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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ファーサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20241022BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20241022BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
B60N2/42
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021195474
(22)【出願日】2021-12-01
(65)【公開番号】P2023081621
(43)【公開日】2023-06-13
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】林 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】木野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】梅山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】市村 岳志
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108740(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011084093(DE,A1)
【文献】特開2014-069729(JP,A)
【文献】国際公開第2009/035115(WO,A1)
【文献】特開2021-109487(JP,A)
【文献】特開2006-008105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326938(US,A1)
【文献】特開2011-178188(JP,A)
【文献】特開2021-160375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乗物用シートが同乗物用シートの幅方向に並ベられた状態で配置され、かつ同幅方向における両側の部分が一対の側壁部により構成され、さらに、隣り合う前記乗物用シートの間にコンソールボックスが配置された乗物に適用され、一方の前記側壁部を特定側壁部とし、前記特定側壁部に対し、前記乗物用シートの側方又は斜め前側方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測された場合に、隣り合う前記乗物用シートの間で、膨張用ガスによりエアバッグを展開及び膨張させるファーサイドエアバッグ装置であり、
前記エアバッグは、前記特定側壁部から遠い側の前記乗物用シートに着座した乗員の頭部の側方で展開及び膨張する部分を有する上膨張部と、自身の少なくとも下端を含む部分が前記コンソールボックスと前記乗員との間で展開及び膨張する下膨張部とを備え、
前記上膨張部のうち、前記頭部の側方に位置する部分は、前記幅方向の寸法が前方ほど大きくなるように展開及び膨張するファーサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、前記頭部の前方で展開及び膨張する上副膨張部をさらに備えている請求項1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物における側壁部に対し側方又は斜め前側方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測された場合に、その側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員をエアバッグによって保護するファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の車両用シートが、同車両用シートの幅方向に並ベられた状態で配置された車両の中には、ファーサイドエアバッグ装置が搭載されたものがある。ファーサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、車両用シートのうち、隣の車両用シートに近い側の側部内にガス発生器とともに固定される。
【0003】
そして、衝突等により、車両のサイドドア等の側壁部に対し、側方又は斜め前側方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測された場合には、ガス発生器から膨張用ガスが噴出される。この膨張用ガスにより、エアバッグが膨張して上記側部から出て、隣り合う車両用シートの間で展開及び膨張する。衝撃の加わった側壁部から遠い側の車両用シートに着座している乗員の上半身は、慣性により、その側壁部側へ移動しようとするが、上記エアバッグによって受け止められ、衝撃から保護される。
【0004】
