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特許7574912鉄塔劣化検出装置、鉄塔劣化検出システム及び鉄塔劣化検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】鉄塔劣化検出装置、鉄塔劣化検出システム及び鉄塔劣化検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241022BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H9/00 E
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023503275
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008372
(87)【国際公開番号】W WO2022185468
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】森 洸遥
(72)【発明者】
【氏名】依田 幸英
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直人
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-280639(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044655(WO,A1)
【文献】特公平05-083876(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔に敷設された光ファイバか前記鉄塔の振動パターンを含む後方散乱光を受信する受信手段と、
記振動パターンに基づき、前記鉄塔の劣化を検出する劣化検出手段と、を備え
前記劣化検出手段は、前記振動パターンの時間に応じた変化量に基づき、前記鉄塔の劣化を検出する、鉄塔劣化検出装置。
【請求項2】
前記劣化検出手段は、前記振動パターンと前記鉄塔の劣化について学習した学習モデルとに基づき、前記鉄塔の劣化を検出する、
請求項1に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項3】
前記劣化検出手段は、前記鉄塔の構造的異常に基づく前記劣化を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項4】
前記構造的異常は、前記鉄塔におけるねじのゆるみ、前記鉄塔における塗装の剥がれ及び前記鉄塔における錆の発生のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項5】
前記受信手段は、複数本の前記鉄塔に敷設された前記光ファイバからの前記後方散乱光を受信することを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項6】
前記劣化検出手段は、個々の前記鉄塔における前記劣化を検出することを特徴とする請求項に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項7】
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項8】
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項9】
前記劣化検出手段による検出の結果を示す情報を出力する制御を実行する出力制御手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出装置と、
前記光ファイバと
を備える鉄塔劣化検出システム。
【請求項11】
受信手段が、鉄塔に敷設された光ファイバか前記鉄塔の振動パターンを含む後方散乱光を受信して、
劣化検出手段が、前記振動パターンの時間に応じた変化量に基づき、前記鉄塔の劣化を検出する
ことを特徴とする鉄塔劣化検出方法。
【請求項12】
前記劣化の検出において、前記振動パターンと前記鉄塔の劣化について学習した学習モデルとに基づき、前記鉄塔の劣化を検出する、
請求項11に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項13】
前記劣化検出手段は、前記鉄塔の構造的異常に基づく前記劣化を検出することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項14】
前記構造的異常は、前記鉄塔におけるねじのゆるみ、前記鉄塔における塗装の剥がれ及び前記鉄塔における錆の発生のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項13に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項15】
前記受信手段は、複数本の前記鉄塔に敷設された前記光ファイバからの前記後方散乱光を受信することを特徴とする請求項11から請求項14のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項16】
