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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20241022BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/207
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021191607
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023078031
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-160413(JP,A)
【文献】特開2021-054251(JP,A)
【文献】特開2021-160414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0122667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/18
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、該シートベルトにおいて装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグと、該エアバッグを折り畳んで構成される折り完了体の周囲を覆うカバー部と、を有する構成とされて、
前記エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれた前記折り完了体の状態で、前記ラップベルトに対してずれ移動可能に、前記ラップベルトに保持される構成とされるとともに、前記シート側に配設されるインフレーターと接続されて、内部に膨張用ガスを流入させて前記ラップベルトから前上方に向かって突出するように膨張する構成とされて、
前記折り完了体が、前記乗員の前記シートベルトの装着時に、位置調整手段を介して、前記シート側に連結されることにより、前記ラップベルトに対する位置を調整可能に、構成され、
前記カバー部が、前記折り完了体を保持可能な保持板部と、前記折り完了体の周囲を覆うカバー本体と、を備え、
前記保持板部が、形状保持性を有するとともにある程度撓み可能な長尺体から形成されるとともに、前記折り完了体の下面側を全域にわたって覆い可能で、かつ、前記ラップベルトの下面側となる位置に配置されて、長手方向の両端側に、前記各位置調整手段を連結させるための連結環部を、備える構成とされ、
該連結環部が、前記保持板部から上方に突出するように形成されるとともに、前記ラップベルトを挿通可能に構成され、
前記位置調整手段が、長尺状の弾性体から形成されるとともに、前記シートベルトの装着状態において、前記折り完了体における前記ラップベルトに沿った方向側の両端側となる前記各連結環部からそれぞれ延びるように配置されて、先端側を、前記シート側に連結される構成とされ、
前記各位置調整手段が、弾性係数を同等として、前記各先端を、前記シートベルトにおいて前記シート側に設けられるバックルに連結されるタングプレートの近傍となる位置と、前記シート側における前記バックルと略左右対称となる位置と、に、それぞれ、連結させる構成とされるとともに、前記シートベルトの装着状態において、弾性変形して、前記折り完了体を前記シートの左右方向の略中央に配置可能に、構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記各位置調整手段が、前記シートベルトの装着状態において、前記シートベルトの装着前と比べて引張荷重を作用させる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、折り畳まれたエアバッグを保持させた保持体を、シートに着座した乗員の腰部の周囲にセットして、作動時に、膨張するエアバッグによってシートに着座している乗員を保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。このような構成の乗員保護装置では、乗員の腰部の周囲に保持体をセットする構成であることから、乗員の体格差(腰回りの大きさの違い)によって、折り畳まれたエアバッグ(折り完了体)の配置位置に差が生ずることとなる。膨張したエアバッグによって乗員を安定して拘束するためには、エアバッグを、左右の中央の位置を乗員の左右の中央と略一致させるようにして、膨張させることが望ましく、従来の乗員保護装置では、折り完了体の両側に位置調整手段を配置させることにより、膨張したエアバッグによって折り畳まれたエアバッグ(折り完了体)の乗員に対する位置を調整可能な構成としていた。具体的には、従来の乗員保護装置では、位置調整手段として、ゴム状弾性体からなる蛇腹筒状のものを、折り完了体の左右両側において、それぞれ、保持体の周囲に配置させることにより、位置調整手段の反発力を利用して、折り完了体の乗員に対する位置調整を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-160413公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、位置調整手段の長さ寸法が左右で異なっていることから、左右の位置調整手段で同等の反発力を発揮し難く、装着時の折り完了体の位置を、長手方向の中央を乗員の左右の中央と略一致させるように、的確に調整する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、装着時に、着座する乗員の体格に応じて、折り畳まれたエアバッグの配置位置を、的確に調整可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、シートベルトにおいて装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグと、を有する構成とされて、
エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれた折り完了体の状態で、ラップベルトに対してずれ移動可能に、ラップベルトに保持される構成とされるとともに、シート側に配設されるインフレーターと接続されて、内部に膨張用ガスを流入させてラップベルトから前上方に向かって突出するように膨張する構成とされて、
折り完了体が、乗員のシートベルトの装着時に、位置調整手段を介して、シート側に連結されることにより、ラップベルトに対する位置を調整可能に、構成され、
位置調整手段が、長尺状の弾性体から形成されるとともに、シートベルトの装着状態において、折り完了体におけるラップベルトに沿った方向側の両端側からそれぞれ延びるように配置されて、先端側を、シート側に連結される構成とされ、
各位置調整手段が、弾性係数を同等として、各先端を、シートベルトにおいてシート側に設けられるバックルに連結されるタングプレートの近傍となる位置と、シート側におけるバックルと略左右対称となる位置と、に、それぞれ、連結させる構成とされるとともに、シートベルトの装着状態において、弾性変形して、折り完了体をシートの左右方向の略中央に配置可能に、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体が、シートベルトの装着時において、両端側から延びるように配置されて、それぞれ、先端側をシート側に連結される2つの位置調整手段によって、ラップベルトに対する位置を調整可能とされており、この2つの位置調整手段は、長尺状の弾性体から形成されるとともに、弾性係数を同等として、先端側を、シート側において、略左右対称となる位置に連結させる構成とされている。すなわち、本発明の乗員保護装置では、折り完了体から左右に延びる位置調整手段は、長さ寸法を略同一に設定されて、弾性係数を同等とされていることから、位置調整手段の同等の弾性力を利用して、折り完了体を、ラップベルトに対してずれ移動させつつ、中央を、ラップベルトにおける長さ方向の中央に略一致させるように、容易に位置合わせすることができる。その結果、本発明の乗員保護装置では、シートベルトの装着時に、乗員の体格(腰回りの大きさ)に応じて、腰回りの周囲に配置されるラップベルトの繰り出し量が異なっていても、折り完了体を、ラップベルトの長さ方向の略中央(すなわち、シートに着座している乗員の左右の略中央)となる位置に、容易に配置させることができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、装着時に、着座する乗員の体格に応じて、折り畳まれたエアバッグの配置位置を、的確に調整することができる。
【0009】
また、本発明の乗員保護装置において、各位置調整手段を、シートベルトの装着状態において、シートベルトの装着前と比べて引張荷重を作用させる構成としていることから、シートベルトの装着時に、位置調整手段に生じる引張荷重が、折り完了体を乗員側に密着させるように作用することととなり、ラップベルトを乗員側に密着させることが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの右側面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図3図1のシートの左側面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図4図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図5】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図6図5のエアバッグの概略縦断面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置におけるカバー部に覆われた折り完了体と、ラップベルトと、を示す概略斜視図である。
図8】実施形態の乗員保護装置において、カバー部に覆われた折り完了体の部位を示す概略平面図である。
図9】実施形態の乗員保護装置において、カバー部における保持板部と、ラップベルトと、位置調整手段と、を示す概略部分拡大斜視図である。
図10】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図11】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Sは、図1~4に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト7と、エアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター17と、エアバッグ25を折り畳んで構成される折り完了体55の周囲を覆うカバー部45と、折り完了体55の後述するラップベルト10に対する位置を調整可能な位置調整手段50と、を備える構成とされている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0012】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを拘束するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。バックル13は、シート1における座部3の後右端3c側(背もたれ部2と座部3との境界部位付近の右側)に、配置されている(図1,2参照)。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後左端3b側に配置されるアンカ部材14(図1,3参照)に係止されて、装着時にリトラクタから繰り出し可能に構成されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、図1に示すように、エアバッグ25を配置させるラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩部から胸部にかけて)を拘束する構成とされている(図2,3参照)。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0013】
