(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20241022BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20241022BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20241022BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20241022BHJP
F24F 130/20 20180101ALN20241022BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/46
F24F110:10
F24F110:12
F24F130:20
(21)【出願番号】P 2022174608
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2022564044の分割
【原出願日】2022-03-30
【審査請求日】2022-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椋本 俊学
(72)【発明者】
【氏名】前田 卓志
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀祐
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/019761(WO,A1)
【文献】特開2012-007824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/64
F24F 11/46
F24F 110/10
F24F 110/12
F24F 130/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の領域に調和空気を送るための空調装置と、
前記空調装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記空調装置は、
前記領域に外気を取り込むための換気装置と、
前記換気装置によって取り込まれた外気を処理する一次空調機と、
前記一次空調機によって処理された外気及び前記領域の空気を処理する二次空調機と、
を備え、
前記制御装置は、
前記一次空調機に必要な第1能力及び前記二次空調機に必要な第2能力に基づいて、前記一次空調機の運転モードと前記二次空調機の運転モードとを
それぞれ判定するモード判定部と、
前記第1能力及び前記第2能力に基づいて、前記領域に対して必要な加湿量又は除湿量を判定する加除湿判定部と、
前記モード判定部による判定結果、前記加除湿判定部による判定結果、前記一次空調機の第1COP特性曲線、及び前記二次空調機の第2COP特性曲線に基づいて、前記第1能力と前記第2能力とを合算した能力のうち、前記一次空調機が受け持つ分と前記二次空調機が受け持つ分とを判定する割当判定部と、
前記割当判定部による判定結果に応じて前記空調装置を制御する動作制御部と、
を備え
、
前記モード判定部は、運転モードとして、冷房モード或いは暖房モードを判定する制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記領域に対する日射量及び前記領域の内外の温度差に基づく第1負荷を特定する第1負荷特定部と、
前記領域の内外のエンタルピー差及び前記換気装置の風量に基づく第2負荷を特定する第2負荷特定部と、
前記領域にいる人が発する熱量及び前記領域にある機器が発する熱量に基づく第3負荷を特定する第3負荷特定部と、
前記領域にいる人の数に応じた換気量を特定する換気量特定部と、
前記第1負荷特定部によって特定された第1負荷、前記第2負荷特定部によって特定された第2負荷、及び前記換気量特定部によって特定された換気量に基づいて、前記第1能力を判定する第1能力判定部と、
前記第3負荷特定部によって特定された第3負荷に基づいて、前記第2能力を判定する第2能力判定部と、
を更に備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、顕熱比の値が異なるの複数の第1COP特性曲線と、顕熱比の値が異なる複数の第2COP特性曲線とを記憶する記憶部を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記一次空調機は、熱を運ぶ媒体として冷媒を備え、
前記制御装置は、前記冷媒の温度の値が異なる複数の第1COP特性曲線を記憶する記憶部を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項5】
前記二次空調機は、熱を運ぶ媒体として冷媒を備え、
前記制御装置は、前記冷媒の温度の値が異なる複数の第2COP特性曲線を記憶する記憶部を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、空調のためのシステムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムは、各階にいる人の数を求めるための装置を備える。当該装置によって求められた人数に応じて、外気の取り込みが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、人数に応じた換気制御を行うことができる。このようなシステムでは、対象となる領域の状況に応じた適切な空調制御を行うことが更に望まれている。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、対象となる領域の状況に応じた適切な空調制御を実現できる制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制御システムは、特定の領域に調和空気を送るための空調装置と、空調装置を制御する制御装置と、を備える。空調装置は、領域に外気を取り込むための換気装置と、換気装置によって取り込まれた外気を処理する一次空調機と、一次空調機によって処理された外気及び領域の空気を処理する二次空調機と、を備える。制御装置は、一次空調機に必要な第1能力及び二次空調機に必要な第2能力に基づいて、一次空調機の運転モードと二次空調機の運転モードとをそれぞれ判定するモード判定部と、第1能力及び第2能力に基づいて、領域に対して必要な加湿量又は除湿量を判定する加除湿判定部と、モード判定部による判定結果、加除湿判定部による判定結果、一次空調機の第1COP特性曲線、及び二次空調機の第2COP特性曲線に基づいて、第1能力と第2能力とを合算した能力のうち、一次空調機が受け持つ分と二次空調機が受け持つ分とを判定する割当判定部と、割当判定部による判定結果に応じて空調装置を制御する動作制御部と、を備える。モード判定部は、運転モードとして、冷房モード或いは暖房モードを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る制御システムであれば、対象となる領域の状況に応じた適切な空調制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における制御システムの例を示す図である。
【
図2】第1制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。
【
図3】制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図4】タイムラグのデータベース化に必要な制御システムの機能を説明するための図である。
【
図5】制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図6】制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図7】第3制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。
【
図8】制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図9】第1負荷の特定例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第2負荷の特定例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】第3負荷の特定例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】日射量のデータベース化に必要な制御システムの機能を説明するための図である。
【
図14】推定部の動作例を示すフローチャートである。
【
図17】第4制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。
【
図18】X分後の人数Dに応じた換気制御機能を説明するための図である。
