(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】複合体の製造方法、微生物の混入の有無を判別する方法及び、混入した微生物の同定を行う方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20241022BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2022054622
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
(72)【発明者】
【氏名】田名網 健雄
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/059462(WO,A1)
【文献】特開2012-070635(JP,A)
【文献】特開2004-329161(JP,A)
【文献】特表平11-511970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0023433(US,A1)
【文献】TSUNEOKA, Y et al.,Modified in situ Hybridization Chain Reaction Using Short Hairpin DNAs,Frontiers in Molecular Neuroscience,2020年,Vol. 13,Article 75
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに含まれるターゲットを含む複合体を製造する方法であり、
(a)前記ターゲットを含むサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと
、ラベル分子Dとを接触させ、前記ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、前記ラベル分子Cと
、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップ、及び
(b)前記複合体を分離するステップを有し、
前記ターゲットが、核酸であり、
前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり、
前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有
し、
前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有し、
前記の「実質的に相補的な核酸配列」とは、指定の核酸配列に対して完全に相補的な核酸配列、又は、指定の核酸配列に対してハイブリダイゼーション可能な範囲で前記の完全に相補的な核酸配列において1~5個の塩基のミスマッチ、欠損、若しくは追加を有する核酸配列を意味する、
複合体の製造方法。
【請求項2】
前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項3】
前記ラベル分子Aが、x部と、y部と、z部とを有し、
前記ラベル分子Cが、X部と、Y部とを有し、
前記x部が、前記X部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記y部が、前記Y部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記z部が、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列である、請求項1
又は2に記載の複合体の製造方法。
【請求項4】
前記ラベル分子Aが、x部及びy部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Cが、X部及びY部をそれぞれ分子内に1つ有するか、
前記ラベル分子Cが、X部及びY部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Aが、x部及びy部をそれぞれ分子内に1つ有するか、又は
前記ラベル分子Aが、x部及びy部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つ前記ラベル分子Cが、X部及びY部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有する、請求項
3に記載の複合体の製造方法。
【請求項5】
前記ラベル分子Bが、u部と、v部と、w部とを有し、
前記ラベル分子Dが、U部と、V部とを有し、
前記u部が、前記U部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記v部が、前記V部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記w部が、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列である、請求項
1に記載の複合体の製造方法。
【請求項6】
前記ラベル分子Bが、u部及びv部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Dが、U部及びV部をそれぞれ分子内に1つ有するか、
前記ラベル分子Dが、U部及びV部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Bが、u部及びv部をそれぞれ分子内に1つ有するか、又は
前記ラベル分子Bが、u部及びv部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つ前記ラベル分子Dが、U部及びV部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有する、請求項
5に記載の複合体の製造方法。
【請求項7】
検査対象物中への微生物の混入の有無を判別する方法であり、
(1)前記検査対象物に前記微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理することにより、サンプルを得るステップ、
(2)前記サンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと
、ラベル分子Dとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、
前記ラベル分子Cと
、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップ、及び
(3)複合体が形成された場合に前記複合体を分離するステップを有し、
前記ターゲットが、前記微生物由来の核酸であり、
前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり、
前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有
し、
前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有し、
前記の「実質的に相補的な核酸配列」とは、指定の核酸配列に対して完全に相補的な核酸配列、又は、指定の核酸配列に対してハイブリダイゼーション可能な範囲で前記の完全に相補的な核酸配列において1~5個の塩基のミスマッチ、欠損、若しくは追加を有する核酸配列を意味する、
微生物の混入の有無を判別する方法。
【請求項8】
