(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20241022BHJP
【FI】
G06Q50/40
(21)【出願番号】P 2022005876
(22)【出願日】2022-01-18
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215643(JP,A)
【文献】特開平03-012800(JP,A)
【文献】特開2006-056677(JP,A)
【文献】特表2019-530081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な資源を共用する
異なる種類の複数のサービスが提供される都市を管理する都市管理支援装置であって、
少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、
前記少なくとも1つのプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記資源の提供状況に関する情報の入力を受け付けること、
前記複数のサービスのそれぞれのサービス定義の入力を受け付けること、
前記サービス定義に基づき前記複数のサービスの前記資源への依存状態の時間遷移を計算すること、
前記依存状態の時間遷移に基づいて前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合を検出すること、及び、
前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合が適正化されるように前記複数のサービスのうち少なくとも1つのサービスについて前記サービス定義の修正案を作成すること、を実行させるように構成され
、
前記複数のサービスは、前記資源である充電スタンドを共用する異なる種類の複数のサービスであり、EVバス車両を定路線バスとして使用する交通サービスであるEVバス公共サービス、及びマイクロモビリティ車両を荷物の輸送手段として使用する物流サービスであるマイクロモビリティ物流サービスを含む
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の都市管理支援装置において、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合が適正化されるように前記資源の前記提供状況についての修正案を作成すること、をさらに実行させるように構成された
ことを特徴とする都市管理支援装置。
【請求項3】
物理的な資源を共用する
異なる種類の複数のサービスが提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援する都市管理支援方法であって、
前記資源の提供状況に関する情報を前記コンピュータに入力すること、
前記複数のサービスのそれぞれのサービス定義を前記コンピュータに入力すること、
前記サービス定義に基づき前記複数のサービスの前記資源への依存状態の時間遷移を前記コンピュータにより計算すること、
前記依存状態の時間遷移に基づいて前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合を前記コンピュータにより検出すること、及び、
前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合が適正化されるように前記複数のサービスのうち少なくとも1つのサービスについて前記サービス定義の修正案を前記コンピュータにより作成すること、を含み
、
前記複数のサービスは、前記資源である充電スタンドを共用する異なる種類の複数のサービスであり、EVバス車両を定路線バスとして使用する交通サービスであるEVバス公共サービス、及びマイクロモビリティ車両を荷物の輸送手段として使用する物流サービスであるマイクロモビリティ物流サービスを含む
ことを特徴とする都市管理支援方法。
【請求項4】
物理的な資源を共用する
異なる種類の複数のサービスが提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援するための都市管理支援プログラムであって、
前記資源の提供状況に関する情報の入力を受け付けること、
前記複数のサービスのそれぞれのサービス定義の入力を受け付けること、
前記サービス定義に基づき前記複数のサービスの前記資源への依存状態の時間遷移を計算すること、
前記依存状態の時間遷移に基づいて前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合を検出すること、及び、
前記複数のサービス間の前記資源の獲得の競合が適正化されるように前記複数のサービスのうち少なくとも1つのサービスについて前記サービス定義の修正案を作成すること、を前記コンピュータに実行させるように構成され
、
前記複数のサービスは、前記資源である充電スタンドを共用する異なる種類の複数のサービスであり、EVバス車両を定路線バスとして使用する交通サービスであるEVバス公共サービス、及びマイクロモビリティ車両を荷物の輸送手段として使用する物流サービスであるマイクロモビリティ物流サービスを含む
