IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特許7574814エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム
<>
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図1
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図2
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図3
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図4
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図5
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図6
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図7
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図8
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図9
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図10
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図11
  • 特許-エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241022BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20241022BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241022BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20241022BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241022BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/46
H02J15/00 D
H02J15/00 G
H02J15/00 E
H01M8/04 Z
H01M8/04992
H01M8/04858
F17C13/02 301Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022014807
(22)【出願日】2022-02-02
(65)【公開番号】P2023112843
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】國富 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小松原 充夫
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0262197(US,A1)
【文献】特開2018-036926(JP,A)
【文献】特開2021-040484(JP,A)
【文献】特開2012-175825(JP,A)
【文献】特開2019-161836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/46
H02J 15/00
H01M 8/04
H01M 8/04992
H01M 8/04858
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象のエネルギを管理するエネルギ管理装置であって、
前記管理対象は、複数の機器と前記複数の機器のエネルギを管理する他のエネルギ管理装置とからなる1つ以上のユニットであり、
前記エネルギ管理装置は、前記管理対象に対して、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギ管理装置は、さらに、
前記管理対象の運転状態に関する情報を取得する情報取得部と、
前記管理対象の運転計画を取得する計画部と、
前記情報取得部が取得する前記情報と前記計画部が取得する運転計画とを用いて、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量とを決定する指令部と、を備える、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギ管理装置であって、
前記管理対象は、エネルギ変換機器と、エネルギの移動方向において前記エネルギ変換機器の上流側に接続する上流側エネルギ貯蔵機器と、エネルギの移動方向において前記エネルギ変換機器の下流側に接続する下流側エネルギ貯蔵機器と、を備えるユニットであり、
前記情報取得部は、前記上流側エネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分、および、前記下流側エネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に関する情報を取得し、
前記指令部は、前記情報取得部が取得する差分に関する情報を用いて、前記エネルギ変換機器の前記制御時間と、前記エネルギ変換機器におけるエネルギの融通量を決定する、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエネルギ管理装置であって、
前記指令部は、式(1)を用いて、前記エネルギ変換機器の制御時間thを決定する、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【数1】
(式(1)において、
h:エネルギ変換機器の制御時間(s)
max-α_i:i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)
min-α_i:i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)
now-α_i:i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)
er-α_i:i番目の上流側エネルギ貯蔵機器への入出力の想定予実ずれ(W)
max-β_j:j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)
min-β_j:j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)
now-β_j:j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)
er-β_j:j番目の下流側エネルギ貯蔵機器への入出力の想定予実ずれ(W)
i,jは、1以上の整数であり、niは、上流側エネルギ貯蔵機器の数であり、njは、下流側エネルギ貯蔵機器の数である。)
【請求項5】
請求項2に記載のエネルギ管理装置であって、
前記管理対象は、複数のエネルギ貯蔵機器を備えるユニットであり、
前記情報取得部は、前記複数のエネルギ貯蔵機器のうちの特定のエネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分、および、前記特定のエネルギ貯蔵機器に接続するエネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に関する情報を取得し、
前記指令部は、前記情報取得部が取得する差分に関する情報に基づいて、前記特定のエネルギ貯蔵機器の前記制御時間と、前記特定のエネルギ貯蔵機器における前記エネルギの融通量と、を決定する、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエネルギ管理装置であって、
前記指令部は、式(2)を用いて、前記特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間thを決定する、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【数2】
(式(2)において、
h:特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間(s)
max-γ:特定のエネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)
min-γ:特定のエネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)
now-γ:特定のエネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)
er-γ:特定のエネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれ(W)
max-δ_i:特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)
min-δ_i:特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)
now-δ_i:特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)
er-δ_i:特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれ(W)
iは、1以上の整数であり、niは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているエネルギ貯蔵機器の数である。)