上記ファーサイドエアバッグ装置の一形態として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このファーサイドエアバッグ装置におけるエアバッグ(メインバッグ部)の下部は、乗員の腹部とコンソールボックスとの間で展開及び膨張する。そのため、エアバッグの下部は、コンソールボックスに接触することで、それ以上、衝撃の加わった側壁部側へ動くことを、コンソールボックスによって規制される。エアバッグのうち、コンソールボックスの上面よりも低い部分の位置が安定する。
【0005】
従って、乗員の上記上半身は、エアバッグのうち、コンソールボックスの上面よりも上方の部分によって受け止められやすくなり、乗員を衝撃から保護する性能が高くなる。
なお、部材名称に続くかっこ内の語句は、特許文献1で使用されている部材名称を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-69729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、側壁部に対し、側方又は斜め前側方から衝撃が加わった場合、乗員の上半身が移動する現象を抑制することに加え、頭部が首部の軸線を中心として回転する現象を抑制したいという要請がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたファーサイドエアバッグ装置は、専ら乗員の上半身が移動する現象を抑制することを主眼として設計されており、頭部の回転を抑制する点については考慮されていない。
【0009】
そのため、特許文献1に記載されたファーサイドエアバッグ装置には、乗員の頭部を衝撃から保護する性能を高める点で改善の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、複数の乗物用シートが同乗物用シートの幅方向に並ベられた状態で配置され、かつ同幅方向における両側の部分が一対の側壁部により構成され、さらに、隣り合う前記乗物用シートの間にコンソールボックスが配置された乗物に適用され、一方の前記側壁部を特定側壁部とし、前記特定側壁部に対し、前記乗物用シートの側方又は斜め前側方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は衝撃が加わることが予測された場合に、隣り合う前記乗物用シートの間で、膨張用ガスによりエアバッグを展開及び膨張させるファーサイドエアバッグ装置であり、前記エアバッグは、前記特定側壁部から遠い側の前記乗物用シートに着座した乗員の頭部の側方で展開及び膨張する部分を有する上膨張部と、自身の少なくとも下端を含む部分が前記コンソールボックスと前記乗員との間で展開及び膨張する下膨張部とを備え、前記上膨張部のうち、前記頭部の側方に位置する部分は、前記幅方向の寸法が前方ほど大きくなるように展開及び膨張する。
【0011】
上記の構成によれば、特定側壁部に対し、乗物用シートの側方又は斜め前側方から衝撃が加わると、特定側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員の頭部を含む上半身は、慣性により、特定側壁部側へ移動しようとする。
【0012】
一方、特定側壁部に対し、乗物用シートの側方又は斜め前側方から衝撃が加わったことが検出された場合、又は加わることが予測された場合、エアバッグに膨張用ガスが供給され、同エアバッグが隣り合う乗物用シートの間で、展開及び膨張する。
【0013】
ここで、エアバッグの下膨張部のうち、少なくとも下端を含む部分は、コンソールボックスと乗員との間で展開及び膨張する。下膨張部のうち、コンソールボックスと乗員との間の隙間に入り込んだ部分は、コンソールボックスに接触する。下膨張部の上記部分は、それ以上、特定側壁部側へ動くことを、コンソールボックスによって規制され、位置が安定する。
【0014】
これに伴い、エアバッグのうちコンソールボックスよりも上方の部分が、特定側壁部側へ移動しにくくなる。エアバッグの上記上方の部分が、特定側壁部側へ移動しようとする乗員の上半身を受け止める性能が高くなる。この性能には、上膨張部が頭部を受け止める性能も含まれる。
【0015】
また、上記のように、乗員の頭部を含む上半身が、慣性により、特定側壁部側へ移動しようとするときには、同頭部が首部の軸線を中心として回転しようとする。回転の方向は、前頭部が特定側壁部に近づき、かつ後頭部が特定側壁部から遠ざかる方向である。
【0016】
この点、上記の構成によれば、上膨張部が頭部の側方で展開及び膨張する。上膨張部のうち、頭部の側方に位置する部分は、幅方向の寸法が前方ほど大きくなるように展開及び膨張する。上膨張部の上記部分のうち、首部の軸線よりも前方の部分が前頭部に近づく。前頭部が上記前方の部分に対し、より早期に接触する。そして、上記接触に伴い発生する摩擦により、頭部の回転が早期に規制される。
