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特許7574827電極体の製造方法、電極体の製造装置、および、電極体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電極体の製造方法、電極体の製造装置、および、電極体
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241022BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241022BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0583
H01M50/46
H01M50/466
H01M10/052
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022091466
(22)【出願日】2022-06-06
(65)【公開番号】P2023178661
(43)【公開日】2023-12-18
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108736033(CN,A)
【文献】中国実用新案第212366027(CN,U)
【文献】特開2010-199281(JP,A)
【文献】特開2012-124146(JP,A)
【文献】特開2012-113843(JP,A)
【文献】特開2022-067612(JP,A)
【文献】特開2017-041344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/052-10/0583
H01M 50/46
H01M 50/466
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体の製造方法であって、
1枚のセパレータと、前記セパレータの第1面に配置された、複数の第1電極と、前記セパレータの第1面とは反対側の第2面に配置された、複数の第2電極と、を有する電極シートを準備する準備工程と、
前記電極シートにおける前記第1電極および前記第2電極を、前記セパレータを介して、交互に積層する積層工程と、を有し、
前記電極シートは、厚さ方向の平面視において、以下の(i)~(iii)を満たし、
(i)前記第1電極および前記第2電極は、第1方向において、交互に配置されている、
(ii)前記第1電極および前記第2電極は、互いに重複しないように配置されている、
(iii)前記第1電極の面積は、前記第2電極の面積より大きい、
積層工程において、鉛直方向に対して傾けた壁部に、前記第1電極の側面に配置される前記セパレータを接触させつつ、前記第1電極および前記第2電極を、前記セパレータを介して、交互に積層
前記電極体における前記セパレータは、前記電極体の積層方向の断面視において、第1対向部、第2対向部および第1接続部を有する単位構造と、隣り合う前記単位構造を接続する第2接続部と、を備え、
前記第1対向部は、前記第1電極に対向し、かつ、前記第1電極の幅方向の長さに対応する長さを有し、
前記第2対向部は、前記第2電極に対向し、かつ、前記第2電極の幅方向の長さに対応する長さを有し、
前記第1接続部は、前記第1対向部および前記第2対向部を接続し、かつ、前記第1電極の側面を覆い、
前記第2接続部は、隣り合う前記単位構造において、一方の前記単位構造における前記第1対向部と、他方の前記単位構造における前記第2対向部と、を接続し、
前記電極シートを前記厚さ方向から平面視し、前記第1方向における前記第1電極の長さをW α とし、前記第1方向における前記第2電極の長さをW β とし、前記第1方向における、前記第1接続部に該当する第1ブランク部の長さをW γ とし、前記第2接続部に該当する第2ブランク部の長さをW δ とし、前記第1電極の厚さをT とし、前記第2電極の厚さをT とした場合に、
前記W γ は、W γ =T +ε(W α -W β )/2(0.9≦ε≦1.1)を満たし、前記W δ は、W δ ≧{(T +((W α -W β )/2) 1/2 を満たす、
電極体の製造方法。
【請求項2】
前記第1電極は、第1集電層と、前記第1集電層の両面にそれぞれ配置された第1活物質層と、を有し、
前記第2電極は、第2集電層と、前記第2集電層の両面にそれぞれ配置された第2活物質層と、を有する、請求項1に記載の電極体の製造方法。
【請求項3】
前記第1電極は負極であり、前記第2電極は正極である、請求項1に記載の電極体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電極体の製造方法に用いられる、電極体の製造装置であって、
前記電極シートを搬送するための搬送部材と、
前記搬送部材から搬送された前記電極シートを収容し、前記壁部を有する収容部材と、
