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  • 特許-織機の画像記録装置 図1
  • 特許-織機の画像記録装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】織機の画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   D03J 1/24 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
D03J1/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022008430
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2023107308
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭宏
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/090166(WO,A1)
【文献】特開2004-100061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03J 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機における緯糸の飛走を撮影する撮影部と、
前記撮影部の撮影により生成された画像を記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出された前記画像を記録する記録部と、
前記撮影部の撮影と前記記憶部及び前記記録部における前記画像の入出力とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記織機の運転に応じて出力される運転信号に基づいてトリガ信号を生成し、前記トリガ信号により前記撮影部の撮影のタイミングを制御するトリガコントローラと、
前記撮影部の撮影により生成された前記画像を前記記憶部に記憶させると共に、前記記憶部に記憶された前記画像を読み出して前記記録部に記録する画像コントローラと、
前記トリガコントローラによる前記運転信号の受信、前記撮影部による撮影及び前記画像コントローラによる前記記憶部への前記画像の記憶のうちのいずれか一つからの経過時間を計測するタイマとを備え、
前記タイマで計測した前記経過時間が所定時間を超えた場合、前記画像コントローラは、前記記憶部に記憶されている前記画像を読み出し、前記記録部に前記画像を記録する、
織機の画像記録装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記織機に含まれる機台の回転速度に応じて決定される、
請求項1に記載の織機の画像記録装置。
【請求項3】
前記画像コントローラは、前記撮影部の撮影により生成された前記画像に撮影時または記憶時の時刻情報を付与し、前記時刻情報が付与された前記画像を前記記憶部に記憶する、
請求項1または請求項2に記載の織機の画像記録装置。
【請求項4】
前記撮影部は、発光部とカメラ部とを備え、
前記トリガ信号に基づいて、前記発光部によるストロボ発光と、前記カメラ部による前記緯糸の飛走の撮影とを実行する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の織機の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機は、給糸部の緯糸を緯糸測長貯留部において貯留し、貯留された緯糸をメインノズルにより解除して緯入れを開始し、緯入れされた緯糸をサブノズルにより織幅内に搬送し、緯入れを終了するように構成されている。ここで、所定の緯入れ末端位置に緯糸を所定タイミングで到達させることが品質の良い織布を織る上で重要である。
【0003】
そして、緯入れ末端位置において緯糸に急激な張力が掛かるのを防止するため、緯入れ終了間近になったときに緯糸に制動を掛ける緯糸ブレーキが用いられている。
【0004】
緯糸の飛走状態を検知する飛走センサとして織幅内センサとエンドセンサとの2つのセンサを、緯糸の飛走経路に取り付け、各センサの検知結果に基づいて緯入れ異常を判定する技術が存在している。このような技術が特許文献1に提案されている。