前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、請求項
7に記載の微生物の混入の有無を判別する方法。
【請求項9】
前記(1)ステップが、
検査対象物を容器に導入するステップと、
前記容器を密閉するステップと、
前記容器に密閉された検査対象物を、密閉した状態で100℃以上の温度まで加熱するステップとを有する、請求項
7又は8に記載の微生物の混入の有無を判別する方法。
【請求項10】
検査対象物中に混入した微生物の同定を行う方法であり、
(2)前記検査対象物に由来するサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと
、ラベル分子Dとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、
前記ラベル分子Cと
、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップ、
(3)複合体が形成された場合に前記複合体を分離するステップ、及び
(4)前記複合体に含まれる前記ターゲットが、いかなる微生物に由来する核酸配列を有するか同定するステップを有し、
前記ターゲットが、前記微生物由来の核酸であり、
前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり、
前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの
前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有
し、
前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの前記一部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有し、
前記の「実質的に相補的な核酸配列」とは、指定の核酸配列に対して完全に相補的な核酸配列、又は、指定の核酸配列に対してハイブリダイゼーション可能な範囲で前記の完全に相補的な核酸配列において1~5個の塩基のミスマッチ、欠損、若しくは追加を有する核酸配列を意味する、
混入した微生物の同定を行う方法。
【請求項11】
前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、請求項
10に記載の混入した微生物の同定を行う方法。
【請求項12】
前記(2)ステップの前に、
(1)検査対象物に微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理することにより、サンプルを得るステップを有する、請求項
10又は11に記載の混入した微生物の同定を行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合体の製造方法、微生物の混入の有無を判別する方法及び、混入した微生物の同定を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食品、医薬品、化粧品、日用品等の微生物検査は、例えば
図1、
図2に示す手順で行われていた(例えば、特許文献1及び2参照)。従来の微生物検査は、大きく分けて、(1)核酸(DNA、RNA)抽出、(2)核酸増幅、(3)マイクロアレイ検出、(4)微生物(菌種)同定の各工程が必要であった。マイクロアレイ検出では、サンプル中の核酸を蛍光ラベルし、マイクロアレイ上のプローブとハイブリダイゼーションさせることが一般的であった。なお、本開示において、ハイブリダイゼーションとは、核酸の分子、或いは核酸をその分子構造の一部に有する分子(例えば、核酸の修飾体、核酸の変性物)の核酸部分、の少なくとも一部が相補的に複合体を形成すること、又は前記複合体を形成させる実験若しくは操作を意味する。
【0003】
より具体的な例としては、検査対象となる製品中に存在する菌から核酸抽出キットを用いて、DNAもしくはRNAを抽出する。抽出された核酸(DNA又はRNA)をテンプレートとしてPCR(polymerase chain reaction)法等によって核酸を増幅する。前記増幅の際に、必要に応じて蛍光標識プライマーを用いて、標的核酸の蛍光標識を行う。増幅した核酸を検出用のプローブが固定されたDNAマイクロアレイ等のマイクロアレイに添加し、ハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーション完了後、DNAマイクロアレイ上に結合した核酸を蛍光測定器で確認する。この一連の動作を行うことにより、菌の混入を判定することや、菌が混入していた場合には菌の判別(同定)を行うことができる。また、
図2に示したように、PCR法等により核酸を増幅する際に、増幅がみられたかどうかで菌の有無を判定し、菌がいたとき、すなわち増幅が見られた場合に、当該サンプルをマイクロアレイ検出に供し、混入していた菌の判別を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-230335号公報
【文献】特開2017-006012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示した手順で微生物検査を行う場合には、微生物(菌)が混入していないサンプルについてもマイクロアレイ検出を行うため、検査コストが高くなる傾向があった。また、
図2に示した手順で微生物検査を行う場合には、リアルタイムPCRを行うためには通常1~2時間程度の時間が必要であり、夾雑物を取り除く精製工程が必要であるため、操作が煩雑であり、さらに酵素を使用するため、検査コストが高くなる傾向があった。
【0006】
そこで、本開示の目的は、容易に実施可能な、複合体の製造方法、微生物の混入の有無を判別する方法、及び混入した微生物の同定を行う方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、複数の特定のラベル分子を用いてターゲットを含む複合体を製造することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本開示に至った。
【0008】
本実施形態の態様例は、以下の通りに記載される。
【0009】
[1] サンプルに含まれるターゲットを含む複合体を製造する方法であり、
(a)前記ターゲットを含むサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを接触させ、前記ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、前記ラベル分子Cとを含む複合体を形成するステップ、及び
(b)前記複合体を分離するステップを有し、
前記ターゲットが、核酸であり、
前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり、
前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有する、
複合体の製造方法。
[2] 前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、[1]に記載の複合体の製造方法。
[3] 前記(a)ステップが、ターゲットを含むサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、ラベル分子Dとを接触させ、前記ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、前記ラベル分子Cと、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップであり、
