流路(131)を有するとともに、前記内部流路を流れる前記混合物を吐出して糸形状のフィラメント(24)を形成する吐出口(132)を有するノズル(13)と、
前記磁粉を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、前記磁粉を着磁させることができる大きさであるともに、前記軸線方向に沿う向きである磁場を、前記内部流路に対して印加する磁場印加部(15、41、51)と、
前記吐出口から吐出された前記フィラメントが配置されるステージ面(141)を有するステージ(14)と、を備え、
前記ノズルおよび前記ステージは、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントが積み重なって任意の形状をなすとともに、前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントのそれぞれの向きが目標の磁化方向に対応する向きになるように、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動するように構成されており、
前記磁場印加部(41)は、第1磁極である平坦な第1磁極面(421)を有する第1永久磁石(42)と、前記第1磁極である平坦な第2磁極面を有する(431)第2永久磁石(43)とを含み、
前記第1磁極面と前記第2磁極面とは、前記ノズルを挟んで対向している、磁石製造装置。
【請求項2】
磁石製造装置であって、
磁粉(22)と樹脂材料(21)の混合物(23)を加熱して前記樹脂材料を融解させるヒータ(12)と、
一方向を軸線方向とする筒形状であり、内部に前記樹脂材料が融解した状態の前記混合物が流れる内部流路(131)を有するとともに、前記内部流路を流れる前記混合物を吐出して糸形状のフィラメント(24)を形成する吐出口(132)を有するノズル(13)と、
前記磁粉を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、前記磁粉を着磁させることができる大きさであるともに、前記軸線方向に沿う向きである磁場を、前記内部流路に対して印加する磁場印加部(15、41、51)と、
前記吐出口から吐出された前記フィラメントが配置されるステージ面(141)を有するステージ(14)と、を備え、
前記ノズルおよび前記ステージは、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントが積み重なって任意の形状をなすとともに、前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントのそれぞれの向きが目標の磁化方向に対応する向きになるように、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動するように構成されており、
前記磁場印加部(15)は、前記ノズルの外周面の周方向全域を囲むとともに、同一の磁極である内周面(151、151A、151B)を有する永久磁石である、磁石製造装置。
【請求項3】
磁石製造装置であって、
磁粉(22)と樹脂材料(21)の混合物(23)を加熱して前記樹脂材料を融解させるヒータ(12)と、
一方向を軸線方向とする筒形状であり、内部に前記樹脂材料が融解した状態の前記混合物が流れる内部流路(131)を有するとともに、前記内部流路を流れる前記混合物を吐出して糸形状のフィラメント(24)を形成する吐出口(132)を有するノズル(13)と、
前記磁粉を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、前記磁粉を着磁させることができる大きさであるともに、前記軸線方向に沿う向きである磁場を、前記内部流路に対して印加する磁場印加部(15、41、51)と、
前記吐出口から吐出された前記フィラメントが配置されるステージ面(141)を有するステージ(14)と、を備え、
前記ノズルおよび前記ステージは、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントが積み重なって任意の形状をなすとともに、前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントのそれぞれの向きが目標の磁化方向に対応する向きになるように、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動するように構成されており、
前記磁場印加部(51)は、ハルバッハ配列された複数の磁石部(52a、52b、52c)を有する第1永久磁石(52)と、ハルバッハ配列された複数の磁石部(53a、53b、53c)を有する第2永久磁石(53)とを含み、
前記第1永久磁石と前記第2永久磁石とは、前記ノズルを挟んだ両側に配置されており、
前記第1永久磁石の1つの磁石部(52b)の第1磁極である第1磁極面(521)と、前記第2永久磁石の1つの磁石部(53b)の前記第1磁極である第2磁極面(531)とが、前記ノズルを挟んで対向している、磁石製造装置。
【請求項4】
磁石製造装置であって、
磁粉(22)と樹脂材料(21)の混合物(23)を加熱して前記樹脂材料を融解させるヒータ(12)と、
一方向を軸線方向とする筒形状であり、内部に前記樹脂材料が融解した状態の前記混合物が流れる内部流路(131)を有するとともに、前記内部流路を流れる前記混合物を吐出して糸形状のフィラメント(24)を形成する吐出口(132)を有するノズル(13)と、
前記磁粉を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、前記磁粉を着磁させることができる大きさであるともに、前記軸線方向に沿う向きである磁場を、前記内部流路に対して印加する磁場印加部(15、41、51)と、
前記吐出口から吐出された前記フィラメントが配置されるステージ面(141)を有するステージ(14)と、
前記ステージ面の上に設置されたステージ用磁石(61、62)と、を備え、
前記ノズルおよび前記ステージは、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントが積み重なって任意の形状をなすとともに、前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントのそれぞれの向きが目標の磁化方向に対応する向きになるように、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動するように構成されており、
前記吐出口が前記ステージ面に対して相対的に移動することで、前記フィラメントとしての第1フィラメント(241)と第2フィラメント(242)とが、互いに平行に隣り合って描画され、描画される前記第1フィラメントの始点と前記第2フィラメントの始点とが隣り合うとともに、描画される前記第1フィラメントの終点と前記第2フィラメントの終点とが隣り合うようになっており、
前記ステージ面において、描画予定である前記第1フィラメントと前記第2フィラメントのそれぞれの前記始点と、前記第1フィラメントと前記第2フィラメントのそれぞれの前記終点との少なくとも一方における前記第1フィラメントと前記第2フィラメントのそれぞれの端面(24a、24b)に対して、前記ステージ用磁石のうち前記端面の磁極とは異なる磁極の面(611、621)が対向するように、前記ステージ用磁石が予め配置される、磁石製造装置。
【請求項5】
磁石製造装置であって、