前記劣化検出手段は、個々の前記鉄塔における前記劣化を検出することを特徴とする請求項15に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項17】
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする請求項11から請求項16のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項18】
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする請求項11から請求項16のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出方法。
【請求項19】
出力制御手段が、前記劣化検出手段による検出の結果を示す情報を出力する制御を実行することを特徴とする請求項11から請求項18のうちのいずれか1項に記載の鉄塔劣化検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄塔劣化検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、架空配電系統における事故点を標定する技術が開示されている。すなわち、第一に、パルス状の入力波を発生するパルス発生装置が設置される。この入力波は、事故点を標定するために要求される空間分解能に応じた周波数成分を含む。第二に、架空配電系統における電位の時間波形、電流の時間波形及び電圧の時間波形のうちの少なくとも一つを測定する測定装置が設置される。入力波が印加されてから当該入力波に対応する反射波が生じるまでの時間差に基づき、事故点までの距離が算出される(例えば、特許文献1の要約参照。)。
【0003】
なお、関連技術として、特許文献2に記載の技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-31718号公報
【文献】国際公開第2020/044655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、送電系統は、送電用の鉄塔を含むものである。また、配電系統は、配電用の鉄塔を含むものである。特許文献1に記載の技術は、架空配電系統における事故点を標定するものである。換言すれば、特許文献1に記載の技術は、かかる鉄塔の劣化を検出するものではない。このため、かかる鉄塔の劣化を検出することができない問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、鉄塔の劣化を検出することができる鉄塔劣化検出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る鉄塔劣化検出装置の一形態は、鉄塔に敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、光信号が示す鉄塔の振動パターンに基づき、鉄塔の劣化を検出する劣化検出手段と、を備えるものである。
【0008】
本開示に係る鉄塔劣化検出方法の一形態は、光信号受信手段が、鉄塔に敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信して、劣化検出手段が、光信号が示す鉄塔の振動パターンに基づき、鉄塔の劣化を検出するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、鉄塔の劣化を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、複数本の鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。
図2図2は、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出システムの要部を示すブロック図である。
図3図3は、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出装置の要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出装置の要部の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出装置の要部の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出装置の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、劣化検出部により用いられる鉄塔情報の例を示す説明図である。
図8A図8Aは、劣化のない鉄塔の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図8B図8Bは、劣化のある鉄塔の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図9A図9Aは、劣化のない鉄塔の振動パターンに対応する時間波形の例を示す説明図である。
図9B図9Bは、劣化のある鉄塔の振動パターンに対応する時間波形の例を示す説明図である。
図10図10は、機械学習に用いられるデータの例を示す説明図である。
図11図11は、機械学習に用いられる学習器の例を示す説明図である。
