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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】エアバッグカバー
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20241022BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20241022BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/205
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021186604
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023031194
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2021136685
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤史
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283865(JP,A)
【文献】特開2009-234394(JP,A)
【文献】特開平08-290749(JP,A)
【文献】特許第5598348(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0232661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグの膨張時に、前記エアバッグの突出用開口を形成するように、前記エアバッグに押されて開くドア部を有する構成とするとともに、
前記ドア部を含めたエリアに配設される合成樹脂製の基材と、
前記ドア部の配設エリアにおける前記基材の裏面側に結合されて、前記基材より軟質の合成樹脂製のリテーナと、を備えて構成され、
前記ドア部が、前記基材のドア構成部と、前記リテーナに設けられて前記ドア構成部を保持するドア支持部と、を備えて構成され、
前記リテーナが、前記ドア支持部と、前記ドア支持部の周囲に配設される周縁部と、前記周縁部と前記ドア支持部との間に配設されて、前記ドア部の開き時に撓み可能な略平板状のヒンジ部と、を備えて構成されるエアバッグカバーであって、
前記基材と前記リテーナとからなるエアバッグカバー本体と、
該エアバッグカバー本体の表面側に接着されて、前記ドア部の開き時に破断可能な可撓性を有した表皮層と、
を備えて構成され、
前記基材が、前記リテーナの前記ヒンジ部の配設部位に、空間部を設けて、前記基材の非配設部とし、
前記ヒンジ部の領域が、前記リテーナの前記ヒンジ部と、該ヒンジ部に接着された前記表皮層と、の2層から構成されていることを特徴とするエアバッグカバー。
【請求項2】
前記ドア部が、外表面側から、前記表皮層、前記基材の前記ドア構成部、及び、前記リテーナの前記ドア支持部、を配設させた3層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグカバー。
【請求項3】
前記ヒンジ部の配設部位を除いた前記ドア部の周囲に、膨張する前記エアバッグに押されて破断する破断予定部が配設され、
該破断予定部が、前記リテーナの非配設部位として、前記表皮層と、脆弱部を設けた前記基材と、の2層から構成されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のエアバッグカバー。
【請求項4】
前記リテーナが、前記周縁部に、折り畳まれた前記エアバッグを保持するエアバッグ装置の取付ベースと連結される連結壁部、を配設させて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエアバッグカバー。
【請求項5】
前記ドア部の配設エリアにおける前記ヒンジ部の外側エリアには、前記表皮層、前記基材、及び、前記リテーナの3層から形成される部位が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエアバッグカバー。
【請求項6】
前記エアバッグカバー本体が、前記基材と前記リテーナとの成形材料による二色成形により一体成形されて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエアバッグカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員等を保護するように膨張するエアバッグを備えたエアバッグ装置に使用され、折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、エアバッグの膨張時には、突出用開口を形成して、エアバッグを突出させる構成のエアバッグカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネルに配設されるエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時に、エアバッグの突出用開口を形成するように、エアバッグに押されて開くドア部を有する構成とし、さらに、ドア部を含めたエリアに配設されるポリプロピレン等の合成樹脂製の基材と、ドア部の配設エリアに配設されて、基材より軟質のオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製のリテーナと、を備えて、基材とリテーナとの成形材料による二色成形により一体成形される構成としていた(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグカバーでは、ドア部が、基材のドア構成部と、リテーナに設けられてドア構成部を保持するドア支持部と、を備えて構成されていた。リテーナは、ドア支持部と、ドア支持部の周囲に配設される周縁部と、周縁部とドア支持部との間に配設されて、ドア部の開き時に撓むヒンジ部と、を備えて構成されていた。このエアバッグカバーでは、基材とリテーナとを、別々で形成して、振動溶着する従来構成(特許文献2参照)と異なり、二色成形品とし、さらに、リテーナのヒンジ部を、嵩張るように湾曲させる構成とせずに、撓み可能な可撓性を担保した略平板状の構成としていた。このヒンジ部は、薄肉の略平板状として、基材の裏面側に結合されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-248610号公報(図1,2参照)
