IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両制御装置 図1
  • 特許-車両制御装置 図2
  • 特許-車両制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 17/00 20060101AFI20241022BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F02D17/00 Q
F02D29/02 321B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022022071
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119266
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】城戸 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】井戸側 正直
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-157946(JP,A)
【文献】国際公開第2010/107094(WO,A1)
【文献】特開2018-025101(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119898(WO,A1)
【文献】特開2006-183545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 17/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行状況に応じてエンジンの間欠停止を行い、かつ前記間欠停止中に前記エンジンが回転している状態で前記エンジンの再始動が要求された場合に、自立復帰による前記エンジンの再始動を行う車両制御装置であって、
前記エンジンの各気筒には、筒内噴射弁、ポート噴射弁の2つの燃料噴射弁が設けられており、
前記自立復帰による前記エンジンの再始動時の初回の燃料噴射を前記筒内噴射弁により行い、2回目の前記燃料噴射をポート噴射弁により行い、
前記2回目の燃料噴射の開始時期を吸気行程とし、
前記初回の燃料噴射の開始時期を、前記2回目の燃料噴射の開始時期よりも遅い圧縮行程とする遅角噴射制御を行う
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの間欠停止を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジン回転数が一定の値以上の状態で、間欠停止からのエンジンの再始動が要求された場合には、外部動力による補助無しで、エンジンを自立始動させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-136015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記間欠停止からの復帰時にエンジンの始動開始が遅れると、その間にエンジン回転数が低下してしまう。その結果、エンジンを自立始動できなくなったり、その後の車両の再加速にもたつきが生じたり、する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両制御装置は、筒内噴射弁、ポート噴射弁の2つの燃料噴射弁が各気筒に設けられたエンジンが搭載された車両に適用される。同車両制御装置は、走行状況に応じてエンジンの間欠停止を行い、かつ間欠停止中にエンジンが回転している状態でエンジンの再始動が要求された場合に、自立復帰による前記エンジンの再始動を行う。そして、同車両制御装置は、前記自立復帰による前記エンジンの再始動時の初回の燃料噴射を前記筒内噴射弁により行い、2回目の前記燃料噴射をポート噴射弁により行い、前記2回目の燃料噴射の開始時期を吸気行程とし、前記初回の燃料噴射の開始時期を、前記2回目の燃料噴射の開始時期よりも遅い圧縮行程とする遅角噴射制御を行う
【0006】
初回の燃料噴射の開始時期を遅くすると、自立復帰時のエンジンの燃焼開始が、すなわちエンジントルクの発生時期が早まり易くなる。そのため、自立復帰要求後のエンジン回転数の低下によりエンジンの自立始動が困難となり難くなる。また、再始動後のハイブリッド車両の加速がもたつき難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両制御装置の一実施形態が搭載されたハイブリッド車両の駆動系の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態の車両制御装置の構成を模式的に示す図である。