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のエネルギ管理装置であって、
前記指令部は、式(3)を用いて、前記管理対象におけるエネルギの融通量Eを決定する、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【数3】
(式(3)において、
now:現在時刻(s)
h:管理対象の制御時間(s)
op_ε:管理対象の運転計画出力値(W)
である。)
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエネルギ管理装置であって、
前記エネルギ管理装置は、前記制御時間が所定値以下である場合、前記管理対象に対する前記制御時間と前記エネルギの融通量の指令を停止する、
ことを特徴とするエネルギ管理装置。
【請求項9】
エネルギ管理システムであって、
1つ以上の機器に対して、前記機器の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう機器エネルギ管理装置と、
前記1つ以上の機器と、前記機器エネルギ管理装置とからなるユニットのエネルギを管理するユニットエネルギ管理装置であって、前記機器エネルギ管理装置に対して、前記ユニットの制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなうユニットエネルギ管理装置と、を備える、
ことを特徴とするエネルギ管理システム。
【請求項10】
管理対象のエネルギをエネルギ管理装置によって管理するエネルギ管理方法であって、
前記管理対象に対して、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう工程を備え、
前記管理対象は、複数の機器と前記複数の機器のエネルギを管理する他のエネルギ管理装置とからなる1つ以上のユニットである、
ことを特徴とするエネルギ管理方法。
【請求項11】
管理対象のエネルギ管理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記管理対象は、複数の機器と前記複数の機器のエネルギを管理する他のエネルギ管理装置とからなる1つ以上のユニットであり、
前記管理対象に対して、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう機能を前記コンピュータに実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ管理装置、エネルギ管理システム、エネルギ管理方法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の管理対象のエネルギを管理するエネルギ管理装置が知られている。一般的に、エネルギ管理装置は、複数の管理対象ごとのエネルギの融通計画に沿って管理対象ごとの運転パターンを作成し、複数の管理対象のそれぞれに指令を出力することで、管理対象間のエネルギのやり取りを管理する(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-35941号公報
【文献】特開2016-42478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、管理対象の数が増加すると、エネルギ管理装置の管理負荷が増大するため、エネルギ管理装置は、複数の管理対象のそれぞれに、適した運転パターンに関する情報を出力することが難しくなる。このため、個別の管理対象レベルで最適な運転ができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、エネルギ管理装置において、エネルギ管理装置の負荷を低減しつつ、個別の管理対象レベルでの最適運転を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、管理対象のエネルギを管理するエネルギ管理装置が提供される。エネルギ管理装置は、1つ以上の機器、または、複数の機器と前記複数の機器のエネルギを管理する他のエネルギ管理装置とからなる1つ以上のユニットの管理対象のエネルギを管理し、前記管理対象に対して、前記管理対象の制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう。
【0008】
この構成によれば、エネルギ管理装置は、管理対象に対して、管理対象の制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう。ここで、エネルギの融通量とは、管理対象におけるエネルギの貯蔵、変換、消費、移動などエネルギの変化量に関するものを指す。管理対象は、エネルギ管理装置から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定する。これにより、エネルギ管理装置が管理対象の動作パターンまで決定する場合に比べ、エネルギ管理装置の負荷を低減することができる。さらに、管理対象は、エネルギ管理装置から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができる。これにより、個別の管理対象レベルでの最適運転を実現することができる。
【0009】
(2)上記形態のエネルギ管理装置において、前記管理対象の運転状態に関する情報を取得する情報取得部と、前記管理対象の運転計画を取得する計画部と、前記情報取得部が取得する前記情報と前記計画部が取得する運転計画とを用いて、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量とを決定する指令部と、を備えてもよい。この構成によれば、エネルギ管理装置は、管理対象の運転状態に関する情報と管理対象の運転計画とを用いて、制御時間とエネルギの融通量とを決定する。これにより、エネルギ管理装置は、管理対象の運転状態を考慮してエネルギの融通計画を立案し、制御時間とエネルギの融通量を決定することができる。
【0010】
(3)上記形態のエネルギ管理装置において、前記管理対象は、エネルギ変換機器と、エネルギの移動方向において前記エネルギ変換機器の上流側に接続する上流側エネルギ貯蔵機器と、エネルギの移動方向において前記エネルギ変換機器の下流側に接続する下流側エネルギ貯蔵機器と、であり、前記情報取得部は、前記上流側エネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分、および、前記下流側エネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に関する情報を取得し、前記指令部は、前記情報取得部が取得する差分に関する情報を用いて、前記エネルギ変換機器の前記制御時間と、前記エネルギ変換機器におけるエネルギの融通量を決定してもよい。この構成によれば、指令部は、管理対象としてのエネルギ変換機器に接続する上流側エネルギ貯蔵機器と下流側エネルギ貯蔵機器とのそれぞれのエネルギ量に関する情報を用いて、エネルギ変換機器の制御時間とエネルギの融通量を決定する。これにより、エネルギ貯蔵機器の実際の状態に合わせてエネルギを融通することができるため、エネルギ貯蔵機器でのエネルギの過不足が発生することを抑制することができる。
【0011】
(4)上記形態のエネルギ管理装置において、前記指令部は、式(1)を用いて、前記エネルギ変換機器の制御時間thを決定してもよい。
【数4】
式(1)において、thは、エネルギ変換機器の制御時間(s)であり、Emax-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器への入出力の想定予実ずれ(W)であり、Emax-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器への入出力の想定予実ずれ(W)であり、i,jは、1以上の整数であり、niは、上流側エネルギ貯蔵機器の数であり、njは、下流側エネルギ貯蔵機器の数である。この構成によれば、指令部は、エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に加え、エネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれを用いて、エネルギ変換機器の制御時間を決定する。これにより、入出力の想定予実ずれを想定した上で機器ごとに適した制御時間を設定できるため、エネルギ貯蔵機器でのエネルギの過不足の発生をさらに抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態のエネルギ管理装置において、前記管理対象は、複数のエネルギ貯蔵機器であり、前記情報取得部は、前記複数のエネルギ貯蔵機器のうちの特定のエネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分、および、前記特定のエネルギ貯蔵機器に接続するエネルギ貯蔵機器における、現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に関する情報を取得し、前記指令部は、前記情報取得部が取得する差分に関する情報に基づいて、前記特定のエネルギ貯蔵機器の前記制御時間と、前記特定のエネルギ貯蔵機器における前記エネルギの融通量と、を決定してもよい。この構成によれば、指令部は、管理対象としての複数のエネルギ貯蔵機器のうちの特定のエネルギ貯蔵機器について、特定のエネルギ貯蔵機器に接続するエネルギ貯蔵機器のエネルギ量に関する情報を用いて、特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間とエネルギの融通量を決定する。ここで、「特定のエネルギ貯蔵機器」とは、エネルギ貯蔵機能を有する機器であって、例えば、蓄電池がこれに該当し、ガスタンクなどは該当しない。これにより、エネルギ貯蔵機器の実際の状態に合わせてエネルギを融通するため、エネルギ貯蔵機器でのエネルギの過不足が発生することを抑制することができる。