【文献】特開2009-248610号公報(図3,4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のエアバッグカバーでは、リテーナのヒンジ部が、薄肉として可撓性を担保しているものの、基材におけるヒンジ部の対応部位に対して、二色成形によって結合される構成であって、ドア部の開き時に、基材の部位も撓ませる構成であることから、一層のドア部の開き性能を向上させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ドア部の開き性能を向上させることができるエアバッグカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時に、前記エアバッグの突出用開口を形成するように、前記エアバッグに押されて開くドア部を有する構成とするとともに、
前記ドア部を含めたエリアに配設される合成樹脂製の基材と、
前記ドア部の配設エリアにおける前記基材の裏面側に結合されて、前記基材より軟質の合成樹脂製のリテーナと、を備えて構成され、
前記ドア部が、前記基材のドア構成部と、前記リテーナに設けられて前記ドア構成部を保持するドア支持部と、を備えて構成され、
前記リテーナが、前記ドア支持部と、前記ドア支持部の周囲に配設される周縁部と、前記周縁部と前記ドア支持部との間に配設されて、前記ドア部の開き時に撓み可能な略平板状のヒンジ部と、を備えて構成されるエアバッグカバーであって、
前記基材と前記リテーナとからなるエアバッグカバー本体と、
該エアバッグカバー本体の表面側に接着されて、前記ドア部の開き時に破断可能な可撓性を有した表皮層と、
を備えて構成され、
前記基材が、前記リテーナの前記ヒンジ部の配設部位に、空間部を設けて、前記基材の非配設部とし、
前記ヒンジ部の領域が、前記リテーナの前記ヒンジ部と、該ヒンジ部に接着された前記表皮層と、の2層から構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグカバーでは、ドア部の開き時のヒンジ部位が、空間部を設けた基材の非配設部位として、基材を配設させておらず、可撓性を有した表皮層と、基材より軟質の合成樹脂からなるリテーナのヒンジ部と、の2層から構成されている。そのため、ドア部の開き時に、基材自体を撓ませないことから、円滑にヒンジ部位が撓んで、ドア部が開くこととなる。また、基材とリテーナとからなるエアバッグカバー本体の表面には、ヒンジ部位を含めて、表皮層が配設されており、基材が空間部を含めて表面側に露出しないことから、エアバッグカバーの意匠性が向上する。
【0008】
したがって、本発明に係るエアバッグカバーでは、ドア部の開き性能を向上させることができるとともに、意匠性を向上させることができる。
【0009】
そして、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記ドア部が、外表面側から、前記表皮層、前記基材の前記ドア構成部、及び、前記リテーナの前記ドア支持部、を配設させた3層から構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、ドア部が、エアバッグカバーにおけるドア部の配設エリアを除く一般部のエリア、すなわち、リテーナの設けられていない一般部のエリアと同様に、表面側の表皮層の裏面側に、基材が配設される構成となって、ドア部の表皮層が、裏面側の基材に支持される態様となることから、ドア部の触感を一般部の触感と同等にすることができる。
【0011】
また、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記ヒンジ部の配設部位を除いた前記ドア部の周囲に、膨張する前記エアバッグに押されて破断する破断予定部が配設され、
該破断予定部が、前記リテーナの非配設部位として、前記表皮層と、脆弱部を設けた前記基材と、の2層から構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、ドア部の開き時に破断する破断予定部が、リテーナの部位を配設させずに構成されることから、膨張するエアバッグに押されて開く破断予定部が、破断可能な表皮層と、脆弱部を設けた容易に破断する基材と、の2層だけで構成されて、ドア部の開き時における破断予定部の破断が円滑に行なわれて、ドア部の開き性能を安定させることができる。
【0013】
また、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記リテーナが、前記周縁部に、折り畳まれた前記エアバッグを保持するエアバッグ装置の取付ベースと連結される連結壁部、を配設させて構成されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、エアバッグカバーのドア部の配設エリアが、リテーナの周縁部から延びる連結壁部を介して、エアバッグ装置における折り畳んだエアバッグを保持する取付ベースと連結されることから、エアバッグの膨張時、リテーナの周縁部が、エアバッグ装置の取付ベースに連結されて、取付ベース側から離れるように移動しないことから、リテーナにおける周縁部に対してヒンジ部を介して連結される構成のドア部が、膨張するエアバッグの押圧力を的確に受けて、迅速に開くことができる。
【0015】
さらに、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記ドア部の配設エリアにおける前記ヒンジ部の外側エリアには、前記表皮層、前記基材、及び、前記リテーナの3層から形成される部位が、配設されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、エアバッグカバー本体における基材に対して、リテーナのヒンジ部の部位が結合されていなくとも、リテーナの周縁部が結合される構成となって、ドア部が開く際に、リテーナのヒンジ部に強い引張力が加わっても、リテーナのヒンジ部近傍の周縁部の部位が、基材と結合されて、基材から剥離することが防止されることから、ドア部は、エアバッグカバーにおけるリテーナの設けられていない一般部のエリアの表皮層等に、影響を与えること無く、円滑に、ヒンジ部位(リテーナのヒンジ部)を撓ませつつ、開くことができる。