を備える電極体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極体の製造方法、電極体の製造装置、および、電極体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池に用いられる電極体は、例えば、正極(カソード)、セパレータ、負極(アノード)を有する。例えば、特許文献1には、カソード/セパレータ/アノード構造の電極組立体であって、複数の第1の単位電極および1つの第2の電極シートが、セパレータシートを介して、第1の単位電極が第2の電極シートに対向するように巻かれた、電極組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5697276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、いわゆる巻取方式により、電極組立体(電極体)を作製している。この場合、巻取時に電極の位置ズレが生じると、その影響が累積的に生じる。そのため、例えば、生産性向上のために巻取速度を高速化すると、累積した位置ズレの影響により、電極(特にエッジ部)に破損が生じる場合がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、生産性向上と、電極の破損抑制とを両立した電極体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
1枚のセパレータと、上記セパレータの第1面に配置された、複数の第1電極と、上記セパレータの第1面とは反対側の第2面に配置された、複数の第2電極と、を有する電極シートを準備する準備工程と、
上記電極シートにおける上記第1電極および上記第2電極を、上記セパレータを介して、交互に積層する積層工程と、を有し、
上記電極シートは、厚さ方向の平面視において、以下の(i)~(iii)を満たし、
(i)上記第1電極および上記第2電極は、第1方向において、交互に配置されている、
(ii)上記第1電極および上記第2電極は、互いに重複しないように配置されている、
(iii)上記第1電極の面積は、上記第2電極の面積より大きい、
積層工程において、鉛直方向に対して傾けた壁部に、上記第1電極の側面に配置される上記セパレータを接触させつつ、上記第1電極および上記第2電極を、上記セパレータを介して、交互に積層する、電極体の製造方法。
【0007】
[2]
上記電極体における上記セパレータは、上記電極体の積層方向の断面視において、第1対向部、第2対向部および第1接続部を有する単位構造と、隣り合う上記単位構造を接続する第2接続部と、を備え、
上記第1対向部は、上記第1電極に対向し、かつ、上記第1電極の幅方向の長さに対応する長さを有し、
上記第2対向部は、上記第2電極に対向し、かつ、上記第2電極の幅方向の長さに対応する長さを有し、
上記第1接続部は、上記第1対向部および上記第2対向部を接続し、かつ、上記第1電極の側面を覆い、
上記第2接続部は、隣り合う上記単位構造において、一方の上記単位構造における上記第1対向部と、他方の上記単位構造における上記第2対向部と、を接続する、[1]に記載の電極体の製造方法。
【0008】
[3]
上記電極シートを上記厚さ方向から平面視し、上記第1方向における上記第1電極の長さをWαとし、上記第1方向における上記第2電極の長さをWβとし、上記第1方向における、上記第1接続部に該当する第1ブランク部の長さをWγとし、上記第1電極の厚さをTとした場合に、上記Wγは、Wγ=T+ε(Wα-Wβ)/2(0.9≦ε≦1.1)を満たす、[2]に記載の電極体の製造方法。
【0009】
[4]
上記第1電極は、第1集電層と、上記第1集電層の両面にそれぞれ配置された第1活物質層と、を有し、
上記第2電極は、第2集電層と、上記第2集電層の両面にそれぞれ配置された第2活物質層と、を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の電極体の製造方法。
【0010】
[5]
上記第1電極は負極であり、上記第2電極は正極である、[1]から[4]までのいずれかに記載の電極体の製造方法。
【0011】
[6]
[1]から[5]までのいずれかに記載の電極体の製造方法に用いられる、電極体の製造装置であって、
上記電極シートを搬送するための搬送部材と、
上記搬送部材から搬送された上記電極シートを収容し、上記壁部を有する収容部材と、
を備える電極体の製造装置。
【0012】
[7]
第1電極および第2電極が、1枚のセパレータを介して、交互に積層された電極体であって、
上記セパレータは、上記電極体の積層方向の断面視において、第1対向部、第2対向部および第1接続部を有する単位構造と、隣り合う上記単位構造を接続する第2接続部と、を備え、
上記第1対向部は、上記第1電極に対向し、かつ、上記第1電極の幅方向の長さに対応する長さを有し、
上記第2対向部は、上記第2電極に対向し、かつ、上記第2電極の幅方向の長さに対応する長さを有し、