【
図19】第5制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。
【
図20】制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図21】割当判定部によって抽出された第1COP特性曲線及び第2COP特性曲線の例を示す図である。
【
図22】制御装置のハードウェア資源の例を示す図である。
【
図23】制御装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における制御システムの例を示す図である。
図1に示す制御システムは、管理設備1、空調設備2、昇降機設備3、環境計測設備4、及び電力計測設備5を備える。制御システムは、照明設備等の他の設備を更に備えても良い。
【0011】
管理設備1は、システムに含まれる設備を統合管理する。管理設備1は、表示装置11、及び制御装置12を備える。本実施の形態に示す例において、制御装置12が制御する対象は空調設備2である。昇降機設備3、環境計測設備4、及び電力計測設備5は、制御装置12に情報を提供するためのセンサとして機能する。制御装置12は、必要な情報を表示装置11に表示する機能を更に備えても良い。
【0012】
空調設備2は、空調装置21、及び換気装置22を備える。空調装置21及び換気装置22は、制御装置12によって制御される。
【0013】
空調装置21は、特定の領域に調和空気を送るための装置である。調和空気は、少なくとも温度又は湿度が調節された空気である。当該領域は、建物の特定の階に存在する。以下においては、当該領域を領域Aと表記する。領域Aがある階を階Bと表記する。領域Aを含む当該建物を建物Cと表記する。領域Aにいる人の数を人数Dと表記する。領域Aは、階Bの一部の領域でも良いし全域でも良い。以下の説明では、階Bの全域が領域Aであるものとする。
【0014】
換気装置22は、建物Cの外の空気を領域Aに供給し、領域Aの空気を領域Aの外、好ましくは建物Cの外に排出するための装置である。換気装置22は、建物Cの外の空気、即ち外気を取り込む。一例として、換気装置22に取り込まれた外気は、領域Aにそのまま供給される。換気装置22は、空調装置21の一機能であっても良い。かかる場合、換気装置22に取り込まれた外気は、空調装置21によって温度又は湿度が調節された後に領域Aに供給されても良い。換気装置22に取り込まれた外気は、領域Aにそのまま供給されても良い。
【0015】
昇降機設備3は、建物Cの各階に人を運ぶための設備である。このため、昇降機設備3は、階Bに人を運ぶことも可能である。
図1は、昇降機設備3に複数のエレベーター装置が含まれる例を示す。かかる場合、昇降機設備3は、複数のエレベーター装置に加え、通信装置31、及び群管理盤32を備える。
【0016】
通信装置31は、昇降機設備3が管理設備1を含む他の設備と通信するための装置である。群管理盤32は、複数のエレベーター装置を管理する。各エレベーター装置に、制御盤33、巻上機34、及びかご35が含まれる。かご35は、昇降路を上下に移動する。巻上機34は、かご35を駆動する。制御盤33は、巻上機34を制御する。
【0017】
環境計測設備4は、入出力装置41、及び各種計測器を備える。入出力装置41は、情報の入出力処理を行う。
図1は、環境計測設備4に、環境情報を計測する計測器として、日射計42、屋外用の温湿度計43、屋内用の温湿度計44、及びCO
2濃度計45が含まれる例を示す。環境計測設備4に、他の計測器が含まれても良い。
【0018】
日射計42は、領域Aに対する日射量を計測する。「領域Aに対する日射量」には、領域Aに実際には差し込まれない日射の量も含まれる。例えば、日射計42は、建物Cの屋上に設けられる。日射計42は、建物Cの敷地内に設けられても良い。温湿度計43は、建物Cの外の温度及び湿度を計測する。温湿度計43に、温度計と湿度計とが別の計測器として備えられても良い。温湿度計44は、領域Aの温度及び湿度を計測する。温湿度計44に、温度計と湿度計とが別の計測器として備えられても良い。CO2濃度計45は、領域Aの二酸化炭素の濃度を計測する。
【0019】
本実施の形態では、建物Cの外のことを「屋外」とも表記する。領域Aのことを、屋外に対して「屋内」とも表記する。屋外の空気のことを「外気」とも表記する。また、屋内(領域A)と屋外のことを「内外」とも表記する。
【0020】
電力計測設備5は、計測装置51、電灯盤52、動力盤53、及び太陽光発電機54を備える。計測装置51は、電灯盤52、動力盤53、及び太陽光発電機54からの情報に基づいて、領域Aに設けられている機器の消費電力を計測する。
【0021】
次に、本制御システムが行う特徴的な制御について説明する。本制御システムは、以下に示す第1制御~第5制御を行う。
・第1制御:人数Dに応じた空調起動制御
・第2制御:人数Dに応じた空調変更制御
・第3制御:負荷に応じた空調変更制御
・第4制御:人数Dに応じた換気制御
・第5制御:効率最適化制御
【0022】
[第1制御]
図2は、第1制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。制御装置12は、記憶部120、天候推定部121、時間特定部122、人数推定部123、判定部124、及び動作制御部125を備える。
【0023】
図3は、制御システムの動作例を示すフローチャートである。
図3は、制御システムが第1制御を行う例を示す。一例として、第1制御は、空調装置21が停止している朝方に開始される。即ち、第1制御が開始される時、空調装置21から領域Aに調和空気は供給されていない。
【0024】
天候推定部121は、天候を推定する。天候推定部121は、先ず、日射計42によって計測された現在の日射量の実測値を取得する(S101)。天候推定部121は、温湿度計43によって計測された現在の温度の実測値と湿度の実測値とを取得する(S102)。天候推定部121は、制御装置12に備えられた時計150から現在時刻の情報を取得する(S103)。天候推定部121は、他の設備から現在時刻の情報を取得しても良い。
【0025】
天候推定部121は、日射計42によって計測された現在の日射量と温湿度計43によって計測された現在の温度及び湿度と現在時刻とに基づいて、現在の天候を推定する(S104)。例えば、記憶部120に、天候を推定するためのテーブルT1が記憶される。表1は、テーブルT1の例を示す。
【0026】
【0027】
表1は、時刻、日射量、屋外の温度、及び屋外の湿度に応じて天候を決めることができる例を示す。天候推定部121がテーブルT1に基づいて天候を推定する場合を考える。かかる場合、7:30における日射量が0.55[MJ/m2]、温度が29℃、湿度が75%であれば、天候推定部121は現在の天候が晴れであると判定する。日射量、温度、及び湿度の各計測値が晴れの条件にも雨の条件にも当てはまらなければ、天候推定部121は、現在の天候が曇りであると判定する。
【0028】
天候推定部121が天候を推定する方法は上記例に限定されない。例えば、天候推定部121は、現在の日射量のみに基づいて現在の天候を推定しても良い。天候推定部121は、現在の日射量及び現在の屋外の温度のみに基づいて現在の天候を推定しても良い。天候推定部121は、現在の日射量と他の環境情報とに基づいて現在の天候を推定しても良い。
【0029】
時間特定部122は、現時点におけるタイムラグを特定する(S105)。第1制御におけるタイムラグは、空調装置21を起動してから領域Aの温度が目標温度で安定するまでの時間を示す。
【0030】
時間特定部122は、先ず、天候推定部121によって推定された天候の情報を取得する。また、時間特定部122は、時計150から現在時刻の情報を取得する。天候推定部121は、他の設備から現在時刻の情報を取得しても良い。
【0031】
時間特定部122は、天候推定部121によって推定された現在の天候と現在時刻とに基づいて、S105においてタイムラグを特定する。例えば、記憶部120に、タイムラグを特定するためのテーブルT2が記憶される。表2は、テーブルT2の例を示す。
【0032】
【0033】
表2は、天候及び時刻に応じてタイムラグを決めることができる例を示す。時間特定部122がテーブルT2に基づいてタイムラグを特定する場合を考える。かかる場合、現在時刻が7:15であり、天候が晴れであれば、時間特定部122は、現時点におけるタイムラグが30分であると判定する。現在時刻が8:10であり、天候が雨であれば、時間特定部122は、現時点におけるタイムラグが40分であると判定する。
【0034】
時間特定部122がタイムラグを特定する方法は上記例に限定されない。例えば、時間特定部122は、現在の天候のみに基づいてタイムラグを特定しても良い。時間特定部122は、現在の天候、現在時刻、及び現在の季節に基づいてタイムラグを特定しても良い。
【0035】