【0017】
そして、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記エアバッグカバー本体が、前記基材と前記リテーナとの成形材料による二色成形により一体成形されて形成されていることが望ましい。
【0018】
このような構成では、基材とリテーナとを、別々で形成して、振動溶着等により接着してエアバッグカバー本体を形成したり、インサート成形してエアバッグカバー本体を形成する場合に比べ、型費や工数を低減させて、効率的にエアバッグカバー本体を形成することができることから、エアバッグカバーの製造工数・コストを低減することに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る一実施形態のエアバッグカバーを使用するエアバッグ装置の概略斜視図である。
図2】実施形態のエアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図である。
図3】実施形態のエアバッグ装置の前後方向に沿った概略部分拡大縦断面図である。
図4】実施形態のエアバッグ装置の左右方向に沿った概略縦断面図である。
図5】実施形態のエアバッグカバーにおけるドア部の配設エリア付近の平面図である。
図6】実施形態のエアバッグカバーにおけるドア部の配設エリア付近の底面図である。
図7】実施形態の基材の破断予定部の部位を示す底面図である。
図8】実施形態の基材における破断予定部の破断の起点部位付近を示す概略拡大底面図であり、図7のVIII部位に対応し、併せて、その部位付近の概略断面図を示す。
図9】実施形態の基材における破断予定部の破断の起点部位付近を示す概略拡大底面図である。
図10】実施形態の基材におけるドア部の側縁付近を示す概略拡大底面図であり、図7のX部位に対応し、併せて、その部位付近の概略断面図を示す。
図11】実施形態のエアバッグカバーの製造工程を説明する図であり、基材を製造する工程を示す。
図12】実施形態のエアバッグカーの製造工程を説明する図であり、リテーナを製造する工程を示す。
図13図12に示す工程の後の工程におけるリテーナを製造する工程を示し、さらに、表皮層を接着させる工程を示す。
図14】実施形態のエアバッグカバーにおけるドア部の開き当初を説明する概略拡大縦断面図である。
図15】変形例のエアバッグカバーを使用したエアバッグ装置の左右方向に沿った概略縦断面図である。
図16図15に示すエアバッグカバーのドア部の配設エリア付近における基材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグカバー20は、図1~4に示すように、車両1のインストルメントパネル(インパネ)2に配設されて、助手席用のエアバッグ装置10に使用されている。インパネ2は、車両1の前席の前方側におけるフロントウインドシールド1aの下方に配設されて、運転席の前方側の運転席側部2a、助手席前方の助手席側部2b、及び、図示しないセンターコンソールの前方側の中央部2c、を備えて構成され、助手席側部2bの部位を、エアバッグ11(図2参照)の膨張時に、エアバッグ11を円滑に突出させるように、略長方形の開口とする突出用開口68を形成するエアバッグカバー20の部位として、構成されている。
【0021】
エアバッグ装置10は、図2,4に示すように、膨張用ガスGを流入させて、助手席搭乗者を保護するように膨張するエアバッグ11と、エアバッグ11に膨張用ガスGを供給するインフレーター14と、折り畳まれて収納されたエアバッグ11を覆うエアバッグカバー20と、折り畳まれたエアバッグ11とインフレーター14とを収納して保持する取付ベース15と、を備えて構成されている。取付ベース15は、図示しないブラケットにより、車両1のボディ側に連結される。エアバッグカバー20を設けたインパネ2は、外周縁付近等を車両1のボディ側に保持されるとともに、エアバッグカバー20の部位で、後述する連結壁部53を利用して、取付ベース15に連結される。
【0022】
エアバッグ11は、ポリエステル等の織布から形成されて、膨張完了形状を、後端に助手席搭乗者を受け止める受止面を設けて前部側にかけて先細り状とする略四角錐台形状とし、前端側の下面に、膨張用ガスGを流入させる流入用開口11aを備えている。流入用開口11aは、円形に開口し、その流入用開口11aの周縁は、エアバッグ11内に配設される略四角環状のリテーナ12により押えられて、取付ベース15の底壁部16に取り付けられている。リテーナ12は、略四角環状の四隅に、下方に延びるボルト12aを突設させている。各ボルト12aは、エアバッグ11の流入用開口11aの周縁、取付ベース15の後述する底壁部16、及び、インフレーター14の後述するフランジ部14cを貫通して、ナット13を締結されることにより、取付ベース15の底壁部16に、エアバッグ11とインフレーター14とを取付固定している。
【0023】
インフレーター14は、略円柱状として上部に膨張用ガスGを吐出するガス吐出口14bを設けた本体部14aと、本体部14aの外周面から突出して、リテーナ12の各ボルト12aを貫通させるフランジ部14cと、を備えて構成されている。
【0024】
取付ベース15は、板金製として、略長方形板状の底壁部16と、底壁部16の外周縁から上方に延びる略四角筒形状の側壁部17と、を備えて構成されている。底壁部16には、インフレーター14の本体部14aを下方から挿入させる挿通孔16aが開口され、挿通孔16aの周縁には、リテーナ12の各ボルト12aを貫通させる貫通孔(図符号省略)が配設されており、エアバッグ11の流入用開口11aの周縁やインフレーター14のフランジ部14cが、リテーナ12のボルト12aとナット13とにより、取付ベース15の底壁部16に取付固定されている。側壁部17には、リテーナ50の連結壁部53に設けられた係止孔54に係止させる係止フック17aが、形成されている。係止フック17aは、側壁部17の前後の部位に配設されるとともに、左右方向に沿って複数並設されている。