また、緯糸の飛走状態を記録するため、カメラ付きストロボスコープの技術が特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4145385号公報
【文献】実開昭55-118121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように飛走センサの検知結果に基づいて緯入れ異常を判定する場合、織幅内センサとエンドセンサとの2つのセンサの検知状態の組み合わせから緯入れ異常の種類を大まかに推測することまではできるものの、緯入れ異常の種類を正確に分類することはできない。
【0007】
特許文献2のカメラ付きストロボスコープの場合、異常時のみに画像を記録することができない。異常時のみに画像を記録すべく、織機から異常信号を取得すると、配線が増えて接続が煩雑になり、実用性が低下する問題がある。
【0008】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成により緯入れ異常の種類を確実に分類するのに必要な緯糸飛走状態の画像を緯入れ異常発生時に提示することが可能な織機の画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この開示における織機の画像記録装置は、織機における緯糸の飛走を撮影する撮影部と、撮影部の撮影により生成された画像を記憶する記憶部と、記憶部から読み出された画像を記録する記録部と、撮影部の撮影と記憶部及び記録部における画像の入出力とを制御する制御部とを備え、制御部は、織機の運転に応じて出力される運転信号に基づいてトリガ信号を生成し、トリガ信号により撮影部の撮影のタイミングを制御するトリガコントローラと、撮影部の撮影により生成された画像を記憶部に記憶させると共に、記憶部に記憶された画像を読み出して記録部に記録する画像コントローラと、トリガコントローラによる運転信号の受信、撮影部による撮影及び画像コントローラによる記憶部への画像の記憶のうちのいずれか一つからの経過時間を計測するタイマとを備え、タイマで計測した経過時間が所定時間を超えた場合、画像コントローラは、記憶部に記憶されている画像を読み出し、記録部に画像を記録する。
【0010】
この開示における織機の画像記録装置において、所定時間は、織機に含まれる機台の回転速度に応じて決定されることが望ましい。
【0011】
この開示における織機の画像記録装置において、画像コントローラは、撮影部の撮影により生成された画像に撮影時または記憶時の時刻情報を付与し、時刻情報が付与された画像を記憶部に記憶することが望ましい。
【0012】
撮影部は、発光部とカメラ部とを備え、トリガ信号に基づいて、発光部によるストロボ発光と、カメラ部による緯糸の飛走の撮影とを実行することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
この開示によれば、簡易な構成により、緯糸の緯入れ異常が発生した場合、緯入れ異常の種類を確実に分類するのに必要な緯糸飛走状態の画像を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1における画像記録装置の構成を織機の構成と共に示すブロック図である。
図2】実施の形態1における画像記録装置の撮影並びに画像の記憶及び記録の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、織機の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0016】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1における、織機10における緯糸Yの飛走を撮影する画像記録装置100の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施の形態1における画像記録装置100の構成を織機10の構成と共に示すブロック図である。
【0017】
なお、本明細書では、緯糸Yを経糸開口内に緯入れし、緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向と反対側を上流、緯入れ方向側を下流とする。また、緯糸Yを飛走させる圧縮エアの流れる方向に対し、源流側を上流、源流と反対側を下流とする。
【0018】
[画像記録装置の構成]
図1に示される画像記録装置100は、織機10における緯糸Yの飛走を撮影して画像を記憶及び記録するもので、主に、制御部110と、撮影部120と、操作部130と、記憶部140と、記録部150とを備えている。