【0013】
(6)上記形態のエネルギ管理装置において、前記指令部は、式(2)を用いて、前記特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間thを決定してもよい。
【数5】
式(2)において、thは、特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間(s)であり、Emax-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれ(W)であり、Emax-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の出力の想定予実ずれ(W)であり、iは、1以上の整数であり、niは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているエネルギ貯蔵機器の数である。この構成によれば、指令部は、エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に加え、エネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれを用いて、特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間を決定する。これにより、入出力の想定予実ずれを想定した上で機器ごとに適した制御時間を設定できるため、エネルギ貯蔵機器でのエネルギの過不足の発生をさらに抑制することができる。
【0014】
(7)上記形態のエネルギ管理装置において、前記指令部は、式(3)を用いて、前記管理対象におけるエネルギの融通量Eを決定してもよい。
【数6】
式(3)において、tnowは、現在時刻(s)であり、thは、管理対象の制御時間(s)であり、Pop_εは、管理対象の運転計画出力値(W)である。この構成によれば、指令部は、制御時間における管理対象の運転計画出力値の積分によってエネルギの融通量を算出する。このことは、管理対象において、制御時間内でのエネルギの融通量が式(3)を満たせばよいことを示しており、管理対象は、式(3)を満たす範囲において、管理対象の運転パターンを自由に設定することができる。したがって、管理対象は、自身の最適な動作パターンを決定することができるため、個別の管理対象レベルでの最適運転を実現することができる。
【0015】
(8)上記形態のエネルギ管理装置において、前記エネルギ管理装置は、前記制御時間が所定値以下である場合、前記管理対象に対する前記制御時間と前記エネルギの融通量の指令を停止してもよい。この構成によれば、エネルギ管理装置は、決定される制御時間が短くなりすぎると、管理対象への制御時間とエネルギの融通量の出力を停止する。これにより、エネルギ管理装置は、例えば、単位時間ごとに所定のエネルギの融通量を管理対象に出力するなどして、管理対象の動作が不安定になることを抑制することができる。
【0016】
(9)本発明の別の形態によれば、エネルギ管理システムが提供される。このエネルギ管理システムは、1つ以上の機器に対して、前記機器の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう機器エネルギ管理装置と、前記1つ以上の機器と、前記機器エネルギ管理装置とからなるユニットのエネルギを管理するユニットエネルギ管理装置であって、前記機器エネルギ管理装置に対して、前記ユニットの制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなうユニットエネルギ管理装置と、を備える、この構成によれば、ユニットエネルギ管理装置は、1つ以上の機器と、機器のエネルギを管理する機器エネルギ管理装置と、を含むユニットのエネルギを管理する。ユニットに含まれる機器エネルギ管理装置は、ユニットに含まれる機器のエネルギを管理する。このように、機器に対して、ユニットエネルギ管理装置と機器エネルギ管理装置とを階層的に配置することで、比較的多くの機器のエネルギを管理するための負荷を、ユニットエネルギ管理装置と機器エネルギ管理装置とで分担することができる。これにより、個別の管理対象レベルでの最適運転を実現することができる。
【0017】
(10)本発明のさらに別の形態によれば、管理対象のエネルギをエネルギ管理装置によって管理するエネルギ管理方法が提供される。このエネルギ管理方法は、前記管理対象に対して、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう工程を備え、前記管理対象は、1つ以上の機器、または、複数の機器と前記複数の機器のエネルギを管理する他のエネルギ管理装置とからなる1つ以上のユニットである。この構成によれば、管理対象に対して、管理対象の制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう工程を備える。管理対象では、指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定することができるため、エネルギ管理装置が管理対象の動作パターンまで決定する場合に比べ、エネルギ管理装置の負荷を低減することができる。さらに、管理対象は、指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができる。これにより、個別の管理対象レベルでの最適運転を実現することができる。
【0018】
(11)本発明のさらに別の形態によれば、管理対象のエネルギ管理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、前記管理対象に対して、前記管理対象の制御時間と、前記制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう機能を前記コンピュータに実行させるものであり、前記管理対象は、1つ以上の機器、または、複数の機器と前記複数の機器のエネルギを管理する他のエネルギ管理装置とからなる1つ以上のユニットである。この構成によれば、コンピュータプログラムは、管理対象に対して、管理対象の制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう機能を、コンピュータに実行させる。これにより、エネルギ管理装置が管理対象の動作パターンまで決定する場合に比べ、エネルギ管理装置の負荷を低減することができる。さらに、管理対象は、指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができる。これにより、個別の管理対象レベルでの最適運転を実現することができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、エネルギ管理システムを含む管理対象の制御方法、管理対象内のエネルギの管理を管理させるためのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態のエネルギ管理システムが管理する工場の模式図である。
図2】第1実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する第1模式図である。
図3】第1実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する第2模式図である。
図4】第2実施形態のエネルギ管理システムの管理対象の説明図である。
図5】第2実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。
図6】水電解装置の運転計画出力値の時間変化を説明する図である。
図7】第3実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。
図8】第4実施形態のエネルギ管理システムの管理対象の説明図である。
図9】第4実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。
図10】第5実施形態のエネルギ管理システムの管理対象の説明図である。
図11】第5実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。
図12】第1実施形態のエネルギ管理システムの変形例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のエネルギ管理システムが管理する工場の模式図である。本実施形態のエネルギ管理システム1Aは、図1に示すような、複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43を備える工場10に適用することができる。複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43のそれぞれは、エネルギラインL1,L2,L3,L12,L23によって接続されており、機器間でエネルギを融通することができる。ここで、本実施形態での「エネルギ」とは、電力や熱などに限らず、化学反応によってエネルギを発生することが可能な水素ガスやメタンガスなども含まれる。
【0022】
図2は、本実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する第1模式図である。図3は、本実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する第2模式図である。エネルギ管理システム1Aは、ユニットエネルギ管理装置5と、複数の機器エネルギ管理装置20,30,40と、を備える。エネルギ管理システム1Aは、工場10が備える複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43のそれぞれのエネルギの需給状況を把握し、複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43間のエネルギの融通量を管理する。
