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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】過給システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20241022BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20241022BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20241022BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20241022BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B37/12 302D
F02B37/12 302F
F02D13/02 B
F02D43/00 301R
F02D43/00 301Z
F02D45/00 364E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023132490
(22)【出願日】2023-08-16
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】山本 和成
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-281950(JP,A)
【文献】特開2004-116333(JP,A)
【文献】特開2007-192155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/12
F02D 13/02
F02D 23/00
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関への吸気の吸入を調整する吸気弁と、
前記吸気弁の開閉タイミングを調整する可変機構と、
前記内燃機関からの排気の流れを利用して前記吸気を圧縮する過給機と、
前記内燃機関のポンプ損失の増大の度合いを示す損失情報を取得する取得部と、
前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合に、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記過給機による前記吸気の過給圧を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記可変機構が前記開閉タイミングの調整を行う際に前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合に、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記吸気の過給圧を小さくする、過給システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記吸気の過給圧を小さくする、
請求項1に記載の過給システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記吸気弁が閉じるタイミングで、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記過給機による前記吸気の過給圧を制御する、
請求項2に記載の過給システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記損失情報として、前記排気の排気圧と前記吸気の吸気圧とを取得し、
前記排気圧と前記吸気圧の差が所定値よりも大きい場合には、前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きいと判定する判定部を更に備える、
請求項1に記載の過給システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記可変機構が前記開閉タイミングの調整を行う際に前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合い以下である場合に、前記過給機による前記吸気の過給圧が所定値になるように、前記過給機のタービンのノズルの開度を制御する、
請求項に記載の過給システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記内燃機関の回転速度が所定速度より小さく、かつ前記内燃機関のトルクが所定値より小さい場合に、前記可変機構に前記開閉タイミングの調整を行わせる、
