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特許7574775情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/08 20120101AFI20241022BHJP
【FI】
G06Q40/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021171841
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2023061733
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長坂 修
(72)【発明者】
【氏名】大塩 典彦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 孝典
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚哉
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060247(JP,A)
【文献】特開2002-015174(JP,A)
【文献】特開2017-191349(JP,A)
【文献】特開2016-131016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末から送信された第一の画像を受信することと、
前記受信した第一の画像から車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーを検出し、前記ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定することと、
前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記第一の画像に含まれる前記ステッカーの表記に基づいて、前記アップグレードされた機能を特定することと
前記アップグレードされた機能が、安全に関する機能である場合に、車両が有する、安全に関する機能と、当該車両の保険料の割引額とを関連付けたデータに応じて、前記アップグレードされた安全に関する機能に対応する前記割引額を決定することと、
前記決定した割引額に応じて、前記第一の車両に対応する保険料を算出することと、
を実行する制御部を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ユーザ端末に対して、前記ステッカーが貼付される所定の場所の撮影を指示するデータを送信する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の場所の撮影を指示するデータは、前記所定の場所を案内するデータを含む、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一の画像に含まれる前記ステッカーに記載されたコードをデコードすることで、前記アップグレードされた機能を特定する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
ユーザ端末から送信された第一の画像を受信することと、
前記受信した第一の画像から車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーを検出し、前記ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定することと、
記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、車両のアップグレード履歴を記憶するサーバ装置に対して問い合わせを行うことで、前記アップグレードされた機能を特定することと、
前記アップグレードされた機能が、安全に関する機能である場合に、車両が有する、安全に関する機能と、当該車両の保険料の割引額とを関連付けたデータに応じて、前記アップグレードされた安全に関する機能に対応する前記割引額を決定することと、
前記決定した割引額に応じて、前記第一の車両に対応する保険料を算出することと、
を実行する制御部を有する、情報処理装置。
【請求項6】
ユーザ端末から送信された第一の画像を受信することと、
前記受信した第一の画像から車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーを検出し、前記ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定することと、
記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記ユーザ端末に対して、前記アップグレードに関する証明書を撮影して得られた画像である第二の画像の送信を求め、前記第二の画像に基づいて、前記アップグレードされた機能を特定することと
前記アップグレードされた機能が、安全に関する機能である場合に、車両が有する、安全に関する機能と、当該車両の保険料の割引額とを関連付けたデータに応じて、前記アップグレードされた安全に関する機能に対応する前記割引額を決定することと、
前記決定した割引額に応じて、前記第一の車両に対応する保険料を算出することと、
を実行する制御部を有する、情報処理装置。
【請求項7】
前記第二の画像は、前記証明書と前記第一の車両の車台番号の双方を含む画像である、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ユーザ端末から送信された第一の画像を受信するステップと、
前記受信した第一の画像から車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーを検出し、前記ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定するステップと、
前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記第一の画像に含まれる前記ステッカーの表記に基づいて、前記アップグレードされた機能を特定するステップと、
前記アップグレードされた機能が、安全に関する機能である場合に、車両が有する、安全に関する機能と、当該車両の保険料の割引額とを関連付けたデータに応じて、前記アップグレードされた安全に関する機能に対応する前記割引額を決定するステップと、
前記決定した割引額に応じて、前記第一の車両に対応する保険料を算出するステップと、
を含む、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項9】