ことを特徴とする都市管理支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市の管理に用いて好適な都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、スマート化によりサービスが一括管理されている“都市”が研究され、また、各地で計画されている。ここでいう都市は、様々なサービスが提供されることで人々の生活が営まれている物理的空間を意味し、所謂スマートシティのような大規模なものだけでなく、地下街のような中規模のものや、大型ビルディングのような小規模のものも含む。このような都市において提供される物理的な資源は多くの場合において複数のサービスで共用されている。都市全体としてのサービスレベルを維持するためには、資源とサービスとの関係を適正化することができる都市管理が求められる。
【0003】
しかしながら、これまでのところ、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市の管理については研究が十分に進んでいるとは言い難い。例えば、特許文献1には、複数の事業者がそれぞれ作成した需給計画情報を総括して所定の形式にまとめ、需給不足を起こしている事業者及び不足量を探索し、融通可能な事業者、融通可能量及び融通単価を探索し、その探索結果に基づき需給融通案を算出することが開示されている。しかし、この技術では、物理的な資源を共用する複数のサービス間での資源とサービスとの関係の適正化については検討されていない。
【0004】
なお、本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、上述の特許文献1の他にも下記の特許文献2を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-045887号公報
【文献】国際公開第2013/084268号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市においてサービスとの関係の適正化に寄与する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示は都市管理支援装置を提供する。本開示の都市管理支援装置は、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市を管理する装置である。本開示の都市管理支援装置は、少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、上記少なくとも1つのプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサとを備える。上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、資源の提供状況に関する情報の入力を受け付けることと、複数のサービスのそれぞれのサービス定義の入力を受け付けることとを実行させるように構成されている。さらに、上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、サービス定義に基づき複数のサービスの資源への依存状態の時間遷移を計算することと、依存状態の時間遷移に基づいて複数のサービス間の資源の獲得の競合を検出することとを実行させるように構成されている。そしてさらに、上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、複数のサービス間の資源の獲得の競合が適正化されるように複数のサービスのうち少なくとも1つのサービスについてサービス定義の修正案を作成することを実行させるように構成されている。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本開示は都市管理支援方法を提供する。本開示の都市管理支援方法は、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援する方法である。本開示の都市管理支援方法は、資源の提供状況に関する情報をコンピュータに入力することと、複数のサービスのそれぞれのサービス定義をコンピュータに入力することとを含む。さらに、本開示の都市管理支援方法は、サービス定義に基づき複数のサービスの資源への依存状態の時間遷移をコンピュータにより計算することと、依存状態の時間遷移に基づいて複数のサービス間の資源の獲得の競合をコンピュータにより検出することとを含む。そしてさらに、本開示の都市管理支援方法は、複数のサービス間の資源の獲得の競合が適正化されるように複数のサービスのうち少なくとも1つのサービスについてサービス定義の修正案をコンピュータにより作成することを含む。
【0009】
さらに、上記目的を達成するため、本開示は都市管理支援プログラムを提供する。本開示の都市管理支援プログラムは、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市の管理をコンピュータを用いて支援するためのプログラムである。本開示の都市管理支援プログラムは、資源の提供状況に関する情報の入力を受け付けることと、複数のサービスのそれぞれのサービス定義の入力を受け付けることとをコンピュータに実行させるように構成されている。さらに、本開示の都市管理支援プログラムは、サービス定義に基づき複数のサービスの資源への依存状態の時間遷移を計算することと、依存状態の時間遷移に基づいて複数のサービス間の資源の獲得の競合を検出することとをコンピュータに実行させるように構成されている。そしてさらに、本開示の都市管理支援プログラムは、複数のサービス間の資源の獲得の競合が適正化されるように複数のサービスのうち少なくとも1つのサービスについてサービス定義の修正案を作成することをコンピュータに実行させるように構成されている。
【0010】
