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特許7574898遮光板、カメラユニット、電子機器、および、遮光板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】遮光板、カメラユニット、電子機器、および、遮光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20241022BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20241022BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20241022BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241022BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G02B7/02 H
G03B17/02
G03B30/00
H04N23/55
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023141239
(22)【出願日】2023-08-31
(62)【分割の表示】P 2020006833の分割
【原出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2023160895
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西辻 清明
(72)【発明者】
【氏名】島村 槙一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 弘康
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-113920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/02 - 9/07
G03B 17/02
G03B 30/00
H04N 23/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の遮光板であって、
光の入射側に位置する表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
前記表面と前記裏面との間を貫通する孔とを備え、
前記孔は、前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて漸次的に先細る形状を有した第1孔と、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて漸次的に先細る形状を有して前記第1孔に繋がる第2孔と、を備え、
前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の開口が、円状を有した中央開口であり、
前記中央開口の真円度が、3μm以下であり、
被写界深度が0.4μmである撮像条件において、前記中央開口の縁にピントを合わせた状態で前記中央開口の径方向に沿って前記中央開口の縁を撮像したときに、ピントが合う前記遮光板の厚さ方向における前記遮光板の最大幅が、1.0μmよりも大きく2.5μm以下であり、
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔に先駆けて形成された前記第1孔における前記遮光板の厚さ方向の中央部を基準として、前記第2孔は、前記中央部に対して±1μm以内である位置において、前記第1孔に前記第2孔が繋がるように形成されている
遮光板。
【請求項2】
前記表面と直交する平面に沿う前記断面において、前記第1孔を区画する側面が弧状であり、
前記断面において、前記第2孔を区画する側面が弧状である
請求項1に記載の遮光板。
【請求項3】
前記表面と直交する平面に沿う前記断面において、前記第1孔を区画する側面が弧状であり、かつ、前記第1孔を区画する前記側面の曲率中心が、前記遮光板の外側に位置する
請求項1に記載の遮光板。
【請求項4】
前記遮光板は、10μm以上100μm以下の厚さを有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の遮光板。
【請求項5】
前記遮光板は、鉄‐ニッケル系合金製、または、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製である
請求項1から4のいずれか一項に記載の遮光板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の遮光板と、
レンズと、を備え、
前記遮光板は、前記裏面と前記レンズとが対向する状態で、前記レンズに対して光の入射側に位置する
カメラユニット。
【請求項7】
前記遮光板が有する前記中央開口の直径は、前記レンズの有効径以下の大きさを有する
請求項6に記載のカメラユニット。
【請求項8】
請求項6または7に記載のカメラユニットと、
前記カメラユニットを支持する筐体と、を備える
電子機器。
【請求項9】
金属製の遮光板であって、
光の入射側に位置する表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
前記表面と前記裏面との間を貫通する孔とを備え、
前記孔は、前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて漸次的に先細る形状を有した第1孔と、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて漸次的に先細る形状を有して前記第1孔に繋がる第2孔と、を備え、
前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の開口が、円状を有した中央開口であり、
前記中央開口の真円度が、3μm以下であり、
被写界深度が0.4μmである撮像条件において、前記中央開口の縁にピントを合わせた状態で前記中央開口の径方向に沿って前記中央開口の縁を撮像したときに、ピントが合う前記遮光板の厚さ方向における前記遮光板の最大幅が、1.0μmよりも大きく2.5μm以下であり、
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第1孔を区画する側面を含み、前記裏面から前記表面に向かう方向に沿って突き出た凸状を有した仮想的な円弧を規定する場合に、前記遮光板の厚さ方向において、前記円弧の中央部に対して±1μm以内である位置において、前記第1孔に前記第2孔が繋がる
遮光板。
【請求項10】
金属箔の表面と裏面とにレジスト層を配置すること、
前記レジスト層の露光と現像とによって前記レジスト層からレジストマスクを形成すること、および、
前記レジストマスクを用いた前記金属箔のエッチングによって、前記表面と前記裏面との間を貫通する孔を形成すること、を含み、
