(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】パージ装置及びパージ装置を備えた容器収容設備
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2021174884
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大森 和哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 晶広
(72)【発明者】
【氏名】増井 晃
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166710(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/194252(WO,A1)
【文献】特開2019-108220(JP,A)
【文献】特開2010-182747(JP,A)
【文献】特開2013-153159(JP,A)
【文献】特開2013-131712(JP,A)
【文献】特表2017-504963(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118782(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被格納物が格納される格納容器の内部をパージガスによってパージ処理するパージ装置であって、
前記格納容器に接続されることにより前記格納容器に前記パージガスを供給する供給管と、
前記供給管を介して前記格納容器に供給する前記パージガスの供給流量を制御する供給流量制御部と、
前記格納容器に接続されることにより前記格納容器から前記パージガスを排出する排出管と、
前記排出管を介して前記格納容器から排出する前記パージガスの排出流量を制御する排出流量制御部と、を備え、
前記供給流量制御部は、前記格納容器に対する前記パージガスの供給開始後、前記供給流量が第1流量に到達するように、前記供給流量を次第に増加させる供給流量増加制御を行い、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記供給流量を前記第1流量以上に維持する供給流量維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給流量増加制御の実行中は前記排出流量をゼロとし、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記排出流量を前記第1流量より小さい第2流量以下に維持する排出流量維持制御を行う、パージ装置。
【請求項2】
前記供給流量維持制御では、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記供給流量を前記第1流量に維持し、
前記排出流量維持制御では、前記排出流量を前記第2流量に維持し、
前記排出流量制御部は、前記供給流量制御部による前記供給流量維持制御が行われることと共に前記排出流量維持制御を行い、
前記供給流量と前記排出流量との相対流量が一定に保たれる、請求項1に記載のパージ装置。
【請求項3】
前記供給流量制御部は、前記格納容器に対する前記パージガスの供給開始時点から規定時間経過後に前記供給流量が前記第1流量に到達するように、前記供給流量増加制御を行い、前記供給開始時点から前記規定時間経過後に、前記供給流量維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給開始時点から前記規定時間内は前記排出流量をゼロとし、前記供給開始時点から前記規定時間の経過後に、前記排出流量維持制御を行う、請求項1
又は2に記載のパージ装置。
【請求項4】
前記第1流量に増加するまでの前記供給流量の増加率が、前記パージガスの供給によって前記格納容器内の前記被格納物が振動しない範囲の上限域となるように、前記規定時間が設定されている、請求項
3に記載のパージ装置。
【請求項5】
前記供給流量制御部は、前記供給流量維持制御の開始時点から規定の充填時間が経過した後、前記供給流量を、前記第1流量未満であって前記第2流量より大きい第3流量に維持する充填後維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給流量制御部による前記充填後維持制御の実行中、前記排出流量維持制御を継続する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のパージ装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載されたパージ装置と、
前記格納容器が載置される載置部が設けられた容器収容棚と、を備えた容器収容設備であって、
前記載置部には、前記供給管に接続された供給口と、前記排出管に接続された排出口と、前記格納容器が載置されたことを検出する検出部と、が設けられ、
前記供給口及び前記排出口のそれぞれは、前記載置部に前記格納容器が載置された状態で、前記格納容器に接続されるように構成され、
前記供給流量制御部は、前記検出部により前記格納容器が載置されたことを検出した場合に前記格納容器に対する前記パージガスの供給を開始する、容器収容設備。
【請求項7】
前記容器収容棚は、前記載置部を複数備え、
複数の前記載置部それぞれの前記排出口に、前記排出管が接続され、
複数の前記排出管が、1つの負圧発生装置に接続され、
前記排出流量制御部は、複数の前記排出管のそれぞれに設けられた排気バルブを含む、請求項