人数推定部123は、時間特定部122によって特定されたタイムラグが経過した時点における人数Dを推定する。即ち、S105でタイムラグが30分と特定されていれば、人数推定部123は、現在時刻から30分経過した時点での人数Dを推定する。以下においては、人数Dの推定に必要な情報を人数推定部123が昇降機設備3から取得する例について説明する。
【0036】
図2に示す例では、昇降機設備3は、人数管理装置36を更に備える。人数管理装置36は、記憶部360、検出部361、算出部362、及び学習部363を備える。また、かご35に秤装置37が備えられる。秤装置37は、かご35の積載荷重を計測する。
【0037】
検出部361は、秤装置37によって計測された荷重の変化量を検出する。算出部362は、検出部361によって検出された荷重の変化量に基づいて、かご35に乗った人の数とかご35から降りた人の数を、階毎について算出する。また、算出部362は、各階にいる人の数を算出する。現時点で階Bにいる人の数の実測値、即ち現時点における人数Dの実測値が算出部362によって算出される。
【0038】
上記の通り、算出部362は、各階にいる人の数をリアルタイムで算出する。学習部363は、算出部362による算出結果に基づいて、各階にいる人の数を任意の条件で分類し、データベース化する。学習部363による学習方法は、どのような方法であっても構わない。学習部363によって生成されたデータベースは、記憶部360に記憶される。生成されたデータベースは定期的に更新される。このため、例えば疫病等による出社規制がなされた場合でも、一定の期間が経過すれば、当該規制の影響がデータベースに反映される。
【0039】
一例として、当該データベースは、時刻を指定することにより、その時刻における人数Dの推定値を特定できるように構築される。他の例として、当該データベースは、曜日と時刻とを指定することにより、その曜日及び時刻における人数Dの推定値を特定できるように構築される。
【0040】
人数推定部123は、先ず、現在時刻における人数Dの実測値N1を算出部362から取得する(S106)。人数推定部123は、現在時刻における人数Dの推定値N2を記憶部360から取得する(S107)。人数推定部123は、現在時刻から時間特定部122によって特定されたタイムラグが経過した時点における人数Dの推定値N3を記憶部360から取得する(S108)。
【0041】
人数推定部123は、実測値N1、推定値N2、及び推定値N3に基づいて、現在時刻から時間特定部122によって特定されたタイムラグが経過した時点における人数Dを推定する(S109)。一例として、人数推定部123は、実測値N1及び推定値N2を用いて補正係数を算出する。補正係数は、実測値N1と推定値N2との差に基づいて算出されても良い。人数推定部123は、算出した補正係数を用いて推定値N3を補正することにより、S109で人数Dを推定する。
【0042】
人数推定部123が人数Dを推定する方法は、上記例に限定されない。例えば、人数推定部123は、推定値N3のみに基づいて人数Dを推定しても良い。
【0043】
人数推定部123は、人数Dの推定に必要な情報を昇降機設備3以外の設備から取得しても良い。例えば、建物Cに通行管理設備が備えられていれば、人数推定部123は、必要な情報を通行管理設備から取得しても良い。通行管理設備には、カードリーダ又は他の認証装置が含まれる。他の例として、建物Cに複数のカメラが備えられていれば、人数推定部123は、必要な情報を当該カメラによって撮影された画像から取得しても良い。
【0044】
判定部124は、人数推定部123によって推定された人数Dに基づいて、空調装置21を起動すべきか否かを判定する。例えば、判定部124は、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth1より多いか否かを判定する(S110)。基準値Dth1は予め設定される。基準値Dth1は、建物Cの環境等に応じて設定されることが好ましい。一例として、領域Aに自席のある人の数の50%に相当する人数が基準値Dth1として設定される。
【0045】
動作制御部125は、判定部124による判定結果に応じて空調装置21を起動する。例えば、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth1より多ければ、判定部124は、S110でYesと判定する。S110でYesと判定されると、動作制御部125は、空調装置21を起動する(S111)。動作制御部125は、S111において、空調装置21と換気装置22の双方を起動しても良い。動作制御部125は、S111で空調装置21を起動すると、領域Aの温度を目標温度に近づけ、その後に目標温度で安定させるための制御を開始する。
【0046】
一方、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth1より多くなければ、判定部124は、S110でNoと判定する。S110でNoと判定されると、動作制御部125は、空調装置21を起動しない。動作制御部125は、空調装置21を停止したままにする。なお、S110でNoと判定されると、処理はS101に戻る。S101からS110に示す一連の処理は、S110でYesと判定されるまで繰り返し行われる。
【0047】
第1制御では、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth1より多ければ、判定部124は、空調装置21を起動すべきことを判定する。人数推定部123によって推定される人数Dは、時間特定部122によって特定されたタイムラグが経過した時点における人数である。このため、本制御システムであれば、領域Aに多くの人が集まる前に、タイムラグに応じて空調装置21を予め起動しておくことができる。即ち、本制御システムであれば、領域Aの状況に応じた適切な空調制御を実現できる。
【0048】
次に、
図4及び
図5を参照し、タイムラグをデータベース化するための事前処理の例について説明する。
【0049】
図4は、タイムラグのデータベース化に必要な制御システムの機能を説明するための図である。
図4に示す例では、制御装置12は、記憶部120、天候推定部121、判定部126、検出部127、及び作成部128を備える。
図5は、制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【0050】
制御装置12では、空調装置21が起動したか否かが判定される(S201)。空調装置21が起動すると、空調装置21から制御装置12に起動信号が送信される。制御装置12が空調装置21から起動信号を受信すると、S201でYesと判定される。
【0051】
検出部127は、空調装置21が起動してから領域Aの温度が目標温度で安定するまでの時間、即ち第1制御におけるタイムラグを検出する。S201でYesと判定されると、検出部127は、時間のカウントを開始する(S202)。
【0052】
S202でカウントが開始されると、判定部126は、空調装置21から目標温度の情報を取得する(S203)。例えば、目標温度は、利用者によって設定される。また、判定部126は、温湿度計44によって計測された現在の温度の実測値を取得する(S204)。なお、空調装置21に吸込温度を検出する機能が備えられている場合、判定部126は、屋内の温度の実測値を空調装置21から取得しても良い。他の制御においても同様に、制御装置12は、屋内(領域A)の温度の実測値を空調装置21から取得しても良い。
【0053】
判定部126は、空調装置21において設定された目標温度と温湿度計44によって計測された屋内の温度とに基づいて、領域Aの温度が目標温度で安定しているか否かを判定する(S205)。一例として、判定部126は、目標温度と屋内の温度との差が0.2℃以内であり且つその状態が10分継続した場合に、S205でYesと判定する。他の例として、空調装置21において設定された目標湿度と温湿度計44によって計測された屋内の湿度とを更に用いて、S205の判定が行われても良い。
【0054】
判定部126は、S205でYesと判定されるまで、S204及びS205に示す処理を繰り返し行う。
【0055】
S205でYesと判定されると、検出部127は、時間のカウントを終了する(S206)。検出部127は、S202でカウントを開始してからS206でカウントを終了するまでの時間をタイムラグとして検出する。
【0056】
天候推定部121は、現在の日射量に基づいて現在の天候を推定する(S207)。例えば、天候推定部121は、
図2及び
図3に示す例と同様に、日射計42によって計測された現在の日射量と温湿度計43によって計測された現在の温度及び湿度と現在時刻とに基づいて、現在の天候を推定する。かかる場合、天候推定部121では、
図3のS101からS104に示す処理と同様の処理が行われる。
【0057】