前記孔を形成することは、
前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有した第1孔を形成すること、
前記第1孔を形成した後に、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて先細る形状を有した第2孔を形成すること、
前記第1孔および第2孔の形成によって、前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の開口であり、3μm以下の真円度を有した円状の中央開口を形成すること、および、
前記第1孔内に当該第1孔を保護する保護部を充填した状態で、前記表面に直交する断面において、前記金属箔の厚さ方向での前記第1孔の中央部に対して±1μm以内である位置において前記第1孔に前記第2孔が繋がるように、前記第2孔を形成すること、を含む
遮光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光板、遮光板を備えるカメラユニット、カメラユニットを備える電子機器、および、遮光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの電子機器が備えるカメラユニットは、外光に対する絞りとして機能する遮光板を備えている。所定の形状を有した遮光板の成型が容易であることから、樹脂製の遮光板が多用されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、樹脂製の遮光板は、遮光板が有する光透過性のために、外光を通過させるための孔だけでなく、孔を区画する部分においても外光を透過させてしまう。このように、樹脂製の遮光板による遮光は十分ではないことから、より高い遮光性を有した金属製の遮光板が使用され始めている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-8786号公報
【文献】国際公開第2016/060198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加工の難易度が低く、また、単位時間当たりに多くの製品を製造することが可能であるため、金属製の遮光板を製造する際には、金属板を金型によって打ち抜く打ち抜き加工が用いられている。打ち抜き加工を用いた金属板の加工では、金型によって金属板を打ち抜く際に、金属板に変形やひずみが生じることを抑え、これによって製品の寸法における精度を担保するために、金属板の表面に直交する方向に沿って金属板を打ち抜くことが必要とされる。これにより、金属板には、金属板の表面に直交する断面において、金属板の表面に対して垂直に延びる側面を有した孔が形成される。
【0005】
こうした孔を有する遮光板をカメラユニットに搭載した場合には、遮光板の表面との間で鋭角を形成する方向から遮光板に入射した外光が、孔を区画する側面において反射され、結果として孔を通過してしまうことがある。孔を通過した光は、カメラユニットが備える撮像素子に受光され、撮像素子が撮像した画像においてゴーストやフレアなどの過剰な光の写り込みが生じてしまう場合がある。このように、金属製の遮光板には、遮光板が金属製であるがゆえの新たな課題が生じている。
【0006】
本発明は、孔を透過した光に起因する過剰な光の写り込みを抑制可能とした遮光板、カメラユニット、電子機器、および、遮光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための遮光板は、金属製の遮光板である。光の入射側に位置する表面と、前記表面とは反対側の面である裏面と、前記表面と前記裏面との間を貫通する孔とを備える。前記孔は、前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて漸次的に先細る形状を有した第1孔と、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて漸次的に先細る形状を有して前記第1孔に繋がる第2孔と、を備える。前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の開口が、円状を有した中央開口であり、前記中央開口の真円度が、3μm以下である。
【0008】
被写界深度が0.4μmである撮像条件において、前記中央開口の縁にピントを合わせた状態で前記中央開口の径方向に沿って前記中央開口の縁を撮像したときに、ピントが合う前記遮光板の厚さ方向における前記遮光板の最大幅が、1.0μmよりも大きく2.5μm以下である。
【0009】
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第1孔を区画する側面を含み、前記裏面から前記表面に向かう方向に沿って突き出た凸状を有した弧を規定する場合に、前記遮光板の厚さ方向において、前記弧の中央部に対して±1μm以内である位置において、前記第1孔に前記第2孔が繋がる。
【0010】
上記課題を解決するための遮光板の製造方法は、金属箔の表面と裏面とにレジスト層を配置すること、前記レジスト層の露光と現像とによって前記レジスト層からレジストマスクを形成すること、および、前記レジストマスクを用いた前記金属箔のエッチングによって、前記表面と前記裏面との間を貫通する孔を形成すること、を含む。前記孔を形成することは、前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有した第1孔を形成すること、前記第1孔を形成した後に、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて先細る形状を有した第2孔を形成すること、前記第1孔および第2孔の形成によって、前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の開口であり、3μm以下の真円度を有した円状の中央開口を形成すること、および、前記第1孔内に当該第1孔を保護する保護部を充填した状態で、前記表面に直交する断面において、前記金属箔の厚さ方向での前記第1孔の中央部に対して±1μm以内である位置において前記第1孔に前記第2孔が繋がるように、前記第2孔を形成すること、を含む。
【0011】
上記各構成によれば、第2孔が表面から裏面に向けて先細る形状を有するため、表面の斜め上方から孔に入射した光は、第2孔を区画する側面において遮光板の表面に向けて反射されやすい。これに対して、第1孔は、中央開口から裏面に向けて先太りする形状を有するため、第2孔から第1孔に入射した光のうちで、第1孔を区画する側面において反射される光が制限される。このように、第1孔および第2孔によれば、孔の側面で反射される光の光量を低下させることが可能である。
【0012】
一方で、中央開口の真円度が3μm以下であることから、孔に入射した光の通路である中央開口のいびつさが抑えられ、これによって、中央開口の周方向の一部において、第2孔から第1孔に向けて透過する光の光量が過剰になることが抑えられる。
