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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】情報管理システムおよび情報管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241022BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20241022BHJP
   G06Q 10/0832 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/06
G06Q10/0832
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022070098
(22)【出願日】2022-04-21
(65)【公開番号】P2023160050
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英貴
(72)【発明者】
【氏名】田村 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】戸次 幸司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜太
(72)【発明者】
【氏名】古賀 圭一
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-249444(JP,A)
【文献】特開2008-102899(JP,A)
【文献】特開2011-145720(JP,A)
【文献】特開2021-103586(JP,A)
【文献】川合 広明,”含有化学物質管理システム「グリーン調達マイスター」の紹介”,技報 UNISYS TECHNOLOGY REVIEW Vol.32 No.3 ,日本ユニシス株式会社,2012年11月30日,第32巻 第3号,p.99-109,ISSN:0914-9996
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を分散型台帳技術を用いて管理する情報管理システムであって、
前記情報管理システムを管理し、前記情報管理システムで管理される化学物質を示すリストを含む第1分散型台帳を有する管理装置と、
前記サプライチェーンに含まれる企業に帰属し、前記リストを含む第2分散型台帳を有する第1装置とを備え、
前記リストに含まれる化学物質は、法規制において指定された化学物質であり、
前記管理装置は、
前記法規制において新たな化学物質が指定された場合、当該化学物質を追加して前記第1分散型台帳のリストを更新し、
前記指定された化学物質を追加して前記第2分散型台帳のリストを更新することを提案するトランザクションデータを前記第1装置に送信し、
前記第1装置は、
前記トランザクションデータに基づいて前記第2分散型台帳のリストを更新し、
前記サプライチェーンにおける下流の企業に帰属する第2装置に対して、前記下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、前記第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を含むトランザクションデータを送信する、情報管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記法規制の情報を管理する外部装置から前記法規制に関する情報を取得する、請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記第2装置は、第3分散型台帳を有し、
前記第2分散型台帳は、秘匿領域と公開領域とを含み、
前記秘匿領域は、前記第1分散型台帳および前記第3分散型台帳のいずれとも共有されないトランザクションデータを格納する領域であり、
前記公開領域は、前記第1分散型台帳および前記第3分散型台帳の少なくとも一方と共有されるトランザクションデータを格納する領域であり、
前記第1装置は、
前記下流の企業に供給している製品の組成データを前記秘匿領域に格納しており、
前記組成データから、前記第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を抽出し、
前記抽出された化学物質の情報を含むトランザクションデータを前記第2装置に送信する、請求項1または請求項2に記載の情報管理システム。
【請求項4】
前記第1装置は、
複数の端末装置と通信可能に構成され、
WEBブラウザを介してアクセス可能なWEBアプリケーションを実装しており、
前記第2分散型台帳のリストが更新された場合、当該リストに追加された化学物質の情報を前記WEBアプリケーションにより開示し、
前記複数の端末装置の各々は、
前記下流の企業に供給している製品に含有されている化学物質のうちの少なくともいずれか1つの化学物質の情報を開示することについての承認権限を有し、
前記WEBブラウザを介して、承認権限を有する化学物質の情報を前記下流の企業に対して開示することを承認する、請求項1または請求項2に記載の情報管理システム。
【請求項5】
前記第1装置は、前記複数の端末装置のうちの、前記指定された化学物質の承認権限を有する端末装置から承認を得た後に、前記第2装置にトランザクションデータを送信する、請求項4に記載の情報管理システム。
【請求項6】
前記第1装置は、複数の端末装置と通信可能に構成され、
前記複数の端末装置の各々は、前記下流の企業に供給している製品に含有されている化学物質のうちの少なくともいずれか1つの化学物質の情報を開示することについての承認権限を有し、
前記第1装置は、
前記下流の企業に供給している製品に含有されている化学物質と、前記複数の端末装置の各々が有する承認権限との対応関係を示すマップを有しており、
前記第2分散型台帳のリストが更新された場合、前記マップに基づいて、前記第2分散型台帳のリストに追加された化学物質の情報を開示することについての承認権限を有する端末装置を特定し、
前記第2分散型台帳のリストに追加された化学物質の情報を開示することの承認を要求するトランザクションデータを前記特定された端末装置に送信する、請求項1または請求項2に記載の情報管理システム。
【請求項7】
前記特定された端末装置は、前記要求に応答するトランザクションデータを前記第1装置に送信する、請求項6に記載の情報管理システム。
【請求項8】
サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を分散型台帳技術を用いて管理する情報管理システムの情報管理方法であって、
前記情報管理システムは、
前記情報管理システムを管理し、前記情報管理システムで管理される化学物質を示すリストを含む第1分散型台帳を有する管理装置と、
前記サプライチェーンに含まれる企業に帰属し、前記リストを含む第2分散型台帳を有する第1装置とを備え、
前記リストに含まれる化学物質は、法規制において指定された化学物質であり、
前記情報管理方法は、
前記管理装置に、前記法規制において新たな化学物質が指定された場合、当該化学物質を追加して前記第1分散型台帳のリストを更新させるステップと、
前記管理装置に、前記指定された化学物質を追加して前記第2分散型台帳のリストを更新することを提案するトランザクションデータを前記第1装置に送信させるステップと、
前記第1装置に、前記トランザクションデータに基づいて前記第2分散型台帳のリストを更新させるステップと、
前記第1装置に、前記サプライチェーンにおける下流の企業に帰属する第2装置に対して、前記下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、前記第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を含むトランザクションデータを送信させるステップとを含む、情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分散型台帳技術を用いて情報を管理する情報管理システムおよび情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-70257号公報(特許文献1)には、完成品メーカおよび当該完成品メーカに部品を供給するサプライヤを含むサプライチェーンにおいて取引される部品の含有化学物質の情報を管理する情報管理システムが開示されている。この情報管理システムは、上記サプライヤが利用するサプライヤ端末、および、他のサプライヤが利用する他のサプライヤ端末とネットワークで接続されている。他のサプライヤは、上記サプライヤに、上記サプライヤが完成品メーカに納品する部品を構成する子部品を供給する。サプライヤは、上記部品が含有する化学物質の情報を完成品メーカに報告するために、子部品が含有する化学物質の情報の開示を他のサプライヤに要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-70257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
