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  • 特許-歩行補助装具 図1
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  • 特許-歩行補助装具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】歩行補助装具
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A61H3/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022135538
(22)【出願日】2022-08-29
(65)【公開番号】P2024032088
(43)【公開日】2024-03-12
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 智絵
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0023132(US,A1)
【文献】国際公開第2018/003371(WO,A1)
【文献】中国特許第109662868(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰に装着される腰装着部と、
右膝に装着される右膝装着部と、
左膝に装着される左膝装着部と、
前記右膝装着部から右大腿の前面に沿って延び、前記腰装着部を通って、左大腿の前面に沿って延びて前記左膝装着部に至るワイヤーと、
を備え、
前記ワイヤーは、前記右大腿を後方に蹴り出したとき前記左大腿を前方に振り出す動作を補助し、前記左大腿を後方に蹴り出したとき前記右大腿を前方に振り出す動作を補助する、
歩行補助装具。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行補助装具であって、
前記腰装着部は、前記腰の外周に沿って延びるワイヤーガイドを有し、
前記ワイヤーは、前記右膝装着部から前記ワイヤーガイドに至り、前記ワイヤーガイドによって案内されることで前記ワイヤーガイドの長手方向に沿って延び、そして、前記左膝装着部に至る、
歩行補助装具。
【請求項3】
請求項2に記載の歩行補助装具であって、
前記ワイヤーガイドは、前記腰の背面側に配置されるガイド背面部を含み、
前記ワイヤーは、前記右膝装着部から前記ワイヤーガイドに至り、前記ワイヤーガイドの前記ガイド背面部を通り、そして、前記左膝装着部に至る、
歩行補助装具。
【請求項4】
請求項2に記載の歩行補助装具であって、
前記ワイヤーガイドは、前記腰の背面側に配置されるガイド背面部と、前記腰の前面側に配置されて前記腰装着部の長手方向に沿って隣り合う一対のガイド前面部と、を含み、
前記一対のガイド前面部は、前記ガイド背面部に対して揺動自在に取り付けられており、
前記一対のガイド前面部は、互いに脱着自在である、
歩行補助装具。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか1項に記載の歩行補助装具であって、
前記ワイヤーの一部を巻き取ることで前記ワイヤーの全長を調整する全長調整具を更に備えた、
歩行補助装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、腰ベルトと大腿ブレースを可撓性ストラップで互いに連結することで、大腿を前方に振り出す動作を補助する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6889187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の構成では、大腿を前方に振り出す動作を補助する補助力が弱い。
【0005】