前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、
[1]に記載の複合体の製造方法。
[4] 前記ラベル分子Aが、x部と、y部と、z部とを有し、
前記ラベル分子Cが、X部と、Y部とを有し、
前記x部が、前記X部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記y部が、前記Y部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記z部が、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列である、[1]~[3]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[5] 前記ラベル分子Aが、x部及びy部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Cが、X部及びY部をそれぞれ分子内に1つ有するか、
前記ラベル分子Cが、X部及びY部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Aが、x部及びy部をそれぞれ分子内に1つ有するか、又は
前記ラベル分子Aが、x部及びy部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つ前記ラベル分子Cが、X部及びY部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有する、[4]に記載の複合体の製造方法。
[6] 前記ラベル分子Bが、u部と、v部と、w部とを有し、
前記ラベル分子Dが、U部と、V部とを有し、
前記u部が、前記U部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記v部が、前記V部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、
前記w部が、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列である、[3]に記載の複合体の製造方法。
[7] 前記ラベル分子Bが、u部及びv部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Dが、U部及びV部をそれぞれ分子内に1つ有するか、
前記ラベル分子Dが、U部及びV部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Bが、u部及びv部をそれぞれ分子内に1つ有するか、又は
前記ラベル分子Bが、u部及びv部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つ前記ラベル分子Dが、U部及びV部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有する、[6]に記載の複合体の製造方法。
[8] 検査対象物中への微生物の混入の有無を判別する方法であり、
(1)前記検査対象物に前記微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理することにより、サンプルを得るステップ、
(2)前記サンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを含む複合体を形成するステップ、及び
(3)複合体が形成された場合に前記複合体を分離するステップを有し、
前記ターゲットが、前記微生物由来の核酸であり、
前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり、
前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有する、
微生物の混入の有無を判別する方法。
[9] 前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、[8]に記載の微生物の混入の有無を判別する方法。
[10] 前記(2)ステップが、サンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、ラベル分子Dとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップであり、
前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、
[8]に記載の微生物の混入の有無を判別する方法。
[11] 前記(1)ステップが、
検査対象物を容器に導入するステップと、
前記容器を密閉するステップと、
前記容器に密閉された検査対象物を、密閉した状態で100℃以上の温度まで加熱するステップとを有する、[8]~[10]のいずれかに記載の微生物の混入の有無を判別する方法。
[12] 検査対象物中に混入した微生物の同定を行う方法であり、
(2)前記検査対象物に由来するサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを含む複合体を形成するステップ、
(3)複合体が形成された場合に前記複合体を分離するステップ、及び
(4)前記複合体に含まれる前記ターゲットが、いかなる微生物に由来する核酸配列を有するか同定するステップを有し、
前記ターゲットが、前記微生物由来の核酸であり、
前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり、
前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有する、
混入した微生物の同定を行う方法。
[13] 前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、[12]に記載の混入した微生物の同定を行う方法。
[14] 前記(2)ステップが、検査対象物に由来するサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、ラベル分子Dとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップであり、
前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、
前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有する、
[12]に記載の混入した微生物の同定を行う方法。
[15] 前記(2)ステップの前に、
(1)検査対象物に微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理することにより、サンプルを得るステップを有する、[12]~[14]のいずれかに記載の混入した微生物の同定を行う方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、容易に実施可能な、複合体の製造方法、微生物の混入の有無を判別する方法、及び混入した微生物の同定を行う方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来の微生物検査の一態様の手順を示すフロー図である。