図3】同車両制御装置が実行するCOM復帰時燃料噴射制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両制御装置の一実施形態を、図1図3を参照して詳細に説明する。
<ハイブリッド車両の駆動系の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態の車両制御装置が制御するハイブリッド車両の駆動系の構成を説明する。ハイブリッド車両は、ハイブリッドシステム10を動力源として備える。ハイブリッドシステム10は、エンジン11、発電電動機12、及びシステムクラッチ15を備えている。ハイブリッドシステム10は、発電電動機12の回転軸を、同ハイブリッドシステム10の動力の取り出し軸として備えている。システムクラッチ15は、エンジン11の出力軸であるクランク軸13とシステム出力軸14との間に介設されている。そして、システムクラッチ15は、クランク軸13とシステム出力軸14とを断接する。また、ハイブリッドシステム10は、インバータ16とバッテリ17とを備えている。インバータ16は、発電電動機12とバッテリ17との間で授受される電力の量を制御する。
【0012】
また、ハイブリッド車両には、変速装置20が設けられている。変速装置20は、トルクコンバータ21と変速機構22とを備えている。ハイブリッドシステム10のシステム出力軸14は、トルクコンバータ21を介して、変速機構22の入力軸である変速機入力軸23に接続されている。変速機構22は、変速機入力軸23の回転を変速してハイブリッド車両の車輪に伝達する。さらに、変速装置20には、トルクコンバータ21を介さずに、システム出力軸14と変速機入力軸23とを直結可能なロックアップクラッチ24が設けられている。
【0013】
<車両制御装置の構成>
続いて、図2を参照して、本実施形態の車両制御装置の構成を説明する。なお、本実施形態の車両制御装置が搭載するハイブリッド車両のエンジン11の各気筒には、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁40Aと気筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁40Bとの2つの燃料噴射弁がそれぞれ設けられている。
【0014】
車両制御装置は、電子制御ユニット30を備えている。電子制御ユニット30は、車両制御のための各種処理を実行する演算処理装置31と、制御用のプログラムやデータが記憶された記憶装置32と、を有する。電子制御ユニット30には、ハイブリッド車両の各部に設けられた各種のセンサの検出信号が入力されている。そうしたセンサには、エアフローメータ33、水温センサ34、吸気圧センサ35、クランク角センサ36、アクセルペダルセンサ37、及び車速センサ38が含まれる。エアフローメータ33は、エンジン11の吸気流量GAを検出するセンサである。水温センサ34は、エンジン11の冷却水温THWを検出するセンサである。吸気圧センサ35は、エンジン11の吸気圧PMを検出するセンサである。クランク角センサ36は、エンジン11のクランク軸13の回転位相であるクランク角CRNKを検出するセンサである。アクセルペダルセンサ37は、ハイブリッド車両の運転者のアクセルペダル操作量ACCを検出するセンサである。車速センサ38は、ハイブリッド車両の車速Vを検出するセンサである。なお、電子制御ユニット30は、クランク角センサ36の検出結果から、エンジン11のクランク軸13の回転速度であるエンジン回転数NEを求めている。
【0015】
そして、電子制御ユニット30は、それらセンサの検出結果に基づき、ハイブリッドシステム10を制御する。例えば電子制御ユニット30は、スロットルバルブ39、ポート噴射弁40A、筒内噴射弁40B、点火装置41などのエンジン11に設けられたアクチュエータを操作することで、エンジン11の運転状態を制御する。また、電子制御ユニット30は、インバータ16の制御を通じて、発電電動機12のトルク制御を行っている。さらに、電子制御ユニット30は、システムクラッチ15の制御を行っている。なお、以下の説明では、スロットルバルブ39の開度をスロットル開度TAと記載する。
【0016】
