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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/14 613
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022545190
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032528
(87)【国際公開番号】W WO2022044246
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃久
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105231(JP,A)
【文献】特開2014-054815(JP,A)
【文献】特開2003-286478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス基材を有する部材より構成されるインクジェットヘッドであって、
前記ステンレス基材上に樹脂層を有し、
前記樹脂層が、前記ノズルプレートを構成する下地層及び撥液層であり、
前記樹脂層の表面又は側面部が、インクと接触する構成であり、
前記ステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であり、
前記下地層が、シランカップリング剤を含有する層で、前記ステンレス基材側から順に第1下地層及び第2下地層を有し、 前記第1下地層が含有する前記シランカップリング剤が、両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含み、
前記第2下地層が含有する前記シランカップリング剤が、炭素、ケイ素及び酸素を主成分として構成される酸化物である
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記ステンレス基材の表面部における総Cr含有量に対する3価のCrの含有率が、50atm%以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記ステンレス基材の表面部における構成元素の濃度比において、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値が0.8以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記ステンレス基材の表面部にCr含有層を有し、かつ前記Cr含有層の層厚が、5~50nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記ステンレス基材を有する部材が、インクと接触するノズルプレート、インク流路、インク室、又は外装部を構成する部材であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記撥液層が、フッ素(F)を有するカップリング剤を用いて形成された層であることを特徴とする請求項から請求項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記インクが、少なくとも色材と、水を1質量%以上含有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記インクが、アルカリインクであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに関する。さらに詳しくは、構成部材間の密着性、インク耐性及び密着耐久性に優れたインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及しているインクジェット記録装置は、複数のノズル孔が列状に並んで形成されたノズルプレートを具備したインクジェットヘッドをフレーム等に取り付けることによって保持し、当該複数のノズルからそれぞれ記録媒体に向けて、各色インクを微小な液滴の状態で吐出することにより、記録媒体に画像を形成する。
【0003】
インクジェットヘッドの代表的なインク吐出方式としては、加圧室に配置された電気抵抗体に電流を流すことにより発生した熱でインク中の水を気化膨張させインクに圧力を加えて吐出させる方法と、加圧室を構成する流路部材の一部を圧電体にするか、流路部材に圧電体を設置し、複数のノズル孔に対応する圧電体を選択的に駆動することにより、各圧電体の動圧に基づいて加圧室を変形させてノズルから液体を吐出させる方法がある。
【0004】
インクジェットヘッドにおいて、インク液滴の良好な射出性能を実現する上では、ノズルが設けられた面の表面特性が非常に重要となっている。
【0005】
インクジェットヘッドのノズル孔の近傍にインク液やゴミが付着すると、吐出するインク液滴の射出方向が曲がること、又はノズル孔でのインク液滴の射出角度が広がり、サテライトの発生という問題が生じる。
【0006】
インク液滴を安定に射出させるためには、インク流路内の設計やインクに圧力を印加する方法を最適化することはもちろんであるが、それだけでは不十分であり、さらにインクを射出するノズル孔の周りをいつも安定な表面状態に維持することが必要となる。そのためには、ノズルプレートのインク射出面のノズル孔周辺部に、不要なインクが付着、残留しないように撥液性を有する撥液層を付与する方法が検討されている。
【0007】
一般に、インクジェットヘッドが具備するノズルプレートのノズル面に形成されている撥液膜には、シリコーン系化合物やフッ素含有有機化合物、例えば、シランカップリング剤等が用いられている。
【0008】
撥液層の形成にシランカップリング剤を用いることにより、密着性が優れた撥液層を形成できることが知られている。しかしながら、ノズルプレートを構成する基材や下地層のヒドロキシ基の密度が低い場合、インクを構成するアルカリ性成分がそこに存在する水素結合やヒドロキシ基結合を破壊し、その結合を切断してしまうため、アルカリ耐性が低い撥液層となるという問題を有している。
【0009】
上記問題に対し、特許文献1には、インクジェットヘッドのインクとの接液部の耐食性向上に寄与できるヘッド構成部材の表面処理法として、インクジェットヘッドに液体(インク)を供給する部材の壁面に、窒素とクロムからなるCrNx化合物層が形成されていることを特徴とするインクジェットプリンターで、インクジェットヘッドの内壁又はインク供給配管の内側等のインクと接触する部材の腐食を防止し、耐久性が向上することができるとされている。
【0010】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法では、CrN層と下地層の密着性が不十分であり、耐久性(擦過耐久性、熱応力による耐久性等)が確保できないという問題が存在することが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-66510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、構成部材間の密着性と、インク耐性及び密着耐久性に優れたインクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、ステンレス基材を有する部材より構成され、前記ステンレス基材上に樹脂層を有し、前記樹脂層の表面又は側面部が、インクと接触する構成であり、前記ステンレス基材の表面が、Cr含有層を有し、かつ前記Cr含有層が、Cr元素に対しAr元素を特定の比率以上で含有するインクジェットヘッドにより、構成部材間の密着性と、インク耐性及び密着耐久性に優れたインクジェットヘッドを実現することができることを見いだし、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0015】
1.ステンレス基材を有する部材より構成されるインクジェットヘッドであって、
前記ステンレス基材上に樹脂層を有し、
前記樹脂層が、前記ノズルプレートを構成する下地層及び撥液層であり、
前記樹脂層の表面又は側面部が、インクと接触する構成であり、
前記ステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であり、
前記下地層が、シランカップリング剤を含有する層で、前記ステンレス基材側から順に第1下地層及び第2下地層を有し、 前記第1下地層が含有する前記シランカップリング剤が、両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含み、
前記第2下地層が含有する前記シランカップリング剤が、炭素、ケイ素及び酸素を主成分として構成される酸化物である
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【0016】
2.前記ステンレス基材の表面部における総Cr含有量に対する3価のCrの含有率が、50atm%以上であることを特徴とする第1項に記載のインクジェットヘッド。
【0017】
3.前記ステンレス基材の表面部における構成元素の濃度比において、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値が0.8以上であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のインクジェットヘッド。
【0018】
4.前記ステンレス基材の表面にCr含有層を有し、かつ前記Cr含有層の層厚が、5~50nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【0019】
5.前記ステンレス基材を有する部材が、インクと接触するノズルプレート、インク流路、インク室、又は外装部を構成する部材であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【0024】