【
図2】従来の微生物検査の別態様の手順を示すフロー図である。
【
図7】本実施形態の微生物の同定を行う方法の一態様の手順を示すフロー図である。
【
図8】実施例で使用したターゲットDNA,ラベル分子A、ラベル分子C、ラベル分子Bの配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の複合体の製造方法、微生物の混入の有無を判別する方法、及び混入した微生物の同定を行う方法について、詳細に説明する。本実施形態の一態様である複合体の製造方法は、ターゲットを含む複合体を製造する方法である。ターゲットは、核酸である。前記複合体の製造方法は、微生物の混入の有無を判別する方法、及び混入した微生物の同定を行う方法においても、これらの方法の一部として行われる。
【0013】
(複合体の製造方法)
本実施形態の複合体の製造方法は、サンプルに含まれるターゲットを含む複合体を製造する方法であり、
(a)前記ターゲットを含むサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを接触させ、前記ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、前記ラベル分子Cとを含む複合体を形成するステップ、及び
(b)前記複合体を分離するステップを有する。
【0014】
前記ターゲットは、核酸であり、通常は特定の配列を有する核酸である。前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列である。前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有する。
【0015】
サンプルとは複合体を製造する方法において用いられる成分である。サンプルは、通常検査対象物を処理することにより得られる成分である。サンプルは、例えば検査対象物を、検査対象物に微生物が混入している場合に、微生物由来の核酸が抽出される条件で処理することにより得ることができる。なお、核酸が抽出される条件としては、従来公知の条件を採用することができ、例えば従来PCRの前処理として行われていた処理と同様の手法を採用してもよい。また、核酸の抽出は、抽出キットとして市販されているものを用いて行ってもよい。
【0016】
ターゲットは、通常は特定の配列を有する核酸であり、DNAであってもRNAであってもよい。ターゲットは、通常は微生物由来の核酸である。微生物としては、特に制限はないが例えば、菌、藻、粘菌、ウイルス等が挙げられる。なお、特定の配列とは、例えば検出を目的とする微生物に応じて適宜決定することができる。
【0017】
ラベル分子Aは、前述のように前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。また、前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列である。さらに、前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。すなわち、前記複合体は、ターゲット、ターゲットの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子A、ラベル分子Aとは異なる位置でターゲットの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子B、ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子Cを含む複合体である。
【0018】
なお、本開示において「実質的に相補的な核酸配列」とは、ある配列に対して完全に相補的な核酸配列及び、ある配列に対してハイブリダイゼーション可能な範囲で当該完全に相補的な核酸配列において1つ又は複数の塩基のミスマッチ、塩基の欠損、又は塩基の追加を有する核酸配列を包含する概念である。塩基のミスマッチを有する核酸配列は、通常は5個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下の塩基のミスマッチを有する核酸配列である。塩基の欠損、又は塩基の追加を有する核酸配列は、通常は5個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下の塩基の欠損又は塩基の追加を有する核酸配列である。
【0019】
また、前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有しており、好ましくは前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cが蛍光体を有する。蛍光体としては、ラベル分子Aやラベル分子Cの任意の位置にあればよく、好ましい例としては、分子末端(例えば5’末端、3’末端)に位置する。すなわち、分子末端に蛍光体を有するラベル分子A、分子末端に蛍光体を有するラベル分子Cが好ましい。
【0020】
蛍光体としては、蛍光を発することが可能な物質であればよく特に制限はないが、好ましい態様としては、励起波長が紫外線(例えば280~380nm)又は可視光線(例えば380~830nm)であり、発光波長が可視光線(例えば380~830nm)である蛍光体が好ましい。なお、発光波長としては、15nm以上、好ましくは20~100nm以上、励起波長よりも長波長側にシフトしていることが好ましい。
【0021】
蛍光体としては、特に制限はないが、有機蛍光分子、無機蛍光体、量子ドット、及び有機蛍光分子、無機蛍光体、量子ドット等の蛍光体を複数個集積させた蛍光体集積ナノ粒子等を用いることができる。有機蛍光分子としては、例えば、EDANS、Coumarin、FAM、FITC、Cy2、TF2、TF3、HEX、JOE、TET、Cy3、Cy5、Alexa Fluor(登録商標) 532、Alexa Fluor(登録商標) 610、Alexa Fluor(登録商標) 647、ATTO532、ATTO633、iFluor 532、ifluor 647等が挙げられる。量子ドットとしては、例えば、Qdot(登録商標) 565、Qdot(登録商標) 585、Qdot(登録商標) 605、Qdot(登録商標) 705等が挙げられる。また、蛍光体(例えば、有機蛍光分子、無機蛍光体、量子ドット)を樹脂(例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂)又はガラスに担持したものを蛍光体として用いてもよい。
【0022】
また、前記ラベル分子Aが、x部と、y部と、z部とを有し、前記ラベル分子Cが、X部と、Y部とを有し、前記x部が、前記X部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、前記y部が、前記Y部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、前記z部が、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であることが、好ましい態様の一つである。なお、ラベル分子Aは、x部、y部、z部以外の核酸配列を有していてもよく、ラベル分子Cは、X部、Y部以外の核酸配列を有していてもよい。
【0023】