図12A図12Aは、過去の時点における鉄塔の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図12B図12Bは、他の過去の時点における鉄塔の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図12C図12Cは、現在の時点における鉄塔の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図12D図12Dは、未来の時点における鉄塔の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図13図13は、劣化検出部により用いられる鉄塔情報の他の例を示す説明図である。
図14図14は、第2実施形態に係る他の鉄塔劣化検出システムの要部を示すブロック図である。
図15図15は、第2実施形態に係る他の鉄塔劣化検出装置の要部を示すブロック図である。
図16図16は、第1実施形態に係る鉄塔劣化検出装置と複数本の鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図16は、第1実施形態に係る鉄塔劣化検出装置を示す説明図である。図16を参照して、第1実施形態に係る鉄塔劣化検出装置について説明する。
【0013】
図16に示す如く、複数本の鉄塔1を介する架空方式により、光ファイバケーブル2が敷設されている。光ファイバケーブル2の一端部に鉄塔劣化検出装置5が設けられている。鉄塔劣化検出装置5は、以下のような機能を有する。
【0014】
すなわち、鉄塔劣化検出装置5は、光ファイバケーブル2に光信号を出力する。これにより、光ファイバケーブル2の内部にて後方散乱光が発生する。鉄塔劣化検出装置5は、当該発生した後方散乱光に対応する光信号を受信する。換言すれば、鉄塔劣化検出装置5は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する。当該受信された光信号には、個々の鉄塔1の振動に応じて異なるパターンが含まれる。鉄塔劣化検出装置5は、当該受信された光信号を用いて、かかるパターン基づき、個々の鉄塔1の劣化を検出する。鉄塔劣化検出装置5の詳細については、第2実施形態にて後述する。
【0015】
このように、鉄塔劣化検出装置5を用いることにより、鉄塔1の劣化を検出することができる。
【0016】
[第2実施形態]
図1は、複数本の鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。図2は、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出システムの要部を示すブロック図である。図1及び図2を参照して、第2実施形態に係る鉄塔劣化検出システムについて説明する。
【0017】
図1に示す如く、N本の鉄塔1_1~1_Nを介する架空方式により、光ファイバケーブル2が敷設されている。ここで、Nは、2以上の整数である。図1に示す例においては、N=3である。鉄塔1_1~1_Nは、送電網又は配電網に含まれる。換言すれば、鉄塔1_1~1_Nは、送電用又は配電用である。光ファイバケーブル2は、通信用又はセンシング用である。なお、光ファイバケーブル2は、架空地線の内部に設けられたものであっても良い。すなわち、光ファイバケーブル2は、OPGW(Optical Fiber Composite Overhead Ground Wire)を用いたものであっても良い。
【0018】
以下、光ファイバケーブル2が通信用である場合の例を中心に説明する。光ファイバケーブル2は、光通信装置3による通信に用いられる(図2参照)。光通信装置3は、例えば、OPGW用の端末装置により構成されている。光通信装置3は、例えば、OPGW用の局舎に設置されている。
【0019】
図2に示す如く、鉄塔劣化検出システム100は、光ファイバケーブル2、フィルタユニット4、鉄塔劣化検出装置5及び出力装置6を備える。鉄塔劣化検出装置5は、光信号受信部11、劣化検出部12及び出力制御部13を備える。
【0020】
フィルタユニット4は、光ファイバケーブル2と光通信装置3と鉄塔劣化検出装置5との間に設けられている。フィルタユニット4は、光通信装置3からの光信号が入力されたとき、当該入力された光信号を光ファイバケーブル2に出力する。また、フィルタユニット4は、光ファイバケーブル2からの光信号が入力されたとき、当該入力された信号光のうちの後方散乱光に対応する成分を分離して、鉄塔劣化検出装置5に出力する。フィルタユニット4は、波長フィルタ(より具体的には3ポートの波長分割多重フィルタ)を用いて構成される。かかる波長フィルタにおいて、光通信装置3から入力された光信号(特定の波長を有する。)は、鉄塔劣化検出装置5に出力されることなく、光ファイバケーブル2に出力される。他方、光ファイバケーブル2から入力された光信号のうちの他の特定の波長を有する成分(後方散乱光に対応する成分を含む。)は、光通信装置3に出力されることなく、鉄塔劣化検出装置5に出力される。このようにして、フィルタユニット4の機能が実現される。
【0021】
光信号受信部11は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する。より具体的には、上記のとおり、後方散乱光に対応する成分がフィルタユニット4により分離されて、当該分離された成分を含む光信号が光信号受信部11により受信される。