前記ユーザ端末に対して、前記ステッカーが貼付される所定の場所の撮影を指示するデータを送信するステップをさらに含む、
請求項に記載のコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項10】
前記所定の場所の撮影を指示するデータは、前記所定の場所を案内するデータを含む、
請求項に記載のコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項11】
ユーザ端末から送信された第一の画像を受信するステップと、
前記受信した第一の画像から車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーを検出し、前記ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定するステップと、
前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、車両のアップグレード履歴を記憶するサーバ装置に対して問い合わせを行うことで、前記アップグレードされた機能を特定するステップと
前記アップグレードされた機能が、安全に関する機能である場合に、車両が有する、安全に関する機能と、当該車両の保険料の割引額とを関連付けたデータに応じて、前記アップグレードされた安全に関する機能に対応する前記割引額を決定するステップと、
前記決定した割引額に応じて、前記第一の車両に対応する保険料を算出するステップと、
を含む、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項12】
ユーザ端末から送信された第一の画像を受信するステップと、
前記受信した第一の画像から車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーを検出し、前記ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定するステップと、
前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記ユーザ端末に対して、前記アップグレードに関する証明書を撮影して得られた画像である第二の画像の送信を求め、前記第二の画像に基づいて、前記アップグレードされた機能を特定するステップ
前記アップグレードされた機能が、安全に関する機能である場合に、車両が有する、安全に関する機能と、当該車両の保険料の割引額とを関連付けたデータに応じて、前記アップグレードされた安全に関する機能に対応する前記割引額を決定するステップと、
前記決定した割引額に応じて、前記第一の車両に対応する保険料を算出するステップと、
を含む、コンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項13】
前記第二の画像は、前記証明書と前記第一の車両の車台番号の双方を含む画像である、
請求項12に記載のコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項14】
請求項から13のいずれか1項に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車保険に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に対する保険料は、当該自動車についての使用状況等に基づいて変わることが知られている。これに関連して、特許文献1には、自動車の維持管理状態を考慮に入れて適切な自動車保険料を算出するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-259708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、車両に対する適切な保険料の算出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の態様は、車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定することと、前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記アップグレードの内容を特定することと、前記アップグレードされた機能が、安全に関するものである場合に、前記アップグレードの内容を考慮して、前記第一の車両に対応する保険料を算出することと、を実行する制御部を有する、情報処理装置である。
【0006】
また、本開示の第二の態様は、車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定するステップと、前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記アップグレードの内容を特定するステップと、前記アップグレードされた機能が、安全に関するものである場合に、前記アップグレードの内容を考慮して、前記第一の車両に対応する保険料を算出するステップと、を含む、情報処理方法である。
【0007】
また、本開示の他の態様は、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両に対する適切な保険料の算出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】保険料算出システムの概要を説明する図。
図2】車体に貼付されるステッカーの一例を示した図。
図3】ステッカーを貼付する位置を説明する図。
図4】ユーザ端末100の構成要素を示した図。
図5】算出サーバ200の構成要素を示した図。
図6】算出サーバに記憶されるユーザデータの例。
図7】車両管理サーバ300の構成要素を示した図。
図8】車両管理サーバに記憶される整備履歴データの例。
図9】システムの各構成要素が実行する処理を示したシーケンス図。
図10A】対象車両の情報を入力する画面の例。
図10B】対象車両の情報を入力する画面の例。
図11】ステッカーの貼付場所を案内する画面の例。
図12】ステップS17で実行される処理のフローチャート。
図13】保険料の割引額を定義するテーブルの例。
図14】第二の実施形態におけるアップグレード証明書の例。
図15】第二の実施形態において各構成要素が実行する処理を示したシーケンス図。
図16】アップグレード証明書の貼付場所を案内する画面の例。
図17】第三の実施形態におけるステッカーの例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
