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特許7574862充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム
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  • 特許-充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241022BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241022BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20241022BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241022BHJP
   B60L 53/65 20190101ALI20241022BHJP
   B60L 53/62 20190101ALI20241022BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20241022BHJP
【FI】
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/66
B60L53/65
B60L53/62
B60L58/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022566843
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042607
(87)【国際公開番号】W WO2022118681
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020202105
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋吾
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-191774(JP,A)
【文献】特開2020-099184(JP,A)
【文献】特開2012-253976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H01M10/42-10/48
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車載蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記車載蓄電池における充放電を制御する充放電装置であって、
充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つについて予め記憶してある記憶部と、
前記車載蓄電池で充放電する際の充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つの値を、前記車載蓄電池における充放電を車両側で制御する車載制御装置との間で授受するデータに基づいて決定する決定部と、
前記決定部で決定される値及び前記記憶部から読み出される値のいずれかを、上位制御装置へ向けて通知する通知部と
を備える充放電装置。
【請求項2】
前記記憶部に記憶されている値は、該充放電装置の仕様として定められた値であり、
前記決定部が決定した値と前記記憶部に記憶されている値とは一部が異なる
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記車両の特徴に応じて充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つを決定する
請求項1又は2に記載の充放電装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記車両が充電専用車であるか否かに応じて充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つを決定する
請求項3に記載の充放電装置。
【請求項5】
車両に設けられた車載蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有した充放電装置が、前記車載蓄電池における充放電を制御する方法であって、
前記車載蓄電池で充放電する際の充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つの値を、前記車載蓄電池における充放電を車両側で制御する車載制御装置との間で授受するデータに基づいて決定し、
充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つについて予め記憶してある記憶部から読み出される値と、決定された値とのいずれかを、上位制御装置へ向けて通知する
処理を含む充放電制御方法。
【請求項6】