こうした理由から、上記構成によれば、孔を通過した光に起因する過剰な光の写り込みを抑えることができる。
【0013】
また、上記遮光板によれば、ピントが合う遮光板の最大幅が2.5μm以下であることによって、中央開口の近傍において孔を区画する側面の面積を小さくし、これによって、中央開口の近傍において孔を区画する側面において反射される光の光量を低下させることができる。結果として、孔を透過するように孔を区画する側面で反射される光の光量を低下させることができる。
【0014】
また、上記遮光板によれば、ピントが合う遮光板の最大幅が1.0μmよりも大きいことによって、中央開口付近における変形を抑えることが可能である。これにより、中央開口を通じて遮光板を透過する光の光量が、遮光板の変形に起因して変動することが抑えられる。
【0015】
上記遮光板において、前記表面と直交する平面に沿う前記断面において、前記第1孔を区画する前記側面が弧状であり、前記断面において、前記第2孔を区画する側面が弧状であってもよい。
【0016】
上記遮光板において、前記表面と直交する平面に沿う前記断面において、前記第1孔を区画する前記側面が弧状であり、かつ、前記第1孔を区画する前記側面の曲率中心が、前記遮光板の外側に位置してもよい。
【0017】
上記遮光板において、前記遮光板は、10μm以上100μm以下の厚さを有してもよい。この構成によれば、遮光板の厚さが10μm以上であることによって、遮光板を形成するための金属箔の反りが遮光板の形状に対して影響を与えることが抑えられ、遮光板の厚さが100μm以下であることによって、孔を形成するためのエッチングの精度が低下することが抑えられる。
【0018】
上記遮光板において、前記遮光板は、鉄‐ニッケル系合金製、または、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製であってもよい。
上記遮光板において、前記遮光板は、インバー製またはスーパーインバー製であってもよい。
【0019】
上記各構成によれば、外気温の変化に伴う遮光板の変形を抑えることができ、これによって、外気温の変化に伴う外光の入射量における変化を抑えることができる。それゆえに、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアの発生を抑えることができる。
【0020】
上記課題を解決するためのカメラユニットは、上記遮光板と、レンズと、を備える。前記遮光板は、前記裏面と前記レンズとが対向する状態で、前記レンズに対して光の入射側に位置する。
【0021】
上記構成によれば、遮光板の表面がレンズと対向する場合に比べて、中央開口を通過して以降に孔の側面において反射されたことによってレンズに入射する光を制限することが可能である。
【0022】
上記カメラユニットにおいて、前記遮光板が有する前記中央開口の直径は、前記レンズの有効径以下の大きさを有してもよい。この構成によれば、中央開口を通過した光が、レンズの有効径の外側に入射することが抑えられる。そのため、意図しない光が撮像素子に入射することが抑えられる。
【0023】
上記課題を解決するための電子機器は、上記カメラユニットと、前記カメラユニットを支持する筐体と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、孔を透過した光に起因する過剰な光の写り込みを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態における遮光板の構造を示す平面図。
図2図1が示す遮光板の構造を示す断面図。
図3図1が示す遮光板が備える中央開口の真円度を説明するための模式図。
図4図2が示す断面図の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
図5図1が示す遮光板の作用を説明するための作用図。
図6図1が示す遮光板の作用を説明するための作用図。
図7図1が示す遮光板の作用を説明するための作用図。
図8】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図9】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図10】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図11】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図12】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図13】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図14】カメラユニットの構造を模式的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から図14を参照して、遮光板、カメラユニット、電子機器、および、遮光板の製造方法における一実施形態を説明する。以下では、遮光板、遮光板の製造方法、カメラユニット、および、実施例を順に説明する。
【0027】
[遮光板]
図1から図7を参照して、遮光板を説明する。
図1が示すように、金属製の遮光板10は、表面10Fと、裏面10Rと、孔10Hとを備えている。表面10Fは、光の入射側に位置する面である。裏面10Rは、表面10Fとは反対側の面である。孔10Hは、表面10Fと裏面10Rとの間を貫通している。遮光板10は、例えばステンレス鋼製であるが、ステンレス鋼以外の金属から形成されてもよい。なお、遮光板10は、表面10F、裏面10R、および、孔10Hを区画する側面が、図示されない反射防止膜によって覆われている。反射防止膜は、遮光板10を形成する金属よりも低い反射率を有し、かつ、反射防止膜に照射された光の一部を吸収する機能を有している。また、遮光板10が反射防止膜によって覆われていても、遮光板10における光の反射を完全になくすことはできない。
【0028】
遮光板10は、遮光板10が覆うレンズの形状に応じた円形状を有している。孔10Hは、孔10Hが対向するレンズの形状に応じた円形状を有している。
【0029】
図2は、遮光板10の表面10Fと直交する断面における遮光板10の構造を示している。
図2が示すように、孔10Hは、第1孔10H1および第2孔10H2を備えている。第1孔10H1は、裏面10Rに裏面開口H1Rを有し、裏面10Rから表面10Fに向けて先細る形状を有している。言い換えれば、第1孔10H1は、表面10Fから裏面10Rに向けて先太る形状を有している。第2孔10H2は、表面10Fに裏面開口H1Rよりも大きい表面開口H2Fを有している。第2孔10H2は、表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有して、第1孔10H1に繋がっている。第1孔10H1が有する開口のうち、裏面開口H1Rとは反対側の開口が、円状を有した中央開口HCである。
【0030】