磁粉(22)と樹脂材料(21)の混合物(23)を加熱して前記樹脂材料を融解させるヒータ(12)と、
一方向を軸線方向とする筒形状であり、内部に前記樹脂材料が融解した状態の前記混合物が流れる内部流路(131)を有するとともに、前記内部流路を流れる前記混合物を吐出して糸形状のフィラメント(24)を形成する吐出口(132)を有するノズル(13)と、
前記磁粉を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、前記磁粉を着磁させることができる大きさであるともに、前記軸線方向に沿う向きである磁場を、前記内部流路に対して印加する磁場印加部(15、41、51)と、
前記吐出口から吐出された前記フィラメントが配置されるステージ面(141)を有するステージ(14)と、
前記ステージ面の上に設置された軟磁性材料(71、72)と、を備え、
前記ノズルおよび前記ステージは、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントが積み重なって任意の形状をなすとともに、前記ステージ面の上に配置される複数の前記フィラメントのそれぞれの向きが目標の磁化方向に対応する向きになるように、前記吐出口が前記ステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動するように構成されており、
前記吐出口が前記ステージ面に対して相対的に移動することで、前記フィラメントとしての第1フィラメント(241)と第2フィラメント(242)とが、互いに平行に隣り合って描画され、描画される前記第1フィラメントの始点と前記第2フィラメントの始点とが隣り合うとともに、描画される前記第1フィラメントの終点と前記第2フィラメントの終点とが隣り合うようになっており、
前記ステージ面において、描画予定である前記第1フィラメントと前記第2フィラメントのそれぞれの前記始点と、前記第1フィラメントと前記第2フィラメントのそれぞれの前記終点との少なくとも一方における前記第1フィラメントと前記第2フィラメントのそれぞれの端面(24a、24b)に対して対向する位置に、前記軟磁性材料が予め配置される、磁石製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に磁石製造装置が開示されている。この磁石製造装置は、シート状の成形体の押出成形時に、配向用磁石で磁性材料を配向させる。その後、押出成形された成形体に対して、着磁器で着磁を行う。配向用磁石が形成する配向磁場の大きさは3.5kOeである。着磁器が形成する着磁磁場の大きさは、40kOe以上である。さらに、この磁石製造装置は、着磁された成形体を着磁方向が交互になるように積層した後、積層された成形体を積層方向と垂直方向に切断する。これにより、端面にN極とS極とが交互に配置された多極ボンド磁石が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-207773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CAE技術の進展等により、電動機などに用いられる最適な磁気回路を実現するため、磁石の形状と磁化方向とが任意に設計された磁石を製造することが求められている。しかしながら、上記した従来の磁石製造装置では、製造される磁石の形状および磁化方向の自由度が低い。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、磁石の形状と磁化方向とが任意に設計された磁石を製造することができる磁石製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1ないし5に記載の発明によれば、
磁石製造装置は、
磁粉(22)と樹脂材料(21)の混合物(23)を加熱して樹脂材料を融解させるヒータ(12)と、
一方向を軸線方向とする筒形状であり、内部に樹脂材料が融解した状態の混合物が流れる内部流路(131)を有するとともに、内部流路を流れる混合物を吐出して糸形状のフィラメント(24)を形成する吐出口(132)を有するノズル(13)と、
磁粉を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、磁粉を着磁させることができる大きさであるともに、軸線方向に沿う向きである磁場を、内部流路に対して印加する磁場印加部(15、41、51)と、
吐出口から吐出されたフィラメントが配置されるステージ面(141)を有するステージ(14)と、を備え、
ノズルおよびステージは、吐出口がステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されており、
ステージ面の上に配置される複数のフィラメントが積み重なって任意の形状をなすとともに、ステージ面の上に配置される複数のフィラメントのそれぞれの向きが目標の磁化方向に対応する向きになるように、吐出口がステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動する。
更に、請求項1に記載の発明によれば、磁場印加部(41)は、第1磁極である平坦な第1磁極面(421)を有する第1永久磁石(42)と、前記第1磁極である平坦な第2磁極面を有する(431)第2永久磁石(43)とを含み、第1磁極面と第2磁極面とは、前記ノズルを挟んで対向している。
更に、請求項2に記載の発明によれば、磁場印加部(15)は、ノズルの外周面の周方向全域を囲むとともに、同一の磁極である内周面(151、151A、151B)を有する永久磁石である。
更に、請求項3に記載の発明によれば、磁場印加部(51)は、ハルバッハ配列された複数の磁石部(52a、52b、52c)を有する第1永久磁石(52)と、ハルバッハ配列された複数の磁石部(53a、53b、53c)を有する第2永久磁石(53)とを含み、
第1永久磁石と第2永久磁石とは、ノズルを挟んだ両側に配置されており、
第1永久磁石の1つの磁石部(52b)の第1磁極である第1磁極面(521)と、第2永久磁石の1つの磁石部(53b)の第1磁極である第2磁極面(531)とが、ノズルを挟んで対向している。
更に、請求項4に記載の発明によれば、磁石製造装置は、ステージ面の上に設置されたステージ用磁石(61、62)を備え、
吐出口がステージ面に対して相対的に移動することで、フィラメントとしての第1フィラメント(241)と第2フィラメント(242)とが、互いに平行に隣り合って描画され、描画される第1フィラメントの始点と第2フィラメントの始点とが隣り合うとともに、描画される第1フィラメントの終点と第2フィラメントの終点とが隣り合うようになっており、
ステージ面において、描画予定である第1フィラメントと第2フィラメントのそれぞれの始点と、第1フィラメントと第2フィラメントのそれぞれの終点との少なくとも一方における第1フィラメントと第2フィラメントのそれぞれの端面(24a、24b)に対して、ステージ用磁石のうち端面の磁極とは異なる磁極の面(611、621)が対向するように、ステージ用磁石が予め配置される。
更に、請求項5に記載の発明によれば、磁石製造装置は、ステージ面の上に設置された軟磁性材料(71、72)を備え、
吐出口がステージ面に対して相対的に移動することで、フィラメントとしての第1フィラメント(241)と第2フィラメント(242)とが、互いに平行に隣り合って描画され、描画される第1フィラメントの始点と第2フィラメントの始点とが隣り合うとともに、描画される第1フィラメントの終点と第2フィラメントの終点とが隣り合うようになっており、