【0017】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記頭部の前方で展開及び膨張する上副膨張部をさらに備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、エアバッグの上膨張部の少なくとも一部は、乗物用シートに着座した乗員の頭部の側方で展開及び膨張し、上副膨張部は、同頭部の前方で展開及び膨張する。上膨張部は、頭部の側方又は斜め前側方への移動と、首部の軸線を中心とする頭部の回転とを規制する。また、上副膨張部は、頭部の前方又は斜め前側方への移動を規制する。上副膨張部による頭部の移動規制が加わることで、エアバッグが頭部を衝撃から保護する性能がさらに向上する。
【発明の効果】
【0018】
上記ファーサイドエアバッグ装置によれば、乗員の頭部を衝撃から保護する性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態において、ファーサイドエアバッグ装置が適用された車両の部分平面図である。
図2】上記実施形態において、エアバッグモジュールが収納されたシートバックの側部の内部構造を示す部分平断面図である。
図3】上記実施形態において、側壁部、車両用シート、エアバッグ、コンソールボックス及び乗員を車両前方から見た部分断面図である。
図4】上記実施形態において、展開及び膨張したエアバッグを乗員の頭部とともに示す平断面図である。
図5】エアバッグの変更例を示す図であり、展開及び膨張したエアバッグを乗員の頭部とともに示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、車両用のファーサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1図4を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が着座しているものとする。
【0021】
図1に示すように、車両10の左右方向における両側の部分は、ドア、ピラー等からなる一対の側壁部11,12によって構成されている。車室内には、前部座席として車両用シート13,14が、左右方向に並ベられた状態で配置されている。側壁部11に近い車両用シート13は運転席として機能するものであり、ここに乗員(運転者)P1が着座する。側壁部12に近い車両用シート14は助手席として機能するものであり、ここに乗員(助手席乗員)P2が着座する。車室内における両車両用シート13,14の間には、箱状の収納部分として機能するコンソールボックス(センターコンソール、フロアコンソール等とも呼ばれる)25が配置されている。車両用シート13,14は互いに同様の構成を有している。そのため、ここでは、車両用シート13についてのみ説明する。
【0022】
<車両用シート13の概略構成について>
図2及び図3に示すように、車両用シート13は、シートクッション15、シートバック16及びヘッドレスト20を備えている。シートクッション15は、乗員P1が着座する箇所であり、前後方向へスライド可能に構成されている。シートバック16は、乗員P1の上半身を後方から支えるためのものである。シートバック16は、シートクッション15の後部から起立し、かつ傾斜角度を調整可能に構成されている。ヘッドレスト20は、乗員P1の頭部PHを後方から支えるためのものであり、シートバック16上に配置されている。車両用シート13は、シートバック16が車両前方を向く姿勢で配置されている。このように配置された車両用シート13の幅方向は、車両10の左右方向と合致する。
【0023】
図2は、シートバック16のうち、車両用シート14に近い側の側部17の内部構造を示している。シートバック16の内部には、その骨格部分をなすシートフレームが配置されている。
【0024】
側部17の内部には、シートフレームの一部を構成するサイドフレーム部18が配置されている。サイドフレーム部18は、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。
【0025】
サイドフレーム部18を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド19が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成されたバックボード21が配置されている。なお、シートパッド19は表皮によって被覆されているが、図2ではその表皮の図示が省略されている。
【0026】
上記側部17の内部であってサイドフレーム部18よりも車両用シート14側の箇所には、収納部22が設けられている。収納部22は、ファーサイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールABMが収納されるスペースである。
【0027】
収納部22の前部の角部からは、車両用シート14側の斜め前側方に向けてスリット23が延びている。シートパッド19の前側の角部19cとスリット23とによって挟まれた箇所(図2において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ31によって破断される破断予定部24を構成している。
【0028】
エアバッグモジュールABMは、エアバッグ31と、これに膨張用ガスを供給するガス発生器26とを主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