車両に設けられた車載蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有した充放電装置に搭載されたコンピュータに、
前記車載蓄電池で充放電する際の充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つの値を、前記車載蓄電池における充放電を車両側で制御する車載制御装置との間で授受するデータに基づいて決定し、
充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つについて予め記憶してある記憶部から読み出される値と、決定された値とのいずれかを、上位制御装置へ向けて通知する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられる蓄電池と接続される充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に備えられている蓄電池の電池容量は例えば5~100kWhと比較的大容量である。これらの車両に蓄えられた電力を電気自動車の駆動以外に、例えば家庭等へ供給可能とするV2H(Vehicle to Home)、家庭に限らない建物への供給を可能とするV2B(Vehicle to Building)、電力網への供給を可能とするV2G(Vehicle to Grid)を含むV2Xを実現する技術が提案されている。災害発生によって停電状態となったとしても、移動が可能な電気自動車に蓄えられた電力を供給して生活を維持したり、工場の稼働を維持したりすることが期待できる。V2Xを実現する場合、EMS(Energy Management System)からの制御を受けて計画的に充放電できることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、電力安定供給を制御するシステムに電気自動車である車両を接続し、需要に併せて車両の蓄電池を急速充電することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/082506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載された蓄電池、その他蓄電装置、発電施設、各負荷等を含む地域における電力系統からの供給電力を安定させるために、EMSは蓄電池又は蓄電装置における充放電の量を調整する。そこでEMS等の上位装置は、蓄電池の充放電の容量等のデータを各装置から取得し、取得したデータに従って充放電計画を立てて制御する。
【0006】
車両に搭載された蓄電池における充放電は、接続される充放電装置がEMS等の上位装置からの指示に基づいて制御する。充放電できる電力等の能力値については、充放電装置が上位装置へ通知する。しかしながら、実際には、多種多様な車両に搭載されている蓄電池は、車両における制御によって又は充電率によって状況が異なり、等しい性能で充放電できるとは限らない。
【0007】
本発明は、上位装置に適切な充放電制御を実施させることができる充放電装置、充放電制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充放電装置は、車両に設けられた車載蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有し、前記車載蓄電池における充放電を制御する充放電装置であって、充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つについて予め記憶してある記憶部と、前記車載蓄電池で充放電する際の充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つの値を、前記車載蓄電池における充放電を車両側で制御する車載制御装置との間で授受するデータに基づいて決定する決定部と、前記決定部で決定される値及び前記記憶部から読み出される値のいずれかを、上位制御装置へ向けて通知する通知部とを備える。
【0009】
本開示の一実施形態の充放電制御方法は、車両に設けられた車載蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有した充放電装置が、前記車載蓄電池における充放電を制御する方法であって、前記車載蓄電池で充放電する際の充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つの値を、前記車載蓄電池における充放電を車両側で制御する車載制御装置との間で授受するデータに基づいて決定し、充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つについて予め記憶してある記憶部から読み出される値と、決定された値とのいずれかを、上位制御装置へ向けて通知する処理を含む処理を含む。