法規制等の改正によって規制対象となる化学物質が新たに指定された場合、サプライチェーンにおいて、上流の企業から下流の企業に上記の新たに指定された化学物質の情報が開示されることが想定される。この開示のために、上流の企業および下流の企業において、複数の処理が実行される。たとえば、下流の企業においては、法規制等の改正を監視する処理、および、新たに指定された化学物質の情報の開示を上流の企業へ要求する処理等が実行される。また、上流の企業においては、法規制等の改正を監視する処理、下流の企業からの開示要求の妥当性を検討する処理、および、下流の企業からの開示要求に応答する処理等が実行される。これらの処理は、各処理の担当者等によって人的に行なわれることが通常である。そのため、法規制等の改正に対応するために、多くのコストおよび工数が必要となっている。そこで、法規制等の改正に簡易に対応できる仕組みの構築が望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、サプライチェーンにおいて、化学物質を規制する法規制等の改正に簡易に対応できる仕組を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る情報管理システムは、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を分散型台帳技術を用いて管理する情報管理システムである。情報管理システムは、当該情報管理システムを管理し、情報管理システムで管理される化学物質を示すリストを含む第1分散型台帳を有する管理装置と、サプライチェーンに含まれる企業に帰属し、上記リストを含む第2分散型台帳を有する第1装置とを備える。上記リストに含まれる化学物質は、法規制において指定された化学物質である。管理装置は、法規制において新たな化学物質が指定された場合、当該化学物質を追加して第1分散型台帳のリストを更新し、上記指定された化学物質を追加して第2分散型台帳のリストを更新することを提案するトランザクションデータを第1装置に送信する。第1装置は、トランザクションデータに基づいて第2分散型台帳のリストを更新し、サプライチェーンにおける下流の企業に帰属する第2装置に対して、下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を含むトランザクションデータを送信する。
【0007】
上記構成によれば、法規制において新たな化学物質が指定された場合、管理装置が、第1分散型台帳のリストを更新し、そして、第2分散型台帳のリストの更新を提案するトランザクションデータを第1装置に送信する。すなわち、管理装置によって法規制がの改正が監視され、法規制の改正(新たな化学物質の指定)に応じてリストが更新されて管理される。したがって、第1装置は、法規制の改正を監視してくてもよい。また、情報管理システムの管理者である管理装置によりリストが管理されるので、リストの信頼性を高く保つことができる。さらに、リストは、分散型台帳技術を用いて管理されるので、その耐改ざん性を高めることができる。リストの信頼性および耐改ざん性が高いが故に、第1装置は、管理装置から受けた、第2分散型台帳のリストを更新することを提案するトランザクションデータに基づいて第2分散型台帳のリストを更新し、下流の企業に帰属する第2装置に対して、更新された第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を開示することができる。よって、第1装置は、第2分散型台帳のリストの更新の妥当性を検証するような人的な作業を省略することができる。人的な作業を省略することができるので、第1装置を、下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を自動で開示するように構成することができる。したがって、化学物質を規制する法規制等の改正に簡易に対応することができる。
【0008】
(2)ある実施の形態においては、管理装置は、法規制の情報を管理する外部装置から法規制に関する情報を取得する。
【0009】
上記構成によれば、管理装置は、法規制の情報を管理する外部装置から法規制に関する情報を取得し、当該取得された情報に基づいて第1分散型台帳のリストを更新することができる。
【0010】
(3)ある実施の形態においては、第2装置は、第3分散型台帳を有する。第2分散型台帳は、秘匿領域と公開領域とを含む。秘匿領域は、第1分散型台帳および第3分散型台帳のいずれとも共有されないトランザクションデータを格納する領域である。公開領域は、第1分散型台帳および第3分散型台帳の少なくとも一方と共有されるトランザクションデータを格納する領域である。第1装置は、下流の企業に供給している製品の組成データを秘匿領域に格納しており、組成データから、第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を抽出し、抽出された化学物質の情報を含むトランザクションデータを第2装置に送信する。
【0011】
上記構成によれば、下流の企業に供給している製品の組成データは、第2分散型台帳の秘匿領域に格納されているので、管理装置および第2装置に対して秘匿される。そして、第2分散型台帳の秘匿領域に組成データを格納しておくことで、オンチェーンにおいて組成データから第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を抽出することができる。したがって、情報開示の自動化設計を容易にすることが可能となる。
【0012】
(4)ある実施の形態においては、第1装置は、複数の端末装置と通信可能に構成され、WEBブラウザを介してアクセス可能なWEBアプリケーションを実装しており、第2分散型台帳のリストが更新された場合、当該リストに追加された化学物質の情報をWEBアプリケーションにより開示する。複数の端末装置の各々は、下流の企業に供給している製品に含有されている化学物質のうちの少なくともいずれか1つの化学物質の情報を開示することについての承認権限を有し、WEBブラウザを介して、承認権限を有する化学物質の情報を下流の企業に対して開示することを承認する。
【0013】
化学物質の情報を外部に開示するためには、企業内で権限を有する者から情報開示のための承認を得る必要がある。上記構成によれば、情報開示のための承認を得るシステムを、WEBアプリケーションを用いて容易に構築することができる。
【0014】
(5)ある実施の形態においては、第1装置は、複数の端末装置のうちの、指定された化学物質の承認権限を有する端末装置から承認を得た後に、第2装置にトランザクションデータを送信する。
【0015】
上記構成によれば、情報開示のための承認を得ていない状態で、化学物質の情報が開示されてしまうことを抑制することができる。
【0016】
(6)ある実施の形態においては、第1装置は、複数の端末装置と通信可能に構成されている。複数の端末装置の各々は、下流の企業に供給している製品に含有されている化学物質のうちの少なくともいずれか1つの化学物質の情報を開示することについての承認権限を有する。第1装置は、下流の企業に供給している製品に含有されている化学物質と、複数の端末装置の各々が有する承認権限との対応関係を示すマップを有しており、第2分散型台帳のリストが更新された場合、マップに基づいて、第2分散型台帳のリストに追加された化学物質の情報を開示することについての承認権限を有する端末装置を特定し、第2分散型台帳のリストに追加された化学物質の情報を開示することの承認を要求するトランザクションデータを特定された端末装置に送信する。
【0017】
化学物質の情報を外部に開示するためには、企業内で権限を有する者から情報開示のための承認を得る必要がある。上記構成によれば、複数の端末装置の各々にも分散型台帳技術を適用することで、情報開示のための承認を得るシステムを容易に構築することができる。
【0018】
(7)ある実施の形態においては、特定された端末装置は、要求に応答するトランザクションデータを第1装置に送信する。
【0019】
上記構成によれば、第1装置は、特定された端末装置から化学物質の情報を開示することの承認を得ることができる。
【0020】