本開示の目的は、簡素な構成で、大腿を前方に振り出す動作を補助する補助力を十分に確保する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の観点によれば、腰に装着される腰装着部と、右膝に装着される右膝装着部と、左膝に装着される左膝装着部と、前記右膝装着部から右大腿の前面に沿って延び、前記腰装着部を通って、左大腿の前面に沿って延びて前記左膝装着部に至るワイヤーと、を備え、前記ワイヤーは、前記右大腿を後方に蹴り出したとき前記左大腿を前方に振り出す動作を補助し、前記左大腿を後方に蹴り出したとき前記右大腿を前方に振り出す動作を補助する、歩行補助装具が提供される。以上の構成によれば、簡素な構成で、大腿を前方に振り出す動作を補助する補助力を十分に確保することができる。
前記腰装着部は、前記腰の外周に沿って延びるワイヤーガイドを有し、前記ワイヤーは、前記右膝装着部から前記ワイヤーガイドに至り、前記ワイヤーガイドによって案内されることで前記ワイヤーガイドの長手方向に沿って延び、そして、前記左膝装着部に至ってもよい。以上の構成によれば、前記ワイヤーが、前記右膝装着部から前記ワイヤーガイドに至り、前記ワイヤーガイドによって案内されることで前記ワイヤーガイドの長手方向に沿って延び、そして、前記左膝装着部に至る構成が実現される。
前記ワイヤーガイドは、前記腰の背面側に配置されるガイド背面部を含み、前記ワイヤーは、前記右膝装着部から前記ワイヤーガイドに至り、前記ワイヤーガイドの前記ガイド背面部を通り、そして、前記左膝装着部に至ってもよい。以上の構成によれば、前記ワイヤーの全長を稼ぐことができる。
前記ワイヤーガイドは、前記腰の背面側に配置されるガイド背面部と、前記腰の前面側に配置されて前記腰装着部の長手方向に沿って隣り合う一対のガイド前面部と、を含み、前記一対のガイド前面部は、前記ガイド背面部に対して揺動自在に取り付けられており、前記一対のガイド前面部は、互いに脱着自在であってもよい。以上の構成によれば、前記一対の前面部の相互連結を一時的に解除することで、前記ワイヤーガイドを前記腰に装着し易くなる。
前記ワイヤーの一部を巻き取ることで前記ワイヤーの全長を調整する全長調整具を更に備えてもよい。以上の構成によれば、前記ワイヤーの全長を調整できるようになる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡素な構成で、大腿を前方に振り出す動作を補助する補助力を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】歩行補助装具の正面図である。
図2】腰装着部の平面図である。
図3】腰装着部の平面図である。
図4】歩行補助装具の動作メカニズムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1から図4を参照して、本開示の好適な実施形態を説明する。
【0010】
図1には、歩行補助装具1を示している。歩行補助装具1は、典型的には歩行時に大腿を前方に振り出す動作を補助する装具である。また、歩行補助装具1は、走行時に大腿を前方に振り出す動作を補助し得る。
【0011】
図1に示すように、歩行補助装具1は、腰装着部2、右膝装着部3、左膝装着部4、ワイヤー5を含む。
【0012】
腰装着部2は、ユーザーUの腰Wに装着されるように構成されている。
【0013】
右膝装着部3は、ユーザーUの右膝KRに装着されるように構成されている。左膝装着部4は、ユーザーUの左膝KLに装着されるように構成されている。ワイヤー5は、右膝装着部3から右大腿TRの前面TR1に沿って延び、腰装着部2を通って、左大腿TLの前面TL1に沿って延びて左膝装着部4に至る。この構成により、ワイヤー5は、右大腿TRを後方に蹴り出したとき左大腿TLを前方に振り出す動作を補助し、左大腿TLを後方に蹴り出したとき右大腿TRを前方に振り出す動作を補助する。
【0014】
以下、腰装着部2、右膝装着部3、左膝装着部4、ワイヤー5について詳細に説明する。
【0015】
ワイヤー5は、伸縮し難い素材で構成されている。伸縮し難い素材は、典型的には、極細のポリエチレン素材の原糸を複数本、編み込んで作られ得る。
【0016】
右膝装着部3は、右膝KRの屈伸動作を妨げることのないように右膝KRに着脱自在に装着される。右膝装着部3は、典型的には布製である。右膝装着部3は、例えば面ファスナーを備えることで右膝KRへ着脱容易となっている。
【0017】