6に記載の容器収容設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被格納物が格納される格納容器の内部をパージガスによってパージ処理するパージ装置、及び当該パージ装置を備えた容器収容設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第6052469号公報(特許文献1)には、半導体ウェハ又はガラス基板などの被格納物が格納される格納容器の内部にパージガスを注入することによって格納容器の内部を清浄に保つ、いわゆるパージ処理を行うための技術が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示される符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、格納容器(50)の内部(54)にパージガスを供給すると共に、格納容器(50)の内部(54)からのパージガスの排出を行っている。そして、パージガスの供給流量を、第1流量及び第1流量よりも大きな流量である第2流量の少なくとも2段階に調整可能としつつ、パージガスの供給流量が上記第1流量である場合に、格納容器(50)の内部(54)からのパージガスの排出流量をゼロとなるように制御している。パージガスの供給流量が第2流量よりも小さな第1流量である場合であっても、格納容器(50)の内部(54)からのパージガスの排出流量をゼロとすることで、格納容器(50)の内部(54)が負圧にならないようにしている。これにより、特許文献1に開示された技術では、外部の汚れた空気や塵埃が格納容器(50)の内部(54)に吸入されることを回避しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、パージガスの流量を2段階に制御する点は開示されているが、供給流量の変化中に排出流量をどのように制御するかについては開示が無い。
【0006】
上記実状に鑑みて、格納容器に対するパージガスの供給流量の変化中に、格納容器からのパージガスの排出流量を適切に制御しつつ、パージ処理される格納容器の内部が負圧になることを回避することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
被格納物が格納される格納容器の内部をパージガスによってパージ処理するパージ装置であって、
前記格納容器に接続されることにより前記格納容器に前記パージガスを供給する供給管と、
前記供給管を介して前記格納容器に供給する前記パージガスの供給流量を制御する供給流量制御部と、
前記格納容器に接続されることにより前記格納容器から前記パージガスを排出する排出管と、
前記排出管を介して前記格納容器から排出する前記パージガスの排出流量を制御する排出流量制御部と、を備え、
前記供給流量制御部は、前記格納容器に対する前記パージガスの供給開始後、前記供給流量が第1流量に到達するように、前記供給流量を次第に増加させる供給流量増加制御を行い、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記供給流量を前記第1流量以上に維持する供給流量維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給流量増加制御の実行中は前記排出流量をゼロとし、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記排出流量を前記第1流量より小さい第2流量以下に維持する排出流量維持制御を行う。
【0008】
本構成によれば、格納容器に対するパージガスの供給を開始してからパージガスの供給流量が第1流量に到達するまでの間は、格納容器の内圧も低い可能性があるが、その状態ではパージガスの排出流量がゼロとされているので、格納容器の内部が負圧になることを回避できる。そして、格納容器に対するパージガスの供給流量が第1流量に到達した後は、パージガスの排出が開始され、排出流量が第1流量より小さい第2流量以下に維持されるため、格納容器の内部に供給されるパージガスの流量が、格納容器の内部から排出されるパージガスの流量よりも大きな状態を維持することができる。これにより、パージガスを適切に排出しつつ、格納容器の内部が負圧になることを回避できる。従って、外部の空気や塵埃が格納容器の内部に吸入されることを回避できる。更に、本構成によれば、供給流量増加制御において、供給流量を次第に増加させることで、格納容器に収納された被格納物が振動することを最小限に抑えることができる。従って、被格納物が、例えば半導体ウェハなどの振動に弱い物である場合に特に適している。以上のように、本構成によれば、格納容器に対するパージガスの供給流量の変化中に、格納容器からのパージガスの排出流量を適切に制御しつつ、パージ処理される格納容器の内部が負圧になることを回避することができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】その他の実施形態に係るパージ処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
パージ装置及びパージ装置を備えた容器収容設備について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、容器収容設備100は、格納容器9が載置される載置部10が設けられた容器収容棚1と、パージ装置P(
図2参照)と、を備えている。パージ装置Pは、被格納物(不図示)が格納される格納容器9の内部をパージガスによってパージ処理する装置である。本実施形態では、容器収容棚1は、載置部10を複数備えている。パージ装置Pは、複数の載置部10のそれぞれに載置された格納容器9の内部をパージ処理することが可能となっている。