.前記撥液層が、フッ素(F)を有するカップリング剤を用いて形成された層であることを特徴とする第項から第項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【0025】
.前記インクが、少なくとも色材と、水を1質量%以上含有することを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【0026】
.前記インクが、アルカリインクであることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、構成部材間の密着性と、インク耐性及び密着耐久性に優れたインクジェットヘッドを提供することができる。
【0028】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、以下のように推察している。
【0029】
ステンレス基材を有する部材より構成される本発明のインクジェットヘッドでは、ステンレス基材上に樹脂層を有し、当該樹脂層の表面又は側面部が、インクと接触する構成であり、前記ステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0030】
従来、インクジェットヘッドの構成部材、例えば、インクジェットヘッドのノズルプレート面に具備される撥水膜においては、界面浸透性が高いインク(例えば、アルカリインク)に適用し、長期間にわたり当該インクと接触すると、ノズル穴周りでステンレス基材と、その上に構成されている機能層、例えば、下地層との界面が剥離する現象が確認され、それが、密着耐久性の低下の要因となっていた。
【0031】
本発明者は、上記問題に対し、その解決手段について鋭意検討を進め、ステンレス基材の表面に対しプラズマ処理を施す技術を更に追求した結果、ステンレス基材表面に機能性層を形成方法として、O2プラズマ処理ではなく、Arプラズマ処理して、ステンレス基材上に不動態膜として、酸化Crの構造にAr元素を有することにより、上記目的を達成することができることを見出した。更に、ステンレス基材表面に存在するCrにおいて、表面酸化Crの3価結晶状態となっている方が6価の結晶状態の場合に比べて、強い水系インク耐性を示すことが分かった。この接液部であれば撥水性の樹脂膜だけではなく、接着剤や保護層等の有機膜のステンレス基材と隣接層との密着性を高めることができる。
【0032】
また、ステンレス基材表面部における総Cr含有量に対する3価のCrの含有率を50atm%以上とすることにより、密着耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0033】
さらに、ステンレス基材表面部の構成元素の濃度比として、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値を0.8以上とすることにより、上記アルカリインク耐性を向上させることができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明のインクジェットヘッドの構成部材の一例であるノズルプレートの構成の一例を示す概略断面図
図2】本発明のインクジェットヘッドの構成部材の一例であるノズルプレートの構成の他の一例を示す概略断面図
図3】ノズルプレートのノズル孔部分の構成の一例を示す概略断面図
図4】本発明のインクジェットヘッドの構成の一例を示す概略断面図
図5】RIEモードの高周波プラズマ装置の一例を示す概略図
図6】PEモードの高周波プラズマ装置の一例を示す概略図
図7】ステンレス基材表面部におけるCrの価数別のプロファイルの一例を示すグラフ
図8】本発明に係るノズルプレートの適用が可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略斜視図
図9図8に示すインクジェットヘッドを構成するノズルプレートの一例を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のインクジェットヘッドは、ステンレス基材を有する部材より構成されるインクジェットヘッドであって、前記ステンレス基材上に樹脂層を有し、前記樹脂層の表面又は側面部が、インクと接触する構成であり、前記ステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であることを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0036】
本発明の実施形態としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記ステンレス基材表面部における総Cr含有量(atm%)に対する3価のCrの含有率(atm%)が、50atm%以上であることが、ステンレス基材との密着性をより向上することができ、より優れた密着耐久性を発現させることができる点で好ましい。
【0037】
また、前記ステンレス基材表面部における構成元素の濃度(atm%)の比において、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値が0.8以上であることが、アルカリインク等による長期間にわたる印字を行っても、ステンレス基材と下地層間の界面へのインクの浸透を防止し、ステンレス基材と下地層間の剥離をより一層防止することができる点で好ましい。
【0038】
また、前記ステンレス基材の表面部がCr含有層を有し、かつ前記Cr含有層の層厚が、1~50nmの範囲内とすることが、本発明の目的効果であるノズルプレートのノズル孔内面部におけるアルカリインク耐性をより向上させることができる点で好ましい。
【0039】
また、ステンレス基材を有する部材が、インクと接触するノズルプレート、インク流路、インク室、又は外装部を構成する部材であることが、本発明の目的効果をより発現することができる点で好ましい。
【0040】
また、樹脂層が、少なくとも重合性高分子より構成されていることが、隣接層との優れた密着性を得ることができる点で好ましい。
【0041】
また、樹脂層が、前記ノズルプレートを構成する下地層及び撥液層であることが、本発明の効果をより発現させることができる点で好ましい。
【0042】
また、下地層が、シランカップリング剤を含有する層であることが、ステンレス基材との密着性が向上し、ノズルプレートが応力、特に厚さ方向での応力を受けた際に、ノズルプレートのステンレス基材と、その上に設けた構成層間の密着性を向上させることができ、密着性の向上と共に、ノズルプレート表面がメンテナンス時に使用するワイプ材等により幅手方向での応力を受けた際の密着耐久性を向上させることができる点で好ましい。
【0043】
また、インクとして、少なくとも色材と、水を1質量%以上含有するインク、さらには、アルカリインクを用いた場合において、本発明の効果をより発現することができる。
【0044】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0045】
《インクジェットヘッド》
本発明のインクジェットヘッドは、ステンレス基材を有する部材より構成され、前記ステンレス基材上に樹脂層を有し、前記樹脂層の表面又は側面部が、インクと接触する構成であり、前記ステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0046】
本発明のインクジェットヘッドを構成するインクと接触する部材としては、ステンレス基材を有する部材より構成され、ステンレス基材上に樹脂層を有していれば特に制限はなく、例えば、ノズルプレート、ノズル基板、インク流路、インク室、又は外装部を構成する部材を挙げることができる。
【0047】
以下に、インクジェットヘッドを構成するインクと接触する部材の一例として、ステンレス基材を有する部材であって、前記ステンレス基材上に樹脂層を有する構成の一例であるノズルプレートについて説明する。
【0048】
図1は、本発明のインクジェットヘッドの構成部材の一例であるノズルプレートの構成の一例を示す概略断面図である。
【0049】
図1で示すように、ノズルプレート1の基本的な構成は、ステンレス基材2の表面に、Cr元素に対しAr元素をatm%の比で0.01以上含有し、その上に樹脂層4を有している。ここで、樹脂層4は少なくとも重合性高分子より構成されていることが好ましい。
【0050】
図2は、本発明のインクジェットヘッドの構成部材の一例であるノズルプレートの構成の他の一例を示す概略断面図である。
【0051】
図2に示すノズルプレート1は、図1で示したノズルプレートの構成に対し、ステンレス基材の表面部3上に形成する樹脂層4が、下地層5と撥液層6より構成され、さらに、下地層が第1下地層5Aと第2下地層5Bの2層構成からなる下地層5とした構成である。例えば、第1下地層5Aを両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含むシランカップリング剤(以下、シランカップリング剤Aともいう。)を含有する構成とし、第2下地層5Bとして、炭素(C)、ケイ素(Si)、酸素(O)を主成分として構成される酸化物、例えば、低分子量のシラン化合物又はシランカップリング剤で構成してもよい。
【0052】
図3は、上記説明した本発明で規定する構成からなるノズルプレートにノズル孔を形成した部分構成の一例を示す概略断面図である。
【0053】
図3で示すように、ステンレス基材2と下地層5の間に、Cr元素に対しAr元素をatm%の比で0.01以上含有する表面部3を設けることにより、アルカリインク等のインクInによる長期間にわたる印字を行っても、ステンレス基材2と下地層5間の界面へのインクInの浸透を防止し、ステンレス基材2と下地層5間の剥離を防止することができることを見出した。また、Cr含有層の表層部における総Cr含有量に対する3価のCrの含有率を50atm%以上とすることにより、密着耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0054】