電子制御ユニット30は、ハイブリッド車両の走行状況に応じてエンジン11の間欠停止を行っている。例えば、電子制御ユニット30は、ハイブリッド車両の減速中や停車中にエンジン11を間欠停止している。なお、エンジン11の間欠停止中に電子制御ユニット30は、システムクラッチ15を切断することで、エンジン11を駆動系から切り離した状態としている。
【0017】
そして、電子制御ユニット30は、間欠停止中にアクセルペダルが踏み込まれると、エンジン11を再始動している。こうしたエンジン11の再始動に際して電子制御ユニット30は、エンジン11が停止、又はエンジン回転数NEが低い場合には、システムクラッチ15を繋いで発電電動機12のトルクによりエンジン回転数NEを高めた上でエンジン11を再始動している。一方、エンジン回転数NEが高い場合には、電子制御ユニット30は、システムクラッチ15を切断したまま、外部動力を用いずに、エンジン11を自力で再始動している。以下の説明では、このときの外部動力に依らない自力でのエンジン11の再始動を自立復帰と記載する。
【0018】
なお、間欠停止後、ある程度の時間が経過すると、エンジン11は停止するため、自立復帰はできなくなる。よって、間欠停止中のエンジン11の自立復帰による再始動は、ハイブリッド車両の減速に応じて間欠停止を開始した直後に、運転者がアクセルペダルを踏み込んでエンジン11の再始動が要求された場合となる。以下の説明では、こうした運転者の加速操作に応じたエンジン11の自立復帰をCOM(Change Of Mind)復帰と記載する。
【0019】
ちなみに、図1のハイブリッド車両では、減速中にシステムクラッチ15を連結したまま、エンジン11の燃料噴射を停止する燃料カットを実施する場合がある。こうした燃料カットは、例えば、エンジン11の排気通路に設置されたPM(微粒子物質:Particulate Matter)捕集フィルタに新気を送り込んで、同フィルタに堆積したPMを浄化する目的で行われる。燃料カットの実施中に電子制御ユニット30は、エンジン回転数NEが既定の復帰回転数以下となるか、車速Vが既定の復帰車速以下となった場合には、燃料カットを中断してエンジン11を再始動している。このときのエンジン11の再始動は、車輪からシステムクラッチ15を通じて伝達されたトルクにより回転を支えられた状態で行われる。よって、燃料カット復帰時のエンジン11の再始動は、ここでの外部動力に依らない自立復帰には該当しない。
【0020】
<COM復帰時の燃料噴射制御>
図3を参照して、COM復帰時のエンジン11の燃料噴射制御について説明する。図3は、COM復帰時の燃料噴射制御のために電子制御ユニット30が実施するCOM復帰時燃料噴射制御のフローチャートである。そして、電子制御ユニット30は、COM復帰の要求時から、エンジン11の燃焼が安定した完爆状態に移行するまでの期間、図3の処理を通じてエンジン11の燃料噴射量、及び燃料噴射の開始時期を決定している。
【0021】
図3の処理を開始すると、電子制御ユニット30はまずステップS100において、エンジン回転数NE、及びその変化量ΔNEに基づき、エンジン回転数NEが急低下しているか否かを判定する。エンジン回転数NEが急低下中であると判定した場合(S110:YES)には、電子制御ユニット30はステップS120に処理を進める。そして、電子制御ユニット30は、そのステップS120において、エンジン負荷率KL及び冷却水温THWに基づき、気筒で燃焼する混合気の空燃比を出力空燃比とするために必要な量を、燃料噴射量の指令値である指令噴射量Qの値として演算する。なお、エンジン負荷率KLは、エンジン11の気筒の吸気の充填率を表わしている。
【0022】
一方、エンジン回転数NEが急低下中ではないと判定した場合(S110:NO)には、電子制御ユニット30はステップS130に処理を進める。そして、電子制御ユニット30は、そのステップS130において、エンジン負荷率KL及び冷却水温THWに基づき、気筒で燃焼する混合気の空燃比を理論空燃比とするために必要な量を指令噴射量Qの値として演算する。なお、出力空燃比は、理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である。よって、エンジン回転数NEの急低下中、すなわちエンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には、低下度合が小さい場合よりも、エンジン11の燃料噴射量が増量されることになる。
【0023】