【0010】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、車両に設けられた車載蓄電池と接続する車載電力線とのコネクタを有した充放電装置に搭載されたコンピュータに、前記車載蓄電池で充放電する際の充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つの値を、前記車載蓄電池における充放電を車両側で制御する車載制御装置との間で授受するデータに基づいて決定し、充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つについて予め記憶してある記憶部から読み出される値と、決定された値とのいずれかを、上位制御装置へ向けて通知する処理を実行させる。
【0011】
本開示の充放電装置、充放電制御方法及びコンピュータプログラムでは、充放電の充電電力値、放電電力値、充電電流値及び放電電流値の最小値又は最大値について、充放電装置で予め定めている値だけではなく、必要に応じて、車載制御装置から得られるデータに基づいて決定される値が上位制御装置へ通知される。実際に車載蓄電池から出力可能な充放電電力値又は電流値が正確に通知される。
【0012】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記記憶部に記憶されている値は、該充放電装置の仕様として定められた値であり、前記決定部が決定した値と前記記憶部に記憶されている値とは一部が異なる。
【0013】
本開示の充放電装置では、充放電装置で予め定めている充電電力値、放電電力値、充電電流値及び放電電流値の最小値又は最大値とは、少なくとも一部が異なる値が、上位制御装置へ通知される。
【0014】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記決定部は、前記車両の特徴に応じて充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つを決定する。
【0015】
本開示の充放電装置では、車載蓄電池から出力可能な充電電力、放電電力、充電電流及び放電電流の最小値又は最大値を決定する根拠として、これらの値と相関のある車両の特徴が用いられる。車種、年式、又は車両メーカ等によって、前記最小値又は最大値は変わり得る。特徴に応じて最小値又は最大値を記憶しておき、特定できた特徴に基づいて、接続された車両に対して適正な最小値又は最大値を決定できる。
【0016】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記決定部は、前記車両が充電専用車であるか否かに応じて充電電力値、充電電流値、放電電力値、及び放電電流値それぞれの最小値及び最大値の内の少なくとも1つを決定する。
【0017】
本開示の充放電装置では、車両の特徴として、充電専用車であるか否かに応じて決定されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、車載蓄電池に対する充放電で実際に出力可能な電力値又は電流値の能力値が正確に上位装置に通知されるので、上位装置は、正確な能力値に基づき充電するか放電するか、又は待機するかを適切に決定して制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】充放電装置を含む充放電システムの概要図である。
図2】充放電装置及び車両の接続構成を示すブロック図である。
図3】充放電装置の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】充放電装置の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】最小値及び最大値の決定手順の一例を示すフローチャートである。
【0020】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、充放電装置1を含む充放電システム200の概要図である。充放電システム200は、家庭に配置されている負荷21、発電装置23、及び、充放電装置1を含む。電力系統E(商用電源)からの供給電力は電力線PLにより、分電盤28で負荷21、発電装置23、及び充放電装置1を介して接続される車両Vへ分岐される。充放電装置1は、分電盤28を介し、通信線CLによって上位装置29と接続されている。電力供給源は、電力系統Eのみならず、直流電力網であってもよいし組み合わせであってもよい。電力供給源は、電力系統Eに代替可能なものなら他の例であってもよい。電力供給源は、商用系統を模擬するものでもよく、蓄電装置、発電システムであってもよい。
【0022】
上位装置29は、電力系統Eからの負荷21への電力の授受、及び発電装置23からの負荷21群への電力授受を制御する。本実施の形態において上位装置29は、サーバ装置として外部に設けられ、地域の電力の授受を制御するものとして説明するが、分電盤28に設置されて家庭内での発電充放電を制御するものであってもよいし、充放電装置1に内蔵されていてもよい。
【0023】