【0023】
本実施形態では、複数の機器エネルギ管理装置20,30,40と、複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43とのそれぞれは、工場10が有する3つのユニット10A,10B,10Cのいずれかに属する。ユニット10Aは、機器21,22,23と、機器21,22,23のエネルギを管理する機器エネルギ管理装置20を備える。ユニット10Bは、機器31,32,33と、機器31,32,33のエネルギを管理する機器エネルギ管理装置30を備える。ユニット10Cは、機器41,42,43と、機器41,42,43のエネルギを管理する機器エネルギ管理装置40を備える。
【0024】
ユニットエネルギ管理装置5は、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギの需給量や貯蔵量など、エネルギに関する情報を収集する。ユニットエネルギ管理装置5は、工場10全体の運転計画を満たすように立案されているユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギの融通計画に基づいて、機器エネルギ管理装置20,30,40のそれぞれに、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれについての指令を出力する。ユニットエネルギ管理装置5は、工場情報取得部5Aと、工場計画部5Bと、工場指令部5Cと、を備える。
【0025】
工場情報取得部5Aは、複数の機器エネルギ管理装置20,30,40のそれぞれと電気的に接続されている。工場情報取得部5Aは、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギに関する情報を取得する。
【0026】
工場計画部5Bは、工場情報取得部5Aによって得られる情報に基づいて、工場10全体の運転計画を満たすように、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギの融通計画を立案する。これにより、工場計画部5Bは、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギの融通計画を取得することができる。
【0027】
工場指令部5Cは、工場情報取得部5Aが取得するユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギに関する情報と、工場計画部5Bが取得するユニット間のエネルギの融通計画を用いて、ユニット10A,10B,10Cへの指令内容を決定する。本実施形態では、決定される指令内容は、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれの制御時間と、ユニット間で融通するエネルギの融通量に関する情報が含まれる。ここで、エネルギの融通量とは、管理対象におけるエネルギの貯蔵、変換、消費、移動などエネルギの変化量に関するものを指す。工場指令部5Cにおいて決定される指令内容は、工場指令部5Cから複数の機器エネルギ管理装置20,30,40のそれぞれに出力される。なお、本実施形態では、全てのユニット10A,10B,10Cのそれぞれに、制御時間とエネルギの融通量を指令するとしたが、必ずしも全てのユニットに指令をする必要はない。例えば、ユニット10A,10Bには、制御時間とエネルギの融通量を指令し、ユニット10Cにのみ、単位時間ごとのエネルギの移動量を指令してもかまわない。
【0028】
複数の機器エネルギ管理装置20,30,40のそれぞれは、ユニットエネルギ管理装置5と電気的に接続されている。機器エネルギ管理装置20は、機器21,22,23と電気的に接続している。機器エネルギ管理装置30は、機器31,32,33と電気的に接続している。機器エネルギ管理装置40は、機器41,42,43と電気的に接続している。機器エネルギ管理装置20,30,40のそれぞれは、ユニット情報取得部と、ユニット計画部と、ユニット指令部と、を備える。ここでは、図3を用いて、機器エネルギ管理装置20が備えるユニット情報取得部20A、ユニット計画部20B、および、ユニット指令部20Cの機能について説明するが、機器エネルギ管理装置30,40についても同様の構成と機能を有する。
【0029】
ユニット情報取得部20Aは、機器21,22,23のそれぞれと電気的に接続している。ユニット情報取得部20Aは、機器21,22,23のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報を取得する。
【0030】
ユニット計画部20Bは、ユニットエネルギ管理装置5と電気的に接続されている。ユニット計画部20Bには、ユニットエネルギ管理装置5から、ユニット10Aの制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量が入力される。
【0031】
ユニット指令部20Cは、ユニット情報取得部20Aとユニット計画部20Bとに電気的に接続されている。ユニット指令部20Cは、ユニット情報取得部20Aが取得する複数の機器21,22,23のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報と、ユニット計画部20Bを介してユニットエネルギ管理装置5から入力される指令内容を用いて、複数の機器21,22,23のそれぞれの制御時間と、複数の機器21,22,23のそれぞれに割り当てられる、エネルギの融通量を決定する。ユニット指令部20Cは、複数の機器21,22,23に対して、複数の機器21,22,23のそれぞれの制御時間とエネルギの融通量で指令をおこなう。
【0032】
複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43のそれぞれは、機器制御部と、機器機能部と、を備える。ここでは、図3を用いて、ユニット10Aが備える機器21,22,23のそれぞれが備える、機器制御部21A,22A,23A、および、機器機能部21B,22B,23Bの機能について説明するが、複数の機器31,32,33,41,42,43のそれぞれについても同様の構成を有する。
【0033】
機器制御部21A,22A,23Aのそれぞれは、機器計画部21C,22C,23Cと、機器指令部21D,22D,23Dと、を備える。機器計画部21Cは、ユニット指令部20Cが出力する機器21の制御時間とエネルギの融通量を満たす範囲内で、機器21において最適な運転パターン(出力計画)を決定する。ここで、最適な運転パターンとして、例えば、運転の効率性や、機器21の耐久性を考慮した運転パターンなどが挙げられる。機器指令部21Dは、機器計画部21Cが決定した運転パターンで機器機能部21Bを制御する。機器計画部22Cは、ユニット指令部20Cが出力する機器22の制御時間とエネルギの融通量を満たす範囲内で、機器22において最適な運転パターン(出力計画)を決定する。ここで、最適な運転パターンとして、機器21の場合と同様に、運転の効率性や、機器22の耐久性を考慮した運転パターンなどが挙げられる。機器指令部22Dは、機器計画部22Cが決定した運転パターンで機器機能部22Bを制御する。機器計画部23Cは、ユニット指令部20Cが出力する機器23の制御時間とエネルギの融通量を満たす範囲内で、機器23において最適な運転パターン(出力計画)を決定する。ここで、最適な運転パターンとして、機器21の場合と同様に、運転の効率性や、機器23の耐久性を考慮した運転パターンなどが挙げられる。機器指令部23Dは、機器計画部23Cが決定した運転パターンで機器機能部23Bを制御する。
【0034】
機器機能部21B,22B,23Bのそれぞれは、機器21,22,23のそれぞれに特有の機能を発揮する。例えば、機器が蓄電池である場合、機器機能部は、電池を有する蓄電部であったり、機器が発電機である場合、機器機能部は、発電部であったりする。機器機能部21B,22B,23Bのそれぞれは、機器指令部21D,22D,23Dのそれぞれと電気的に接続されており、機器指令部21D,22D,23Dのそれぞれが出力する運転パターンに応じて、機能を発揮する。
【0035】
以上説明した、本実施形態のエネルギ管理システム1Aによれば、ユニットエネルギ管理装置5は、複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれに対して、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれの制御時間と、制御時間でのユニット10A,10B,10C間のエネルギの融通量で指令をおこなう。複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれは、ユニットエネルギ管理装置5から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定する。これにより、ユニットエネルギ管理装置5がユニット10A,10B,10Cのそれぞれの動作パターンまで決定する場合に比べ、ユニットエネルギ管理装置5の負荷を低減することができる。さらに、ユニット10A,10B,10Cは、ユニットエネルギ管理装置5から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができるため、ユニット10A,10B,10Cごとのレベルでの最適運転を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Aによれば、ユニットエネルギ管理装置5は、機器エネルギ管理装置20,30,40のそれぞれのエネルギに関する情報を取得する工場情報取得部5Aを備えている。これにより、ユニットエネルギ管理装置5は、複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれの運転状態に関する情報と管理対象の運転計画とを用いて、制御時間とエネルギの融通量とを決定する。これにより、ユニットエネルギ管理装置5は、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれの運転状態を考慮してエネルギの融通計画を立案し、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれに対して、制御時間とエネルギの融通量を指令することができる。