さらに、表面部3の構成元素の濃度比として、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値を0.8以上とすることにより、上記アルカリインク耐性を向上させることができることを見出した。
【0055】
《インクジェットヘッドの構成》
次いで、本発明のインクジェットヘッドの代表的な構成を、図を用いて説明する。
【0056】
図4は、本発明のインクジェットヘッドの構成の一例を示す概略断面図である。
【0057】
インクジェットヘッド10は、ヘッドチップ12、保持部13及び共通インク室15等を備える。
【0058】
ヘッドチップ12は、内部に、下側から順にノズルプレート21(以下、ノズル基板ともいう。)、中間基板22、アクチュエーター基板23及び保護基板24が積層一体化されることによって構成されている。
【0059】
ノズル基板21にはインクの液滴を射出するためのノズル孔N、ノズル孔Nと連通する大径部212、及びインクの循環に使用される個別循環流路213が形成されている。
【0060】
中間基板22には、中間基板22を上下方向に貫通し大径部212に連通する連通孔221、及び複数の個別循環流路213から流れてきたインクが合流する共通循環流路222が形成されている。
【0061】
アクチュエーター基板23には、連通孔221に連通し、インクを貯留する圧力室231が形成されている。
【0062】
保護基板24には、上下方向に貫通する供給流路241が形成されており、共通供給液室51と圧力室231とを連通している。
【0063】
共通インク室15は、インクが充填されている共通供給液室51を有する。
【0064】
共通インク室15の上部には、接続部11が設けられ、接続部11からヘッドチップ2に供給するインクが供給される。
【0065】
次に、インクジェットヘッド10内部のインクの循環経路について説明する。インクは、接続部11から供給され、共通インク室15の共通供給液室51、供給流路241、圧力室231、連通孔221、大径部212、個別循環流路213、共通循環流路222、接続部12の順に流れ、インクジェットヘッド10外に排出される。
【0066】
図4の矢印は、インクの流れを示す。
【0067】
よって、接続部11、共通インク室5の共通供給液室51、供給流路241、圧力室231、連通孔221、大径部212、個別循環流路213、共通循環流路222、接続部12が流路200を構成する。
【0068】
上記のような代表的な構成のインクジェットヘッドにおいて、ステンレス基材を有する部材が、ノズルプレート、ノズル基板、インク流路、インク室、又は外装部を構成する部材であることが好ましい態様である。
【0069】
図4で示すように、Aが図1及び図2で説明した構成のノズルプレート21であり、Bは、図3で説明したノズル孔Nであり、Cはノズルプレート21と中間基板21とでインク流路を構成するための接合部であり、D1及びD2は中間基板22とアクチエーター基板の接合によりインク流路を構成する部材であり、Eは保護基板24と保護部により構成されるインクの共有流路241を構成する部材である。また、Fはノズルプレート21の外装部であり、メンテナンス等によりインクと接触する可能性を有する部位である。これらのSUS基板から構成されインクと接触する部位に対し、本発明で規定する構成部材を適用することにより、構成部材間の密着性と、インク耐性及び密着耐久性に優れたインクジェットヘッドを提供することができる。
【0070】
[ノズルプレートの各構成材料]
次いで、本発明の印打ジェットヘッドを構成する代表的な部位であるノズルプレートを構成する、ステンレス基材2、表面部3、下地層5、撥液層6等の詳細について説明する。
【0071】
〔ステンレス基材〕
ノズルプレートを構成するステンレス基材2としては、機械的強度が高く、耐インク性を備え、寸法安定性に優れた材料として、ステンレス鋼(SUS)を適用する。代表的なステンレス鋼であるSUS304の下記の処理を施す前の状態での平均成分組成としては、Feが71atm%、Crが18atm%、Niが8.5atm%で、残りがその他の元素である。
【0072】
ノズルプレートを構成するステンレス基材の厚さは、10~500μmの範囲であり、好ましくは30~150μmの範囲内である。
【0073】
本発明においては、本発明で規定するステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であることを特徴とする。なお、本発明でいうステンレス基材の表面部とは、基材の最表面より深さ5nmまでの領域をいう。
【0074】
また、ステンレス基材の表面部3における総Cr含有量に対する3価のCrの含有率が、50atm%以上であること、Cr含有層の表層部における構成元素の濃度比において、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値が0.8以上であること、また、ステンレス基材の表面部がCr含有層を有し、かつ前記Cr含有層の層厚が、1~50nmの範囲内であることが好ましい態様である。
【0075】
本発明に係る表面部3は、ステンレス基材表面に、アルゴンガスによるスパッタ法により表面処理を施す方法(成膜方法1)や、又はステンレス基材上にスパッタ法でCrをターゲット材料としてCr含有層を形成した後、当該Cr含有層に対し、アルゴンガスによるスパッタ法により表面処理を施す方法による方法(成膜方法2)あってもよい。
【0076】
ステンレス基材と後述する下地層の間に形成する本発明に係るステンレス基材の表面部におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0077】
(Cr含有層の形成方法)
本発明において、基材表面にCr含有層を設けてもよく、その形成方法としては、特に制限はないが、大きく分けて、下記の方法で形成するすことが好ましい。
【0078】
本発明に適用が可能なCr含有層の成膜方法としては、物理的気相成長法(PVD法)や化学的気相成長法(CVD法)等の乾式成膜法や、電解メッキや無電解メッキ等の湿式成膜法等が挙げられるが、本発明では、乾式成膜法で形成することが、薄膜で緻密な膜を形成することができる点で好ましい。
【0079】
乾式成膜法としては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンプレーディング法、電子線エピタキシー法(MBE法)、有機金属気相成長法(MOCVD法)、プラズマCVD法、アルゴンガスを用いたプラズマエッチングモード法(Ar-PEモード)、アルゴンガスを用いた反応性イオンエッチング法(Ar-RIEモード)等を挙げることができるが、薄膜で、Cr濃度の高い緻密な膜を形成することができる観点から、スパッタ法や、アルゴンガスを用いた反応性イオンエッチング法(Ar-RIEモード)及びそれらを組み合わせた方法が好ましい。
【0080】
本発明では、上記説明した方法の中でも、スパッタ法による成膜の後、プラズマ処理による表面処理をする方法が、所望のCr含有層を形成することができる点で好ましい。
【0081】
(ステンレス基材表面の具体的な成膜方法1)
以下に、代表的なステンレス基材の表面部の成膜(成膜方法1)について説明する。
【0082】
本発明に適用可能なプラズマエッチングモードとしては、RIEモードとPEモードを挙げることができる。本発明でいう「RIE」(Reactive Ion Etching)モードとは、対向する平板電極対において、給電電極側に、プラズマ処理対象物としてノズルプレートを構成するステンレス基材、例えば、SUS304を配置し、プラズマ処理対象物表面にプラズマ処理を施す方法である。一方、「PE」(Plasma Etching)モードとは、対向する平板電極対において、グランド電極側に、プラズマ処理対象物を配置し、プラズマ処理対象物表面にプラズマ処理を施す方法である。
【0083】
さらに図を交えて、各プラズマエッチングモードに関する詳細を説明する。
【0084】
〈1:Ar-RIEモードプラズマ処理装置〉
図5は、Cr含有層の形成に用いるRIEモード(反応性イオンエッチングモード)の高周波プラズマ装置の一例を示す概略図である。RIEモードはイオン衝撃による物理的で高速な表面処理に適している。
【0085】
図5において、RIEモードの高周波プラズマ装置20A(以下、「プラズマ処理装置20A」ともいう。)は、反応室21、高周波電源22(RF(Radio Frequency)電源)、コンデンサー23、平面電極24(カソード、「給電電極」ともいう。)、対向電極25(アノード、「グランド電極」ともいう。)、接地部26などを有する。反応室21は、ガスの流入口27、流出口28を有する。平面電極24及び対向電極25は、反応室21内に配置されている。
【0086】
コンデンサー23を介して高周波電源22に接続された平面電極24と、平面電極24に対向し、接地部26により接地された対向電極25とから成る一対の電極は、密閉可能な反応室21内に配置されている。また、プラズマ処理の対象物としてのノズルプレート基材30が平面電極24上に配置される。
【0087】
先ず、ガス流出口28を介して反応室21から空気が十分に除去される。この状態で、ガス流入口27を介して反応室21内に反応ガスGとしてArガスを供給しつつ、高周波電源22を起動し、高周波電源22に、3MHz以上、100MHz以下の高周波(通常、13.56MHz)で電力を供給すると、平面電極24及び対向電極25間に、放電Dが発生し、反応ガスGの低温プラズマ(陽イオン及び電子)とラジカル種が生成される放電空間31を形成する。この時、高周波電力密度としては、0.01~3W/cmの範囲内に設定することが好ましい。
【0088】
上記構成において、イオンと電子の易動度の違いにより、電子は平面電極24に捕集されて平面電極24を相対的に負に帯電させる(自己バイアス)。平面電極24の電子は、給電ライン33を経由してコンデンサー23で止まる。また、対向電極25の電子は、給電ライン32を経由して接地部26に流れる。