上記第1接続部は、上記第1対向部および第2対向部を接続し、かつ、上記第1電極の側面を覆い、
上記第2接続部は、隣り合う上記単位構造において、一方の上記単位構造における上記第1対向部と、他方の上記単位構造における上記第2対向部と、を接続する、電極体。
【発明の効果】
【0013】
本開示における電極体の製造方法は、生産性向上と、電極の破損抑制とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示における電極シートを例示する概略平面図および概略断面図である。
図2】本開示における第1電極および第2電極を例示する概略断面図である。
図3】本開示における積層工程を例示する概略断面図である。
図4図3の壁部71およびその周辺を拡大した拡大図である。
図5】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
図6】本開示における積層工程を説明する概略断面図である。
図7】本開示における積層工程を説明する概略断面図である。
図8】本開示における積層工程を説明する概略断面図である。
図9】本開示における積層工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における、電極体の製造方法、電極体の製造装置、および、電極体について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0016】
A.電極体の製造方法
図1(a)は、本開示における電極シートを例示する概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A断面図である。図1(a)、(b)に示すように、電極シート50は、1枚のセパレータ30と、セパレータ30の第1面Sに配置された、複数の第1電極10と、セパレータ30の第1面Sとは反対側の第2面Sに配置された、複数の第2電極20と、を有する。さらに、電極シート50は、厚さ方向Dの平面視において、以下の(i)~(iii)を満たす。具体的に、(i)第1電極10および第2電極20は、第1方向Dにおいて、交互に配置されている。(ii)第1電極10および第2電極20は、互いに重複しないように配置されている。(iii)第1電極10の面積は、第2電極20の面積より大きい。
【0017】
図2(a)は、本開示における第1電極を例示する概略断面図であり、図2(b)は、本開示における第2電極を例示する概略断面図である。図2(a)に示す第1電極10は、セパレータ30の第1面Sに配置されている。また、第1電極10は、第1集電層11と、第1集電層11のセパレータ30側の面に配置された第1活物質層12aと、第1集電層11の第1活物質層12aとは反対側の面に配置された第1活物質層12bと、を有する。一方、図2(b)に示す第2電極20は、セパレータ30の第2面Sに配置されている。また、第2電極20は、第2集電層21と、第2集電層21のセパレータ30側の面に配置された第2活物質層22aと、第2集電層21の第2活物質層22aとは反対側の面に配置された第2活物質層22bと、を有する。
【0018】
図3は、本開示における積層工程を例示する概略断面図である。図4は、図3の壁部71およびその周辺を拡大した拡大図である。図3および図4に示すように、積層工程では、電極シート50における第1電極10および第2電極20を、セパレータ30を介して、交互に積層する。本開示においては、鉛直方向Dに対して傾けた壁部71に、第1電極10の側面に配置されるセパレータ30を接触させつつ、第1電極10および第2電極20を、セパレータ30を介して、交互に積層する。
【0019】
図5は、本開示における電極体を例示する概略断面図である。図5に示すように、電極体100の積層方向Dにおいて、第1電極10および第2電極20は、1枚のセパレータ30を介して、交互に積層されている。また、セパレータ30は、第1対向部、第2対向部および第1接続部を有する単位構造を有する。ここで、第1対向部は、第1電極10に対向し、かつ、第1電極10の幅方向Dの長さに対応する長さを有する部位である。図5において、位置Pから位置Pまでの部位が、第1対向部に該当する。第2対向部は、第2電極20に対向し、かつ、第2電極20の幅方向Dの長さに対応する長さを有する部位である。図5において、位置Pから位置Pまでの部位が、第2対向部に該当する。第1接続部は、第1対向部および第2対向部を接続し、かつ、第1電極10の側面を覆う部位である。図5において、位置Pから位置Pまでの部位が、第1接続部に該当する。セパレータ30における単位構造は、位置Pから位置Pまでの部位に該当する。また、第2接続部は、隣り合う単位構造において、一方の単位構造における第1対向部と、他方の前記単位構造における第2対向部と、を接続する部位である。図5において、位置Pから位置P11までの部位が、第2接続部に該当する。
【0020】