【0019】
ここで、制御部110は、トリガコントローラ111と、画像コントローラ112と、タイマ113とを備えている。
トリガコントローラ111は、織機10の運転に応じて出力される運転信号と、操作部130から入力されるタイミング調整値とに基づいてトリガ信号を生成し、撮影部120の撮影のタイミングを制御する。
【0020】
画像コントローラ112は、撮影部120の撮影により生成された画像を記憶部140に記憶するよう制御すると共に、一定の条件のもとで記憶部140に記憶された画像を読み出して記録部150に記録するよう制御する。画像コントローラ112は、画像を記憶部140に記録する際、撮影時または記憶時の時刻情報を付与してもよい。すなわち、画像コントローラ112は、記憶部140及び記録部150における画像の入出力を制御する。
【0021】
タイマ113は、トリガコントローラ111による運転信号の受信、撮影部120による撮影及び画像コントローラ112による記憶部140への画像の記憶のうちのいずれか一つからの経過時間を計測する。
なお、トリガコントローラ111と撮影部120と操作部130とは、織機10の緯糸Yの飛走状態を視覚的に確認するため、ストロボスコープとカメラとを組み合わせたカメラ付きストロボスコープSSを構成している。
【0022】
撮影部120は、発光部121と、カメラ部122とを備えている。発光部121は、キセノンランプあるいは発光ダイオードにより構成される。発光部121は、トリガコントローラ111からトリガ信号を受けるとともに、図示しない電源からストロボ発光用の電力供給を受ける。発光部121は、トリガコントローラ111からのトリガ信号のタイミングに応じて織機10の撮影範囲にストロボ発光を照射する。カメラ部122は、トリガコントローラ111からトリガ信号と、画像コントローラ112から撮影のための電力供給とを受ける。カメラ部122は、トリガコントローラ111からのトリガ信号のタイミングに応じて、発光部121のストロボ発光に合わせて、織機10の撮影範囲における緯糸Yの飛走を撮影し、撮影により生成した画像を画像コントローラ112に供給する。このようにすることで、緯入れ異常の種類を確実に分類するのに必要な緯糸Yの緯糸飛走状態の鮮明な画像を得ることができる。
【0023】
操作部130には、発光部121の発光タイミングを調整するためのタイミング調整値が入力される。操作部130は、入力されたタイミング調整値をトリガコントローラ111に通知する。
記憶部140は、画像コントローラ112の制御により、撮影部120の撮影により生成された画像を一時的に記憶する。記憶部140は、緯入れ異常の解析のために記録部150に記録する一定枚数の画像に合わせた一定の記憶容量を少なくとも有するようにより構成される。記憶部140は、常に最新の一定枚数の画像が記憶されるリングバッファであってもよい。また、記憶部140は、記録部150に記録する一定枚数の画像よりも大きな記憶容量で構成されていてもよい。
記録部150は、画像コントローラ112の制御により、記憶部140から読み出された一定枚数の画像を外部に出力可能なファイルとして記録する。
【0024】
記憶部140における画像の記憶と記録装置における画像の記録の制御は、以下の通りである。
画像コントローラ112は、タイマ113により計測された経過時間を参照し、トリガコントローラ111が運転信号を所定時間以上受信しない場合、撮影部120での撮影が途絶えていて画像コントローラ112が撮影部120から撮影画像を所定時間以上受け取らない場合、または、画像コントローラ112が撮影画像を記憶部140に所定時間以上記憶しない場合のいずれかに該当するとき、記憶部140に記憶されている画像を読み出して、記録部150に記録するよう制御する。
画像コントローラ112において、記憶部140に記憶されている画像を読み出して記録部150に記録する際の基準となる上記の所定時間は、予め定められた固定の時間であってもよいし、後述する機台17の回転速度から算出される回転時間のn倍のような可変の時間であってもよい。画像コントローラ112は、運転信号の間隔をn倍して上記の所定時間を決定してもよい。
【0025】
次に、織機10の構成を説明する。織機10は、主に、制御部11、給糸部12、緯糸測長貯留部13、緯入れノズル14、緯糸飛走経路15、飛走センサ16、機台17、エンコーダ18を備える。なお、ここでは、織機10において、画像記録装置100に関連する主要な部位のみを示している。
【0026】