前記ラベル分子A及びラベル分子Cの具体的な組み合わせとしては、例えば以下の3つ態様が挙げられる。前記ラベル分子Aが、x部及びy部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Cが、X部及びY部をそれぞれ分子内に1つ有する態様。前記ラベル分子Cが、X部及びY部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Aが、x部及びy部をそれぞれ分子内に1つ有する態様。前記ラベル分子Aが、x部及びy部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つ前記ラベル分子Cが、X部及びY部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有する態様。このような態様であると、複合体は、複数のラベル分子A及びラベル分子Cを含むことが可能であるため、蛍光観察を行った場合の輝度が向上するため好ましい。
【0024】
前記ラベル分子A及びラベル分子Cとしては、ラベル分子Aが分子内にx部を1つ有し、y部を分子内に2つ有し、ラベル分子Cが分子内にX部を2つ有し、Y部を分子内に1つ有することが好ましい態様の一つである。
【0025】
ラベル分子Aにおいてx部はy部と比べた際に5’末端側に存在し、ラベル分子CにおいてX部はY部と比べた際に5’末端側に存在することが好ましい態様の一つである。前記ラベル分子A及びラベル分子Cとしては、ラベル分子Aが、5’末端側から、x部、y部(1つ目)、y部(2つ目)の核酸配列を有し、ラベル分子Cが、5’末端側から、X部(1つ目)、X部(2つ目)、y部の核酸配列を有することが好ましい態様の一つである。また、ラベル分子Aは、z部を、x部及びy部と異なる核酸配列として有していてもよく、x部及びy部の少なくとも一方の核酸配列中に、z部の核酸配列が存在してもよい。
図3にラベル分子Aの一態様の模式図を示す。
図3に示したラベル分子Aは、5’末端側から、x部、y部(1つ目)、y部(2つ目)の核酸配列を有し、3’末端に蛍光体を有するが、z部は、x部の一部と、y部(1つ目)の一部にまたがって存在している。
図4にラベル分子Cの一態様の模式図を示す。
図4に示したラベル分子Cは、5’末端側から、X部(1つ目)、X部(2つ目)、Y部の核酸配列を有し、3’末端に蛍光体を有する。
図3に示したラベル分子Aが、ターゲットにハイブリダイゼーションした場合には、x部及びy部(1つ目)ターゲットとのハイブリダイゼーションに使用されるが、ラベル分子Aがy部(2つ目)を有するため、該y部(2つ目)に対してラベル分子CのY部がハイブリダイゼーションすることが可能であり、該ラベル分子Cに更に別のラベル分子Aがハイブリダイゼーションすることにより、複数のラベル分子A及びラベル分子Cが、複合体に含まれることになる。
【0026】
前記ラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有することが好ましい態様の一つであり、磁気微粒子を有することがより好ましい態様の一つである。磁気微粒子とは、磁石により回収可能な微粒子であればよく特に限定されない。金属微粒子とは、磁気微粒子以外の粒子であり、且つ金属の微粒子であり、比重が重いため、沈澱させることにより回収可能な微粒子であればよく、特に限定されない。磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子としては、ラベル分子Bの任意の位置にあればよく、好ましい例としては、分子末端(例えば5’末端、3’末端)に位置する。すなわち、分子末端に磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有するラベル分子Bが好ましく、分子末端に磁気微粒子を有するラベル分子Bがより好ましい。なお、ラベル分子Bはターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有し、該核酸配列をw部とも記す。なお、ラベル分子Bは、w部以外の核酸配列を有していてもよい。
図5にラベル分子Bの一態様の模式図を示す。
図5に示したラベル分子Bは、5’末端に磁気微粒子を有するラベル分子Bの模式図である。
【0027】
ターゲット及び、ラベル分子A、ラベル分子B、ラベル分子Cから形成される複合体の一態様の模式図を
図6に示す。
図6に示した複合体は、一つのターゲットに対してラベル分子A及びラベル分子Bがターゲットの異なる部位にハイブリダイゼーションしており、ラベル分子Aは更にラベル分子Cがハイブリダイゼーションしている。また、ラベル分子Cに対して更に別のラベル分子Aがハイブリダイゼーションし、別のラベル分子Cがハイブリダイゼーションしており、複合体は、一つのターゲット、複数のラベル分子A、一つのラベル分子B、複数のラベル分子Cから構成されている。本実施形態で得られる複合体は、ラベル分子Bを含むため、磁石による回収、或いは沈殿による回収が容易である。また、複合体は一つのターゲットに対して、ラベル分子A及びラベル分子Cに由来する複数の蛍光体を有するため、蛍光観察を行った際に高い輝度を示す。このため、本実施形態の複合体を製造する方法は、サンプル中にターゲットが低濃度で存在する場合であっても、複合体の確認が容易である。
【0028】
前述のように(a)ステップではラベル分子として、ラベル分子A、ラベル分子B及びラベル分子Cが用いられるが、更に別のラベル分子を使用して(a)ステップを行ってもよい。別のラベル分子を使用する場合の好ましい一態様として、(a)ステップが、ターゲットを含むサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、ラベル分子Dとを接触させ、前記ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、前記ラベル分子Cと、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップである態様が挙げられる。前記態様では、前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有している。また、前記態様では、前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有している。すなわち、前記態様においては、前記複合体は、ターゲット、ターゲットの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子A、ラベル分子Aとは異なる位置でターゲットの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子B、ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子C、ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーションしたラベル分子Dを含む複合体である。
【0029】
また、ラベル分子Dを用いる態様においては、前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有しており、好ましくは前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dが磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有し、より好ましくは前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dが磁気微粒子を有する。磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子としては、ラベル分子Bやラベル分子Dの任意の位置にあればよく、好ましい例としては、分子末端(例えば5’末端、3’末端)に位置する。すなわち、ラベル分子Bが、分子末端に磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有するラベル分子Bであり、且つラベル分子Dが、分子末端に磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有するラベル分子Dである態様が好ましい。