同様に、左膝装着部4は、左膝KLの屈伸動作を妨げることのないように左膝KLに着脱自在に装着される。左膝装着部4は、典型的には布製である。左膝装着部4は、例えば面ファスナーを備えることで左膝KLへ着脱容易となっている。
【0018】
腰装着部2は、腰Wの外周に巻き付けられる巻き付け部10、腰Wの外周に沿って延びるワイヤーガイド11、右屈曲ガイド12、左屈曲ガイド13を含む。
【0019】
巻き付け部10は、典型的には布製である。巻き付け部10は、例えば面ファスナーを備えることで腰Wへ着脱容易となっている。
【0020】
ワイヤーガイド11は、巻き付け部10に支持されており、平面視で環状に形成されている。図2に示すように、ワイヤーガイド11は、腰Wの前面側に配置されるガイド前面部15と腰Wの背面側に配置されるガイド背面部16を含む。ガイド前面部15は、右脚側の右ガイド前面部15Rと、左脚側の左ガイド前面部15Lと、を含む。図3に示すように、右ガイド前面部15Rと左ガイド前面部15Lは、右ガイド前面部15Rに固定されたコネクタ17を介して互いに脱着自在となっている。右ガイド前面部15Rは、ガイド背面部16に対して揺動自在に連結されている。左ガイド前面部15Lは、ガイド背面部16に対して揺動自在に連結されている。ワイヤーガイド11は、典型的には、ステンレス又はアルミ合金製である。
【0021】
図2に戻り、ガイド背面部16は、ワイヤー5が通るガイド孔18を有する。ガイド孔18は、ガイド背面部16の長手方向に沿って延びるように形成されている。
【0022】
ガイド前面部15には、腰Wから離れる方向に開口する断面V字のガイド溝19が形成されている。ガイド溝19は、外方に向かって開口する断面V字を有する。
【0023】
図1に戻り、右屈曲ガイド12及び左屈曲ガイド13は、ワイヤー5を案内する。右屈曲ガイド12は、右膝装着部3から上方に延びるワイヤー5を湾曲させてワイヤーガイド11に案内する。左屈曲ガイド13は、左膝装着部4から上方に延びるワイヤー5を湾曲させてワイヤーガイド11に案内する。右屈曲ガイド12及び左屈曲ガイド13は、腰Wの前面側に配置されている。
【0024】
本実施形態において、右屈曲ガイド12は、円弧状に湾曲する金属製、典型的にはアルミ合金製のパイプであって、ワイヤーガイド11に支持されている。右脚LRの右大腿TRの前面TR1に沿って延びるワイヤー5は、右屈曲ガイド12内を通ることで滑らかに湾曲し、ワイヤーガイド11の右ガイド前面部15Rのガイド溝19に導かれる。
【0025】
同様に、左屈曲ガイド13は、円弧状に湾曲する金属製、典型的にはアルミ合金製のパイプであって、ワイヤーガイド11に支持されている。左脚LLの左大腿TLの前面TL1に沿って延びるワイヤー5は、左屈曲ガイド13内を通ることで滑らかに湾曲し、ワイヤーガイド11の左ガイド前面部15Lのガイド溝19に導かれる。
【0026】
右屈曲ガイド12及び左屈曲ガイド13は、円弧状に湾曲するパイプであることに代えて、例えばプーリであってもよい。
【0027】
以上の構成で、図1及び図2に示すように、ワイヤー5は、一旦が右膝装着部3に固定されており、右膝装着部3から出発し、右脚LRの右大腿TRの前面TR1に沿って延び、右屈曲ガイド12を通ってワイヤーガイド11の右ガイド前面部15Rに導かれる。ワイヤー5は、右ガイド前面部15Rのガイド溝19とガイド背面部16のガイド孔18をこの記載順に通って左ガイド前面部15Lのガイド溝19に至る。ワイヤー5は、更に、左屈曲ガイド13を通り、左脚LLの左大腿TLの前面TL1に沿って延び、左膝装着部4に至る。ワイヤー5の他端は、左膝装着部4に固定されている。
【0028】
図1に示すように、左膝装着部4には、ワイヤー5の一部を巻き取ることでワイヤー5の全長を調整する全長調整具30が設けられている。全長調整具30は、左膝装着部4に設けることに代えて、右膝装着部3に設けてもよく、右膝装着部3と腰装着部2の間においてワイヤー5に設けてもよく、左膝装着部4と腰装着部2の間においてワイヤー5に設けてもよい。全長調整具30としては、典型的には、BOAフィットシステム(登録商標)を採用し得る。
【0029】