(8)本開示の他の局面に係る情報管理方法は、サプライチェーンで流通する製品に含有されている化学物質の情報を分散型台帳技術を用いて管理する情報管理システムの情報管理方法である。情報管理システムは、情報管理システムを管理し、情報管理システムで管理される化学物質を示すリストを含む第1分散型台帳を有する管理装置と、サプライチェーンに含まれる企業に帰属し、上記リストを含む第2分散型台帳を有する第1装置とを備える。上記リストに含まれる化学物質は、法規制において指定された化学物質である。情報管理方法は、管理装置に、法規制において新たな化学物質が指定された場合、当該化学物質を追加して第1分散型台帳のリストを更新させるステップと、管理装置に、指定された化学物質を追加して第2分散型台帳のリストを更新することを提案するトランザクションデータを第1装置に送信させるステップと、第1装置に、トランザクションデータに基づいて第2分散型台帳のリストを更新させるステップと、第1装置に、サプライチェーンにおける下流の企業に帰属する第2装置に対して、下流の企業に供給している製品に含まれており、かつ、第2分散型台帳のリストに含まれている化学物質の情報を含むトランザクションデータを送信させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、サプライチェーンにおいて、化学物質を規制する法規制等の改正に簡易に対応できる仕組を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る情報管理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】サプライチェーンにおける企業間の取引関係を説明するための図である。
図3】分散型台帳を説明するための概念図である。
図4】ワークフロー機能を説明するための図である。
図5】プラットフォームプロバイダのハードウェア構成を概略的に示す図である。
図6】情報管理装置のハードウェア構成を概略的に示す図である。
図7】規制リストが更新された際に実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
<情報管理システムの全体構成>
図1は、本実施の形態に係る情報管理システム1の概略的な構成を示す図である。本実施の形態に係る情報管理システム1は、複数の企業を含んで構成されたサプライチェーンにおいて、サプライチェーンで流通する製品(部品、原材料等を含む)に含有されている特定の化学物質(以下「対象物質」とも称する)の情報を、分散型台帳技術を用いて管理するためのシステムである。本実施の形態においては、一例として、4つの企業(たとえば、A企業、B企業、C企業およびD企業)を含むサプライチェーンを想定する。対象物質は、情報管理システム1において、サプライチェーンにおける下流の企業への報告対象となる化学物質である。対象物質には、たとえば、REACH規則において有害性の高い物質としてSVHC(Substance of Very High Concern)に指定されている化学物質、および/または、世界共通で管理される化学物質リストであるGADSL(Global Automotive Declarable Substance List)で指定されている化学物質が含まれる。以下では、SVHCに指定されている化学物質、および/または、GADSLで指定されている化学物質を「規制物質」とも称する。なお、規制物質には、他の法規制によって指定される化学物質等が含まれてもよい。さらに、情報管理システム1に参加する企業は、任意の化学物質を対象物質に含めることも可能である。すなわち、情報管理システム1で管理される対象物質には、規制物質および参加企業が任意に指定した化学物質を含み得る。規制物質については、各企業は、下流の企業への情報伝達(報告)の義務を負う。一方、参加企業が任意に指定した化学物質については、各企業は、下流の企業への情報伝達の義務を負わない。情報管理システム1では、後述する規制リストにより規制物質が管理されている。すなわち、上流の企業は、下流の企業からの対象物質の開示要求に対して、開示要求のあった対象物質が規制物質以外の化学物質(すなわち、規制リストに登録されていない化学物質)である場合には、当該開示要求を拒否することが可能である。
【0025】
情報管理システム1は、A企業に帰属する情報管理装置10-1と、B企業に帰属する情報管理装置10-2と、C企業に帰属する情報管理装置10-3と、D企業に帰属する情報管理装置10-4と、プラットフォームプロバイダ30とを備える。本実施の形態において、A企業は、完成品メーカであり、サプライチェーンにおける所謂「川下企業」に相当する。本実施の形態において、B企業は、部品メーカであり、サプライチェーンにおける所謂「川中企業」に相当する。本実施の形態において、C企業およびD企業は、材料メーカであり、サプライチェーンにおける所謂「川上企業」に相当する。
【0026】
図2は、サプライチェーンにおける企業間の取引関係を説明するための図である。C企業は、自社製品であるC製品をB企業に供給している。D企業は、自社製品であるD製品をB企業に供給している。B企業は、C企業から購入した(供給を受けた)C製品およびD企業から購入したD製品を用いて自社製品であるB製品を製造し、当該B製品をA企業に供給している。A企業は、B企業から購入した製品を用いて自社製品であるA製品を製造し、A製品をエンドユーザに販売している。A企業は、たとえば自動車メーカであってもよい。
【0027】
なお、川中企業には商社が含まれてもよい。たとえば、A企業とB企業の間、B企業とC企業の間、および/またはB企業とD企業の間には、商社が介在してもよい。
【0028】
各企業には、自社が販売する製品に含有されている対象物質の情報を管理することが求められる。各企業は、サプライチェーンにおける上流の企業から、購入製品に含有されている対象物質の情報の開示を受け、自社が販売する製品に含有されている対象物質の情報を管理する。たとえば、A企業は、B企業からB製品に含有されている対象物質の情報を受けて、当該情報を用いてA製品に含有されている対象物質の情報を管理する。
【0029】
本実施の形態に係る情報管理システム1では、直接の取引関係がある企業間でのみ情報の伝達が行なわれる。たとえば、製品の需給関係がある川下企業(A企業)と川中企業(B企業)とは直接の取引関係がある。製品の需給関係がある川中企業(B企業)と川上企業(C企業,D企業)とは直接の取引関係がある。一方、川下企業(A企業)と川上企業(C企業,D企業)とは直接の取引関係がない。すなわち、川下企業(A企業)と川中企業(B企業)との間、および、川中企業(B企業)と川上企業(C企業,D企業)との間では情報の伝達が行なわれる一方で、川下企業(A企業)と川上企業(C企業,D企業)との間では情報の伝達は行なわれない。なお、たとえば、A企業とB企業との間に商社であるE企業が介在する場合には、A企業とE企業との間、および、E企業とB企業との間で情報の伝達が行なわれ、A企業とB企業との間では情報の伝達が行なわれない。
【0030】
たとえば、B企業とC企業との間でC製品の取引が開始されると、C製品に含有されている対象物質のうちの少なくとも規制物質の情報がC企業からB企業に提供される。具体的には、C製品に含有されている対象物質のうちの規制物質の情報は、C企業から自発的にB企業に提供されたり、B企業からの要求に応じてC企業からB企業に提供されたりする。一方、C製品に含有されている対象物質のうちの規制物質以外の化学物質の情報は、C企業が自発的にB企業に提供する場合、または、B企業からの要求にC企業が応じる場合に、C企業からB企業に提供される。すなわち、C製品に含有されている対象物質のうちの規制物質以外の化学物質の情報については、C企業からB企業に提供されないこともあり得る。これは、A企業とB企業との間、B企業とD企業との間においても同様である。B企業とD企業との間でD製品の取引が開始されると、D製品に含有されている対象物質のうちの少なくとも規制物質の情報がD企業からB企業に提供される。A企業とB企業との間でB製品の取引が開始されると、B製品に含有されている対象物質のうちの少なくとも規制物質の情報がB企業からA企業に提供される。このように、各企業は、直接の取引関係がある上流の企業から購入製品に含有されている対象物質のうちの少なくとも規制物質の情報の提供を受けて、当該購入製品を含む自社製品に含有されている対象物質の情報を管理する。各企業間での情報の伝達は、情報管理装置10-1~10-4およびプラットフォームプロバイダ30を含んで形成された分散型台帳ネットワーク2(図1)において行なわれる。
【0031】
再び図1を参照して、情報管理装置10-1~10-4の各々には、分散型台帳基盤のソフトウェアが導入されている。分散型台帳基盤は、トランザクションデータの共有範囲を当事者間に限定することを可能にするスマートコントラクトを含んで構成されている。それゆえに、情報管理装置10-1~10-4がそれぞれ有する分散型台帳161-1~161-4は、互いに異なるトランザクションデータを保持する。分散型台帳基盤としては、たとえばCORDA(登録商標)を採用してもよい。なお、分散型台帳161-1~161-4を総称して「分散型台帳161-N」と記載する場合がある。
【0032】
導入された分散型台帳基盤のソフトウェアが機能することにより、情報管理装置10-1~10-4に含まれる制御装置110-1~110-4(後述の図6)が、それぞれノード111-1~111~4として機能する。ノード111-1~111-4がネットワークNWを介して相互に通信することにより、分散型台帳ネットワーク2が形成されている。なお、情報管理装置10-1~10-4は、基本的には同様の構成を有する。そのため、情報管理装置10-1~10-4を特に区別しない場合には、「情報管理装置10-N」と記載する場合がある。ノード111-1~111-4についても、ノード111-1~111-4を特に区別しない場合には、「ノード111-N」と記載する場合がある。