本開示の上記の技術によれば、複数のサービス間で資源の獲得が競合する場合、競合が適正化されるように少なくとも1つのサービスについてサービス定義の修正案が作成される。都市の管理者が作成された修正案をサービスの提供者にリコメンドし、サービスの提供者が修正案に従ってサービス定義を変更することで、資源とサービスとの関係の適正化を図ることができる。
【0011】
本開示の上記の技術において、複数のサービス間の資源の獲得の競合が適正化されるように資源の提供状況についての修正案を作成するようにしてもよい。これによれば、高達成度サービスの中でも優先順位の低い低優先サービスの利用が控えられるので、都市全体としてのサービスレベルの低下はより抑えられる。作成された修正案に従い資源の提供状況が修正された場合には、資源とサービスとの関係をより適正化することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本開示の技術は資源とサービスとの関係の適正化に寄与するものであり、物理的な資源を共用する複数のサービスが提供される都市の管理において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係る都市の概要を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る都市管理支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】都市で提供されるサービスと資源との利用関係の一例を示す図である。
【
図4】
図3に示すサービスの資源への依存状態の時間遷移を示す依存グラフの一例を示す図である。
【
図5】EV公共バスサービスのサービス定義の一例を示す図である。
【
図6】マイクロモビリティ物流サービスのサービス定義の一例を示す図である。
【
図7】リソースモニタの表示の一例を示す図である。
【
図8】サービスモニタの表示の一例を示す図である。
【
図9】マイクロモビリティ物流サービスのサービス定義の修正案の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の都市管理支援装置、都市管理支援方法、及び都市管理支援プログラムの実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0015】
1.都市の概要
本開示において、都市とは、様々なサービスが提供されることで人々の生活が営まれている物理的空間を意味する。本開示における都市の規模には限定はない。スマートシティは大規模な都市の一例であり、地下街は中規模な都市の一例であり、大型ビルディングは小規模な都市の一例である。物理的空間ではないインターネットの仮想空間は本開示における都市には含まれない。
【0016】
都市では各種のサービスが利用者に提供されている。サービスは都市の資源を利用して提供される。資源とは、都市におけるサービスの提供に利用されるものであり、例えば、道路、充電ステーション、ネットワーク、電気、水等が含まれる。物流サービスがビルのエレベータも利用するのであれば、エレベータも資源に含まれる。ただし、本開示における資源は有限の物理的な資源であって、無限なもの或いは有限ではあるが物理的ではないものは本開示における資源には含まれない。本開示における都市では、物理的な資源が複数のサービスで共用されている。
【0017】
図1は本開示の実施形態に係る都市100の概要を示す。本実施形態に係る都市100では、物理的な資源110を共用するサービスA及びBが各サービスA,Bの提供者120A,120Bから利用者130に対して提供される。なお、ここではサービスAとサービスBの2つを例示しているが、都市100において提供されるサービスは複数であり、2つに限定されるものではない。
【0018】
資源110にはサービスA,Bの両方が同時に利用可能な第1種の資源と、サービスA,Bのうちどちらか一方しか利用できない第2種の資源とがある。3以上のサービスにより資源110が利用されているのであれば、第1種の資源は複数のサービスの全てにより同時に利用可能な資源と定義され、第2種の資源は複数のサービスのうち一部のサービスしか同時に利用できない資源と定義される。
【0019】
利用者130に対する各サービスA,Bの提供状況は都市100における資源110の提供状況に依存する。各サービスA,Bの資源110への依存状態は時々刻々と変化し、資源110のうち特に第2種の資源ではサービスA,B間において競合が生じる場合がある。サービスA,B間で資源110の獲得に競合が生じた場合、サービスA,Bの提供レベルに低下が生じてしまう。ゆえに、都市100全体としてのサービスレベルを維持するためには、資源110とサービスA,Bとの関係を適正化することができる都市管理が求められる。
【0020】
本実施形態に係る都市100では、各サービスA,Bの提供状況は資源110の提供状況とともに都市管理者140によって一括管理されている。都市管理者140は資源110の提供状況を監視し、資源110の提供状況に異常が生じた場合には速やかに復旧する権限と責任を有する。ただし、資源110の種類によっては日頃のメンテナンスや異常時の復旧を都市管理者140が別の事業者に委託することもあれば、資源110の提供自体が別の事業者によって行われる場合もある。また、都市管理者140は基本的にはサービス提供者120A,120Bとは別の事業者である。例外として都市管理者140が自身でサービスを提供している場合を除き、基本的には都市管理者140がサービスの提供方法を変えることはできない。
【0021】