作成部128は、タイムラグのデータベースを作成する(S208)。例えば、作成部128は、検出部127から、タイムラグの情報と空調装置21の起動時刻の情報とを取得する。作成部128は、天候推定部121から現在の天候の情報を取得する。作成部128は、タイムラグ、起動時刻、及び天候の相関性を求め、テーブルT2に示すようなデータベースを構築する。作成部128によって作成されたデータベースは、記憶部120に記憶される。作成部128は、データベースの代わりに、同様の機能を有する数式を作成しても良い。
【0058】
[第2制御]
次に、
図2及び
図6を参照して、第2制御について説明する。
図6は、制御システムの動作例を示すフローチャートである。
図6は、制御システムが第2制御を行う例を示す。一例として、第2制御は、人数Dが大きく変わる昼休み前に開始される。第2制御が開始される時、空調装置21は既に動作している。
【0059】
図6のS301からS309に示す処理は、
図3のS101からS109に示す処理と同様である。例えば、S304において、天候推定部121は、日射計42によって計測された現在の日射量と温湿度計43によって計測された現在の温度及び湿度と現在時刻とに基づいて、現在の天候を推定する。天候推定部121は、テーブルT1に基づいて天候を推定しても良い。
【0060】
S305において、時間特定部122は、天候推定部121によって推定された現在の天候と現在時刻とに基づいて、現時点におけるタイムラグを特定する。第2制御では、第1制御で用いられるタイムラグとは異なるタイムラグが用いられる。第2制御におけるタイムラグは、空調装置21を制御するためのパラメータの設定内容が変更されてから領域Aの温度が目標温度で安定するまでの時間を示す。
【0061】
表3は、パラメータの設定内容とタイムラグの例を示す。
【0062】
【0063】
S309において、人数推定部123は、現在時刻から時間特定部122によって特定されたタイムラグが経過した時点における人数Dを推定する。一例として、人数Dは、実測値N1、推定値N2、及び推定値N3に基づいて推定される。
【0064】
次に、判定部124は、人数推定部123によって推定された人数Dに基づいて、空調装置21を制御するためのパラメータの設定内容を変更すべきか否かを判定する(S310)。当該パラメータ(制御パラメータ)の設定内容を変更するための条件は予め設定される。以下においては、当該条件を変更条件ともいう。即ち、判定部124は、S310において、変更条件が成立するか否かを判定する。
【0065】
一例として、判定部124は、S310において、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth2より少ないか否かを判定する。基準値Dth2は予め設定される。基準値Dth2は、建物Cの環境等に応じて設定されることが好ましい。一例として、領域Aに自席のある人の数の10%に相当する人数が基準値Dth2として設定される。
【0066】
動作制御部125は、判定部124による判定結果に応じて空調装置21の制御パラメータの設定内容を変更する。例えば、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth2より少なければ、変更条件が成立する。これにより、S310でYesと判定される。S310でYesと判定されると、動作制御部125は、空調装置21の制御パラメータの設定内容を変更する(S311)。これにより、領域Aにいる人がこれから少なくなることを前提とした制御が開始される。
【0067】
表4は、人数Dが基準値Dth2より少ないことによってS310でYesと判定された際の制御パラメータの設定内容の例を示す。S311では、制御パラメータの設定内容が特定の第1内容から表4に示す第2内容に変更される。
【0068】
【0069】
人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth2より少なくなければ、変更条件は成立しない。これにより、S310でNoと判定される。S310でNoと判定されると、動作制御部125は、空調装置21の制御パラメータの設定内容を変更しない。なお、S310でNoと判定されると、処理はS301に戻る。S301からS310に示す一連の処理は、S310でYesと判定されるまで繰り返し行われる。
【0070】
他の例として、制御パラメータの設定内容が第1内容から第2内容に変更された後、変更条件を変えて
図6に示す処理が再び行われても良い。かかる場合も、S301からS309では、
図3のS101からS109に示す処理と同様の処理が行われる。
【0071】
例えば、判定部124は、S310において、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth3より多いか否かを判定する。基準値Dth3は、予め設定される。基準値Dth3は、基準値Dth2より大きいことが好ましい。基準値Dth3は、基準値Dth1と同じでも良い。基準値Dth3は、建物Cの環境等に応じて設定されることが好ましい。一例として、領域Aに自席のある人の数の50%に相当する人数が基準値Dth3として設定される。
【0072】
人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth3より多ければ、変更条件が成立する。これにより、S310でYesと判定される。制御パラメータの設定内容が第2内容に変更された後にS310でYesと判定されると、動作制御部125は、空調装置21の制御パラメータの設定内容を変更する(S311)。これにより、領域Aにいる人がこれから多くなることを前提とした制御が開始される。
【0073】
表5は、人数Dが基準値Dth3より多いことによってS310でYesと判定された際の制御パラメータの設定内容の例を示す。S311では、制御パラメータの設定内容が表4に示す第2内容から表5に示す第1内容に変更される。
【0074】
【0075】
人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth3より多くなければ、変更条件は成立しない。これにより、S310でNoと判定される。S310でNoと判定されると、動作制御部125は、空調装置21の制御パラメータの設定内容を変更しない。動作制御部125は、制御パラメータの設定内容を第2内容に維持したまま、空調装置21を制御する。
【0076】
第2制御では、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth2より少なければ、領域Aにいる人がこれから少なくなることを前提とした制御が開始される。その後に、人数推定部123によって推定された人数Dが基準値Dth3より多くなると、領域Aにいる人がこれから多くなることを前提とした制御が開始される。このため、本制御システムであれば、領域Aから多くの人がいなくなる前及び領域Aに多くの人が戻る前に、空調装置21の制御内容を予め変更しておくことができる。即ち、本制御システムであれば、領域Aの状況に応じた適切な空調制御を実現できる。
【0077】
[第3制御]
図7は、第3制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。
図7に示す例では、制御装置12は、記憶部120、負荷特定部129、負荷特定部130、負荷特定部131、判定部124、及び動作制御部125を備える。
【0078】
負荷特定部129は、第1負荷を特定する。第1負荷は、領域Aに対する日射量と領域Aの内外の温度差とに基づく室内侵入負荷である。負荷特定部129は、天候推定部121、日射推定部132、負荷算出部133、負荷算出部134、及び負荷算出部135を備える。
【0079】
負荷特定部130は、第2負荷を特定する。第2負荷は、領域Aの内外のエンタルピー差と換気装置22の風量とに基づく外気負荷である。負荷特定部130は、推定部136、及び負荷算出部137を備える。
【0080】
負荷特定部131は、第3負荷を特定する。第3負荷は、領域Aにいる人が発する熱量と領域Aにある機器が発する熱量とに基づく内部発熱負荷である。負荷特定部131は、熱量推定部138、熱量推定部139、及び負荷算出部140を備える。
【0081】
図8は、制御システムの動作例を示すフローチャートである。
図8は、制御システムが第3制御を行う例を示す。一例として、第3制御は、特定の開始条件が成立すると開始される。開始条件は予め設定される。開始条件については後述する。
【0082】
先ず、負荷特定部129は、第1負荷を特定する(S401)。
図9は、第1負荷の特定例を説明するためのフローチャートである。
図9は、負荷特定部129がS401で行う動作例を示す。
【0083】
天候推定部121は、現在の天候を推定する。
図9のS501からS504に示す処理は、
図3のS101からS104に示す処理と同様である。例えば、S504において、天候推定部121は、日射計42によって計測された現在の日射量と温湿度計43によって計測された現在の温度及び湿度と現在時刻とに基づいて、現在の天候を推定する。天候推定部121は、テーブルT1に基づいて天候を推定しても良い。