【0033】
図3は、分散型台帳161-Nを説明するための概念図である。図3には、情報管理装置10-1~10-4にそれぞれ記憶されている分散型台帳161-1~161-4の互いの関係が概略的に示されている。
【0034】
分散型台帳161-1と分散型台帳161-2とは、A企業の情報管理装置10-1(ノード111-1)とB企業の情報管理装置10-2(ノード111-2)との間で送受信されたトランザクションデータを共有している(領域D1)。領域D1には、たとえば、ノード111-1,111-2間で送受信された、B製品に含有されている対象物質の情報を含むトランザクションデータが含まれている。なお、領域D1には、たとえば、ノード111-1,111-2間で送受信された、B製品に含有されている対象物質を問い合わせるためのトランザクションデータ、および、問い合わせに対する回答のトランザクションデータ、等も含まれている。
【0035】
分散型台帳161-2と分散型台帳161-3とは、B企業の情報管理装置10-2(ノード111-2)とC企業の情報管理装置10-3(ノード111-3)との間で送受信されたトランザクションデータを共有している(領域D2)。領域D2には、たとえば、ノード111-2,111-3間で送受信された、C製品に含有されている対象物質の情報を含むトランザクションデータが含まれている。なお、領域D2には、たとえば、ノード111-2,111-3間で送受信された、C製品に含有されている対象物質を問い合わせるためのトランザクションデータ、および、問い合わせに対する回答のトランザクションデータ、等も含まれている。
【0036】
分散型台帳161-2と分散型台帳161-4とは、B企業の情報管理装置10-2(ノード111-2)とD企業の情報管理装置10-4(ノード111-4)との間で送受信されたトランザクションデータを共有している(領域D3)。領域D3には、たとえば、ノード111-2,111-4間で送受信された、D製品に含有されている対象物質の情報を含むトランザクションデータが含まれている。なお、領域D3には、たとえば、ノード111-2,111-4間で送受信された、D製品に含有されている対象物質を問い合わせるためのトランザクションデータ、および、問い合わせに対する回答のトランザクションデータ、等も含まれている。
【0037】
たとえば、サプライチェーンにおける川中企業であるB企業からすると、B製品に含まれているC製品およびD製品を、どの企業から仕入れているかの情報をA企業に知られたくない場合がある。トランザクションデータには送信元および送信先のノードの情報等が含まれている。そのため、たとえば、分散型台帳ネットワーク2を形成する全てのノードにトランザクションデータがブロードキャストされると、A企業にC製品およびD製品の仕入れ先を知られ得る。本実施の形態に係る情報管理システム1では、トランザクションデータの共有範囲が当事者間に限定されることで、直接の取引関係がある企業間以外に取引先の情報(企業名等)が開示されることを抑制することができる。
【0038】
再び図1を参照して、情報管理システム1における分散型台帳ネットワーク2は、コンソーシアム/プライベート型のネットワークである。プラットフォームプロバイダ30は、情報管理システム1の管理者として機能する。プラットフォームプロバイダ30は、その機能として、運用機能40と基盤機能50とを有する。運用機能40は、ノード41、リスト管理部42(図5)および分散型台帳43を含み、分散型台帳ネットワーク2において、後述する規制リストを登録、更新するノード機能として機能する。運用機能40についての詳細は後述する。なお、プラットフォームプロバイダ30は、本開示に係る「管理装置」の一例に相当する。
【0039】
基盤機能50は、ドアマンノード51、ネットワークマップノード53およびノータリノード55を含み、分散型台帳ネットワーク2を管理するプラットフォーマーとして機能する。
【0040】
ドアマンノード51は、分散型台帳ネットワーク2への参加を希望するノード111-Nおよびノード41からの参加申請の承認を行なう。また、ドアマンノード51は、ノード111-Nおよびノード41への証明書の発行を行なう。分散型台帳ネットワーク2に参加するノード111-Nおよびノード41は、参加時(たとえば、初回起動時)に秘密鍵および公開鍵のペアを作成し、証明書付与の要求をドアマンノード51に送信する。ドアマンノード51は、予め定められた所定の条件を検証し、証明書付与の要求があったノード111-Nおよびノード41に対して証明書を発行する。
【0041】
ネットワークマップノード53は、ドアマンノード51によって証明書が発行された(すなわち、分散型台帳ネットワーク2への参加が許可された)ノード111-Nおよびノード41の情報(たとえばIPアドレス)を記憶する。ネットワークマップノード53は、分散型台帳ネットワーク2において、DNS(Domain Name System)として機能する。分散型台帳ネットワーク2を形成するノード111-1~111-4およびノード41は、たとえば、ネットワークマップノード53から提供された情報に基づいて、トランザクションデータの送信先を認識する。
【0042】
ノータリノード55は、トランザクションデータにファイナリティを与える。ノード111-Nおよびノード41は、トランザクションデータを生成した際に、トランザクションデータのハッシュ値(トランザクションID)およびトランザクションデータのアウトプットのインデックスを含むトランザクションデータをノータリノード55に送る。このトランザクションデータには、トランザクションデータの送信元のノード(たとえばB企業のノード111-2)とトランザクションデータの送信先のノード(たとえばA企業のノード111-1)との署名を含んでいる。ノータリノード55は、トランザクションIDおよびアウトプットのインデックスに基づいてトランザクションデータを検証した後、トランザクションデータに署名を付加し、当該トランザクションデータを返送する。ノータリノード55は、署名したトランザクションデータを順番に保持することで、トランザクションデータの順番を保証する。たとえば、ノータリノード55は、トランザクションIDおよびアウトプットのインデックスをキーとし、かつ、トランザクションID、入力のインデックスおよびピア(ノード)情報をバリューとしたマップを保持してもよい。たとえば、ノータリノード55は、マップの中に一致するキーがなければ、当該トランザクションデータをマップに追加して、トランザクションデータに署名を付加するように構成されてもよい。ノータリノード55は、マップの中に一致するキーがあれば、エラーを返すように構成されてもよい。
【0043】
ノード111-Nおよびノード41は、トランザクションデータを生成する。上述のとおり、分散型台帳基盤のソフトウェアが機能することにより、情報管理装置10-Nに含まれる制御装置110-N(図6)がノード111-Nとして機能する。また、分散型台帳基盤のソフトウェアが機能することにより、プラットフォームプロバイダ30に含まれる制御装置31(図5)がノード41として機能する。
【0044】
情報管理システム1では、プラットフォームプロバイダ30(運用機能40)が法規制等の改正(すなわち、規制物質の更新)を監視する。具体的には、プラットフォームプロバイダ30は、たとえば、SVHCの更新、および/または、GADSLの更新を監視する。これらの更新を検知した場合、すなわち、SVHCに新たな化学物質が指定された場合、および/または、GADSLで新たな化学物質が指定された場合に、プラットフォームプロバイダ30は規制物質の追加を検知する。規制物質の追加を検知すると、プラットフォームプロバイダ30のノード41は、規制物質の追加(規制リストの更新)を提案するトランザクションデータを全てのノード111-1~111-4に送信する。
【0045】
情報管理装置10-Nは、規制リストが更新された場合、更新により追加された規制物質の情報を含む製品組成データを下流の企業に開示する。各企業において、製品組成データは重要な情報である。新たに規制リストに追加された規制物質の情報を外部に開示するためには、企業内で承認を得る必要がある。情報管理装置10-Nは、規制物質の情報開示の承認を得るためのプロセスを自動化するためのワークフロー機能を備えている。なお、ワークフロー機能は、規制物質以外の化学物質の情報開示にも適用することが可能である。
【0046】
図4は、ワークフロー機能を説明するための図である。図4を参照して、情報管理装置10-Nには、複数のクライアント装置12-Nが無線通信可能に、あるいは有線通信可能に接続されている。情報管理装置10-Nと、有線通信が可能なクライアント装置12-Nとは、バス11-Nに接続されている。
【0047】
複数のクライアント装置12-Nの各々は、情報管理装置10-Nを管理する企業と同一の、あるいは関連する企業に帰属する端末装置である。複数のクライアント装置12-Nの各々は、たとえば、互いに異なる部署に帰属している。具体的に、B企業の情報管理装置10-2を例に説明すると、複数のクライアント装置12-Nの各々は、たとえばB企業内の互いに異なる部署に帰属している。