車両の品質や機能等を事後的に向上させる技術がある。例えば、シートを布製から革製のものに交換する、ステアリングホイールをヒーターが内蔵されたものに交換するといったことができる。また、車載コンピュータのソフトウェアをアップデートすることで、新車販売時に装着されていなかった機能(安全に関する機能や、走行支援機能など)を追加することができる。
本開示では、車両部品の追加、車両部品の交換(更新)、ソフトウェアアップデート等によって、車両をより高機能または高品質なものにすることを「(車両の)アップグレード」と称する。
【0011】
車両のアップグレードを行うことで、車両の安全性が向上する場合がある。例えば、電子制御ユニット(ECU)のソフトウェアを更新することで、歩行者や自転車等を検知する機能、衝突被害を軽減する機能などが追加される(または、高性能化する)場合がある。また、走行を支援する機能(アダプティブクルーズコントロール機能、車線維持支援機能など)が追加される場合もある。走行支援機能を追加することで、運転者の疲労が軽減され、結果的に安全性が向上する場合もある。
【0012】
ところで、自動車保険の保険料は、車両の安全性能によって変わりうることが知られている。例えば、より高い精度で歩行者や自転車を検知できる車両については、そうでない車両と比較して、人身事故被害に係る保険料を低く抑えることができる。
従って、自動車保険の見積もりを行う際は、車両の安全性能に基づいて保険料の算出を行うことが好ましい。しかし、安全に係る機能が事後的に追加されている場合、保険料を正しく算出できないケースがある。例えば、ECUが事後的に更新されており、安全に関する各種の機能が追加されている場合であっても、車両のユーザに、どのような機能が追加されているかを正確に申告させることは難しい。すなわち、ユーザからの申告のみでは、適切な保険料を決定することが難しいという課題がある。
本開示に係る情報処理装置は、かかる問題を解決する。
【0013】
本開示の第一の態様に係る情報処理装置は、車両が有する機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定することと、前記ステッカーが前記第一の車両に貼付されている場合に、前記アップグレードの内容を特定することと、前記アップグレードされた機能が、安全に関するものである場合に、前記アップグレードの内容を考慮して、前記第一の車両に対応する保険料を算出することと、を実行する制御部を有することを特徴とする。
【0014】
本開示におけるステッカーとは、車両の品質または機能が事後的にアップグレードされている旨を表示するラベルである。ステッカーは、いずれかの車両部品が、より高品質、または高機能な品に交換されていることを示すものであってもよいし、(車両の高機能化
を図るための)所定の車両部品が事後的に追加されていることを示すものであってもよい。
ステッカーは、例えば、車体のいずれかの部位(典型的にはセンターピラー)に貼付される。ステッカーは、例えば、車両ごとに一枚のみ貼付される。すなわち、ステッカーが貼付されている車両は、事後的に何らかのアップグレードが実施された車両であることを意味する。なお、ステッカーは、ラミネート加工された紙片であってもよいし、金属製のプレート等であってもよい。
【0015】
情報処理装置は、当該ステッカーが第一の車両に貼付されているか否かを判定する。判定は、例えば、ユーザが行った入力の内容に基づいて行ってもよいし、第一の車両(例えば、車体の一部)を撮像して得られた画像に基づいて行ってもよい。
ステッカーが第一の車両に貼付されている場合、制御部は、アップグレードされた機能が、安全に関するものであるか否かを判定する。安全に関する機能として、例えば、歩行者や自転車をセンシングする機能など、事故を未然に防止するための機能が例示できる。
これにより、安全に関する機能が事後的に追加されているか否かを考慮して保険料を算出することが可能になる。
【0016】
なお、ステッカーの外観から、アップグレードの内容を特定できる場合、当該ステッカーを撮像して得られた画像に基づいて、アップグレードの内容を特定してもよい。また、ステッカーの外観からは、アップグレードの内容が特定できない場合、アップグレードの内容を特定するためのさらなる処理を実行してもよい。例えば、制御部は、車両の整備履歴が記憶されたデータベースに対して問い合わせを行ってもよいし、車両の整備記録簿をユーザに参照させ、ユーザを介して、アップグレードに関する詳細な情報を取得してもよい。
【0017】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態に記載されているハードウェア構成、モジュール構成、機能構成等は、特に記載がない限りは開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る保険料算出システムの概要について、図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る保険料算出システムは、車両のユーザに関連付いたユーザ端末100と、保険料の算出を行う算出サーバ200と、車両の整備記録を管理する車両管理サーバ300と、を含んで構成される。
【0019】
ユーザ端末100は、車両に関連付いたユーザが利用する情報処理装置である。車両に関連付いたユーザとして、当該車両のオーナーなどが例示できる。ユーザ端末100は、エンドユーザ(例えば、車両のオーナー)が所有する端末であってもよいし、車両メーカーの営業拠点、保険代理店などに設置された端末であってもよい。
【0020】
算出サーバ200は、ユーザ端末100から取得した情報に基づいて、所与の車両について自動車保険の保険料をオンラインで算出する装置である。算出サーバ200は、車両のモデル、年式、運転者の年齢、年間走行距離といった一般的な情報のほか、車両のアップグレード履歴などを収集し、これらの情報に基づいて保険料の算出を行う。
【0021】
車両管理サーバ300は、車両に対して行われた整備作業等の履歴(以下、履歴情報)をデータベースに記憶するサーバ装置である。履歴情報には、例えば、修理に関する履歴、アップグレードに関する履歴、消耗品の交換に関する履歴などが含まれる。このうち、アップグレードに関する履歴を、アップグレード履歴と称する。
車両管理サーバ300は、算出サーバ200から受信したリクエストに基づいて、対象
車両について、アップグレード履歴を提供する。
【0022】
ここで、算出サーバ200が収集する情報について説明する。
算出サーバ200は、ユーザ端末100を介して、車両のモデル、年式、運転者の年齢、年間走行距離といった、一般的な情報を収集する。これらの情報は、比較的容易に取得することができる。