本開示によれば、所定の電極シートを用いて、鉛直方向に対して傾けた壁部を利用して、第1電極および第2電極を、セパレータを介して、交互に積層することで、生産性向上と、電極の破損抑制とを両立することができる。上述したように、巻取方式により電極体を作製する場合、巻取時に電極の位置ズレが生じると、その影響が累積的に生じる。そのため、例えば、生産性向上のために巻取速度を高速化すると、累積した位置ズレの影響により、電極(特にエッジ部)に破損が生じる場合がある。これに対して、本開示においては、鉛直方向に対して傾けた壁部を利用して、第1電極および第2電極を、セパレータを介して、交互に積層する。積層方向における第1電極および第2電極の位置関係は、壁部に接触させるセパレータの長さ(後述する第1ブランク部の長さ)により規定されるため、電極の位置ズレの影響が累積的に生じないという利点がある。そのため、例えば、生産性向上のために、電極シートの速度を高速化しても、電極に破損が生じることを抑制できる。
【0021】
1.準備工程
本開示における準備工程は、所定の電極シートを準備する工程である。図1(b)に示すように、電極シート50は、1枚のセパレータ30と、セパレータ30の第1面Sに配置された、複数の第1電極10と、セパレータ30の第1面Sとは反対側の第2面Sに配置された、複数の第2電極20と、を有する。
【0022】
本開示における電極シートは、厚さ方向の平面視において、以下の(i)~(iii)を満たす。「電極シートの厚さ方向」とは、セパレータの主面(第1面および第2面)における法線方向をいう。
【0023】
上記(i)は、以下の通りである。すなわち、第1電極および第2電極は、第1方向において、交互に配置されている。第1方向は、典型的には、電極シートの長手方向である。電極シートは、通常、長手方向に搬送される。例えば図1(a)において、図面右側から図面左側に向かって、第1電極10および第2電極20が、交互に配置されている。
【0024】
上記(ii)は、以下の通りである。すなわち、第1電極および第2電極は、互いに重複しないように配置されている。具体的に、第1方向において、第1電極および第2電極の間には、両者が存在しないブランク部が配置される。例えば図1(a)に示す電極シート50は、ブランク部として、後述する第1接続部に該当する第1ブランク部Bと、後述する第2接続部に該当する第2ブランク部Bと、を有する。
【0025】
図1(a)に示すように、第1方向Dにおいて、第1電極10の長さ(幅)をWαとし、第2電極の長さ(幅)をWβとし、第1ブランク部Bの長さ(幅)をWγとし、第2ブランク部Bの長さ(幅)をWδとする。また、第1電極10の厚さをTとし、第2電極20の厚さをTとする。
【0026】
積層方向における第1電極および第2電極の位置関係は、壁部に接触させる第1ブランク部Bの長さWγによって規定される。Wγは、第1電極および第2電極を、セパレータを介して積層可能な値であれば特に限定されないが、Wγ=T+ε(Wα-Wβ)/2(0.9≦ε≦1.1)を満たすことが好ましい。この関係を満たすことで、第1電極の中心と、第2電極の中心とを、積層方向において、一致させた電極体が得られる。例えば、図5では、第1電極の中心と、第2電極の中心とが、中心線Cにおいて一致している。εは、0.95以上であってもよく、0.98以上であってもよい。一方、εは、1.05以下であってもよく、1.02以下であってもよい。
【0027】
δは、第1電極および第2電極を、セパレータを介して積層可能な値であれば特に限定されないが、例えば、Wδ≧{(T+((Wα-Wβ)/2)1/2を満たすことが好ましい。上述したように、積層方向における第1電極および第2電極の位置関係は、壁部に接触させる第1ブランク部Bの長さWγによって規定されるため、Wδは、基本的に、上記位置関係に影響を与えない。
【0028】
上記(iii)は、以下の通りである。すなわち、第1電極の面積は、第2電極の面積より大きい。例えば図1(a)に示すように、第1電極10の面積は、第2電極20の面積より大きい。ここで、第1電極10の面積をSαとし、第2電極20の面積をSβとした場合、Sβに対するSαの割合(Sα/Sβ)は、例えば1.01以上であり、1.05以上であってもよく、1.1以上であってもよい。一方、Sα/Sβは、例えば1.5以下である。第1電極および第2電極の平面視形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形が挙げられる。四角形が、第1辺と、第1辺に接続された第2辺と、第2辺に接続され、かつ、第1辺と対向する第3辺と、第3辺および第1辺を接続された第4辺を有する場合、第1辺および第3辺は、それぞれ、第1方向に平行に配置されていることが好ましい。また、第2辺および第4辺は、それぞれ、第1方向に直交する第2方向に配置されていることが好ましい。
【0029】