充放電システム200は他の一例では、公共施設である駐車場に設置された蓄電装置22、発電装置23、及び、充放電装置1を含む。この一例においても電力系統Eからの供給電力は電力線PLにより、分電盤28で、蓄電装置22、発電装置23及び複数の充放電装置1を介して接続される車両Vへ分岐される。充放電システム200は、その他、燃料電池を含んでもよい。他の一例でも上位装置29は、サーバ装置として外部に設けられているものして説明するが、分電盤28に設置されて公共施設内での発電充放電を制御するものであってもよいし、充放電装置1それぞれに内蔵されて充放電を制御するものであってもよい。
【0024】
図2は、充放電装置1及び車両Vの接続構成を示すブロック図である。車両Vは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)である。車両Vは、その駆動に用いることが可能な大容量の蓄電装置30を備える。車両Vは、蓄電装置30に接続される電力線VPLへのコネクタ35と、蓄電装置30における充放電を制御する車載充放電制御装置32とを備える。電力線VPLには、車両V側の充放電回路に含まれるDCリレー33が介装されており、車載充放電制御装置32がDCリレー33のON及びOFFを制御する。コネクタ35には車載充放電制御装置32と通信接続するための通信端子が含まれている。
【0025】
充放電装置1は、充放電回路10、制御部11、通信部12、電源部13、操作部14、及び上位通信部16を備える。充放電回路10は、双方向インバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含む。充放電回路10は、車両Vと接続するコネクタ15と接続されるDCリレー10aと、電力系統Eと接続される電力線PLに介装された解列リレー10bとを含む。充放電回路10は、DCリレー10aを介してコネクタ15と電力線PLによって接続されている。
【0026】
制御部11は、充放電回路10に含まれる回路素子を制御し、車両Vの蓄電装置30に対する充放電の切り替え、電流量、及び電圧量を制御する。制御部11はCPU(Central Processing Unit)及び不揮発性メモリを含み、CPUは不揮発性メモリに記憶されたコンピュータプログラム1Pに基づく制御処理を実行して充放電回路10を制御する。不揮発性メモリには、後述する設定値が書き換え可能に記憶される。
【0027】
制御部11の不揮発性メモリに記憶されているコンピュータプログラム1P(コンピュータプロダクト)は、コンピュータから読み取り可能な非一時記憶媒体9に記憶されていたコンピュータプログラム9PをCPUが読み出してメモリに記憶したものであってもよい。
【0028】
通信部12は、コネクタ15及びコネクタ35を介して車載充放電制御装置32と通信接続が可能である。通信部12の通信接続のプロトコルは車両V、コネクタ15,35に対応する充放電方式に準拠していればよく、異なる充放電方式に適用するように複数のプロトコルに対応していずれかを選択的に実行できてもよい。本実施形態では通信部12は、CAN(Controller Area Network)によって車載充放電制御装置32と通信する。PLCによって通信が実現されてもよい。
【0029】
電源部13は、UPS(Uninterruptible Power Systems)回路及び起動用蓄電池を含み、制御部11へ電力を供給する。電源部13は、停電時には起動用蓄電池から充放電装置1の起動に必要な電力を供給する。電源部13は、電力系統E、発電装置23又は車両Vからの電力を起動用蓄電池に充電してもよい。
【0030】
操作部14は、ディスプレイ、ディスプレイ内蔵タッチパネル、及び物理ボタンを含み、充放電装置1の外装に露出してユーザからのSTART(起動)及びSTOP(終了)を含む操作を受け付ける。制御部11は、操作部14にて受け付けられた操作に基づいて充放電回路10を制御してもよい。
【0031】
上位通信部16は、上位装置29と通信線CLを介して通信を実現する。上位通信部16は例えば、Ethernet(登録商標)に準拠した通信線CLに対応する通信モジュールであってもよいし、ECHONET/ECHONETLite(登録商標)対応の通信線CLに対応する通信モジュールであってもよい。上位通信部16は、PLCにより通信を実現してもよい。
【0032】
充放電装置1の制御部11は、分電盤28における電力系統Eからの供給電力を算出するための電流を測定する電流センサSと通信線CLを介して接続されている。制御部11は、電力系統Eからの負荷21群、及び、蓄電装置22、発電装置23等の連系機器への供給電力を電流センサSから取得できる。
【0033】
上述のように構成される充放電装置1の充放電回路10は、図1及び図2に示すように、コネクタ15が車両Vのコネクタ35と接続された状態において、DCリレー10a及び車両V側のDCリレー33を介して車両Vの蓄電装置30と電力線PLにより接続されている。充放電回路10は、図1及び図2に示すように、解列リレー10b及び分電盤28を介して電力系統E(又は直流電力網)、負荷21群、及び連系機器(蓄電装置22、発電装置23等)と電力線PLによって接続されている。充放電装置1は、電力系統E(又は直流電力網)と、車両Vの蓄電装置30、負荷21群、連系機器との間の電力の授受を制御する。充放電装置1は、連系機器を電力供給源として蓄電装置30に対して充電を制御してもよい。充放電回路10は、解列リレー10b、DCリレー10a、及びDCリレー33が全てONの状態の場合に、電力線PLを介して蓄電装置30の負荷21群への放電、又は電力系統Eからの充電を実施できる。