本実施形態では、表面10Fと直交する平面に沿う断面において、第2孔10H2を区画する側面が弧状であり、かつ、第2孔10H2を区画する側面の曲率中心が、遮光板10の外側に位置している。また、第1孔10H1を区画する側面が弧状であり、第1孔10H1を区画する側面の曲率中心が、遮光板10の外側に位置している。
【0031】
遮光板10において、第1孔10H1の直径が第1直径DH1であり、第2孔10H2の直径が第2直径DH2である。第1直径DH1は、遮光板10が搭載されるカメラユニットに応じて設定される値である。第1直径DH1は、遮光板10が例えばスマートフォンのカメラユニットに搭載される場合には、0.4mm以上1.0mm以下であってよい。また、第1直径DH1は、遮光板10が例えば車載カメラに搭載される場合には、2.0mm以上7.0mm以下であってよい。第2直径DH2に対する第1直径DH1の百分率(DH1/DH2×100)は、例えば80%以上99%以下であってよい。
【0032】
遮光板10が、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピューター、および、ノート型パーソナルコンピューターの前面に設置されるカメラユニットに搭載される場合には、カメラユニットが、被写体を近距離で撮影することが多い。そのため、画角が大きくなるが、レンズが被写体の焦点を結ぶ上では、遮光板10には大きな内径が必要とされない。また、カメラユニットが配置される空間の制約から、遮光板10の外径を大きくすることも難しい。そのため、第2直径DH2に対する第1直径DH1の百分率は、80%以上90%以下であってよい。
【0033】
これに対して、遮光板10が、車載カメラに搭載される場合には、車載カメラが、被写体を中距離から遠距離で撮影することが多い。そのため、画角が小さくなるが、カメラユニットが配置される空間の制約が小さいため、カメラユニットが備えるレンズの径が大きくなる。これにより、レンズに対して広い範囲の光を集めるために、遮光板10において、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、90%以上99%以下であってよい。
【0034】
また、遮光板10が、スマートフォンの背面に設置されるカメラユニットに搭載される場合には、カメラユニットが、被写体を近距離から遠距離で撮影することが多い。そのため、画角が大きくなる場合に対応する上では、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、80%以上90%以下であってよく、画角が小さくなる場合に対応する上では、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、90%以上99%以下であってよい。
【0035】
遮光板10の厚さTは、例えば10μm以上100μm以下であってよい。遮光板10の厚さが10μm以上である場合には、金属箔の反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、遮光板10の厚さが100μm以下である場合には、孔10Hを形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。
【0036】
図3は、遮光板10の表面10Fと対向する視点から見た中央開口HCの形状を模式的に示している。
遮光板10が備える中央開口HCは、遮光板10の表面10Fと対向する視点から見て、円状を有している。本実施形態では、遮光板10が備える孔10Hは、遮光板10に対するウェットエッチングによって形成される。この際に、遮光板10に対して第1孔10H1が形成され、その後に、第2孔10H2が形成され、これによって、第1孔10H1に第2孔10H2が繋がることによって中央開口HCが形成される。こうした工程によって形成された中央開口HCは、金属箔の打ち抜き加工によって形成された孔に比べて、中央開口HCが有する真円度が大きくなりやすい。
【0037】
真円度は、JIS B 0621‐1984の「幾何偏差の定義及び表示」に規定されている。真円度とは、当該規格の「5.3真円度」に記載されるように、「円形形体(C)を二つの同心の幾何学的円で挟んだとき、同心二円の間隔が最小となる場合の、二円の半径の差(f)」で表される値である。
【0038】
すなわち、図3が示すように、中央開口HCに対して、同一の中心CCを有する第1円C1と第2円C2とを設定する。第1円C1は、中央開口HCが区画する領域内に位置し、かつ、中央開口HCに接する真円である。一方で、第2円C2は、中央開口HCが区画する領域外に位置し、かつ、中央開口HCに接する真円である。第1円C1および第2円C2は、第1円C1と第2円との間隔が最小になるように設定される。こうした第1円C1の半径R1と、第2円の半径R2との差(f)が、真円度である。遮光板10において、中央開口HCの真円度が、3μm以下である。
【0039】
図4は、図2が示す遮光板10の断面構造における一部を拡大して示している。
図4が示すように、被写界深度が0.4μmである撮像条件において、中央開口HCの縁にピントを合わせた状態で、中央開口HCの径方向に沿って中央開口HCの縁を撮像したときに、ピントが合う遮光板10の厚さ方向における遮光板10の最大幅が、最大幅WMである。すなわち、最大幅WMは、中央開口HCの縁から、遮光板10の厚さ方向と直交する方向に沿って被写界深度DFと同じ距離だけ離れた位置での遮光板10の厚さである。最大幅WMは、2.5μm以下である。また、最大幅WMは、0.5μm以上であってよい。さらに、最大幅WMは、1.0μmよりも大きくてもよい。
【0040】
遮光板10において、ピントが合う遮光板の最大幅が2.5μm以下であることによって、中央開口HCの近傍において孔10Hを区画する側面の面積を小さくし、これによって、中央開口HCの近傍において孔10Hを区画する側面において反射される光の光量を低下させることができる。結果として、孔10Hを透過するように孔を区画する側面で反射される光の光量を低下させることができる。また、ピントが合う遮光板の最大幅が1.0μmよりも大きいことによって、中央開口HC付近における変形を抑えることが可能である。これにより、中央開口HCを通じて遮光板10を透過する光の光量が、遮光板10の変形に起因して変動することが抑えられる。
【0041】
図5は、本実施形態における遮光板10の断面構造を示している。また、図6は、遮光板10の表面10Fと対向する視点から見た遮光板10の平面構造を示している。一方で、図7は、表面に直交する断面において、孔を区画する側面が表面と直交する方向に沿って延びる例における断面構造を示している。なお、図5および図7では、図示の便宜上、遮光板の厚さに対する第1直径が縮小されている。
【0042】
図5が示すように、遮光板10に対して表面10Fに直交する方向から入射した光は、表面10Fに形成された表面開口H2Fから孔10Hに入る。そして、孔10Hを通った光は裏面10Rに形成された裏面開口H1Rから出ることによって、レンズLNに到達する。一方で、遮光板10において、第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有するため、表面10Fの斜め上方から孔10Hに入射した光は、第2孔10H2を区画する側面において遮光板10の表面10Fに向けて反射されやすい。