図4には、歩行補助装具1が右大腿TRと左大腿TLを交互に前方に振り出す動作を補助している様子を示している。図4に示すように、左脚LLの立脚期において左脚LLを後方に蹴り出すと、ワイヤー5は、腰装着部2から左脚LL側に引き出されるので、右脚LR側においてワイヤー5は腰装着部2に向かって引き込まれる。このとき、右脚LR側においてワイヤー5に発生する張力Fは、ワイヤー5の右膝装着部3側の端部5aから右股関節に向かう分力F1と、端部5aから前方(遊脚の右大腿TRを振り出す方向)に向かう分力F2と、に分解される。この分力F2が、右脚LRの遊脚期において右大腿TRを前方に振り出す動作を補助することになる。
【0030】
反対に、右脚LRの立脚期において右脚LRを後方に蹴り出すと、ワイヤー5は、腰装着部2から右脚LR側に引き出されるので、左脚LL側においてワイヤー5は腰装着部2に向かって引き込まれる。このとき、左脚LL側においてワイヤー5に発生する張力Fの分力が、左脚LLの遊脚期において左大腿TLを前方に振り出す動作を補助することになる。
【0031】
以上に、本開示の好適な実施形態を説明した。上記実施形態は以下の特徴を有する。
【0032】
図1から図4に示すように、歩行補助装具1は、腰Wに装着される腰装着部2と、右膝KRに装着される右膝装着部3と、左膝KLに装着される左膝装着部4と、右膝装着部3から右大腿TRの前面TR1に沿って延び、腰装着部2を通って、左大腿TLの前面TL1に沿って延びて左膝装着部4に至るワイヤー5と、を備える。ワイヤー5は、右大腿TRを後方に蹴り出したとき左大腿TLを前方に振り出す動作を補助し、左大腿TLを後方に蹴り出したとき右大腿TRを前方に振り出す動作を補助する。以上の構成によれば、簡素な構成で、大腿を前方に振り出す動作を補助する補助力を十分に確保することができる。
【0033】
また、腰装着部2は、腰Wの外周に沿って延びるワイヤーガイド11を有する。ワイヤー5は、右膝装着部3からワイヤーガイド11に至り、ワイヤーガイド11によって案内されることでワイヤーガイド11の長手方向に沿って延び、そして、左膝装着部4に至る。以上の構成によれば、ワイヤー5が、右膝装着部3からワイヤーガイド11に至り、ワイヤーガイド11によって案内されることでワイヤーガイド11の長手方向に沿って延び、そして、左膝装着部4に至る構成が実現される。
【0034】
また、ワイヤーガイド11は、腰Wの背面側に配置されるガイド背面部16を含む。ワイヤー5は、右膝装着部3からワイヤーガイド11に至り、ワイヤーガイド11のガイド背面部16を通り、そして、左膝装着部4に至る。以上の構成によれば、ワイヤー5の全長を稼ぐことができる。
【0035】
また、ワイヤーガイド11は、腰Wの背面側に配置されるガイド背面部16と、腰Wの前面側に配置されて腰装着部2の長手方向に沿って隣り合う一対のガイド前面部として、右ガイド前面部15R及び左ガイド前面部15Lを含む。右ガイド前面部15R及び左ガイド前面部15Lは、ガイド背面部16に対して揺動自在に取り付けられている。右ガイド前面部15R及び左ガイド前面部15Lは、互いに脱着自在である。以上の構成によれば、右ガイド前面部15R及び左ガイド前面部15Lの相互連結を一時的に解除することで、ワイヤーガイド11を腰Wに装着し易くなる。
【0036】
また、歩行補助装具1は、ワイヤー5の一部を巻き取ることでワイヤー5の全長を調整する全長調整具30を更に備え。以上の構成によれば、ワイヤー5の全長を調整できるようになる。従って、ユーザーUの大腿の長さに応じてワイヤー5の全長を調整できるので、歩行補助装具1による効率的な補助を実現することができる。
【0037】
ワイヤー5は、右屈曲ガイド12に対してスライド自在である。ワイヤー5は、ガイド前面部15のガイド溝19に対してスライド自在である。ワイヤー5は、ガイド背面部16のガイド孔18に対してスライド自在である。
【符号の説明】
【0038】
1 歩行補助装具
2 腰装着部
3 右膝装着部
4 左膝装着部
5 ワイヤー
5a 端部
10 巻き付け部
11 ワイヤーガイド
12 右屈曲ガイド
13 左屈曲ガイド
15 ガイド前面部
15R 右ガイド前面部
15L 左ガイド前面部
16 ガイド背面部
17 コネクタ
18 ガイド孔
19 ガイド溝
30 全長調整具
図1
図2
図3
図4