【0029】
<ガス発生器26>
ガス発生器26は、インフレータ27と、そのインフレータ27を覆うリテーナ28とを備えている。ここでは、インフレータ27として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ27は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ27は、一方の端部にガス噴出部27aを有している。また、インフレータ27の他方の端部には、同インフレータ27への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0030】
なお、インフレータ27としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプが用いられてもよい。
【0031】
一方、リテーナ28は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ27をエアバッグ31等と一緒にサイドフレーム部18に締結する機能を有する部材である。リテーナ28の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ28には、これをサイドフレーム部18に取付けるための部材としてボルト29が固定されている。
【0032】
なお、ガス発生器26は、インフレータ27とリテーナ28とが一体になったものであってもよい。また、ガス発生器26は、リテーナ28が用いられることなく、インフレータ27のみによって構成されたものであってもよい。この場合、ボルト29はインフレータ27に固定される。
【0033】
<エアバッグ31>
図3及び図4に示すようにエアバッグ31は、膨張部32と、膨張部32よりも容量の少ない上副膨張部47とを備えている。膨張部32及び上副膨張部47はいずれも、布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)によって形成されている。布片としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等によって形成した織布等が用いられている。
【0034】
〈膨張部32〉
膨張部32は、例えば、布片を折り線に沿って二つ折りして左右方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分のうち、折り線とは異なる部分を、周縁結合部33によって結合させることにより形成されている。ここでは、膨張部32の重ね合わされた2つの部分を区別するために、乗員P1から遠いものを布部34といい、乗員P1に近いものを布部35というものとする。
【0035】
なお、膨張部32は2枚の布片によって構成されてもよい。この場合には、膨張部32は、2枚の布片を左右方向に重ね合わせ、両布片を、周縁結合部33によって全周にわたって結合させることにより形成される。
【0036】
周縁結合部33は、縫製によって形成されているが、他の手段、例えば接着によって形成されてもよい。この点は、後述する結合部41,42、副周縁結合部51及び環状結合部についても同様である。
【0037】
膨張部32は、上膨張部36、中間膨張部45及び下膨張部46を備えている。
上膨張部36は、乗員P1の頭部PHを保護対象部位としている。上膨張部36の少なくとも一部は、上記保護対象部位の側方で展開及び膨張し得る形状及び大きさを有している。本実施形態では、上膨張部36は、前後方向における頭部PHの側方だけでなく、同頭部PHの斜め前側方で展開及び膨張し得る形状及び大きさを有している(図4参照)。
【0038】
上膨張部36は、上方ほど頭部PHに近づくように傾斜した状態で展開及び膨張させられる。こうした展開及び膨張は、例えば、膨張部32の内部に配置され、かつ帯状の布片からなるテザー(図示略)によってなされる。テザーの乗員P1から遠い側の端部は布部34に結合される。テザーの乗員P1に近い側の端部は、布部35のうち、テザーの上記布部34との結合箇所よりも低い箇所に結合される。
【0039】
上膨張部36は、展開及び膨張を完了した状態では、乗員P1に近い側の部分、この場合、布部35のうち、乗員P1の肩部PSよりも上方部分が、左右方向における同肩部PSと頭部PHとの間に位置する。
【0040】
図4に示すように、上膨張部36内の前後方向に互いに離間した複数箇所(本実施形態では2箇所)には、それぞれ左右方向へ延びる帯状のテザー37,38が配置されている。各テザー37,38は、膨張部32及び上副膨張部47と同様の素材によって形成されている。各テザー37,38の右方の端部は、結合部41によって布部34に結合され、左方の端部は、結合部42によって布部35に結合されている。こうした結合態様により、各テザー37,38は、両布部34,35の間に架け渡されている。
【0041】
各テザー37,38は、上膨張部36の展開及び膨張に伴い左右方向の両側へ引っ張られて緊張状態になることで、同上膨張部36の左右方向の寸法(膨張厚み)M1を規制する。
【0042】