制御部11は、織機10における各種の制御を実行する。給糸部12は、緯糸測長貯留部13の上流側に設けられ、緯糸Yを保持している。給糸部12の緯糸Yは、緯糸測長貯留部13により引き出される。
【0027】
緯入れノズル14は、タンデムノズル14aと、メインノズル14bとを有する。タンデムノズル14aは、圧縮エアの噴射により、緯糸測長貯留部13の緯糸Yを引き出す。メインノズル14bは、圧縮エアの噴射により、緯糸Yを緯糸飛走経路15に緯入れする。
タンデムノズル14aの上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸Yを制動する緯入れブレーキが設けられている。緯入れブレーキは、高速で飛走する緯糸Yを制動して緯糸Yの飛走速度を低下させ、緯入れ終了タイミングにおける緯糸Yの衝撃を緩和する。
【0028】
緯糸飛走経路15は、緯入れノズル14の下流側に配設され、複数の筬羽により構成されている。緯糸飛走経路15には、図示されない複数の筬羽及びサブノズルと、飛走センサ16とが配置されている。
飛走センサ16は、織幅内センサ16aと、エンドセンサ16bとを備える。織幅内センサ16aは、エンドセンサ16bよりも上流側であって、緯糸飛走経路15における織幅の中央よりも下流側に配置されている。エンドセンサ16bは、緯糸飛走経路15の下流側であって、織幅よりも下流側に配置されている。
【0029】
機台17は、織物の仕様に合わせて製織を行うもので、制御部11の指示に基づいて所定の回転数で回転する。エンコーダ18は、機台17の回転、すなわち織機の運転に応じて、運転信号を画像記録装置100に向けて出力する。
【0030】
以上の織機10において、制御部11は、飛走センサ16により緯糸Yの遅れや未達などの異常が検知された場合、緯糸Yの飛走異常、すなわち緯入れ異常と判定する。制御部11は、緯入れ異常と判定した場合、機台17の回転を中止させ、織機10の運転を停止させる。機台17の回転の中止に伴い、エンコーダ18からの運転信号も停止する。
【0031】
画像記録装置100において、撮影部120は、タンデムノズル14aの上流側に設けられた緯入れブレーキから、緯糸飛走経路15を経て、緯糸飛走経路15の下流側で織幅よりも下流側に配置されているエンドセンサ16bを含む領域を撮影範囲として、緯糸Yの飛走を撮影する。
【0032】
[撮影、記憶及び記録の手順]
次に、実施の形態1における画像記録装置100における撮影、記憶及び記録の手順について、図2を参照して説明する。図2は、実施の形態1における画像記録装置100の撮影並びに画像の記憶及び記録の手順を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS101において、トリガコントローラ111は、織機10からの運転信号の受信を待機している。この後、処理はステップS102へと進む。
ステップS102において、タイマ113は、トリガコントローラ111での運転信号の受信、画像コントローラ112での撮影部120からの撮影画像の受信、画像コントローラ112の制御による記憶部140の画像の記憶、のうちのいずれか最新の一つからの経過時間を計測する。この後、処理はステップS103へと進む。
【0034】
ステップS103において、制御部110は、運転信号を受信したかを確認し、運転信号を受信した場合は処理をステップS104へと進める。ここで、制御部110内のトリガコントローラ111が、運転信号を受信したかを確認すればよい。
【0035】
ステップS104において、トリガコントローラ111は、織機10からの運転信号と操作部130からのタイミング調整値とに基づいてトリガ信号を生成する。トリガコントローラ111は、生成したトリガ信号を撮影部120の発光部121とカメラ部122とに供給する。この後、処理はステップS105へと進む。
【0036】
ステップS105において、発光部121は、トリガコントローラ111からのトリガ信号のタイミングに応じて、織機10の撮影範囲にストロボ発光する。これと並行して、カメラ部122は、トリガコントローラ111からのトリガ信号のタイミングに応じて、織機10の撮影範囲における緯糸Yの飛走を撮影し、撮影により生成した画像を画像コントローラ112に供給する。この後、処理はステップS106へと進む。
【0037】