【0084】
日射推定部132は、方角毎の日射量を推定する(S505)。日射推定部132は、天候推定部121によって推定された現在の天候と現在時刻とに基づいて、方角毎の日射量を推定する。例えば、記憶部120に、方角毎の日射量を推定するためのテーブルT3が記憶される。表6は、テーブルT3の一部を示す。表6は、東向きの壁に対する日射量を推定するためのテーブルである。
【0085】
【0086】
表7は、テーブルT3の一部を示す。表7は、西向きの壁に対する日射量を推定するためのテーブルである。テーブルT3には、北向きの壁に関するテーブル、及び南向きの壁に関するテーブルも含まれる。
【0087】
【0088】
表6は、天候及び時刻に応じて東向きの壁に対する日射量を特定できる例を示す。日射推定部132がテーブルT3に基づいて方角毎の日射量を推定する場合を考える。かかる場合、方角「東」に対する日射量は、晴れた日の12:30であれば0.3[MJ/m2]であると推定される。なお、日射推定部132が方角毎の日射量を推定する方法は上記例に限定されない。例えば、方角毎の日射量を推定する際に、季節に応じた補正係数が用いられても良い。
【0089】
負荷算出部133は、日射による室内侵入負荷を算出する(S506)。例えば、負荷算出部133は、日射推定部132によって推定された方角毎の日射量と壁の日射取得率及び窓の日射取得率とに基づいて、日射による室内侵入負荷を方角毎に算出する。負荷算出部133は、算出した方角毎の負荷を合計し、S506において領域A全体の負荷を算出する。
【0090】
負荷算出部134は、内外の温度差による室内侵入負荷を算出する(S507)。例えば、負荷算出部134は、温湿度計43によって計測された現在の温度と温湿度計44によって計測された現在の温度とに基づいて、内外の温度差を算出する。負荷算出部134は、算出した温度差と壁の熱還流率及び窓の熱還流率とに基づいて、温度差による室内侵入負荷を算出する。
【0091】
負荷算出部135は、第1負荷を算出する(S508)。負荷算出部135は、負荷算出部133によって算出された負荷と負荷算出部134によって算出された負荷とに基づいて、第1負荷を算出する。例えば、第1負荷は、日射による室内侵入負荷と内外の温度差による室内侵入負荷との合計である。
【0092】
負荷特定部130は、第2負荷を特定する(S402)。
図10は、第2負荷の特定例を説明するためのフローチャートである。
図10は、負荷特定部130がS402で行う動作例を示す。
【0093】
推定部136は、内外のエンタルピー差を推定する。推定部136は、先ず、温湿度計43によって計測された現在の温度の実測値と湿度の実測値とを取得する(S601)。推定部136は、温湿度計44によって計測された現在の温度の実測値と湿度の実測値とを取得する(S602)。推定部136は、温湿度計43によって計測された現在の温度及び湿度と温湿度計44によって計測された現在の温度及び湿度とに基づいて、内外のエンタルピー差を推定する(S603)。
【0094】
負荷算出部137は、第2負荷を算出する。負荷算出部137は、換気装置22から現在の風量の情報を取得する(S604)。負荷算出部137は、推定部136によって推定されたエンタルピー差と換気装置22の風量とに基づいて、第2負荷を算出する(S605)。
【0095】
負荷特定部131は、第3負荷を特定する(S403)。
図11は、第3負荷の特定例を説明するためのフローチャートである。
図11は、負荷特定部131がS403で行う動作例を示す。
【0096】
熱量推定部138は、領域Aにいる人が発する熱量Q1を推定する。先ず、熱量推定部138は、領域Aにいる人の数、即ち人数Dに関する情報を取得する(S701)。例えば、熱量推定部138は、当該情報を昇降機設備3から取得する。熱量推定部138は、S701において、算出部362から、現在時刻における人数Dの実測値N1を取得しても良い。熱量推定部138は、S701において、記憶部360から、現在時刻における人数Dの推定値N2を取得しても良い。
【0097】
次に、熱量推定部138は、人数Dに1人当たりの発熱量を乗算することにより、熱量Q1を推定する(S702)。1人当たりの発熱量は、予め設定される。
【0098】
熱量推定部139は、領域Aにある機器が発する熱量Q2を推定する。例えば、熱量推定部139は、計測装置51から、領域Aにおける消費電力に関する情報を取得する(S703)。熱量推定部139は、計測装置51によって計測された消費電力に基づいて、熱量Q2を推定する(S704)。
【0099】
負荷算出部140は、第3負荷を算出する(S705)。負荷算出部140は、熱量推定部138によって推定された熱量Q1と熱量推定部139によって推定された熱量Q2とに基づいて、第3負荷を算出する。
【0100】
次に、判定部124は、空調装置21の制御パラメータの設定内容を判定するための処理を行う(S404)。以下においては、判定部124による当該処理を判定処理ともいう。当該判定処理は、負荷特定部129によって特定された第1負荷、負荷特定部130によって特定された第2負荷、及び負荷特定部131によって特定された第3負荷に基づいて行われる。動作制御部125は、判定部124による判定結果に応じて空調装置21の制御パラメータの設定内容を変更する(S405)。
【0101】
上述したように、
図8に示す第3制御は、開始条件が成立すると開始される。即ち、開始条件が成立することにより、判定部124による判定処理が行われる。例えば、判定部124は、特定の第1時間内における屋内エンタルピーの変化量ΔH1を算出する。判定部124は、算出した変化量ΔH1が基準値ΔHth1以上であるか否かを判定する。基準値ΔHth1は予め設定される。基準値ΔHth1は、建物Cの環境等に応じて設定されることが好ましい。一例として、基準値ΔHth1は1.5%である。
【0102】
また、判定部124は、上記第1時間内における屋外エンタルピーの変化量ΔH2を算出する。判定部124は、算出した変化量ΔH2が基準値ΔHth2以上であるか否かを判定する。基準値ΔHth2は予め設定される。基準値ΔHth2は、建物Cの環境等に応じて設定されることが好ましい。一例として、基準値ΔHth2は5%である。
【0103】
例えば、判定部124は、算出した変化量ΔH1が基準値ΔHth1以上であれば、開始条件が成立したことを判定する。判定部124は、算出した変化量ΔH2が基準値ΔHth2以上であれば、開始条件が成立したことを判定する。即ち、判定部124は、変化量ΔH1が基準値ΔHth1以上であれば、変化量ΔH2が基準値ΔHth2以上でなくても、判定処理を開始する。判定部124は、変化量ΔH2が基準値ΔHth2以上であれば、変化量ΔH1が基準値ΔHth1以上でなくても、判定処理を開始する。
【0104】
当該判定処理において、判定部124は、第1負荷、第2負荷、及び第3負荷と現在供給している冷熱量との差から必要な冷熱量を算出する。判定部124は、算出した冷熱量に基づいて、空調装置21の目標温度、風量、及び風向を設定する。動作制御部125は、判定部124による判定結果に応じて、例えば、制御パラメータの設定内容を表5に示す第1内容から表4に示す第2内容に変更する。
【0105】
開始条件が成立した後、判定部124は、特定の終了条件が成立したか否かを判定する(S406)。終了条件は、判定部124による判定処理を終了するための条件である。終了処理は、予め設定される。終了条件が成立しなければ、S401からS405に示す処理が繰り返し行われる。
【0106】
例えば、判定部124は、変化量ΔH1が基準値ΔHth1より小さく且つ変化量ΔH2が基準値ΔHth2より小さければ、終了条件が成立したことを判定する。これにより、S406でYesと判定される。なお、変化量ΔH1が基準値ΔHth1より小さくても、変化量ΔH2が基準値ΔHth2以上であれば、終了条件は成立しない。変化量ΔH2が基準値ΔHth2より小さくても、変化量ΔH1が基準値ΔHth1以上であれば、終了条件は成立しない。
【0107】
S406でYesと判定されると、判定部124による判定処理が終了する。また、S406でYesと判定されると、動作制御部125は、制御パラメータの設定内容を元に戻す(S407)。これにより、当該設定内容が表4に示す第2内容から表5に示す第1内容に変更される。
【0108】
第3制御では、開始条件が成立すると判定部124による判定処理が開始される。当該判定処理は、第1負荷、第2負荷、及び第3負荷に基づいて行われる。このため、本制御システムであれば、第1負荷、第2負荷、及び第3負荷に応じて制御パラメータの設定内容を適切に判定できる。即ち、本制御システムであれば、領域Aの状況に応じた適切な空調制御を実現できる。
【0109】
次に、
図12を参照し、方角毎の日射量をデータベース化するための事前処理の例について説明する。