【0037】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Aによれば、ユニット10Aにおいて、機器エネルギ管理装置20は、複数の機器21,22,23のそれぞれに対して、機器21,22,23のそれぞれの制御時間と、制御時間での機器21,22,23のエネルギの融通量で指令をおこなう。複数の機器21,22,23のそれぞれは、機器エネルギ管理装置20から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量にあわせて、動作パターンを決定する。これは、ユニット10Bとユニット10Cにおいても同様である。これにより、ユニット10Aでは、機器エネルギ管理装置20が機器21,22,23のそれぞれの動作パターンまで決定する場合に比べ、機器エネルギ管理装置20の負荷を低減することができる。さらに、機器21,22,23は、機器エネルギ管理装置20から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができるため、機器21,22,23ごとのレベルでの最適運転を実現することができる。このような効果は、ユニット10Bが備える機器エネルギ管理装置30とユニット10Cが備える機器エネルギ管理装置40においても同様である。
【0038】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Aによれば、エネルギ管理システム1Aは、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギを管理するユニットエネルギ管理装置5と、ユニットに含まれる複数の機器のエネルギを管理する機器エネルギ管理装置20,30,40と、が階層的に配置されている。これにより、比較的多くの機器のエネルギを管理するための負荷を、ユニットエネルギ管理装置5と複数の機器エネルギ管理装置20,30,40とで分担することができるとともに、個別の機器レベルでの最適運転を実現することができる。
【0039】
また、本実施形態のエネルギ管理方法によれば、複数のユニット10A,10B,10Cに対して、複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれの制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう工程を備える。複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれでは、指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定することができるため、ユニットエネルギ管理装置5が複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれの動作パターンまで決定する場合に比べ、ユニットエネルギ管理装置5の負荷を低減することができる。さらに、複数のユニット10A,10B,10Cのそれぞれは、指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができる。これにより、個別のユニット10A,10B,10Cレベルでの最適運転を実現することができる。
【0040】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態のエネルギ管理システムの管理対象を説明する模式図である。図5は、第2実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。第2実施形態のエネルギ管理システム1Bは、水電解装置52、水素タンク53、蓄電池54などを含むユニット10Dを備える工場10に適用される。
【0041】
エネルギ管理システム1Bは、ユニットエネルギ管理装置5と、ユニット10Dを管理する機器エネルギ管理装置50を備える(図5参照)。機器エネルギ管理装置50は、第1実施形態の機器エネルギ管理装置20と同様の構成と機能を有している。これにより、エネルギ管理システム1Bは、工場10全体の運転計画を満たしつつユニットエネルギ管理装置5の負荷を低減し、主に、水電解装置52での最適運転を実現する。なお、ユニット10Dは、第1実施形態のユニット10Aの変形例ともいえる。
【0042】
本実施形態では、ユニット10Dは、太陽光発電装置511と、系統電力中継装置512と、水電解装置52と、水素タンク53と、水素消費部551と、蓄電池54と、電力消費部552と、を備える。ユニット10Dでは、太陽光発電装置511がエネルギの供給源として機能する。太陽光発電装置511から供給される電力は、水電解装置52による水の電気分解に利用される。水の電気分解によって製造される水素は、水素タンク53に貯蔵される。水素タンク53に貯蔵される水素は、水素消費部551で消費される。また、太陽光発電装置511から供給される電力は、蓄電池54に貯蔵され、蓄電池54経由で水電解装置52での水の電気分解にも利用されたり、電力消費部552で消費されたりする。さらに、ユニット10D内のエネルギが不足する場合、系統電力中継装置512が他のユニットからユニット10D内に電力を供給する。ユニット10Dが備える機器のうち、機器エネルギ管理装置50の管理の対象となりうるのは、水電解装置52と、蓄電池54と、である。本実施形態では、機器エネルギ管理装置50は、水電解装置52のみを制御し、蓄電池54への指令を行わないものとする。蓄電池54は、系統周波数(直流グリッドの場合は、系統電圧)を維持するように、機器エネルギ管理装置50とは独立に動くものとする。
【0043】
本実施形態の機器エネルギ管理装置50は、ユニット情報取得部50Aと、ユニット計画部50Bと、ユニット指令部50Cと、を備える。ユニット情報取得部50Aは、図5に示すように、水電解装置52と、蓄電池54と、水素タンク53と、に電気的に接続している。ユニット情報取得部50Aは、水電解装置52、蓄電池54、および、水素タンク53のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報を取得する。
【0044】
ユニット計画部50Bは、ユニットエネルギ管理装置5と電気的に接続されている。ユニット計画部50Bには、ユニットエネルギ管理装置5から、ユニット10Dの制御時間と、その制御時間でのエネルギの融通量が入力される。ユニット計画部50Bは、ユニット情報取得部50Aが取得する水電解制御部52Aと蓄電制御部54Aのそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報と、ユニット10Dの制御時間と、その制御時間でのエネルギの融通量とを用いて、水電解装置52の運転計画を立案する。本実施形態では、水電解装置52の出力(蓄電池充放電出力と水電解出力)、および、蓄電池54のエネルギ貯蔵量の計画を、例えば、0.5時間単位で24時間後まで、最適化計算で導出する。最適化計算の手法としては、例えば、時間を離散点として扱い、混合整数計画法により、系統電力中継装置512による系統電力の導入量を最小化する解を導出する。なお、運転計画の立案における最適化の有無やその手法、計画における単位時間などは、これらに限定されない。
【0045】
ユニット指令部50Cは、ユニット計画部50Bが立案した運転計画に基づいて、水電解装置52の制御期間を算出し、水電解装置52に出力する。本実施形態では、ユニット指令部50Cは、以下の式(1)を用いて、制御時間thを算出する。
【数7】
式(1)において、thは、エネルギ変換機器の制御時間(s)であり、Emax-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-α_iは、i番目の上流側エネルギ貯蔵機器への入出力の想定予実ずれ(W)であり、Emax-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-β_jは、j番目の下流側エネルギ貯蔵機器への入出力の想定予実ずれ(W)であり、i,jは、1以上の整数であり、niは、上流側エネルギ貯蔵機器の数であり、njは、下流側エネルギ貯蔵機器の数である。
【0046】
本実施形態では、式(1)の「上流側エネルギ貯蔵装置」とは、エネルギの移動方向において水電解装置52の上流側に接続する蓄電池54であり、「下流側エネルギ貯蔵装置」とは、エネルギの移動方向において水電解装置52の下流側に接続する水素タンク53である。本実施形態では、水電解装置52の上流側と下流側とのそれぞれには、エネルギ貯蔵装置は、1つずつ接続していることから、i,jは、いずれも1となる。
【0047】
ここで、ユニット指令部50Cでの式(1)を用いた制御時間thの算出の具体例を説明する。式(1)を用いる計算の一例として、蓄電池54のエネルギ貯蔵量の上限を50(MWh)とし、下限を0(MWh)とする。水素タンク53のエネルギ貯蔵量の上限を100(MWh)とし、下限を0(MWh)とする。蓄電池54の現在のエネルギ貯蔵量を10(MWh)とし、水素タンク53の現在のエネルギ貯蔵量を60(MWh)とする。蓄電池54と水素タンク53のそれぞれの入出力の想定予実ずれを15(MWh)、10(MWh)と設定する。この入出力の想定予実ずれは、経験則から決定してもよいし、何らかの予測モデルを基に決定してもよい。これらの数値を式(1)に代入すると、制御時間thは、以下のように計算される。