本実施形態では、前側のテザー37として、後側のテザー38よりも左右方向の寸法が大きい(長い)ものが用いられている。そのため、上膨張部36のうち、頭部PHの側方に位置する部分は、左右方向の寸法M1が前方ほど大きくなるように展開及び膨張する。
【0043】
なお、両テザー37,38は、同一の高さであって、互いに前後方向に離れた箇所に配置されてもよい。また、両テザー37,38は、異なる高さであって、互いに前後方向に離れた箇所に配置されてもよい。さらに、テザー37,38は、互いに異なる複数の高さ毎に、互いに前後方向に離れた複数箇所に配置されてもよい。
【0044】
図3に示すように、中間膨張部45は、上記上膨張部36の下方に隣接しており、乗員P1の肩部PSから腹部PBにかけての領域を保護対象部位とし、この保護対象部位の側方で展開及び膨張し得る形状及び大きさを有している。
【0045】
下膨張部46は、上記中間膨張部45の下方に隣接しており、乗員P1の主として腰部PPから腹部PBにかけての領域を保護対象部位とし、この保護対象部位の側方で展開及び膨張し得る形状及び大きさを有している。下膨張部46は、自身の下端46bがコンソールボックス25と乗員P1との間であって、同コンソールボックス25の上面25tよりも下方に位置するように展開及び膨張する。
【0046】
ここで、コンソールボックス25と乗員P1との間の隙間は元々狭い。これに加え、側壁部12に対し、側方又は斜め前側方から衝撃が加わった場合、乗員P1の上半身が慣性により、側壁部12側へ移動する。そのため、上記隙間は時間の経過とともに狭くなる。下膨張部46の展開及び膨張が遅く開始されると、同下膨張部46は上記隙間に入り込むことが難しくなる。
【0047】
そこで、膨張部32の展開及び膨張の初期に、下膨張部46を上記隙間に入り込ませやすくするための工夫がなされている。本実施形態では、膨張部32の内部に、ガス噴出部27aから噴出された膨張用ガスを下膨張部46に対し優先的に供給するインナチューブ(図示略)が設けられている。
【0048】
また、エアバッグ31に対しては、後述するように、同エアバッグ31を収納に適した形態(収納用形態)に折り畳まれる。この折り畳みの一態様として、下膨張部46に対しては、同部分よりも上方部分の内側に入り込むように折り返す、いわゆる内折り(中折りとも呼ばれる)が行なわれている。
【0049】
図2に示すように、膨張部32の後端部内には、上記ガス発生器26が略上下方向へ延びる姿勢で配置されている。さらに、ボルト29が布部35に挿通されることにより、ガス発生器26が膨張部32に対し位置決めされた状態で係止されている。
【0050】
〈上副膨張部47〉
一方、図3及び図4に示すように、上副膨張部47は、上膨張部36における布部35の前部に対し隣接する箇所に配置されている。上副膨張部47は、乗員P1の頭部PHを保護対象部位とし、この保護対象部位の前方で展開及び膨張し得る形状及び大きさを有している。
【0051】
図4に示すように、上副膨張部47は、布部35の前部に隣接する副布部48と、副布部48を挟んで布部35とは反対側に配置された副布部49とを備えている。副布部48,49は、別々の布片によって構成されてもよいし、1枚の布片を折り曲げることによって構成されてもよい。副布部48の周縁部と副布部49の周縁部とは重ね合わされ、副周縁結合部51によって結合されている。
【0052】
上副膨張部47は、膨張部32(上膨張部36)に対し連通された状態で結合されている。図示はしないが、布部35には、膨張部32(上膨張部36)の内部と外部とを連通させる連通孔部が形成されている。また、副布部48には、上副膨張部47の内部と外部とを連通させる副連通孔部が形成されている。なお、連通孔部及び副連通孔部の形状は限定されない。この形状は、円形、多角形、楕円形等であってもよいし、長孔、スリット等であってもよい。そして、布部35における連通孔部の周囲部と、副布部48における副連通孔部の周囲部とは重ね合わされ、環状結合部(図示略)によって結合されている。
【0053】
ところで、図2に示すようにエアバッグモジュールABMは、膨張部32のうち、ガス発生器26が収容された箇所(後端部)よりも前方の箇所が、テザー37,38、上副膨張部47等と一緒に折り畳まれることにより、コンパクトな収納用形態にされている。この折り畳みの一態様として、下膨張部46に対し、上述した内折りがなされている。なお、図2では、エアバッグ31のうち、膨張部32とは異なる箇所、例えば上副膨張部47の図示が省略されている。
【0054】
収納用形態のエアバッグモジュールABMは収納部22内に収納されている。そして、膨張部32の布部35を貫通するボルト29が、サイドフレーム部18に対し、車両用シート14側から挿通されている。ボルト29の一部は、サイドフレーム部18よりも車両用シート14から遠ざかる側へ突出しており、この突出部分にナット30が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器26が、膨張部32と一緒にサイドフレーム部18に固定されている。
【0055】