一方、「対象車両に、アップグレードされた車両部品が装着されているか」、「複数の車両部品のうちのどれが、どのようなグレードのものにアップグレードされているか」といった情報については、ユーザが正確に把握していない場合が多い。すなわち、「安全に関する機能が事後的に追加(または更新)されているか」を、算出サーバ200が把握することが難しい。
そこで、本実施形態では、算出サーバ200が、まず、ユーザとインタラクションを行うことで、アップグレードの有無を判定し、続けて、車両管理サーバ300と通信を行うことで、当該アップグレードに関する詳細な情報を収集する。これにより算出サーバ200は、対象車両が有している機能(安全に関する機能)について、正確な情報を把握することが可能になる。
【0023】
本実施形態では、算出サーバ200は、対象車両に貼付されたステッカーをユーザに確認させることで、当該対象車両についてアップグレードが実施されているか否かを判定する。
【0024】
ここで、本開示におけるステッカーについて説明する。本開示におけるステッカーとは、車両に対して事後的にアップグレードを実施したことを証明するために、当該車両に貼付されるラベルである。アップグレードは、所定の車両部品を交換することで行ってもよいし、車両を高機能化するための車両部品を追加することで行ってもよい。
対象の車両部品として、例えば、電子制御ユニット(ECU)、車載コンピュータ、通信装置、インフォテイメント端末、空調装置、シート、ステアリングホイール、ドア、サンルーフ、ミラー、その他の電装品などが例示できる。
【0025】
図2は、ステッカーの一例を示した図である。ステッカーには、対象車両が事後的にアップグレードされている旨、または、アップグレードに係る車両部品が装着されている旨の文言等が記載される。車両に対して何らかのアップグレードが実施されていることを判別できれば、ステッカーに記載される文言は特定のものに限定されない。
【0026】
ステッカーは、車両の、所定の箇所に貼付される。図3は、ステッカーを貼付する位置を説明する図である。図3は、車両が有する車体フレームを、右側前方から見た図である。図の下方がサイドシルであり、中央がセンターピラー(Bピラーとも呼ばれる)である。
本例では、ステッカーを、センターピラーに配置された所定の領域に貼付するものとする。貼付箇所は、車台番号などが記載されたコーションプレートの近傍であってもよい。斯様な箇所にステッカーを配置することで、ドアを開放することで容易にアップグレードの有無が確認できるようになる。
【0027】
算出サーバ200は、対象車両(本例ではセンターピラー)を撮影して得られた画像に基づいて、当該ステッカーの貼付有無を判定する。また、算出サーバ200は、対象車両にステッカーが貼付されている場合に、車両管理サーバ300に対して問い合わせを行い、対象車両に対応するアップグレード履歴を取得する。これにより、対象車両が、現在どのような機能を有しているかを正確に把握することが可能になる。
【0028】
ユーザ端末100について詳しく説明する。
ユーザ端末100は、車両に関連付いたユーザが利用するコンピュータである。ユーザは、ユーザ端末100を介して算出サーバ200にアクセスし、所与の車両について保険料の算出を依頼することができる。ユーザ端末100は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、個人情報端末等である。
【0029】
図4は、ユーザ端末100のシステム構成を示した図である。
ユーザ端末100は、制御部101、記憶部102、通信部103、入出力部104、およびカメラ105を含んで構成される。
【0030】
制御部101は、ユーザ端末100が行う制御を司る演算装置である。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置によって実現することができ
る。
制御部101は、算出サーバ200にアクセスして、算出サーバ200とインタラクションを行う機能を実行する。当該機能は、ユーザ端末100で動作するウェブブラウザや、専用のアプリケーションソフトウェアによって実現されてもよい。
本実施形態では、制御部101は、算出サーバ200と対話を行うためのアプリケーションソフトウェアを実行可能に構成される。
【0031】
記憶部102は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部101によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部101において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。補助記憶装置には、制御部101で実行されるプログラムをアプリケーションとしてパッケージ化したものを記憶してもよい。また、これらのアプリケーションを実行するためのオペレーティングシステムを記憶してもよい。補助記憶装置に記憶されたプログラムが主記憶装置にロードされ、制御部101によって実行されることで、以降に説明する処理が行われる。
【0032】
主記憶装置は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含んでもよい。また、補助記憶装置は、EPROM(Erasable Programmable ROM)やハード
ディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)を含んでもよい。さらに、補助記憶装置
は、リムーバブルメディア、すなわち可搬記録媒体を含んでもよい。
【0033】
通信部103は、ユーザ端末100をネットワークに接続するための無線通信インタフェースである。通信部103は、例えば、無線LANや3G、LTE、5G等の移動体通信サービスを介して、算出サーバ200と通信可能に構成される。
【0034】
入出力部104は、ユーザが行った入力操作を受け付け、ユーザに対して情報を提示するユニットである。本実施形態では一つのタッチパネルディスプレイからなる。すなわち、液晶ディスプレイとその制御手段、タッチパネルとその制御手段から構成される。
カメラ105は、画像を取得するための画像センサを含む光学ユニットである。
【0035】
次に、算出サーバ200について説明する。
図5は、本実施形態に係る保険料算出システムに含まれる、算出サーバ200の構成要素を詳細に示した図である。
【0036】
算出サーバ200は、ユーザ端末100から収集した情報に基づいて、車両に対する自動車保険料を算出するサーバ装置である。算出サーバ200は、保険料の算出を行うための基準となるデータ(基準データ)を有しており、ユーザ端末100から収集した情報と、基準データを照らし合わせることで、保険料の算出を行う。