【0043】
また、表面10Fの斜め上方から第2孔10H2に入射した光は、曲率中心が遮光板10の外側に位置するような弧状を有した側面において反射される。そのため、反射光のなかで最も高い輝度を有した正反射光は、弧状を有した側面から遮光板10の表面10Fに向かう方向に沿って反射される。それゆえに、孔10Hを透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量がより抑えられる。
【0044】
一方で、第1孔10H1が中央開口HCから裏面10Rに向けて先太る形状を有するため、第2孔10H2から第1孔10H1に入射した光のうちで、第1孔10H1を区画する側面において反射される光が制限される。加えて、遮光板10では、第1孔10H1を区画する側面が、曲率中心が遮光板10の外側に位置するような弧状を有する。そのため、第1孔10H1を区画する側面が直線状を有する場合に比べて、表面10Fの斜め上方から孔に入射した光のなかで、裏面開口H1Rの近傍において孔10Hを区画する側面によって反射される光の光量を低下させることができる。これにより、孔を透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量をより低下させることができる。
【0045】
遮光板10の孔10Hを形成する第1孔10H1および第2孔10H2がこうした形状を有することから、孔10Hを透過するように孔10Hを区画する側面において反射される光の光量を抑えることが可能である。結果として、孔10Hを透過した光に起因する過剰な光の写り込みを抑えることができる。
【0046】
図6が示すように、遮光板10が有する孔10Hには、孔10Hの周方向における全体から、孔10Hに向けて光が入射する。孔10Hの周方向における全体において、孔10Hに入射する光の偏りを抑えるためには、孔10Hに入射した光の通路である中央開口HCの形状と、真円との間のずれが小さいことが好ましい。この点で、中央開口HCの真円度が3μm以下であることから、孔10Hに入射した光の通路である中央開口HCのいびつさが抑えられ、これによって、中央開口HCの周方向の一部において、第2孔10H2から第1孔10H1に向けて透過する光の光量が過剰になることが抑えられる。これによっても、孔10Hを通過した光に起因する過剰な光の写り込みを抑えることができる。
【0047】
図7が示すように、遮光板100に対して表面100Fに直交する方向から入射した光は、遮光板10に対して表面10Fに直交する方向から入射した光と同様、表面100Fに形成された開口から孔100H内に入る。そして、孔100Hを通った光は裏面100Rに形成された開口から出ることによって、レンズLNに到達する。これに対して、表面100Fの斜め上方から表面100Fに入射した光の一部は、表面100Fに形成された開口から孔100H内に入射し、かつ、孔100Hを区画する側面において反射される。側面に入射した光のほとんどは正反射の方向に反射されるため、側面に入射した光は、側面からレンズLNに向けて反射される。これにより、意図しない光がレンズLNを通じて撮像素子に入射してしまう。
【0048】
[遮光板の製造方法]
図8から図13を参照して、遮光板10の製造方法を説明する。図8から図13の各々は、遮光板10の製造過程における特定の工程における金属箔の断面構造を示している。なお、図8から図13では、図示の便宜上、金属箔の厚さに対する第2直径DH2の比が実際の遮光板10よりも縮小され、かつ、金属箔の厚さに対する第1直径DH1の比が実際の遮光板10よりも縮小されている。また、図8から図13では、図示の便宜上、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比が、実際の遮光板10よりも縮小されている。また、図8から図13では、説明の便宜上、遮光板10を製造する工程のなかで、遮光板10が有する孔10Hの形成に関わる工程のみを示している。
【0049】
遮光板10の製造方法は、レジスト層を配置すること、レジストマスクを形成すること、孔を形成することを含む。レジスト層を配置することでは、金属箔の表面と裏面とにレジスト層を配置する。レジストマスクを形成することでは、レジスト層の露光と現像とによってレジスト層からレジストマスクを形成する。孔を形成することでは、レジストマスクを用いた金属箔のエッチングによって、表面と前記裏面との間を貫通する孔を形成する。以下、図面を参照して、遮光板10の製造方法をより詳しく説明する。
【0050】
図8が示すように、遮光板10を形成する際には、まず、遮光板10を形成するための金属箔10Mを準備する。金属箔10Mは、例えばステンレス鋼の箔であるが、上述したように、ステンレス鋼以外の金属によって形成された金属箔であってもよい。金属箔10Mの厚さは、10μm以上100μm以下である。金属箔10Mの厚さが10μm以上である場合には、金属箔10Mの反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、金属箔10Mの厚さが100μm以下である場合には、孔10Hを形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。金属箔10Mの厚さは、金属箔10Mから製造された遮光板10の厚さと略同一である。
【0051】
そして、金属箔10Mの表面10MFと裏面10MRとにレジスト層を配置する。金属箔10Mの表面10MFは、遮光板10の表面10Fに相当し、かつ、金属箔10Mの裏面10MRは、遮光板10の裏面10Rに相当する。金属箔10Mの表面10MFには、表面レジスト層RFが配置され、かつ、金属箔10Mの裏面10MRには、裏面レジスト層RRが配置される。なお、表面10MFおよび裏面10MRの両方には、ドライフィルムレジストがレジスト層RF,RRとして貼り付けられてもよい。あるいは、表面10MFおよび裏面10MRの両方には、レジスト層RF,RRを形成するための塗液を用いて、レジスト層RF,RRが形成されてもよい。レジスト層RF,RRは、ネガ型のレジストによって形成されてもよいし、ポジ型のレジストによって形成されてもよい。
【0052】
図9が示すように、レジスト層RF,RRの露光と現像とによって、レジスト層からレジストマスクが形成される。より詳しくは、表面レジスト層RFの露光および現像によって、表面レジスト層RFから表面マスクRMFが形成される。また、裏面レジスト層RRの露光および現像によって、裏面レジスト層RRから裏面マスクRMRが形成される。表面マスクRMFは、金属箔10Mに第2孔を形成するためのマスク孔RMFhを有している。裏面マスクRMRは、金属箔10Mに第1孔を形成するためのマスク孔RMRhを有している。
【0053】