【0022】
劣化検出部12は、光信号受信部11により受信された光信号を用いて、個々の鉄塔1の劣化を検出する。より具体的には、劣化検出部12は、個々の鉄塔1における劣化の有無を検出するとともに、個々の鉄塔1における劣化の程度を検出する。または、劣化検出部12は、個々の鉄塔1における劣化の予兆を検出する。劣化検出部12による検出方法の具体例については、図7図12Dを参照して後述する。
【0023】
出力制御部13は、劣化検出部12による検出の結果を示す情報(以下「検出結果情報」という。)を出力する制御を実行する。検出結果情報の出力には、出力装置6が用いられる。出力装置6は、例えば、表示装置、音声出力装置及び通信装置のうちの少なくとも一つを含む。表示装置は、例えば、ディスプレイを用いたものである。音声出力装置は、例えば、スピーカを用いたものである。通信装置は、例えば、専用の送信機及び受信機を用いたものである。
【0024】
すなわち、出力制御部13は、検出結果情報を含む画像を表示する制御を実行する。かかる画像の表示には、出力装置6のうちの表示装置が用いられる。または、出力制御部13は、検出結果情報に対応する音声を出力する制御を実行する。かかる音声の出力には、出力装置6のうちの音声出力装置が用いられる。または、出力制御部13は、検出結果情報に対応する信号を送信する制御を実行する。かかる信号の送信には、出力装置6のうちの通信装置が用いられる。
【0025】
このようにして、鉄塔劣化検出システム100の要部が構成されている。
【0026】
以下、光信号受信部11を「光信号受信手段」ということがある。また、劣化検出部12を「劣化検出手段」ということがある。また、出力制御部13を「出力制御手段」ということがある。
【0027】
次に、図3図5を参照して、鉄塔劣化検出装置5の要部のハードウェア構成について説明する。
【0028】
図3図5の各々に示す如く、鉄塔劣化検出装置5は、コンピュータ21を用いたものである。コンピュータ21は、光通信装置3が設置された場所と同一の場所(例えばOPGW用の局舎)に設けられるものであっても良い。または、コンピュータ21は、他の場所(例えばクラウドネットワーク内)に設けられるものであっても良い。または、コンピュータ21のうちの一部の要素(より具体的には受信機31)が当該同一の場所に設けられるとともに、コンピュータ21のうちの残余の要素が当該他の場所に設けられるものであっても良い。
【0029】
図3に示す如く、コンピュータ21は、受信機31、プロセッサ32及びメモリ33を備える。メモリ33には、コンピュータ21を光信号受信部11、劣化検出部12及び出力制御部13として機能させるためのプログラム(受信機31を光信号受信部11として機能させるためのプログラムを含む。)が記憶されている。プロセッサ32は、メモリ33に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これにより、光信号受信部11の機能F1、劣化検出部12の機能F2及び出力制御部13の機能F3が実現される。
【0030】
または、図4に示す如く、コンピュータ21は、受信機31及び処理回路34を備える。処理回路34は、コンピュータ21を光信号受信部11、劣化検出部12及び出力制御部13として機能させるための処理(受信機31を光信号受信部11として機能させるための処理を含む。)を実行する。これにより、機能F1~F3が実現される。
【0031】
または、図5に示す如く、コンピュータ21は、受信機31、プロセッサ32、メモリ33及び処理回路34を備える。この場合、機能F1~F3のうちの一部の機能がプロセッサ32及びメモリ33により実現されるとともに、機能F1~F3のうちの残余の機能が処理回路34により実現される。
【0032】
プロセッサ32は、1個以上のプロセッサにより構成されている。個々のプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はDSP(Digital Signal Processor)を用いたものである。
【0033】
メモリ33は、1個以上のメモリにより構成されている。個々のメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、MO(Magneto Optical)ディスク又はミニディスクを用いたものである。
【0034】
処理回路34は、1個以上の処理回路により構成されている。個々の処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)又はシステムLSI(Large Scale Integration)を用いたものである。
【0035】
なお、プロセッサ32は、機能F1~F3の各々に対応する専用のプロセッサを含むものであっても良い。メモリ33は、機能F1~F3の各々に対応する専用のメモリを含むものであっても良い。処理回路34は、機能F1~F3の各々に対応する専用の処理回路を含むものであっても良い。
【0036】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、鉄塔劣化検出装置5の動作について説明する。
【0037】