また、算出サーバ200は、前述したように、アップグレードの内容を特定するための
処理を行い、その結果を併用して、保険料を算出する。具体的な処理については後述する。
【0037】
算出サーバ200は、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、算出サーバ200は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0038】
本実施形態では、算出サーバ200は、ユーザ端末100とのインタラクションを行うためのソフトウェアサーバを実行可能に構成されてもよい。この場合、例えば、ユーザ端末100が、ブラウザや、専用のアプリケーションソフトウェアを用いてサービスにアクセスすることで、情報の入出力を行うことができる。
【0039】
算出サーバ200は、制御部201、記憶部202、および、通信部203を有して構成される。
制御部201は、算出サーバ200が行う制御を司る演算装置である。制御部201は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部201は、収集部2011および算出部2012の二つの機能モジュールを有して構成される。各機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0040】
収集部2011は、ユーザ端末100とインタラクションを行うことで、保険料を算出するためのデータを収集する。収集部2011は、ユーザ端末100から、以下の二種類のデータを取得する。
(1)車両および運転者についての一般的な情報
例えば、車両のモデル、年式、車台番号、年間走行距離、運転者の年齢といった、保険契約を行う際に必要となる一般的な情報である。これらの情報を以降、「基本情報」と称する。
(2)事後的なアップグレードの有無を判定するための画像
例えば、前述したステッカーが貼付される場所を撮影して得られた画像である。収集部2011は、斯様な画像に基づいて、対象車両について、事後的なアップグレードが実施されているか否かを判定する。当該画像を以降、「第一画像」と称する。
【0041】
さらに、収集部2011は、対象車両について、事後的なアップグレードが実施されていると判定した場合に、車両管理サーバ300に対して問い合わせを行い、アップグレード履歴を取得する。収集部2011は、アップグレード履歴を参照することで、対象車両について、過去にどのようなアップグレードが実施されたかを知ることができる。
アップグレードの詳細に係る情報(例えば、アップグレードによってどのような機能が追加されたか、安全性がどの程度向上したかといった情報)を以降、「アップグレード情報」と称する。
【0042】
算出部2012は、収集部2011が収集した情報に基づいて、対象車両に対する保険料の算出を行う。
対象車両について、アップグレードが実施されていない場合、算出部2012は、基本情報と、基準データに基づいて、保険料の算出を行う。対象車両について、アップグレー
ドが実施されている場合、算出部2012は、基本情報、アップグレード情報、および、基準データに基づいて、保険料の算出を行う。具体的には、アップグレードに係る機能が、車両の安全性を向上させるものである場合、アップグレードの内容に応じて、保険料を割り引く処理を行う。
【0043】
記憶部202は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部201によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部201において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0044】
また、記憶部202は、基準データ202Aおよびユーザデータ202Bを記憶する。
基準データ202Aは、保険料の算出基準が記録されたデータである。保険料の算出基準として、例えば、車両名、グレード、年式、年間走行距離、運転者の年齢、安全に関する機能(または装置)の有無、種類、性能などが挙げられる。基準データ202Aは、データベースであってもよいし、機械学習モデル等であってもよい。基準データ202Aは、自動車保険市場の状況に基づいて随時アップデートされる。
【0045】
本実施形態では、対象車両が、安全に関する機能(または装置)を有している場合において、そうでない場合と比較して保険料が低廉になるように基準が設定されている。安全に関する機能(装置)として、例えば、衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、車間距離制御装置、車線逸脱警報、車線維持支援装置、後方接近車両検知装置などが例示できる。さらに、当該機能(または装置)がより高性能なものである場合において、より保険料が低廉になるように基準が設定されている。例えば、保険料の割引額は、安全に係る車両性能(例えば、歩行者や自転車の検知性能、検知範囲の広さ、検知対象の多さ、悪天候に対する耐性など)が高いほど大きくなる。
【0046】
ユーザデータ202Bは、保険料の算出対象である車両(対象車両)、および、対象車両の運転者に関するデータである。ユーザデータ202Bには、前述した、基本情報、第一画像、およびアップグレード情報が含まれる。
図6は、ユーザデータ202Bの一例である。ユーザデータ202Bは、収集部2011が、ユーザ端末100から基本情報および第一画像を受信した場合に更新される。また、ユーザデータ202Bは、収集部2011が、アップグレード情報を取得した場合に更新される。
【0047】
通信部203は、算出サーバ200をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信部203は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信インタフェースを含んで構成される。
【0048】
次に、車両管理サーバ300について説明する。図7は、本実施形態に係る保険料算出システムに含まれる、車両管理サーバ300の構成要素を詳細に示した図である。
車両管理サーバ300は、複数の車両の履歴情報を記憶し、算出サーバ200に対して提供するサーバ装置である。車両管理サーバ300は、所与の車両について、履歴情報、すなわち、修理に関する履歴、アップグレードに関する履歴、消耗品の交換に関する履歴を記憶するデータベースを有しており、必要に応じてデータを更新および提供することができる。
【0049】