ステージ面において、描画予定である第1フィラメントと第2フィラメントのそれぞれの始点と、第1フィラメントと第2フィラメントのそれぞれの終点との少なくとも一方における第1フィラメントと第2フィラメントのそれぞれの端面(24a、24b)に対して対向する位置に、軟磁性材料が予め配置される。
【0007】
これによれば、吐出口がステージ面に対して三次元の任意方向に相対的に移動して、ステージ面の上に複数のフィラメントが任意の形状をなすように配置されることで、任意の形状の磁石を製造することができる。また、フィラメントの内部の磁化方向は特定の方向に定まっている。このため、ステージ面の上に配置されるフィラメントの向きを、狙いの磁化方向に対応する向きにすることで、磁石の内部の磁化方向を狙いの方向にすることができる。よって、これによれば、磁石の形状と磁化方向とが任意に設計された磁石を製造することができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における磁石製造装置の斜視図である。
図2図1中のノズルユニットの断面図である。
図3図1中の磁場印加磁石の斜視図である。
図4図1中のノズルおよび磁場印加磁石の斜視図である。
図5】ノズルの中心線を通ってノズルの延伸方向に平行な切断面における図4のノズルおよび磁場印加磁石の断面図である。
図6】磁場印加磁石が内部流路に印加する磁場の大きさと磁粉の着磁率との関係を示す図である。
図7】第1実施形態における磁石製造装置によって製造されるボンド磁石の平面図である。
図8図7のボンド磁石の側面図である。
図9】第1実施形態の磁石製造装置を用いて図7に示すボンド磁石を製造するときの複数のフィラメントの配置を示す図である。
図10】第1実施形態の磁石製造装置を用いて図7に示すボンド磁石を製造するときの複数のフィラメントの配置を示す図である。
図11】第2実施形態における磁場印加磁石の斜視図である。
図12】第2実施形態における磁場印加磁石の断面図であって、磁場解析結果を説明するための図である。
図13】第1実施形態における磁場印加磁石の断面図であって、磁場解析結果を説明するための図である。
図14】第3実施形態におけるノズルおよび磁場印加磁石の斜視図である。
図15】ノズルの中心線を通ってノズルの延伸方向に平行な切断面における図14のノズルおよび磁場印加磁石の断面図である。
図16】第4実施形態におけるノズルおよび磁場印加磁石の斜視図である。
図17】ノズルの中心線を通ってノズルの延伸方向に平行な切断面における図16のノズルおよび磁場印加磁石の断面図である。
図18】第5実施形態におけるノズルおよび磁場印加磁石の斜視図である。
図19】ノズルの中心線を通ってノズルの延伸方向に平行な切断面における図18のノズルおよび磁場印加磁石の断面図である。
図20】第1実施形態の磁場印加磁石と第5実施形態の磁場印加磁石とのそれぞれが印加する磁場の磁束密度計算値を示す図である。
図21】第6実施形態におけるノズルおよび磁場印加磁石の斜視図である。
図22】ノズルの中心線を通ってノズルの軸線方向に平行な切断面における図21のノズルおよび磁場印加磁石の断面図である。
図23】第7実施形態における磁石製造装置の斜視図である。
図24図23中の複数のフィラメントが配置されたステージ面の平面図である。
図25】ステージ用第1磁石とステージ用第2磁石とが設置されない状態で、複数のフィラメントが配置されたときのステージ面の平面図である。
図26図25中の領域XXVIの拡大図である。
図27図24中の領域XXVIIの拡大図である。
図28】第8実施形態における磁石製造装置の斜視図である。
図29図28中の複数のフィラメントが配置されたステージ面の平面図である。
図30図29中の領域XXXの拡大図である。
図31】第9実施形態における複数のフィラメントが配置されたステージ面の平面図である。
図32】第1、第7、第9実施形態の磁石製造装置を用いて磁石を製造したときにおいて、ステージ面に配置された複数のフィラメントの始点の位置での表面磁束密度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
図1、2に示すように、本実施形態の磁石製造装置10は、材料タンク11と、ヒータ12と、ノズル13と、ステージ14と、磁場印加磁石15とを備える。
【0012】
材料タンク11は、樹脂材料21と磁粉22とを含む混合物23を内部に収容する。樹脂材料21と磁粉22とは、所定の比率で混合されている。樹脂材料21としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、アクリル樹脂、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。磁粉22としては、フェライト系、Sm-Co系、Nd-Fe-B系、Sm-Fe-N系等の磁性材料の粉末が用いられる。磁粉22としては、磁気等方性の磁粉よりも磁気異方性の磁粉を用いることが好ましい。
【0013】
ヒータ12は、材料タンク11の外側に配置される。ヒータ12は、材料タンク11の内部に収容された混合物23を加熱し、混合物23中の樹脂材料21を溶融させる。ヒータの加熱方式としては、抵抗加熱方式、高周波加熱方式等を採用することができる。
【0014】
ノズル13は、一方向を軸線方向として直線状に延び広がる筒形状である。一方向は、上下方向である。ノズル13は、内周面および外周面を有する。ノズル13の横断面の形状は円形状である。すなわち、ノズル13の内周面および外周面のそれぞれの横断面の形状は、円形状である。横断面は、ノズル13の軸線方向に垂直な切断面である。ノズル13は、その内部に樹脂材料21が融解した状態の混合物23が流れる内部流路131を有する。ノズル13は、その先端に内部流路131を流れる混合物23を吐出して、糸形状のフィラメント24を形成する吐出口132を有する。
【0015】
ステージ14は、ノズル13の吐出口132から吐出されたフィラメント24が配置されるステージ面141を有する。ステージ面141は、ステージ14の平坦な主表面である。
【0016】
磁場印加磁石15は、ノズル13の周囲に配置される。磁場印加磁石15は、磁粉22を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、磁粉22を着磁させることができる大きさの磁場を、ノズル13の内部流路131に印加する磁場印加部である。配向させるとは、同じ向きに揃えることである。磁場の具体的な大きさについては、後述する。
【0017】
図3に示すように、磁場印加磁石15は、外形が円柱形状の永久磁石である。磁場印加磁石15は、中心側に形成された空間部を囲む内周面151と、外周面152とを有する。内周面151は、円筒の内周面と同じ形状である。すなわち、磁場印加磁石15の横断面において、内周面151がなす形状は円形状である。磁場印加磁石15の横断面は、磁場印加磁石15のノズル13の軸線方向に垂直な切断面である。内周面151は、周方向全域で同じ磁極である。内周面151の磁極は、N極である。外周面152は、円筒の外周面と同じ形状である。外周面152は、周方向全域で同じ磁極である。外周面152の磁極は、S極である。
【0018】
外形が円柱形状の磁場印加磁石15において、円柱の半径r1と円柱の高さH1との関係は、H1>r1である。磁場印加磁石15は、円柱形状の磁場印加磁石15が周方向に複数に分割された形状の複数の分割部によって構成される。