ステップS106において、画像コントローラ112は、撮影部120の撮影により生成された画像を記憶部140に記憶する。画像コントローラ112は、記憶部140の記憶容量に余裕があれば、過去の画像に加えて新たな画像を記憶する。また、画像コントローラ112は、記憶部140の記憶容量が一定の限られた容量である場合、記憶部140に記憶されている最も古い画像に上書きするように、最新の画像を記憶部140に記憶する。すなわち、記憶部140における画像の記憶は、一時的な画像の保存である。この後、処理はステップS101へと戻る。
【0038】
一方、制御部110は、ステップS103において、織機10からの運転信号を受信していないと判断した場合は、処理をステップS107へと進める。
【0039】
ステップS107において、制御部110は、所定時間経過前に織機10から運転信号を受信した、所定時間経過前に撮影部120の撮影を実行した、及び、所定時間経過前に記憶部140への画像の記憶を実行した、のいずれかに該当するかを確認する。
【0040】
ここで、ステップS107の確認として、画像コントローラ112が、ステップS102で計測を開始したタイマ113での経過時間が所定時間を超えているか否かを判断する。所定時間は、予め定められた固定の時間であってもよいが、機台17の回転速度から算出される回転時間または運転信号の間隔のn倍(例えば、n=2、またはn=3)と設定すると、ステップS107の確認を無駄なく最適化ができる。
【0041】
制御部110は、ステップS107で、運転信号の受信、撮影、撮影した画像の記憶のいずれかを所定時間経過前に実行していると確認できた場合、処理をステップS101へと戻す。
【0042】
一方、制御部110は、ステップS107で、運転信号を所定時間以上受信していない、撮影部120の撮影を所定時間以上実行していない、及び、記憶部140への画像の記憶を所定時間以上実行していない、のいずれかに該当する場合、処理をステップS108へと進める。なお、制御部110は、運転信号を所定時間経過前に受信している/運転信号を所定時間以上受信していない、のみを基準として、ステップS107の確認を行うようにしてもよい。
【0043】
ステップS108において、制御部110は、記憶部140に記憶されている画像のうち最新の一定枚数の画像を、ファイルとして記録部150に記録するよう制御する。なお、記録部150に記録される一定枚数の画像は、織機10において機台17が停止する直前の一定期間の画像を意味している。ここで、記録部150における画像の記録は、外部に出力可能なファイルとしての保存である。記録部150に記録された画像は、画像コントローラ112の制御または外部からの要求に応じて、ファイルとして外部に出力される。
【0044】
なお、記録部150に記録された一定枚数の画像とは、緯糸Yの飛走状態が徐々に悪化して緯入れ異常に至るまでを確認するのに必要な画像であり、例えば、緯糸Yの30ピック分程度の画像を意味する。
【0045】
オペレータは、記録部150にファイルとして記録され、外部に出力された一定枚数の画像を、スマートフォン、タブレット端末、あるいはコンピュータ端末などを用いて見ることで、ノズル出口付近での緯糸Yの詰まりや絡まり、筬近傍に設けられたストレッチパイプへの緯糸Yの導入の不具合など、緯入れ異常発生状況と発生場所とを特定できる。
【0046】
すなわち、実施の形態1の画像記録装置100を用いることで、従来の飛走センサ16の検知結果を用いた場合に正確に分類できなかった緯入れ異常の種類を、確実に分類できることが可能になる。
【0047】
また、織機10と画像記録装置100との間の信号の伝達は、従来のカメラ付きストロボスコープでも使用していた織機10からの運転信号だけである。このため、織機10側に変更を加える必要がない。すなわち、織機10における緯入れ異常の検知結果を、画像記録装置100に伝達する必要がなく、簡素な構成にすることができる。
【0048】
[その他の実施の形態]
以上の説明では撮影部120をストロボ発光する発光部121と、ストロボ発光に同期して撮影するカメラ部122とを備える具体例を示した。しかしながら、ストロボ発光時間と同程度の露光時間で撮影が可能なカメラ部122を使用する場合、発光部121を省略できる。
【0049】
制御部110としてのトリガコントローラ111と画像コントローラ112とタイマ113とは、同一または近接した位置や状態ではなく、離れた位置に存在していてもよい。
例えば、トリガコントローラ111、撮影部120、及び操作部130からなる可搬式のカメラ付きストロボスコープSSに対して、画像コントローラ112と記憶部140とを接続し、実施の形態1の画像記録装置100を構成できる。この場合も、織機10との信号配線の接続は運転信号だけであるため、織機10側に変更を加える必要がなく、画像記録装置100を簡易に構成できる。
