IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20241022BHJP
   H02J 50/27 20160101ALI20241022BHJP
   H02J 50/23 20160101ALI20241022BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20241022BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/27
H02J50/23
H01Q9/42
H01Q7/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022579334
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039282
(87)【国際公開番号】W WO2022168376
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2021014963
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 洋昌
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-199882(JP,A)
【文献】特開2012-222961(JP,A)
【文献】特開2019-092251(JP,A)
【文献】特開2017-098334(JP,A)
【文献】特開2020-089209(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/20
H02J 50/27
H02J 50/23
H01Q 9/42
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、
前記受電部は、受電アンテナ配線と整流回路とを備える受電器から構成され、
前記受電アンテナ配線は、同一平面内に形成され、それぞれの一端が前記整流回路に接続され、前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端が互いに向き合うように配置された開放端となっている2本の配線構造を有するとともに、前記配線構造において複数の屈曲部を有し、
前記屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、
互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行であり、
それぞれの受電アンテナ配線を見たとき、屈曲部の数が同じであり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も同じである、無線電力伝送システム。
【請求項2】
互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士も平行である、請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、
前記送電部は、送電アンテナ取付部と送電アンテナ配線とを備える送電器から構成され、
前記送電アンテナ取付部は、前記電磁波遮蔽部材と電気的に接触しないように設置されており、
前記送電アンテナ配線は、前記電磁波遮蔽部材からなる壁面に対して平行になるように前記構造体の内側に形成され、その一端が前記送電アンテナ取付部と電気的に接続され、他端が開放端となっている配線構造を有するとともに、前記配線構造において4箇所以上8箇所以下の屈曲部を有し、
前記屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、同一配線上の配線部位と対向する位置で平行している別の配線部位が存在し、
前記送電アンテナ取付部との接続部から前記開放端までの前記送電アンテナ配線の経路に沿って観測したときに、前記対向する位置で平行している配線部位の経路が互いに逆向きである、無線電力伝送システム。
【請求項4】
前記送電アンテナ配線を前記構造体の内側から見たときに、前記構造体の床面に平行な第一直線と、前記送電アンテナ取付部との接続部と前記接続部に最も近い第一屈曲部とを通る第二直線とのなす角度θが、0度≦θ≦90度または180度≦θ≦270度を満たす、請求項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記角度θが、0度≦θ≦60度または180度≦θ≦240度を満たす、請求項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項6】
前記送電アンテナ取付部との接続部から前記接続部に最も近い第一屈曲部に至る前記送電アンテナ配線の配線部位である第一送電アンテナ配線部は、前記構造体の壁面のうち、前記送電アンテナ取付部が設置された壁面以外のいずれかの壁面に対して平行であり、かつ、
前記第一屈曲部から前記第一屈曲部の次に前記接続部に近い第二屈曲部に至る前記送電アンテナ配線の配線部位である第二送電アンテナ配線部は、前記構造体の壁面のうち、前記送電アンテナ取付部が設置された壁面、および、前記第一送電アンテナ配線部と平行な壁面以外のいずれかの壁面に対して平行である、請求項のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項7】
前記受電部は、受電アンテナ配線と整流回路とを備える受電器から構成され、
前記受電アンテナ配線は、同一平面内に形成され、それぞれの一端が前記整流回路に接続され、前記整流回路に接続されている一端とは異なる他端が互いに向き合うように配置された開放端となっている2本の配線構造、または、同一平面内に形成され、両端が前記整流回路に接続されたループ形状の1本の配線構造を有するとともに、いずれの配線構造においても複数の屈曲部を有し、
前記受電アンテナ配線の前記屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、
前記受電アンテナ配線において、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行である、請求項のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システムに関する。具体的には、本発明は、高周波電磁波を送電する送電器を用いる無線電力伝送システムに関するものである。本発明の無線電力伝送システムは、倉庫内、工場内、車両内部など、壁面で囲まれた空間内に配置されたデバイス等へ高い送電効率で無線電力を供給する際に、受電器の設置方位の自由度を高めるための構造および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IOT(Internet of Things)デバイスの爆発的な増加に伴って、これらへの電力供給方法に課題が生じている。膨大なデバイスへの配線接続は困難であり、また、電池を電源とする場合には消耗した電池の交換に多大な労力を要する問題がある。これらを解決するために、無線にて電力を伝送する技術が期待されている。