第1方向における第1電極の長さ(幅)をWαとし、第1方向における第2電極の長さ(幅)をWβとした場合、Wαは、Wβより大きいことが好ましい。Wβに対するWαの割合(Wα/Wβ)は、例えば1.01以上であり、1.05以上であってもよく、1.1以上であってもよい。一方、Wα/Wβは、例えば1.5以下である。
【0030】
第1方向に直交する第2方向における第1電極の長さ(奥行き)をDαとし、第2方向における第2電極の長さ(奥行き)をDβとした場合、Dαは、Dβより大きいことが好ましい。Dβに対するDαの割合(Dα/Dβ)は、例えば1.01以上であり、1.05以上であってもよく、1.1以上であってもよい。一方、Dα/Dβは、例えば1.5以下である。
【0031】
電極シートは、1つのセパレータと、複数の第1電極と、複数の第2電極と、を有する。セパレータは、通常、多孔質膜である。セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂が挙げられる。セパレータは、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。複層構造を有するセパレータとしては、例えば、PE/PPの2層構造を有するセパレータ、PP/PE/PPまたはPE/PP/PEの3層構造を有するセパレータが挙げられる。また、セパレータは、織布であってもよく、不織布であってもよい。セパレータの厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、1mm以下である。
【0032】
第1電極は、例えば、第1集電層と、上記第1集電層の両面にそれぞれ配置された第1活物質層と、を有する。また、第1電極は、正極または負極である。第1電極が正極である場合、第1電極は、正極集電層および正極活物質層を有する。一方、第1電極が負極である場合、第1電極は、負極集電層および負極活物質層を有する。第1電極は負極であることが好ましい。デンドライトの析出を抑制できるからである。
【0033】
第2電極は、例えば、第2集電層と、上記第2集電層の両面にそれぞれ配置された第2活物質層と、を有する。また、第2電極は、正極または負極である。第1電極が正極である場合、第2電極は、負極であり、かつ、負極集電層および負極活物質層を有する。一方、第1電極が負極である場合、第2電極は、正極であり、かつ、正極集電層および正極活物質層を有する。正極集電層、正極活物質層、負極集電層および負極活物質層に用いられる材料は、特に限定されず、公知の材料が用いられる。
【0034】
2.積層工程
本開示における積層工程は、上記電極シートにおける上記第1電極および上記第2電極を、上記セパレータを介して、交互に積層する工程である。積層工程では、鉛直方向に対して傾けた壁部に、第1電極の側面に配置されるセパレータ(第1ブランク部)を接触させつつ、第1電極および第2電極を、セパレータを介して、交互に積層する。
【0035】
図3に示すように、鉛直方向Dに対する壁部71の傾き角をθとする。θは、例えば5°以上であり、10°以上であってもよく、30°以上であってもよい。一方、θは、例えば60°以下である。
【0036】
図6(a)に示すように、セパレータ30を基準として、第1電極10が上側となり、第2電極20が下側となるように、電極シート50を搬送する場合を想定する。この場合、図6(b)に示すように、積層方向Dにおいて、下側から順に、セパレータ30(第1対向部)、第1電極10、セパレータ30(第2対向部)および第2電極20が、この順に繰り返し積層される。図6(b)においては、第1電極10における図面左側の側面に配置されるセパレータを、壁部に接触させる。また、図6(b)では、積層方向Dにおいて、最も下側の位置に、セパレータ30(第1対向部)が配置されるため、第1電極10が破損することを抑制できる。
【0037】
図7(a)に示すように、セパレータ30を基準として、第1電極10が下側となり、第2電極20が上側となるように、電極シート50を搬送する場合を想定する。この場合、図7(b)に示すように、積層方向Dにおいて、下側から順に、第1電極10、セパレータ30(第1対向部)、第2電極20およびセパレータ30(第2対向部)が、この順に繰り返し積層される。図7(b)においては、第1電極10における図面右側の側面に配置されるセパレータを、壁部に接触させる。また、図7(b)では、積層方向Dにおいて、最も下側の位置に、第1電極10が配置されるため、収容部材の底部には、第1電極10の破損を防止する緩衝材が配置されていることが好ましい。
【0038】
図8(a)に示すように、セパレータ30を基準として、第1電極10が上側となり、第2電極20が下側となるように、電極シート50を搬送する場合を想定する。図8(a)では、図6(a)とは異なり、積層工程において、第1電極10より先に、第2電極20を搬送する。この場合、図8(b)に示すように、積層方向Dにおいて、下側から順に、第2電極20、セパレータ30(第2対向部)、第1電極10およびセパレータ30(第1対向部)が、この順に繰り返し積層される。図8(b)においては、図6(b)と同様に、第1電極10における図面左側の側面に配置されるセパレータを、壁部に接触させる。