【0034】
充放電装置1は、起動している間、充放電の対象として車両Vが接続されると以後、上位装置29に、充電電力値、放電電力値、充電電流値、及び放電電流値の4つの項目(以下、4項目という)について、最小値及び最大値を、事あるごとに通知する必要がある。4項目の最小値及び最大値は、充放電装置1あるいは充放電回路10の仕様として定められている数値(以下、仕様値)と、車両Vの車載充放電制御装置32及び蓄電装置30の状態で定まる数値(以下、現実値)とがある。前者の充放電装置1の仕様値は、制御部11の不揮発性メモリに、不変値として記憶されている。後者の車両V及び状態によって現実値は、車両Vとのデータの送受信及び充電率等によって逐次、制御部11が取得又は算出する。本実施の形態の充放電装置1は、以下のフローチャートに示す手順によってこれらの数値を使用して4項目の最小値及び最大値として決定し、上位装置29へ通知する。
【0035】
図3及び図4は、充放電装置1の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。充放電装置1の制御部11は、操作部14からのON操作、又は、スケジュールに基づく電源部13からの電力供給開始を受けて起動すると、コンピュータプログラム1Pに基づき、以下の処理を実行する。
【0036】
制御部11は、起動し、車両Vとの接続が確認されるまでは、通知対象の4項目の最小値及び最大値の設定値として、充放電装置1の仕様値を記憶する(ステップS101)。
【0037】
制御部11は、上位装置29から、4項目の数値の読み出しリクエストを受信したか否かを判断する(ステップS102)。受信したと判断された場合(S102:YES)、制御部11は、ステップS101で設定値に設定された仕様値を、上位通信部16から上位装置29へ通知する(ステップS103)。
【0038】
受信しないと判断された場合(S102:NO)、制御部11は処理を次のステップS104へ進める。
【0039】
制御部11は、コネクタ15にて車両Vとの接続が検知されたか否かを判断する(ステップS104)。接続が検知されないと判断された場合(S104:NO)、制御部11は処理をステップS102へ戻す。
【0040】
ステップS104で接続が検知されたと判断された場合(S104:YES)、制御部11は、操作部13又は上位装置29からSTARTの指示を受けたか否かを判断する(ステップS105)。STARTの指示を受けていないと判断された場合(S105:NO)、制御部11は処理をステップS105に戻し、STARTの指示を受けるまで待機する。待機中に、上位装置29から読み出しリクエストを受信した場合、制御部11は、ステップS101で設定した仕様値を、通知するとよい。
【0041】
STARTの指示を受けたと判断された場合(S105:YES)、制御部11は、通信部12によって車載充放電制御装置32との通信接続を確立させる通信処理を開始する(ステップS106)。ここで通信接続は例えば、CAN通信である。
【0042】
制御部11は、車載充放電制御装置32から、車両Vの蓄電装置30の充電率(SOC)、充電上限充電率、放電下限充電率、最低充電電流値、最低放電電流値等のデータを取得する(ステップS107)。ステップS107において制御部11は、通信部12にて取得できるデータのみならず、ステップS106の所定の接続処理中の信号処理によって特定できるデータを取得してもよい。
【0043】
制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35のロックをONとする(ステップS108)。
【0044】
制御部11は、ステップS107で取得したデータを用いるか、あるいは改めて取得するデータに基づいて、4項目の最小値及び最大値を決定する(ステップS109)。
【0045】
制御部11は、ステップS109で決定した値を設定値として記憶する(ステップS110)。ステップS110によって設定値は、仕様値から車両Vから取得したデータに基づき求められた現実値に上書きされる。
【0046】
制御部11は、設定された現実値を、上位通信部16から上位装置29へ通知する(ステップS111)。ステップS111において制御部11は、上位装置29へプッシュ通知するのではなく、上位装置29から読み出しリクエストを受信した場合に、リクエストに応じて通知してもよい。制御部11は、設定値として記憶してある最新の現実値を、逐次上位装置29へ通知する。
【0047】
ステップS111により、充放電装置1から上位装置29へ、充放電装置1の仕様で定まる仕様値とは異なる値を含む4項目の最小値及び最大値が通知される可能性がある。