ステップS120又はステップS130で指令噴射量Qを演算すると、電子制御ユニット30は、ステップS140に処理を進める。ステップS140において、電子制御ユニット30は、燃料噴射の量及び開始時期を決定する燃料噴射が、今回のCOM復帰における初回の燃料噴射であるか否かを判定する。初回の燃料噴射である場合(S140:YES)には、電子制御ユニット30は、ステップS150において、筒内噴射弁40Bによる遅角噴射を指令する。このときの電子制御ユニット30は、指令噴射量Q分の燃料噴射を筒内噴射弁40Bで行った場合に燃焼が成立可能な最も遅い時期を燃料噴射の開始時期として設定する。この場合には、燃料噴射の開始時期が圧縮行程に設定される。一方、今回のCOM復帰における2回目以降の燃料噴射である場合(S140:NO)には、電子制御ユニット30は、ステップS160において、ポート噴射弁40Aによる通常噴射を指令する。このときの電子制御ユニット30は、ポート噴射により指令噴射量Q分の燃料を噴射可能な時期を燃料噴射の開始時期として設定する。この場合には、燃料噴射の開始時期が吸気行程に設定される。ちなみに、電子制御ユニット30は、このとき設定する燃料噴射の開始時期を、エンジン11の始動に適した時期としている。そして、ステップS150又はステップS160で燃料噴射を指令した後、電子制御ユニット30は、図3の処理を終了する。
【0024】
なお、本実施形態では、図3のステップS100~S130の処理を通じて、復帰トルク制御が行われている。また、本実施形態では、図3のステップS140~S160の処理を通じて、遅角噴射制御が行われている。
【0025】
<実施形態の作用効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
COM復帰の要求後、エンジン11の始動開始までに時間が空くと、その間にエンジン回転数NEが低下して、エンジン11の自立復帰が困難となることがある。また、そうしたエンジン回転数NEの低下により、COM復帰後のハイブリッド車両の加速がもたつくことがある。
【0026】
これに対して電子制御ユニット30は、COM復帰時の初回の燃料噴射の開始時期を、2回目以降の燃料噴射の開始時期よりも遅い時期とする遅角噴射制御を行っている。具体的には、電子制御ユニット30は、初回の燃料噴射は、燃料噴射の開始時期を圧縮行程とする、筒内噴射弁40Bの遅角噴射で行っている。一方、電子制御ユニット30は、2回目以降の燃料噴射は、燃料噴射の開始時期を吸気行程とする、ポート噴射弁40Aの通常噴射で行っている。COM復帰時の初回の燃料噴射を、ポート噴射弁40Aによる通常噴射で行う場合、最早に燃焼可能な気筒は、再始動要求後に最初に吸気行程を迎える気筒となる。一方、COM復帰時の初回の燃料噴射を、筒内噴射弁40Bによる遅角噴射で行う場合には、最早に燃焼可能な気筒は、再始動要求後に最初に圧縮行程を迎える気筒となる。よって、COM復帰時の初回の燃料噴射を、筒内噴射弁40Bによる遅角噴射で行えば、ポート噴射弁40Aによる通常噴射で行う場合よりも早い時期にエンジン11の燃焼を開始できる。その結果、エンジントルクの発生時期が早くなることから、COM復帰時のエンジン回転数NEの落ち込みが抑えられる。
【0027】
また、電子制御ユニット30は、自立復帰時のエンジン回転数NEの低下度合が大きく無い場合には、理論空燃比が得られる量を指令噴射量Qの値として演算している。一方、電子制御ユニット30は、自立復帰時のエンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には、出力空燃比が得られる量を指令噴射量Qの値として演算している。このように、電子制御ユニット30は、自立復帰によるエンジン11の再始動時にエンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には、同低下度合が小さい場合よりもエンジン11の燃料噴射量を増量する復帰トルク制御を行っている。これにより、エンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には、始動時のエンジントルクが高められるため、エンジン回転数NEの低下が抑えられる。
【0028】
以上の本実施形態の車両制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)電子制御ユニット30は、COM復帰時の初回の燃料噴射の開始時期を、2回目以降の燃料噴射の開始時期よりも遅い時期とする遅角噴射制御を行っている。これにより、COM復帰時のエンジン11の燃焼開始を、すなわちエンジントルクの発生時期を早めることができる。そのため、COM復帰要求後のエンジン回転数NEの低下によりエンジン11の自立始動が困難となり難くなる。また、再始動後のハイブリッド車両の加速がもたつき難くなる。