まず、光信号受信部11は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する(ステップST1)。次いで、劣化検出部12は、当該受信された光信号を用いて、個々の鉄塔1の劣化を検出する(ステップST2)。次いで、出力制御部13は、かかる検出の結果を示す情報(すなわち検出結果情報)を出力する制御を実行する(ステップST3)。
【0038】
例えば、ステップST2にて、劣化が「ない」ことが検出されたものとする。この場合、ステップST3にて、劣化が「ない」ことを示す検出結果情報が出力される。または、例えば、ステップST2にて、劣化が「ある」ことが検出されて、かかる劣化の程度が検出されたものとする。この場合、ステップST3にて、劣化の発生が「ある」ことを示し、かつ、かかる劣化の程度(例えば2段階の値のうちのいずれかの値)を示す検出結果情報が出力される。
【0039】
次に、図7図8A及び図8Bを参照して、劣化検出部12による検出方法の第1具体例について説明する。第1具体例において、劣化検出部12は、個々の鉄塔1における劣化の有無を検出するとともに、かかる劣化の程度を検出する。
【0040】
まず、光通信装置3がパルス状の光信号を出力する。当該出力された光信号は、フィルタユニット4を介して光ファイバケーブル2に入力される。かかる光信号が入力されることにより、光ファイバケーブル2の内部にて後方散乱光が発生する。上記のとおり、光信号受信部11により受信される光信号は、フィルタユニット4により分離されたものであり、当該発生した後方散乱光に対応する成分(以下「後方散乱光成分」という。)を含む。
【0041】
このとき、光信号受信部11により受信される光信号は、光ファイバケーブル2のうちの個々の鉄塔1に対応する位置にて発生した後方散乱光に対応する成分を含む。換言すれば、当該受信される光信号は、個々の鉄塔1に対応する後方散乱光成分を含む。かかる後方散乱光成分が受信されるタイミングは、対応する鉄塔1が設置された位置と、鉄塔劣化検出装置5が設置された位置(より具体的には受信機31が設置された位置)との距離Dに応じて異なる。ここで、距離Dは、光ファイバケーブル2に沿う経路距離である。
【0042】
ここで、光信号受信部11により受信される光信号に含まれる後方散乱光成分は、対応する鉄塔1の振動に応じて異なるパターン(以下「振動パターン」という。)を示す。換言すれば、当該受信される光信号は、個々の鉄塔1に対応する振動パターンを含む。劣化検出部12による劣化の検出は、かかる振動パターンに基づくものである。
【0043】
すなわち、個々の鉄塔1の劣化により、構造的異常が発生する。具体的には、例えば、ねじのゆるみ、塗装の剥がれ及び錆の発生のうちの少なくとも一つが発生する。かかる構造的異常が発生することにより、振動パターンが変化する。具体的には、例えば、振動パターンを示す時間波形TWにおける減衰時間Tが変化する。また、例えば、振動パターンを示す周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数が変化する。このため、振動パターンに基づき、個々の鉄塔1における劣化(より具体的には構造的異常に基づく劣化)の有無を検出することができる。
【0044】
また、このとき、振動パターンの変化量(例えば減衰時間Tの変化量又はピーク周波数の変化量)は、劣化の程度に応じて異なるものとなる。より具体的には、劣化の程度が大きいほど、変化量が大きい値となる。このため、振動パターンに基づき、個々の鉄塔1における劣化(より具体的には構造的異常に基づく劣化)の程度を検出することができる。
【0045】
鉄塔劣化検出装置5(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、個々の鉄塔1に関する情報(以下「鉄塔情報」という。)が記憶されている。鉄塔情報は、個々の鉄塔1に対応する距離Dを示す情報(以下「距離情報」という。)を含む。また、鉄塔情報は、個々の鉄塔1を識別可能な情報(以下「識別情報」という。)を含む。識別情報は、例えば、個々の鉄塔1に割り当てられた識別子を含む。図7は、鉄塔情報の例を示している。
【0046】
鉄塔劣化検出装置5は、光通信装置3がパルス状の光信号を出力したタイミングを示す情報を取得する。かかる情報は、例えば、光通信装置3から取得される。劣化検出部12は、当該取得された情報が示すタイミングと、光信号受信部11により後方散乱光成分が受信されたタイミングとの時間差を算出する。劣化検出部12は、当該算出された時間差に基づき、かかる後方散乱光成分が発生した位置と受信機31が設置された位置との距離D’を算出する。ここで、距離D’は、光ファイバケーブル2に沿う経路距離である。
【0047】
劣化検出部12は、当該算出された距離D’を、鉄塔情報に含まれる距離情報が示す個々の距離Dと比較する。これにより、劣化検出部12は、上記受信された光信号に含まれる後方散乱光成分のうち、個々の鉄塔1に対応する後方散乱光成分を検出する。この結果、個々の鉄塔1に対応する振動パターンが検出される。より具体的には、個々の鉄塔1に対応する振動パターンを示す時間波形TWが検出される。
【0048】
次いで、劣化検出部12は、当該検出された時間波形に対する高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を実行する。これにより、個々の鉄塔1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFSが算出される。