【0048】
法規制等の改正により、新たな規制物質が指定された場合、当該新たな規制物質の情報を外部(下流の企業)に開示することについて、企業内で承認を得る必要がある。化学物質の情報を開示することを承認する権限を有する部署は、化学物質毎に異なり得る。
【0049】
情報管理装置10-Nは、WEBアプリケーション(以下、単に「WEBアプリ」とも称する)を実装している。複数のクライアント装置12-Nの各々は、WEBブラウザを用いて、WEBアプリを利用する。本実施の形態におけるワークフロー機能は、WEBアプリを利用することにより実現される。情報管理装置10-Nは、ワークフロー機能を開始する場合、クライアント装置群(複数のクライアント装置12-N)にワークフローの開始を通知する。
【0050】
製品の組成に含まれる化学物質毎に、承認権限を有する部署(承認部署)のクライアント装置12-Nが予め設定されている。複数のクライアント装置12-Nの各々は、ワークフローの開始通知を受けた後、ワークフローの終了通知を受けるまで、所定周期毎にWEBアプリを参照する。情報管理装置10-Nは、新たに指定された規制物質の情報を、WEBアプリにより複数のクライアント装置12-Nに開示する。複数のクライアント装置12-Nの各々は、新たに指定された規制物質の情報開示の承認を行なう承認部署が自部門であるか否かを判断する。承認部署であるクライアント装置12-Nは、自身が承認者である規制物質が新たに指定された場合、所定の承認処理の実施後、自社の製品が含有する上記規制物質の情報を下流の企業に開示することを承認する。所定の承認処理は、たとえば、自社製品の規制物質の含有量が報告閾値以上であるかを確認する処理を含んでもよい。報告閾値は、製品の単位量あたりに含まれる対象物質の割合(含有率)の閾値である。たとえば、法規制等により所定値が定められており、上流の企業は、製品の規制物質の含有量が所定値以上である場合に、下流の企業に当該規制物質の情報を開示する義務が生じる。報告閾値は、上記の所定値とすることができる。所定の承認処理は、クライアント装置12-Nに実装されたプログラムによって自動で、あるいは、クライアント装置12-Nの管理部署の管理者(従業員)によって手動で実行されてもよい。
【0051】
情報管理装置10-Nは、承認部署のクライアント装置12-Nにより承認が行なわれたことを検知すると、クライアント装置群(複数のクライアント装置12-N)にワークフローの終了を通知する。これによってワークフロー機能が終了する。
【0052】
情報管理装置10-Nのノード111-Nは、承認が得られた規制物質の情報を含む製品組成データを報告するトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータを下流の企業のノードに送信する。これによって、規制物質の情報が下流の企業に報告される。なお、新たに規制物質が指定された場合、上流の企業から下流の企業へは、当該規制物質の情報のみが報告されてもよいし、当該規制物質の情報を追加した製品組成データが報告されてもよい。
【0053】
<ハードウェア構成>
図5は、プラットフォームプロバイダ30のハードウェア構成を概略的に示す図である。プラットフォームプロバイダ30は、制御装置31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、通信装置34と、記憶装置35と、入力装置36と、表示装置37とを含む。制御装置31、ROM32、RAM33、通信装置34、記憶装置35、入力装置36、および、表示装置37は、バス39に接続されている。
【0054】
制御装置31は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む集積回路によって構成される。制御装置31は、ROM32に格納されている各種プログラムをRAM33に展開して実行する。各種プログラムには、たとえば、分散型台帳基盤のソフトウェアが含まれる。RAM33は、ワーキングメモリとして機能し、各種プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。制御装置31は、ROM32に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の処理を実行する。
【0055】
通信装置34は、外部の機器との通信が可能に構成される。外部の機器は、たとえば、分散型台帳ネットワーク2に含まれる情報管理装置10-Nを含む。通信装置34と外部の機器との通信は、インターネット等を用いて行なわれる。また、外部の機器には、たとえば、インターネット上に規制物質を公表する外部団体のサーバ装置等が含まれる。
【0056】
入力装置36は、入力デバイスを含む。入力デバイスは、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、および/または、ユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。
【0057】
表示装置37は、ディスプレイを含む。表示装置37は、制御装置31からの制御信号に従って、ディスプレイに各種の画像を表示させる。ディスプレイは、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、または、その他の表示機器である。
【0058】
記憶装置35は、たとえば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等の記憶媒体を含んで構成される。記憶装置35は、分散型台帳43を記憶する。分散型台帳43および情報管理装置10-Nの分散型台帳161-Nは、たとえば、DAG(Directed Acyclic Graph)構造を有する分散型台帳である。分散型台帳43および分散型台帳161-Nに含まれるトランザクションデータは、半順序型のデータモデルを形成する。本実施の形態では、たとえば、1つのトランザクションデータが1つのブロックを形成する。
【0059】
分散型台帳43は、規制リスト350を含む。規制リスト350は、規制物質(たとえば、SVHCに指定されている化学物質、および/または、GADSLで指定されている化学物質)を示す情報である。規制リスト350には、1つ以上の規制物質の情報が含まれている。規制物質の情報には、たとえば、CAS番号、物質名称、規制更新日、および、報告閾値が含まれる。CAS番号は、米国化学会のCAS(Chemical Abstracts Service)における化学物質登録システムで付与される化学物質に固有の識別番号である。物質名称は、対象物質の名称である。規制更新日は、対象物質が規制リスト350に追加された日(下流の企業への報告対象となった日)、あるいは、法規制等によって規制された日(たとえばSVHCに指定された日)である。報告閾値は、製品の単位量あたりに含まれる対象物質の割合(含有率)の閾値である。含有率が報告閾値以上である場合、その製品についての対象物質の情報が下流の企業への報告対象となる。含有率が報告閾値未満である場合、対象物質の情報は報告対象とならない。
【0060】
また、記憶装置35は、制御装置31のノード41により生成される秘密鍵を記憶してもよい。
【0061】
制御装置31は、運用機能40に関するプログラムを実行することにより、ノード41およびリスト管理部42として機能する。
【0062】
ノード41は、初回起動時には、所定の規格に準拠した秘密鍵および公開鍵を生成する。公開鍵は、たとえば、基盤機能50のネットワークマップノード53に送られる。また、ノード41は、トランザクションデータを生成する機能を有する。ノード41は、秘密鍵を用いて電子署名を生成し、トランザクションデータに付加する。秘密鍵は、たとえば、記憶装置35、あるいは、図示しない他の記憶装置に記憶されている。また、ノード41は、他のノードが提案したトランザクションデータを承認する機能を有する。ノード41は、他のノードが提案したトランザクションデータを検証し、検証結果に問題がなければ当該トランザクションデータに電子署名を付して、当該トランザクションデータを他のノードに返信する。
【0063】
リスト管理部42は、規制リスト350を管理する。リスト管理部42は、通信装置34を介して、所定の周期で外部と通信し、法規制等の改正(規制物質の追加)を監視している。具体的には、リスト管理部42は、通信装置34を介して、所定の周期で外部団体のサーバ装置と通信することにより、SVHCに新たな規制物質が指定されていないか、あるいは、GADSLで新たな化学物質が指定されていないかを監視する。リスト管理部42は、たとえば、法規制等の改正によりSVHCに新たな化学物質が追加されたこと(規制物質が追加されたこと)を検知すると、当該規制物質を規制リスト350に追加することをノード41に要求する。
【0064】