【0003】
非特許文献1には、金属で囲まれた空間内を共振器に見立て、共振器固有の共振周波数で送電部から電磁波を照射し、共振器内の受電器へ送電する無線電力伝送システムが開示されている。このとき、モノポール型の送電アンテナと、2つの直交したコイル状のアンテナを取り付けることで、無線電力伝送を実現している。非特許文献1の筆者によると、2つのコイルアンテナを直交配置することで、異なる方位からの電磁波の受電を可能とする工夫が施されている。
【0004】
特許文献1には、非特許文献1と同様に、金属で囲まれた空間内を共振器に見立て、共振器固有の共振周波数で送電部から電磁波を照射し、共振器内の受電器へ送電する無線電力伝送システムが開示されている。特許文献1では、第一の受電器と第二の受電器が平行に対向されて配置されており、これを導体柱で接続する構造を有した受電器が開示されている。この構造によって送電部と受電部の見通しが悪くとも受電部に高効率で電力を送電できるとされている。
【0005】
非特許文献2には、金属で囲まれた空間内を共振器に見立て、共振器固有の共振周波数で送電部から電磁波を照射し、共振器内の受電器へ送電する無線電力伝送システムが開示されている。非特許文献2では、プリント基板上に形成したパッチアンテナを2つ用意し、それぞれ共振器の向かい合った面に、互いに直交するように配置した送電アンテナを利用して、無線電力伝送を実現している。非特許文献2の筆者によれば、このアンテナは空洞共振器内でのみ動作することを指摘している。すなわち共振器内の共振現象を利用した送電では、開放空間で用いられる一般的なアンテナとは異なる原理で、電磁波の送電が行われていることを指摘している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-089209号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】H.Mei,K.A.Thanckston,R.A.Bercich,J.G.R.Jefferys,and P.P.Irazoqui,“Cavity Resonator Wireless Power Transfer System for Freely Moving Animal Experiments,” IEEE Biomed.Eng.,Vol.64,No.4,pp.775-785 June 2016
【文献】S.Rahimizadeh,S.Korhummel,B.Kaslon,Z.Popovic,“Scalable adaptive wireless powering of multiple electronic devices in an over-moded cavity,” Conference Paper:Wireless Power Transfer(WPT),2013 IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属で囲まれた空間内を共振器に見立て、共振器固有の共振周波数で送電する無線電力伝送システムにおいて、既存の方法では薄型の受電器を利用しつつ、受電器が高い設置自由度を持つことが可能となる、適切な送受電アンテナの設計が明らかとなっていない。
【0009】
非特許文献1に記載の方式の場合、1つのモノポールアンテナを用いた送電器と、2つの互いに直交したコイルアンテナを受電器に用いることによって、受電が許容される受電器配置の自由度を高める方法が開示されている。このような受電方位の自由度が高い特徴は、IOTデバイスへの利用の観点で望ましい。その一方で、直径7mmと直径5mmのコイルアンテナが直交するように配置される構成となるため、受電器の形状が立体的になってしまい、IOTデバイスに取り付けるには厚すぎる課題がある。
【0010】
特許文献1に記載の方式の場合、第一の受電器と第二の受電器が平行に対向されて配置されており、これを導体柱で接続する受電器構造が示されている。文献中には受電可能な方位については記述がないために、受電可能な方位については明らかにされておらず、受電可能な方位を高める工夫が施されていない。また、第一と第二の受電器が立体的に配置されるために、IOTデバイスに取り付けるには厚すぎる課題がある。
【0011】
非特許文献2に記載の方式の場合、送電アンテナは対向する共振器の2面それぞれに1つずつ設置されている。しかし、これは送電回路が2つ必要となることを意味しており、実用面では高コストな手法となってしまう。また、文献中には受電回路に関する詳細な記述は示されておらず、そもそも適切なアンテナ設計は明らかにはなっていない。加えて、送受電アンテナが共振器内でのみ動作し、開放空間では動作しない旨が指摘されているが、共振器内でどのような条件を満たしたときにアンテナが動作するかは明らかにされていない。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、受電器が薄型であり、設置方位に高い自由度を有する無線電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線電力伝送システムは、第1の態様において、適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、上記受電部は、受電アンテナ配線と整流回路とを備える受電器から構成され、上記受電アンテナ配線は、同一平面内に形成され、それぞれの一端が上記整流回路に接続され、上記整流回路に接続されている一端とは異なる他端が互いに向き合うように配置された開放端となっている2本の配線構造、または、同一平面内に形成され、両端が上記整流回路に接続されたループ形状の1本の配線構造を有するとともに、いずれの配線構造においても複数の屈曲部を有し、上記屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行である。
【0014】
本発明の無線電力伝送システムは、第2の態様において、適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材によって全体が包囲された構造体と、少なくとも1つの送電部と、少なくとも1つの受電部と、を備え、上記送電部は、送電アンテナ取付部と送電アンテナ配線とを備える送電器から構成され、上記送電アンテナ取付部は、上記電磁波遮蔽部材と電気的に接触しないように設置されており、上記送電アンテナ配線は、上記電磁波遮蔽部材からなる壁面に対して平行になるように上記構造体の内側に形成され、その一端が上記送電アンテナ取付部と電気的に接続され、他端が開放端となっている配線構造を有するとともに、上記配線構造において4箇所以上8箇所以下の屈曲部を有し、上記屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、同一配線上の配線部位と対向する位置で平行している別の配線部位が存在し、上記送電アンテナ取付部との接続部から上記開放端までの上記送電アンテナ配線の経路に沿って観測したときに、上記対向する位置で平行している配線部位の経路が互いに逆向きである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受電器が薄型であり、設置方位に高い自由度を有する無線電力伝送システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る無線電力伝送システムの一例の構成図である。