【0019】
図4、5に示すように、内周面151がノズル13の外周面の周方向全域を囲むように、ノズル13に対して磁場印加磁石15が配置される。内周面151は、ノズル13の外周面に接している。これにより、ノズル13を挟んで、同一の磁極が対向して配置されている。
【0020】
このため、図2、5に示すように、磁場印加磁石15の内周面151から出て外周面152に向かう磁気回路M1、M2が形成される。磁気回路M1、M2には、磁束が内周面151から出て上に向かった後、外周面152に向かう上側磁気回路M1と、磁束が内周面151から出て下に向かった後、外周面152に向かう下側磁気回路M2とが、含まれる。
【0021】
これにより、図5に示すように、ノズル13の内部流路131には、ノズル13の軸線方向に沿う向きの磁場M3、M4が形成される。より具体的には、内部流路131の上流側には、流れ方向D1の前方側がS極であり、流れ方向D1の後方側がN極である磁場M3が形成される。流れ方向D1は、内部流路131を流れる混合物23の流れ方向である。内部流路131の上流側は、内部流路131のうち吐出口132から離れた側である。内部流路131の下流側には、流れ方向D1の前方側がN極であり、流れ方向D1の後方側がS極である磁場M4が形成される。内部流路131の下流側は、内部流路131のうち吐出口132側である。
【0022】
図1に示すように、材料タンク11、ヒータ12、ノズル13および磁場印加磁石15は、一体化されたノズルユニットを構成する。ノズルユニットは、図示しない移動機構によって、三次元の任意方向に移動可能に構成されている。これにより、吐出口132は、ステージ面141に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されている。すなわち、吐出口132は、ステージ面141にある基準位置に対して、X軸、Y軸、Z軸の三次元直交座標の任意方向に移動可能である。ステージ面141に平行な一方向がX軸方向である。ステージ面141に平行であって、X軸方向に直交する方向がY軸方向である。ステージ面141に直行する方向、すなわち、X軸方向およびY軸方向の両方に直交する方向がZ軸方向である。
【0023】
また、磁石製造装置10は、図示しないスクリュー等の混合物23を送る機構を備える。この機構によって、樹脂材料21が溶融した状態の混合物23がノズル13の内部流路131を吐出口132に向かって流れる。
【0024】
磁石製造装置10は、ノズル13の吐出口132から混合物23を、ステージ面141に対して吐出し、フィラメント24をステージ面141の上に配置する。磁石製造装置10は、吐出口132を、ステージ面141に対して三次元の任意方向に移動させることで、任意形状の磁石を描画するとともに、任意方向に磁化された磁石を製造することができる。
【0025】
次に、上記した磁石製造装置10を用いた磁石製造方法について説明する。この磁石製造方法は、熱溶解積層法によって磁石を製造する方法である。熱溶解積層法は、溶融物堆積法とも呼ばれる。熱溶解積層法の「溶解」は、溶融、融解と同義である。磁石製造方法は、樹脂材料21の溶融工程と、磁粉22の配向着磁工程と、フィラメント24の配置工程とを含む。
【0026】
樹脂材料21の溶融工程では、図2に示すように、材料タンク11の内部で、ヒータ12によって、混合物23が加熱される。例えば、樹脂材料21として、ポリカプロラクトンが用いられる場合、混合物23の加熱温度は、150℃である。これにより、混合物23中の樹脂材料21が溶融する。樹脂材料21が溶融した状態の混合物23は、ノズル13に送られる。図2では、磁粉22が一粒ずつ拡大して示されている。図2の磁粉22の内部に示される矢印は、磁気モーメントを示している。矢印の先がN極である。図2に示す磁粉22は、磁気異方性である。このため、磁粉22のそれぞれの磁気モーメントは、一方向を向いている。材料タンク11の内部では、磁粉22のそれぞれの磁気モーメントの向きは、異なっている。
【0027】
磁粉22の配向着磁工程では、図2に示すように、ノズル13の内部流路131で、磁粉22の配向と着磁とが行われる。ノズル13の内部流路131には、磁粉22を磁化容易軸方向に配向させ、かつ、磁粉22を着磁させることができる大きさであるとともに、ノズル13の軸線方向に沿う向きである磁場が、磁場印加磁石15によって形成されている。このため、樹脂材料21が溶融した状態の混合物23が、ノズル13の内部流路131を通過することで、磁粉22の配向と着磁とが同時に行われる。
【0028】
このとき、内部流路131には、図5に示す磁場M3、M4が形成されている。このため、図2に示すように、内部流路131の上流側では、磁粉22の磁気モーメントの向きは、流れ方向D1の後方側をN極とする向きとなる。内部流路131の下流側では、磁粉22の向きが変わる、または、磁気モーメントの向きが反転する。これにより、磁粉22の磁気モーメントの向きは、流れ方向D1の前方側をN極とする向きとなる。
【0029】
このように、ノズル13の内部流路131を吐出口132に向かって混合物23が流れるときに、磁気モーメントの向きが同じ向きの磁粉22と反対の向きの磁粉22とが存在する。すなわち、磁粉22の磁気モーメントの向きが、ノズル13の軸線方向に沿う向きに揃う。これが配向であり、主に磁場M3が配向に寄与している。内部流路131のうち吐出口132側の領域では、磁場がM4の向きであり、配向された状態で磁粉が通過するため、磁粉22の磁気モーメントのみが反転することで着磁され易くなる。
【0030】
本発明者は、磁場印加磁石15が内部流路131に印加する磁場の大きさと、磁粉22の着磁率との関係を調べた。その結果を図6に示す。用いた磁粉22は、Sm-Fe-N系の磁粉である。用いた樹脂材料21は、ポリカプロラクトンである。磁粉22と樹脂材料21との比率は、磁粉:樹脂材料=60vol%:40vol%である。磁場の大きさが3.5kOeのとき、フィラメント24の内部の磁粉22は、約60%しか着磁されなかった。これに対して、磁場の大きさが10kOe以上のとき、フィラメント24の内部の磁粉22は、約90%以上着磁されていた。この結果より、磁場の大きさは、10kOe以上であることが好ましい。なお、3.5kOeは、特許文献1の磁石製造装置において、磁粉を配向させるための配向用磁石が形成する配向磁場の大きさである。
【0031】
フィラメント24の配置工程では、図2に示すように、吐出口132から混合物23が吐出されることで、フィラメント24が形成される。フィラメント24中の樹脂材料21が冷却されることで、磁粉22の磁気モーメントの向きが揃った状態で、樹脂材料21が固化する。フィラメント24が長く延びる方向が磁化方向となる。すなわち、フィラメント24の中心線に沿う方向が磁化方向となる。
【0032】
このとき、図1に示すように、フィラメント24は、目標とする形状の磁石が形成されるように、ステージ面141に配置される。すなわち、ステージ面141の上にフィラメント24が描画される。樹脂材料21が完全に固化する前に、フィラメント24がステージ面141の上に配置される。樹脂材料21が固化することで、隣り合うフィラメント24同士が結合する。
【0033】
また、図1中のフィラメント24の隣りに示す矢印は、ステージ面141に対する吐出口132の移動方向を示す。ステージ面141の上に配置されるフィラメント24の向きが目標の磁化方向に対応する向きになるとともに、ステージ面141の上に配置されるフィラメント24が積み重なって目標の形状をなすように、吐出口132がステージ面141の基準位置に対して三次元の任意方向に移動する。