インフレーター17は、シート1側に配設されるもので、詳細には、実施形態の場合、シート1における座面3aよりも下方となる位置に、配設されている。具体的には、インフレーター17は、図2に示すように、シート1の背面側における座部3より下方となる位置において軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状のインフレーター本体18(詳細な図示は省略)と、インフレーター本体18から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給するパイプ部19と、を備えている。パイプ部19は、インフレーター本体18から延びて、先端を、シート1の左方において、座部3と背もたれ部2との境界部位付近に位置させるように、配設されるもので、この先端を、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部35と接続させる構成とされている(図1,2参照)。実施形態の場合、インフレーター本体18は、エアバッグ25の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。
【0014】
エアバッグ25は、図5,6に示すように、乗員MPを保護可能に膨張するバッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26に膨張用ガスを流入させる導管部35と、バッグ本体26をラップベルト10に保持させるための取付部40と、を備えている。
【0015】
バッグ本体26は、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱状として構成されるもので、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(図10,11参照)。バッグ本体26は、図5,6に示すように、膨張完了時に乗員MP側(後側)に配置される後壁部28と、後壁部28と前後方向側で対向して配置される前壁部27と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部29と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部30,右壁部31と、を有している。このバッグ本体26は、膨張完了時に、後壁部28によって乗員MPの上半身MUを受け止める構成であり、また、この後壁部28による上半身MUの受止時に、下壁部29を、乗員MPの大腿部MTと当接させて、大腿部MTに支持させることにより、乗員MPを受け止める構成とされている(図11参照)。このバッグ本体26は、下壁部29における後端29aの下面側に、導管部35を配設させ、この導管部35を介して、インフレーター17からの膨張用ガスを内部に流入させる構成である。すなわち、下壁部29における後端29a側の領域には、導管部35と連通される連通孔33が、円形に開口して、実施形態の場合、左右方向側で2個並設されている。そして、バッグ本体26は、この連通孔33の周縁の部位で、導管部35と連結されている。
【0016】
導管部35は、バッグ本体26の下面側から、実施形態の場合、左方に延びるように配設されて、インフレーター17のパイプ部19と接続されるもので、バッグ本体26側となる元部側を閉塞させ、先端37a側を、パイプ部19と接続可能に開口させて構成されている。具体的には、導管部35は、図5に示すように、バッグ本体26の下面側に位置する幅広の元部側部位36と、膨張完了時のバッグ本体26から左方に延びるように配設される先端側部位37と、を有する構成とされている。先端側部位37は、元部側部位36より狭幅に形成されている。この導管部35は、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成であり、先端側部位37における先端37a側を、上述したごとく、クランプ20を用いて、インフレーター17のパイプ部19に、接続される構成である。実施形態の場合、導管部35は、先端側部位37の長さ寸法を、後述するごとく、バッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55(具体的には、導管部35自体における元部側部位36も含み、折り完了体55と元部側部位36との周囲を包んでいるカバー部45)の位置調整に影響を与えないような寸法(余裕をもたせた長めの寸法)に、設定されている。
【0017】
バッグ本体26をラップベルト10に取り付ける取付部40は、図5,6に示すように、導管部35における元部側部位36の下面側に配置されるもので、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配設される略筒状として、ラップベルト10を挿通可能に構成されている。この取付部40にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ25は、ラップベルト10に連結されて、ラップベルト10に保持される構成である。
【0018】