図2】本発明に係る送電部3の一例の模式図である。
図3】本発明に係る送電部3における送電アンテナ配線6の模式図である。
図4】本発明に係る送電部3における送電アンテナ配線6aの模式図である。
図5A】送電アンテナ配線6aが回転する前の模式図である。
図5B】送電アンテナ配線6aが回転した後の模式図である。
図6】本発明に係る送電部3における送電アンテナ配線6bの模式図である。
図7】本発明に係る送電部3における送電アンテナ配線6cの模式図である。
図8】本発明に係る受電部4の一例の模式図である。
図9】受電アンテナ配線10aを備える受電部4の模式図である。
図10】受電アンテナ配線10bを備える受電部4の模式図である。
図11】受電アンテナ配線10cを備える受電部4の模式図である。
図12】本発明の実施例1に係る送電部15の模式図である。
図13】受電アンテナ配線10dを備える受電部4の模式図である。
図14】本発明の実施例1に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ面方位と受電アンテナ配線方位に対する、通過特性S21の関係を示すグラフである。
図15】本発明の実施例2に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ面方位と受電アンテナ配線方位に対する、通過特性S21の関係を示すグラフである。
図16】本発明の実施例5に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ面方位と受電アンテナ配線方位に対する、通過特性S21の関係を示すグラフである。
図17】本発明の実施例6に係る無線電力伝送システムにおいて、送電アンテナ配線6aが回転していない状態の模式図である。
図18】本発明の実施例6に係る無線電力伝送システムにおいて、送電アンテナ配線6aが回転した状態の模式図である。
図19】本発明の実施例6に係る無線電力伝送システムにおける、受電器の各設置方向に対する送電アンテナ配線の回転角と通過特性S21の関係を示すグラフである。
図20図19に示す6方向の伝送電力比の平均値と送電アンテナ配線の回転角の関係を示すグラフである。
図21】本発明の実施例7に係る無線電力伝送システムにおける電界強度分布の模式図である。
図22】本発明の実施例7に係る無線電力伝送システムにおける、受電部の相対位置と通過特性S21の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば「垂直」、「平行」、「直交」など)、および、要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0019】
図1は本発明に係る無線電力伝送システムの一例の構成図である。図1において、無線電力伝送システム1は、適宜な導電率を有する電磁波遮蔽部材2によって全体が包囲された構造体を共振器に見立て、その内部に、少なくとも1つの送電部3と、少なくとも1つの受電部4とを備える。すなわち、無線電力伝送システム1は無線電力伝送を実現する構造物の全体を指している。なお、構造体の形状は直方体形状に限定されるものではなく、例えば、ZX面が五角形である五角柱形状、ZX面が台形である四角柱形状、ZX面が半円である半円柱形状などであってもよい。
【0020】
電磁波遮蔽部材2は導電性を有していれば特に限定されないが、好ましくは銅、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。あるいは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性酸化物材料、グラファイト、有機導電材料などが挙げられる。これらは上記部材からなる複数の層で構成されてもよい。また、導電性を有していれば合金または混合物であっても構わない。加えて、電力供給する周波数において電磁波遮蔽部材として動作するのであれば、形状は板状、メッシュ状、膜状、ポーラス状などであってもよい。また、電磁波遮蔽部材2は表面保護などの目的で、電磁波透過素材で被覆してあっても構わない。なお、電磁波遮蔽部材2における電磁波遮蔽は、無線電力伝送に供される周波数においてのみ電磁波を遮蔽できればよい。すなわち、無線電力伝送用周波数とは異なる周波数での通信に対して遮蔽しない使い方も可能である。
【0021】
送電部3の構成について図2を用いて説明する。送電部3は、例えば、送電アンテナ取付部5と送電アンテナ配線6とを備える送電器から構成される。送電アンテナ取付部5は金属製であり、電磁波遮蔽部材2からなる壁面に対して概ね垂直に設置されることが好ましい。また、送電アンテナ取付部5は、それ自体が送電アンテナの一部として機能してもよい。送電アンテナ取付部5は、電磁波遮蔽部材2と電気的に接触しないように設置されつつ、電磁波遮蔽部材2を貫通して共振器(構造体)の外側に設置された送電回路に電気的に接続される。このとき、接続部と送電回路の接続には、適宜SMA(Sub Miniature Type A)端子などのコネクタを介してもよい。なお、上記送電回路と送電部3との間のインピーダンスを調整する整合回路は、共振器内外のどちらに設置しても構わない。
【0022】
送電アンテナ配線6は、プリント基板などの上に配線してもよいが、送電アンテナ取付部5を折り曲げて配線にしても構わない。送電アンテナ配線6は、電磁波遮蔽部材2からなる共振器の壁面に対して概ね水平になるように形成されることが好ましい。
【0023】
送電アンテナ配線6の構造について図3を用いて説明する。送電アンテナ配線6は、その一端が送電アンテナ取付部5と電気的に接続されており、他端は開放端7となっている配線構造を有する。送電アンテナ配線6は、上記配線構造において屈曲部を有している。例えば、送電アンテナ配線6は、送電アンテナ取付部5との接続部から近い順に第一屈曲部8aおよび第二屈曲部8bという2箇所の屈曲部を有している。図3に示すように、送電アンテナ配線6を、第一屈曲部8aと第二屈曲部8bで区切られた配線部位ごとに着目し、例えば第一送電アンテナ配線部9a、第二送電アンテナ配線部9bおよび第三送電アンテナ配線部9cを定義する。送電アンテナ配線6は、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、第一送電アンテナ配線部9aと第三送電アンテナ配線部9cの関係のように、同一配線上の配線部位と対向する位置で平行している別の配線部位が存在するような構造を有している。この場合、送電アンテナ配線6と送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6の経路に沿って観測したときに、上記対向する位置で平行している配線部位の経路が互いに逆向きであることを特徴としている。