【0034】
このように、フィラメント24の配置工程では、磁粉22が配向した状態の混合物23を吐出口132から吹き出して複数本のフィラメント24を形成するとともに、複数本のフィラメント24を配置することが行われる。これによって、磁石が描画される。
【0035】
この磁石製造方法によれば、図7、8に示す円環形状の磁石30を製造することができる。磁石30の外周面30aには、N極とS極とが交互に円周方向D2に形成されている。磁石30の内周面30bには、磁極が形成されていない。磁石30は、図8に示すように、複数の円環部31が軸線方向D3に積層された構造である。各円環部31は、図7に示すように、複数の第1構成部32のそれぞれと、複数の第2構成部33のそれぞれとが、交互に円周方向D2に配置された構造である。
【0036】
磁石30の製造において、フィラメント24の配置工程では、図9に示すように、第1構成部32が形成されるように、複数本のフィラメント24を配置することが行われる。図9中の破線矢印は、吐出口132が移動した軌跡を示している。吐出口132が図9中の破線矢印のようにU字状に移動することで、複数本のフィラメント24のそれぞれがU字状をなすように配置される。第1構成部32を構成する複数本のフィラメント24のそれぞれは、同じ向きで配置される。このため、第1構成部32を構成する複数本のフィラメント24の磁化方向は、同じ向きである。描画された複数本のフィラメント24のそれぞれの始点の端面は、N極である。描画された複数本のフィラメント24のそれぞれの終点の端面は、S極である。このようにして、外周面にN極とS極とを有する第1構成部32が形成される。
【0037】
さらに、図10に示すように、第2構成部33が形成されるように、複数本のフィラメント24を配置することが行われる。図10中の破線矢印は、吐出口132が移動した軌跡を示している。吐出口132が図10中の破線矢印のようにU字状に移動することで、複数本のフィラメント24のそれぞれがU字状をなすように配置される。第2構成部33を構成する複数本のフィラメント24のそれぞれは、同じ向きで配置される。このため、第2構成部33を構成する複数本のフィラメント24の磁化方向は、同じ向きである。描画された複数本のフィラメント24のそれぞれの始点の端面は、N極である。描画された複数本のフィラメント24のそれぞれの終点の端面は、S極である。第2構成部33では、複数のフィラメント24のそれぞれの始点と終点との位置関係が、第1構成部32と逆の関係である。このようにして、外周面にS極とN極とを有する第2構成部33が形成される。
【0038】
そして、複数の第1構成部32のそれぞれと複数の第2構成部33のそれぞれとが円周方向D2に交互に形成されることで、1層の円環部31が形成される。さらに、この円環部31以外の複数の円環部31が軸線方向D3に形成されることで、図7、8に示す円環形状の磁石30が製造される。
【0039】
以上の説明の通り、本実施形態の磁石製造装置10によれば、ノズル13の吐出口132が三次元の任意方向に移動する。ステージ面141の上に複数本のフィラメント24が、任意の形状をなすように配置される。これにより、任意の形状の磁石を成形することができる。また、フィラメント24の内部の磁化方向は、特定の方向、すなわち、フィラメント24の中心線に沿う方向に定まっている。このため、ステージ面141の上に配置される複数本のフィラメント24のそれぞれの向きを、狙いの磁化方向に対応する向きにすることで、磁石の内部の磁化方向を狙いの方向にすることができる。よって、これによれば、磁石の形状と磁化方向とが任意に設計された磁石を製造することができる。
【0040】
ところで、特許文献1に記載の磁石製造装置は、磁粉を配向させるための配向用磁石と、磁粉を着磁させるための着磁器とを別々に備えている。このため、磁粉を配向させる工程と、磁粉を着磁させる工程とが、別々に行われる。
【0041】
これに対して、本実施形態の磁石製造装置10では、磁粉22の配向と着磁とを同時に行うための磁場印加磁石15を備えている。このため、磁粉22を配向させる工程と、磁粉22を着磁させる工程とが、同時に行われる。
【0042】
磁石の自由成形を可能とするためには、ノズル13の動きを、3Dプリンタのノズルと同様に、精度良く制御する必要がある。そのためには、ノズルユニットの小型化が必要である。本実施形態の磁石製造装置10によれば、ノズル13に対して配向用磁石と着磁器とを別々に設ける場合と比較して、ノズルユニットを小型化することができる。
【0043】
さらに、磁粉を配向させる工程と、磁粉を着磁させる工程とが、別々に行われる場合、いずれの工程においても、樹脂材料を加熱しておく必要があるため、樹脂材料を加熱する領域が2つ必要になる。本実施形態の磁石製造装置10によれば、磁粉22を配向させる工程と、磁粉22を着磁させる工程とが、同時に行われるため、樹脂材料21を加熱する領域は1つで良い。このため、ノズルユニットを小型化することができる。
【0044】
また、本実施形態の磁石製造装置10によれば、磁場印加磁石15は、ノズル13の外周面の周方向全域を囲むとともに、同一の磁極である内周面151を有する永久磁石である。これによれば、ノズル13が同一の磁極に挟まれるとともに、ノズル13の外周面の周方向全域が永久磁石で囲まれる。これにより、内部流路131に大きな磁場を印加することができる。よって、磁粉22の配向と着磁に必要な大きさの磁場を形成するために必要な磁場印加磁石15のサイズを小さく抑えることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、磁場印加磁石15の横断面において、磁場印加磁石15の内周面151がなす形状は、円形状である。しかしながら、内周面151がノズル13の外周面の周方向全域を囲んでいれば、内周面151がなす形状は、多角形等の他の形状であってもよい。
【0046】
(第2実施形態)
図11に示すように、本実施形態の磁石製造装置10では、磁場印加磁石15の形状が第1実施形態と同じである。磁場印加磁石15の半径r1と高さH1との関係は、第1実施形態と異なり、H1<r1である。磁石製造装置10の他の構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。ただし、下記の理由により、半径r1と高さH1との関係は、本実施形態のH1<r1よりも、H1≧r1の方が好ましい。
【0047】
本発明者は、磁場印加磁石15の半径r1と高さH1との関係がH1<r1とH1=r1のそれぞれの場合において、ノズル13の内部流路131の磁場の大きさを解析した。解析に使用したシミュレーションソフトウェアは、「JMAG-Designer」である。H1とr1の関係以外は、同じ条件である。
【0048】
図12は、解析したH1<r1の磁場印加磁石15の断面を示す図である。H1=10mm、r1=40mmの場合、図12の領域A1、A2での磁場の大きさは、1.27Tであった。図13は、解析したH1=r1のときの磁場印加磁石15の断面を示す図である。H1=40mm、r1=40mmの場合、図13の領域B1、B2での磁場の大きさは、1.82Tであった。
【0049】