なお、ガス発生器26は、上述したボルト29及びナット30とは異なる部材によってサイドフレーム部18に固定されてもよい。また、ガス発生器26がインフレータ27のみによって構成される場合には、インフレータ27が、同インフレータ27に固定されたボルトと、ナット30とによってサイドフレーム部18に固定されてもよい。
【0056】
<ファーサイドエアバッグ装置のその他の構成>
ファーサイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールABMのほかに、衝撃センサ55及び制御装置56を備えている。衝撃センサ55は加速度センサ等からなり、側壁部11,12等に配置されており、同側壁部11,12に対し、側方及び斜め前側方から加わる衝撃を検出する。
【0057】
制御装置56は、コンピュータプログラム(ソフトウエア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウエア回路、あるいはそれらの組合わせ、を含む回路として構成されている。制御装置56は、衝撃センサ55からの検出信号に基づきガス発生器26の作動を制御する。本実施形態では、制御装置56は、衝撃センサ55が一対の側壁部11,12のうち一方に対し、側方又は斜め前側方から衝撃が加わったことを検出した場合に、ガス発生器26に対し、同ガス発生器26を作動させるための作動信号を出力する。
【0058】
また、車室内には、車両用シート13に着座している乗員P1を同車両用シート13に拘束するためのシートベルト装置(図示略)が設けられている。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。なお、前提条件として、乗員P1が車両用シート13に適正な姿勢で着座していて、その乗員P1が、シートベルト装置によって同車両用シート13に拘束されているものとする。
【0059】
<(1)ファーサイドエアバッグ装置の非作動時>
車両10の走行中等に、側壁部11,12に対し側方又は斜め前側方から所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ55によって検出されないときには、制御装置56からガス発生器26に対し作動信号が出力されない。インフレータ27のガス噴出部27aからは、膨張用ガスが噴出されない。エアバッグモジュールABMは、図2に示すように、収納用形態で収納部22に収納され続ける。
【0060】
<(2)ファーサイドエアバッグ装置の作動時>
次に、両側壁部11,12の一方、例えば、側壁部12が特定側壁部とされて、車両10の走行中等に、この側壁部12に対し、衝撃が加わった場合について説明する。衝撃が加わる方向としては、図1において実線の矢印で示すように側方や、二点鎖線の矢印で示すように斜め前側方が挙げられる。
【0061】
この場合には、衝撃の加わった側壁部12から遠い側である運転席側の乗員P1の頭部PHを含む上半身が、図3において二点鎖線の矢印Aで示すように、慣性により、衝撃の加わった側壁部12側へ移動しようとする。この移動には、側壁部12側へ倒れ込む動きも含まれる。
【0062】
これに対し、側壁部12に所定値以上の衝撃が加わったことが図2の衝撃センサ55によって検出されると、その検出信号に応じ、制御装置56からガス発生器26に上記作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ27のガス噴出部27aから膨張用ガスが噴出される。膨張用ガスは、収納用形態のエアバッグモジュールABMのうち、ガス発生器26が配置された膨張部32に最初に供給される。この膨張用ガスにより、膨張部32の内圧が上昇する。膨張部32は、折りを解消しながら、すなわち展開しながら膨張する。
【0063】
上記展開及び膨張の途中で、膨張部32は上副膨張部47等を伴って、図2における収納部22の近くでシートパッド19を押圧し、破断予定部24においてシートパッド19を破断させる。その後も膨張用ガスの供給が続けられることにより、膨張部32は、サイドフレーム部18に対する固定部分を収納部22内に残した状態で、上副膨張部47等とともに、破断された箇所を通って収納部22の外部へ出る。
【0064】
車両用シート13から出た膨張部32内では、膨張用ガスが下方及び上方の両方向へ分かれて流れる。膨張部32は、車両用シート13,14間で、すなわち、図3に示すように、乗員P1の上半身の側方で、上下両方向へ展開及び膨張する。より詳しくは、下方へ流れる膨張用ガスにより、下膨張部46が乗員P1の腹部PB、腰部PP等の側方で展開及び膨張する。また、上方へ流れる膨張用ガスにより、中間膨張部45が、乗員P1の胸部PT、肩部PS等の側方で展開及び膨張する。さらに、上膨張部36が、乗員P1の頭部PHの側方で展開及び膨張する。
【0065】
側壁部12側へ移動しようとする乗員P1の上半身によって膨張部32が押される。この押圧によって、膨張部32がサイドフレーム部18に対する固定部分を支点として、車両用シート14側へ倒れようとする。
【0066】