【0024】
送電部3は、送電アンテナ配線6に代えて、図4に示す送電アンテナ配線6aを備えてもよい。送電アンテナ配線6aは、送電アンテナ取付部5との接続部から近い順に第一屈曲部8a、第二屈曲部8b、第三屈曲部8cおよび第四屈曲部8dという4箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一送電アンテナ配線部9a、第二送電アンテナ配線部9b、第三送電アンテナ配線部9c、第四送電アンテナ配線部9dおよび第五送電アンテナ配線部9eを有している。第一送電アンテナ配線部9aと第三送電アンテナ配線部9cは、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6aと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6aの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。同様に、第三送電アンテナ配線部9cと第五送電アンテナ配線部9eは、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6aと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6aの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。一方、第一送電アンテナ配線部9aと第五送電アンテナ配線部9eは、互いに平行ではあるが、対向する位置にないため、配線部位の経路が逆向きである必要はない。同様に、第二送電アンテナ配線部9bと第四送電アンテナ配線部9dは、互いに平行ではあるが、対向する位置にないため、配線部位の経路が逆向きである必要はない。
【0025】
送電部3が例えば送電アンテナ配線6aを備える場合、図5Aおよび図5Bに示すように、送電アンテナ配線6aが送電アンテナ取付部5を軸に回転したような構造を有していてもよい。送電アンテナ配線6aを構造体の内側から見たときに、図5Bに示すように、構造体の床面に平行な第一直線L1と、送電アンテナ取付部5との接続部と上記接続部に最も近い第一屈曲部8aとを通る第二直線L2とのなす角度をθと定義したとき、角度θが、0度≦θ≦90度または180度≦θ≦270度を満たすことが好ましく、0度≦θ≦60度または180度≦θ≦240度を満たすことがより好ましい。
【0026】
また、図5Aに示すように、送電アンテナ取付部5との接続部から上記接続部に最も近い第一屈曲部8aに至る送電アンテナ配線6aの配線部位(すなわち第一送電アンテナ配線部9a)は、構造体の壁面のうち、送電アンテナ取付部5が設置された壁面以外のいずれかの壁面に対して平行であり、かつ、第一屈曲部8aから第一屈曲部8aの次に上記接続部に近い第二屈曲部8bに至る送電アンテナ配線6aの配線部位(すなわち第二送電アンテナ配線部9b)は、構造体の壁面のうち、送電アンテナ取付部5が設置された壁面、および、第一送電アンテナ配線部9aと平行な壁面以外のいずれかの壁面に対して平行であってもよい。
【0027】
送電部3において、送電アンテナ配線が有する屈曲部の数は、4箇所以上8箇所以下であることが好ましい。
【0028】
図6に示す送電アンテナ配線6bは、送電アンテナ取付部5との接続部から近い順に第一屈曲部8a、第二屈曲部8b、第三屈曲部8c、第四屈曲部8d、第五屈曲部8e、第六屈曲部8f、第七屈曲部8gおよび第八屈曲部8hという8箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一送電アンテナ配線部9a、第二送電アンテナ配線部9b、第三送電アンテナ配線部9c、第四送電アンテナ配線部9d、第五送電アンテナ配線部9e、第六送電アンテナ配線部9f、第七送電アンテナ配線部9g、第八送電アンテナ配線部9hおよび第九送電アンテナ配線部9iを有している。第一送電アンテナ配線部9aと第三送電アンテナ配線部9cは、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6bと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6bの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。同様に、第三送電アンテナ配線部9cと第五送電アンテナ配線部9e、第五送電アンテナ配線部9eと第七送電アンテナ配線部9g、第七送電アンテナ配線部9gと第九送電アンテナ配線部9iは、各々、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6bと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6bの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。
【0029】
図7に示す送電アンテナ配線6cは、送電アンテナ取付部5との接続部から近い順に第一屈曲部8a、第二屈曲部8b、第三屈曲部8c、第四屈曲部8d、第五屈曲部8e、第六屈曲部8fおよび第七屈曲部8gという7箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一送電アンテナ配線部9a、第二送電アンテナ配線部9b、第三送電アンテナ配線部9c、第四送電アンテナ配線部9d、第五送電アンテナ配線部9e、第六送電アンテナ配線部9f、第七送電アンテナ配線部9gおよび第八送電アンテナ配線部9hを有している。第一送電アンテナ配線部9aと第三送電アンテナ配線部9cは、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6cと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6cの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。同様に、第三送電アンテナ配線部9cと第五送電アンテナ配線部9e、第三送電アンテナ配線部9cと第七送電アンテナ配線部9gは、各々、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6cと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6cの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。また、第四送電アンテナ配線部9dと第六送電アンテナ配線部9f、第六送電アンテナ配線部9fと第八送電アンテナ配線部9hについても、各々、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、対向する位置で互いに平行であり、また、送電アンテナ配線6cと送電アンテナ取付部5の接続部から開放端7までの送電アンテナ配線6cの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きである。