請求項1に記載の過給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気を過給する過給システムの中には、タービンの可変ノズルの開度を制御して吸気の過給圧を調整するターボ過給機と、吸気弁の開閉タイミングを制御可能な可変動弁機構とを有するものがある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-2100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸気の過給の際に過給圧が一定になるようにターボ過給機が動作するため、内燃機関の動作条件によっては、過給に伴い内燃機関への吸気量が増加する。吸気量が増加すると、内燃機関の排気行程での仕事が増加するため、燃費が悪化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、過給機を制御する際の燃費の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、内燃機関への吸気の吸入を調整する吸気弁と、前記吸気弁の開閉タイミングを調整する可変機構と、前記内燃機関からの排気の流れを利用して前記吸気を圧縮する過給機と、前記内燃機関のポンプ損失の増大の度合いを示す損失情報を取得する取得部と、前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合に、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記過給機による前記吸気の過給圧を制御する制御部と、を備える、過給システムを提供する。
【0007】
また、前記制御部は、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記吸気の過給圧を小さくすることとしてもよい。
【0008】
また、前記制御部は、前記吸気弁が閉じるタイミングで、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記過給機による前記吸気の過給圧を制御することとしてもよい。
【0009】
また、前記取得部は、前記損失情報として、前記排気の排気圧と前記吸気の吸気圧とを取得し、前記排気圧と前記吸気圧の差が所定値よりも大きい場合には、前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きいと判定する判定部を更に備えることとしてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、前記可変機構が前記開閉タイミングの調整を行う際に前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合に、前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記吸気の過給圧を小さくすることとしてもよい。
【0011】
また、前記制御部は、前記可変機構が前記開閉タイミングの調整を行う際に前記ポンプ損失の増大の度合いが所定度合い以下である場合に、前記過給機による前記吸気の過給圧が所定値になるように、前記過給機のタービンのノズルの開度を制御することとしてもよい。
【0012】
また、前記制御部は、前記内燃機関の回転速度が所定速度より小さく、かつ前記内燃機関のトルクが所定値より小さい場合に、前記可変機構に前記開閉タイミングの調整を行わせることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、過給機を制御する際の燃費の悪化を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一の実施形態に係る過給システムSの構成を示す模式図である。
図2】制御装置100の詳細構成を示すブロック図である。
図3】可変機構60によって開閉タイミングを調整するエンジン10の動作条件を示す模式図である。
図4】第2過給制御における吸入量と過給圧の関係を示すタイムチャートである。
図5】制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<過給システムの構成>
図1は、一の実施形態に係る過給システムSの構成を示す模式図である。過給システムSは、エンジン10に導入される吸気を過給するシステムであり、ここでは車両に搭載されている。過給システムSは、図1に示すように、エンジン10と、吸気弁20と、排気弁25と、吸気通路30と、排気通路40と、過給機50と、可変機構60と、過給圧センサ70と、吸気圧センサ72と、排気圧センサ73と、制御装置100を有する。
【0016】
エンジン10は、燃焼室11内の吸気と燃料の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン10は、ここではディーゼルエンジンである。エンジン10は、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13を有する。
【0017】
シリンダブロック12内には、往復移動可能なピストン14を収容するシリンダ15が形成されている。
シリンダヘッド13には、燃焼室11内に吸気を導入する吸気ポート16と、燃焼室11から排気を導出する排気ポート17が設けられている。また、シリンダヘッド13には、燃焼室11に燃料を噴射するインジェクタ18が設けられている。
【0018】