ノード41は、リスト管理部42から規制リスト350の更新要求を受けると、新たに指定された規制物質を規制リスト350に追加するトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータに署名する。これにより、新たに指定された規制物質が規制リスト350に追加されて、規制リスト350が更新される。次いで、ノード41は、分散型台帳ネットワーク2に参加する全てのノード111-1~111-4に対して、分散型台帳ネットワーク2に参加する全てのノード111-1~111-4に対して、署名済みの上記トランザクションデータを送信する。換言すれば、ノード41は、分散型台帳ネットワーク2に参加する全てのノード111-1~111-4に対して、新たに指定された規制物質を、情報管理装置10-Nの規制リスト165-N(図6)に含めることを提案するトランザクションデータを送信する。このトランザクションデータを受信したノード111-Nが、当該トランザクションデータを承認することにより、トランザクションデータがノード111-Nの分散型台帳161-Nに追加され、情報管理装置10-Nの規制リスト165-Nが更新される。
【0065】
制御装置31は、基盤機能50に関するプログラムを実行することにより、ドアマンノード51、ネットワークマップノード53、および、ノータリノード55として機能する。これらの機能については上述のとおりであるので、繰り返し説明しない。
【0066】
図6は、情報管理装置10-Nのハードウェア構成を概略的に示す図である。情報管理装置10-Nは、制御装置110-Nと、ROM120-Nと、RAM130-Nと、通信装置140-Nと、記憶装置150-Nと、記憶装置160-Nと、入力装置170-Nと、表示装置180-Nとを含む。制御装置110-N、ROM120-N、RAM130-N、通信装置140-N、記憶装置150-N、記憶装置160-N、入力装置170-N、および、表示装置180-Nは、バス190-Nに接続されている。
【0067】
制御装置110-Nは、たとえば、CPUを含む集積回路によって構成される。制御装置110-Nは、ROM120-Nに格納されている各種プログラムをRAM130-Nに展開して実行する。各種プログラムには、たとえば、分散型台帳基盤のソフトウェアが含まれる。RAM130-Nは、ワーキングメモリとして機能し、各種プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。制御装置110-Nは、ROM120-Nに記憶されたプログラムを実行することにより、各種の処理を実行する。
【0068】
通信装置140-Nは、外部の機器との通信が可能に構成される。外部の機器は、たとえば、分散型台帳ネットワーク2に含まれる他の情報管理装置およびプラットフォームプロバイダ30等を含む。通信装置140-Nと外部の機器との通信は、たとえば、インターネット等を用いて行なわれる。
【0069】
入力装置170-Nは、入力デバイスを含む。入力デバイスは、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、および/または、ユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。
【0070】
表示装置180-Nは、ディスプレイを含む。表示装置180-Nは、制御装置110-Nからの制御信号に従って、ディスプレイに各種の画像を表示させる。ディスプレイは、たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または、その他の表示機器である。
【0071】
記憶装置150-Nは、たとえば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等の記憶媒体を含んで構成される。記憶装置150-Nに記憶される情報は、オフチェーン(分散型台帳ネットワーク2の外部)で管理される。記憶装置150-Nは、自社製品の製品組成データ151-N、顧客リスト152-N、および、秘密鍵153-Nを記憶する。たとえば、A企業の情報管理装置10-1であれば、製品組成データ151-1には、A製品の組成データが含まれる。たとえば、B企業の情報管理装置10-2であれば、製品組成データ151-2には、B製品の組成データが含まれる。たとえば、C企業の情報管理装置10-3であれば、製品組成データ151-3には、C製品の組成データが含まれる。たとえば、D企業の情報管理装置10-4であれば、製品組成データ151-4には、D製品の組成データが含まれる。
【0072】
顧客リスト152-Nは、情報の開示を許可する企業の情報を含む。具体的には、顧客リスト152-Nには、サプライチェーンにおいて直接の取引のある下流の企業が登録されている。たとえば、A企業の情報管理装置10-1であれば、顧客リスト152-1には、いずれの企業も登録されていない。たとえば、B企業の情報管理装置10-2であれば、顧客リスト152-2には、A企業が登録されている。たとえば、C企業の情報管理装置10-3であれば、顧客リスト152-3には、B企業が登録されている。たとえば、D企業の情報管理装置10-4であれば、顧客リスト152-4には、B企業が登録されている。顧客リスト152-Nに登録されていない企業からの問い合わせに対しては、回答が行なわれない。なお、情報管理装置10-1の記憶装置150-1には、顧客リスト152-1が記憶されていなくてもよい。
【0073】
また、記憶装置150-Nは、制御装置110-Nにより生成された秘密鍵153-Nおよび公開鍵(図示せず)を記憶する。また、記憶装置150-Nは、プラットフォームプロバイダ30のドアマンノード51から発行された証明書(図示せず)を記憶する。
【0074】
記憶装置160-Nは、たとえば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等の記憶媒体を含んで構成される。記憶装置160-Nに記憶される情報は、オンチェーン(分散型台帳ネットワーク2の内部)で管理される。記憶装置160-Nは、分散型台帳161-Nを記憶する。
【0075】
分散型台帳161-Nは、秘匿領域162-Nと、公開領域163-Nとを有する。秘匿領域162-Nは、他のいずれのノードとも共有されないトランザクションデータが記憶される領域、すなわち、オンチェーンにおいて自身のみが保有するトランザクションデータが記憶される領域である。公開領域163-Nは、オンチェーンにおいて、少なくとも1つの他のノードと共有されるトランザクションデータが記憶される領域である。
【0076】
秘匿領域162-Nは、製品組成データ164-Nを記憶する。製品組成データ164-Nは、記憶装置150-Nに記憶されている製品組成データ151-Nと同様のものである。制御装置110-Nは、製品組成データ151-Nを記憶装置150-Nに記憶させると、オンチェーンの秘匿領域162-N(分散型台帳161-Nの秘匿領域162-N)にも製品組成データ151-Nと同じ内容の製品組成データ164-Nを記憶させる。オンチェーンの秘匿領域162-Nにも製品組成データ151-Nと同じ内容の製品組成データ164-Nを記憶させるのは、オンチェーンにおいて、ノード111-N(詳細には、本実施の形態では、ノード111-Nおよび管理機能部112-N)の処理によって、新たに規制リスト165-Nに追加された化学物質(規制物質)の情報を製品組成データ164-Nから自動的に抜き出せるようにするためである。たとえば、ノード111-Nは、オフチェーンに記憶されている製品組成データ151-Nから新たに指定された規制物質の情報を抽出することはできない。オフチェーンに記憶されている製品組成データ151-Nから新たに指定された規制物質の情報を抽出するためには、たとえば、抽出するための構成を別途追加したり、人的な処理の介入が必要となる。オンチェーンに製品組成データ164-Nを記憶させることにより、ノード111-Nは、製品組成データ164-Nから新たに指定された規制物質の情報を抽出することができる。これによって、情報管理システム1において、プラットフォームプロバイダ30による規制リスト350の更新から、規制リスト350に応じて規制リスト165-Nを更新し、規制リスト165-Nに基づいて製品組成データ164-Nから新たに指定された規制物質の情報を抽出するまでの一連の処理を自動化することが可能となる。
【0077】
公開領域163-Nは、規制リスト165-Nおよび公開データ166-Nを記憶する。規制リスト165-Nは、プラットフォームプロバイダ30による規制リスト350の更新に伴なって更新される。プラットフォームプロバイダ30のノード41は、法規制等の改正により新たに指定された規制物質を規制リスト350に追加して規制リスト350を更新すると、上記新たに指定された規制物質を規制リスト165-Nに追加して規制リスト165-Nを更新することを提案するトランザクションデータを情報管理装置10-Nのノード111-Nに送信する。ノード111-Nが当該トランザクションデータを承認することにより、当該トランザクションデータが分散型台帳161-Nに追加されて、規制リスト165-Nが更新される。
【0078】