【0030】
送電部3において、送電アンテナ配線が有する屈曲部の角度は特に限定されないが、概ね直角であることが好ましい。屈曲部の角度は、それぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。また、屈曲部に丸みが付いていてもよい。
【0031】
受電部4の構成について図8を用いて説明する。受電部4は、例えば、受電アンテナ配線10と整流回路11とを備える受電器から構成される。必要に応じてスイッチ、整合回路等を取り付けてもよい。受電アンテナ配線10は、同一平面内に形成され、それぞれの一端が整流回路11に接続され、整流回路11に接続されている一端とは異なる他端が互いに向き合うように配置された開放端12となっている2本の配線構造を有する。受電アンテナ配線10は、上記配線構造において複数の屈曲部を有している。例えば、一方の受電アンテナ配線10は、整流回路11との接続部から近い順に第一屈曲部13a、第二屈曲部13bおよび第三屈曲部13cという3箇所の屈曲部を有している。図8に示すように、一方の受電アンテナ配線10を、第一屈曲部13a、第二屈曲部13bおよび第三屈曲部13cで区切られた配線部位ごとに着目し、例えば第一受電アンテナ配線部14a、第二受電アンテナ配線部14b、第三受電アンテナ配線部14cおよび第四受電アンテナ配線部14dを定義する。同様に、他方の受電アンテナ配線10は、整流回路11との接続部から近い順に第一屈曲部15a、第二屈曲部15bおよび第三屈曲部15cという3箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一受電アンテナ配線部16a、第二受電アンテナ配線部16b、第三受電アンテナ配線部16cおよび第四受電アンテナ配線部16dを有している。
【0032】
受電アンテナ配線10においては、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、第一受電アンテナ配線部14aと第一受電アンテナ配線部16a、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14d、第三受電アンテナ配線部14cと第三受電アンテナ配線部16c、第二受電アンテナ配線部16bと第四受電アンテナ配線部16dが、それぞれ対向しており、そのうち、対向している部分が最も長い第三受電アンテナ配線部14cと第三受電アンテナ配線部16cは互いに平行である。このように、受電アンテナ配線が2本の配線構造を有する場合においては、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行であることを特徴としている。
【0033】
受電アンテナ配線10においては、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。すなわち、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14dが互いに平行であるか、または、第二受電アンテナ配線部16bと第四受電アンテナ配線部16dが互いに平行であるか、あるいは、どちらも互いに平行であることが好ましい。なお、図8では、第二受電アンテナ配線部14bと第二受電アンテナ配線部16bが同じ長さであり、第四受電アンテナ配線部14dと第四受電アンテナ配線部16dが同じ長さであるように示されているが、第二受電アンテナ配線部14bと第二受電アンテナ配線部16bの長さおよび第四受電アンテナ配線部14dと第四受電アンテナ配線部16dの長さは同じでもよく、異なっていてもよい。第二受電アンテナ配線部14bと第二受電アンテナ配線部16bの長さおよび第四受電アンテナ配線部14dと第四受電アンテナ配線部16dの長さが異なる場合、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士が平行であることに加えて、対向している部分が3番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。
【0034】
受電アンテナ配線10においては、互いに対向している配線部位のうち、整流回路11との接続部から開放端12までの受電アンテナ配線10の経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きになっている配線部位同士が平行であることが好ましい。
【0035】
受電部4は、受電アンテナ配線10に代えて、図9に示す受電アンテナ配線10aを備えてもよい。受電アンテナ配線10aは、同一平面内に形成され、両端が整流回路11に接続されたループ形状の1本の配線構造を有する。受電アンテナ配線10aは、上記配線構造において複数の屈曲部を有している。例えば、受電アンテナ配線10aは、整流回路11との一方の接続部から他方の接続部に向かって第一屈曲部13a、第二屈曲部13b、第三屈曲部13c、第四屈曲部13d、第五屈曲部13eおよび第六屈曲部13fという6箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一受電アンテナ配線部14a、第二受電アンテナ配線部14b、第三受電アンテナ配線部14c、第四受電アンテナ配線部14d、第五受電アンテナ配線部14e、第六受電アンテナ配線部14fおよび第七受電アンテナ配線部14gを有している。
【0036】
受電アンテナ配線10aにおいては、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、第一受電アンテナ配線部14aと第七受電アンテナ配線部14g、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14d、第三受電アンテナ配線部14cと第五受電アンテナ配線部14e、第四受電アンテナ配線部14dと第六受電アンテナ配線部14fが、それぞれ対向しており、そのうち、対向している部分が最も長い第三受電アンテナ配線部14cと第五受電アンテナ配線部14eは互いに平行である。このように、受電アンテナ配線が1本の配線構造を有する場合においても、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行であることを特徴としている。
【0037】
受電アンテナ配線10aにおいては、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。すなわち、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14dが互いに平行であるか、または、第四受電アンテナ配線部14dと第六受電アンテナ配線部14fが互いに平行であるか、あるいは、どちらも互いに平行であることが好ましい。なお、図9では、第二受電アンテナ配線部14bと第六受電アンテナ配線部14fが同じ長さであるように示されているが、第二受電アンテナ配線部14bと第六受電アンテナ配線部14fの長さは同じでもよく、異なっていてもよい。第二受電アンテナ配線部14bと第六受電アンテナ配線部14fの長さが異なる場合、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士が平行であることに加えて、対向している部分が3番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。