【0048】
制御部11は、上位装置29から停止指示を受信したか否かを判断する(ステップS112)。停止指示を受信したと判断された場合(S112:YES)、制御部11は処理を後述のステップS124へ進める。
【0049】
停止指示を受信していないと判断された場合(S112:NO)、制御部11は、操作部13でSTOP操作がされたか否かを判断する(ステップS113)。STOP操作がされたと判断された場合(S113:YES)、制御部11は処理を後述のステップS124へ進める。
【0050】
STOP操作が行なわれていないと判断された場合(S113:NO)、上位装置29から充電指示又は放電指示を受信したか否かを判断する(ステップS114)。充電指示又は放電指示を受信していないと判断された場合(S114:NO)、制御部11は、処理をステップS109へ戻す。
【0051】
充電指示又は放電指示を受信したと判断された場合(S114:YES)、制御部11は、指示に基づいて充電又は放電を開始(開始済の場合は継続)する(ステップS115)。制御部11は、充電又は放電を開始すると、充電率等、最高充電電流値、最低充電電流値、最高放電電流値、最低放電電流値等のデータを、車両Vの車載充放電制御装置32から取得する(ステップS116)。ステップS116では、ステップS107のタイミングで取得できるデータと差異が生じるデータ(充電率)のみについて車載充放電制御装置32から通信部12によって取得してもよい。
【0052】
制御部11は、ステップS116で取得したデータに基づいて、最大充電電力値、最小充電電力値、最小放電電力値、最大放電電力値、最小充電電流値、最大充電電流値、最小放電電流値、最大放電電流値を決定する(ステップS117)。ステップS117では、ステップS116で取得したデータによって変更される値のみを算出するようにしてもよい。例えば制御部11は、充電中であれば充電電力値及び充電電流値の最大値又は最小値のみを算出してもよい。
【0053】
制御部11は、決定した値を、設定値として記憶する(ステップS118)。ステップS118によって設定値は、車両Vから取得した最新のデータに基づき求められた現実値に上書きされる。
【0054】
制御部11は、設定された現実値を、上位通信部16から上位装置29へ通知する(ステップS119)。ステップS119においても制御部11は、上位装置29へプッシュ通知するのではなく、上位装置29から読み出しリクエストを受信した場合に限って通知してもよい。
【0055】
制御部11は、上位装置29から充電指示又は放電指示を継続して受信するか否かを判断する(ステップS120)。継続して受信すると判断された場合(S120:YES)、制御部11は、処理をステップS115へ戻し、充電又は放電を継続する。充電指示を上位装置29から受信している間は充電を継続し、放電への切り替えを指示された場合には放電を開始する。
【0056】
充電指示又は放電指示を受信しないと判断された場合(S120:NO)、制御部11は、充電又は放電を停止するか否かを判断する(ステップS121)。ステップS121で制御部11は、上位装置29から待機指示を受信するか、又は、停止条件が満たされる場合に停止すると判断する。停止条件は例えば、充電中に車両Vの蓄電装置30の充電率が満充電状態(充電上限充電率以上)となった場合、逆に、放電中に蓄電装置30の充電率が放電下限充電率以下となった場合である。
【0057】
ステップS121で停止すると判断された場合(S121:YES)、制御部11は、処理をステップS109へ戻す。待機状態となる。
【0058】
ステップS121で停止しないと判断された場合(S121:NO)、充電指示も、放電指示も受信せず、停止条件も満たさない状態であるから、制御部11は、これらの指示又は停止条件を満たすまで待機する。制御部11は、上位装置29から停止指示を受信したか否かを判断する(ステップS122)。停止指示を受信したと判断された場合(S122:YES)、制御部11は処理を後述のステップS124へ進める。
【0059】
停止指示を受信していないと判断された場合(S122:NO)、制御部11は、操作部13にてSTOP操作がされたか否かを判断する(ステップS123)。STOP操作がされていないと判断された場合(S123:NO)、停止指示も受信していないしSTOP操作もされていない。この場合、制御部11は、処理をステップS116へ戻し、新たなデータを決定しながら、指示を受信するか、停止条件を満たすまで待機する。
【0060】
ステップS123にてSTOP操作がされたと判断された場合(S123:YES)、制御部11は、車両Vの車載充放電制御装置32との通信接続を切断する(ステップS124)。制御部11は、コネクタ15及びコネクタ35のロックをOFFとする(ステップS125)。制御部11は、4つの項目の最小値及び最大値を、充放電装置1の仕様値に設定、即ち、設定値として記憶し(ステップS126)、処理を終了する。ステップS126の後、充放電装置1は、停止状態となる。
【0061】