【0025】
エアバッグカバー20は、図1~6に示すように、エアバッグ11の膨張時に、エアバッグ11の突出用開口68を形成するように、エアバッグ11に押されて開くドア部24(F,B)を有する構成としている。ドア部24(F,B)は、突出用開口68を形成するように開く構成としており、突出用開口68は、エアバッグ装置10の取付ベース15における底壁部16と同様な形状の略長方形に開口する形状としている。実施形態のドア部24F,24Bは、前後両側に観音扉のように開く構成としており、そして、開いた際、突出用開口68を前後で二分した領域をそれぞれ開口させる構成としている。
【0026】
また、エアバッグカバー20は、ドア部24(F,B)を配設させたドア配設エリア22と、その周囲の一般部21と、を備えて構成されている。ドア配設エリア22は、ドア部24F,24B自体や、それらのヒンジ部位25、さらに、ドア部24F,24Bを開かせるためのドア部24F,24Bの周縁を破断させる破断予定部27、さらに、リテーナ50の後述する周縁部51の領域、から構成されている。破断予定部27は、前後両側に開くドア部24F,25Bの周縁に配置されて、上方から見て、前後のドア部24F,25Bの境界部位における左右方向に延びる横線部28と、横線部28の左右両側で前後両側に延びる縦線部29(L,R)と、を配設させた略H字状に配設されている。
【0027】
さらに、エアバッグカバー20は、エアバッグカバー本体31と、エアバッグカバー本体31の表面側に接着される表皮層62と、を備えた構造としている。
【0028】
エアバッグカバー本体31は、ドア部24(F,B)を含めたエリアに配設されるポリプロピレン等の合成樹脂製とした基材32と、ドア部24(F,B)の配設エリア22における基材32の裏面32b側に結合されるように配設されて、基材32より軟質のオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製のリテーナ50と、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグカバー本体31は、基材32とリテーナ50との成形材料による二色成形により一体成形された二色成形品として構成されている。
【0029】
なお、エアバッグカバー本体31の基材32と表皮層62とは、インパネ2のエアバッグカバー20のエリアである助手席側部2bだけで無く、運転席側部2aや中央部2cにも延設されている。すなわち、エアバッグカバー20の一般部21は、エアバッグカバー本体31の基材32と表皮層62とから構成されるととともに、インパネ2の運転席側部2a側や中央部2c側にも、延設されるように配設されている。
【0030】
そして、エアバッグカバー20のドア部24F,24Bは、基材32のドア構成部35F,35Bと、リテーナ50に設けられて、それぞれのドア構成部35F,35Bを裏面側から保持するように、ドア構成部35F,35bに結合されるドア支持部58F,58Bと、を備えて構成され、さらに、各ドア構成部35F,35Bの表面側には、表皮層62のドア表皮部66が、接着されて配設されている。
【0031】
表皮層62は、表面62a側に配設される表皮としてのファブリック63と、ファブリック63を接着させたシート状のクッション層64と、を備えて構成されている。ファブリック63は、ポリエステル等の糸を経糸と緯糸とに使用して織った織物、としている。クッション層64は、ポリプロピレン等からなるクッション材から形成されている。そして、表皮層62は、各ドア部24F,24Bの表面側に配設されるドア表皮部66と、その周囲の一般部65と、から構成されている。ドア表皮部66の周縁と一般部65との境界部位は、破断予定部27の部位に配設されており、ドア部24(F,B)の開き時、破断される。
【0032】
リテーナ50は、既述のドア支持部58(F,B)と、ドア支持部58(F,B)の周囲に配設される周縁部51と、周縁部51とドア支持部58(F,B)との間で、周縁部51と各ドア支持部58(F,B)の元部58bとを連結するように配設されて、ドア部24(F,B)の開き時に撓み可能な薄肉とした略平板状のヒンジ部60(F,B)と、を備えて構成される。リテーナ50は、ドア支持部58F及びヒンジ部60Fの周縁や、ドア支持部58B及びヒンジ部60Bの周縁と、周縁部51の内周側との間には、破断予定部27に対応する隙間56を設けている。すなわち、隙間56は、上方から見て、破断予定部27の横線部28に対応する横棒部56aと、破断予定部27の左右の縦線部29(L,R)に対応する縦棒部56b(L,R)と、を備えた略H字状としている(図6参照)。
【0033】
そして、実施形態の場合、基材32は、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)の配設部位に、空間部47(F,B)を設けて、ヒンジ部60(F,B)の部位を、基材32を配設していない非配設部としている。そのため、エアバッグカバー20では、ドア部24(F,B)のヒンジ部位25が、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)の領域となって、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)と、ヒンジ部60(F,B)に接着された表皮層62と、の2層から構成されている。
【0034】
また、リテーナ50の周縁部51は、突出用開口68の周縁に配設される略四角環状として、下方に延びる四角筒形状の連結壁部53の上端から外側に延びる鍔部52、を備えて構成されている。鍔部52は、連結壁部53の前後左右に配設される前側鍔部52a、後側鍔部52b、左側鍔部52c、及び、右側鍔部52d、から構成されている。また、周縁部51は、連結壁部53の後述する左右の左壁部53cと右壁部53dの内側に延びる内側張出部52ca,52daを、備えて構成されている。
【0035】
リテーナ50の連結壁部53の前後の前壁部53aと後壁部53bとには、エアバッグ装置10の取付ベース15の係止フック17aを挿入させる係止孔54が形成されている(図2参照)。