【0110】
図12は、日射量のデータベース化に必要な制御システムの機能を説明するための図である。
図12に示す例では、制御装置12は、記憶部120、天候推定部121、及び作成部128を備える。
【0111】
天候推定部121は、現在の日射量に基づいて現在の天候を推定する。例えば、天候推定部121は、
図2及び
図3に示す例と同様に、日射計42によって計測された現在の日射量と温湿度計43によって計測された現在の温度及び湿度と現在時刻とに基づいて、現在の天候を推定する。かかる場合、天候推定部121では、
図3のS101からS104に示す処理と同様の処理が行われる。
【0112】
作成部128は、方角毎の日射量のデータベースを作成する。例えば、作成部128は、天候推定部121から現在の天候の情報と現在時刻の情報とを取得する。作成部128は、日射計42によって計測された現在の日射量の実測値を取得する。なお、日射計42によって計測される日射量は、水平面における実測値である。作成部128は、日射計42によって計測された日射量を方角毎に分解し、それぞれの方角の日射量を求める。作成部128は、時刻、天候、及び日射量の相関性を求め、テーブルT3に示すようなデータベースを構築する。作成部128によって作成されたデータベースは、記憶部120に記憶される。作成部128は、データベースの代わりに、同様の機能を有する数式を作成しても良い。
【0113】
図7は、現在の負荷に応じた空調変更制御を行うための機能を示す。以下に、現在時刻から一定の時間が経過した後の負荷に応じた空調変更制御を行う例について説明する。以下においては、当該一定の時間がX分である例について説明する。Xの値は任意に設定される。Xの値として、第2制御におけるタイムラグが採用されても良い。
【0114】
この例においても、
図7に示す例と同様に、制御装置12は、記憶部120、負荷特定部129、負荷特定部130、負荷特定部131、判定部124、及び動作制御部125を備える。但し、この例では、負荷特定部129~131の各機能が、上述した各機能と相違する。
【0115】
図13は、負荷特定部129の例を示す図である。負荷特定部129は、現在時刻からX分が経過した時点における第1負荷を特定する。
図13に示す例では、負荷特定部129は、天候推定部121、日射推定部132、負荷算出部133、負荷算出部134、及び負荷算出部135に加え、推定部141を更に備える。
【0116】
負荷特定部129がX分後の第1負荷を特定するためには、天候推定部121に、X分後の日射量、X分後の屋外の温度、及びX分後の屋外の湿度を入力する必要がある。負荷算出部134に、X分後の屋外の温度、及びX分後の屋内の温度を入力する必要がある。天候推定部121及び日射推定部132は、時計150からの現在時刻に基づいてX分後の時刻を特定できる。
【0117】
図14は、推定部141の動作例を示すフローチャートである。推定部141は、X分後の日射量、X分後の屋外の温度、及びX分後の屋外の湿度を推定する。例えば、推定部141は、日射計42によって計測された現在の日射量の実測値を取得する。推定部141は、温湿度計43によって計測された現在の屋外の温度の実測値と屋外の湿度の実測値とを取得する(S801)。
【0118】
次に、推定部141は、天気予報装置6から、現在の日射量の推定値を取得する。同様に、推定部141は、天気予報装置6から、現在の屋外の温度の推定値と屋外の湿度の推定値とを取得する(S802)。更に、推定部141は、天気予報装置6から、X分後の日射量の推定値を取得する。同様に、推定部141は、天気予報装置6から、X分後の屋外の温度の推定値と屋外の湿度の推定値とを取得する(S803)。
【0119】
推定部141は、S801からS803で取得した情報に基づいて、X分後の日射量、X分後の屋外の温度、及びX分後の屋外の湿度を推定する(S804)。例えば、推定部141は、現在の日射量の実測値と推定値とに基づいて補正係数を算出する。推定部141は、算出した補正係数を用いてX分後の日射量の推定値を補正することにより、S804においてX分後の日射量を推定する。
【0120】
同様に、推定部141は、現在の屋外の温度の実測値と推定値とに基づいて補正係数を算出する。推定部141は、算出した補正係数を用いてX分後の屋外の温度の推定値を補正することにより、S804においてX分後の屋外の温度を推定する。推定部141は、現在の屋外の湿度の実測値と推定値とに基づいて補正係数を算出する。推定部141は、算出した補正係数を用いてX分後の屋外の湿度の推定値を補正することにより、S804においてX分後の屋外の湿度を推定する。
【0121】
図13に示す例では、天候推定部121は、推定部141によってS804で推定されたX分後の日射量、X分後の屋外の温度、及びX分後の屋外の湿度に基づいて、X分後の天候を推定する。
【0122】
負荷算出部134は、推定部141によってS804で推定されたX分後の屋外の温度に基づいて、内外の温度差による室内侵入負荷を算出する。なお、推定部141は、X分後の屋外の温度を推定する方法と同様の方法によって、X分後の屋内の温度を推定しても良い。領域Aの温度を一定に保つための制御が行われているのであれば、X分後の屋内の温度として、現在の屋内の温度の実測値が用いられても良い。
【0123】
図15は、負荷特定部130の例を示す図である。負荷特定部130は、現在時刻からX分が経過した時点における第2負荷を特定する。
図15に示す例では、負荷特定部130は、推定部136、及び負荷算出部137に加え、人数推定部123、及び風量推定部142を更に備える。
【0124】
負荷特定部130がX分後の第2負荷を特定するためには、推定部136に、X分後の屋外の温度、X分後の屋外の湿度、X分後の屋内の温度、及びX分後の屋内の湿度を入力する必要がある。負荷算出部137に、X分後の風量を入力する必要がある。
【0125】
上述したように、X分後の屋外の温度、及びX分後の屋外の湿度は、推定部141によって推定される。推定部141は、X分後の屋外の温度を推定する方法と同様の方法によって、X分後の屋内の温度を推定しても良い。推定部141は、X分後の屋外の湿度を推定する方法と同様の方法によって、X分後の屋内の湿度を推定しても良い。領域Aの温度を一定に保つための制御が行われているのであれば、X分後の屋内の温度として、現在の屋内の温度の実測値が用いられても良い。領域Aの湿度を一定に保つための制御が行われているのであれば、X分後の屋内の湿度として、現在の屋内の湿度の実測値が用いられても良い。推定部136は、X分後の屋外の温度及び湿度とX分後の屋内の温度及び湿度とに基づいて、X分後の内外のエンタルピー差を推定する。
【0126】
風量推定部142は、X分後の換気装置22の風量を推定する。換気装置22の風量が人数Dに応じて制御されているのであれば、風量推定部142は、X分後の人数Dに基づいて換気装置22の風量を推定する。
【0127】
例えば、人数推定部123は、S106からS109に示す処理と同様の処理を行い、X分後の人数Dを推定する。即ち、人数推定部123は、現在時刻における人数Dの実測値N1を算出部362から取得する。人数推定部123は、現在時刻における人数Dの推定値N2を記憶部360から取得する。人数推定部123は、現在時刻からX分が経過した時点における人数Dの推定値N3を記憶部360から取得する。
【0128】
人数推定部123は、実測値N1、推定値N2、及び推定値N3に基づいて、現在時刻からX分が経過した時点における人数Dを推定する。一例として、人数推定部123は、実測値N1及び推定値N2を用いて補正係数を算出する。人数推定部123は、算出した補正係数を用いて推定値N3を補正することにより、X分後の人数Dを推定する。風量推定部142は、人数推定部123によって推定されたX分後の人数Dに基づいて、X分後の換気装置22の風量を推定する。
【0129】
負荷算出部137は、推定部136によって推定されたX分後の内外のエンタルピー差と風量推定部142によって推定されたX分後の換気装置22の風量とに基づいて、第2負荷を算出する。
【0130】
図16は、負荷特定部131の例を示す図である。負荷特定部131は、現在時刻からX分が経過した時点における第3負荷を特定する。
図16に示す例では、負荷特定部131は、熱量推定部138、熱量推定部139、及び負荷算出部140に加え、人数推定部123、及び電力推定部143を更に備える。
【0131】
負荷特定部131がX分後の第3負荷を特定するためには、熱量推定部138に、X分後の人数Dを入力する必要がある。熱量推定部139に、X分後の消費電力を入力する必要がある。
【0132】
人数推定部123は、S106からS109に示す処理と同様の処理を行い、X分後の人数Dを推定する。例えば、人数推定部123は、上述の例と同様に、実測値N1、推定値N2、及び推定値N3に基づいて、現在時刻からX分が経過した時点における人数Dを推定する。推定値N3は、現在時刻からX分が経過した時点における人数Dの推定値である。熱量推定部138は、人数推定部123によって推定されたX分後の人数Dに基づいて、熱量Q1を推定する。