【0013】
本実施形態では、載置部10に載置される格納容器9は、パージガスとしての不活性ガスが内部に供給される容器である。例えば、格納容器9は、半導体ウェハが格納されるFOUP(Front Opening Unified Pod)である。但し、これに限定されることなく、格納容器9は、レチクルが格納されるレチクルポッドであっても良い。
【0014】
パージ処理では、格納容器9としてのFOUPに格納される半導体ウェハや、レチクルポッドに格納されるレチクルなどの酸化を抑制すると共に、FOUPの内部を清浄な状態に保つために、格納容器9の内部にパージガスを供給する処理が行われる。パージ処理により、格納容器9の内部を保管に適切な環境下に保つことができる。これにより、例えば格納容器9に格納される半導体ウェハやレチクルなどを良好な状態で保管することが可能となっている。パージガスとしては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスや清浄空気などが用いられる。
【0015】
本実施形態では、容器収容棚1は、複数の載置部10を覆う壁体11を備えている。複数の載置部10は、上下方向および左右方向(水平方向)に沿って並んで配置されている。各載置部10には、格納容器9が載置される。本例では、1個の載置部10に、1個の格納容器9が載置される。
【0016】
本実施形態では、容器収容設備100は、格納容器9を搬送する搬送装置Mを備えている。搬送装置Mは、容器収容棚1へ格納容器9を搬送する入庫作業と、容器収容棚1から格納容器9を搬送する出庫作業と、を行うように構成されている。
【0017】
本実施形態では、搬送装置Mには、他の場所から容器収容棚1の外部に設けられた入出庫ポート81まで格納容器9を搬送する第1搬送装置M1と、容器収容棚1の入出庫ポート81から容器収容棚1の内部に設けられた授受位置82まで格納容器9を搬送する第2搬送装置M2と、容器収容棚1の内部において授受位置82から載置部10まで格納容器9を搬送する第3搬送装置M3と、が含まれている。なお、これら第1搬送装置M1、第2搬送装置M2、及び第3搬送装置M3は、上記とは逆方向の搬送も行う。
【0018】
第1搬送装置M1は、例えば、格納容器9を保持しながら天井に設けられたレールに沿って走行する天井搬送車として構成されている。また、この第1搬送装置M1は、昇降機構を有し、格納容器9を昇降させることが可能に構成されている。つまり、第1搬送装置M1は、他の場所から容器収容棚1の入出庫ポート81まで格納容器9を搬送して、当該第1搬送装置M1よりも下方に配置された第2搬送装置M2に当該格納容器9を引き渡す。また、第1搬送装置M1は、容器収容棚1の入出庫ポート81において第2搬送装置M2から格納容器9を受け取り、当該入出庫ポート81から他の場所に格納容器9を搬送する。
【0019】
第2搬送装置M2は、例えば、コンベアとして構成されている。第2搬送装置M2としては、搬送台車を用いたコンベヤ、ベルトコンベア、ローラコンベア、又はチェーンコンベア等であって良い。第2搬送装置M2は、容器収容棚1の外部と容器収容棚1の内部とに亘って設けられている。そして、第2搬送装置M2は、容器収容棚1の外部に設けられた入出庫ポート81において第1搬送装置M1から格納容器9を受け取り、当該格納容器9を、容器収容棚1の内部に設けられた授受位置82まで搬送すると共に当該授受位置82において第3搬送装置M3に引き渡す。また、第2搬送装置M2は、容器収容棚1の授受位置82において第3搬送装置M3から格納容器9を受け取り、当該格納容器9を、容器収容棚1入出庫ポート81に搬送すると共に当該入出庫ポート81において第1搬送装置M1に引き渡す。
【0020】
第3搬送装置M3は、容器収容棚1の内部に配置され、例えば、上下方向の昇降機構および左右方向の走行機構を有するスタッカークレーンとして構成されている。第3搬送装置M3は、格納容器9を保持した状態で、上下方向および左右方向に移動し、上下方向および左右方向に並ぶ複数の載置部10のいずれかに格納容器9を搬送する。第3搬送装置M3は、容器収容棚1の内部の授受位置82において第2搬送装置M2から格納容器9を受け取り、当該格納容器9を載置部10に搬送する。また、第3搬送装置M3は、載置部10に載置されている格納容器9を搬送し、当該格納容器9を、授受位置82において第2搬送装置M2に引き渡す。
【0021】
図2は、本実施形態に係るパージ装置Pの概念図である。
【0022】
図2に示すように、パージ装置Pは、パージガスの供給源20と、供給源20から供給されたパージガスが通流する主供給管21と、格納容器9から排出されたパージガスが通流する主排出管31と、負圧発生装置30と、を備えている。主排出管31には、格納容器9から排出されたパージガスの他、パージ処理の初期段階において格納容器9の内部から排出された空気も通流する。
【0023】
パージ装置Pは、格納容器9に接続されることにより格納容器9にパージガスを供給する供給管22を備えている。本実施形態では、供給管22は、主供給管21から分岐して、載置部10に接続されている。本例では、複数の供給管22のそれぞれが、1つの主供給管21から分岐して、各載置部10に接続されている。
【0024】
パージ装置Pは、供給管22を介して格納容器9に供給するパージガスの供給流量を制御する供給流量制御部23を備えている。供給流量制御部23は、例えば、パージガスの質量流量を制御するマスフローコントローラとして構成されており、供給管22を流れるパージガスの質量流量を制御する。但し、これに限定されず、供給流量制御部23は、パージガスの流量の制御を行えるものであれば良く、例えば、パージガスの体積流量を制御するように構成されていても良い。本例では、供給流量制御部23は、複数の供給管22のそれぞれに設けられている。