吸気弁20は、シリンダヘッド13に設けられ、吸気ポート16を開閉する。吸気弁20は、開閉することでエンジン10への吸気の流入を調整する。排気弁25は、シリンダヘッド13に設けられ、排気ポート17を開閉する。排気弁25は、開閉することでエンジン10からの排気の流出を調整する。
【0019】
吸気通路30は、エンジン10に吸気(空気)を導入する流路である。吸気弁20が開状態である際に、吸気通路30から燃焼室11に吸気が流入する。吸気通路30には、エアクリーナ32と、過給機50のコンプレッサ54と、インタークーラ34が設けられている。インタークーラ34は、コンプレッサ54によって圧縮された吸気を冷却する。
【0020】
排気通路40は、エンジン10の排気を大気に導く流路である。排気弁25が開状態である際に、燃焼室11から排気通路40に排気ガスが流出される。排気通路40には、過給機50のタービン52と、排気浄化装置42が設けられている。
【0021】
過給機50は、排気の流れを利用して吸気を圧縮するターボチャージャである。過給機50は、タービン52と、コンプレッサ54を有する。タービン52は、排気通路40を流れる排気により駆動される。コンプレッサ54は、連結軸を介してタービン52に連結されており、タービン52の回転に連動して吸気を圧縮する。タービン52は、内部にノズルを有しており、ノズル開度を制御することで吸気の過給圧を調整可能である。
【0022】
可変機構60は、吸気弁20と排気弁25の開閉タイミングを調整する機構である。可変機構60は、例えば、電磁ソレノイドの電磁力により吸気弁20等を直接的に開閉動作させる電磁駆動式の機構であるが、これに限定されず、カムプロファイルが異なる複数のカムを切り替え可能なカム切替式の機構であってもよい。可変機構60は、吸気弁20と排気弁25の開タイミング及び閉タイミングを基準タイミングから早くしたり(進角とも呼ぶ)、吸気弁20と排気弁25の開タイミング及び閉タイミングを基準タイミングから遅くしたりする(遅角とも呼ぶ)。なお、吸気弁20と排気弁25が基準タイミングで開閉する場合には、可変機構60は動作しない。
【0023】
過給圧センサ70は、過給機50による吸気の過給圧を検出する。過給圧センサ70は、吸気通路30において過給機50のコンプレッサ54の下流側に位置する。
吸気圧センサ72は、エンジン10に流入する吸気の圧力を検出する。吸気圧センサ72は、吸気通路30においてエンジン10の上流に位置している。
排気圧センサ73は、エンジン10から流出する排気の圧力を検出する。排気圧センサ74は、排気通路40においてエンジン10の下流に位置している。
【0024】
制御装置100は、過給システムSの動作を制御する。例えば、制御装置100は、可変機構60により吸気弁20及び排気弁25の開閉を制御したり、過給圧センサ70が検出する過給圧に基づいて吸気の過給を制御したりする。制御装置100は、詳細は後述するが、過給機50を制御する際の燃費の悪化を抑制すべく、エンジン10の動作状態に基づいて2つの過給制御(第1過給制御と第2過給制御)を切り替える。
【0025】
<制御装置の詳細構成>
図2は、制御装置100の詳細構成を示すブロック図である。制御装置100は、記憶部110と、制御部120とを有する。
【0026】
記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部110は、制御部120が実行するためのプログラムや各種データを記憶する
【0027】
制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部120は、記憶部110に記憶されたプログラムを実行することにより、状態取得部122、弁制御部123、損失取得部124、判定部125及び過給制御部126として機能する。
【0028】
状態取得部122は、エンジン10の動作状態を取得する。例えば、状態取得部122は、エンジン検出部80から、エンジン10の回転速度とトルクを取得する。エンジン検出部80は、エンジン10の回転速度を検出する速度センサと、エンジン10のトルクを検出するトルクセンサとを含む。
【0029】
弁制御部123は、エンジン10が動作する際に、吸気弁20及び排気弁25の開閉を制御する。弁制御部123は、通常、吸気弁20及び排気弁25を所定のタイミング(基準タイミング)に開閉させる。また、弁制御部123は、可変機構60を動作させて、吸気弁20及び排気弁25の開閉タイミングを基準タイミングから調整する。例えば、弁制御部123は、可変機構60を動作させて、吸気弁20の開閉タイミングを基準タイミングより早くしたり(進角)、吸気弁20の開閉タイミングを基準タイミングより遅くしたりする(遅角)。
【0030】
弁制御部123は、状態取得部122が取得したエンジン10の動作状態が所定条件を満たす場合に、可変機構60を動作させて吸気弁20及び排気弁25の開閉タイミングを調整する。なお、エンジン10の動作状態が所定条件を満たさない場合には、弁制御部123は、吸気弁20及び排気弁25を基準タイミングで開閉させる。
【0031】