車両管理サーバ300は、算出サーバ200と同様に、汎用のコンピュータにより構成することができる。すなわち、車両管理サーバ300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。
【0050】
車両管理サーバ300は、制御部301、記憶部302、および通信部303を有して構成される。
制御部301は、車両管理サーバ300が行う制御を司る演算装置である。制御部301は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部301は、機能モジュールとして、情報提供部3011を有して構成される。当該機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0051】
情報提供部3011は、算出サーバ200からの要求に応答して、履歴情報の提供を行う。本実施形態では、情報提供部3011は、算出サーバ200から受信した車両の識別子に基づいて、後述するデータベースの検索を行い、得られた履歴情報を算出サーバ200に提供する。
【0052】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部301によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部301において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0053】
また、記憶部302は、整備履歴データ302Aを記憶する。
整備履歴データ302Aは、管理下にある複数の車両のそれぞれについて行われた整備作業の履歴(整備履歴)を記憶するデータベースである。整備履歴データ302Aには、以下の三種類のデータが含まれる。
(1)修理に関する履歴
車両が有する車両部品、または、車両コンポーネントを修理または交換した履歴である。
(2)消耗品の交換に関する履歴
車両が有する消耗品を交換または補充した履歴である。
(3)アップグレード履歴
車両が有する車両部品、または、車両コンポーネントをアップグレード(例えば、追加、交換、ソフトウェアアップデート等)した履歴である。
【0054】
図8に、整備履歴データ302Aの例を示す。本例では、整備履歴データ302Aは、車台番号、日時、整備種別、対象、詳細の各フィールドを有して構成されるテーブルである。
車台番号フィールドには、対象車両の車台番号を表すデータが格納される。日時フィールドには、作業が実施された日時を表すデータが格納される。整備種別フィールドには、整備作業の種別(カテゴリ)を表すデータが格納される。本例では、カテゴリは、「修理」「消耗品交換」「アップグレード」の三種類である。
【0055】
対象フィールドには、作業対象の車両部品、または、車両コンポーネントを特定するデータが格納される。例えば、所定の電子制御ユニット(ECU)を交換、ないし、ソフトウェアアップデートを行った場合、対象フィールドには、当該ECUを特定するデータが格納される。また、修理を行った場合、対象フィールドには、修理対象である車両部品または車両コンポーネント(例えば、ドアパネル)を特定するデータが格納される。また、消耗品の補充・交換を行った場合、対象フィールドには、補充・交換された消耗品のカテゴリ(例えば、エンジンオイル)を表すデータが格納される。
【0056】
詳細フィールドには、整備作業の詳細に関するデータが格納される。例えば、整備作業の内容が「アップグレード」であった場合、詳細フィールドには、対象の車両部品をどの
ようなグレードの品に交換したか、どのような機能が新たに付加されたか、性能がどの程度向上したか、等を表すデータが格納される。また、整備作業の内容が「修理」であった場合、詳細フィールドには、対象の車両部品(または車両コンポーネント)に対してどのような修理作業が行われたかを表すデータが格納される。また、整備作業の内容が「消耗品交換」であった場合、詳細フィールドには、どのようなグレードの消耗品を補充・交換したか等を表すデータが格納される。
【0057】
通信部303は、車両管理サーバ300をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信部303は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信インタフェースを含んで構成される。
【0058】
なお、図4図5、および図7に示した構成は一例であり、図示した機能の全部または一部は、専用に設計された回路を用いて実行されてもよい。また、図示した以外の、主記憶装置および補助記憶装置の組み合わせによってプログラムの記憶ないし実行を行ってもよい。
【0059】
次に、保険料算出システムに含まれる各装置が実行する処理の詳細を説明する。
図9は、ユーザ端末100、算出サーバ200、および車両管理サーバ300が実行する処理を示したシーケンス図である。
【0060】
図示した処理は、ユーザ端末100が、算出サーバ200に対して、保険料の算出を開始するリクエスト(開始リクエスト)を送信した場合に開始される。
算出サーバ200が、ユーザ端末100にレスポンスを送信すると、ユーザ端末100は、基本情報を取得するステップ(S11)を実行する。
【0061】
ステップS11では、ユーザ端末100が、基本情報の入力を受け付ける。本ステップでは、ユーザ端末100が、所定のユーザインタフェース画面を介して、ユーザに、対象車両、および、運転者に関する基本情報を入力させる。図10Aは、対象車両についての情報を入力させるユーザインタフェース画面の例である。図10Bは、運転者についての情報を入力させるユーザインタフェース画面の例である。
なお、本ステップでは、例示した情報のほか、保険契約の内容に関する入力を受け付けてもよい。例えば、保障の対象、保障額、付帯サービスの有無などに関する情報を本ステップで入力させてもよい。
入力された基本情報は、算出サーバ200(収集部2011)へ送信される。収集部2011は、受信した基本情報を、ユーザデータ202Bに格納する。
【0062】
ステップS12では、算出サーバ200(収集部2011)が、対象車両について、ステッカーが貼付されている箇所を特定し、当該箇所の撮影を指示するデータを生成する。ステッカーの貼付箇所は、予め記憶部202に記憶されていてもよい。なお、ステッカーの貼付箇所が車両によって異なる場合、収集部2011が、基本情報に基づいて、対象車両の車両モデルを特定し、当該車両モデルに基づいて貼付箇所を特定してもよい。撮影を指示するデータは、例えば、イラストや文章を含んでもよい。
撮影を指示するデータは、ユーザ端末100に送信され、画面を介して出力される。図11は、撮影を指示する画面の例である。
【0063】