記憶部140と記録部150とは、画像コントローラ112と物理的に接続した状態でなくともよく、例えば、外部サーバのストレージなどを用いることができる。
制御部110に含まれるトリガコントローラ111、画像コントローラ112、及びタイマ113は、独立した回路または装置であってもよいが、1つのプロセッサ内に実現することも可能である。
【0050】
画像記録装置100の各部は、織機10のサービスコンセント等から電力の供給を受けてもよい。
【0051】
画像コントローラ112は、ステップS106において、撮影部120の撮影により生成された画像を記憶部140に記憶する際に、撮影時の時刻情報または記憶時の時刻情報をタイムスタンプとして付してもよい。この場合、画像コントローラ112は、記憶部140に記憶された画像に付された最新のタイムスタンプと、織機10の運転終了時刻とを比較することで、織機10の運転終了に伴う通常停止を、緯入れ異常と区別可能になる。また、画像コントローラ112は、記憶部140に記憶された画像に付された最新のタイムスタンプと現在時刻とを比較することで、ステップS107の撮影または記憶の有無の確認を容易に行うことができる。
【0052】
織機10の運転モードの変更などにより機台17の回転速度が変化した場合、制御部110は、運転信号の間隔の変化に応じて、ステップS107での確認に用いる所定時間を適宜変更することで、確認の処理を無駄なく最適化ができる。
【0053】
[実施の形態により得られる効果]
以上説明したように、実施の形態1によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0054】
本開示における画像記録装置100は、緯糸Yの飛走を撮影する撮影部120と、撮影により生成された画像を記憶する記憶部140と、撮影と記憶と記録とを制御する制御部110とを備え、制御部110は、織機10の運転に応じて出力される運転信号に基づいてトリガ信号を生成し、トリガ信号により撮影部120の撮影のタイミングを制御するトリガコントローラ111と、撮影部120の撮影により生成された画像を記憶部140に記憶させると共に、記憶部140に記憶された画像を読み出して記録部150に記録する画像コントローラ112と、トリガコントローラ111による運転信号の受信、撮影部120による撮影及び画像コントローラ112による記憶部140への画像の記憶のうちのいずれか一つからの経過時間を計測するタイマ113と、を備える。タイマ113で計測した経過時間が所定時間を超えた場合、画像コントローラ112は、記憶部140に記憶されている画像を読み出し、記録部150に画像を記録する。
【0055】
この開示によれば、簡易な構成により、緯糸の緯入れ異常が発生した場合、緯入れ異常の種類を確実に分類するのに必要な緯糸飛走状態の画像を提示できる。この結果、織機10において、緯入れ異常の種類に応じた機台調整方法を採用することが可能になる。
【0056】
この開示における画像記録装置100では、緯入れ異常の確認に用いる所定時間を、織機10に含まれる機台の回転速度に応じて決定する。これにより、確認の処理を無駄なく最適化できる。
【0057】
この開示における画像記録装置100において、画像コントローラ112は、撮影により生成された画像に撮影時の時刻情報または記憶時の時刻情報をタイムスタンプとして付与する。これにより、織機10の運転終了に伴う通常停止を緯入れ異常と区別すること、または、撮影有無の確認を、容易に行える。
【0058】
この開示における画像記録装置100において、撮影部120は、発光部121とカメラ部122とを備え、トリガ信号に基づいて、発光部121によるストロボ発光と、カメラ部122による緯糸の飛走の撮影とを実行する。これにより、緯入れ異常の種類を確実に分類するのに必要な緯糸飛走状態の画像を鮮明な状態で提示できる。
【符号の説明】
【0059】
10 織機、11 制御部、12 給糸部、13 緯糸測長貯留部、14 緯入れノズル、14a タンデムノズル、14b メインノズル、15 緯糸飛走経路、16 飛走センサ、16a 織幅内センサ、16b エンドセンサ、17 機台、18 エンコーダ、100 画像記録装置、110 制御部、111 トリガコントローラ、112 画像コントローラ、113 タイマ、120 撮影部、121 発光部、122 カメラ部、130 操作部、140 記憶部、150 記録部、SS カメラ付きストロボスコープ、Y 緯糸。
図1
図2