【0133】
電力推定部143は、現在時刻からX分が経過した時点における消費電力を推定する。例えば、電力推定部143は、計測装置51から、領域Aにおける現在の消費電力に関する情報を取得する。また、電力推定部143は、現在時刻における人数Dの実測値N1を算出部362から取得する。電力推定部143は、現在時刻からX分が経過した時点における人数Dの推定値N4を人数推定部123から取得する。
【0134】
電力推定部143は、現在の消費電力、実測値N1、及び推定値N4に基づいて、X分後の消費電力を推定する。一例として、電力推定部143は、実測値N1及び推定値N4を用いて補正係数を算出する。電力推定部143は、算出した補正係数を用いて現在の消費電力を補正することにより、X分後の消費電力を推定する。熱量推定部139は、電力推定部143によって推定されたX分後の消費電力に基づいて、熱量Q2を推定する。
【0135】
[第4制御]
図17は、第4制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。制御装置12は、換気量特定部144、及び動作制御部125を備える。
【0136】
換気量特定部144は、領域Aに必要な換気量を特定する。換気量特定部144は、先ず、領域Aに現在いる人の数、即ち現在の人数Dの情報を取得する。例えば、換気量特定部144は、人数Dに関する情報を昇降機設備3から取得する。換気量特定部144は、現在時刻における人数Dの実測値N1を算出部362から取得しても良い。換気量特定部144は、現在時刻における人数Dの推定値N2を記憶部360から取得しても良い。
【0137】
次に、換気量特定部144は、現在の人数Dに基づいて、領域Aに必要な換気量を算出する。例えば、換気量特定部144は、人数Dに1人当たりに必要な換気量を乗算することにより、当該算出を行う。1人当たりに必要な換気量は、予め設定される。
【0138】
動作制御部125は、換気装置22を制御する。換気装置22の制御は、換気量特定部144によって特定された換気量に応じて行われる。
【0139】
図17は、現在の人数Dに応じた換気制御を行うための機能を示す。
図18は、X分後の人数Dに応じた換気制御機能を説明するための図である。
図18に示す例では、制御装置12は、換気量特定部144、及び動作制御部125に加え、人数推定部123を更に備える。
【0140】
人数推定部123は、上述の例と同様に、S106からS109に示す処理と同様の処理を行い、現在時刻からX分が経過した時点における人数Dを推定する。換気量特定部144は、人数推定部123によって推定されたX分後の人数Dに基づいて、領域Aに必要な換気量を特定する。
【0141】
[第5制御]
図19は、第5制御を行うために必要な制御システムの機能を説明するための図である。
図19に示す例では、空調装置21は、換気装置22、一次空調機211、及び二次空調機212を備える。制御装置12は、記憶部120、負荷特定部129~131、換気量特定部144、能力判定部145、能力判定部146、モード判定部147、加除湿判定部148、割当判定部149、及び動作制御部125を備える。
【0142】
上述したように、換気装置22は、外気を領域Aに取り込むための装置である。一次空調機211は、換気装置22によって取り込まれた外気を処理する。換気装置22は、一次空調機211の一機能として、一次空調機211に備えられても良い。一次空調機211は、換気装置22によって取り込まれた外気をそのまま処理しても良い。換気装置22からの外気が領域Aではない空間に取り込まれ、当該空間の空気が一次空調機211によって処理されても良い。一次空調機211は、換気装置22によって取り込まれた外気の一部のみを処理しても良い。一次空調機211では、熱を運ぶ媒体として、水が用いられても良いし、代替フロン等の冷媒が用いられても良い。
【0143】
二次空調機212は、一次空調機211によって処理された外気を処理する。また、二次空調機212は、領域Aの空気を処理する。二次空調機212は、調和空気を領域Aに送る。二次空調機212では、熱を運ぶ媒体として、水が用いられても良いし、代替フロン等の冷媒が用いられても良い。
【0144】
一般に、空調装置の成績係数(COP:Coefficient of Performance)の特性曲線は、種々の要因に依存する。当該要因には、製造会社、機種、熱を運ぶ媒体の種類及び当該媒体の流量等が含まれる。更に、熱を運ぶ媒体として水が用いられる場合は、当該要因に、冷水或いは温水の温度差、及び出口温度差等が含まれる。
【0145】
制御装置12の記憶部120に、一次空調機211についての成績係数の特性曲線が記憶される。以下においては、当該特性曲線を第1COP特性曲線ともいう。第1COP特性曲線は、一次空調機211の制御パラメータの設定内容に応じて変化する。このため、記憶部120には、様々な設定内容に対応した多数の第1COP特性曲線が記憶されることが好ましい。
【0146】
記憶部120に、二次空調機212についての成績係数の特性曲線が記憶される。以下においては、当該特性曲線を第2COP特性曲線ともいう。第2COP特性曲線は、二次空調機212の制御パラメータの設定内容に応じて変化する。このため、記憶部120には、様々な設定内容に対応した多数の第2COP特性曲線が記憶されることが好ましい。
【0147】
図20は、制御システムの動作例を示すフローチャートである。
図20は、制御システムが第5制御を行う例を示す。
【0148】
負荷特定部129~131のそれぞれは、第3制御において説明した機能を有する。即ち、負荷特定部129は、領域Aに対する日射量と領域Aの内外の温度差とに基づく第1負荷を特定する(S901)。負荷特定部130は、領域Aの内外のエンタルピー差と換気装置22の風量とに基づく第2負荷を特定する(S902)。負荷特定部131は、領域Aにいる人が発する熱量と領域Aにある機器が発する熱量とに基づく第3負荷を特定する(S903)。
【0149】
換気量特定部144は、第4制御において説明した機能を有する。即ち、換気量特定部144は、領域Aに必要な換気量、即ち領域Aにいる人の数に応じた換気量を特定する(S904)。
【0150】
能力判定部145は、一次空調機211に必要な能力を判定する(S905)。能力判定部145は、負荷特定部129によって特定された第1負荷、負荷特定部130によって特定された第2負荷、及び換気量特定部144によって特定された換気量に基づいて、S905における能力判定を行う。
【0151】
能力判定部146は、二次空調機212に必要な能力を判定する(S906)。能力判定部146は、負荷特定部131によって特定された第3負荷に基づいて、S906における能力判定を行う。
【0152】
モード判定部147は、運転モードを判定する(S907)。例えば、モード判定部147は、運転モードとして、冷房モード或いは暖房モードを判定する。モード判定部147は、能力判定部145によって判定された能力と能力判定部146によって判定された能力とに基づいて、一次空調機211の運転モードを判定する。モード判定部147は、能力判定部145によって判定された能力と能力判定部146によって判定された能力とに基づいて、二次空調機212の運転モードを判定する。
【0153】
加除湿判定部148は、領域Aに必要な加湿量又は除湿量を判定する(S908)。例えば、空調装置21による加湿が必要であれば、加除湿判定部148は、必要な加湿量を判定する。空調装置21による除湿が必要であれば、加除湿判定部148は、必要な除湿量を判定する。S908における判定は、能力判定部145によって判定された能力と能力判定部146によって判定された能力とに基づいて行われる。
【0154】
割当判定部149は、一次空調機211が受け持つ能力と二次空調機212が受け持つ能力との割り当てを判定する(S909)。S909における判定は、モード判定部147による判定結果、加除湿判定部148による判定結果、第1COP特性曲線、及び第2COP特性曲線に基づいて行われる。
【0155】
S909において、割当判定部149は、先ず、能力判定部145によって判定された能力と能力判定部146によって判定された能力とを合算する。また、割当判定部149は、温湿度計43等によって計測された屋外の環境状態に基づいて、加除湿判定部148によって判定された加湿量又は除湿量を二次空調機212の性能だけで実現できるかを判定する。
【0156】