このように、半径r1を同じとして比較すると、H1<r1よりもH1=r1の方が、ノズル13の内部流路131の磁場が大きい。H1が大きくなるにつれて、磁路が長くなり、磁場が大きくなる。このため、同じ材料で構成された永久磁石を磁場印加磁石15として用いる場合、H1≧r1とすることで、H1<r1のときと比較して、内部流路131の磁場を大きくすることができる。
【0050】
(第3実施形態)
図14に示すように、本実施形態の磁石製造装置10では、ノズル13Aの横断面の形状が第1実施形態のノズル13と異なる。横断面は、ノズル13Aの軸線方向に垂直な切断面である。ノズル13Aの横断面の形状は、四角形である。ノズル13Aの他の構成は、第1実施形態のノズル13と同じである。ノズル13Aの横断面における内周面がなす四角形の一辺の長さは、1mmである。ノズル13Aの吐出口132から吐出されるフィラメント24Aの形状は四角柱である。磁場印加磁石15の内周面151Aは、横断面が四角形の筒の内周面と同じ形状である。
【0051】
図15に示すように、磁場印加磁石15の内周面151Aは、ノズル13Aの外周面に接している。磁場印加磁石15の内周面151Aの磁極は、N極である。磁場印加磁石15の外周面152の磁極は、S極である。本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0052】
(第4実施形態)
図16に示すように、本実施形態の磁石製造装置10では、ノズル13Bの横断面の形状が第1実施形態のノズル13と異なる。ノズル13Bの横断面の形状は、六角形である。ノズル13Bの他の構成は、第1実施形態のノズル13と同じである。ノズル13Bの横断面における内周面がなす六角形の対角線の長さは1mmである。ノズル13Bから吐出されるフィラメント24Bの形状は六角柱である。磁場印加磁石15の内周面151Bは、横断面が六角形の筒の内周面と同じ形状である。
【0053】
図17に示すように、磁場印加磁石15の内周面151Bは、ノズル13の外周面に接している。磁場印加磁石15の内周面151Bの磁極は、N極である。磁場印加磁石15の外周面152の磁極は、S極である。ノズル13の内部流路131に形成される磁場は、第1実施形態と同じである。本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0054】
(第5実施形態)
図18、19に示すように、本実施形態の磁石製造装置10では、磁場印加部として、磁場印加磁石41が用いられている。磁場印加磁石41は、第1永久磁石42と、第2永久磁石43とを含む。
【0055】
第1永久磁石42は、外形が円柱形状であり、平坦な2つの底面421、422と、曲面である側面423とを有する。2つの底面421、422のうち一方の底面421は、第1磁極としてのN極である。2つの底面421、422のうち他方の底面422は、第2磁極としてのS極である。
【0056】
同様に、第2永久磁石43は、外形が円柱形状であり、平坦な2つの底面431、432と、曲面である側面433とを有する。2つの底面431、432のうち一方の底面431は、第1磁極としてのN極である。2つの底面431、432のうち他方の底面432は、第2磁極としてのS極である。
【0057】
第1永久磁石42の一方の底面421と第2永久磁石43の一方の底面431とは、ノズル13を挟んで対向している。これにより、ノズル13を挟んで、同一の磁極が対向して配置されている。ノズル13は、底面421、431の中心と対向する位置に配置されている。このため、図19に示すように、本実施形態の磁場印加磁石41によっても、第1実施形態と同様に、ノズル13の内部流路131に対して、ノズル13の軸線方向に沿う方向の磁場M3、M4を印加することができる。
【0058】
磁石製造装置10の他の構成は、第1実施形態と同じである。このため、本実施形態によっても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0059】
ここで、図20に、本実施形態の磁場印加磁石41と、第1実施形態の磁場印加磁石15とのそれぞれが形成する磁場の大きさについて、「JMAG-Designer」を用いて計算した結果を示す。この計算では、磁場印加磁石15、41は同じ材料で構成される。磁場印加磁石15のサイズは、外径9mm、内径1.5mm、高さ6.4mmである。第1永久磁石42と第2永久磁石43のそれぞれのサイズは、直径14mm、内径4mm、高さ18mmである。
【0060】
図20に示すように、第1実施形態の磁場印加磁石15の方が、本実施形態の磁場印加磁石41よりも、磁場の磁束密度が大きい。このことから、内部流路131に印加する磁場を大きくするためには、第1実施形態の磁場印加磁石15を用いることが好ましい。なお、第5実施形態の第1、第2永久磁石42、43の外形は、円柱形状であったが、他の形状であってもよい。
【0061】
(第6実施形態)
図21、22に示すように、本実施形態の磁石製造装置10では、磁場印加部として、磁場印加磁石51が用いられている。磁場印加磁石51は、ハルバッハ配列された複数の磁石部52a、52b、52cを有する第1永久磁石52と、ハルバッハ配列された複数の磁石部53a、53b、53cを有する第2永久磁石53とを含む。第1永久磁石52と第2永久磁石53とは、ノズルを挟んだ両側に配置されている。
【0062】
ハルバッハ配列は、磁極の方向を最適化することによって、特定の方向の磁場強度を最大化する磁石の配列方法である。本実施形態では、ノズル13の軸線方向の磁場強度が最大化するように、第1永久磁石52の複数の磁石部52a、52b、52cが配列されるとともに、第2永久磁石53の複数の磁石部53a、53b、53cが配置されている。
【0063】
第1永久磁石52の複数の磁石部52a、52b、52cは、一方向に並んで配置されている。一方向は、ノズル13の軸線方向に対して交差する方向である。複数の磁石部52a、52b、52cのうち隣り合う磁石部の磁化方向は、所定角度ずつ異なる。所定角度は、90度であるが、90度でなくてもよい。同様に、第2永久磁石53の複数の磁石部53a、53b、53cは、一方向に並んで配置されている。複数の磁石部53a、53b、53cのうち隣り合う磁石部の磁化方向は、所定角度ずつ異なる。一方向および所定角度は、第1永久磁石52と同じである。
【0064】
そして、図22に示すように、第1永久磁石52の1つの磁石部52bの第1磁極である第1磁極面521と、第2永久磁石53の1つの磁石部53bの第1磁極である第2磁極面531とが、ノズル13を挟んで対向している。本実施形態では、第1磁極はN極である。
【0065】
このため、本実施形態の磁場印加磁石51によっても、第1実施形態と同様に、ノズル13の内部流路131に対して、ノズル13の軸線方向に沿う方向の磁場M3、M4を印加することができる。また、本実施形態の磁場印加磁石51によれば、内部流路131に大きな磁場を印加することができる。
【0066】
磁石製造装置10の他の構成は、第1実施形態と同じである。このため、本実施形態によっても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0067】
(第7実施形態)
図23に示すように、本実施形態の磁石製造装置10は、ステージ用第1磁石61とステージ用第2磁石62とを備える。ステージ用第1磁石61およびステージ用第2磁石62は、ステージ面141の上に設置されたステージ用磁石である。図24に示すように、ステージ用第1磁石61は、ステージ面141のうち描画予定である複数のフィラメント24のそれぞれの始点の端面24aに対して対向する位置に配置される。ステージ用第2磁石62は、ステージ面141のうち描画予定である複数のフィラメント24のそれぞれの終点の端面24bに対して対向する位置に配置される。