【0038】
受電アンテナ配線10aにおいては、互いに対向している配線部位のうち、整流回路11との一方の接続部から他方の接続部までの受電アンテナ配線10aの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きになっている配線部位同士が平行であることが好ましい。
【0039】
受電部4において、受電アンテナ配線が2本の配線構造を有する場合、図8に示すように、それぞれの受電アンテナ配線を見たとき、屈曲部の数が同じであり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も同じであることが好ましい。この場合、それぞれの受電アンテナ配線における各配線部位の長さは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0040】
図10は、屈曲部の数が同じであり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も同じである受電アンテナ配線10bを備える受電部4の模式図である。一方の受電アンテナ配線10bは、整流回路11との接続部から近い順に第一屈曲部13aおよび第二屈曲部13bという2箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一受電アンテナ配線部14a、第二受電アンテナ配線部14bおよび第三受電アンテナ配線部14cを有している。同様に、他方の受電アンテナ配線10bは、整流回路11との接続部から近い順に第一屈曲部15aおよび第二屈曲部15bという2箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一受電アンテナ配線部16a、第二受電アンテナ配線部16bおよび第三受電アンテナ配線部16cを有している。
【0041】
受電アンテナ配線10bにおいては、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、第一受電アンテナ配線部14aと第三受電アンテナ配線部14c、第二受電アンテナ配線部14bと第二受電アンテナ配線部16b、第一受電アンテナ配線部16aと第三受電アンテナ配線部16cが、それぞれ対向しており、そのうち、対向している部分が最も長い第二受電アンテナ配線部14bと第二受電アンテナ配線部16bは互いに平行である。従って、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行である。
【0042】
受電アンテナ配線10bにおいては、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。すなわち、第一受電アンテナ配線部14aと第三受電アンテナ配線部14cが互いに平行であるか、または、第一受電アンテナ配線部16aと第三受電アンテナ配線部16cが互いに平行であるか、あるいは、どちらも互いに平行であることが好ましい。なお、図10では、第一受電アンテナ配線部14aと第一受電アンテナ配線部16aが同じ長さであり、第三受電アンテナ配線部14cと第三受電アンテナ配線部16cが同じ長さであるように示されているが、第一受電アンテナ配線部14aと第一受電アンテナ配線部16aの長さおよび第三受電アンテナ配線部14cと第三受電アンテナ配線部16cの長さは同じでもよく、異なっていてもよい。第一受電アンテナ配線部14aと第一受電アンテナ配線部16aの長さおよび第三受電アンテナ配線部14cと第三受電アンテナ配線部16cの長さが異なる場合、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士が平行であることに加えて、対向している部分が3番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。
【0043】
受電アンテナ配線10bにおいては、互いに対向している配線部位のうち、整流回路11との接続部から開放端12までの受電アンテナ配線10bの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きになっている配線部位同士が平行であることが好ましい。
【0044】
受電部4において、受電アンテナ配線が2本の配線構造を有する場合、それぞれの受電アンテナ配線を見たとき、屈曲部の数が異なり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も異なっていてもよい。
【0045】
図11は、屈曲部の数が異なり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も異なる受電アンテナ配線10cを備える受電部4の模式図である。一方の受電アンテナ配線10cは、整流回路11との接続部から近い順に第一屈曲部13a、第二屈曲部13bおよび第三屈曲部13cという3箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一受電アンテナ配線部14a、第二受電アンテナ配線部14b、第三受電アンテナ配線部14cおよび第四受電アンテナ配線部14dを有している。他方の受電アンテナ配線10cは、整流回路11との接続部から近い順に第一屈曲部15aおよび第二屈曲部15bという2箇所の屈曲部を有するとともに、屈曲部で区切られた配線部位である第一受電アンテナ配線部16a、第二受電アンテナ配線部16bおよび第三受電アンテナ配線部16cを有している。
【0046】
受電アンテナ配線10cにおいては、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、第一受電アンテナ配線部14aと第三受電アンテナ配線部14c、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14d、第三受電アンテナ配線部14cと第二受電アンテナ配線部16b、第一受電アンテナ配線部16aと第三受電アンテナ配線部16cが、それぞれ対向しており、そのうち、対向している部分が最も長い第三受電アンテナ配線部14cと第二受電アンテナ配線部16bは互いに平行である。従って、屈曲部で区切られた配線部位が延びている方向に対して垂直な方向に見たとき、3組以上の配線部位がそれぞれ対向しており、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が最も長い配線部位同士は平行である。
【0047】