本実施形態に係る都市100では、その継続的な発展のため、資源110とサービスA,Bの両面において効率的且つ適切な管理が都市管理者140に対して求められている。本開示の実施形態に係る都市管理支援装置200は都市管理者140による都市100の効率的且つ適切な管理を支援するための装置である。都市管理支援装置200はプログラム203を記憶したメモリ202と、プログラム203を実行するプロセッサ201とを備えたコンピュータである。プロセッサ201、メモリ202、及びプログラム203はそれぞれ複数でもよい。メモリ202に記憶されたプログラム203がプロセッサ201で実行されることによって、都市管理者140の支援のための様々な機能が実現される。ただし、都市管理支援装置200は一つのコンピュータによって構成されてもよいし、ネットワークで接続された複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0022】
都市管理支援装置200はそれ自体が都市100を管理するのではなく、都市管理者140による都市100の管理を支援する装置である。都市管理支援装置200は資源110の提供状況に関する情報を取得する。さらに、都市管理支援装置200はサービス提供者120AからサービスAのサービス定義を取得し、サービス提供者120BからサービスBのサービス定義を取得する。サービス定義の詳細については後述する。
【0023】
都市管理支援装置200は取得した情報とサービス定義とに基づいてサービスA,B間における資源110の獲得の競合を検出する。そして、サービスA,B間の資源の獲得の競合が適正化されるようにサービスA,Bの少なくとも一方のサービス定義の修正案を作成し、必要に応じて資源提供の修正案も作成する。3以上のサービス間で資源110の獲得に競合が生じているのであれば、競合する3以上のサービスのうち少なくとも1つのサービスについてサービス定義の修正案が作成される。都市管理支援装置200は作成したサービス定義の修正案及び資源提供の修正案を都市管理者140に通知する。次の章では都市管理支援装置200の詳細について説明する。
【0024】
2.都市管理支援装置の構成
図2は都市管理支援装置200の構成を示すブロック図である。都市管理支援装置200は、情報取得ユニット210、サービスシミュレータ220、サービス定義修正案作成ユニット230、資源提供修正案作成ユニット240、サービスモニタ250、及びリソースモニタ260を備える。都市管理支援装置200を構成するこれらの要素は、メモリ202に記憶されたプログラム203、詳しくは、都市管理支援プログラムがプロセッサ201で実行されたときに実現される都市管理支援装置200の機能である。
【0025】
情報取得ユニット210は都市100の管理のために必要な情報を都市100から取得する。情報取得ユニット210により取得される情報には、都市100における資源110の提供状況に関する情報が含まれる。資源110の提供状況に関する情報は、例えば、都市100に配備された様々なセンサによる検出情報、サービス提供者120A,120Bからの提供情報、或いは、SNS上の情報を含む利用者130からの提供情報から取得される。情報取得ユニット210により取得された資源110の提供状況に関する情報はサービスシミュレータ220に入力される。
【0026】
情報取得ユニット210により取得される情報には、各サービスA,Bのサービス定義が含まれる。サービスAのサービス定義はサービス提供者120Aから取得される。サービスBのサービス定義はサービス提供者120Bから取得される。サービス提供者120A,Bはサービス定義を変更するたびに変更されたサービス定義を情報取得ユニット210に入力する。情報取得ユニット210により取得された各サービスA,Bのサービス定義はサービスシミュレータ220に入力される。
【0027】
サービスシミュレータ220は予測モデルを用いて所定時間未来のサービスの提供状況とサービス間の資源獲得の競合状況とを予測するシミュレータである。サービスシミュレータ220の入力は、現在の資源110の提供状況に関する情報と各サービスA,Bのサービス定義である。サービスシミュレータ220はこれらの情報に基づき予測モデルを用いて各サービスA,Bの所定時間未来の状況を予測する。予測時間は都市管理者140が任意に設定することができる。
【0028】
サービスシミュレータ220が用いる予測モデルでは、資源110とサービスとの関係に関わるパラメータが都市100の仕様に合わせて予め作り込まれている。例えば都市100で提供されるサービスが交通サービス又は物流サービスである場合、建物や道路の状態、移動体の場所及び状態、住民モデル、サービスによる移動体の利用方法等のパラメータが予め作り込まれている。住民モデルとは都市100の住民をモデル化したものである。住民は時には道路を利用し、時には移動体の障害物となる等して資源110とサービスとの関係に影響を与える。住民モデルでは、サービスの内容によって住民一人一人の動きをシミュレーションしてもよいし、集団としてシミュレーションしてもよい。
【0029】
サービスシミュレータ220が用いる予測モデルでは、サービス毎にサービス定義が設定されている。サービスシミュレータ220はサービス定義に基づいて各サービスA,Bの提供状況の時間遷移を計算するとともに、サービス毎に資源110への依存状態の時間遷移を計算する。そして、依存状態の時間遷移に基づき、サービスシミュレータ220はサービスA,B間の資源110の獲得の競合を検出する。サービスシミュレータ220の定義設定部222AにはサービスAの定義が設定され、定義設定部222BにはサービスBの定義が設定されている。情報取得ユニット210から新たなサービス定義が入力された場合、定義設定部222A,222Bに設定されているサービス定義は更新される。