実施形態では、エアバッグ25は、バッグ本体26の領域を、長尺状に折り畳まれるようにして、このバッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55の状態で、ラップベルト10に対してずれ移動可能に、ラップベルト10に保持される構成である。具体的には、エアバッグ25は、詳細な図示を省略するが、前壁部27を後壁部28及び下壁部29に重ねるようにして、略平らに展開した状態のバッグ本体26を、前後方向の幅寸法を縮めるように折り畳んで、左右方向に略沿った長尺状の折り完了体55を形成するように折り畳まれる。そして、エアバッグ25は、バッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55と導管部35における元部側部位36とを、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられて、周囲を、取付部40も含めてカバー部45に覆われるようにして、ラップベルト10の領域に配置されている(図8参照)。折り完了体55は、図1に示すような非装着状態においては、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。また、実施形態の場合、導管部35における先端側部位37は、シートベルト7の装着状態において、折り完了体55(カバー部45)の左方において、ラップベルト10と位置調整手段50Lとの上面側に露出して配置されている(図3,4参照)。
【0019】
カバー部45は、図8に示すように、バッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55を保持可能な保持板部46と、折り完了体55の周囲を覆うカバー本体48と、を備えている。保持板部46は、折り完了体55の下面側を、導管部35の元部側部位36及び取付部40の下面側も含めて略全域にわたって覆い可能な長尺体とされるもので、形状保持性を有するとともにある程度撓み可能な合成樹脂製の板材から構成されている。実施形態の場合、保持板部46は、シートベルト7の装着状態において、ラップベルト10の下面側となる位置に、配置される。保持板部46における長手方向側の両端側(左端46a側と右端46b側)には、位置調整手段50(50L,50R)の元部50b側を連結させるための連結環部47が、形成されている(図8参照)。各連結環部47は、ラップベルト10(ベルト本体8)を挿通可能として、保持板部46の上面側から上方側に、略逆U字形状に突出するように形成されている(図9参照)。カバー本体48は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、折り完了体55と導管部35における元部側部位36との周囲を、取付部40とラップベルト10と保持板部46とを含めて覆うもので、ラップベルト10と、位置調整手段50(50L,50R)と、を挿通可能に、両端側を開口させている。このカバー本体48は、エアバッグ25の展開膨張時に、シートベルト7の装着時において折り完了体55の上側を覆う領域の所定箇所を、左右の略全域にわたって破断させて、バッグ本体26を突出可能に、構成されている。このカバー部45(保持板部46及びカバー本体48)は、折り完了体55及び導管部35の元部側部位36とともに、ラップベルト10に対してずれ移動可能に、構成されている。
【0020】
折り完了体55のラップベルト10に対する位置を調整可能な位置調整手段50(50L,50R)は、シートベルト7の装着状態において、実施形態の場合、折り完了体55の周囲を覆っているカバー部45の両端側(左端45a側と右端45b側)からそれぞれ延びるように配置されて、先端50a側をシート1側に連結させる構成である(図2~4参照)。詳細には、位置調整手段50(50L,50R)は、元部50b側を、上述したごとく、カバー部45における保持板部46の左端46a,右端46b側に形成されている連結環部47に、連結させるようにして、カバー部45の左端45a側と右端45b側とからそれぞれのびるように配設されている。すなわち、実施形態の乗員保護装置Sでは、折り完了体55(カバー部45)は、シートベルト7の装着時においては、カバー部45からそれぞれ左方と右方とに延びる位置調整手段50L,50Rを介して、シート1側に連結される構成であり、このように位置調整手段50L,50Rを介してシート1側に連結されることにより、ラップベルト10に対する位置を調整可能とされている。位置調整手段50L,50Rは、長尺状の弾性体から形成されるもので、実施形態の場合、具体的には、ゴム状弾性体を有して、カバー部45よりも若干狭幅とされる帯状体から、形成されている。実施形態の場合、位置調整手段50L,50Rは、ラップベルト10よりも狭幅に形成されている。詳細には、位置調整手段50L,50Rは、シートベルト7の装着時において、ラップベルト10の上側(左側の位置調整手段50Lにおいては、導管部35における先端側部位37とラップベルト10との間)において、ラップベルト10に略沿うように、配置されている(図4,7,8参照)。各位置調整手段50L,50Rは、弾性係数を同等として、長さ寸法も略同一に、設定されている。
【0021】
右側(シートベルト7のバックル13側)に配置される右側位置調整手段50Rは、先端50aを、シートベルト7の装着時においてシート1側に設けられるバックル13に連結されるタングプレート12の近傍に、連結手段51を用いて連結されている。実施形態の場合、タングプレート12は、図7に示すように、先端側をバックル13に連結させる構成とされて、ラップベルト10を挿通させている挿通用スリット12aよりも元部側となる位置に、右側位置調整手段50Rの先端50a側を連結させる連結基部12bを、有する構成とされており、右側位置調整手段50Rの先端50aは、タングプレート12のバックル13への装着時に外部に露出されることとなるこの連結基部12bに、連結される構成である(図2参照)。左側に配置される左側位置調整手段50Lは、先端50aを、シート1の座部3において、バックル13と略左右対称となる位置(座部3の後左端3b側(背もたれ部2と座部3との境界部位付近の左側))であって、実施形態の場合、アンカ部材14の後側近傍に、連結手段52を用いて連結されている。右側位置調整手段50Rは、図1に示すようなシートベルト7の非装着状態においては、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10に略沿うようにして、先端50aを、タングプレート12に連結させて、配設されている。