【0030】
ラベル分子Dを用いる態様においては、前記ラベル分子Bが、u部と、v部と、w部とを有し、前記ラベル分子Dが、U部と、V部とを有し、前記u部が、前記U部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、前記v部が、前記V部の核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であり、前記w部が、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列であることが、好ましい態様の一つである。なお、ラベル分子Bは、u部、v部、w部以外の核酸配列を有していてもよく、ラベル分子Dは、U部、V部以外の核酸配列を有していてもよい。
【0031】
ラベル分子Dを用いる態様においては、前記ラベル分子B及びラベル分子Dの具体的な組み合わせとしては、例えば以下の3つ態様が挙げられる。前記ラベル分子Bが、u部及びv部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Dが、U部及びV部をそれぞれ分子内に1つ有する態様。前記ラベル分子Dが、U部及びV部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つラベル分子Bが、u部及びv部をそれぞれ分子内に1つ有する態様。前記ラベル分子Bが、u部及びv部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有し、且つ前記ラベル分子Dが、U部及びV部から選択される少なくとも一方を分子内に2つ以上有する態様。
【0032】
また、ラベル分子Dを用いる態様においては、ラベル分子Bは、w部を、u部及びv部と異なる核酸配列として有していてもよく、u部及びv部の少なくとも一方の核酸配列中に、w部の核酸配列が存在してもよい。
【0033】
ラベル分子Dを用いる態様においては、複合体に複数のラベル分子B及び複数のラベル分子Dが含まれることになり、より容易に磁石による回収や、沈澱による回収が可能になる場合がある。
【0034】
本実施形態において(a)ステップは、ターゲットを含むサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとが接触すればよく、その方法としては特に制限はないが、例えば、サンプルに対してラベル分子A、ラベル分子B、及びラベル分子C、並びに任意に使用されるラベル分子Dを一括で又は順次添加することにより行ってもよく、ラベル分子A、ラベル分子B及びラベル分子C並びに任意に使用されるラベル分子Dとを含む溶液に対してサンプルを添加することにより行ってもよい。サンプルは、例えば検査対象物に由来するが、サンプル調製過程において、溶媒が加えられていることが好ましい。溶媒としては、緩衝液、ナトリウムなどの塩を含む水溶液等を用いることができる。緩衝液としては、例えばSSC緩衝液(Saline Sodium Citrate Buffer)、チャーチリン酸緩衝液、SSPE緩衝液(saline-sodium phosphate-EDTA buffer)等を用いることができる。サンプルとして、検査対象物に後述の(1)ステップを行ったものを用いる場合には、(1)ステップを行った検査対象物(核酸抽出液)の終濃度の2~10倍(2~10倍希釈)程度になるように、溶媒を用いることが好ましい。なお、順次添加を行う場合には、その添加する順番としては特に制限はない。(a)ステップは、大気中で行っても、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。(a)ステップを行う圧力としては、常圧、加圧、減圧の何れでも構わないが、常圧で行うことが、操作が容易である観点から好ましい。(a)ステップを行う際の温度としては、ハイブリダイゼーションが可能な温度であればよく、特に制限はないが、通常は30~70℃、好ましくは55~65℃である。(a)ステップを行う時間としては、特に制限はなく、通常は15~240分、好ましくは30~60分である。
【0035】
本実施形態において(b)ステップは、(a)ステップで形成された複合体を回収できればよく特に制限はないが、ラベル分子Bやラベル分子Dとして磁気微粒子を有するものを用いた場合には、磁石により複合体を回収することが好ましく、ラベル分子Bやラベル分子Dとして金属微粒子を有するものを用いた場合には、複合体を沈殿させ、上澄みを除去する等の方法により複合体を回収することが好ましい。
【0036】
(微生物の混入の有無を判別する方法)
本実施形態の微生物の混入の有無を判別する方法は、検査対象物中への微生物の混入の有無を判別する方法であり、
(1)前記検査対象物に前記微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理することにより、サンプルを得るステップ、
(2)前記サンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを含む複合体を形成するステップ、及び
(3)複合体が形成された場合に前記複合体を分離するステップを有する。
【0037】
前記ターゲットは、前記微生物由来の核酸であり、通常は特定の配列を有する核酸である。前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列である。前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有する。
本実施形態の微生物の混入の有無を判別する方法は、迅速に微生物の混入の有無を判別することが可能であり、且つ作業内容が簡素であり、高価な試薬や、酵素が不用であるため、検査コストの削減が可能である。
を目的とする。
【0038】
検査対象物とは、微生物の混入の有無を判別することが求められる物であり、例えば、食品、医薬品、化粧品、日用品等が挙げられる。検査対象物は、通常はそのままではターゲットとなる核酸を検出することができないため、検査対象物に微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理し、該処理した物がサンプルとして用いられる。
【0039】
前述の微生物の混入の有無を判別する方法では、ターゲットを微生物由来の核酸配列とすることにより、複合体が得られた場合、言い換えると蛍光観察により、高い輝度が観察された場合、検査対象物に微生物が混入していたことが確認できる。一般に検査対象物に微生物が混入すること自体が稀であるため、微生物の混入の有無については簡便な方法で検査することが求められている。従って、できるだけ多くの微生物が共通して有する核酸配列をラベル分子Aやラベル分子Bがハイブリダイゼーションする配列として採用することが好ましい。これにより、少ない試験回数、或いは少ない種類のラベル分子A、ラベル分子B等を用いて、微生物の混入の有無を判別することができる。一方で、ある特定の微生物の混入の有無を判別したい場合には、ラベル分子Aやラベル分子Bがハイブリダイゼーションする配列として特定の微生物特有の配列を採用することにより、ある特定の微生物の混入の有無を判別することができる。