【0030】
サービスシミュレータ220からは各サービスA,Bの提供状況の予測結果とサービスA,B間の資源獲得の競合状況の予測結果とが出力される。各サービスA,Bの提供状況の予測結果はサービスモニタ250に入力される。サービスA,B間の資源獲得の競合状況の予測結果はサービス定義修正案作成ユニット230、資源提供修正案作成ユニット240、及びリソースモニタ260に入力される。
【0031】
サービス定義修正案作成ユニット230は、サービスシミュレータ220においてサービスA,B間の資源110の獲得の競合が検出されたことを受けて作動する。サービス定義修正案作成ユニット230は、資源110の獲得が競合するサービスA,Bのうち少なくとも1つのサービスについて、サービスA,B間の資源110の獲得の競合が適正化されるようにサービス定義の修正案を作成する。競合の適正化は、好ましくは、競合が解消されることである。ただし、競合が適正化されることには、競合の完全な解消には至らずとも競合の程度が緩和されることが含まれてもよい。
【0032】
サービス定義修正案作成ユニット230は、競合が発生している資源に関係する全てのサービスに関し、サービス定義中のパラメータを変化させて競合の程度を示す競合指数を計算し、所定の制約条件のもとで競合指数が最も低くなるパラメータ値を探索する。複数のサービスのサービス定義を修正する場合には、競合指数が最も低くなるパラメータ値の組み合わせを探索する。そして、サービス定義修正案作成ユニット230は競合指数が最も低くなったときのパラメータ値で特定されるサービス定義を修正案として決定する。サービス定義修正案作成ユニット230で作成されたサービス定義の修正案はサービスモニタ250に入力される。
【0033】
資源提供修正案作成ユニット240は、サービスシミュレータ220においてサービスA,B間の資源110の獲得の競合が検出され、且つ、サービス定義修正案作成ユニット230から資源提供の修正案の作成を要求されたことを受けて作動する。資源提供修正案作成ユニット240はサービスA,B間の資源110の獲得の競合が適正化されるように資源提供の修正案を作成する。具体的には、資源提供修正案作成ユニット240は競合が発生している資源の提供量を増大させるように修正案を作成する。作成されたサービス定義の修正案はサービス定義修正案作成ユニット230とリソースモニタ260とに入力される。
【0034】
サービス定義修正案作成ユニット230は、資源提供修正案作成ユニット240において資源提供の修正案が作成された場合、その修正案に基づいてサービス定義の修正案を作成する。サービスA,B間の資源110の獲得の競合を適正化する上では、サービス定義の修正だけでは不十分な場合がある。このため、サービス定義修正案作成ユニット230と資源提供修正案作成ユニット240とは協調してサービス定義の修正案と資源提供の修正案とを作成する。サービス定義の修正案及び資源提供の修正案の各具体例については後述する。
【0035】
サービスモニタ250はサービスシミュレータ220から入力された各サービスA,Bの提供状況の予測結果を受け付け、それらをディスプレイに表示する。サービスモニタ250は任意の時刻における予測結果を巻き戻して表示することもできる。また、サービス定義修正案作成ユニット230からサービス定義の修正案が入力された場合、サービスモニタ250はサービス定義の修正案をディスプレイに表示する。サービスモニタ250がディスプレイに表示する表示内容の具体例については後述する。
【0036】
リソースモニタ260はサービスシミュレータ220から入力されたサービスA,B間の資源獲得の競合状況の予測結果を受け付け、それをディスプレイに表示する。リソースモニタ260は任意の時刻における予測結果を巻き戻して表示することもできる。また、資源提供修正案作成ユニット240から資源提供の修正案が入力された場合、リソースモニタ260は資源提供の修正案をディスプレイに表示する。リソースモニタ260がディスプレイに表示する表示内容の具体例については後述する。なお、サービスモニタ250とリソースモニタ260とはディスプレイを共用しても良いし、それぞれが専用のディスプレイを有していてもよい。
【0037】
3.都市管理支援装置による都市管理支援方法の具体例
3-1.サービスと資源との利用関係の一例
図3は都市100で提供されるサービスA,Bと資源110との利用関係の一例を示す図である。この例では、EV公共バスサービスがサービスAであり、このサービスを運営するEV公共バスサービス事業者がサービス提供者120Aである。また、マイクロモビリティ物流サービスがサービスBであり、このサービスを運営するマイクロモビリティ物流サービス事業者がサービス提供者120Bである。
【0038】
EV公共バスサービスはEVバス車両111を定期・定路線バスとして使用する交通サービスである。EVバス車両111はバッテリに蓄えられた電気で走行する電動車両である。EVバス車両111は運転者が運転する有人車両でもよいし、遠隔オペレータが遠隔運転する遠隔運転車両でもよいし、自動運転システムによって運転される自動運転車両でもよい。
【0039】
EVバス車両111が走行する経路は複数本の道路リンク112で構成されている。道路リンク112は地図上において任意に定義することができる。例えば、交差点から隣の交差点までの道路の線分を一本の道路リンク112として設定することができる。EVバス車両111の走行経路を構成する道路リンク112上には複数のバス停113が設けられている。予め設定された運行ダイヤに従い、EVバス車両111は各バス停113に順に停車する。また、EVバス車両111はバッテリの充電量(SOC)が一定値以上に保たれるように充電スタンド115において定期的に充電を行う。充電スタンド115は道路リンク112の近傍に少なくとも1つ設置されている。