(2-1)この点、下膨張部46の展開及び膨張に際しては、同下膨張部46のうち、少なくとも下端46bを含む部分が、コンソールボックス25と乗員P1との間で展開及び膨張する。下膨張部46が展開及び膨張を完了した状態では、同下膨張部46のうち、コンソールボックス25の上面25tよりも低い部分は、コンソールボックス25と乗員P1との間に入り込んだ状態となる。下膨張部46の上記部分は、コンソールボックス25に接触することで、それ以上、側壁部12側へ動くことを、コンソールボックス25によって規制される。下膨張部46のうち、上記上面25tよりも低い部分の位置が安定する。また、エアバッグ31のうちコンソールボックス25よりも上方の部分が、側壁部12側へ移動しにくくなる。同部分が、側壁部12側へ移動しようとする乗員P1の上半身を受け止める性能が高くなる。この性能には、上膨張部36が頭部PHを受け止める性能も含まれる。
【0067】
(2-2)膨張部32では、上述したように膨張用ガスが、インナチューブによって下膨張部46に対し優先的に供給される。そのため、膨張用ガスの供給開始後、比較的短時間で下膨張部46の内圧が上昇し、同下膨張部46の展開及び膨張が開始される。下膨張部46は、コンソールボックス25と乗員P1との間の狭い隙間に入り込みやすい。
【0068】
また、上述したように、下膨張部46が内折りされていることから、膨張用ガスの圧力が、内折りされた部分に対し早期に作用し、同部分が押し出される。他の態様で折り畳まれた場合よりも折り状態が解消されやすい。この解消により、下膨張部46が素早く展開及び膨張される。この点でも、下膨張部46は、コンソールボックス25と乗員P1との間の狭い隙間に入り込みやすい。
【0069】
そのため、側壁部12側へ移動しようとする乗員P1の上半身を受け止める上記(2-1)の効果がより一層得られやすくなる。頭部PHを含む上半身の側壁部12側への移動を抑制して、同上半身を衝撃から保護するファーサイドエアバッグ装置の性能が高められる。
【0070】
ここで、上記のように、乗員P1の頭部PHを含む上半身が、慣性により、側壁部12側へ移動しようとするときには、乗員P1の頭部PHが、図4の矢印Bで示すように、首部PNの軸線L1を中心として回転しようとする。回転の方向は、前頭部PHfが側壁部12に近づき、かつ後頭部PHrが側壁部12から遠ざかる方向である。頭部PHは平面視で図4の時計回り方向へ回転しようとする。
【0071】
(2-3)この点、本実施形態では、上膨張部36の一部が、頭部PHに対し側壁部12側の側方となる箇所で展開及び膨張する。
しかも、上膨張部36は、展開及び膨張を完了した状態では、上方ほど頭部PHに近づくように傾斜した状態となる。上膨張部36のうち、頭部PHに近い側の部分(布部35)が、左右方向における乗員P1の肩部PSと頭部PHとの間に位置する。
【0072】
そのため、上膨張部36における布部35のうち、首部PNの軸線L1よりも前方部分が、前頭部PHfの近くに位置する。前頭部PHfが布部35に早期に接触する。頭部PHは、上膨張部36によって受け止められ、側方への移動を規制される。この規制により、頭部PHが拘束されて、衝撃から保護される。
【0073】
さらに、上膨張部36の展開及び膨張に伴い、両布部34,35が左右方向における両側へ拡がろうとする。しかし、両布部34,35の上記動きに伴い、両布部34,35の間に架け渡されたテザー37,38が左右方向の両側へ引っ張られる。各テザー37,38が緊張状態になることで、両布部34,35においてテザー37,38が結合された箇所のそれ以上の膨張が規制される。
【0074】
本実施形態では、前側のテザー37として、後側のテザー38よりも左右方向の寸法が大きい(長い)ものが用いられている。そのため、上膨張部36のうち、頭部PHの側方に位置する部分は、幅方向の寸法M1が前方ほど大きくなるように、展開及び膨張する。
【0075】
展開及び膨張を完了した状態では、上膨張部36の上記部分において、首部PNの軸線L1よりも前方の部分は、前頭部PHfに近づく。前頭部PHfが、上記前方の部分における布部35に対し、より早期に接触する。そして、上記接触に伴い発生する摩擦により、頭部PHの回転が早期に規制される。エアバッグ31によって頭部PHを保護する性能が高められる。
【0076】
(2-4)膨張部32(上膨張部36)及び上副膨張部47は、連通孔部及び副連通孔部を介して互いに連通している。そのため、膨張部32に供給された膨張用ガスの一部は、上膨張部36の展開及び膨張の途中から、連通孔部及び副連通孔部を通って上副膨張部47に流入する。
【0077】
上記のように流入した膨張用ガスにより、図3及び図4に示すように、上副膨張部47は、乗員P1の頭部PHの前方で展開及び膨張する。
そのため、側壁部12に対し斜め前側方から衝撃が加わった場合、乗員P1の頭部PHを含む上半身は、衝撃の加わった側へ移動しようとするが、その頭部PHを上副膨張部47によって受け止め、衝撃から頭部PHを保護することができる。
【0078】
従って、上副膨張部47による頭部PHの移動規制が加わることで、エアバッグ31が頭部PHを衝撃から保護する性能がさらに向上する。
なお、上記実施形態とは逆に、図1における側壁部11が特定側壁部とされて、この側壁部11に対し側方又は斜め前側方から衝撃が加わった場合については説明しないが、上記と同様の作用が行なわれる。車両用シート14に着座している乗員P2が衝撃から保護される。