図3は、可変機構60によって開閉タイミングを調整するエンジン10の動作条件を示す模式図である。図3では、横軸がエンジン10の回転速度を示し、縦軸がエンジントルクを示す。左下の領域R(回転速度が小さく、エンジントルクが小さい領域)が、可変機構60によって吸気弁20と排気弁25の開閉タイミングが調整するエンジン10の動作条件を示す。すなわち、弁制御部123は、エンジン10の回転速度が所定速度より小さく、かつエンジン10のトルクが所定値より小さい場合に、可変機構60を動作させて吸気弁20の開閉タイミングの調整を行わせる。
【0032】
損失取得部124は、エンジン10のポンプ損失の増大の度合いを示す損失情報を取得する。例えば、損失取得部124は、弁制御部123が可変機構60を動作させて吸気弁20を進角又は遅角させる際に、損失情報を取得する。エンジン10のポンプ損失は、エンジン10の吸気行程及び排気行程で発生するエネルギー損失である。
【0033】
損失取得部124は、損失情報として、排気の排気圧と吸気の吸気圧とを取得する。具体的には、損失取得部124は、損失情報として、排気圧と吸気圧の気圧差を取得する。ポンプ損失が発生する場合には、排気圧が吸気圧よりも大きい。そして、排気圧から吸気圧を引いた気圧差が大きい場合には、ポンプ損失の増大が大きい(すなわち、ポンプ損失が悪化している)が、気圧差が小さい場合には、ポンプ損失の増大は小さい。損失取得部124は、吸気圧センサ72から吸気圧を取得し、排気圧センサ74から排気圧を取得する。
【0034】
判定部125は、エンジン10のポンプ損失の度合いを判定する。判定部125は、損失取得部124が取得した損失情報に基づいて、エンジン10のポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きいか否かを判定する。判定部125は、判定結果を過給制御部126に出力する。
【0035】
判定部125は、損失取得部124が取得した排気圧と吸気圧の気圧差が所定値よりも大きい場合には、ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きいと判定する。すなわち、判定部125は、ポンプ損失の悪化が大きいと判定する。一方で、判定部125は、気圧差が所定値以下である場合には、ポンプ損失の増大の度合いが所定度合以下であると判定する。すなわち、判定部125は、ポンプ損失の悪化は小さいと判定する。
【0036】
過給制御部126は、過給機50による吸気の過給を制御する。例えば、過給制御部126は、過給圧センサ70が検出した過給圧に基づいて、過給機50による吸気の過給を制御する。具体的には、過給制御部126は、過給圧が所定値を維持するように、過給機50のタービン52のノズル開度を制御する。
【0037】
過給制御部126は、エンジン10の動作状態等に基づいて、第1過給制御又は第2過給制御を行う。第1過給制御は、吸気の過給圧が一定になるように、タービン52のノズル開度を調整する制御である。第2過給制御は、吸気の吸入量が一定になるように、過給圧を調整する制御である。なお、第1過給制御を行う場合には、吸気の吸入量が増加する。
【0038】
過給制御部126は、エンジン10の動作状態が図3の領域R以外の領域(回転速度が所定速度より大きく、エンジントルクが所定値より大きい領域)に該当する場合に、第1過給制御を行う。また、過給制御部126は、エンジン10のポンプ損失が悪化しない状況では、第1過給制御を行う。過給制御部126は、第1過給制御を行う際には、過給圧センサ70が検出する過給圧が一定になるように、タービン52のノズル開度を調整する。
【0039】
過給制御部126は、可変機構60が動作を行う際に排気圧と吸気圧の気圧差が所定値より大きい場合に、第2過給制御を行う。すなわち、過給制御部126は、可変機構60が開閉タイミングの調整を行う際にポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合には、吸気の吸入量を所定量に維持するように、過給機50による吸気の過給圧を制御する。
【0040】
図4は、第2過給制御における吸入量と過給圧の関係を示すタイムチャートである。図4で実線が第2過給制御での吸入量及び過給圧を示し、破線が比較例の場合の吸入量及び過給圧を示す。図4に示す時刻t1が、可変機構60によって開閉タイミングが調整された吸気弁20の閉タイミング(閉じ始めるタイミング)である。時刻t1になると、吸気弁20が閉じ始め、過給制御部126も第2過給を開始する。過給制御部126は、時刻t1以降に、過給圧を小さくする。この際、過給制御部126は、過給圧を小さくすべく、タービン52のノズル開度を大きくする。
【0041】
過給制御部126は、吸気弁20が閉じてから吸気の吸入量が増加しないように、第2過給制御を行う。具体的には、過給制御部126は、図4に示すように、吸気の吸入量を所定量に維持するように、吸気の過給圧を小さくする。第2過給制御を行っている際にエンジン10に吸入される吸気の吸入量が増加しないので、図4に示すように時刻t1以降でポンプ損失も低下することになる。これにより、時刻t1以降の燃費も向上することになる。すなわち、過給制御部126が第2過給制御を行っている際に、燃費が向上する。
【0042】