【0040】
マイクロモビリティ物流サービスは、マイクロモビリティ車両114を荷物の配送手段として使用する物流サービスである。マイクロモビリティ車両114は自律走行する小型の電動車両である。マイクロモビリティ車両114は配送する荷物の種類や大きさに応じて複数種類が用意されている。例えば、マイクロモビリティ車両114には、ごみ収集用車両、クリーニング品集配車両、パーソナルストレージ用車両などの車両が含まれる。
【0041】
マイクロモビリティ車両114が走行する経路も複数本の道路リンク112で構成されている。EVバス車両111の走行経路が基本的には固定であるのに対し、マイクロモビリティ車両114の走行経路は固定でもよいし荷物の配送スケジュールに応じて変更されてもよい。また、マイクロモビリティ車両114は電動車両であるので、バッテリの充電量が一定値以上に保たれるように充電スタンド115において定期的に充電を行う。
【0042】
EV公共バスサービスでは、EVバス車両111、道路リンク112、バス停113、及び充電スタンド115が都市100の資源110として利用される。マイクロモビリティ物流サービスでは、道路リンク112、マイクロモビリティ車両114、及び充電スタンド115が都市100の資源110として用いられる。道路リンク112と充電スタンド115はEV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスの双方で利用される資源であるため、EV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスの間で道路リンク112と充電スタンド115の獲得に競合が生じうる。
【0043】
3-2.サービスの資源への依存状態の時間遷移の一例
図4はEV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスの具体例(上段に示す模式図)と、EV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスの資源110への依存状態の時間遷移を示す依存グラフの一例(下段に示すグラフ)とを示す。
【0044】
上段の模式図はEV公共バスサービス及びマイクロモビリティ物流サービスが提供される都市100の地図を模式的に表している。地図には長方形の4辺に相当する4つの道路リンク112-1,112-2,112-3,112-4と、長方形の対角線に相当する2つの道路リンク112-5,112-6が存在する。長方形を構成する各道路リンク112-1,112-2,112-3,112-4にはバス停113-A,113-B,113-C,113-Dが設置されている。また、道路リンク112-1の近傍には充電スタンド115-Xが設置されている。
【0045】
EV公共バスサービスでは、道路リンク112-1,112-2,112-3,112-4を循環して各バス停113-A,113-B,113-C,113-Dに順に停車するようにEVバス車両111が運行される。マイクロモビリティ物流サービスでは、マイクロモビリティ車両114が走行する道路リンクが全ての道路リンク112-1,112-2,112-3,112-4,112-5,112-6の中から荷物の配送スケジュールに基づいて決定される。
【0046】
下段のグラフはEVバス車両111及びマイクロモビリティ車両114の時刻ごとの位置を示す。グラフにおけるxはEVバス車両111の位置を示し、yはマイクロモビリティ車両114の位置を示す。グラフにおける道路リンクiは模式図に示す道路リンク112-iを意味する(i=1~6)。また、以下の説明ではバス停113-A,113-B,113-C,113-Dをバス停A,B,C,Dと表記し、充電スタンド115-Xを充電スタンドXと表記する。
【0047】
グラフに示す例では、EVバス車両111は道路リンク1、2、3、4の順で走行し、充電スタンドXで充電した後、再び道路リンク1、2、3・・・の順で走行する。マイクロモビリティ車両114は道路リンク1、2、6、1の順で走行し、充電スタンドXで充電した後、道路リンク2、6、1・・・の順で走行する。この場合、時刻t=1で道路リンク1上に同時にEVバス車両111とマイクロモビリティ車両114が存在し、時刻t=2で道路リンク2上に同時にEVバス車両111とマイクロモビリティ車両114が存在する。例えば道路リンク1,2が複数台同時に走行可能な道路でない場合、道路リンク1,2の獲得にサービス間で競合が生じることになる。
【0048】
また、グラフに示す例では、時刻t=5で充電スタンドXに同時にEVバス車両111とマイクロモビリティ車両114が存在する。充電スタンドXはEVバス車両111とマイクロモビリティ車両114の両方に同時に充電することができないので、充電スタンドXの獲得にサービス間で競合が生じることになる。このように各サービスの資源への依存状態の時間遷移をチェックすることによって、サービス間の資源の獲得の競合を検出することができる。
【0049】
3-3.サービス定義の一例
図4の下段のグラフに示す各サービスの資源への依存状態の時間遷移は、資源の提供状態と各サービスのサービス定義とに基づいてサービスシミュレータ220により計算される。ゆえにサービス定義の内容次第によってグラフに示す依存状態の時間遷移は異なってくる。