【0040】
検査対象物に前記微生物が混入している場合、本実施形態における(2)ステップは、実質的に前述の複合体の製造方法における(a)ステップと同様のステップであり、本実施形態の(3)ステップは、実質的に前述の複合体の製造方法における(b)ステップと同様のステップである。すなわち、前述のようにラベル分子Bが、磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有することが好ましい態様の一つである。また、(a)ステップではラベル分子として、ラベル分子A、ラベル分子B及びラベル分子Cが用いられるが、更に別のラベル分子を使用して(a)ステップを行ってもよい。別のラベル分子を使用する場合の好ましい一態様として、前記(2)ステップが、サンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、ラベル分子Dとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cと、前記ラベル分子Dとを含む複合体を形成するステップである態様が挙げられる。前記態様では、前記ラベル分子Dは、前記ラベル分子Bの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Bの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有している。また、前記態様では、前記ラベル分子B及び前記ラベル分子Dの少なくとも一方が磁気微粒子及び金属微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を有している。検査対象物に前記微生物が混入していない場合には、(2)ステップにおいて、複合体が形成されることはない。このため検査対象物に前記微生物が混入していない場合には、(3)ステップにおいても複合体が分離されることは無い。この場合には(3)ステップでは、前述のラベル分子Bや、任意に用いられるラベル分子Dのみが回収されることになる。このため、本実施形態では、検査対象物に前記微生物が混入している場合には、回収された複合体の蛍光観察を行った場合には、高い輝度を示し、これにより、微生物の混入を確認することができる。また、本実施形態では、検査対象物に前記微生物が混入していない場合には、回収されたラベル分子Bや任意に用いられるラベル分子Dに対して、蛍光観察を行っても、高い輝度を示すことはないため、これにより、微生物が混入していなかったことを確認することができる。
【0041】
本実施形態における(1)ステップとしては、検査対象物に微生物が混入している場合に前記微生物由来の核酸が抽出される条件で、検査対象物を処理する工程であればよく、その詳細としては特に制限はない。(1)ステップとしては例えば、菌から核酸を抽出する方法として知られている、高温加圧抽出法を採用することができる。(1)ステップとしては、検査対象物を容器に導入するステップと、前記容器を密閉するステップと、前記容器に密閉された検査対象物を、密閉した状態で100℃以上の温度まで加熱するステップとを有することが好ましい態様の一つである。前記温度としては100~180℃が好ましく、130~160℃がより好ましい。
【0042】
(1)ステップにより得られたサンプルは、そのまま(2)ステップに供してもよいが、(1)ステップと(2)ステップとの間に、サンプル中の夾雑物を除去する工程等を任意に設けてもよい。
【0043】
(混入した微生物の同定を行う方法)
本実施形態の混入した微生物の同定を行う方法は、検査対象物中に混入した微生物の同定を行う方法であり、
(2)前記検査対象物に由来するサンプルと、ラベル分子Aと、ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを接触させ、前記サンプルに前記微生物由来の核酸が含まれている場合に、ターゲットと、前記ラベル分子Aと、前記ラベル分子Bと、ラベル分子Cとを含む複合体を形成するステップ、
(3)複合体が形成された場合に前記複合体を分離するステップ、及び
(4)前記複合体に含まれる前記ターゲットが、いかなる微生物に由来する核酸配列を有するか同定するステップを有する。
【0044】
前記ターゲットは、前記微生物由来の核酸であり、通常は特定の配列を有する核酸である。前記ラベル分子Aは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子Bは、前記ターゲットの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ターゲットの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子Aが有する前記実質的に相補的な核酸配列と、前記ラベル分子Bが有する前記実質的に相補的な核酸配列とが、前記ターゲットの異なる部分にハイブリダイゼーション可能な核酸配列である。前記ラベル分子Cは、前記ラベル分子Aの一部にハイブリダイゼーション可能な、前記ラベル分子Aの核酸配列と実質的に相補的な核酸配列を有する。前記ラベル分子A及び前記ラベル分子Cの少なくとも一方が蛍光体を有する。
【0045】
本実施形態における(2)ステップ及び(3)ステップは、それぞれ前述の微生物の混入の有無を判別する方法における(2)ステップ及び(3)ステップと同義である。また、本実施形態では、前述の微生物の混入の有無を判別する方法で記載した(1)ステップを(2)ステップの前に行うことが好ましい態様の一つである。本実施形態において(1)ステップを行う場合には、前述の微生物の混入の有無を判別する方法と同様に(1)ステップにより得られたサンプルは、そのまま(2)ステップに供してもよいが、(1)ステップと(2)ステップとの間に、サンプル中の夾雑物を除去する工程等を任意に設けてもよい。
【0046】
前述の微生物の混入の有無を判別する方法で記載したように、できるだけ多くの微生物が共通して有する核酸配列をラベル分子Aやラベル分子Bがハイブリダイゼーションする配列として採用することが好ましいため、(3)ステップにおいて複合体が分離された場合であっても、混入した微生物を具体的に同定することは一般に困難である。本実施形態の混入した微生物の同定を行う方法では、(4)ステップを行うことにより、ターゲットが、いかなる微生物に由来する核酸配列を有するか同定することが可能であり、これにより混入した微生物を同定することが可能である。
【0047】
(4)ステップは、(3)ステップにおいて複合体が分離された場合に行うステップであり、ターゲットが、いかなる微生物に由来する核酸配列を有するか同定することができればよい。(4)ステップを行うための具体的な手段としては特に制限はなく、例えばマイクロアレイ法、PCR法、シーケンシング法等を採用することができる。マイクロアレイ法としては、例えばシグナリングアレイを用いた方法を採用してもよく、自己集合ラベルをマイクロアレイ検出に用いた手法を採用してもよい。シグナリングアレイを用いた方法としては、例えば、特開2015-043702に記載された方法が好ましい。(4)ステップとしては、例えば、複合体を再度1N程度(例えば、0.5~2N)のNaOH溶液に懸濁し、再度磁石又は遠心分離等により、ラベル分子Bやラベル分子Dを回収し、1N程度(例えば、0.5~2N)のHClで溶液を中和した後、終濃度が2~10倍(2~10倍希釈)程度になるようにSSC緩衝液等の緩衝液を添加し、シグナリングアレイプローブを固定化したマイクロアレイで検出し、菌種の判別や特定遺伝子の検出を行うステップが挙げられる。なお、NaOH溶液を用いる代わりに、加熱、例えば約95℃(具体例としては90~100℃)で加熱することにより、ラベル分子A~Dをターゲットから乖離させてもよい。また、ターゲットが少量である場合には、PCR等によって、核酸を増幅した後にマイクロアレイ法等を用いた検出を行ってもよい。