【0025】
本実施形態では、パージ装置Pは、パージガスから不純物を除去するフィルタ24を備えている。フィルタ24は、パージガスの通流方向を基準として、載置部10よりも上流側に設けられている。これにより、不純物が除去された後のパージガスを載置部10に供給することが可能となる。本実施形態では、フィルタ24は、供給管22に設けられている。詳細には、フィルタ24は、供給管22における供給流量制御部23よりも下流側に設けられている。本例では、フィルタ24は、複数の供給管22のそれぞれに設けられている。
【0026】
載置部10には、供給管22に接続された供給口10Sが設けられている。供給口10Sは、載置部10に格納容器9が載置された状態で、格納容器9に接続されるように構成されている。これにより、供給管22を通流するパージガスが、格納容器9の内部に供給されるようになっている。本例では、供給口10Sは、複数の載置部10のそれぞれに設けられている。
【0027】
本実施形態では、載置部10には、格納容器9が載置されたことを検出する検出部12が設けられている。検出部12は、在荷センサとして構成されている。在荷センサとしては、光電センサや近接センサ、その他の公知のセンサを用いることができる。供給流量制御部23は、検出部12の検出結果に基づいて、格納容器9に供給するパージガスの供給流量を制御する。本例では、検出部12は、複数の載置部10のそれぞれに設けられている。
【0028】
パージ装置Pは、格納容器9に接続されることにより格納容器9からパージガスを排出する排出管32を備えている。本実施形態では、排出管32は、載置部10から延在して主排出管31に接続している。本例では、排出管32は、複数の載置部10のそれぞれに接続されている。複数の排出管32は、主排出管31に合流している。
【0029】
載置部10には、排出管32に接続された排出口10Eが設けられている。排出口10Eは、載置部10に格納容器9が載置された状態で、格納容器9に接続されるように構成されている。これにより、格納容器9の内部から排出されたパージガスが、排出管32を通流するようになっている。本例では、排出口10Eは、複数の載置部10のそれぞれに設けられている。そして、複数の載置部10それぞれの排出口10Eに、排出管32が接続されている。
【0030】
パージ装置Pは、排出管32を介して格納容器9から排出するパージガスの排出流量を制御する排出流量制御部33を備えている。本実施形態では、排出流量制御部33は、複数の排出管32のそれぞれに設けられた排気バルブ33Vを含む。排気バルブ33Vは、排出管32の流路断面積を変化させることでパージガスの流量を制御するように構成されている。なお、排気バルブ33Vは、弁の開度を複数段階に又は連続的に変更できるものであっても良いし、弁の開閉のみを線的に行うものであっても良い。本例では、排気バルブ33Vは、通電状態に応じて弁の開度が変化するように構成されている。このような排気バルブ33Vとして、例えばソレノイドバルブを用いることができる。但し、これに限定されず、排気バルブ33Vとしては、公知の様々なバルブを用いることもできる。
【0031】
本実施形態では、パージ装置Pは、格納容器9の内部の湿度を計測する湿度計34を備えている。本例では、湿度計34は、排出管32における載置部10よりも下流側に設けられており、格納容器9から排出されたパージガス(パージガスを含む空気)の湿度を計測するように構成されている。図示の例では、湿度計34は、排出管32における排出流量制御部33よりも上流側に設けられている。本実施形態では、湿度計34は、温度を検出する機能も有している。すなわち、湿度計34は、温湿度計として構成されている。本例では、湿度計34は、複数の排出管32のそれぞれに設けられている。
【0032】
本実施形態では、パージ装置Pは、排出管32を通流するパージガスの流量を計測する流量計35を備えている。流量計35は、排出管32における排出流量制御部33よりも上流側に設けられている。図示の例では、流量計35は、排出管32における湿度計34よりも下流側に設けられている。本例では、流量計35は、複数の排出管32のそれぞれに設けられている。
【0033】
上述のように、パージ装置Pは、負圧発生装置30を備えている。負圧発生装置30は、排出管32に負圧を発生させるように構成されている。排出管32が負圧になることで、排出管32に接続された格納容器9の内部の気体が排出管32に吸引される。本実施形態では、負圧発生装置30は、主排出管31に設けられており、主排出管31に負圧を発生させることで、主排出管31に接続された複数の排出管32のそれぞれに負圧を発生させる。すなわち、本実施形態では、複数の排出管32が、1つの負圧発生装置30に接続されている。これにより、1つの負圧発生装置30を用いて複数の載置部10に載置された格納容器9からパージガスを排出できる。従って、複数の載置部10(排出管32)のそれぞれに負圧発生装置30を配置する場合に比べて構成の簡略化や低コスト化を図り易い。本例では、負圧発生装置30は、例えば、ポンプを含んで構成されており、ポンプの駆動によって排出管32に負圧を発生させるように構成されている。
【0034】
本実施形態では、容器収容設備100は、設備全体を管理する上位コントローラHを備えている。本例では、上位コントローラHは、搬送装置Mの動作、及び、パージ装置Pの動作を制御するように構成されている。上位コントローラHは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0035】