【0089】
一方、ラジカル種及び陽イオンは容易には電極に捕集されずにプラズマ中を運動する。このプラズマ中に被処理物としてのノズルプレート基材30が、平面電極24上に配置されると、ノズルプレート基材30の対向電極25側に強い電場が生じたイオンシースが発生し、陰極降下により400~1000Vの電界が発生し、ノズルプレート基材30中で運動する陽イオンがノズルプレート基材30の表面部に衝突又は接触する。こうして、被処理物の表面処理(ここではエッチング)が行われる。
【0090】
〈2:Ar-PEモードプラズマ処理装置〉
図6は、Cr含有層の形成に用いるPEモード(プラズマエッチングモード)の高周波プラズマ装置の一例を示す概略図である。PEモードはイオン衝突効果の少ないマイルドは処理が可能となる。
【0091】
図6に示すPEモードの高周波プラズマ装置20B(以下、「プラズマ処理装置20B」ともいう。)は、基本的な構成は上記図5で説明したAr-RIEモードの高周波プラズマ装置20Aと近似であるが、対向する平板電極対において、グランド電極25側に、プラズマ処理対象物であるノズルプレート基材30を配置し、プラズマ処理対象物表面にプラズマ処理を施す方法である。
【0092】
本発明では、反応ガスとしてアルゴンガスを用いるこの方法を「Ar-PEモードプラズマ処理」という。
(Cr含有層の具体的な成膜方法2)
以下に、代表的なCr含有層の成膜(成膜方法2)について説明する。
〈スパッタ法によるCr含有層の形成(成膜方法2)〉
スパッタ法では、Crをターゲットとして、アルゴンガス、酸素ガス、メタンなどの雰囲気下でのスパッタ成膜を行い、Cr層を形成する。このスパッタ法により成膜されるCr層におけるCr含有量は、ほぼ100atm%となる。
【0093】
具体的なスパッタ法による成膜方法の一例を以下に示す。
【0094】
真空条件下で、DCスパッタ成膜装置の電極上に、予めセットしてあったCrターゲットを以下の条件でスパッタを行った。この際、DCスパッタに限らず、他のプラズマソースを用いてもよい。
【0095】
ターゲット:Cr
DC電力密度:1.1W/cm2
電力:RF電力(13.56MHz)、200W
温度:25℃
圧力:0.3Pa
導入ガス:アルゴンガス
成膜時間:30秒
上記スパッタ法で成膜されるCr含有層の層厚は20nmとなる。本発明に係るCr含有層の層厚としては、概ね1~5000nmの範囲内であり、ノズルプレートのアルカリ耐性とノズル孔作製時の加工性の観点から、5~50nmの範囲内であることが好ましい。
次いで、スパッタ法で形成したほぼ100atm%のCr層に対し、上記成膜方法1で記載したArプラズマ処理を行い、所望の原子組成のCr含有層を形成する。
【0096】
(ステンレス基材の表面部3の特性値の測定方法)
本発明に係るステンレス基材の表面部3は、Crに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であることを特徴とする。また、ステンレス基材の表面部3における総Cr含有量に対する3価のCrの含有率が、50atm%以上であること、ステンレス基材の表面部3における構成元素の濃度比において、Feに対するCrの濃度の比(Cr/Fe)の値が0.8以上であることが好ましい態様である。
【0097】
以下、本発明に係るステンレス基材の表面部3の各特性値とその具体的な測定方法について、その詳細を説明する。
【0098】
〈ステンレス基材の表面部3の構成元素の組成比率の測定〉
本発明において、ステンレス基材の表面部3を構成する元素の組成比率等を測定する方法は、特に限定されないが、本発明において、例えば、ステンレス基板上に表面部3を形成したサンプルに対し、トリミング用のガラスナイフなどを用いてCr含有層の表面から10nmの領域を削って、当該切片部位を構成する材料の組成を定量分析する方法や、Cr含有層の厚さ方向の化合物の質量を赤外分光法(IR)や原子吸光などでスキャンする方法などを用いて定量化する方法、また、Cr含有層が、10nm以下の極薄膜であっても、XPS(X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析法によって定量化することできる。中でも、XPS分析法を用いることが、極薄膜であっても元素分析することができ、また後述のデプスプロファイル測定によって、Cr含有層全体の層厚方向での組成分布プロファイルを測定できる。
【0099】
〈分析方法1:ステンレス基材の表面部3における3価Crの含有率の測定〉
本発明に係るステンレス基材の表面部3における3価のCrの含有率の測定方法について説明する。
【0100】
本発明に係るステンレス基材の表面部3では、総Cr含有量に対する3価のCrの含有率が、50atm%以上であることが好ましく、下記に記載の方法に従って3価のCrの含有率を求めることができる。
【0101】
本発明において、ステンレス基材の表面部3におけるCrの0価(金属単体、Cr(0))、3価(Cr(III)、例えば、Cr23)及び6価(Cr(VI)、例えば、CrO3)の価数別の含有率を測定するには、X線光電子分光分析法を用いることが好ましい。
【0102】
X線光電子分光分析法とは、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、又はESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis, エスカ)と呼ばれている光電子分光の1種で、ステンレス基材の表面部3を形成したサンプルの表面から深さ10nmまでの表面領域に存在する構成原子とその電子状態を分析する方法である。
【0103】
以下に、適用可能なXPS分析の具体的な条件の一例を示す。
【0104】
・分析装置:アルバック・ファイ社製QUANTERA SXM
・X線源:単色化Al-Kα 15kV 25W
・Pass energy:55eV
・データ処理:アルバック・ファイ社製のMultiPakを使用
・原子組成分析:Shirley法を用いてバックグラウンド処理を行い、得られたピーク面積から相対感度係数を用いて原子組成を定量する。
【0105】
Cr価数状態分析:炭素1sピークの結合エネルギーからチャージによるピークシフトを補正した上で、Cr2p3/2ピークに対し、クロムの0価、3価、6価のピークにピーク分離を行う。各状態の結合エネルギーは、0価が574.3eV、3価が576.0eV、6価が578.9eVであり、この値をピークとしてピークのFWHMが1.2~2.8の範囲内になる条件でフィッティングを行い、各ピークの面積比からクロムの0価、3価及び6価の割合を求める。
【0106】
上記は下地層や撥液層が施されていない試料に対して表面部(深さ5nm)における3価のCrの含有率を求める方法であるが、下地層や撥液層が施されている試料に対しても、GCIB(ガスクラスターイオンビーム)を用いて、下地層や撥液層を除去した上で上記測定を行うことで、ステンレス基材の表面部3における3価のCrの含有量を求めることができる。
【0107】
上記のX線光電子分光分析法を用いて、例えば、ステンレス基材上に、Crスパッタとプラズマ処理を行ってステンレス基材の表面部3を形成したノズルプレートのCrの価数別の含有率(atm%)を測定し、総Cr含有量に対する3価のCrの含有率(atm%)を求めることができる。
【0108】
上記方法により測定したCr含有層におけるCrの価数別のプロファイルの一例を、図7に示す。
【0109】
〈分析方法2:Cr含有層における各元素の平均組成比率の測定〉
本発明においては、ステンレス基材の表面部3まで形成したサンプルについて、総Cr含有量(atm%)に対する3価のCrの含有率(atm%)と合わせて、ステンレス基材の表面部3の各元素(例えば、Cr、Fe、Ar、N等)の平均組成比率(atm%)を算出する。平均組成比率は、試料をランダムに10点測定し、その平均値を使用して、ステンレス基材の表面部3におけるCrに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)、Feに対するCrの濃度(atm%)の比(Cr/Fe)の値を算出する。
【0110】
本発明に係る分析方法2は、上記分析方法1に記載した元素組成分析と同じであるが、価数状態分析は不要であることから「Pass energy」については特に規定はない。下地層や撥液層が施されている試料に対しても、分析方法1と同じようにGCIB(ガスクラスターイオンビーム)を用いて下地層や撥液層を除去した上で上記測定を行うことができる。
【0111】
〔樹脂層〕
本発明のインクジェットヘッドにおいては、Cr含有層が形成されているステンレス基材上に樹脂層を有することを特徴とする。
【0112】
本発明に係る樹脂層は、さらには、少なくとも重合性高分子より構成されていることが好ましい。
【0113】
(重合性高分子)
本発明に係る重合性高分子としては、特に制限はなく、一般的な重合性高分子を適用することができ、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が使用可能である。
【0114】
上記重合性高分子の中でも、例えば、ノズルプレートに適用する場合には、下地層及び撥液層の構成材料としては、下地層が、シランカップリング剤を用いて形成された層であること、下地層が含有する前記シランカップリング剤が、両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含むこと、前記撥液層が、フッ素(F)を有するカップリング剤を用いて形成された層であることが好ましい。
【0115】
(樹脂層の代表的な構成例)
以下、樹脂層の代表例であるノズルプレートを構成する下地層及び撥液層の詳細について説明する。
【0116】
〈下地層〉