例えば、二次空調機212の加湿性能が低い場合を考える。かかる場合、加除湿判定部148によって判定された加湿量を二次空調機212だけで実現することができなければ、割当判定部149は、一次空調機211と二次空調機212の双方によって加湿を行うことを判定する。また、除湿では、全能力(顕熱及び潜熱)のうち潜熱分を処理する必要がある。このため、除湿を行う場合、割当判定部149は、一次空調機211の潜熱処理能力と二次空調機212の潜熱処理能力とを考慮する必要がある。なお、顕熱比(SHF:Sensible Heat Factor)が変わればCOP特性曲線が変わる。このため、記憶部120には、顕熱比の値が異なる複数の第1COP特性曲線が記憶されることが好ましい。記憶部120に、顕熱比の値が異なる複数の第2COP特性曲線が記憶されることが好ましい。
【0157】
次に、割当判定部149は、一次空調機211についての各種条件に対応する第1COP特性曲線を記憶部120から抽出する。同様に、割当判定部149は、二次空調機212についての各種条件に対応する第2COP特性曲線を記憶部120から抽出する。そして、割当判定部149は、抽出した第1COP特性曲線と第2COP特性曲線とに基づいて、空調装置21全体のCOPが最大或いは可能な限り最大となるように、上記合算した能力のうち、一次空調機211が受け持つ分と二次空調機212が受け持つ分とを判定する。
【0158】
図21は、割当判定部149によって抽出された第1COP特性曲線及び第2COP特性曲線の例を示す図である。
図21に示す例では、P1において空調装置21全体のCOPが最大になる。割当判定部149は、可能な限りP1に近い能力で一次空調機211と二次空調機212とが動作するように、一次空調機211が受け持つ能力と二次空調機212が受け持つ能力との割合を判定する。
【0159】
上述したように、COP特性曲線は種々の要因に依存する。例えば、二次空調機212が冷媒を備えている場合を考える。かかる場合、冷媒の温度が変わると第2COP特性曲線が変わる。冷媒の温度の変化は、第2COP特性曲線の変化に大きく寄与する。このため、記憶部120には、冷媒の温度の値が異なる複数の第2COP特性曲線が記憶されることが好ましい。例えば、空調機では、冷媒の温度を下げることによって凝縮性能を上げることができる。二次空調機212で除湿を行うために冷媒の温度を下げた場合でも、割当判定部149は、最適な第2COP特性曲線を抽出することができる。
【0160】
同様に、一次空調機211が、熱を運ぶ媒体として冷媒を備えている場合、記憶部120には、冷媒の温度の値が異なる複数の第1COP特性曲線が記憶されることが好ましい。一次空調機211と二次空調機212の双方が、熱を運ぶ媒体として冷媒を備えている場合、記憶部120には、冷媒の温度の値が異なる複数の第1COP特性曲線と複数の第2COP特性曲線とが記憶されることが好ましい。
【0161】
動作制御部125は、割当判定部149による判定結果に応じて空調装置21を制御する(S910)。例えば、動作制御部125は、一次空調機211と二次空調機212とのそれぞれに対して、温度、湿度、及び風量の各目標値を出力する。一次空調機211が冷媒を備えていれば、動作制御部125は、一次空調機211に対して冷媒温度の目標値を出力する。二次空調機212が冷媒を備えていれば、動作制御部125は、二次空調機212に対して冷媒温度の目標値を出力する。
【0162】
なお、二次空調機212に対する温度及び湿度の各目標値に関しては、使用者又は第3制御で決定された値が用いられることが好ましい。一次空調機211に対する温度及び湿度の各目標値に関しては、任意に変更することが可能である。換気装置22に対する風量の目標値に関しては、第1制御で推定された人数Dに応じた値、又は第4制御で決定された値が用いられることが好ましい。冷媒温度の目標値に関しては、主に、上述の潜熱処理能力に応じて決定される。
【0163】
なお、屋内の湿度が目標値より高い場合は、除湿を優先する制御が行われても良い。かかる場合は、例えば、一次空調機211及び二次空調機212のうちCOPが高い一方の目標温度を下げるための指令が出力される。当該一方の冷媒の温度を下げるための指令が出力されても良い。他の例として、一次空調機211での除湿を優先し、一次空調機211で十分な除湿量が得られない場合に、二次空調機212の冷媒の温度を下げるための指令が出力されても良い。
【0164】
第5制御では、割当判定部149により、一次空調機211が受け持つ能力と二次空調機212が受け持つ能力との割り当てが判定される。当該判定は、モード判定部147による判定結果、加除湿判定部148による判定結果、第1COP特性曲線、及び第2COP特性曲線に基づいて、空調装置21全体のCOPを考慮して行われる。このため、本制御システムであれば、空調装置21全体のCOPも考慮した上で、領域Aの状況に応じた適切な空調制御を実現できる。
【0165】
図22は、制御装置12のハードウェア資源の例を示す図である。制御装置12は、ハードウェア資源として、プロセッサ61とメモリ62とを含む処理回路60を備える。処理回路60に複数のプロセッサ61が含まれても良い。処理回路60に複数のメモリ62が含まれても良い。
【0166】
本実施の形態において、符号120~149に示す各部は、制御装置12が有する機能を示す。記憶部120の機能は、メモリ62によって実現される。符号121~149に示す各部の機能は、プログラムとして記述されたソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現できる。当該プログラムは、メモリ62に記憶される。制御装置12は、メモリ62に記憶されたプログラムをプロセッサ61(コンピュータ)によって実行することにより、符号121~149に示す各部の機能を実現する。
【0167】
プロセッサ61は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、或いはDSPともいわれる。メモリ62として、半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、或いはDVDを採用しても良い。採用可能な半導体メモリには、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、及びEEPROM等が含まれる。
【0168】
図23は、制御装置12のハードウェア資源の他の例を示す図である。
図23に示す例では、制御装置12は、プロセッサ61、メモリ62、及び専用ハードウェア63を含む処理回路60を備える。
図23は、制御装置12が有する機能の一部を専用ハードウェア63によって実現する例を示す。制御装置12が有する機能の全部を専用ハードウェア63によって実現しても良い。専用ハードウェア63として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0169】
人数管理装置36のハードウェア資源は、
図22或いは
図23に示す例と同様である。人数管理装置36は、ハードウェア資源として、プロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。人数管理装置36は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、符号361~363に示す各部の機能を実現する。人数管理装置36は、ハードウェア資源として、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備えても良い。人数管理装置36が有する機能の一部或いは全部を専用ハードウェアによって実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本開示に係る制御システムは、空調装置を備えたシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0171】
1 管理設備、 2 空調設備、 3 昇降機設備、 4 環境計測設備、 5 電力計測設備、 6 天気予報装置、 11 表示装置、 12 制御装置、 21 空調装置、 211 一次空調機、 212 二次空調機、 22 換気装置、 31 通信装置、 32 群管理盤、 33 制御盤、 34 巻上機、 35 かご、 36 人数管理装置、 37 秤装置、 41 入出力装置、 42 日射計、 43~44 温湿度計、 45 CO2濃度計、 51 計測装置、 52 電灯盤、 53 動力盤、 54 太陽光発電機、 60 処理回路、 61 プロセッサ、 62 メモリ、 63 専用ハードウェア、 120 記憶部、 121 天候推定部、 122 時間特定部、 123 人数推定部、 124 判定部、 125 動作制御部、 126 判定部、 127 検出部、 128 作成部、 129~131 負荷特定部、 132 日射推定部、 133~135 負荷算出部、 136 推定部、 137 負荷算出部、 138~139 熱量推定部、 140 負荷算出部、 141 推定部、 142 風量推定部、 143 電力推定部、 144 換気量特定部、 145~146 能力判定部、 147 モード判定部、 148 加除湿判定部、 149 割当判定部、 150 時計、 360 記憶部、 361 検出部、 362 算出部、 363 学習部