h=Min(Min((50-10)/15,(10-0)/15),Min((100-60)/10,(60-0)/10))
=Min(Min(2.67,0.67),Min(4,6))
=0.67[hour]
【0048】
ユニット指令部50Cは、ユニット計画部50Bが立案した運転計画に基づいて、水電解装置52のエネルギの融通量Eを算出する。ユニット指令部50Cは、以下の式(3)を用いて、エネルギの融通量Eを算出する。
【数8】
式(3)において、tnowは、現在時刻(s)であり、thは、水電解装置52の制御時間(s)であり、Pop_εは、水電解装置52の運転計画出力値(W)である。
【0049】
図6は、水電解装置の運転計画出力値の時間変化を説明する図である。図6には、一例として、工場10内でのエネルギの需給予測に基づく水電解装置52の運転計画出力が実線で示されている(図6の実線G1)。具体的には、現在時刻tnow=0として、水電解装置52の運転計画出力値Pop_εは、図6に示すように、0.5時間単位で変化する。式(3)で示したように、水電解装置52の運転計画における時刻tnowから時刻(tnow+th)までの積分がエネルギの融通量Eとなるため、図6に示す斜線部S1の面積が、水電解装置52におけるエネルギの融通量Eに相当する。すなわち、図6に示す例では、エネルギの融通量Eは、図6を用いて、以下のように計算される。
E=10×0.5+20×0.17=8.4(MWh)
【0050】
ユニット指令部50Cは、このようにして、水電解装置52の制御時間thと、水電解装置52におけるエネルギの融通量Eを算出する。ユニット指令部50Cは、水電解装置52の制御時間thと、水電解装置52におけるエネルギの融通量Eを含む情報を水電解制御部52Aに出力する。
【0051】
水電解装置52は、水電解制御部52Aと、水電解部52Bと、を備える。水電解制御部52Aは、ユニット指令部50Cの指令に応じて、水の電気分解を行う水電解部52Bを制御する。蓄電池54は、蓄電制御部54Aと、蓄電部54Bと、を備える。蓄電制御部54Aは、上述したように、機器エネルギ管理装置50とは独立に、電力の充放電を行う蓄電部54Bを制御する。
【0052】
本実施形態では、水電解制御部52Aは、ユニット指令部50Cから入力される水電解装置52の制御時間thと、水電解装置52におけるエネルギの融通量Eを含む情報に基づいて、例えば、制御時間th=0.67(時間)内に、エネルギの融通量E=8.4(MWh)に相当する水素を生成することができるように、運転パターンを決定する。本実施形態では、水電解制御部52Aは、ユニット指令部50Cから入力される制御時間thとエネルギの融通量Eの範囲内で、水電解装置52の能力や耐久性などの各種の制約、運転効率などを考慮して、最適な運転パターンを決定する。このとき、制御時間thの値を可能な限り大きくとることで、水電解制御部52Aでの制御自由度を増加させることができる。
【0053】
算出される制御時間thが短くなると、水電解制御部52Aが短期間で指令を更新することが難しくなる。本実施形態では、制御時間thが所定値以下になった場合、機器エネルギ管理装置50は、制御時間thとエネルギの融通量Eに関する指令の出力を中断し、水電解装置52に直接指令を出力する。このときの所定値は、例えば、水電解制御部52Aの応答が間に合わなくなる時間としてもよいし、それ以上の時間を任意に設定することも可能である。
【0054】
以上説明した、本実施形態のエネルギ管理システム1Bによれば、機器エネルギ管理装置50は、水電解装置52に対して、水電解装置52の制御時間と、制御時間での水電解装置52と蓄電池54と水素タンク53との間のエネルギの融通量で指令をおこなう。水電解装置52は、機器エネルギ管理装置50から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定する。これにより、機器エネルギ管理装置50が水電解装置52の動作パターンまで決定する場合に比べ、機器エネルギ管理装置50の負荷を低減することができる。さらに、水電解装置52は、機器エネルギ管理装置50から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができるため、水電解装置52レベルでの最適運転を実現することができる。
【0055】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Bによれば、ユニット指令部50Cは、管理対象としての水電解装置52の上流側に接続する蓄電池54と下流側に接続する水素タンク53とのそれぞれのエネルギ量に関する情報を用いて、水電解装置52の制御時間とエネルギの融通量を決定する。これにより、蓄電池54および水素タンク53の実際の状態に合わせてエネルギを融通することができるため、蓄電池54および水素タンク53でのエネルギの過不足が発生することを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Bによれば、ユニット指令部50Cは、式(1)で示したように、蓄電池54と水素タンク53の現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に加え、蓄電池54と水素タンク53の入出力の想定予実ずれを用いて、水電解装置52の制御時間を決定する。これにより、入出力の想定予実ずれを想定した上で機器ごとに適した制御時間を設定できるため、水電解装置52でのエネルギの過不足の発生をさらに抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Bによれば、機器エネルギ管理装置50は、算出される制御時間thが短くなりすぎると、水電解制御部52Aへの制御時間thとエネルギの融通量Eの出力を停止する。これにより、水電解制御部52Aは、例えば、単位時間ごとに所定のエネルギの融通量を出力するなどして、水電解装置52の動作が不安定になることを抑制することができる。
【0058】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。第3実施形態のエネルギ管理システム1Cは、第2実施形態のエネルギ管理システム(図5)と比較すると、機器エネルギ管理装置50のユニット指令部50Cと蓄電池54とが電気的に接続されている点が異なる。
【0059】
第3実施形態のエネルギ管理システム1Cでは、ユニット10Dのエネルギを管理する場合、最初に、ユニット指令部50Cから、水電解制御部52Aに制御時間thとエネルギの融通量Eに含む情報が入力される(図7の符号Op1)と、水電解制御部52Aは、制御時間thの期間内の運転パターンを決定する。水電解制御部52Aは、運転パターンが決定すると、決定した運転パターンを機器エネルギ管理装置50に送る(図7の符号Op2)。機器エネルギ管理装置50は、水電解制御部52Aから送られた運転パターンを用いて、例えば、ユニット10D内の電力バランスが保てるように、蓄電池54の出力(W)を算出し、蓄電制御部54Aに秒単位の指令を行う(図7の符号Op3)。
【0060】
水電解制御部52Aが制御時間thの時間内に運転パターンを変更する場合、水電解制御部52Aは、運転パターンを変更するたびに、機器エネルギ管理装置50に、運転パターンの変更に関する情報を送る。機器エネルギ管理装置50は、水電解制御部52Aから送られる情報を受けて、蓄電池54への出力を算出し直し、蓄電制御部54Aに秒単位の指令を行う。
【0061】
以上説明した、本実施形態のエネルギ管理システム1Cによれば、水電解装置52を制御する水電解制御部52Aが、制御時間内に運転パターンを変更する場合、水電解制御部52Aは、運転パターンの変更に関する情報を機器エネルギ管理装置50に送る。ユニット10Dでは、水電解装置52の運転パターンの変更によって、蓄電池54のエネルギ貯蔵量の今後の時間変化も変わるため、機器エネルギ管理装置50は、水電解装置52の運転パターンの変更に合わせて、蓄電池54の制御の内容を変更する。これにより、ユニット10Dおよびユニット10Dを含む工場10におけるエネルギバランスを維持することができる。
【0062】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態のエネルギ管理システムの管理対象を説明する模式図である。図9は、本実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。第4実施形態のエネルギ管理システム1Dは、水電解装置62、水素タンク63、燃料電池64、蓄電池65、メタン化装置66、メタンガスタンク67、発電機68、などを備えるユニット10Eを備える工場10に適用される。
【0063】
エネルギ管理システム1Dは、ユニット10Eを管理する機器エネルギ管理装置60を備える。機器エネルギ管理装置60は、第1実施形態の機器エネルギ管理装置20と同様の機能を有しており、ユニット情報取得部60Aと、ユニット計画部60Bと、ユニット指令部60Cと、を備える。これにより、エネルギ管理システム1Dは、工場10全体の運転計画を満たしつつユニットエネルギ管理装置5の負荷を低減し、水電解装置52、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれでの最適運転を実現する。なお、ユニット10Eは、第1実施形態のユニット10Aの変形例ともいえる。
【0064】