本発明に係る下地層は、本発明に係るCr含有層と撥液層との間に形成され、より好ましい形態としては、図2で例示したように、第1下地層5Aと第2下地層5Bの2層構成からなる下地層5とした構成である。例えば、第1下地層5Aを両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含むシランカップリング剤(以下、シランカップリング剤Aともいう。)を含有する構成とし、第2下地層5Bとして、Siを含む有機酸化物を主成分として構成される酸化物、例えば、低分子量のシラン化合物又はシランカップリング剤で構成してもよい。
【0117】
〈1.シランカップリング剤Aによる下地層の形成:第1の下地層〉
本発明において、脱水縮合反応により下地層を形成するのに用いるシランカップ剤として、両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含むシランカップリング剤Aを適用することが好ましい。
【0118】
下地層に適用可能なシランカップリング剤Aとしては、特に制限はなく、従来公知の上記要件を満たす化合物を適宜選択して用いることができるが、本発明の目的効果をいかんなく発揮させることができる観点から、下記一般式(1)で表される両端末に反応性官能基としてアルコキシ基、塩素、アシロキシ基、又はアミノ基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環(フェニレン基)を含む構造を有する化合物であることが好ましい。
【0119】
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物〉
一般式(1)
s3-sSi(CH2t64(CH2uSiR3-mm
上記一般式(1)において、Q及びRは、それぞれメチル基又はエチル基を表す。t及びuは、それぞれ1~10の自然数を表す。s及びmは、それぞれ1~3の自然数を表す。sが1、mが1の場合、Q及びRはそれぞれ二個存在するが、二個のQ及びRはそれぞれが同一構造であっても、異なる構造であってもよい。C64はフェニレン基である。Xはアルコキシ基、塩素、アシロキシ基、又はアミノ基を表す。
【0120】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数が1~12のアルコキシ基、好ましくは炭素数が1~8のアルコキシ基、より好ましくは炭素数が1~6のアルコキシ基等である。
【0121】
また、アシロキシ基としては、例えば、炭素数が2~19である直鎖又は分岐鎖アシロキシ基(アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、及びオクタデシルカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0122】
また、アミノ基としては、アミノ基(-NH2)及び炭素数が1~15の置換アミノ基(例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、n-プロピルアミノ、メチル-n-プロピルアミノ、エチル-n-プロピルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、イソプロピルメチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、エチルフェニルアミノ、n-プロピルフェニルアミノ、及びイソプロピルフェニルアミノ等)等が挙げられる。
【0123】
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する例示化合物を列挙するが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0124】
1)1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン
2)1,4-ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン
3)1,4-ビス(トリメトキシシリルブチル)ベンゼン
4)1,4-ビス(トリエトキシシリルブチル)ベンゼン
5)1,4-ビス(トリメチルアミノシリルエチル)ベンゼン
6)1,4-ビス(トリエチルアミノシリルエチル)ベンゼン
7)1,4-ビス(トリメチルアミノシリルブチル)ベンゼン
7)1,4-ビス(トリアセトキシシリルエチル)ベンゼン
8)1,4-ビス(トリクロロメチルシリルエチル)ベンゼン
9)1,4-ビス(トリクロロエチルシリルエチル)ベンゼン
本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する化合物は、従来公知の合成方法に従って合成して得ることができる。また、市販品としても入手することができる。
【0125】
〈2.シランカップリング剤Aを用いた下地層の形成方法〉
本発明に係る下地層は、本発明に係る両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含むシランカップリング剤Aを、有機溶媒、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、2,2,2-トリフロオロエタノール等に所望の濃度に溶解して、下地層形成用塗布液を調製した後、湿式塗布法により、Cr含有層を有するステンレス基材上に塗布・乾燥して形成する。
【0126】
下地層形成用塗布液におけるシランカップリング剤Aの濃度としては、特に制限はないが、おおむね0.5~50質量%の範囲であり、好ましくは、1.0~30質量%の範囲内である。
【0127】
本発明に係る第1の下地層の層厚は、特に制限はないが、おおむね1~500nmの範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは5~150nmの範囲内である。
【0128】
〈3.Siを含む有機酸化物を主成分とする酸化物で構成される下地層の形成:第2の下地層〉
本発明に係る下地層においては、Siを含む有機酸化物を主成分として構成されている第2の下地層であることも好ましい態様である。
【0129】
好ましくは、図2で示すように、下地層を第1下地層6と第2下地層7の2層による下地層ユニット4Uで構成し、第1下地層6を上記で説明した両端末に反応性官能基を有し、かつ中間部に炭化水素鎖とベンゼン環を含むシランカップリング剤Aを含有する第1の下地層で構成し、第2下地層7を、下記で説明するSiを含む有機酸化物で構成されている第2の下地層とすることが、好ましい態様である。
【0130】
本発明に係る下地層においては、Siを含む有機酸化物を主成分として含有する層を構成する化合物が、前記下地層で適用するシランカップリング剤Aであってもよい。
【0131】
本発明に適用可能な分子量が300以下のアルコキシシラン、シラザン又はシランカップリング剤の一例を示すが、これら例示する化合物に限定されるものではない。なお、各化合物の後のカッコ内に記載の数値は分子量(Mw)である。
【0132】
アルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC254、Mw:208.3)、メチルトリエトキシシラン(CH3Si(OC253、Mw:178.3)、メチルトリメトキシシラン(CH3Si(OCH33、Mw:136.2)、ジメチルジエトキシシラン((CH32Si(OC252、Mw:148.3)、ジメチルジメトキシシラン((CH32Si(OCH32、Mw:120.2)等が挙げられる。
【0133】
また、シラザンとしては、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン((CH33SiNHSi(CH33、161.4)、1,1,1,3,3,3-ヘキサエチルジシラザン((C253SiNHSi(C253、245.4)、その他には、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン等を挙げることができる。
【0134】
また、シランカップリング剤としては、
1)ビニル系シランカップリング剤:ビニルトリメトキシシラン(CH2=CHSi(OCH33、Mw:148.2)、ビニルトリエトキシシラン(CH2=CHSi(OC253、Mw:190.3)、その他には、CH2=CHSi(CH3)(OCH32、CH2=CHCOO(CH22Si(OCH33、CH2=CHCOO(CH22Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH23SiCl3、CH2=C(CH3)Si(OC253等を挙げることができる。
【0135】
2)アミノ系シランカップリング剤:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(H2NCH2CH2CH2Si(OCH33、mW:179.3)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH33、Mw:222.4)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン(H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32、Mw:206.4)等を挙げることができる。
【0136】
3)エポキシ系シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Mw:236.3)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(Mw:278.4)等を挙げることができる。
【0137】
〈4.第2の下地層の形成方法〉
本発明に係る第2の下地層は、本発明に係る分子量が300以下のシラン化合物、例えば、アルコキシシラン、シラザン又はシランカップリング剤Cを、有機溶媒、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、2,2,2-トリフロオロエタノール等に所望の濃度に溶解して、中間層形成用塗布液を調製した後、湿式塗布法により、下地層上に塗布・乾燥して形成する。