図10が示すように、裏面10MRに形成された裏面マスクRMRを用いて、裏面10MRに裏面開口を有し、かつ、裏面10MRから表面10MFに向けて先細る形状を有した第1孔MH1を金属箔10Mに形成する。第1孔MH1は、遮光板10が有する第1孔10H1に相当する。この際に、金属箔10Mをエッチングすることが可能なエッチング液を用いて、金属箔10Mをエッチングする。なお、金属箔10Mをエッチングする前に、エッチング液に対する耐性を有した表面保護膜PMFによって、表面マスクRMFを覆う。表面保護膜PMFは、表面マスクRMFのマスク孔RMFhを埋めてもよいし、マスク孔RMFhを覆うのみでもよい。表面保護膜PMFによって表面マスクRMFを覆うことによって、金属箔10Mの表面10MFが、金属箔10Mの裏面10MRと同時にエッチングされることが抑えられる。
【0054】
なお、裏面10MRのエッチングによって第1孔MH1が形成される場合には、遮光板10における上述した裏面10Rと中央開口HCとの間の距離D(図4を参照)よりも大きい深さを有した第1孔MH1が形成される。
【0055】
図11が示すように、第1孔MH1を形成した後に、表面10MFに形成された表面マスクRMFを用いて、表面10MFに表面開口を有し、かつ、表面10MFから裏面10MRに向けて先細る形状を有した第2孔MH2を金属箔10Mに形成する。これにより、第2孔MH2が第1孔MH1に繋がることによって、中央開口MHCが形成される。第2孔MH2は、遮光板10が有する第2孔10H2に相当する。また、中央開口MHCは、遮光板10が有する中央開口HCに相当する。
【0056】
この際に、第1孔MH1を形成するときと同様、金属箔10Mをエッチングすることが可能なエッチング液を用いて、金属箔10Mをエッチングする。なお、金属箔10Mをエッチングする前に、金属箔10Mの裏面10MRから裏面マスクRMRを取り除く。そして、金属箔10Mをエッチングする前に、エッチング液に対する耐性を有した裏面保護膜PMRによって、金属箔10Mの裏面10MRを覆い、かつ、第1孔MH1内を埋める。裏面保護膜PMRは、保護部の一例である。裏面保護膜PMRによって金属箔10Mの裏面10MRを覆うことによって、金属箔10Mの裏面10MRが、金属箔10Mの表面10MFと同時にエッチングされることが抑えられる。
【0057】
第2孔MH2のエッチングでは、第1孔MH1を裏面保護膜PMRによって埋めた状態で、金属箔10Mの表面10MFをエッチングする。そのため、表面10MFのエッチングが裏面保護膜PMRに到達した後は、金属箔10Mに対するエッチング液の供給が、裏面保護膜PMRによって制御される。これにより、金属箔10Mの厚さが10μm以上100μm以下という広い範囲にわたる場合であっても、第2孔MH2の断面形状における断面形状の精度を高めることができる。これに対して、第1孔MH1内が裏面保護膜PMRによって埋められていない場合には、第1孔MH1と第2孔MH2とが繋がることによって金属箔10Mが貫通されると、第1孔MH1と第2孔MH2との接続部を通じて、エッチング液が、金属箔10Mの裏面10MRに向けて漏れてしまう。結果として、第1孔MH1の形状、および、第2孔MH2の形状における精度が低下してしまう。
【0058】
このように、本実施形態における遮光板10の製造方法では、孔10Hを形成することが、以下の事項を含む。
(A)金属箔10Mの裏面10MRに裏面開口を有し、裏面10MRから表面10MFに向けて先細る形状を有した第1孔MH1を形成すること。
(B)表面10MFに裏面開口よりも大きい表面開口を有し、表面10MFから裏面10MRに向けて先細る形状を有した第2孔MH2を形成すること。
(C)第1孔MH1および第2孔MH2の形成によって、第1孔MH1が有する開口のうち、裏面開口とは反対側の開口であり、3μm以下の真円度を有した円状の中央開口MHCを形成すること。
(D)第1孔MH1および第2孔MH2のうち、先に形成された孔内に当該孔を保護する保護部を充填した状態で、先に形成された孔とは異なる孔を形成すること。
【0059】
本実施形態における遮光板10の製造方法は、孔10Hを透過した光に起因する過剰な光の写り込みを抑制することが可能な形状を有した孔10Hの形成を可能にする製造方法である。当該製造方法では、第1孔10H1(MH1)と第2孔10H2(MH2)とを順に形成するため、金属箔10Mの打ち抜きによって、孔を一度に形成する場合に比べて、孔10Hに入射した光の通路である中央開口HC(MHC)における真円度の制御が困難であるという特有かつ新たな課題が生じる。
【0060】
この点で、上述した製造方法によるように、上記(D)を含むことによって、こうした課題が解決されて、3μm以下の真円度を有した中央開口HC(MHC)を形成することが可能である。
【0061】
さらに、金属箔10Mに第2孔MH2を形成する際には、表面10MFに直交する断面において、第2孔MH2が、金属箔10Mの厚さ方向での第1孔MH1の中央部近傍に繋がるように、第2孔MH2を形成することが好ましい。第2孔MH2は、表面10MFに直交する断面において、金属箔10Mの厚さ方向での第1孔MH1の中央部に対して±1μm以内である位置において第1孔MH1に繋がることが好ましい。
【0062】
これに対して、図12が示すように、表面10MFに直交する断面において、第2孔MH2が、第1孔MH1の裏面開口において第1孔MH1に繋がる場合には、裏面開口の近傍において金属箔10Mの厚さが非常に薄くなる。そのため、第2孔MH2が第1孔MH1に繋がる際に、裏面開口の近傍が過度にエッチングされたり、裏面開口の周方向において、金属箔10Mがエッチングされる度合いがばらついたりする。結果として、上述した遮光板10の最大幅WMは小さくなる一方で、真円度が大きくなりやすい。
【0063】
一方で、図13が示すように、表面10MFに直交する断面において、第2孔MH2が、第1孔MH1の底部近傍において第1孔MH1に繋がる場合には、遮光板10の最大幅WMが大きくなることから、裏面開口の近傍において、金属箔10Mが過度にエッチングされたり、エッチングのばらつきが生じたりすることは抑えられる。これによって、真円度は小さくなる一方で、遮光板10の最大幅WMは大きくなりやすい。
【0064】
これに対して、図11を参照して先に説明した方法によれば、中央開口HCの真円度が大きくなること、および、遮光板10の最大幅WMが大きくなることの両方を抑えることが可能である。これによって、孔10Hを通過した光に起因する過剰な光の写り込み、すなわちゴーストやフレアを抑えることが可能である。
【0065】
なお、第1孔MH1と第2孔MH2とを形成した後に、表面10MFから表面マスクRMFを取り除き、かつ、裏面10MRから裏面保護膜PMRを取り除く。また、表面マスクRMFおよび裏面保護膜PMRが金属箔10Mから取り除かれた後に、表面10MF、裏面10MR、および、第1孔MH1および第2孔MH2を区画する側面を覆う反射防止膜が形成される。上述したように、反射防止膜は、金属箔10Mよりも低い反射率を有し、かつ、反射防止膜に入射した光の一部を吸収する機能を有する。
【0066】