【0029】
(2)電子制御ユニット30は、COM復帰での初回の燃料噴射を筒内噴射弁40Bで行う一方で、2回目以降の燃料噴射をポート噴射弁40Aで行っている。筒内噴射弁40Bでは、吸気行程終了後も燃料噴射が可能なため、ポート噴射弁40Aを用いる場合よりも燃料噴射の開始時期を遅くすることができる。一方、COM復帰時の条件では、ポート噴射弁40Aで燃料噴射を行った方が、筒内噴射弁40Bで行うよりも、燃焼が安定し易い。よって、初回の燃料噴射は筒内噴射弁40Bで、2回目以降の燃料噴射はポート噴射弁40Aで行うことが望ましい。
【0030】
(3)電子制御ユニット30は、COM復帰時のエンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には、同低下度合が小さい場合よりもエンジン11の燃料噴射量を増量する復帰トルク制御を行っている。そのため、COM復帰時のエンジン回転数NEの急低下が抑えられる。
【0031】
(4)電子制御ユニット30は、エンジン回転数NEの低下度合が小さい場合には、エミッションの改善に適した空燃比である理論空燃比が得らえる量をCOM復帰時の燃料噴射量として設定している。一方、電子制御ユニット30は、エンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には、エンジントルクが得られる空燃比である出力空燃比が得られる量をCOM復帰時の燃料噴射量として設定している。よって、COM復帰時にエンジン回転数NEが急低下している場合には、エンジントルクを増加してエンジン回転数NEの低下を抑えつつも、そうでない場合にはエンジン11のエミッションを高められる。
【0032】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・運転者の加速操作によるCOM復帰以外にもエンジン11の自立復帰が行われるのであれば、そうしたCOM復帰以外の自立復帰時にも遅角噴射制御、及び復帰トルク制御を行うようにしてもよい。
【0033】
・上記実施形態における復帰トルク制御では、エンジン負荷率KLと冷却水温THWに基づき、指令噴射量Qを演算していたが、それ以外の態様で指令噴射量Qを演算するようにしてもよい。
【0034】
・上記実施形態における復帰トルク制御では、エンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には出力空燃比が得られる量を、同低下度合が小さい場合には理論空燃比が得られる量を、それぞれ燃料噴射量に設定していた。エンジン回転数NEの低下度合が大きい場合には同低下度合が小さい場合よりも燃料噴射量が多くなるのであれば、上記以外の量を燃料噴射量に設定するように復帰トルク制御を実施してもよい。
【0035】
・復帰トルク制御は実施せずに、遅角噴射制御のみを行うようにしてもよい。
・上記実施形態における遅角噴射制御では、COM復帰時の初回の燃料噴射を筒内噴射弁40Bにより行っていた。COM復帰時の2回目以降の燃料噴射よりも燃料噴射の開始時期が遅くなるのであれば、初回の燃料噴射もポート噴射弁40Aで行うようにしてもよい。また、COM復帰時の初回の燃料噴射よりも燃料噴射の開始時期が早くなるのであれば、2回目以降の燃料噴射も筒内噴射弁40Bで行うようにしてもよい。こうした場合、上記実施形態の車両制御装置は、ポート噴射弁40Aのみ、或いは筒内噴射弁40Bのみを備えるエンジン11を搭載する車両にも適用可能である。
【0036】
・上記実施形態の車両制御装置は、次の要件を満たした車両であれば、図1とは異なる構成の駆動系を有した車両にも適用可能である。すなわち、走行状況に応じてエンジンの間欠停止を行い、かつ間欠停止中にエンジンが回転している状態でエンジンの再始動が要求された場合に、自立復帰によるエンジンの再始動を行う車両である。
【符号の説明】
【0037】
10…ハイブリッドシステム
11…エンジン
12…発電電動機
13…クランク軸
14…システム出力軸
15…システムクラッチ
16…インバータ
17…バッテリ
20…変速装置
21…トルクコンバータ
22…変速機構
23…変速機入力軸
24…ロックアップクラッチ
30…電子制御ユニット
31…演算処理装置
32…記憶装置
33…エアフローメータ
34…水温センサ
35…吸気圧センサ
36…クランク角センサ
37…アクセルペダルセンサ
38…車速センサ
39…スロットルバルブ
40A…ポート噴射弁
40B…筒内噴射弁
41…点火装置
図1
図2
図3