ステップS13では、ユーザ端末100が、カメラ105を介して、指示された箇所に対応する画像を取得し、得られた画像を、第一画像として算出サーバ200へ送信する。なお、ステッカーが貼付されていない車両が対象である場合、第一画像にステッカーが含まれない場合もある。
収集部2011は、受信した第一画像を、ユーザデータ202Bに格納する。
【0064】
ステップS14では、収集部2011が、第一画像にステッカーが含まれているか否かを検出する。ステッカーの検出は、パターンマッチング等の既知の技術によって行うことができる。
ここで、第一画像からステッカーが検出されなかった場合(ステップS15-No)、対象車両についてアップグレードは実施されていないと判定される。この場合、処理はステップS17へ遷移する。第一画像からステッカーが検出された場合(ステップS15-Yes)、対象車両についてアップグレードが実施されていると判定される。この場合、処理はステップS16へ遷移する。
【0065】
ステップS16では、算出サーバ200が、車両管理サーバ300に対して問い合わせを行い、対象車両についてアップグレード履歴を取得する。本ステップでは、算出サーバ200が、対象車両の識別子(例えば、車台番号)をキーとして、整備履歴データ302Aを検索するリクエストを発行し、車両管理サーバ300が、これに応答して、整備履歴データ302Aの検索を行う。なお、検索は、整備種別が「アップグレード」であるレコードのみを対象として行われる。検索の結果得られたレコードは、算出サーバ200へ送信される。算出サーバ200(収集部2011)は、当該情報に基づいてアップグレード情報を生成し、ユーザデータ202Bに格納する。アップグレード情報には、車両に対して過去に実施されたアップグレードの内容を特定する情報が含まれる。例えば、予防安全性能を向上させるアップグレードが実施された場合、アップグレード情報には、当該予防安全性能に関する詳細な情報などが含まれる。
【0066】
ステップS17では、算出部2012が、ユーザデータ202Bに格納されたデータ、すなわち、基本情報、または、基本情報とアップグレード情報の双方に基づいて、対象車両に対応する保険料を算出する。図12は、ステップS17において算出部2012が実行する処理のフローチャートである。
まず、ステップS171において、基本となる保険料(基本保険料)を算出する。基本保険料は、事後的なアップグレードを考慮しない場合における保険料である。基本保険料は、基本情報および基準データ202Aに基づいて、既知の方法で算出することができる。
【0067】
次に、ステップS172で、安全に関するアップグレードの有無を判定する。本ステップでは、アップグレード情報に基づいて、対象車両に対して追加または更新された機能が、安全に関するものであるか否かを判定する。
安全に関するアップグレードがなされていると判定された場合(ステップS173-Yes)、処理はステップS174へ遷移する。安全に関するアップグレードがなされていないと判定された場合(ステップS173-No)、ステップS17の処理は終了する。
【0068】
ステップS174では、アップグレードの内容に基づいて、保険料の割引額を決定する。保険料の割引額は、車両が有する、安全に関する機能と、割引額とを関連付けたデータに基づいて決定してもよい。
図13は、安全に関する機能と、割引額とを関連付けたデータの例である。アップグレードによって更新された機能に基づいて割引額を求めることができれば、どのようなデータを利用してもよい。なお、図示した例では、機能の有無ごとに割引額を定義したが、具体的な性能と割引額とを関連付けてもよい。
なお、割引額は、金額で表されてもよいし、割引率(パーセンテージ)で表されてもよい。斯様なデータは、基準データ202Aに記憶されていてもよい。
算出の結果得られた保険料は、ユーザ端末100へ送信され、ユーザに提示される。
【0069】
以上説明したように、第一の実施形態では、保険料の算出を依頼するユーザが、対象車
両に貼付されているステッカーの画像を、ユーザ端末100を用いて撮影し、算出サーバ200に送信する。また、算出サーバ200が、当該画像を利用して、対象車両について行われたアップグレードの詳細に関する情報を取得する。かかる構成によると、ユーザが、車両に関する知識を有していなくても、安全に関するアップグレードが行われているか否かを、算出サーバ200に認識させることが可能になる。
【0070】
なお、本実施形態では、第一画像に基づいて、ステッカーの貼付有無を算出サーバ200が判定したが、ステッカーの貼付有無は、ユーザに入力させてもよい。
ユーザは、例えば、図11の符号1101で示したようなボタンを押下することで、ステッカーの貼付有無を申告することができる。この場合、ユーザ端末100は、第一画像のかわりに、ステッカーの貼付有無を表すデータを算出サーバ200に送信してもよい。
【0071】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、算出サーバ200が、車両管理サーバ300に問い合わせを行うことでアップグレード情報を取得した。これに対し、第二の実施形態は、算出サーバ200が、ユーザに対して、アップグレード情報の収集を指示する実施形態である。
なお、第二の実施形態に係る保険料算出システムには、第一の実施形態で説明した車両管理サーバ300は含まれない。
【0072】
前述したように、車体に貼付されるステッカーは、車両について何らかのアップグレードが事後的に行われた旨を表示するものである。
一方、車両に対応するメンテナンスノート(整備記録簿)等には、アップグレードに関する詳細な情報が記録されている場合がある。例えば、アップグレードを実施するごとに、その内容を記した証明書(以下、アップグレード証明書)を発行し、メンテナンスノート等に貼付することが考えられる。図14は、アップグレード証明書を貼付するメンテナンスノートの一例である。図示したように、アップグレード証明書は、アップグレードを実施するごとに一枚ずつ発行される。
【0073】
第二の実施形態では、算出サーバ200が、第一画像からステッカーを検出した場合に、ユーザに対して、アップグレード証明書の撮影を指示する。算出サーバ200は、例えば、メンテナンスノートの所定のページを開いてアップグレード証明書を撮影する旨をユーザに対して指示する。アップグレード証明書を撮影して得られた画像を、第二画像と称する。
また、算出サーバ200は、得られた第二画像から検出したアップグレード証明書に基づいて、アップグレード情報を生成する。
【0074】