本実施形態では、ユニット10Eは、太陽光発電装置611と、系統電力中継装置612と、水電解装置62と、水素タンク63と、燃料電池64と、蓄電池65と、電力消費部691と、メタン化装置66と、メタンガスタンク67と、メタン消費部692と、発電機68と、を備える。ユニット10Eでは、エネルギの供給源として機能する太陽光発電装置611は、発生した電力を水電解装置62と蓄電池65と電力消費部691とに供給する。水電解装置62は、太陽光発電装置611や蓄電池65から供給される電力を利用して水を電気分解し、水素を発生させる。水素タンク63は、水電解装置62で発生する水素を貯蔵する。燃料電池64は、水素タンク63に貯蔵される水素を用いて電力を発生させる。蓄電池65は、燃料電池64で発生した電力を蓄電するとともに、太陽光発電装置611で発生する電力の一部も蓄電する。
【0065】
メタン化装置66は、水素タンク63に貯蔵される水素と、ユニット10Eの外部から供給される二酸化炭素を用いてメタンを生成する(4H2+CO2→CH4+2H2O)。二酸化炭素は、例えば、ユニット10Eの外部に設置されている燃焼器から排出される排ガスから回収するなどの手段で取得可能である。メタンガスタンク67は、メタン化装置66で発生したメタンガスを貯留する。メタン消費部692は、メタンガスタンク67に貯留されているメタンガスを利用する。
【0066】
発電機68は、メタンガスタンク67に貯留されているメタンガスを利用して発電する。発電機68が発電した電力は、水電解装置62で利用されたり、蓄電池65に蓄電されたりする。また、ユニット10Eでは、ユニット10E内のエネルギが不足する場合、系統電力中継装置612が他のユニットからユニット10E内に電力を供給する。
【0067】
ユニット10Eが備える装置のうち、機器エネルギ管理装置60の管理の対象となりうるのは、蓄電池65と、水電解装置62と、燃料電池64と、メタン化装置66と、発電機68とである。本実施形態では、機器エネルギ管理装置60は、水電解装置62と、燃料電池64と、メタン化装置66と、発電機68と、を制御する。本実施形態では、機器エネルギ管理装置60は、蓄電池65への指令を行わないものとして、例えば、第2実施形態の蓄電池54のように、蓄電制御部65Aは、上述したように、機器エネルギ管理装置60とは独立に、電力の充放電を行う蓄電部65Bを制御する。
【0068】
本実施形態の機器エネルギ管理装置60は、ユニット情報取得部60Aと、ユニット計画部60Bと、ユニット指令部60Cと、を備える。ユニット情報取得部60Aは、図9に示すように、蓄電池65と、水電解装置62と、燃料電池64と、メタン化装置66と、発電機68とに電気的に接続しており、蓄電池65、水電解装置62、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報を取得する。
【0069】
ユニット計画部60Bは、ユニットエネルギ管理装置5と電気的に接続されており、ユニットエネルギ管理装置5から、ユニット10Eの制御時間と、その制御時間でのエネルギの融通量が入力される。ユニット計画部60Bは、ユニット情報取得部60Aが取得する、蓄電池65、水電解装置62、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報と、ユニット10Eの制御時間と、その制御時間でのエネルギの融通量とを用いて、水電解装置62、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれの運転計画を立案する。
【0070】
ユニット指令部60Cは、ユニット計画部60Bが立案した運転計画に基づいて、電水電解装置62、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれの制御期間とエネルギの融通量を算出し、それぞれの機器に出力する。本実施形態では、ユニット指令部60Cは、例えば、第2実施形態の式(1)および式(3)のそれぞれを用いて、水電解装置62、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれの制御時間thとエネルギの融通量Eを算出する。ユニット指令部60Cは、算出した制御時間thとエネルギの融通量Eを含む情報を、水電解装置62、燃料電池64、メタン化装置66、および、発電機68のそれぞれに出力する。
【0071】
水電解装置62は、エネルギの移動方向において、蓄電池65が上流側に接続され、水素タンク63が下流側に接続されている(図8参照)。したがって、水電解装置62については、ユニット指令部60Cにおける式(1)を用いた制御時間thの算出では、蓄電池65と水素タンク63のそれぞれの現在のエネルギ貯蔵量、エネルギ貯蔵量の上下限、および、入出力の想定予実ずれを用いる。水電解装置62の水電解制御部62Aは、ユニット指令部60Cが出力する算出した制御時間thとエネルギの融通量Eを含む情報に基づいて、最適な運転パターンを決定し、水の電気分解を行う水電解部62Bに出力する。これにより、水電解部62Bは、ユニット10Eの運転計画を満たしつつ、最適な運転パターンで運転する。
【0072】
燃料電池64は、エネルギの移動方向において、水素タンク63が上流側に接続され、蓄電池65が下流側に接続されている(図8参照)。したがって、燃料電池64については、ユニット指令部60Cにおける式(1)を用いた制御時間thの算出では、水素タンク63と蓄電池65のそれぞれの現在のエネルギ貯蔵量、エネルギ貯蔵量の上下限、および、入出力の想定予実ずれを用いる。燃料電池64の燃料電池制御部64Aは、ユニット指令部60Cが出力する算出した制御時間thとエネルギの融通量Eを含む情報に基づいて、最適な運転パターンを決定し、水と酸素の反応によって発電する燃料電池部64Bに出力する。これにより、燃料電池部64Bは、ユニット10Eの運転計画を満たしつつ、最適な運転パターンで運転する。
【0073】
メタン化装置66は、エネルギの移動方向において、水素タンク63が上流側に位置し、メタンガスタンク67が下流側に位置する。したがって、メタン化装置66については、ユニット指令部60Cにおける式(1)を用いた制御時間thの算出では、水素タンク63とメタンガスタンク67のそれぞれの現在のエネルギ貯蔵量、エネルギ貯蔵量の上下限、および、入出力の想定予実ずれを用いる。メタン化装置66の反応制御部66Aは、ユニット指令部60Cが出力する算出した制御時間thとエネルギの融通量Eを含む情報に基づいて、最適な運転パターンを決定し、水素と二酸化炭素の反応によってメタンを生成するメタン化反応部66Bに出力する。これにより、メタン化反応部66Bは、ユニット10Eの運転計画を満たしつつ、最適な運転パターンで運転する。
【0074】
発電機68は、エネルギの移動方向において、メタンガスタンク67が上流側に位置し、蓄電池65が下流側に位置する。したがって、発電機68については、ユニット指令部60Cにおける式(1)を用いた制御時間thの算出では、メタンガスタンク67と蓄電池65のそれぞれの現在のエネルギ貯蔵量、エネルギ貯蔵量の上下限、および、出力の想定予実ずれを用いる。発電機68の発電制御部68Aは、ユニット指令部60Cが出力する算出した制御時間thとエネルギの融通量Eを含む情報に基づいて、最適な運転パターンを決定し、メタンガスの燃焼によって発電する発電部68Bに出力する。これにより、発電部68Bは、ユニット10Eの運転計画を満たしつつ、最適な運転パターンで運転する。
【0075】
以上説明した、本実施形態のエネルギ管理システム1Dによれば、機器エネルギ管理装置60は、水電解装置62と燃料電池64とメタン化装置66と発電機68のそれぞれに対して、制御時間と、制御時間でのエネルギの融通量で指令をおこなう。水電解装置62と燃料電池64とメタン化装置66と発電機68のそれぞれは、機器エネルギ管理装置60から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定する。これにより、機器エネルギ管理装置60が水電解装置62と燃料電池64とメタン化装置66と発電機68のそれぞれの動作パターンまで決定する場合に比べ、機器エネルギ管理装置60の負荷を低減することができる。さらに、水電解装置62と燃料電池64とメタン化装置66と発電機68のそれぞれは、機器エネルギ管理装置60から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができるため、水電解装置62と燃料電池64とメタン化装置66と発電機68のそれぞれのレベルでの最適運転を実現することができる。
【0076】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態のエネルギ管理システムの管理対象を説明する模式図である。図11は、本実施形態のエネルギ管理システムの構成を説明する模式図である。第5実施形態のエネルギ管理システム1Eは、2つの蓄電池72,73を備えるユニット10Fを備える工場10に適用される(図10参照)。
【0077】
エネルギ管理システム1Eは、ユニット10Fを管理する機器エネルギ管理装置70を備える。機器エネルギ管理装置70は、第1実施形態の機器エネルギ管理装置20と同様の機能を有しており、これにより、第5実施形態のエネルギ管理システム1Fは、工場10全体でのシステム運転計画を満たしつつユニットエネルギ管理装置5の負荷を低減し、2つの蓄電池72,73のいずれか一方での最適運転を実現する。なお、ユニット10Fは、第1実施形態のユニット10Aの変形例ともいえる。
【0078】
本実施形態では、ユニット10Fは、太陽光発電装置711と、系統電力中継装置712と、2つの蓄電池72,73と、電力消費部74と、を備える。ユニット10Fでは、太陽光発電装置711がエネルギの供給源として機能する。太陽光発電装置711から供給される電力は、2つの蓄電池72,73に貯蔵される。太陽光発電装置711に貯蔵される電力は、電力消費部74で消費される。また、ユニット10Fでは、ユニット10F内のエネルギが不足する場合、系統電力中継装置712が他のユニットからユニット10F内に電力を供給する。ユニット10Fが備える装置のうち、機器エネルギ管理装置70の管理の対象となりうるのは、蓄電池72と蓄電池73とである。本実施形態では、機器エネルギ管理装置70は、蓄電池73への指令を行わないものとして、例えば、第2実施形態の蓄電池54のように、蓄電制御部73Aは、上述したように、機器エネルギ管理装置70とは独立に、電力の充放電を行う蓄電部73Bを制御する。