反射防止膜は、例えば黒色を有した被膜である。反射防止膜は、スパッタ法や蒸着法などの成膜方法を用いて金属箔10Mに形成されてもよい。あるいは、反射防止膜は反射防止膜を形成するための液体に、金属箔10Mを触れさせることによって、金属箔10Mに形成されてもよい。
【0067】
上述した遮光板10の製造方法では、裏面保護膜PMRを形成する前に、裏面マスクRMRを取り除かなくてもよい。この場合には、裏面マスクRMRを覆い、かつ、第1孔MH1内に充填された裏面保護膜PMRを形成すればよい。また、裏面保護膜PMRは、表面10MFのエッチングによって第2孔MH2が形成された後に、裏面マスクRMRとともに裏面10MRから取り除かれればよい。
【0068】
[カメラユニット]
図14を参照して、カメラユニットを説明する。なお、図14はカメラユニットの構成を模式的に示している。
【0069】
図14が示すように、カメラユニット20は、上述した遮光板10、レンズ21、および、撮像素子22を備えている。遮光板10は、裏面10Rとレンズ21とが対向する状態で、レンズ21に対して光の入射側に位置している。遮光板10の表面10Fがレンズ21と対向する場合に比べて、中央開口HCを通過して以降に孔10Hの側面において反射されることによって、レンズ21に入射する光を制限することが可能である。
【0070】
遮光板10が有する中央開口HCの直径は、レンズ21の有効径以下の大きさであってよい。これにより、中央開口を通過した光が、レンズの有効径の外側に入射することが抑えられる。そのため、意図しない光が撮像素子に入射することが抑えられる。
【0071】
撮像素子22は、CCDイメージセンサーまたはCMOSイメージセンサーであってよい。カメラユニット20において、1つの遮光板10と、遮光板10を通過した光の光軸上において、当該遮光板10と隣り合う1つのレンズ21とが、1つのレンズユニットを形成する。カメラユニット20は、複数のレンズユニットを備えることが可能である。
【0072】
こうしたカメラユニット20は、各種の電子機器に搭載される。電子機器は、上述したカメラユニット20と、カメラユニット20を支持する筐体とを備える。電子機器は、例えば、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピューター、および、ノート型パーソナルコンピューターなどであってよい。
【0073】
[実施例]
表1を参照して、遮光板の実施例および比較例を説明する。
25μmの厚さを有したステンレス鋼板を準備した。そして、ロールツーロール法を用いて、ステンレス鋼板に対して、複数の第2孔を形成した後に、各第2孔に繋がる第1孔を形成した。これにより、493μmの直径を有した裏面開口、680μmの直径を有した表面開口、および、490μmの直径を有した中央開口を備える孔を有した遮光板の前駆体をステンレス鋼板に複数形成した。
【0074】
なお、各遮光板の前駆体は、遮光板の表面と対向する視点から見て、遮光板の周方向における一部によって、ステンレス鋼板における非エッチング領域に接続していた。また、ステンレス鋼板に設定された仮想の正方格子における格子点に、各遮光板の中央開口が位置するように複数の遮光板の前駆体をステンレス鋼板に形成した。
【0075】
実施例1から実施例3、比較例1、および、比較例2の遮光板の製造時には、第1孔を形成する際におけるステンレス鋼板の搬送速度を互いに異なる値に設定した。具体的には、実施例の遮光板を製造するときの搬送速度を比較例の遮光板を製造するときの搬送速度よりも高い速度に設定した。実施例1から実施例3では、実施例1の搬送速度を最も低い速度に設定し、かつ、実施例3の搬送速度を最も高い速度に設定した。また比較例1の搬送速度を比較例2の搬送速度よりも低い速度に設定した。
【0076】
一方で、比較例3の遮光板を製造する際には、25μmの厚さを有したステンレス鋼板を準備した。そして、打ち抜き加工によって、490μmの直径を有した孔を備える遮光板を複数形成した。
【0077】
[評価方法]
ステンレス鋼板に形成された複数の遮光板の前駆体において、15列かつ15行の遮光板の前駆体について、真円度を算出した。真円度の算出には、レーザー測長機(NEXIV VMZ-R6555、(株)ニコン製)、および、当該装置に搭載された測定ソフトウェアを用いた。
【0078】
また、ステンレス鋼板に形成された複数の遮光板の前駆体において、15列かつ15行の遮光板の前駆体について、共焦点レーザー顕微鏡(VK-X1000Series、(株)キーエンス製)を用いて、最大幅WMを測定した。この際に、共焦点レーザー顕微鏡に、50倍の対物レンズを装着した。また、孔を区画する側面と対向する方向から、中央開口の縁にピントが合う状態で、共焦点レーザー顕微鏡によって側面を観察することによって、最大幅WMを測定した。共焦点レーザー顕微鏡では、対物レンズが有する倍率によって、焦点の合う範囲、すなわち被写界深度が異なる。また、被写界深度内ではピントが合うため、中央開口の縁からの位置に応じて、遮光板の厚さ方向における最大幅は異なる。そのため、実際にはピントが合う位置での遮光板の厚さは、所定の幅を有する。50倍の対物レンズの被写界深度は0.4μmである。そこで、被写界深度が0.4μmであり、中央開口の縁にピントを合わせた状態において、遮光板の厚さ方向における遮光板の幅における最大値を最大幅と定義した。すなわち、中央開口の縁から被写界深度だけ離れた位置での遮光板の厚さが、遮光板の最大幅WMである。
【0079】
[評価結果]
実施例1から実施例3の遮光板、および、比較例1から比較例3の遮光板において、真円度の測定結果、および、最大幅の測定結果は、以下の表1に示す通りであった。なお、表1に示す真円度および最大幅は、各実施例および各比較例において測定対象とされた225個の遮光板の前駆体における最大値である。
【0080】
実施例1から実施例3の遮光板、および、比較例1から比較例3の遮光板のなかで、最大の真円度を有した遮光板を備えるカメラユニットを作成した。そして、カメラユニットを用いて撮像した画像に、過剰な光の写り込み、すなわちゴーストやフレアが生じているか否かを確認した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1が示すように、実施例1における真円度の最大値が2.6μmであり、実施例2における真円度の最大値が2.1μmであり、実施例3における真円度の最大値が2.5μmであることが認められた。また、比較例1における真円度の最大値が4.0μmであり、比較例2における真円度の最大値が3.9μmであることが認められた。
【0083】
また、実施例1における最大幅の最大値が1.5μmであり、実施例2における最大幅の最大値が2.0μmであり、実施例3における最大幅の最大値が2.5μmであることが認められた。また、比較例1における最大幅の最大値が0.5μmであり、比較例2における最大幅の最大値が1.0μmであることが認められた。
【0084】
なお、比較例3の遮光板については、上述したように、金属箔のエッチングによって形成された遮光板ではないため、真円度および最大幅の評価を行わなかった。
【0085】