図15は、第二の実施形態において、ユーザ端末100および算出サーバ200が実行する処理を示したシーケンス図である。ステップS11~S15の処理については、第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。ここでは、ステップS15において肯定判定となった場合(第一画像にステッカーが含まれていると判定された場合)の処理を説明する。
【0075】
まず、ステップS21で、収集部2011が、アップグレード証明書が貼付されている箇所を特定し、当該箇所の撮影を指示するデータを生成する。アップグレード証明書の貼付箇所は、例えば、車両のメンテナンスノート(整備記録簿)の所定のページであってもよい。アップグレード証明書の貼付箇所に関するデータ(例えば、ページ番号)は、記憶部202に記憶されていてもよい。なお、アップグレード証明書の貼付箇所が車両によって異なる場合、収集部2011は、基本情報に基づいて車両モデルを特定し、当該車両モデルに基づいて貼付箇所を特定してもよい。
撮影を指示するデータは、ユーザ端末100に送信され、画面を介して出力される。図
16は、撮影を指示する画面の例である。
【0076】
ステップS22では、ユーザ端末100が、カメラ105を介して、指示された箇所に対応する画像を取得し、得られた画像を、第二画像として算出サーバ200へ送信する。収集部2011は、受信した第二画像を、ユーザデータ202Bに格納する。
なお、本例では、メンテナンスノートの特定のページに複数のアップグレード証明書が貼付されている例を挙げたが、アップグレード証明書は、複数のページに分かれて貼付されていてもよい。また、アップグレード証明書は、貼付されていなくてもよい。
この場合、ユーザ端末100は、複数枚のアップグレード証明書をそれぞれ撮影して得られた複数の画像を第二画像として算出サーバ200に送信してもよい。
【0077】
ステップS23では、収集部2011が、第二画像から一つ以上のアップグレード証明書を検出し、各証明書に対応するアップグレードの内容を特定する。アップグレードの内容は、例えば、アップグレード証明書に記載されている文字を認識することで特定してもよい。なお、アップグレード証明書には、アップグレードの内容を特定するためのコードが印字されていてもよい。例えば、アップグレードの内容についての情報を示す文字列を二次元コード化したものをアップグレード証明書に印字してもよい。この場合、収集部2011が、二次元コードをデコードすることで、アップグレードの内容を特定することができる。
収集部2011は、特定した内容に基づいて、アップグレード情報を生成し、ユーザデータ202Bに記憶させる。
ステップS17で行う処理については、第一の実施形態と同様である。
【0078】
以上説明したように、第二の実施形態では、算出サーバ200が、車体に貼付されたステッカーを検出した場合に、ユーザにアップグレード証明書を撮影させるための指示を生成し、アップグレード証明書を含む第二画像を取得する。かかる形態によると、ユーザは、指示に従って撮影を行うだけで、アップグレードに関する情報を算出サーバ200に提供することが可能になる。
【0079】
(第三の実施形態)
第二の実施形態では、車両に貼付されるステッカーは一種類であるものとしたが、車両に、アップグレードの具体的な内容を記載した複数枚のステッカーを貼付してもよい。すなわち、第二の実施形態におけるアップグレード証明書が、車体に貼付されていてもよい。
【0080】
第三の実施形態では、車両に対して複数回のアップグレードが行われた場合、複数枚のステッカーが車両に貼付される。各ステッカーには、アップグレードの内容を特定するための文字列やコード等が記載されていてもよい。図17は、第三の実施形態に係るステッカーの一例である。このようなステッカーは、車体の所定の箇所(例えば、センターピラー)に並べて貼付されていてもよい。
【0081】
第三の実施形態では、斯様なステッカーを撮影して得られた画像が第一画像となる。
また、第三の実施形態では、算出サーバ200は、第一画像に対して、ステップS23で説明したような処理を実行することで、アップグレード情報を取得する。すなわち、図15における、ステップS14~S22の処理を省略することができる。第三の実施形態では、第二画像の撮影および送信は行われない。
【0082】
以上説明したように、車両に対してアップグレードを実施するごとに、その内容を記したステッカーを貼付し、当該ステッカーを撮影して得られた画像に対して画像認識を行ってもよい。かかる形態によっても、算出サーバ200に、アップグレードの有無およびそ
の内容を認識させることができる。
【0083】
なお、第三の実施形態では、第二画像の取得は不要であるが、第二画像の送信をユーザ端末100に要求してもよい。車両がアップグレードされていることを確実に証明させるため、ステッカーとアップグレード証明書の双方を撮影させることもできる。この場合、ステッカーの記載と、アップグレード証明書の記載が整合している場合に、保険料の割引処理を行うようにしてもよい。
【0084】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0085】
また、第二の実施形態では、アップグレード証明書が、対象車両に対応するものであることを証明することができない。そこで、第二画像に、車両との紐付けを行うための情報を含ませてもよい。
例えば、アップグレード証明書(または、整備記録簿)に車台番号やシリアル番号が印字されている場合、アップグレード証明書と、車台番号(シリアル番号)の双方を含む第二画像を取得してもよい。この場合、算出サーバ200が、第二画像に含まれた車台番号(シリアル番号)を読み取ることで、アップグレード証明書が、対象車両に対応するものであることを確認することができる。
第三の実施形態においても同様である。例えば、第三の実施形態におけるステッカーが、コーションプレートの近傍に貼付されている場合、ステッカーとコーションプレートの双方を含む第一画像を取得してもよい。この場合、算出サーバ200が、コーションプレートに記載されている車台番号を読み取ることで、第一画像に含まれているステッカーが、対象車両に貼付されているものであることを確認することができる。
【0086】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0087】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0088】
100・・・ユーザ端末
101,201,301・・・制御部
102,202,302・・・記憶部
103,203,303・・・通信部
104・・・入出力部
105・・・カメラ
200・・・算出サーバ
300・・・車両管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17