上位コントローラHは、供給流量制御部23及び排出流量制御部33を制御するように構成されている。本実施形態では、上位コントローラHは、複数の供給流量制御部23、複数の排出流量制御部33、供給源20、及び負圧発生装置30を制御するように構成されている。また、上位コントローラHは、パージ装置Pが備える各種検出部による検出結果を取得可能に構成されている。本例では、上位コントローラHは、載置部10に設けられた検出部12による検出結果、並びに、排出管32に設けられた湿度計34及び流量計35による計測結果を取得可能に構成されている。
【0036】
本実施形態では、上位コントローラHは、タイマTmを備えている。そして、上位コントローラHは、タイマTmにより計測された時間に基づいて、パージ装置Pを制御するように構成されている。具体的には、上位コントローラHは、タイマTmにより計測された時間に基づいて、供給流量制御部23及び排出流量制御部33に対して各種指令を出力する。
【0037】
格納容器9に対するパージ処理は、供給流量制御部23による供給流量の制御、及び、排出流量制御部33による排出流量の制御によって行われる。本実施形態では、供給流量制御部23及び排出流量制御部33は、上位コントローラHによる指令を受けて、各部を制御する。
【0038】
図3はパージ処理のタイムチャートである。以下、
図3を参照して、パージ処理について説明する。
【0039】
図3に示すように、供給流量制御部23は、格納容器9に対するパージガスの供給流量が第1流量A1に到達するように、供給流量を次第に増加させる供給流量増加制御Cs1を行う。本実施形態では、供給流量制御部23は、格納容器9に対するパージガスの供給開始時点T0から規定時間経過後T1に供給流量が第1流量A1に到達するように、供給流量を次第に増加させる供給流量増加制御Cs1を行う。本例では、供給流量は、パージガスの供給開始時点T0ではゼロである。本実施形態では、供給流量制御部23は、供給流量増加制御Cs1では、パージガスの供給流量を、ゼロから第1流量A1まで漸増させる。すなわち、供給流量制御部23は、パージガスの供給開始時点T0から規定時間経過する時刻T1までの間、一定の増加率で供給流量を増加させる。これにより、格納容器9に収納された被格納物がパージガスの影響によって振動することを最小限に抑えることができる。このような構成は、被格納物が、例えば半導体ウェハなどの振動に弱い物である場合に特に適している。なお、「供給流量」とは、単位時間当たりに供給されるパージガスの流量であり、例えば、「L/min」を単位としている。後述する「排出流量」についても同様に、単位時間当たりに排出されるパージガスの流量であり、例えば、「L/min」を単位としている。
【0040】
本実施形態では、供給流量制御部23は、検出部12により格納容器9が載置部10に載置されたことを検出した場合に、格納容器9に対するパージガスの供給を開始する。すなわち、供給流量制御部23は、検出部12による検出結果に基づいて、供給流量増加制御Cs1を行う(
図4のステップ#1、#2)。
【0041】
供給流量制御部23は、供給流量が第1流量A1に到達した後に、供給流量を第1流量A1以上に維持する供給流量維持制御Cs2を行う。本実施形態では、供給流量制御部23は、上記供給流量増加制御Cs1を開始した後、供給開始時点T0から規定時間経過後T1に、供給流量を第1流量A1以上に維持する供給流量維持制御Cs2を行う。本例においては、供給流量制御部23は、供給流量維持制御Cs2では、供給流量を概ね第1流量A1に維持する。
【0042】
本実施形態では、第1流量A1に増加するまでの供給流量の増加率が、パージガスの供給によって格納容器9内の被格納物が振動しない範囲の上限域となるように、規定時間(T1-T0)が設定されている。これにより、格納容器9の内部の被格納物がパージガスの影響によって振動することを回避しつつ、格納容器9の内部が適量のパージガスで満たされた清浄な状態を早期に実現することができる。なお「上限域」は、被格納物が振動しない限界である上限値に対して低い側に設定された値の範囲である。実際の上限値は様々な要因によって変動するため、上限域は、当該上限値の変動によっても被格納物が振動しないように、上限値よりも低い側に設定される。例えば、「上限域」は、実験的に求められた上限値に対して80~95%の範囲に設定されると好適である。
【0043】
排出流量制御部33は、供給流量増加制御Cs1の実行中は排出流量をゼロとし、供給流量が第1流量A1に到達した後に、排出流量を第1流量A1より小さい第2流量A2以下に維持する排出流量維持制御Ceを行う。本実施形態では、排出流量制御部33は、供給開始時点から規定時間内(T0~T1)は排出流量をゼロとし、供給開始時点T0から規定時間の経過後T1に、排出流量を第1流量A1より小さい第2流量A2以下に維持する排出流量維持制御Ceを行う。これにより、パージガスの供給開始時点T0から規定時間の経過後T1には、供給流量維持制御Cs2によってパージガスが第1流量A1で格納容器9に供給されると共に、排出流量維持制御Ceによって格納容器9の内部のパージガスが第1流量A1よりも小さい第2流量A2で排出される。そのため、パージガスの供給開始時点T0から規定時間の経過後T1は、格納容器9の内部に供給されるパージガスの流量が、格納容器9の内部から排出されるパージガスの流量よりも大きな状態を維持することができる。従って、パージガスを適切に排出しつつ、格納容器9の内部が負圧になることを回避できる。そして、排出流量の調整を、パージガスの供給開始T0からの経過時間T1をトリガとして行っているため、例えば供給流量の変化をトリガとする場合に比べて制御構成を簡略化することができる。本例において排出流量制御部33は、排出流量維持制御Ceでは、排出流量を概ね第2流量A2に維持する。第2流量A2は、例えば、第1流量A1の10%~15%程度の流量であると良い。