受電アンテナ配線10cにおいては、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。すなわち、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14dが互いに平行であるか、または、第一受電アンテナ配線部16aと第三受電アンテナ配線部16cが互いに平行であるか、あるいは、どちらも互いに平行であることが好ましい。なお、図11では、第四受電アンテナ配線部14dと第三受電アンテナ配線部16cが同じ長さであり、第二受電アンテナ配線部14bと第四受電アンテナ配線部14dとが対向している部分の長さと第一受電アンテナ配線部16aと第三受電アンテナ配線部16cとが対向している部分の長さが同じであるように示されているが、第四受電アンテナ配線部14dと第三受電アンテナ配線部16cの長さは同じでもよく、異なっていてもよい。第四受電アンテナ配線部14dと第三受電アンテナ配線部16cの長さが異なる場合、互いに対向している配線部位のうち、対向している部分が2番目に長い配線部位同士が平行であることに加えて、対向している部分が3番目に長い配線部位同士も平行であることが好ましい。
【0048】
受電アンテナ配線10cにおいては、互いに対向している配線部位のうち、整流回路11との接続部から開放端12までの受電アンテナ配線10cの経路に沿って観測したときに、配線部位の経路が互いに逆向きになっている配線部位同士が平行であることが好ましい。
【0049】
受電部4において、受電アンテナ配線が1本の配線構造を有する場合、図9に示すように、受電アンテナ配線を2分割して見たとき、屈曲部の数が同じであり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も同じであることが好ましい。この場合、それぞれの受電アンテナ配線における各配線部位の長さは、同じでもよく、異なっていてもよい。また、受電アンテナ配線を2分割して見たとき、屈曲部の数が異なり、かつ、同一配線上で対向している配線部位の組の数も異なっていてもよい。
【0050】
受電部4において、受電アンテナ配線が有する屈曲部の角度は特に限定されないが、概ね直角であることが好ましい。屈曲部の角度は、それぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。また、屈曲部に丸みが付いていてもよい。
【0051】
以上のように送電部3および受電部4のアンテナを設計することによって、受電器が薄型であり、設置方位に高い自由度を有する無線電力伝送システムを実現できる。
【0052】
無線電力伝送システム1は電磁波遮蔽部材2で遮蔽された空間を有するため、共振器として考えることができる。共振器の水平方向の長さがa(X軸方向)およびb(Y軸方向)であり、垂直方向の長さがc(Z軸方向)である場合、共振周波数fは数式1のように決定することができる。
【0053】
[数式1]
=v/(2π×(μ×ε1/2)×{(mπ/a)+(nπ/b)+(pπ/c)1/2
【0054】
ここで、vは光速、μは比透磁率、εは比誘電率、m、n、pはそれぞれ整数を示している。
【0055】
本発明の無線電力伝送システムは上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変更を加えることが可能である。
【実施例
【0056】
以下、本発明の無線電力伝送システムをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
実施例1では、送電部3と、受電部4と、アルミニウムプレートとアルミニウムフレームからなる電磁波遮蔽部材2で形成される共振器(構造体)から構成される、図1に示す無線電力伝送システム1を考える。ただし、送電部3に代えて、図12に示す送電部15を設置した。
【0058】
本発明の実施例1に係る無線電力伝送システムに供される共振器は、X軸方向の長さが880mm、Y軸方向の長さが540mm、Z軸方向の長さが720mmの直方体形状をしている。送電部15はYZ面の概ね中央部に設置されている。また、受電部4は共振器の中央位置に設置されている。
【0059】
図12は本発明の実施例1に係る送電部15の模式図である。図12に示す送電部15は送電アンテナ配線6を持たない構造であり、実質的にモノポールアンテナ構造である。
【0060】
受電部4として、図8に示す受電アンテナ配線10、図9に示す受電アンテナ配線10aまたは図13に示す受電アンテナ配線10dの3種類の構造が検討された。図13に示す受電アンテナ配線構造は、いわゆるダイポールアンテナ構造である。
【0061】
受電アンテナ配線10、10aまたは10dを形成する面を受電アンテナ面方位、整流回路11から受電アンテナ配線10、10aまたは10dが延びる方向を受電アンテナ配線方位としてここでは定義する。例えば、図8図9および図13に示す受電部4では、受電アンテナ面方位は紙面に平行な方向であり、受電アンテナ配線方位は左右方向である。このように準備された無線電力伝送システム1において、送電部15と受電部4との間の通過特性S21を、解析シミュレーションソフトFemtet(登録商標)を利用して解析した。
【0062】
本発明の実施例1に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ面方位と受電アンテナ配線方位に対する、通過特性S21の関係を図14に示す。IOTデバイスの駆動や、IOTデバイス用の電池への充電を行うためには、無線電力伝送効率が1%以上であること、すなわちS21が-20dB以上であることが望ましい。図14より、図8および図9に示す受電アンテナ配線構造では、受電アンテナ面方位/受電アンテナ配線方位が、ZX面/Z方位、ZX面/X方位、XY面/X方位、XY面/Y方位において、前述のS21の特性を満たしていることが理解できる。一方で、ダイポールアンテナ構造を有した図13の形状では、希望するS21の特性を満たしているのはZX面/Z方位、XY面/Y方位のみであることが判る。
【0063】
以上より、図8または図9に示すような受電アンテナ配線の構造を有する受電部4を用いることによって、非特許文献1または特許文献1の課題であった立体的な配線構造を利用する必要がなくなり、同時に、受電許容方位を増やす利点が得られることが判明した。
【0064】
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同じ共振器の中央に、図8に示す構造を有する受電部4を設置し、図4に示す送電アンテナ配線6aを有する送電部3または図12に示すモノポールアンテナ構造を有する送電部15を取り付けた無線電力伝送システム1を考える。
【0065】
このように準備された無線電力伝送システム1において、送電部3または15と受電部4との間の通過特性S21を、解析シミュレーションソフトFemtet(登録商標)を利用して解析した。
【0066】