図5及び
図6はサービスシミュレータ220で用いられるサービス定義の一例を示す。サービス定義は、サービス名称、実施する都市、使用する資源、サービスロジック、及び制約条件を項目として含む。
【0050】
図5はEV公共バスサービスのサービス定義の一例を示す。サービスシミュレータ220が有するライブラリからサービスを実施する都市を選択することで、その都市において利用可能な資源が選択可能になる。
図5に示す例では、使用する資源として、EVバス車両、道路リンク1,2,3,4、バス停A,B,C,D、及び充電スタンドXが選択されている。ライブラリには、EVバス車両の性能(例えば速度)や道路リンクの長さなどのパラメータが記載されている。サービスシミュレータ220はライブラリで選択された資源のパラメータを参照してシミュレーションを実行する。また、ライブラリには、バス停で乗降する乗客の人数と乗降時間が予め定義された乗客モデルが組み込まれている。
【0051】
サービスロジックはフローチャートで表される。
図5に示すEV公共バスサービスのサービスロジックによれば、EVバス車両111は出発時刻が到来するまで初期位置で待機する(ステップS101)。出発時刻が到来した場合(ステップS102のYes)、EVバス車両111は道路リンク1を経由してバス停Aまで行き(ステップS103)、バス停Aにて20秒間停車する(ステップS104)。そこで必要に応じて時間調整が行われる。次に、EVバス車両111は道路リンク2を経由してバス停Bまで行き(ステップS105)、バス停Bにて20秒間停車する(ステップS106)。そこでも必要に応じて時間調整が行われる。次に、EVバス車両111は道路リンク3を経由してバス停Cまで行き(ステップS107)、バス停Cにて20秒間停車する(ステップS108)。そこでも必要に応じて時間調整が行われる。さらに、EVバス車両111は道路リンク4を経由してバス停Dまで行く(ステップS109)。
【0052】
EVバス車両111が全てのバス停を巡回したところでサービスが終了したかどうか判定される(ステップS110)。サービスが終了した場合、EVバス車両111は初期位置に戻る(ステップS101)。サービスが終了していない場合、EVバス車両111は充電スタンドXへ移動し(ステップS111)、充電スタンドXで5分間充電する(ステップS112)。運行スケジュールに合わせて時間調整を行った後(ステップS113)、EVバス車両111は再び道路リンク1を経由してバス停Aへ向かう(ステップS103)。
【0053】
図5に示すサービス定義によれば、EV公共バスサービスの制約条件はEVバス車両111の充電量が20%を超えていることである。この制約条件が満たされない場合、及び、上記のサービスロジックでは運行スケジュールを守れない場合、サービス定義を修正すること或いはサービス定義と資源提供を修正することが必要となる。
【0054】
図6はマイクロモビリティ物流サービスのサービス定義の一例を示す。サービスを実施する都市をライブラリから選択することで、その都市において利用可能な資源が選択可能になる。
図6に示す例では、使用する資源として、マイクロモビリティ車両、道路リンク1,2,3,4,5,6、及び充電スタンドXが選択されている。ライブラリには、マイクロモビリティ車両の性能を含む資源のパラメータが記載されている。サービスシミュレータ220はライブラリで選択された資源のパラメータを参照してシミュレーションを実行する。また、ライブラリには、荷物の受け取りや引き渡しに要する時間が予め定義された受渡モデルが組み込まれている。
【0055】
図6に示すマイクロモビリティ物流サービスのサービスロジックによれば、マイクロモビリティ車両114は配送の開始時刻まで初期位置で待機する(ステップS201)。配送の開始時刻が到来した場合(ステップS202のYes)、マイクロモビリティ車両114は荷物の配送指示を受信し(ステップS203)、荷物の受け取り場所までの最短ルートを検索する(ステップS204)。そして、マイクロモビリティ車両114は最短ルートに沿って受け取り場所まで移動し(ステップS205)、受け取り場所にて荷物を受け取る(ステップS206)。次に、マイクロモビリティ車両114は荷物の引き渡し場所までの最短ルートを検索する(ステップS207)。そして、マイクロモビリティ車両114は最短ルートに沿って引き渡し場所まで移動し(ステップS208)、引き渡し場所にて荷物を引き渡す(ステップS209)。
【0056】
マイクロモビリティ車両114が荷物の引き渡しを完了したところでサービスが終了したかどうか判定される(ステップS210)。サービスが終了した場合、マイクロモビリティ車両114は初期位置に戻る(ステップS201)。サービスが終了していない場合、マイクロモビリティ車両114は充電スタンドXへ移動し(ステップS211)、充電スタンドXで5分間充電する(ステップS212)。その後、マイクロモビリティ車両114は次の荷物の配送指示を受信する(ステップS203)。
【0057】
図6に示すサービス定義によれば、マイクロモビリティ物流サービスの制約条件はマイクロモビリティ車両114の充電量が30%を超えていることと、荷物の配送指示を受信してから所定時間内に配送を完了することである。これらの制約条件が満たされない場合、サービス定義を修正すること或いはサービス定義と資源提供を修正することが必要となる。
【0058】
3-4.リソースモニタ及びサービスモニタの表示の一例
都市管理支援装置200は支援情報を都市管理者140に通知することによって都市管理者140を支援する。その通知手段がリソースモニタ260及びサービスモニタ250による支援情報の表示である。