【0044】
本実施形態では、供給流量制御部23は、供給流量維持制御Cs2の開始時点T1から規定の充填時間が経過した後T2、供給流量を、第1流量A1未満であって第2流量A2より大きい第3流量A3に維持する充填後維持制御Cs3を行う。これにより、第1流量A1よりも低い第3流量A3で、格納容器9へのパージガスの供給を継続的に行うことができる。この充填後維持制御Cs3は、例えば、格納容器9が載置部10に長期的に保管される場合に好適であり、充填後維持制御Cs3の実行により、格納容器9が保管されている期間において当該格納容器9の内部に外気や塵埃が侵入することを回避できる。「充填時間」は、格納容器9の内部が清浄な状態となっていることを基準として設定されるものであり、格納容器9の特性や大きさなどによって変動し得る。第3流量A3は、例えば、第1流量A1の30%~50%程度の流量であると良い。
【0045】
本実施形態では、排出流量制御部33は、供給流量制御部23による充填後維持制御Cs3の実行中、排出流量維持制御Ceを継続する。これにより、供給流量制御部23が充填後維持制御Cs3を実行している期間には、パージガスが第3流量A3で格納容器9に供給されると共に、排出流量維持制御Ceによって格納容器9の内部のパージガスが第3流量A3よりも小さい第2流量A2で排出される。そのため、供給流量制御部23が充填後維持制御Cs3を開始した時刻T2以降は、格納容器9の内部に供給されるパージガスの流量が、格納容器9の内部から排出されるパージガスの流量よりも大きな状態を維持することができる。従って、パージガスを適切に排出しつつ、格納容器9の内部が負圧になることを回避できる。第2流量A2は、例えば、第3流量A3の20%~40%程度の流量であると良い。
【0046】
図3に示す例において、時刻T0から時刻T2までの間に行われるパージ処理は、イニシャルパージと呼ばれることがある。また、時刻T2から時刻T3までの間に行われるパージ処理は、メンテナンスパージと呼ばれることがある。すなわち、パージ装置Pは、イニシャルパージとメンテナンスパージとを行うように構成されている。
【0047】
なお、第1流量A1、第2流量A2、及び第3流量A3は、格納容器9の特性や大きさなどに基づいて適宜定められる。「格納容器9の特性」には、格納容器9の密閉性が含まれる。密閉性の高低も、第1流量A1、第2流量A2、及び第3流量A3の設定に影響し得る。
【0048】
図4はパージ処理のフローチャートである。以下、
図4を参照して、パージ処理を行う場合の制御の手順について説明する。
【0049】
図4に示すように、供給流量制御部23は、載置部10に格納容器9が載置されている場合に(ステップ#1:Yes)、供給流量増加制御Cs1を行う(ステップ#2)。本例では、載置部10に格納容器9が載置されているか否かは、検出部12によって検出されると共に上位コントローラHによって把握され、供給流量制御部23は、上位コントローラHからの指令によって供給流量増加制御Cs1を行う。
【0050】
パージガスの供給開始から規定時間が経過した場合には(ステップ#3)、供給流量制御部23が供給流量維持制御Cs2を実行すると共に、排出流量制御部33が排出流量維持制御Ceを実行する(ステップ#4)。本例では、規定時間の計測は、上位コントローラHが備えるタイマTmによって行われる。上位コントローラHは、タイマTmによる時間の計測結果に基づいて、供給流量制御部23及び排出流量制御部33に各種指令を行う。
【0051】
ステップ#4の処理開始から規定の充填時間が経過した場合には(ステップ#5:Yes)、供給流量制御部23が充填後維持制御Cs3を実行すると共に、排出流量制御部33が排出流量維持制御Ceを継続する(ステップ#6)。
【0052】
その後、格納容器9が載置部10に載置されていない状態となった場合、すなわちパージ処理が行われていた格納容器9が載置部10から搬出された場合には(ステップ#7:No)、供給流量制御部23が格納容器9に対するパージガスの供給を停止すると共に、排出流量制御部33が格納容器9からのパージガスの排出を停止する(ステップ#8)。本例では、
図3の時刻T3に示すように、供給流量をゼロにすると共に、排出流量をゼロにする。これにより、パージガスの供給の停止と排出の停止とを、格納容器9が載置部10に載置されていないことをトリガとして同時に行うことができるため、制御構成を簡略化し易い。但し、パージガスの排出の停止については、パージガスの供給の停止から一定期間遅れて行っても良い。このような構成は、タイマTmによる時間計測によって容易に実現できる。このような構成により、排出管32に残留したパージガスを適切に回収することができる。
【0053】
〔その他の実施形態〕
次に、パージ装置及びパージ装置を備えた容器収容設備のその他の実施形態について説明する。
【0054】
(1)上記実施形態では、供給流量制御部23が、供給流量増加制御Cs1を開始した後、供給開始時点T0から規定時間経過後T1に、供給流量を第1流量A1以上に維持する供給流量維持制御Cs2を行う例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、供給流量制御部23は、格納容器9に供給されるパージガスの流量を検知するように構成され、例えば
図5に示すように、検知した供給流量が第1流量A1に到達したと判断した場合に(ステップ#13:Yes)、供給流量維持制御Cs2を行っても良い(ステップ#14)。なお、