本発明の実施例2に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ面方位と受電アンテナ配線方位に対する、通過特性S21の関係を図15に示す。図15より、図12に示すモノポール型の送電部15を利用した無線電力伝送システムでは、S21が-20dB以上であるのは受電アンテナ面方位/受電アンテナ配線方位が、ZX面/Z方位、ZX面/X方位、XY面/X方位、XY面/Y方位であったのに対して、図4に示すS字型の送電部3を利用した無線電力伝送システムでは、ZX面/Z方位、ZX面/X方位、YZ面/Y方位、YZ面/Z方位、XY面/X方位、XY面/Y方位において、S21が-20dB以上である。
【0067】
以上より、図4に示すような送電アンテナ配線の構造を有する送電部3を用いることによって、受電器の設置方位の自由度が更に高まることが判明した。
【0068】
[実施例3]
実施例3では、送電アンテナ配線の屈曲部の数を0~12の範囲で変更したこと以外は、実施例2と同様の方法で通過特性S21を解析した。なお、屈曲部の数が4である場合が実施例2に相当する。
【0069】
送電アンテナ配線の屈曲部の数と通過特性S21の関係を表1に示す。表1では、実用的に利用可能である-20dB以上のS21が得られた条件を灰色で示している。表1の結果より、好ましい屈曲部の数が4以上8以下の範囲であることが明らかとなった。
【0070】
【表1】
【0071】
[実施例4]
実施例1~実施例3はいずれも共振器の内部での検討結果である。非特許文献2で開示された検討では、共振器の外部では無線電力伝送システムが動作しない旨の結果が得られている。そこで、実施例1および実施例2において、受電器と送電器の配置をそのままにして、電磁波遮蔽部材を取り去った条件を検討した。その結果、実施例1および実施例2のいずれの形態においても、共振が発生しないために、無線電力伝送が不可能であることが明らかとなった。
【0072】
[実施例5]
実施例5では、実施例1と同じ共振器の中央に、図13に示すダイポールアンテナ構造を有する受電部4を設置し、図4に示す送電アンテナ配線6aを有する送電部3または図12に示すモノポールアンテナ構造を有する送電部15を取り付けた無線電力伝送システム1を考える。
【0073】
このように準備された無線電力伝送システム1において、送電部3または15と受電部4との間の通過特性S21を、解析シミュレーションソフトFemtet(登録商標)を利用して解析した。
【0074】
本発明の実施例5に係る無線電力伝送システムにおける、受電アンテナ面方位と受電アンテナ配線方位に対する、通過特性S21の関係を図16に示す。図16より、従来のダイポールアンテナ構造を有する受電部4を用いた場合であっても、図4に示すような送電アンテナ配線の構造を有する送電部3を用いることによって、受電器の設置方位の自由度が高まることが判明した。
【0075】
[実施例6]
実施例6では、図17および図18に示すように送電部3を構成する送電アンテナ配線6aを回転させて、角度θ(図5Aおよび図5B参照)を0度~360度の範囲で変更したこと以外は、実施例2と同様の方法で通過特性S21を解析した。なお、角度θが0度または360度である場合が実施例2に相当する。
【0076】
本発明の実施例6に係る無線電力伝送システムにおける、受電器の各設置方向に対する送電アンテナ配線の回転角と通過特性S21の関係を図19に示す。また、図19に示す6方向の伝送電力比の平均値と送電アンテナ配線の回転角の関係を図20に示す。図19より、送電アンテナ配線の回転角、すなわち送電アンテナ配線の角度θが0度≦θ≦90度または180度≦θ≦270度を満たす場合、全ての面において希望する通過特性S21を満たしている。さらに、図20より、送電アンテナ配線の回転角、すなわち送電アンテナ配線の角度θが0度≦θ≦60度または180度≦θ≦240度を満たす場合、伝送電力比を0.5以上とすることができる。
【0077】
そのため、図17に示すように、送電アンテナ取付部との接続部から第一屈曲部に至る第一送電アンテナ配線部が、構造体の壁面のうち、送電アンテナ取付部が設置された壁面以外のいずれかの壁面に対して平行であり、かつ、第一屈曲部から第二屈曲部に至る第二送電アンテナ配線部が、構造体の壁面のうち、送電アンテナ取付部が設置された壁面、および、第一送電アンテナ配線部と平行な壁面以外のいずれかの壁面に対して平行である場合であっても、高い電力伝送効率が得られることが明らかとなった。
【0078】
[実施例7]
図21は本発明の実施例7に係る無線電力伝送システムにおける電界強度分布の模式図である。本発明の実施例7に係る無線電力伝送システムに供される共振器は、X軸方向の長さが500mm、Y軸方向の長さが600mm、Z軸方向の長さが400mmの直方体形状をしている。
【0079】
X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の中央位置を0として、受電部4をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のいずれかに移動させたときの通過特性S21を、解析シミュレーションソフトFemtet(登録商標)を利用して解析した。
【0080】
本発明の実施例7に係る無線電力伝送システムにおける、受電部の相対位置と通過特性S21の関係を図22に示す。図22より、受電部が設置される場所の電界強度が高い受電部の相対位置が-200mmから+200mmの範囲では、S21が-2dB以上であり、受電部の位置がどこであっても無線電力伝送が可能であることが判る。
【符号の説明】
【0081】
1 無線電力伝送システム
2 電磁波遮蔽部材
3、15 送電部
4 受電部
5 送電アンテナ取付部
6、6a、6b、6c 送電アンテナ配線
7 送電アンテナ配線の開放端
8a 送電アンテナ配線の第一屈曲部
8b 送電アンテナ配線の第二屈曲部
8c 送電アンテナ配線の第三屈曲部
8d 送電アンテナ配線の第四屈曲部
8e 送電アンテナ配線の第五屈曲部
8f 送電アンテナ配線の第六屈曲部
8g 送電アンテナ配線の第七屈曲部
8h 送電アンテナ配線の第八屈曲部
9a 第一送電アンテナ配線部
9b 第二送電アンテナ配線部
9c 第三送電アンテナ配線部
9d 第四送電アンテナ配線部
9e 第五送電アンテナ配線部
9f 第六送電アンテナ配線部
9g 第七送電アンテナ配線部
9h 第八送電アンテナ配線部
9i 第九送電アンテナ配線部
10、10a、10b、10c、10d 受電アンテナ配線
11 整流回路
12 受電アンテナ配線の開放端
13a、15a 受電アンテナ配線の第一屈曲部
13b、15b 受電アンテナ配線の第二屈曲部
13c、15c 受電アンテナ配線の第三屈曲部
13d 受電アンテナ配線の第四屈曲部
13e 受電アンテナ配線の第五屈曲部
13f 受電アンテナ配線の第六屈曲部
14a、16a 第一受電アンテナ配線部
14b、16b 第二受電アンテナ配線部
14c、16c 第三受電アンテナ配線部
14d、16d 第四受電アンテナ配線部
14e 第五受電アンテナ配線部
14f 第六受電アンテナ配線部
14g 第七受電アンテナ配線部
L1 構造体の床面に平行な第一直線
L2 送電アンテナ取付部との接続部と上記接続部に最も近い第一屈曲部とを通る第二直線
θ 第一直線と第二直線とのなす角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22