【0039】
図9(a)に示すように、セパレータ30を基準として、第1電極10が下側となり、第2電極20が上側となるように、電極シート50を搬送する場合を想定する。図9(a)では、図7(a)とは異なり、積層工程において、第1電極10より先に、第2電極20を搬送する。この場合、図9(b)に示すように、積層方向Dにおいて、下側から順に、セパレータ30(第2対向部)、第2電極20、セパレータ30(第1対向部)および第1電極10が、この順に繰り返し積層される。図9(b)においては、図7(b)と同様に、第1電極10における図面右側の側面に配置されるセパレータを、壁部に接触させる。
【0040】
3.電極体
本開示における電極体は、第1電極および第2電極が、1枚のセパレータを介して、交互に積層された電極体である。電極体におけるセパレータは、電極体の積層方向の断面視において、第1対向部、第2対向部および第1接続部を有する単位構造と、隣り合う単位構造を接続する第2接続部と、を備える。「電極体の積層方向」とは、第1電極および第2電極がセパレータを介して積層される方向をいう。
【0041】
図5に示すように、電極体100の積層方向Dの断面視において、第1電極10および第2電極20は、1枚のセパレータ30を介して、交互に積層される。セパレータ30は、第1対向部(位置Pから位置Pまでの部位)、第2対向部(位置Pから位置Pまでの部位)および第1接続部(位置Pから位置Pまでの部位)を有する単位構造を有する。セパレータ30は、この単位構造を複数有する。また、セパレータ30は、隣り合う単位構造において、一方の単位構造における第1対向部と、他方の単位構造における第2対向部と、を接続する第2接続部(位置Pから位置P11までの部位)を有する。
【0042】
本開示においては、上述した電極体を有する電池を提供することができる。電池は、上述した電極体と、上記電極体に含浸させた電解液と、上記電極体および上記電解液を収納する外装体と、を有していてもよい。電解液の種類は特に限定されず、公知の電解液が用いられる。また、外装体の種類は特に限定されず、公知の外装体が用いられる。電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0043】
B.電極体の製造装置
本開示における電極体の製造装置は、上述した電極体の製造方法に用いられ、上記電極シートを搬送するための搬送部材と、上記搬送部材から搬送された上記電極シートを収容し、上記壁部を有する収容部材と、を備える。
【0044】
本開示によれば、鉛直方向に対して傾けた壁部を有する収容部材を備えるため、生産性向上と、電極の破損抑制とを両立した電極体の製造装置となる。
【0045】
本開示における搬送部材は、例えば、電極シートを支持するための支持部と、支持部の位置を移動させる駆動部と、を有する。例えば図3に示す搬送部材60は、電極シート50を支持するための支持部61と、支持部61の位置を移動させる駆動部62と、を有する。搬送部材の具体例としては、ベルトコンベアが挙げられる。
【0046】
本開示における収容部材は、鉛直方向に対して傾けた壁部を少なくとも有する。例えば図3に示す収容部材70は、壁部71と、壁部71に対向する対向壁部72と、壁部71および対向壁部72を接続する底部73と、を有する。収容部材の設置位置は、通常、搬送部材の設置位置よりも低い。すなわち、搬送部材から搬送された電極シートを落下させつつ、収容部材において、第1電極および第2電極が、セパレータを介して交互に積層される。また、壁部71、対向壁部72および底部73の少なくとも一つは、1または2以上の貫通孔を有していてもよい。例えば、積層工程において、収容部材70の収容部(電極体が収容される空間)を、貫通孔を利用して減圧雰囲気にすることで、空気抵抗に伴う電極の位置ズレの発生を抑制できる。
【0047】
本開示における電極体の製造装置は、必要に応じて、電極シートの搬送を補助するガイド部材を有していてもよい。例えば図3に示す電極体の製造装置は、搬送部材60および収容部材70に加えて、電極シート50の搬送を補助するガイド部材80を有する。電極体の製造装置は、1または2以上のガイド部材を有していてもよい。
【0048】
C.電極体
本開示における電極体については、上記「A.電極体の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0049】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
10…第1電極
11…第1集電層
12…第1活物質層
20…第2電極
21…第2集電層
22…第2活物質層
30…セパレータ
50…電極シート
60…搬送部材
70…収容部材
80…ガイド部材
100…電極体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9