【0138】
第2の下地層形成用塗布液における無機酸化物形成用材料の濃度としては、特に制限はないが、おおむね0.5~50質量%の範囲であり、好ましくは、1.0~30質量%の範囲内である。
【0139】
本発明に係る第2の下地の層厚は、0.5~500nmの範囲内であり、好ましくは1~300nmの範囲内であり、更に好ましくは5~100nmの範囲内である。
【0140】
(撥液層)
本発明において、撥液層がフッ素(F)を有するカップリング剤(以下、カップリング剤Bともいう。)を含有することが好ましい。
【0141】
本発明に係る撥液層に適用が可能なフッ素(F)を有するカップリング剤Bとしては、特に制限はないが、フッ素系化合物を含有し、当該フッ素系化合物が、(1)少なくともアルコキシシリル基、ホスホン酸基若しくはヒドロキシ基を含有するパーフルオロアルキル基を有する化合物、又はアルコキシシリル基、ホスホン酸基若しくはヒドロキシ基を含有するパーフルオロポリエーテル基を有する化合物、又は、(2)パーフルオロアルキル基を有する化合物を含む混合物、又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を含む混合物であることが好ましい。
【0142】
本発明に係る撥液層に適用が可能なフッ素(F)を有するカップリング剤Bの具体的な化合物としては、クロロジメチル[3-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルシラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、トリクロロ[3-(ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン、トリメトキシ(11-ペンタフルオロフェノキシウンデシル)シラン、トリエトキシ[5,5,6,6,7,7,7-ヘプタフルオロ-4,4-ビス(トリフルオロメチル)ヘプチル]シラン、トリメトキシ(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0143】
また、フッ素(F)を有するシランカップリング剤としては、市販品としても入手が可能であり、例えば、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学工業(株)、ダイキン工業(株)(例えば、オプツールDSX)、旭ガラス社(例えば、サイトップ)、又、(株)セコ(例えば、Top CleanSafe(登録商標))、(株)フロロテクノジー(例えば、フロロサーフ)、Gelest Inc.ソルベイ ソレクシス(株)(例えば、Fluorolink S10)等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750~755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341~2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889~892頁,1971年、米国特許第3668233号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。また、特開昭58-122979号、特開平7-242675号、特開平9-61605号、同11-29585号、特開2000-64348号、同2000-144097号の各公報等に記載の合成方法、又はこれに準じた合成方法により製造することができる。
【0144】
具体的には、シラン基末端パーフルオロポリエーテル基を有する化合物としては、例えば、上記に示したダイキン工業(株)製の「オプツールDSX」、シラン基末端フルオロアルキル基を有する化合物としては、例えば、フロロサーフ社製の「FG-5010Z130-0.2」等、パーフルオロアルキル基を有するポリマーとしては、例えば、AGCセイミケミカル社製の「エスエフコートシリーズ」、主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有するポリマーとしては、例えば、上記旭ガラス社製の「サイトップ」等を挙げることができる。また、FEP(4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体)分散液とポリアミドイミド樹脂との混合物も挙げることができる。
【0145】
本発明に係る撥液層の層厚は、おおむね1~500nmの範囲内であり、1~400nmの範囲内であることが好ましく、2~200nmの範囲内であることがより好ましい。
【0146】
〔ノズルプレートの加工〕
本発明に係るノズルプレートを製造するノズルプレートの製造方法としては、
その詳細を上述したように、
1)前記ノズルプレートを、ステンレス基材上に、樹脂層を形成し、
2)前記ステンレス基材の表面に、Crに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上であるCr含有層を形成し、
4)Cr含有層上に、下地層を、シランカップリング剤の脱水縮合反応により形成し、かつ、
5)前記撥液層を、フッ素(F)を有するカップリング剤を用いて形成する
方法を挙げることができる。
【0147】
前述の図3に記載のノズルプレート1には、本発明に係るノズルプレートのノズル孔部分の構成の一例を示す概略断面図である。
【0148】
図2で示すように、ノズルプレート1に対し、インク吐出部として所望の形状を有するノズル部Nを形成する。
【0149】
本発明に係るノズルプレートに対し、ノズル孔等を形成する具体的な方法に関しては、例えば、特表2005-533662号公報、特開2007-152871号公報、特開2007-313701号公報、特開2009-255341号公報、特開2009-274415号公報、特開2009-286036号公報、特開2010-023446号公報、特開2011-011425号公報、特開2013-202886号公報、特開2014-144485号公報、特開2018-083316号公報、特開2018-111208号公報等に記載されている方法を参照することができ、ここでの詳細な説明は省略する。
【0150】
図2は、本発明に係るノズルプレートの構成で、ステンレス基材2の表面に、Crに対するArの濃度(atm%)の比(Ar/Cr)の値が0.01以上である表面部3を形成することにより、インク液Inによる界面破壊を防止し、耐久性の高いノズルプレートとすることができる。
【0151】
本発明に係るノズルプレートにおいては、ノズル孔をレーザー加工により形成することが好ましい。
【0152】
本発明に係るノズルプレートにおいては、その製造方法として、ノズル孔の外形加工において、レーザーを用いることが好ましく、さらにはレーザーがパルスレーザー又はCWレーザーであることが好ましい。
【0153】
本発明に係るノズルプレートの製造において適用可能なレーザーとしては、連続発振型のレーザービーム(CWレーザービーム)やパルス発振型のレーザービーム(パルスレーザービーム)を用いることが好ましい。
【0154】
ここで用いることができるレーザービームは、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザー、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、YLF、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y23、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのうち一種または複数種から発振されるものが挙げられる。
【0155】
これらの中でも、使用されるレーザーは波長266nm程度の紫外レーザー光を発光する、例えば、YAG-UV(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶:波長266nm)や、YVO4(波長:355nm)が好ましい。特に、波長266nm程度のレーザーでは、熱作用により加工対象物が有機材料の場合、C-H結合やC-C結合等の分子結合を解離させることが可能である。
【0156】
照射条件の一例としては、例えば、YAG-UV(波長266nm)では、パルス幅が12nsec、出力が1.6Wであり、YVO4(波長:355nm)の場合は、パルス幅が18nsec、出力が2.4Wである。
【0157】
更に、持続時間がおよそ10-11秒(10psec)から10-14秒(10fsec)の強いレーザーパルスを生成する超高速レーザーや、持続時間がおよそ10-10秒(100psec)から10-11秒(10psec)の強いレーザーパルスを生成する短パルスレーザーも用いることが可能である。これらのパルスレーザーも広範囲にわたる材料を切削または孔開け加工するのに有用である。
【0158】
《インクジェットヘッド》
図8は、本発明のノズルプレートが適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略外観図である。また、図9は、本発明のノズルプレートを具備したインクジェットヘッドの底面図である。
【0159】
図8で示すように、本発明のノズルプレートを具備したインクジェットヘッド100は、インクジェットプリンター(図示略)に搭載されるものであり、インクをノズルから吐出させるヘッドチップと、このヘッドチップが配設された配線基材と、この配線基材とフレキシブル基材を介して接続された駆動回路基材と、ヘッドチップのチャネルにフィルターを介してインクを導入するマニホールドと、内側にマニホールドが収納された筐体56と、この筐体56の底面開口を塞ぐように取り付けられたキャップ受板と、マニホールドの第1インクポート及び第2インクポートに取り付けられた第1及び第2ジョイント81a及び81bと、マニホールドの第3インクポートに取り付けられた第3ジョイント82と、筐体56に取り付けられたカバー部材59とを備えている。また、筐体56をプリンタ本体側に取り付けるための取り付け用孔68がそれぞれ形成されている。