【0036】
そして、基材32は、エアバッグカバー20のドア配設エリア22に配設されるドア配設エリア34と、その周囲のエアバッグカバー20の一般部21に配設される一般部33と、を備えて構成されている。ドア配設エリア34は、ドア構成部35(F,B)と、各ドア構成部35の元部35b側に配設される長方形の開口とした空間部47(F,B)と、各ドア構成部35F,35Bの先端縁35aと側縁35dとに配設されて、破断予定部27を構成する脆弱部36と、リテーナ50の周縁部51と結合される周縁結合部48と、から構成されている(図7参照)。
【0037】
周縁結合部48は、周縁部51の鍔部52における前側鍔部52aと結合される前側部48a、後側鍔部52bと結合される後側部48b、左側鍔部52cと結合される左側部48c、及び、右側鍔部52dと結合される右側部48d、を備えて構成されている。そして、左右の左側部48cと右側部48dは、リテーナ50の隙間56の縦棒部56bL,56bRまで延びて、ドア構成部35F,35Rの左右の側縁35d付近まで配設される内側張出部48ca,48daを配設させている(図2,3,6,7参照)。内側張出部48ca,48daは、脆弱部36側の一部の下方側に、リテーナ50の内側張出部52ca,52daを結合させる構成としている。
【0038】
破断予定部27を構成する脆弱部36は、略H字状の破断予定部27の横線部28と縦線部29(L,R)とに沿うように、帯状の複数の破断用開口37と、破断用開口37間を塞ぐように配設されて、エアバッグ11の膨張時に破断される複数の破断用連結部41(A,B),45と、を配設させて構成されている(図5,7参照)。
【0039】
そして、破断予定部27の横線部28の部位では、破断用開口37を塞ぐように、破断用連結部41(A,B)が配設され(図8,9参照)、縦線部29(L,R)の部位では、破断用開口37を塞ぐように、破断用連結部45が配設されている(図10参照)。
【0040】
実施形態の場合、横線部28の左右方向の中央部位28a付近が、ドア部24(F,B)の開く際の破断の起点部位としている。
【0041】
そして、横線部28に配設される破断用連結部41(A,B)は、隣接する破断用開口37,37間の平面視の幅寸法として、前部側のドア構成部35Fの先端縁35a側となる元部41a側より、離隔された先端部41b側を小さくして、配設されている(図8,9参照)。すなわち、破断用連結部41(A,B)は、平面視の状態で、前方側の元部41aの幅寸法W11,W21が、後方側となる先端部41bの幅寸法W12,22より、幅広としている。
【0042】
なお、実施形態の場合、破断用連結部41(A,B)は、横線部28に14個配設され、中央部位28a付近のエリアには、4個の破断用連結部41Aが配設され、中央部位28a付近からずれた破断用連結部41Bは、左右に5個ずつ配設されている。
【0043】
中央部位28a付近の破断用連結部41Aは、隣接する破断用開口37,37側の幅方向(左右方向)の側縁42,43と破断用開口37の前後方向で対向する対向縁38,39との交差角度において、先端部41b側の交差角度θAを、鋭角状(実施形態の場合、約60°)としている。
【0044】
また、横線部28の左右方向の中央部位28aから左右に外れた縦線部29(L,R)側の破断用連結部41Bは、図9に示すように、隣接する破断用開口37,37側の幅方向(左右方向)の側縁42,43と破断用開口37の前後方向で対向する対向縁38,39との交差角度において、後側(ドア部24B側)となる先端部41b側の交差角度θBを、鋭角状としているものの、破断用連結部41Aに比べて、大きくしている(実施形態の場合、約75°)。
【0045】
なお、基材32の厚さ寸法Bt2は、約3mm、破断用開口37の開口幅寸法H0は、約1mmとし、破断用連結部41Aの元部41aの幅寸法W11は、約4.2mm、先端部41bの幅寸法W12は、約3mmとし、破断用連結部41Bの元部41aの幅寸法W21は、約4.54mm、先端部41bの幅寸法W22は、約4mmとしている。
【0046】
また、縦線部29(L,R)に配設される破断用連結部45は、隣接する破断用開口37間を塞ぐように配設されているものの、平面視で鼓状として、破断用開口37側の側縁45d,45eを半円弧状として、ドア構成部35F,35B側の元部45aと、周縁結合部48の左側部48cや右側部48dの側の先端部45bとが、対称形状として、形成されている(図10参照)。鼓状の破断用連結部45は、ドア構成部35F,35Bの左右の側縁35d側で2個ずつ配設されており、それぞれ、エアバッグ11の膨張に伴なう破断時、ドア部24(F,B)側の元部45aと、ドア部24(F,B)から離れた側の先端部45bと、の間の幅寸法の狭い中間部45c付近が破断することとなる。中間部45cの幅寸法W3は、約3mmとしている。
【0047】
なお、縦線部29(L,R)は、前部側が前側のドア構成部35Fの側縁35d側に配設され、後部側が後側のドア構成部35Bの側縁35d側に配設され、前後方向の中央部位29aでは、横線部28側の破断用連結部41からY字状の二股状に破断用開口37が前後両側に伸びて、それぞれ、破断用連結部45を介在させて、前後に、破断用開口37を伸ばすように、形成されている(図5,7参照)。
【0048】
基材32における前後のドア構成部35(F,B)は、空間部47(F,B)側の元部35b側を空間部47(F,B)側に向かって薄肉となるテーパ部35cとして(図2,3参照)、先端縁35a側を、脆弱部36における破断予定部27の横線部28を跨いで、同等の厚さ寸法とした平板状としている。基材32におけるテーパ部35cを除いて、ドア構成部35(F,B)や周縁結合部48のドア配設エリア34の厚さ寸法Bt2は、一般部33の厚さ寸法Bt1と同等とした約3mmとしている。
【0049】
また、リテーナ50では、鍔部52の厚さ寸法Rt1を、約4mm、ドア支持部58(F,B)の厚さ寸法Rt2を、約2mm、ヒンジ部60(F,B)の厚さ寸法Rt3を、約0.5~1.5mmの範囲内の約1mmとしている(図3参照)。
【0050】
なお、表皮層62の厚さ寸法St0は、約2.6mmとしている。
【0051】