各遮光板を備えるカメラユニットによって撮像した画像を確認したところ、実施例1から実施例3の遮光板を備えるカメラユニットによって撮像した画像には、ゴーストおよびフレアが認められなかった。
【0086】
これに対して、比較例1から比較例3の遮光板を備えるカメラユニットによって撮像した画像には、ゴーストおよびフレアが認められた。比較例1から比較例3のうち、比較例1および比較例2の遮光板については、遮光板が有する真円度が3μmを超えることによって、孔の周方向における一部において過剰な光が透過したために、ゴーストおよびフレアが生じると考えられる。一方で、比較例3の遮光板については、遮光板の表面に直交する断面において、孔を区画する側面が表面に対して直交することによって、孔を通過するように反射された光が過剰であるために、ゴーストおよびフレアが生じると考えられる。
【0087】
以上説明したように、遮光板、カメラユニット、電子機器、および、遮光板の製造方法の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有するため、表面10Fの斜め上方から孔に入射した光は、第2孔10H2を区画する側面において遮光板10の表面10Fに向けて反射されやすい。これに対して、第1孔10H1は、中央開口HCから裏面10Rに向けて先太りする形状を有するため、第2孔10H2から第1孔10H1に入射した光のうちで、第1孔10H1を区画する側面において反射される光が制限される。このように、第1孔10H1および第2孔10H2によれば、孔10Hの側面で反射される光の光量を低下させることが可能である。
【0088】
(2)中央開口HCの真円度が3μm以下であることから、孔10Hに入射した光の通路である中央開口HCのいびつさが抑えられ、これによって、中央開口HCの周方向の一部において、第2孔10H2から第1孔10H1に向けて透過する光の光量が過剰になることが抑えられる。
【0089】
(3)ピントが合う遮光板10の最大幅WMが2.5μm以下であることによって、中央開口HCの近傍において孔10Hを区画する側面の面積を小さくし、これによって、中央開口HCの近傍において孔10Hを区画する側面において反射される光の光量を低下させることができる。結果として、孔10Hを透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量を低下させることができる。
【0090】
(4)ピントが合う遮光板10の最大幅WMが1.0μmよりも大きいことによって、中央開口HC付近における変形を抑えることが可能である。これにより、中央開口HCを通じて遮光板10を透過する光の光量が、遮光板10の変形に起因して変動することが抑えられる。
【0091】
(5)遮光板10の厚さが10μm以上であることによって、遮光板10を形成するための金属箔10Mの反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられ、遮光板10の厚さが100μm以下であることによって、孔10Hを形成するためのエッチングの精度が低下することが抑えられる。
【0092】
(6)遮光板10の表面10Fがレンズ21と対向する場合に比べて、中央開口HCを通過して以降に孔10Hの側面において反射されたことによってレンズ21に入射する光を制限することが可能である。
【0093】
(7)中央開口HCを通過した光が、レンズ21の有効径の外側に入射することが抑えられる。そのため、意図しない光が撮像素子22に入射することが抑えられる。
【0094】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[遮光板の製造方法]
・遮光板10を製造する際には、金属箔10Mのエッチングによって第2孔10H2を形成した後に、第1孔10H1を第2孔10H2に繋がるように形成してもよい。この場合には、第1孔10H1よりも先に形成された第2孔10H2を保護する表面保護膜PMFを第2孔10H2内に充填した状態で、第1孔10H1を第2孔10H2に繋がるように形成すればよい。この場合であっても、孔10Hが第1孔10H1および第2孔10H2を備え、かつ、中央開口HCの真円度が3μm以下であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0095】
[金属箔]
・遮光板10を形成するための金属箔10Mは、ステンレス鋼箔に限らず、例えば、鉄‐ニッケル系合金製の金属箔でもよいし、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製の金属箔でもよい。鉄‐ニッケル系合金は、例えばインバーであってよく、また、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金は、例えばスーパーインバーであってよい。すなわち、遮光板10は、鉄‐ニッケル系合金製、または、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製であってよい。また、遮光板10は、インバー製またはスーパーインバー製であってよい。
【0096】
上記構成によれば、以下の効果を得ることができる。
(8)外気温の変化に伴う遮光板10の変形を抑えることができ、これによって、外気温の変化に伴う外光の入射量における変化を抑えることができる。それゆえに、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアの発生を抑えることができる。
【0097】
・遮光板10を形成するための金属箔10Mは、10μm未満の厚さを有してもよいし、また、100μmを超える厚さを有してもよい。すなわち、遮光板10は、10μm未満の厚さを有してもよいし、100μmを超える厚さを有してもよい。この場合であっても、孔10Hが第1孔10H1および第2孔10H2を備え、かつ、中央開口HCの真円度が3μm以下であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0098】
[遮光板]
・遮光板10の最大幅WMは0.5μm未満であってもよいし、2.5μmを超えてもよい。これらの場合であっても、孔10Hが第1孔10H1および第2孔10H2を備え、かつ、中央開口HCの真円度が3μm以下であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【符号の説明】
【0099】
10,100…遮光板
10F,10MF,100F…表面
10H,100H…孔
10H1,MH1…第1孔
10H2,MH2…第2孔
10M…金属箔
10MR,10R,100R…裏面
20…カメラユニット
21…レンズ
22…撮像素子
H1R…裏面開口
H2F…表面開口
HC,MHC…中央開口
PMF…表面保護膜
PMR…裏面保護膜
RF…表面レジスト層
RMF…表面マスク
RMFh,RMRh…マスク孔
RMR…裏面マスク
RR…裏面レジスト層
図1
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