【0160】
また、図9で示すキャップ受板57は、キャップ受板取り付け部62の形状に対応して、外形が左右方向に長尺な略矩形板状として形成され、その略中央部に複数のノズルNが配置されているノズルプレート61を露出させるため、左右方向に長尺なノズル用開口部71が設けられている。また、図8で示すインクジェットヘッド内部の具体的な構造に関しては、例えば、特開2012-140017号公報に記載されている図2等を参照することができる。
【0161】
図8及び図9にはインクジェットヘッドの代表例を示したが、そのほかにも、例えば、特開2012-140017号公報、特開2013-010227号公報、特開2014-058171号公報、特開2014-097644号公報、特開2015-142979号公報、特開2015-142980号公報、特開2016-002675号公報、特開2016-002682号公報、特開2016-107401号公報、特開2017-109476号公報、特開2017-177626号公報等に記載されている構成からなるインクジェットヘッドを適宜選択して適用することができる。
【0162】
《インクジェットインク》
本発明のインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録方法に適用可能なインクジェットインクとしては、特に制限はなく、例えば、水を主溶媒とする水系インクジェットインク、室温では揮発しない不揮発性溶媒を主とし、実質的に水を含まない油性インクジェットインク、室温で揮発する溶媒を主とし、実質的に水を含まない有機溶媒系インクジェットインク、室温では固体のインクを加熱溶融して印字するホットメルトインク、印字後、紫外線等の活性光線により硬化する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク等、様々な種類のインクジェットインクがあるが、本発明においては、本発明の効果を発揮することができる観点で、アルカリインクを適用することが好ましい態様である。
【0163】
インクには、例えば、アルカリインクや酸性インクがあり、特に、アルカリインクは、基材と撥液層やノズル形成面の化学的な劣化を生じさせるおそれがあるが、このようなアルカリインクを用いたインクジェット記録方法において、本発明に係るノズルプレートを具備したインクジェットヘッドを適用することが、特に有効である。
【0164】
詳しくは、本発明に適用可能なインクとしては、染料や顔料などの色材、水、水溶性有機溶剤、pH調整剤などを含む。水溶性有機溶剤は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、エタノール、プロパノールなどを使用することができる。pH調整剤は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ソーダ、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アルカノールアミン、塩酸、酢酸などを使用することができる。
【0165】
pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ソーダ、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アルカノールアミンなどを使用した場合、インクはアルカリ性を呈し、撥液層やノズル形成面の化学的ダメージ(化学的な劣化)を生じさせるおそれがあるアルカリインク(液体)となる。アルカリインクはpHが8.0以上である。
【0166】
上述したように、撥液層は、フッ素含有のシランカップリング剤などから形成されている。撥液層は、ケイ素を含む部分構造とフッ素を含む部分構造とが、メチレン基(CH2)のような置換基で結合された構造を有している。炭素(C)と炭素(C)との結合エネルギーは、ケイ素(Si)と酸素(O)との結合エネルギー、及び炭素(C)とフッ素(F)との結合エネルギーと比べて小さいので、炭素(C)と炭素(C)とが結合した部分は、ケイ素(Si)と酸素(O)とが結合した部分、及び炭素(C)とフッ素(F)とが結合した部分に比べて、結合が弱く、機械的ダメージや化学的ダメージの影響を受けやすい。
【0167】
このような現象を生じやすいアルカリインクを用いたインクジェット記録方法においては、本発明で規定する構成のノズルプレートを適用することが、耐久性を高める点で有効である。
【実施例
【0168】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
【0169】
実施例1
《ノズルプレートの作製》
〔ノズルプレート1の作製〕
下記の方法に従って図2に記載のステンレス基材2/表面部3/第1下地層5A/第2下地層5B/撥液層6から構成されるノズルプレート1を作製した。
【0170】
(1)ステンレス基材の準備
基材として、縦3cm、横8cm、厚さ50μmの表面処理を施していないステンレス基材(SUS304)を用いた。
【0171】
(2)第1層(Cr含有層)の形成
〈ステップ1:スパッタ法によるCr層の形成〉
スパッタ法としては、Crをターゲットとして、アルゴンガスの雰囲気下で、ステンレス基材上にスパッタ成膜を行い、Cr単独金属層を形成した。このスパッタ法により成膜されるCr層におけるCrの含有量は、ほぼ100atm%である。
【0172】
具体的には、真空条件下で、DCスパッタ成膜装置の電極上に、予めセットしてあったCrターゲットを以下の条件でスパッタを行った。
【0173】
ターゲット:Cr
DC電力密度:1.1W/cm2
電力:RF電力(13.56MHz)、200W
温度:25℃
圧力:0.3Pa
導入ガス:アルゴンガス
成膜時間:30秒
層厚:20nm
〈ステップ2:Ar-RIEプラズマモードによるエッチング〉
次いで、ステップ1でCr層を形成したステンレス基材に対し、下記の方法により、Ar-RIEプラズマモードによるエッチング処理を施して、Cr含有層を形成した。
【0174】
図5に記載の構成からなるRIEモードの高周波プラズマ装置を用いて、Cr層に対しArプラズマ処理を行って、層厚が20nmのCr含有層を形成した。
【0175】
プラズマ処理条件は、以下の通りである。
【0176】
プラズマ処理装置:RIEモードの高周波プラズマ装置
反応ガスG:アルゴンガス
ガス流量:50sccm
ガス圧力:10Pa
高周波電力:13.56MHz
高周波電力密度:0.10W/cm2
電極間電圧:450W
処理時間:3min
基材処理温度:80℃以下
(3)第2層(第1下地層)の形成
(第1下地層形成用塗布液の調製)
〈A-1液の調製〉
下記の各構成材料を混合して、A-1液を調製した。
【0177】
エタノールと2,2,2-トリフルオロエタノールの混合溶液(体積比で8:2) 30mL
シランカップリング剤a:1,4-ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン((CH3O)3Si(CH22(C64)(CH22Si(OCH33) 2mL
〈A-2液の調製〉
エタノールと2,2,2-トリフルオロエタノールの混合溶液(体積比で8:2) 19.5mL
純水 30mL
塩酸(36体積%) 0.5mL
【0178】
(第1下地層の形成)
上記調製したA-1液を攪拌子で攪拌しながら、A-2液を5mL滴下した。滴下後約1時間攪拌した後、この混合液をスピンコート法により、Cr含有層上に、乾燥後の第1下地層の層厚が100nmとなる条件で塗布した。スピンコートの条件は、5000rpmで20秒とした。その後、基材を室温で1時間乾燥した後、200℃で30分焼成した。
【0179】
(4)第3層(第2下地層)の形成
(第2下地層形成用塗布液の調製)
下記の各構成材料を混合して、第2下地層形成用塗布液を調製した。
【0180】
エタノールと2,2,2-トリフルオロエタノールの混合溶液(体積比で8:2) 69mL
純水 30mL
シランカップリング剤c:3-アミノプロピルトリエトキシシラン((C25O)3SiC36NH2)、信越化学工業社製 KBE-903)
1mL
【0181】
(第2下地層の形成)
上記調製した第2下地層形成用塗布液(KBE-903濃度:1.0体積%)を、スピンコート法によりステンレス基材の第1下地層上に、乾燥後の第2下地層の層厚が20nmとなる条件で塗布した。スピンコートの条件は3000rpmで20秒とした。その後、ステンレス基材を室温で1時間乾燥した後、90℃・80%RHの条件で1時間加熱処理をした。
【0182】
(5)第4層(撥液層)の形成
(撥液層形成用塗布液の調製)
下記の各構成材料を混合して、撥液層形成用塗布液を調製した。
【0183】
エタノールと2,2,2-トリフルオロエタノールの混合溶液(体積比で8:2)
69.8mL
純水 30mL
フッ素を含有するカップリング剤b:(2-パーフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン(CF3(CF2724Si(OCH33
0.2mL
【0184】
(撥液層の形成)
上記調製したフッ素原子を含有するカップリング剤bを0.2体積%含有する撥液層形成用塗布液を、スピンコート法により上記形成した第2下地層上に、乾燥後の撥液層の層厚が10nmとなる条件で塗布した。スピンコートの条件は1000rpmで20秒とした。その後、ステンレス基材を室温で1時間乾燥した後、90℃・80%RHの条件で1時間加熱処理して、ノズルプレート1を作製した。
【化1】
【0185】
(6)Cr含有層のAr/Cr、Cr/Feの測定
XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、ノズルプレート1のステンレス基材上にCrスパッタとプラズマ処理を行って、Cr含有層までを形成したサンプルに対し、その表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定することで、サンプルの構成元素である金属(Cr、Fe)の濃度(atm%)、アルゴン(Ar)、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)の濃度(atm%)を分析した。
【0186】
測定条件は以下のとおりである。
・分析装置:アルバック・ファイ社製QUANTERA SXM
・X線源:単色化Al-Kα
【0187】
上記方法で測定したノズルプレート1を構成するCr含有層におけるAr/Crは0.02であり、Cr/Feについては、ほぼCrが100atm%で、Feはほとんど検出されなかったため、表Iには「∞」と表示した。
【0188】
(7)Cr含有層の総Cr含有量に対する3価Crの含有率(atm%)の測定
X線光電子分光分析法を用いて、基材上に、Crスパッタとプラズマ処理を行ってCr含有層を形成したサンプルについて、図7で例示したような総Cr含有量に対する3価のCrの含有率(atm%)を求めた。
【0189】
具体的な測定装置としては、アルバック・ファイ社製QUANTERA SXMを用いた。測定手順は、X線アノードには単色化Al-Kαを用い、出力25Wで測定する。なお、詳細な測定データの分析方法は、前述のとおりであり、記載は省略する。
【0190】
上記方法で測定したノズルプレート1を構成するCr含有層における3価のCrの含有率は90atm%であった。
【0191】
〔ノズルプレート2の作製〕
上記ノズルプレート1の作製において、Cr含有層の形成工程で、ステップ2の「Ar-RIEプラズマモードによるエッチング」のみを行い、ステップ1の「スパッタ法によるCr層の形成」を行わなかった以外は同様にして、ノズルプレート2を作製した。ノズルプレート2のCr含有層のAr/Crは0.03であり、Cr/Feは1.2、総Cr含有牢に対する3価Crの含有率は94atm%であった。
【0192】
〔ノズルプレート3の作製〕
上記ノズルプレート2の作製において、Cr含有層の形成工程のステップ2の「Ar-RIEプラズマモードによるエッチング」を、アセトンで表面を脱脂し窒素雰囲気中で650℃30分間処理を実施する工程に変えて、ノズルプレート3を作製した。ノズルプレート3のCr含有層のN/Crは0.2以上であり、Cr/Fe及び3価Crは測定不可であった。
【0193】
〔ノズルプレート4の作製〕
上記ノズルプレート2の作製において、Cr含有層の形成工程のステップ2の「Ar-RIEプラズマモードによるエッチング」に代えて、反応ガスとしてO2ガスを用い、図6に記載のPEプラズマモードを用いた「O2-PEプラズマモードによるエッチング」に変更した以外は同様にして、ノズルプレート4を作製した。ノズルプレート4のCr含有層のAr/Crは0であり、Cr/Feは1.0、総Cr含有牢に対する3価Crの含有率は35atm%であった。
【0194】
《ノズルプレートの評価》
上記作製した各ノズルプレートに対し、下記の方法に従って、インク耐性及び密着耐久性の評価を行った。
【0195】
〔インク耐性の評価〕
(ノズル孔の形成)
上記作製したノズルプレート1~6に対し、レーザー加工機を用いて、図1又は図2に記載の構成の直径が25μmのノズル孔を複数個形成した。
【0196】
(評価用実インクの調製:分散染料インク)
〈分散液の調製〉
分散染料:C.I.Disperse Yellow 160
24.0質量%
ジエチレングリコール 30.6質量%
スチレン-無水マレイン酸共重合体(分散剤) 12.0質量%
イオン交換水 33.4質量%
上記混合物を、直径0.5mmのセラミックビーズを使用して、アイメックス社製サンドグラインダーを用い、回転数2500rpmで5時間分散した。この分散液を、染料濃度が5%になる様に、水/ジエチレングリコール=1:4で希釈して分散液1を調製した。
【0197】
〈実インクの調製〉
上記分散液1に、各組成物を添加、攪拌して、評価用実インク(分散染料インク)を調製した。
【0198】
分散液1 20.0質量%
エチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 8.0質量%
エマルゲン911(花王(株)製) 0.05質量%
イオン交換水を添加して、100質量%に仕上げた。
【0199】
(ノズルプレートの評価)
各ノズル孔を形成したノズルプレートを、60℃の実インクに30日間浸漬した。
【0200】
浸漬処理したのち、純水で洗浄及び乾燥させたのち、図1図2で示すようなノズル孔内部のステンレス基材とCr含有層間での剥離の有無を100倍ルーペで観察し、下記の基準に従って実インクに対するノズル孔の密着耐性の評価を行った。
【0201】
◎:ノズルの全てで、剥離の発生が認められない
〇:5%未満のノズルで極弱い剥離が認められるが、実用上問題はない
△:5%以上、10%未満のノズルで弱い隔離が認められ、実用上許容される品質である
×:明らかな剥離が認められるノズルが存在し、実用上問題となる品質である
〔密着耐久性(ワイピング耐性)の評価〕
(ブラックインクの調製)
下記の構成からなる評価用のブラックインクを調製した。
【0202】
〈ブラック顔料分散体の調製〉
C.I.ピグメント ブラック6 12.0質量%
PB822(味の素ファインテック社製) 5.0質量%
メチルイソプロピルスルホン 5.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 68.0質量%
エチレングリコールジアセテート 10.0質量%
以上を混合し、0.3mmのジルコニヤビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミルで分散し、ブラック顔料分散体を得た。平均粒径は125nmであった。
【0203】
〈ブラックインクの調製〉
ブラック顔料分散体 33.0質量%
イオン交換水 2.0質量%
エチレングリコールモノブチルエーテル 55.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.7質量%
N-メチル-2-ピロリドン 3.3質量%
【0204】
(ワイピング試験)
25℃の上記調製したブラックインクを収容した容器内に、固定治金により上記方法で複数のノズル孔を形成した各ノズルプレートを、撥液層を上面にして固定し、エチレンプロピレン・ジエンゴム製のワイパーブレードを用いて、ノズルプレートの撥液層表面に対し、複数回のワイピング(払拭)操作を行い、下記の基準に従って密着耐久性を評価した。
【0205】
◎:5000回以上のワイピング操作でも、ノズルの全てで、ノズル近傍での撥液層の剥離の発生が認められない
○:5000回未満のワイピング操作では、ノズルの全てで、ノズル近傍での撥液層の剥離の発生が認められないが、5000回以上のワイピングで5%未満のノズルで極弱い剥離が認められた
△:1000回未満のワイピング操作では、ノズルの全てで、ノズル近傍での撥液層の剥離の発生が認められないが、1000~5000回の範囲内のワイピングで5%未満のノズルで極弱い剥離が認められた
×:1000回のワイピングで実用上問題となる明らかな撥液層の剥離が認められるノズルが確認された
【0206】
以上により得られた評価結果を表Iに示す。
【表1】
【0207】
表Iに記載したように、本発明で規定する構成からなるノズルプレートは、比較例に対し、アルカリインク成分に長時間にわたり晒される環境や、又は表面に応力を受けた際にも、下地層が応力緩和層として作用し、かつ各構成層間の結合性が高く、インク耐性及び密着耐久性に優れていることがわかる。また、本発明に係るノズルプレートは、アルカリインク中に長期間にわたり浸漬した後でも、ノズル孔内部のステンレス基材とCr含有層間の接着性に優れていることが分かる。
【0208】
実施例2
実施例1のノズルプレート1~3と同様にして、図4に示したステンレス基材を有する部材C、D1、D2、Eのそれぞれの位置に、ステンレス基材/表面部/下地層(第2層・第3層)からなる構成で、樹脂層である下地層を接着層として有する部材1~3を作製して適用した結果、本発明で規定する構成からなる部材は、比較例である部材3に対し、構成部材間の密着性と、インク耐性及び密着耐久性に優れた効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明のインクジェットヘッドは、構成部材間の密着性と、インク耐性及び密着耐久性に優れた構成部材を有し、様々な分野のインクを用いるインクジェットプリンターに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0210】
1、210 ノズルプレート
2 ステンレス基材
3 表面部
4 樹脂層
5 撥液層
5A 第1下地層
5B 第2下地層
6 撥液層
10、100 インクジェットヘッド
11 接続部
12 ヘッドチップ
13 保持部
15 共通インク室
21 反応室
22 高周波電源
23 コンデンサー
24 平面電極(給電電極)
25 対抗電極(グランド電極)
26 アース
27 ガス流入口
28 ガス流出口
30 ノズルプレート基材
31 放電空間
32、33 給電ライン
56 筐体
57 キャップ受板
59 カバー部材
61 ノズルプレート
62 キャップ受板取り付け部
68 取り付け用孔
71 ノズル用開口部
81a 第1ジョイト
81b 第2ジョイント
82 第3ジョイント
220 中間基板
230 アクチエーター基板
240 保護基板
221 連通孔
20A RIEプラズマ処理装置
20B PEプラズマ処理装置
In インク
D 放電
G 反応ガス
N ノズル
P ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9