エアバッグカバー20の製造時には、まず、エアバッグカバー本体31を成形する。その成形型70は、図11~13に示すように、基材32とリテーナ50との成形材料M1,M2を使用して二色成形できるものであり、基材32を成形可能な割型73,74と、割型73を共用して、リテーナ50を成形可能な割型75と、を備えて構成されている。割型73,74の型閉じ時、それらの型面73a,74aから基材32を成形可能なキャビティ71が形成され、キャビティ71内に所定の成形材料M1を注入して固化させれば、基材32を形成することができる。その後、型開きさせて、割型73側に基材32を保持させた状態で、割型74を割型75に交換して、割型73,75を型締めさせれば、それらの型面73a,75aからリテーナ50を成形可能なキャビティ72が形成され、キャビティ72内に所定の成形材料M2を注入して固化させれば、基材32に結合させた状態でリテーナ50を形成することができる。そして、スライドコア77,78をスライドさせつつ、型開きさせて、二色成形品としたエアバッグカバー本体31を取り出して、表皮層62を接着させれば、エアバッグカバー20を製造することができる。
【0052】
なお、破断予定部27を形成する基材32の脆弱部36と空間部47(F,B)とは、割型73,74による基材32の型成形時に、一体的に形成されている。
【0053】
このように製造したエアバッグカバー20を使用したエアバッグ装置10の組み立ては、まず、エアバッグ11内にリテーナ12を収納させた状態で、エアバッグ11を折り畳み、図示しないラッピング材により、折り畳んだエアバッグ11を包み、そのエアバッグ11を取付ベース15内に収納する。この時、リテーナ12の各ボルト12aは、取付ベース15の底壁部16から下方に突出させる。ついで、取付ベース15の挿通孔16aに対して、下方から、インフレーター14の本体部14aを挿入させて、リテーナ12の各ボルト12aをインフレーター14のフランジ部14cに貫通させて、各ボルト12aにナット13を締結すれば、取付ベース15に、折り畳んだエアバッグ11とインフレーター14とを取付固定することができる。
【0054】
その後、インパネ2を車両1のボディ側に固定するとともに、エアバッグカバー20のリテーナ50の連結壁部53の係止孔54に、取付ベース15の係止フック17aを挿入係止させ、所定の制御装置から延びる作動用信号の入力用の図示しないリード線を、インフレーター14に結線し、さらに、取付ベース15を所定のブラケットを利用して、車両1のボディー側に取付固定すれば、エアバッグ装置10を車両1に搭載することができる。
【0055】
このように車両1に搭載したエアバッグ装置10では、膨張用ガスGを吐出するようにインフレーター14が作動すれば、エアバッグ11が膨張用ガスGを流入させて膨張する。そして、エアバッグ11の膨張時、エアバッグカバー20は、破断予定部27を構成する基材32の脆弱部36における破断用連結部41(A,B),45を破断させて、ドア部24(F,B)が、ヒンジ部位25のリテーナ50のヒンジ部60(F,B)を撓ませ、表皮層62を破断しつつ、押し開かれて、突出用開口68を開口させ、突出用開口68からエアバッグ11が突出することとなる(図2の二点鎖線参照)。
【0056】
そして、実施形態のエアバッグカバー20では、ドア部24F,24Bの開き時のヒンジ部位25が、空間部47(F,B)を設けた基材32の非配設部位として、基材32を配設させておらず、可撓性を有した表皮層62と、基材32より軟質の合成樹脂からなるリテーナ50のヒンジ部60(F,B)と、の2層から構成されている。そのため、ドア部24F,24Bの開き時に、基材32自体を撓ませないことから、円滑にヒンジ部位25が撓んで、ドア部24F,24Bが開くこととなる。また、基材32とリテーナ50とからなるエアバッグカバー本体31の表面には、ヒンジ部位25を含めて、表皮層62が配設されており、基材32が空間部47(F,B)を含めて表面側に露出しないことから、エアバッグカバー20の意匠性が向上する。
【0057】
したがって、実施形態のエアバッグカバー20では、ドア部24(F,B)の開き性能を向上させることができるとともに、意匠性を向上させることができる。
【0058】
なお、実施形態では、基材32のドア構成部35(F,B)の元部35bが、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)側にかけて、テーパ部35cを設けて、徐々に薄肉として、空間部47(F,B)としていることから、リテーナ50より硬質とした基材32が、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)の撓み性能を阻害せず、円滑に、ドア部24(F,B)を開かせることができる。
【0059】
そして、実施形態のエアバッグカバー20では、ドア部24(F,B)が、外表面側から、表皮層62、基材32のドア構成部35(F,B)、及び、リテーナ50のドア支持部58(F,B)、を配設させた3層から構成されている。
【0060】
そのため、実施形態では、ドア部24(F,B)が、エアバッグカバー20におけるドア部24(F,B)の配設エリア22を除く一般部21のエリア、すなわち、リテーナ50の設けられていない一般部21のエリアと同様に、表面側の表皮層62の裏面側に、基材32が配設される構成となって、ドア部24(F,B)の表皮層62が、裏面側の基材32に支持される態様となることから、ドア部24(F,B)の触感を一般部21の触感と同等にすることができる。
【0061】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、ヒンジ部60(F,B)の配設部位を除いたドア部24(F,B)の周囲に、膨張するエアバッグ11に押されて破断する破断予定部27が配設され、破断予定部27が、リテーナ50の非配設部位として、表皮層62と、脆弱部36を設けた基材32と、の2層から構成されている。
【0062】
そのため、実施形態では、ドア部24(F,B)の開き時に破断する破断予定部27が、リテーナ50の部位を配設させずに構成されることから、膨張するエアバッグ11に押されて開く破断予定部27が、破断可能な表皮層62と、脆弱部36を設けた容易に破断する基材32と、の2層だけで構成されて、ドア部24(F,B)の開き時における破断予定部27の破断が円滑に行なわれて、ドア部24(F,B)の開き性能を安定させることができる。