図5に示す制御の手順は、ステップ13の処理のみが、
図4に示す制御の手順と異なる。
【0055】
(2)上記の実施形態では、排出流量制御部33が、供給開始時点から規定時間内は排出流量をゼロとし、供給開始時点T0から規定時間の経過後T1に、排出流量を第1流量A1より小さい第2流量A2以下に維持する排出流量維持制御Ceを行う例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、排出流量制御部33は、例えば
図5に示すように、供給流量制御部23によって検知された供給流量が第1流量A1に到達したと判断した場合に(ステップ#13:Yes)、排出流量維持制御Ceを行っても良い(ステップ#14)。この場合、排出流量制御部33は、供給流量が第1流量A1に到達した旨の情報を、供給流量制御部23から直接的に、或いは、上位コントローラHを介して間接的に取得するように構成されていると良い。
【0056】
(3)上記の実施形態では、上位コントローラHが、タイマTmを備えており、パージ処理の各工程の時間を計測している例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、供給流量制御部23が、タイマTmを備え、当該タイマTmによる計測時間に基づいて各種制御を行っても良い。また、排出流量制御部33が、タイマTmを備え、当該タイマTmによる計測時間に基づいて各種制御を行っても良い。
【0057】
(4)上記の実施形態では、供給流量制御部23は、パージガスの供給開始時点T0から規定時間経過する時刻T1までの間、一定の増加率で供給流量を増加させる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、供給流量制御部23は、増加率を変動させながら供給流量を増加させても良い。
【0058】
(5)上記の実施形態では、排出流量制御部33が、供給流量制御部23による充填後維持制御Cs3の実行中、排出流量維持制御Ceを継続する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、排出流量制御部33は、供給流量制御部23による充填後維持制御Cs3の実行中には、充填後維持制御Cs3により供給されるパージガスの供給流量に応じた排出流量で、パージガスを排出するようにしても良い。例えば、充填後維持制御Cs3の実行中には、供給流量維持制御Cs2の実行中におけるパージガスの排出流量よりも小さい流量のパージガスが排出されるようにしても良い。
【0059】
(6)上記の実施形態では、供給流量制御部23が、供給流量維持制御Cs2の開始時点T1から規定の充填時間が経過した後T2、供給流量を、第1流量A1未満であって第2流量A2より大きい第3流量A3に維持する充填後維持制御Cs3を行う例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、供給流量制御部23は、充填後維持制御Cs3を行わなくても良い。
【0060】
(7)上記の実施形態では、供給流量制御部23が、検出部12により格納容器9が載置部10に載置されたことを検出した場合に、格納容器9に対するパージガスの供給を開始する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、パージガスの供給開始は、検出部12による検出結果に基づかずに行われても良い。供給流量制御部23は、例えば、搬送装置Mと連携し、搬送装置Mによる格納容器9の移載動作があった場合に、格納容器9に対するパージガスの供給を開始するようにしても良い。なお、供給流量制御部23と搬送装置Mとの上記連携は、上位コントローラHを介して行われても良い。
【0061】
(8)上記の実施形態では、複数の排出管32が、1つの負圧発生装置30に接続されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、複数の排出管32のそれぞれに対応して、負圧発生装置30が設けられていても良い。
【0062】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0063】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明したパージ装置及びパージ装置を備えた容器収容設備について説明する。
【0064】
被格納物が格納される格納容器の内部をパージガスによってパージ処理するパージ装置であって、
前記格納容器に接続されることにより前記格納容器に前記パージガスを供給する供給管と、
前記供給管を介して前記格納容器に供給する前記パージガスの供給流量を制御する供給流量制御部と、
前記格納容器に接続されることにより前記格納容器から前記パージガスを排出する排出管と、
前記排出管を介して前記格納容器から排出する前記パージガスの排出流量を制御する排出流量制御部と、を備え、
前記供給流量制御部は、前記格納容器に対する前記パージガスの供給開始後、前記供給流量が第1流量に到達するように、前記供給流量を次第に増加させる供給流量増加制御を行い、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記供給流量を前記第1流量以上に維持する供給流量維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給流量増加制御の実行中は前記排出流量をゼロとし、前記供給流量が前記第1流量に到達した後に、前記排出流量を前記第1流量より小さい第2流量以下に維持する排出流量維持制御を行う。
【0065】