ステップS125の処理の代わりに、設定値の記憶をリセットするとしてもよい。次回起動するまで設定値のデータを保持しないこととしてステップS126をスキップしてもよい。
【0062】
またステップS124からステップS126の処理では、通信接続を切断するがロックはONを維持して再度ステップS101から処理を再開するようにしてもよい。
【0063】
図3及び図4のフローチャートでは、待機状態でも、充放電装置1と車両Vの充放電制御装置32との間の通信接続をその都度接続しないとして説明した。しかしながら、ステップS121で充放電の停止指示を受信した場合(S121:YES)、一旦通信接続を切断してもよい。この場合、ステップS109へ戻ったとしても制御部11は、車両Vからデータを取得できない。しかしながらこの状態でもコネクタ15及びコネクタ35のロックがOFFとされるまで、即ち同一の車両Vと接続されている間、制御部11は、設定値として記憶してある4項目の最小値及び最大値を保持し、最新の値を上位装置29へ通知するとよい。
【0064】
このように、車両Vを含むシステム全体の充放電を制御する上位装置29と、車両Vでの充放電を制御する車載充放電制御装置32との間の充放電装置1が、上述したように、車両Vにおける実際の充放電で出力可能な電力値(電流値)を、正確に、上位装置29へ通知する。正確な通知によって、上位装置29は、車両Vの蓄電装置30を充放電先として適格に捉えて制御できる。車両Vの蓄電装置30にて仕様通りの電力値又は電流値では実際には充放電が開始できず、上位装置29が蓄電装置30を使用できない、といった状況を回避することができる。
【0065】
ステップS109、ステップS117における処理手順について詳細に説明する。図5は、4つの項目の最小値及び最大値の決定手順の一例を示すフローチャートである。以下の決定手順はあくまで一例であって以下の内容に限定されず、一部のみであってもよいし、一部ずつの組み合わせであってもよい。
【0066】
制御部11は、取得したデータに基づき、充放電の特性と相関を持つ、車種、年式、又は車両Vのメーカ等の特徴を特定する(ステップS201)。ステップS201において制御部11は、通信部12によって取得できるデータについて予め車種、年式、又はメーカ別に記憶しておき、内容が合致するデータで特定してもよい。データは、最低充放電電流値、電流上限値及び電流下限値等、放電下限電池充電率、充電上限電池充電率、充電上限電圧、放電下限電圧、電池耐力上限値等である。制御部11はその他、通信接続に至るまでの接続工程での応答速度等の特徴によって特定してもよい。
【0067】
制御部11は、車両Vが充電専用車であるか否かを判断する(ステップS202)。充電専用車であると判断された場合(S202:YES)、制御部11は、ステップS201で特定した特徴に応じた充電専用車向けの4項目の最小値及び最大値を決定し(ステップS203)、処理を終了する。制御部11は、4項目の最小値及び最大値について、充電専用車であるか否かに対応付けて予めメモリに記憶しておき、充電専用車であるか否かに応じて選択するとよい。また、充電専用車であっても、どのメーカの、いつのどのような車種の充電専用車であるかを示す情報に対応付けて、予めメモリに4項目の最小値及び最大値を記憶しておき、特定できる特徴に応じて選択するとよい。
【0068】
ステップS203で制御部11は、放電はできないので放電電力値及び放電電流値については仕様値に決定し、充電電力値の最小値については、ゼロを含む車種等の特徴に応じた値を決定する。制御部11は、4項目の最小値及び最大値について、車種等の特徴に対応付けて予めメモリに記憶しておき、特定できる特徴に応じて選択するとよい。最小値はゼロに限らず、車両V側で定められている最低値で決定してもよい。制御部11は、充電電流値の最小値についても同様に電流値に換算した値を算出して決定するとよい。
【0069】
ステップS202にて充電専用車でないと判断された場合(S202:NO)、制御部11は、4つの項目それぞれに対応するデータを用いて最小値及び最大値を決定し(ステップS204)、処理を終了する。
【0070】
ステップS204において制御部11は例えば、充電電力値及び充電電流値については車両Vから得られる充電に関する上限若しくは下限のデータ、又は充電率を用いて決定してもよい。制御部11は、放電電力値及び放電電流値の最大値を、車両Vから得られる放電に関する上限若しくは下限等を用いて決定してもよい。最小値は、数値として極小値、例えばゼロとしてもよいし、又は車種等に応じたマージンの分を鑑みた最低値としてもよい。
【0071】
ステップS204において制御部11は、蓄電装置30の状態に応じて、出力可能な電力値又は電流値を導出する妥当な算出方法を選択するとよい。
【0072】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 充放電装置
10 充放電回路
11 制御部
12 通信部
14 操作部
16 上位通信部
1P コンピュータプログラム
V 車両
29 上位装置
32 車載充放電制御装置
図1
図2
図3
図4
図5