【0063】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、リテーナ50が、周縁部51に、折り畳まれたエアバッグ11を保持するエアバッグ装置10の取付ベース15と連結される連結壁部53、を配設させて構成されている。
【0064】
そのため、実施形態では、エアバッグカバー20のドア部24(F,B)の配設エリア22が、リテーナ50の周縁部51から延びる連結壁部53を介して、エアバッグ装置10における折り畳んだエアバッグ11を保持する取付ベース15と連結されることから、エアバッグ11の膨張時、リテーナ50の周縁部51が、エアバッグ装置10の取付ベース15に連結されて、取付ベース15側から離れるように移動しないことから、リテーナ50における周縁部51に対してヒンジ部60(F,B)を介して連結される構成のドア部24(F,B)が、膨張するエアバッグ11の押圧力を的確に受けて、迅速に開くことができる。
【0065】
なお、上記の点を考慮しなければ、リテーナ50の連結壁部53等を、周囲のインパネリンホース等の車体側の部材と連結させてもよい。
【0066】
さらに、実施形態のエアバッグカバー20では、ドア部24(F,B)の配設エリア22におけるヒンジ部60(F,B)の外側エリア、すなわち、前側鍔部52aや後側鍔部52bのエリアには、表皮層62、基材32(周縁結合部48の前側部48aと後側部48b)、及び、リテーナ50(リテーナ50の周縁部51の前側鍔部52aや後側鍔部52b)の3層から形成される部位が、配設されている。
【0067】
そのため、実施形態では、エアバッグカバー本体31における基材32に対して、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)の部位が結合されていなくとも、リテーナ50の周縁部51が結合される構成となって、ドア部24(F,B)が開く際に、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)に強い引張力が加わっても、リテーナ50のヒンジ部60(F,B)近傍の周縁部51の部位(前側鍔部52aや後側鍔部52b)が、基材32(周縁結合部48の前側部48aと後側部48b)と結合されて、基材32から剥離することが防止されることから、ドア部24(F,B)は、エアバッグカバー20におけるリテーナ50の設けられていない一般部21のエリアの表皮層62等に、影響を与えること無く、円滑に、ヒンジ部位25(リテーナ50のヒンジ部60(F,B))を撓ませつつ、開くことができる。
【0068】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、破断予定部27を構成する脆弱部36において、エアバッグ11の膨張時、ドア部24(F,B)が、膨張するエアバッグ11に押されて、破断予定部27の起点部位となる横線部28の中央部位28a付近の破断用連結部41Aを破断させる。この破断される破断用連結部41Aは、幅寸法W12の狭い側に応力集中が生じて破断される。その際、破断用連結部41Aは、前方側のドア部24Fのドア構成部35Fにおける先端縁35aに接近した幅寸法W11の広い元部41a側を残して、幅寸法W12の狭い先端部41b側を破断させることから、図14のA,Bに示すように、その幅寸法W12の狭い先端部41b側の破断面41baにおける基材32の表面32aの縁角41bbを、ドア部24Fとしてのドア構成部35Fの開きに伴なって、ヒンジ部60Fを回転中心として、表皮層62の裏面62b側に当てて、表皮層62を押し上げる。すなわち、図14のA,B,Cに示すように、破断用連結部41Aが、ドア部24Fにおけるドア構成部35Fの先端縁35aに結合させたまま、その幅寸法W12の狭い先端部41b側の縁角41bbが、ドア構成部35Fの先端縁35aから突出するナイフのように、表皮層62に食い込んで、表皮層62を円滑に破断させることができる。その結果、基材32のドア構成部35Fの開きとともに、表皮層62が、ドア構成部35Fの先端縁35a側から迅速に破断され、さらに、ドア構成部35Fの周縁に破断を伝播させて、ドア部24Bとともに、円滑に、エアバッグ11の突出用開口68を形成することとなる(図2の二点鎖線参照)。そして、ドア構成部35は、表皮層62に対して突条等を設けていないことから、表皮層62の表面62a側の意匠性に影響を与えない。
【0069】
さらに、実施形態のエアバッグカバー20では、破断の起点部位となる横線部28の中央部位28a付近の破断用連結部41Aが、幅方向の両縁42,43側における幅寸法W12を小さくした先端部41b側の端縁42a,43aを、連結される破断用開口37側の縁39に対して、平面視で鋭角状として、連結させている(図8,9参照)。
【0070】
そのため、実施形態では、起点部位となる中央部位28a付近の破断用連結部41Aが、幅寸法W12を狭くする先端部41b側において、鋭角状に、隣接する破断用開口の縁39と連結されていれば、エアバッグ11の膨張に伴なう引張力を受けた際、その部位に円滑に応力集中が生じて、容易に、破断される。また、破断した先端部41bから延びる破断用開口37側の端縁42a,43aが、破断用開口37側の縁39に対して、破断前に鋭角状に連結されていた状態としていたことから、破断時には、破断用連結部41Aの先端部41bの押し上げに伴ない、先端部41bの破断した端面(破断面)41ba側の縁角41bbから連なって、押し切りするように、表皮層62の裏面62b側に進入し、先端部41bの押し上げによる破断箇所からの破断を伝播し易くなって、破断の起点部位の中央部位28a付近から、破断予定部27に沿って、円滑に、表皮層62を破断させることができる。