本構成によれば、格納容器に対するパージガスの供給を開始してからパージガスの供給流量が第1流量に到達するまでの間は、格納容器の内圧も低い可能性があるが、その状態ではパージガスの排出流量がゼロとされているので、格納容器の内部が負圧になることを回避できる。そして、格納容器に対するパージガスの供給流量が第1流量に到達した後は、パージガスの排出が開始され、排出流量が第1流量より小さい第2流量以下に維持されるため、格納容器の内部に供給されるパージガスの流量が、格納容器の内部から排出されるパージガスの流量よりも大きな状態を維持することができる。これにより、パージガスを適切に排出しつつ、格納容器の内部が負圧になることを回避できる。従って、外部の空気や塵埃が格納容器の内部に吸入されることを回避できる。更に、本構成によれば、供給流量増加制御において、供給流量を次第に増加させることで、格納容器に収納された被格納物が振動することを最小限に抑えることができる。従って、被格納物が、例えば半導体ウェハなどの振動に弱い物である場合に特に適している。以上のように、本構成によれば、格納容器に対するパージガスの供給流量の変化中に、格納容器からのパージガスの排出流量を適切に制御しつつ、パージ処理される格納容器の内部が負圧になることを回避することができる。
【0066】
前記供給流量制御部は、前記格納容器に対する前記パージガスの供給開始時点から規定時間経過後に前記供給流量が前記第1流量に到達するように、前記供給流量増加制御を行い、前記供給開始時点から前記規定時間経過後に、前記供給流量維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給開始時点から前記規定時間内は前記排出流量をゼロとし、前記供給開始時点から前記規定時間の経過後に、前記排出流量維持制御を行う、と好適である。
【0067】
本構成によれば、排出流量の調整を、パージガスの供給開始からの経過時間をトリガとして行っているため、例えば供給流量の変化をトリガとする場合に比べて、制御構成を簡略化することができる。
【0068】
前記第1流量に増加するまでの前記供給流量の増加率が、前記パージガスの供給によって前記格納容器内の前記被格納物が振動しない範囲の上限域となるように、前記規定時間が設定されている、と好適である。
【0069】
本構成によれば、格納容器の内部の被格納物が振動することを回避しつつ、格納容器の内部が適量のパージガスで満たされた清浄な状態を早期に実現することができる。
【0070】
前記供給流量制御部は、前記供給流量維持制御の開始時点から規定の充填時間が経過した後、前記供給流量を、前記第1流量未満であって前記第2流量より大きい第3流量に維持する充填後維持制御を行い、
前記排出流量制御部は、前記供給流量制御部による前記充填後維持制御の実行中、前記排出流量維持制御を継続する、と好適である。
【0071】
本構成によれば、格納容器の内部へのパージガスの充填が完了した後は、充填後維持制御を実行することにより、パージガスの供給流量を第1流量未満の第3流量として、必要流量のパージガスを安定的に格納容器に供給できる。このような供給流量の調整も、供給流量維持制御の開始時点から規定の充填時間が経過したことをトリガとして行っているため、制御構成を簡略化し易い。そして、本構成によれば、上記充填後維持制御の実行中に排出流量維持制御を継続することにより、排出流量を第3流量よりも小さな第2流量とした状態で格納容器の内部からパージガスを排出し続けるため、格納容器の内部が負圧になることを適切に回避できる。
【0072】
上記構成のパージ装置と、
前記格納容器が載置される載置部が設けられた容器収容棚と、を備えた容器収容設備であって、
前記載置部には、前記供給管に接続された供給口と、前記排出管に接続された排出口と、前記格納容器が載置されたことを検出する検出部と、が設けられ、
前記供給口及び前記排出口のそれぞれは、前記載置部に前記格納容器が載置された状態で、前記格納容器に接続されるように構成され、
前記供給流量制御部は、前記検出部により前記格納容器が載置されたことを検出した場合に前記格納容器に対する前記パージガスの供給を開始する。
【0073】
本構成によれば、パージ処理の対象となる格納容器が載置部に載置されていない状態において、パージガスが不必要に消費されることを回避することができる。
【0074】
上記容器収容設備において、
前記容器収容棚は、前記載置部を複数備え、
複数の前記載置部それぞれの前記排出口に、前記排出管が接続され、
複数の前記排出管が、1つの負圧発生装置に接続され、
前記排出流量制御部は、複数の前記排出管のそれぞれに設けられた排気バルブを含む、と好適である。
【0075】
本構成によれば、1つの負圧発生装置を用いて複数の載置部に載置された格納容器からパージガスを排出できる。従って、複数の載置部のそれぞれに負圧発生装置を配置する場合に比べて構成の簡略化や低コスト化を図り易い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示に係る技術は、被格納物が格納される格納容器の内部をパージガスによってパージ処理するパージ装置、及び当該パージ装置を備えた容器収容設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
100 :容器収容設備
P :パージ装置
1 :容器収容棚
10 :載置部
10E :排出口
10S :供給口
12 :検出部
22 :供給管
23 :供給流量制御部
30 :負圧発生装置
32 :排出管
33 :排出流量制御部
33V :排気バルブ
9 :格納容器
A1 :第1流量
A2 :第2流量
A3 :第3流量
Ce :排出流量維持制御
Cs1 :供給流量増加制御
Cs2 :供給流量維持制御
Cs3 :充填後維持制御