【0048】
(1)ステップ~(4)ステップを有する混入した微生物の同定を行う方法の一態様を
図7に示す。
図7に示す態様では、(1)ステップ~(3)ステップを行い、例えば蛍光観察を行うことにより、複合体の有無を確認する。蛍光が観察された場合には、複合体の検出あり、すなわち陽性であると判断し、(4)ステップを行い、微生物同定を行うことができる。また、蛍光が観察されなかった場合には、複合体の検出なし、すなわち陰性と判断し、そこで方法を終了することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本実施形態を説明するが、本開示はこれらの例によって限定されるものではない。
【0050】
実施例、比較例で使用した合成オリゴDNA(445 nt)(ターゲットDNA)の配列を、配列表の配列番号1に示し、ラベル分子Aの配列を、配列表の配列番号2に示し、ラベル分子Cの配列を、配列表の配列番号3に示し、ラベル分子Bの配列を、配列表の配列番号4に示す。また、実施例、比較例で使用したラベル分子Aのx部の配列を配列表の配列番号5、y部の配列を配列表の配列番号6、z部の配列を配列表の配列番号7に示し、ラベル分子CのX部の配列を配列表の配列番号8、Y部の配列を配列表の配列番号9の配列に示す。なお、ラベル分子Bのw部の配列は、ラベル分子Bの配列と同様である。また、これらの配列を
図8にも示す。
【0051】
前記合成オリゴDNAは、ユーロフィンジェノミクス株式会社に合成を依頼し、入手した。
【0052】
ラベル分子Aは、ユーロフィンジェノミクス株式会社にDNAの合成及び蛍光分子(Cy3)での3’末端の修飾を依頼し、入手した。実施例で使用したラベル分子Aは、
図3の模式図で示した構造、すなわち、5’末端側から、x部、y部(1つ目)、y部(2つ目)の核酸配列を有し、3’末端に蛍光体を有していた。
ラベル分子Cは、ユーロフィンジェノミクス株式会社にDNAの合成及び蛍光分子(Cy3)での3’末端の修飾を依頼し、入手した。実施例で使用したラベル分子Cは、
図4の模式図で示した構造、すなわち、5’末端側から、X部(1つ目)、X部(2つ目)、Y部の核酸配列を有し、3’末端に蛍光体を有していた。
ラベル分子Bは、ユーロフィンジェノミクス株式会社にDNAの合成及び5’末端のアミノ基修飾を依頼し、入手したアミノ基修飾DNAのアミノ基に、Thermo ScientificのNHS磁気ビーズを結合させることにより得た。NHS磁気ビーズの結合は、該磁気ビーズの製品のマニュアルに従って行った。実施例で使用したラベル分子Bは、
図5の模式図で示した構造、すなわち、w部の核酸配列を有し、5’末端に磁気微粒子を有していた。
【0053】
[比較例1]
大腸菌16S rDNA配列を有する合成オリゴDNA(445 nt)をターゲットとして用いた。合成オリゴDNAをDW(脱イオン蒸留水)で終濃度1nMになるように希釈しターゲット溶液とした。
ターゲット溶液、ラベル分子B(終濃度100nM)と、ラベル分子A(終濃度100nM)とを、5倍希釈となる量のSSC緩衝液(トータルボリューム40μl)中で30分60℃の温度でインキュベートしたのち、磁石を用いて粒子(ターゲット、ラベル分子A、及びBを含む複合体)を回収した。
【0054】
粒子をSSC緩衝液(40μl)で3回洗浄した。再びSSC緩衝液を40μl添加し粒子を、磁石を用いて一点に集めたのち、532nmのレーザー光を照射して粒子の蛍光を観察した。 蛍光の観察は、検出機としてCCD(Charge Coupled Device)を用い、光源として532nmのDPSS(Diode-Pumped Solid-State)を用い、6×8×1mmのガラス製セルを使用し、通常の蛍光観察光学系を用いて行った。
【0055】
粒子は磁気で集めることができるため、ラベル分子Bを含むと考えられ、蛍光が観察されることから、ラベル分子Aを含むと考えられ、ラベル分子Bとラベル分子Aとは直接結合(ハイブリダイゼーション)することはないため、粒子はターゲット、ラベル分子A、B、及びCを含む複合体であることが確認された。
【0056】
ネガティブコントロールとして、ターゲット分子を添加せずに同様の試験を行った。ターゲットを用いなかったネガティブコントロールでは、蛍光は実質的に観察されなかった。
【0057】
[実施例1]
大腸菌16S rDNA配列を有する合成オリゴDNA(445 nt)をターゲットとして用いた。合成オリゴDNAをDW(脱イオン蒸留水)で終濃度1nMになるように希釈しターゲット溶液とした。
ターゲット溶液と、ラベル分子B(終濃度100nM)と、ラベル分子A(終濃度100nM)と、ラベル分子C(終濃度100nM)とを、5倍希釈となる量のSSC緩衝液(トータルボリューム40μl)中で30分60℃の温度でインキュベートしたのち、磁石を用いて粒子(ターゲット、ラベル分子A、B、及びCを含む複合体)を回収した。
【0058】
粒子をSSC緩衝液(40μl)で3回洗浄した。再びSSC緩衝液を40μl添加し粒子を、磁石を用いて一点に集めたのち、532nmのレーザー光を照射して粒子の蛍光を観察した。
【0059】
粒子は磁気で集めることができるため、ラベル分子Bを含むと考えられ、比較例1よりも強い蛍光が観察されることから、ラベル分子A、Cを含むと考えられ、ラベル分子Bとラベル分子A、Cとは直接結合(ハイブリダイゼーション)することはないため、粒子はターゲット、ラベル分子A、B、及びCを含む複合体であることが確認された。
ネガティブコントロールとして、ターゲットを添加せずに同様の試験を行った。ターゲットを用いなかったネガティブコントロールでは、蛍光は実質的に観察されなかった。
【0060】
比較例1の蛍光の観察結果、実施例1の蛍光の観察結果、実施例1のネガティブコントロールにおける蛍光の観察結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
本明細書中に記載した数値範囲の上限値及び/又は下限値は、それぞれ任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。例えば、数値範囲の上限値及び下限値を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、数値範囲の上限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、また、数値範囲の下限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0063】
以上、本実施形態を詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 ラベル分子A
11 x部
13 y部
15 z部
17 蛍光体
20 ラベル分子C
21 X部
23 Y部
30 ラベル分子B
31 w部
33 磁気微粒子
40 ターゲット
【配列表】