【0079】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
(3-1)前面衝突等により、車両10に対し前方から衝撃が加わった場合、乗員P1の頭部PHを含む上半身は、衝撃の加わった側へ移動しようとするが、その頭部PHを上副膨張部47によって受け止め、衝撃から頭部PHを保護することができる。
【0080】
従って、この点においても、エアバッグ31が頭部PHを衝撃から保護する性能がさらに向上する。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0081】
<エアバッグ31について>
・下膨張部46は、左右方向の寸法が下方ほど小さくなるように展開及び膨張されてもよい。このようにすると、下膨張部46がコンソールボックス25と乗員P1との間の狭い隙間に入り込みやすくなる。
【0082】
・膨張部32は、上記実施形態のように略全体が膨張するものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
図5に示すように、エアバッグ31から上副膨張部47が省略されてもよい。この場合には、上膨張部36の前後方向の寸法が上記実施形態よりも小さくなる。しかし、上記実施形態と同様、首部PNの軸線L1を中心とする頭部PHの回転を抑制する効果が得られる。
【0083】
・上膨張部36において、頭部PHの側方から前後方向に外れた箇所については、幅方向の寸法が前方ほど大きくなるといった、幅方向の寸法に関する制約はない。
<制御装置56について>
・制御装置56の制御の仕様が、車両10に対し外方から衝撃が加わることを予測した場合に、ガス発生器26に作動信号を出力する仕様に変更されてもよい。この場合の外方には、側方、斜め前側方に加え、前方が含まれる。
【0084】
<ファーサイドエアバッグ装置の適用箇所について>
・上記ファーサイドエアバッグ装置は、車両10の前部座席(運転席、助手席)に限らず、後部座席(2列目以降の座席)に適用されてもよい。
【0085】
・シートバック16が車両前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シートが配置されているタイプの車両の場合、上記ファーサイドエアバッグ装置は、それらの車両用シートにも適用可能である。
【0086】
・車両が、3つ以上の車両用シートが幅方向に並べられた状態で配置されたタイプの車両の場合、上記ファーサイドエアバッグ装置は、それらの車両用シートにも適用可能である。
【0087】
<その他>
・上記ファーサイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
【0088】
・上記ファーサイドエアバッグ装置は、車両とは異なる乗物、例えば航空機、船舶等の乗物における乗物用シートに搭載されるファーサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0089】
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
(A)請求項1又は2に記載のファーサイドエアバッグ装置において、前記下膨張部は、前記幅方向の寸法が下方ほど小さくなるように膨張する。
【0090】
上記の構成によるように、幅方向における下膨張部の寸法(膨張厚み)が下方ほど小さいと、同下膨張部はコンソールボックスと乗員との間に入り込みやすい。
(B)請求項1、2又は上記(A)に記載のファーサイドエアバッグ装置において、前記上膨張部が展開及び膨張を完了した状態では、同上膨張部の前記乗員に近い側の布部が、前記幅方向における前記乗員の肩部と前記頭部との間に位置する。
【0091】
上記の構成によれば、上膨張部が展開及び膨張を完了した状態では、上膨張部の乗員側の布部が乗員の頭部に接近する。そのため、上膨張部において、頭部の側方に位置する部分のうち、首部の軸線よりも前方の部分が前頭部に対しより近づく。前頭部が上記前方の部分に対し、より早期に接触する。
【0092】
(C)請求項1、2、上記(A)又は上記(B)に記載のファーサイドエアバッグ装置において、前記上膨張部の前記乗員に近い側の布部と、同乗員から遠い側の布部との間であって、互いに前後方向に離間した複数箇所には、前記幅方向に延びる帯状のテザーが架け渡され、複数の前記テザーは、前方に位置するものほど前記幅方向に大きな寸法を有している。
【0093】
上記の構成によれば、各テザーは、上膨張部の展開及び膨張に伴い幅方向の両側へ引っ張られて緊張状態になることで、同上膨張部の幅方向の寸法(膨張厚み)を規制する。複数のテザーとして、幅方向の寸法に関して上記の条件を満たすものが用いられることで、上膨張部のうち、頭部の側方に位置する部分は、幅方向の寸法が前方ほど大きくなるように膨張する。
【符号の説明】
【0094】
10…車両(乗物)
11,12…側壁部
13,14…車両用シート(乗物用シート)
25…コンソールボックス
31…エアバッグ
36…上膨張部
46…下膨張部
46b…下端
47…上副膨張部
M1…寸法
P1,P2…乗員
PH…頭部
図1
図2
図3
図4
図5