【0079】
本実施形態の機器エネルギ管理装置70は、装置情報取得部70Aと、ユニット計画部70Bと、ユニット指令部70Cと、を備える。装置情報取得部70Aは、図11に示すように、2つの蓄電池72,73のそれぞれに電気的に接続している。装置情報取得部70Aは、蓄電池72,73のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報を取得する。
【0080】
ユニット計画部70Bは、ユニットエネルギ管理装置5と電気的に接続されている。ユニット計画部70Bには、ユニットエネルギ管理装置5から、ユニット10Fの制御時間と、その制御時間でのエネルギの融通量が入力される。ユニット計画部70Bは、装置情報取得部70Aが取得する2つの蓄電池72,73のそれぞれの運転状態やエネルギ状態に関する情報と、ユニット10Fの制御時間と、その制御時間でのエネルギの融通量とを用いて、蓄電池72の蓄電計画を立案する。
【0081】
ユニット指令部70Cは、ユニット計画部70Bが立案した運転計画に基づいて、蓄電池72の制御期間を算出し、蓄電池72に出力する。本実施形態では、ユニット指令部70Cは、以下の式(2)を用いて、制御時間thを算出する。
【数9】
式(2)において、thは、特定のエネルギ貯蔵機器の制御時間(s)であり、Emax-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-γは、特定のエネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれ(W)であり、Emax-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の上限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Emin-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の下限エネルギ貯蔵量(Wh)であり、Enow-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の現在のエネルギ貯蔵量(Wh)であり、Per-δ_iは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているi番目のエネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれ(W)であり、iは、1以上の整数であり、niは、特定のエネルギ貯蔵機器に接続されているエネルギ貯蔵機器の数である。
【0082】
本実施形態では、式(2)の「特定のエネルギ貯蔵装置」とは、蓄電池72であり、「接続されているエネルギ貯蔵装置」とは、蓄電池73である。本実施形態では、蓄電池72に接続されているエネルギ貯蔵装置は、蓄電池73のみであることから、iは、1である。
【0083】
ユニット指令部70Cは、ユニット計画部70Bが立案した運転計画に基づいて、蓄電池72のエネルギの融通量Eを算出する。ユニット指令部70Cは、第2実施形態と同様に、式(3)を用いて、エネルギの融通量Eを算出する。
【数10】
式(3)において、tnowは、現在時刻(時間)であり、thは、蓄電池72の制御時間(s)であり、Pop_εは、蓄電池72の運転計画出力値(W)である。
【0084】
ユニット指令部70Cは、蓄電池72の制御時間thとエネルギの融通量Eを算出する。ユニット指令部70Cは、蓄電池72の制御時間thとエネルギの融通量Eを含む情報を、蓄電池72の蓄電制御部72Aに出力する。蓄電制御部72Aは、ユニット指令部70Cの指令に応じて、蓄電する蓄電部72Bを制御する。
【0085】
以上説明した、本実施形態のエネルギ管理システム1Eによれば、機器エネルギ管理装置70は、蓄電池72に対して、蓄電池72の制御時間と、制御時間での蓄電池72と蓄電池73との間のエネルギの融通量で指令をおこなう。蓄電池72は、機器エネルギ管理装置70から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量に適合するように動作パターンを決定する。これにより、機器エネルギ管理装置70が蓄電池72の動作パターンまで決定する場合に比べ、機器エネルギ管理装置70の負荷を低減することができる。さらに、蓄電池72は、機器エネルギ管理装置70から指令された制御時間と制御時間でのエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身の最適な動作パターンを決定することができるため、蓄電池72レベルでの最適運転を実現することができる。
【0086】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Eによれば、ユニット指令部70Cは、管理対象としての蓄電池72について、蓄電池72に接続する蓄電池73のエネルギ量に関する情報を用いて、蓄電池72の制御時間とエネルギの融通量を決定する。これにより、蓄電池73の実際の状態に合わせてエネルギを融通するため、蓄電池73でのエネルギの過不足が発生することを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態のエネルギ管理システム1Eによれば、ユニット指令部70Cは、蓄電池73の現在のエネルギ貯蔵量とエネルギ貯蔵量の上下限値との差分に加え、エネルギ貯蔵機器の入出力の想定予実ずれを用いて、蓄電池72の制御時間を決定する。これにより、入出力の想定予実ずれを想定した上で機器ごとに適した制御時間を設定できるため、蓄電池73でのエネルギの過不足の発生をさらに抑制することができる。
【0088】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0089】
[変形例1]
上述の実施形態では、エネルギ管理システムは、ユニットエネルギ管理装置5によって複数のユニット10A,10B,10Cのエネルギを管理し、機器エネルギ管理装置20,30,40などのそれぞれによって、ユニット10A,10B,10Cなどのそれぞれに属する複数の機器を管理するとした。しかしながら、エネルギ管理システムの構成は、これに限定されない。1つのエネルギ管理装置によって、複数の機器を直接管理してもよい。
【0090】
図12は、第1実施形態のエネルギ管理システムの変形例を説明する模式図である。図12に示す工場10は、工場エネルギ管理装置6と、複数の機器21,22,23,31,32,33を備えている。工場エネルギ管理装置6は、複数の機器21,22,23,31,32,33のそれぞれと電気的に接続されており、複数の機器21,22,23,31,32,33のそれぞれのエネルギの需給量や貯蔵量など、エネルギに関する情報を収集する。工場エネルギ管理装置6は、第1実施形態のユニットエネルギ管理装置5と同様の構成を有しており、工場情報取得部6Aと、工場計画部6Bと、工場指令部6Cと、を備える。工場エネルギ管理装置6は、工場10全体の運転計画を満たすように立案される、複数の機器21,22,23,31,32,33のそれぞれのエネルギの融通計画に基づいて、複数の機器21,22,23,31,32,33のそれぞれに、制御時間と、エネルギの融通量の指令を出力する。複数の機器21,22,23,31,32,33のそれぞれは、工場エネルギ管理装置6が出力する制御時間とエネルギの融通量を満たす範囲内で、自身において最適な運転パターンを決定する。これにより、工場エネルギ管理装置6の負荷を低減することができるとともに、工場10全体の運転計画を満たしつつ、複数の機器のそれぞれのレベルでの最適運転を実現することができる。
【0091】
[変形例2]
上述の実施形態では、ユニットエネルギ管理装置5は、機器エネルギ管理装置に属する装置のエネルギに関する情報を取得する工場情報取得部5Aを備えるとした。しかしながら、工場情報取得部5Aを備えていなくてもよい。この場合、工場計画部5Bは、工場10全体の運転計画を満たすように、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギの融通計画を立案してもよい。
【0092】
[変形例3]
第1~5実施形態では、エネルギ管理システムは、ユニット10A,10B,10Cのそれぞれのエネルギを管理するユニットエネルギ管理装置5と、ユニットに含まれる複数の機器のエネルギを管理する機器エネルギ管理装置とが階層的に配置されているとした。3つ以上の管理装置が階層的に配置されていてもよい。
【0093】
[変形例4]
上述の実施形態では、エネルギ管理システムは、複数の機器21,22,23,31,32,33,41,42,43を備える工場10内でのエネルギを管理するとした。しかしながら、エネルギ管理システムの管理対象は、工場に限定されない。複数の要素を含んでおり、要素間でエネルギのやり取りが行われるものであれば、エネルギ管理システムの管理対象とすることができる。
【0094】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0095】
1A,1B,1C,1D,1E,1F…エネルギ管理システム
5…ユニットエネルギ管理装置
6…工場エネルギ管理装置
10A,10B,10C,10D,10E,10F…ユニット
20,30,40,50,60,70…機器エネルギ管理装置
21,22,23,31,32,33,41,42,43…機器
52,62…水電解装置
53,65,72,73…蓄電池
54,63…水素タンク
64…燃料電池
66…メタン化装置
67…メタンガスタンク
68…発電機
h…制御時間
E…エネルギの融通量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12