公開データ166-Nは、製品組成データ164-Nから規制リスト165-Nに含まれている規制物質の情報を抜き出して作成される。すなわち、公開データ166-Nは、製品組成データ164-Nに含まれており、かつ、規制リスト165に含まれている化学物質の情報である。たとえば、公開データ166-Nを含むトランザクションデータが下流の企業のノードに送信される。
【0079】
制御装置110-Nは、ROM120-Nに記憶されたプログラムを実行することにより、ノード111-N、管理機能部112-N、および、ワークフロー機能部113-Nとして機能する。
【0080】
ノード111-Nは、初回起動時には、所定の規格に準拠した秘密鍵153-Nおよび公開鍵を生成する。秘密鍵153-Nは、記憶装置150-Nに記憶される。公開鍵は、たとえば、プラットフォームプロバイダ30のネットワークマップノード53に送られる。また、ノード111-Nは、トランザクションデータを生成する機能を有する。ノード111-Nは、秘密鍵153-Nを用いて電子署名を生成し、トランザクションデータに付加する。また、ノード111-Nは、他のノードが提案したトランザクションデータを承認する機能を有する。ノード111-Nは、他のノードが提案したトランザクションデータを検証し、検証結果に問題がなければ当該トランザクションデータに電子署名を付して、当該トランザクションデータを他のノードに返信する。
【0081】
プラットフォームプロバイダ30のノード41から、法規制等の改正により新たに指定された規制物質を規制リスト165-Nに含めることを提案するトランザクションデータを受信すると、ノード111-Nは、トランザクションデータの検証の後、当該トランザクションデータを承認する。そして、ノード111-Nは、当該トランザクションデータを分散型台帳161-Nに格納する。これによって、新たに指定された規制物質が規制リスト165-Nに追加されて、規制リスト165-Nが更新される。
【0082】
管理機能部112-Nは、影響確認処理と、顧客情報取得処理とを実行する。管理機能部112-Nは、ノード111-Nによる規制リスト165-Nの更新を検知する。管理機能部112-Nは、更新によって規制リスト165-Nに追加された規制物質の情報を下流の企業に開示する必要がある否かを確認するための処理(影響確認処理)を実行する。具体的には、管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nに追加された規制物質を製品組成データ164-Nに照会させ、製品組成データ164-Nの上記追加された規制物質の含有率が報告閾値以上であるか否かを確認する。管理機能部112-Nは、製品組成データ164-Nの上記規制物質の含有率が報告閾値以上である場合には、上記規制物質の情報を下流の企業に開示する必要があると判断する。すなわち、管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nの更新が自身に影響を与えることを確認する。管理機能部112-Nは、製品組成データ164-Nの上記規制物質の含有率が報告閾値未満である場合には、上記規制物質の情報を下流の企業に開示する必要がないと判断する。すなわち、管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nの更新が自身に影響を与えないことを確認する。
【0083】
管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nの更新が自身に影響を与える場合、下流の企業の情報(顧客情報)を記憶装置150-Nから読み出す処理(顧客情報取得処理)を実行する。具体的には、管理機能部112-Nは、記憶装置150-Nに記憶された顧客リスト152-Nを参照することにより顧客情報を読み出す。管理機能部112-Nは、下流の企業に報告する規制物質の情報をワークフロー機能部113-Nに通知する。なお、管理機能部112-Nの影響確認処理を実行する機能は、ノード111-Nにもたせることも可能である。また、管理機能部112-Nの顧客情報取得処理を実行する機能も、ノード111-Nにもたせることも可能である。この場合には、たとえば、顧客リスト152-Nと同様の情報を記憶装置160-Nに記憶されている分散型台帳161-Nの秘匿領域162-Nにも記憶させておく。すなわち、顧客リスト152-Nと同様の情報をオンチェーンにも記憶しておく。これにより、ノード111-Nは、分散型台帳161-Nから顧客情報を読み出すことができる。
【0084】
ワークフロー機能部113-Nは、クライアント装置群(図4)にワークフローの開始および終了を通知する。ワークフロー機能部113-Nは、ワークフロー機能によって承認部署のクライアント装置12-Nから規制リスト165-Nに追加された規制物質の情報を開示することの承認が得られると、その旨を管理機能部112-Nに通知する。
【0085】
管理機能部112-Nは、ワークフロー機能部113-Nから承認通知を受けると、ノード111-Nに、公開データ166-Nの更新を要求する。
【0086】
ノード111-Nは、公開データ166-Nの更新要求を受けると、承認が得られた規制物質の情報を追加して公開データ166-Nを更新する。そして、ノード111-Nは、公開データ166-Nを含むトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータを対象の下流の企業のノードに送信する。当該トランザクションデータを下流の企業のノードが承認することによって、下流の企業に公開データ166-Nが開示される。すなわち、追加された規制物質の情報が下流の企業に報告される。なお、ノード111-Nは、承認が得られた規制物質の情報を含むトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータを対象の下流の企業のノードに送信してもよい。
【0087】
<シーケンス図>
図7は、規制リストが更新された際に実行される処理の流れを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示される処理は、プラットフォームプロバイダ30のノード41が法規制等の改正により新たな規制物質が指定されたこと(たとえば、SVHCに新たな化学物質が指定されたこと、および/または、GADSLで新たな化学物質が指定されたこと)を検知した際に開始される。
【0088】
S1において、プラットフォームプロバイダ30のノード41は、法規制等の改正により新たな規制物質が指定されたことを検知し、規制リスト350を更新する。プラットフォームプロバイダ30のノード41は、情報管理装置10-1~10-4のノード111-1~111-4に、規制リスト165-1~165-4の更新を提案するトランザクションデータ送信する。
【0089】
S2において、情報管理装置10-Nのノード111-Nは、プラットフォームプロバイダ30のノード41から受けたトランザクションデータを承認し、規制リスト165-Nを更新する。
【0090】
S3において、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、ノード111-Nによる規制リスト165-Nの更新を検知する。規制リスト165-Nの更新の検知は、管理機能部112-Nが規制リスト165-Nを監視することによって実現されてもよいし、ノード41から管理機能部112-Nに規制リスト165-Nを更新した旨が通知されることにより実現されてもよい。
【0091】
S4において、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nが更新された旨をワークフロー機能部113-Nに通知する。
【0092】
S5において、情報管理装置10-Nのワークフロー機能部113-Nは、ワークフローの開始をクライアント装置群に通知する。クライアント装置群に含まれる複数のクライアント装置12-Nの各々は、開始通知を受けると所定周期毎にWEBアプリを参照する。
【0093】
S6において、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nの更新による影響を確認する。具体的には、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nに追加された規制物質の情報を下流の企業に開示する必要がある否かを確認するための処理である影響確認処理を実行する。情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nに追加された規制物質を製品組成データ164-Nに照会させ、上記追加された規制物質の含有率が報告閾値以上であるか否かを確認する。情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、製品組成データ164-Nの上記規制物質の含有率が報告閾値以上である場合には、上記規制物質の情報を下流の企業に開示する必要があると判断し、処理をS7に進める。一方、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、製品組成データ164-Nの上記規制物質の含有率が報告閾値未満である場合には、上記規制物質の情報を下流の企業に開示する必要がないと判断する。この場合には、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、規制リスト165-Nの更新が自身に影響を与えないことをワークフロー機能部113-Nに通知する。これによって、ワークフロー機能部113-Nは、ワークフローの終了をクライアント装置群に通知する。