【0022】
そして、各位置調整手段50(左側位置調整手段50L,右側位置調整手段50R)は、シートベルト7の装着状態において、弾性変形して、折り完了体55(カバー部45)を、シート1の左右方向の略中央に配置可能に、構成されている。具体的には、実施形態の場合、各位置調整手段50(左側位置調整手段50L,右側位置調整手段50R)は、シートベルト7の装着状態において、それぞれ、シートベルト7の装着前と比べて、略同等の引張荷重を作用させることにより、折り完了体55(カバー部45)をシート1の左右方向の略中央(すなわち、シート1に着座している乗員MPの左右方向の略中央)に一致させて配置させるように構成されている(図4参照)。
【0023】
実施形態の乗員保護装置Sでは、ラップベルト10も含めて、折り完了体55と導管部35の元部側部位36との周囲を覆っているカバー部45は、折り完了体55と導管部35の元部側部位36との周囲を略隙間なく覆うように配置されているが、エアバッグ25とは連結されていない。そして、位置調整手段50(50L,50R)は、カバー部45から延びるように形成されている。すなわち、実施形態の場合、折り完了体55は、カバー部45を介して、位置調整手段50(50L,50R)と連結され、ラップベルト10に沿った方向側の両端側から位置調整手段50(50L,50R)を延ばすような構成とされている。
【0024】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載されたシート1にシートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部35を経て、バッグ本体26内に流入することとなり、エアバッグ25におけるバッグ本体26が、カバー部45を破断させるようにして、ラップベルト10から前上方に突出しつつ、図10,11に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0025】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25を折り畳んで形成される折り完了体55が、シートベルト7の装着時において、両端側(実施形態の場合、折り完了体55の周囲を覆っているカバー部45の左端45a,右端45b側)から延びるように配置されて、それぞれ、先端50a側をシート1側に連結される2つの位置調整手段50L,50Rによって、ラップベルト10に対する位置を調整可能とされており、この2つの位置調整手段50L,50Rは、長尺状の弾性体から形成されるとともに、弾性係数を同等として、先端50a側を、シート1側において、略左右対称となる位置に連結させる構成とされている。すなわち、実施形態の乗員保護装置Sでは、折り完了体55(カバー部45)から左右に延びる位置調整手段50L,50Rは、長さ寸法を略同一に設定されて、弾性係数を同等とされていることから、位置調整手段50L,50Rの同等の弾性力を利用して、折り完了体55(カバー部45)を、ラップベルト10に対してずれ移動させつつ、中央を、ラップベルト10における長さ方向の中央に略一致させるように、容易に位置合わせすることができる。その結果、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7の装着時に、乗員MPの体格(腰回りの大きさ)に応じて、腰回りの周囲に配置されるラップベルト10の繰り出し量が異なっていても、折り完了体55(カバー部45)を、ラップベルト10の長さ方向の略中央(すなわち、シート1に着座している乗員MPの左右の略中央)となる位置に、容易に配置させることができる。
【0026】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、装着時に、着座する乗員MPの体格に応じて、折り畳まれたエアバッグ25の配置位置を、的確に調整することができる。
【0027】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、各位置調整手段50L,50Rが、シートベルト7の装着状態において、シートベルト7の装着前と比べて引張荷重を作用させる構成とされている。そのため、シートベルト7の装着時に、位置調整手段50L,50Rに生じる引張荷重が、折り完了体55(カバー部45)を乗員MP側に密着させるように作用することととなり、ラップベルト10を乗員MP側に密着させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、位置調整手段として、例えば、圧縮荷重を作用させることにより、折り完了体の位置を調整可能な構成のものを、使用してもよい。
【0028】
なお、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7とインフレーター17とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグ25によって的確に保護することができる。もちろん、本発明の乗員保護装置は、このような構成のシートに限定されるものではなく、リトラクタを車体側に設けたシートベルトにより乗員を拘束するタイプのシートに搭載することもできる。また、インフレーターも、車両のボディ側に取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…シート、7…シートベルト、10…ラップベルト、12…タングプレート、13…バックル、17…インフレーター、25…エアバッグ、26…バッグ本体、40…取付部、45…カバー部、50(50L,50R)…位置調整手段、55…折り完了体、MP…乗員、S…乗員保護装置。
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