過給制御部126は、吸気弁20が閉じるタイミングで、吸気の吸入量を所定量に維持するように、過給機50による吸気の過給圧を制御する。具体的には、過給制御部126は、図4に示すように、吸気弁20が閉じ始めると、吸気量を一定に維持するように、吸気の過給圧を小さくする。過給制御部126は、過給圧を徐々に小さくしたのちに、過給圧を一定にする。このように過給圧が変化するように、過給制御部126は、タービン52のノズル開度を調整する。
【0043】
なお、可変機構60が動作を行い、かつ排気圧と吸気圧の気圧差が所定値より大きい場合に、過給制御部126が、本実施形態とは異なり過給圧を一定にする過給制御が行うと、図4の破線に示すように、時刻t1以降に、吸気の吸入量が増加し、ポンプ損失が悪化してしまう。
【0044】
過給制御部126は、可変機構60が開閉タイミングの調整を行う際にポンプ損失の増大の度合いが所定度合い以下である(排気圧と吸気圧の気圧差が)場合には、第2過給制御ではなく第1過給制御を行う。すなわち、過給制御部126は、可変機構60が開閉タイミングの調整を行う一方で、ポンプ損失の増大の度合いが所定度合い以下である場合には、過給機50による吸気の過給圧が所定値になるように、過給機50のタービン52のノズル開度を制御する。これにより、ポンプ損失が悪化しないケースには、吸入量の増加を許容しながら吸気を過給できるので、エンジン10の高出力を実現できる。
【0045】
<制御装置の動作例>
図5は、制御装置100の動作例を示すフローチャートである。図5に示す処理は、エンジン10が動作を行っている間、継続して実行される。
【0046】
図5のフローチャートは、状態取得部122が、エンジン10の動作状態を取得するところから開始される(ステップS102)。例えば、状態取得部122は、エンジン10の回転速度とエンジントルクを取得する。
【0047】
次に、弁制御部123は、エンジン10の動作状態が可変機構60を動作させる動作条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。弁制御部123は、エンジン10の動作状態が図3に示す領域Rに含まれる場合に、動作条件を満たすと判定する。
【0048】
ステップS104で動作条件を満たす場合には(Yes)、弁制御部123は、吸気弁20及び排気弁25の開閉タイミングを調整すべく、可変機構60を動作させる(ステップS106)。例えば、可変機構60は、吸気弁20の開閉タイミングを基準タイミングよりも早くする(進角)。
【0049】
次に、損失取得部124は、ポンプ損失の度合いを把握すべく、吸気圧と排気圧を取得する(ステップS108)。損失取得部124は、吸気圧センサ72が検出した吸気圧と、排気圧センサ74が検出した排気圧とを取得する。
【0050】
次に、判定部125は、損失取得部124が取得した吸気圧と排気圧の気圧差が所定値より大きいか否かを判定する(ステップS110)。気圧差が所定値よりも大きい場合には、ポンプ損失が悪化するエンジン10の動作状態である。
【0051】
ステップS110で気圧差が所定値より大きい場合には(Yes)、過給制御部126は、第2過給制御を行う(ステップS112)。具体的には、過給制御部126は、吸気の吸入量が所定量を維持するように、吸気の過給圧を小さくする。
【0052】
一方で、ステップS110で気圧差が所定値以下である場合に(No)、過給制御部126は、第1過給制御を行う(ステップS114)。具体的には、過給制御部126は、吸気の過給圧が一定になるように、タービン52のノズル開度を調整する。なお、ステップS104で動作条件を満たさない場合にも(No)、過給制御部126は、第1過給制御を行う(ステップS114)。
【0053】
<本実施形態における効果>
本実施形態の過給システムSは、ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合には、吸気の吸入量を所定量に維持するように、過給機50による吸気の過給圧を制御する。具体的には、過給制御システムSは、吸入量を所定量に維持するように、吸気の過給圧を小さくする。
これにより、可変機構60が動作する状況下で、吸気を過給する際にエンジン10への吸気の吸入量が増加しないため、ポンプ損失を低下させることができる(図3参照)。この結果、エンジン10の燃費も向上させることができる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0055】
10 エンジン
20 吸気弁
50 過給機
60 可変機構
123 弁制御部
124 損失取得部
125 判定部
126 過給制御部
S 過給システム
【要約】
【課題】前記吸気の吸入量を所定量に維持するように、前記吸気の過給圧を小さくする。
【解決手段】過給システムSは、エンジン10への吸気の吸入を調整する吸気弁20と、吸気弁20の開閉タイミングを調整する可変機構60と、エンジン10からの排気の流れを利用して吸気を圧縮する過給機50と、エンジン10のポンプ損失の増大の度合いを示す損失情報を取得する損失取得部124と、ポンプ損失の増大の度合いが所定度合いより大きい場合に、吸気の吸入量を所定量に維持するように、過給機50による吸気の過給圧を制御する過給制御部126を備える。
【選択図】図1


図1
図2
図3
図4
図5