【0071】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、図9に示すように、破断予定部27の破断の起点の中央部位28a付近では、破断用連結部41Aが、側縁42,44の幅寸法W12の狭い先端部41bの端縁42a,43aと、破断用開口37の縁39と、の交差角度θAを約60°とし、中央部位28aから離れた破断用連結部41Bにおける側縁42,43の幅寸法W22の狭い先端部41bの端縁42a,43aと、破断用開口37の縁39と、の交差角度θBを約75°として、鋭角状の度合いを中央部位28a付近を高めている。そのため、エアバッグ11の膨張時、交差角度θAの鋭角状態を高めた破断用連結部41Aを配置させた横線部28の左右方向の中央部位28a付近が、他の部位に比べて応力集中し易く、破断し易くなり、的確に、破断の起点部位として、破断して、ドア部24(F,B)のドア構成部35(F,B)が、ヒンジ部60(F,B)を回転中心として、先端縁35a側を円滑に回転させて、開くことができる。
【0072】
なお、実施形態では、破断用連結部41(A,B)の先端部41b側の端縁42a,43aと破断用開口37の縁39との交差角度に関し、交差角度θA(約60°)と交差角度θB(約75°)との二種類として、小さい交差角度θAを破断の起点となる中央部位28a側に配置させた場合を示したが、横線部28の中央部位28aが、破断の起点部位と設定される構成であれば、横線部28の全域を同じ鋭角状の交差角度として、破断用連結部41の先端部41bを配設してもよい。また、破断用連結部41の側縁42,43における端縁42a,43aと、破断用開口37の縁39と、の交差角度θA,θBに関し、少なくとも一方が、鋭角状としていれば、相互に等しく無くとも、他方が、90°近傍の鈍角としてもよく、さらに、交差角度θAと交差角度θBとは、共に鋭角状であれば、相互に等しく無くともよい。
【0073】
また、実施形態のように、鋭角状の交差角度を、破断の起点部位(中央部位28a)側から離れるに従って、順次、大きくする場合、実施形態のように、2段階にするほか、破断の起点部位付近の交差角度から、順次、多段的に、大きくするように設定してもよい。
【0074】
さらに、実施形態のエアバッグカバー20は、破断用連結部41(A,B)の幅広の元部41a側を前側のドア部24Fに配置させて、車両1の前席前方のインパネ2に配設されるエアバッグカバー20、として構成されている。
【0075】
そのため、実施形態では、エアバッグ11の膨張に伴なって、ドア部24F,24Bが開く際、前方側のドア部24Fの先端縁35a側では、破断用連結部41A,41Bが幅寸法W12,W22の狭い先端部41b側を破断させることから、すなわち、前方のドア部24F側に破断用連結部41A,41Bを結合させた状態で、かつ、後方のドア部24b側に破断用連結部41A,41Bを結合させない状態で、ドア部24F,24Bが開くこととなり(図2の二点鎖線参照)、乗員に近い後方側のドア部24Bが、開き時の先端縁35a側に、破断用連結部41A,41Bを結合させない状態で、開くこととなる(図14のC参照)。そのため、後方のドア部24Bが開き時に乗員と接触することとなっても、凹凸の少ない先端縁35a側を接触させることができる。
【0076】
また、実施形態では、基材32のドア構成部35(F,B)や周縁結合部48が、略平面状として、リテーナ50のドア支持部58(F,B)や周縁部51に、結合されている構成を例示したが、基材32のドア構成部35(F,B)付近のリテーナ50との結合強度(接着強度)を向上させるように、図15,16に示すエアバッグカバー20Cのように、構成してもよい。このエアバッグカバー20Cでは、基材32Cとリテーナ50Cとの成形材料による二色成形により一体成形されるとともに、基材32Cのドア構成部35(F,B)の左右両側の周縁結合部48Cの左側部48cや右側部48dに嵌合孔48cb,48dbが形成され、リテーナ50Cの周縁部51に、嵌合孔48cb,48dbに嵌め込まれるように成形される嵌合凸部51a、が形成されて構成されている。このエアバッグカバー20Cのエアバッグカバー本体31Cでは、基材32Cとリテーナ50Cが、嵌合孔48cb,48dbに嵌合凸部51aが嵌合されるように、二色成形されることから、結合面積(接着面積)が増えて、リテーナ50Cのドア支持部58(F,B)や周縁部51Cの基材32Cへの結合強度(接着強度)を向上させることができる。
【0077】
また、実施形態のエアバッグカバー20では、エアバッグカバー本体31が、基材32とリテーナ50との成形材料による二色成形により一体成形されて形成されている。
【0078】
そのため、実施形態では、基材32とリテーナ50とを、別々で形成して、振動溶着等により接着してエアバッグカバー本体を形成したり、インサート成形してエアバッグカバー本体を形成する場合に比べ、型費や工数を低減させて、効率的にエアバッグカバー本体31を形成することができることから、エアバッグカバー20の製造工数・コストを低減することに寄与できる。勿論、この点を考慮しなければ、基材32とリテーナ50とを、別々で形成して、振動溶着等により接着してエアバッグカバー本体を形成したり、予め、基材32若しくはリテーナ50の一方を先に成形しておいて、その成形品をインサートとして、インサート成形して、エアバッグカバー本体を形成してもよい。
【0079】
なお、実施形態では、エアバッグカバーのドア部が、前後両側に開く構成としているが、前方側等に開く一枚状のドア部としてもよい。また、ドア部としては、破断予定部が横線部の両端をY字状に開いた形状として、横線部の両側の例えば前後両側の2枚と、横線部の両側のY字状の破断予定部で囲まれた左右両側の2枚と、の四枚扉タイプとしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…エアバッグ装置、11…エアバッグ、15…取付ベース、20,20C…エアバッグカバー、21…一般部、22…ドア配設エリア、24(F,B)…ドア部、25…ヒンジ部位、27…破断予定部、31,31C…エアバッグカバー本体、32,32C…基材、32a…表面、32b…裏面、35(F,B)…ドア構成部、36…脆弱部、47(F,B)…空間部、48,48C…周縁結合部、50,50C…リテーナ、51,51C…周縁部、53…連結壁部、54…係止孔、58(F,B)…ドア支持部、60(F,B)…ヒンジ部、62…表皮層、68…突出用開口、M1…(基材の)成形材料、M2…(リテーナの)成形材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16