【0068】
図23に示すように、吐出口132がステージ面141に対して相対的に移動することで、複数のフィラメント24が描画される。具体的には、図24に示すように、フィラメント24としての第1フィラメント241と第2フィラメント242とが、互いに平行に隣り合うように、描画されるようになっている。このとき、描画される第1フィラメント241の始点と第2フィラメント242の始点とが隣り合うとともに、描画される第1フィラメント241の終点と第2フィラメント242の終点とが隣り合うようになっている。始点とは、フィラメント24のうち描画が開始される端部である。終点とは、フィラメント24のうち描画が終了される端部である。図24では、描画予定である第1フィラメント241と第2フィラメント242のそれぞれの始点の端面24aは、N極である。描画予定である第1フィラメント241と第2フィラメント242のそれぞれの終点の端面24bは、S極である。
【0069】
図24に示すように、ステージ用第1磁石61は、S極の面611と、N極の面612とを有する永久磁石である。S極の面611は、ステージ用第1磁石61のうち一方向の一方側に位置する。N極の面612は、ステージ用第1磁石61のうちその一方向の他方側に位置する。ステージ面141において、描画予定である第1フィラメント241と第2フィラメント242のそれぞれの始点の端面24aに対して、ステージ用第1磁石61のS極の面611が対向するように、ステージ用第1磁石61が予め配置される。ステージ用第1磁石61のS極の面611は、ステージ用第1磁石61のうち始点の端面24aの磁極とは異なる磁極の面である。
【0070】
ステージ用第2磁石62は、N極の面621と、S極の面622とを有する永久磁石である。N極の面621は、ステージ用第2磁石62のうち一方向の一方側に位置する。S極の面622は、ステージ用第2磁石62のうちその一方向の他方側に位置する。ステージ面141において、描画予定である第1フィラメント241と第2フィラメント242のそれぞれの終点の端面24bに対して、ステージ用第2磁石62のN極の面621が対向するように、ステージ用第2磁石62が予め配置される。ステージ用第2磁石62のN極の面621は、ステージ用第2磁石62のうち終点の端面24bの磁極とは異なる磁極の面である。
【0071】
本実施形態の磁石製造方法は、第1実施形態と同様に、樹脂材料21の溶融工程と、磁粉22の配向着磁工程と、フィラメント24の配置工程とを含む。樹脂材料21の溶融工程および磁粉22の配向着磁工程は、第1実施形態と同じである。
【0072】
フィラメント24の配置工程では、ステージ面141にステージ用第1磁石61とステージ用第2磁石62とが設置された状態で、ステージ用第1磁石61からステージ用第2磁石62に向かって、複数のフィラメント24が描画される。このとき、複数のフィラメント24のそれぞれは、隣り合うフィラメント241、242が接しながら、互いに平行に、円弧を描くように配置される。隣り合うフィラメント241、242の一例が、第1フィラメント241および第2フィラメント242である。
【0073】
ステージ面141のうち描画の始点の位置に、フィラメント24の始点の端面24aが形成される。ステージ面141のうち描画の終点の位置では、フィラメント24が切断されて、フィラメント24の終点の端面24bが形成される。これにより、複数のフィラメント24のそれぞれは、始点の端面24aと、終点の端面24bとを有する。隣り合うフィラメント241、242のそれぞれの始点の端面24aは隣り合う。隣り合うフィラメント241、242のそれぞれの終点の端面24bは隣り合う。
【0074】
ここで、図25に示すように、本実施形態と異なり、ステージ面141にステージ用第1磁石61とステージ用第2磁石62とが設置されない状態で、ステージ面141に複数のフィラメント24が配置される場合について説明する。ステージ面141に配置される複数のフィラメント24の形状は、本実施形態と同じである。
【0075】
この場合、図26に示すように、複数のフィラメント24のうち隣り合うフィラメント241、242では、各フィラメント24の始点の端面24aから外側に向かう磁束の向きが対向する。図26中の矢印は、磁束を示している。例えば、第1フィラメント241の磁束F1と、第2フィラメント242の磁束F2とは、磁束の向きが対向している。第1フィラメント241の磁束F3と、第2フィラメント242の磁束F4とは、磁束の向きが対向している。このため、隣り合うフィラメント241、242同士が反発する。
【0076】
描画の始点において、樹脂材料が十分に固まる前に、磁粉同士が相互作用すると、隣り合うフィラメント241、242同士の接着が不十分となり、隣り合うフィラメント241、242同士に隙間が生じる。または、隣り合うフィラメント241、242同士が接着しても、磁粉の配向に乱れが生じる。
【0077】
また、図示しないが、描画の終点においても、描画の始点と同様に、隣り合うフィラメント241、242同士が反発することで、隣り合うフィラメント241、242同士の接着不良や、磁粉の配向の乱れが生じる。
【0078】
これに対して、本実施形態によれば、図27に示すように、描画の始点において、各フィラメント24の端面24aから外側に向かう磁束は、ステージ用第1磁石61のS極に引かれるため、互いに平行になる。図27中の矢印は、磁束を示している。この状態が、樹脂材料が固化するまで保持される。このため、隣り合うフィラメント241、242同士の反発を回避することができる。一旦、熱可塑性の樹脂材料が冷却されて固化すると、磁粉の配向は固定される。このため、複数のフィラメント24がステージ用第1磁石61から離れても、磁粉の配向が乱れることはない。
【0079】
また、図示しないが、描画の終点においても、描画の始点と同様に、各フィラメント24の端面24bから外側に向かう磁束は、ステージ用第2磁石62のN極に引かれるため、互いに平行になる。このため、隣り合うフィラメント241、242同士の反発を回避することができる。なお、描画の終点では、一旦、フィラメント24が切れる際に磁粉の配向が乱れる。しかし、端面24bから外側に向かう磁束がステージ用第2磁石62のN極に引かれるため、磁粉が配向された状態に戻すことができ、磁粉の配向を維持することができる。
【0080】
このように、本実施形態によれば、製造後の磁石の磁粉の配向度を上げることができる。なお、磁石製造装置10は、ステージ用第1磁石61とステージ用第2磁石62のうち一方のみを備えていてもよい。また、ステージ用第1磁石61とステージ用第2磁石62とのそれぞれは、永久磁石ではなく、電磁石であってもよい。
【0081】
(第8実施形態)
図28に示すように、本実施形態の磁石製造装置10は、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とを備える。第1軟磁性材料71および第2軟磁性材料72は、ステージ面141の上に設置された軟磁性材料である。軟磁性材料としては、鉄等が挙げられる。図29に示すように、第1軟磁性材料71は、ステージ面141のうち描画予定の複数のフィラメント24のそれぞれの始点の端面24aに対して対向する位置に配置される。第2軟磁性材料72は、ステージ面141のうち描画予定の複数のフィラメント24のそれぞれの終点の端面24bに対して対向する位置に配置される。描画予定の複数のフィラメント24の形状は、第7実施形態と同じである。