【0059】
リソースモニタ260には支援情報として資源の提供状態が表示される。
図7はリソースモニタ260の表示の一例を示す。リソースモニタ260には、資源名、その資源を利用するサービス、その資源の競合状態、及びその資源の稼働率のスナップショットがテーブルで表示される。EV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスとの間で共用される資源、つまり、競合が生じ得る資源は充電スタンドXと道路リンク1,2,3,4であるので、テーブルにはそれらの提供状態が表示される。テーブルの表示内容はサービスシミュレータ220内時間の現在時刻より過去の任意の時刻まで巻き戻すことができる。
【0060】
図7に示す例では、EVバス車両111は充電スタンドXにて充電中で、充電の終了までに後3分30秒かかることと、マイクロモビリティ車両114は充電スタンドXにて待機中であることとが表示されている。また、充電スタンドXにおけるEVバス車両111とマイクロモビリティ車両114との1日当たりの発生回数と、1回当たりの発生時間が表示されている。さらに、充電スタンドXの稼働率が表示されている。これらの表示内容から、都市管理者140は充電スタンドXの獲得に競合が発生していることを把握することができる。
【0061】
また、リソースモニタ260には
図4に示すような依存グラフを表示してもよい。依存グラフを観察することで、都市管理者140はどの資源が無駄でどの資源が補強すべきなのかを比較的長期的な視点で判断することができる。
【0062】
サービスモニタ250には支援情報として各サービスの提供状態が表示される。
図8はサービスモニタ250の表示の一例を示す。サービスモニタ250には、EV公共バスサービスで利用されているEVバス車両111のサービス状態と、マイクロモビリティ物流サービスで利用されているマイクロモビリティ車両114のサービス状態とが表示される。各サービスのサービス状態はフローチャートで表され、サービスシミュレータ220内時間の現在時刻のブロックが強調表示される。特に、EV公共バスサービスのフローチャートでは、各ブロックの開始時刻/終了時刻、現在ブロックの残り時間が表示される。また、マイクロモビリティ物流サービスのフローチャートでは、各ブロックのin/outの時刻、現在ブロックの残り時間に加えて、待機中になってからの経過時間が表示される。
【0063】
図8に示す例では、EV公共バスサービスのフローチャートの「充電スタンドで5分充電」と記載されたブロックが強調表示されるとともに、充電終了での残り時間が表示される。また、マイクロモビリティ物流サービスのフローチャートの「充電スタンドで5分充電」と記載されたブロックが強調表示されるとともに、充電待ちになってからの待機時間が表示される。
【0064】
図7及び
図8に示す例では、EV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスとの間で充電スタンドXの獲得に競合が生じている。この競合を解消するための方法の一例は、資源としての充電スタンドを追加し、追加した充電スタンドをEV公共バスサービスとマイクロモビリティ物流サービスのどちらか一方で利用することである。そのためには、資源提供の修正とサービス定義の修正とが併せて必要になる。
【0065】
ここでは資源として充電スタンドYが追加され、マイクロモビリティ物流サービスのサービス定義が修正されるものとする。この場合、図示は省略するが、
図7に示すテーブルに充電スタンドYが追加され、充電スタンドYを追加されたテーブルがリソースモニタ260に表示される。また、
図9に例示するようなマイクロモビリティ物流サービスのサービス定義の修正案が作成され、サービス定義の修正案はサービスモニタ250に表示される。
図9に示す例では、使用する資源が充電スタンドXから充電スタンドYに置き換えられ、それに応じてステップS211及びステップS211のブロックの内容が変更されている。
【0066】
都市管理者140はリソースモニタ260の表示を確認し、資源である充電スタンドの提供業者に対して充電スタンドYの追加を依頼する。充電スタンドYを追加することは、既設の充電スタンドYに給電し、充電スタンドYを用いたマイクロモビリティ車両114への充電を可能にすることを意味する。また、都市管理者140はサービスモニタ250の表示を確認し、マイクロモビリティ物流サービス事業者120Bに対して
図9に示す修正案に沿ったサービス定義の修正を依頼する。これにより都市100における資源とサービスの関係が適正化される。
【0067】
4.その他
上記実施形態ではEVバス車両111とマイクロモビリティ車両114はそれぞれ1台であるが、それらが複数台の場合にはサービス定義の修正案も複数作成することができる。例えば、日中のEVバス車両111の運行台数が多い時間帯は、EVバス車両111の充電を優先してマイクロモビリティ車両114の充電頻度を少なくし、マイクロモビリティ車両114の夜間の充電時間を長くするようにサービス定義の修正案を作成するといったことも可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 都市
110 資源
111 EVバス車両
112 道路リンク
113 バス停
114 マイクロモビリティ車両
115 充電スタンド
120A サービス提供者(EV公共バスサービス事業者)
120B サービス提供者(マイクロモビリティ物流サービス事業者)
130 利用者
140 都市管理者
200 都市管理支援装置