【0094】
S7において、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、報告対象である下流の企業の情報(顧客情報)を記憶装置150-Nから読み出す。具体的には、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、記憶装置150-Nに記憶された顧客リスト152-Nを参照することにより顧客情報を読み出す。なお、S7を実行する機能をノード111-Nにもたせる場合には、顧客リスト152-Nと同様の情報が分散型台帳161-Nの秘匿領域162-Nに記憶されている。ノード111-Nは、分散型台帳161-Nの秘匿領域162-Nから顧客情報を読み出す。
【0095】
S8において、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、下流の企業に報告する規制物質の情報をワークフロー機能部113-Nに通知する。
【0096】
S9において、情報管理装置10-Nのワークフロー機能部113-Nは、S8で通知された規制物質(すなわち、法規制等の改正により新たに指定された規制物質)の情報を、WEBアプリで開示する。
【0097】
S10において、複数のクライアント装置12-Nの各々は、WEBアプリを参照し、追加された規制物質の情報を確認する。
【0098】
S11において、複数のクライアント装置12-Nのうちの、追加された規制物質の承認部署のクライアント装置12-Nは、所定の承認処理の実施後、WEBアプリで開示されている上記規制物質の情報を下流の企業に開示(公開)することを承認する。
【0099】
S12において、承認部署のクライアント装置12-Nは、規制物質の情報の開示を承認したことを情報管理装置10-Nに通知する。
【0100】
S13において、情報管理装置10-Nのワークフロー機能部113-Nは、クライアント装置12-Nから規制物質の情報開示を承認したことを示す通知を受けると、その旨を管理機能部112-Nに通知する。
【0101】
S14において、情報管理装置10-Nのワークフロー機能部113-Nは、ワークフローの終了をクライアント装置群に通知する。クライアント装置群に含まれる複数のクライアント装置12-Nの各々は、終了通知を受けるとWEBアプリの参照を終了する。
【0102】
S15において、情報管理装置10-Nの管理機能部112-Nは、ノード111-Nに公開データ166-Nの更新を要求する。
【0103】
S16において、情報管理装置10-Nのノード111-Nは、承認が得られた規制物質の情報を追加して公開データ166-Nを更新する。そして、ノード111-Nは、公開データ166-Nを含むトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータを対象の下流の企業のノードに送信する。当該トランザクションデータを下流の企業のノードが承認することによって、下流の企業に公開データ166-Nが開示される。すなわち、追加された規制物質の情報が下流の企業に開示される。なお、S16において、ノード111-Nは、承認が得られた規制物質の情報を含むトランザクションデータを生成し、当該トランザクションデータを対象の下流の企業のノードに送信してもよい。
【0104】
以上のように、本実施の形態に係る情報管理システム1においては、プラットフォームプロバイダ30により法規制等の改正が監視される。よって、情報管理装置10-Nは、法規制等の改正を監視する処理を省略することができる。法規制等の改正によって新たな規制物質が指定された場合、プラットフォームプロバイダ30は、新たに指定された規制物質を追加して規制リスト350を更新し、そして、新たに指定された規制物質を追加して規制リスト165-Nを追加することを提案するトランザクションデータを情報管理装置10-Nに送信する。このように、規制リスト350は、情報管理システム1の管理者であるプラットフォームプロバイダ30の法規制等の改正の監視結果に基づいて更新され、管理されているので、その信頼性を高く保つことができる。さらに、情報管理システム1における規制リスト(規制リスト350,165-N)は、分散型台帳技術を用いて管理されるので、その耐改ざん性を高めることができる。
【0105】
規制リスト165-Nの信頼性および耐改ざん性が高いが故に、情報管理装置10-Nは、更新された規制リスト165-Nと法規制等の改正の内容とを照らし合わせるような人的な作業を省略することができる。そして、人的な作業が省略できるので、情報管理装置10-Nは、規制リスト165-Nに基づいて、製品組成データ164-Nから、下流の企業に開示すべき規制物質を自動的に抽出し、これを開示することができる。したがって、情報管理装置10-Nにおいて、法規制の改正を監視して規制リスト165-Nを更新したり、規制リスト165-Nに基づいて開示する情報を人的に選別したり、開示する情報に過剰な情報が含まれていないか/情報が欠落していないかを確認したりする工数およびコストを削減することができる。このように、化学物質を規制する法規制等の改正に簡易に対応することができる。
【0106】
[変形例]
実施の形態では、情報管理装置10-NにWEBアプリが実装され、複数のクライアント装置12-Nの各々が、WEBブラウザを用いてWEBアプリを利用することにより、規制物質の情報を開示することを承認する例について説明した。しかしながら、複数のクライアント装置12-Nの各々が規制物質の情報を開示することを承認できればよく、WEBアプリを用いることに限定されるものではない。変形例では、複数のクライアント装置12-Nの各々にも、分散型台帳基盤のソフトウェアが導入されている例について説明する。
【0107】
複数のクライアント装置12-Nの各々は、分散型台帳基盤のソフトウェアを実行することにより、分散型台帳ネットワーク2におけるノードとして機能する。
【0108】
情報管理装置10-Nの記憶装置160-Nには、製品に含有されている化学物質と、公開を承認する部署とを対応付けた承認マップが記憶されている。より具体的には、承認マップは、記憶装置160-Nの秘匿領域162-Nに記憶されている。情報管理装置10-Nのノード111-Nは、承認マップを参照して、規制リスト165-Nに追加された規制物質を承認する部署を特定する。そして、情報管理装置10-Nのノード111-Nは、承認部署のクライアント装置12-Nのノードに対して、追加された規制物質の情報を開示することの承認を求めるトランザクションデータを送信する。
【0109】
クライアント装置12-Nのノードは、実装されているプログラムによって自動で、あるいは、クライアント装置12-Nの管理部署の管理者(従業員)によって手動で、追加された規制物質の情報開示を承認する。
【0110】
情報管理装置10-Nのノード111-Nは、クライアント装置12-Nのノードから承認が得られると、公開データ166-Nを更新する。このように、変形例では、情報管理装置10-Nのノード111-Nがワークフロー機能部113-Nの機能を兼ねる。
【0111】
以上のように、複数のクライアント装置12-Nの各々に、分散型台帳基盤のソフトウェアを導入することによっても、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0112】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
1 情報管理システム、2 分散型台帳ネットワーク、10 情報管理装置、11 バス、12 クライアント装置、30 プラットフォームプロバイダ、31 制御装置、32 ROM、33 RAM、34 通信装置、35 記憶装置、36 入力装置、37 表示装置、39 バス、40 運用機能、41 ノード、42 リスト管理部、43 分散型台帳、50 基盤機能、51 ドアマンノード、53 ネットワークマップノード、55 ノータリノード、110 制御装置、111 ノード、112 管理機能部、113 ワークフロー機能部、120 ROM、130 RAM、140 通信装置、150 記憶装置、151 製品組成データ、152 顧客リスト、153 秘密鍵、160 記憶装置、161 分散型台帳、162 秘匿領域、163 公開領域、164 製品組成データ、165 規制リスト、166 公開データ、170 入力装置、180 表示装置、190 バス、350 規制リスト、NW ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7