【0082】
すなわち、ステージ面141において、描画予定である第1フィラメント241と第2フィラメント242のそれぞれの始点の端面24aに対して対向する位置に、第1軟磁性材料71が予め配置される。ステージ面141において、描画予定である第1フィラメント241と第2フィラメント242のそれぞれの終点の端面24bに対して対向する位置に、第2軟磁性材料72が予め配置される。
【0083】
描画予定の複数のフィラメント24のそれぞれの始点の端面24aは、一方向に並んでいる。第1軟磁性材料71は、複数のフィラメント24のそれぞれの始点の端面24aの並び方向に延びている。複数のフィラメント24のそれぞれの終点の端面24bは、別の一方向に並んでいる。第1軟磁性材料71は、複数のフィラメント24のそれぞれの終点の端面24bの並び方向に延びている。
【0084】
第7実施形態と同様に、本実施形態によれば、図30に示すように、描画の始点において、各フィラメント24の端面24aから外側に向かう磁束は、第1軟磁性材料71に引かれて、互いに平行になる。図30中の矢印は、磁束を示している。この状態が、樹脂材料が固化するまで保持される。このため、隣り合うフィラメント241、242同士の反発を回避することができる。
【0085】
また、図示しないが、描画の終点においても、各フィラメント24の端面24bから外側に向かう磁束は、第2軟磁性材料72に引かれて、互いに平行になる。このため、隣り合うフィラメント241、242同士の反発を回避することができる。描画の終点では、一旦、フィラメント24が切れる際に配向が乱れる。しかし、端面24bから外側に向かう磁束が第2軟磁性材料72に引かれるため、磁粉の配向を維持することができる。
【0086】
なお、磁石製造装置10は、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72のうち一方のみを備えていてもよい。
【0087】
(第9実施形態)
図31に示すように、本実施形態の磁石製造装置10は、第8実施形態の磁石製造装置10と同様に、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とを備える。しかし、第8実施形態の磁石製造装置10と異なり、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とは、L字状に配置されている。第1軟磁性材料71の長手方向の端部と、第2軟磁性材料72の長手方向の端部とは、接している。このように、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とは、複数のフィラメント24のそれぞれの始点の端面24aおよび終点の端面24bから離れた位置で繋がっている。磁石製造装置10の他の構成は、第8実施形態と同じである。本実施形態によっても、第8実施形態と同じ効果が得られる。
【0088】
第8実施形態では、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とが繋がっていない。このため、第8実施形態の第1軟磁性材料71および第2軟磁性材料72によって磁束が引かれる効果は、第7実施形態のステージ用第1磁石61およびステージ用第2磁石62によって磁束が引かれる効果よりも低い。
【0089】
これに対して、本実施形態では、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とが繋がっている。このため、図31に示すように、描画後の複数のフィラメント24と第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とのそれぞれを磁束が通る磁気回路M5が形成される。これにより、第1軟磁性材料71と第2軟磁性材料72とが繋がっていない場合と比較して、複数のフィラメント24の端面24a、24bから磁束が引かれる効果を高めることができる。
【0090】
本発明者は、第1、第7、第9実施形態の磁石製造装置10を用いて、図23に示す形状の磁石を製造し、それぞれの磁石の表面磁束密度をテスラメータによって測定した。その結果を図32に示す。
【0091】
図32中の第1実施形態は、第1実施形態の磁石製造装置10を用いて製造した磁石の表面磁束密度である。第1実施形態の磁石製造装置10では、ステージ面141の上に、磁石と軟磁性材料のどちらも設置されない。図32中の第7実施形態は、第7実施形態の磁石製造装置10を用いて製造した磁石の表面磁束密度である。第7実施形態の磁石製造装置10では、ステージ面141の上に、ステージ用第1、第2磁石61、62が設置される。図32中の第9実施形態は、第9実施形態の磁石製造装置10を用いて製造した磁石の表面磁束密度である。第9実施形態の磁石製造装置10では、ステージ面141の上に、第1、第2軟磁性材料71、72が設置される。
【0092】
第1、第7、第9実施形態の磁石製造装置10を用いた磁石の製造条件は、ステージ面141の上のステージ用第1、第2磁石61、62または第1、第2軟磁性材料71、72の有無を除いて、同じである。磁場印加磁石15は、NdFeB異方性焼結磁石である。混合物23の樹脂材料21は、ポリカプロラクトンである。磁粉22は、異方性のSm-Fe-N系の磁粉である。混合物23の樹脂材料21と磁粉22との比率は、磁粉:樹脂材料=60vol%:40vol%である。
【0093】
図32に示すように、第7、第9実施形態の磁石製造装置10を用いて製造した磁石の表面磁束密度は、第1実施形態の磁石製造装置10を用いて製造した磁石の表面磁束密度よりも大きかった。これにより、ステージ面141の上にステージ用磁石または軟磁性材料を設置することで、製造される磁石の磁束密度を大きくできることが確認された。
【0094】
(他の実施形態)
(1)上記した各実施形態では、ステージ14は移動不可能であり、ノズル13が移動可能に構成されている。これにより、吐出口132がステージ面141に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されている。しかしながら、ノズル13が移動不可能であり、ステージ14が移動可能に構成されることで、吐出口132がステージ面141に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されてもよい。また、ノズル13とステージ14の両方が移動可能に構成されることで、吐出口132がステージ面141に対して三次元の任意方向に相対的に移動可能に構成されてもよい。
【0095】
(2)上記した各実施形態では、磁場印加磁石15、41、51のノズル13側の磁極はN極であり、磁場印加磁石15のノズル13から離れた側の磁極はS極である。しかしながら、これらの磁極が反対であってもよい。
【0096】
(3)上記した各実施形態では、磁場印加磁石15、41、51は、永久磁石であるが、電磁石であってもよい。
【0097】
(4)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0098】
12 ヒータ
13 ノズル
131 内部流路
132 吐出口
14 ステージ
141 ステージ面
15 磁場印加磁石
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