【0049】
図8Aは、劣化のない鉄塔1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFS_1のイメージを示している。他方、図8Bは、劣化のある鉄塔1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFS_2のイメージを示している。図8AにおけるP_1は、周波数スペクトルFS_1におけるピークを示している。図8BにおけるP_2は、周波数スペクトルFS_2におけるピークを示している。
【0050】
上記のとおり、対応する鉄塔1の劣化により、周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数が変化する。図8A及び図8Bに示す例において、周波数スペクトルFS_2におけるピーク周波数(図8B参照)は、周波数スペクトルFS_1におけるピーク周波数(図8A参照)と異なる値である。
【0051】
劣化検出部12には、ピーク周波数に対する比較の対象となる基準値が設定されている。基準値は、劣化のない鉄塔1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数と同等の値に設定されている。具体的には、例えば、基準値は、図8Aに示す周波数スペクトルFS_1におけるピーク周波数と同等の値に設定されている。
【0052】
劣化検出部12は、上記算出された周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数を検出する。劣化検出部12は、当該検出されたピーク周波数を、上記設定された基準値と比較する。これにより、劣化検出部12は、対応する鉄塔1における劣化の有無を判定する。このようにして、個々の鉄塔1における劣化の有無が検出される。
【0053】
また、上記のとおり、個々の鉄塔1における劣化の程度により、対応する周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数の変化量が異なるものとなる。そこで、鉄塔劣化検出装置5(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、劣化の程度を示す値(例えば2段階の値)とピーク周波数の変化量を示す値との対応関係を示す情報が記憶されている。劣化検出部12は、上記設定された基準値に対する上記検出されたピーク周波数の変化量を算出する。劣化検出部12は、当該記憶された情報を用いて、当該算出された変化量に対応する劣化の程度を判定する。これにより、対応する鉄塔1における劣化の程度が検出される。
【0054】
次に、図9A及び図9Bを参照して、劣化検出部12による検出方法の第2具体例について説明する。第2具体例において、劣化検出部12は、個々の鉄塔1における劣化の有無を検出するとともに、かかる劣化の程度を検出する。
【0055】
劣化検出部12は、第1具体例にて説明した検出方法と同様の検出方法により、個々の鉄塔1に対応する後方散乱光成分を検出する。この結果、個々の鉄塔1に対応する振動パターンが検出される。より具体的には、個々の鉄塔1に対応する振動パターンを示す時間波形TWが検出される。
【0056】
ここで、個々の鉄塔1にて外的要因による単発的な振動が発生したとき、対応する時間波形TWにてパルス状の波形が発生する。このとき、対応する鉄塔1における劣化の有無に応じて、かかるパルスの減衰時間Tが異なる値となる。また、対応する鉄塔1における劣化の程度に応じて、かかるパルスの減衰時間Tの変化量が異なる値となる。これは、第1具体例にて説明したとおりである。
【0057】
図9Aは、劣化のない鉄塔1に対応する振動パターンを示す時間波形TW_1のイメージを示している。他方、図9Bは、劣化のある鉄塔1に対応する振動パターンを示す時間波形TW_2のイメージを示している。図9AにおけるT_1は、時間波形TW_1におけるパルスの減衰時間を示している。図9BにおけるT_2は、時間波形TW_2におけるパルスの減衰時間を示している。
【0058】
劣化検出部12には、減衰時間Tに対する比較の対象となる基準値が設定されている。基準値は、劣化のない鉄塔1に対応する振動パターンを示す時間波形TWにおける減衰時間Tと同等の値に設定されている。具体的には、例えば、基準値は、図9Aに示す時間波形TW_1における減衰時間T_1と同等の値に設定されている。
【0059】
劣化検出部12は、上記検出された時間波形TWにパルス状の波形が含まれるとき、かかるパルスの減衰時間Tを算出する。劣化検出部12は、当該算出された減衰時間Tを、上記設定された基準値と比較する。これにより、劣化検出部12は、対応する鉄塔1における劣化の有無を検出する。
【0060】
また、鉄塔劣化検出装置5(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、劣化の程度を示す値(例えば2段階の値)と減衰時間Tの変化量を示す値との対応関係を示す情報が記憶されている。劣化検出部12は、上記設定された基準値に対する上記算出された減衰時間Tの変化量を算出する。劣化検出部12は、当該記憶された情報を用いて、当該算出された変化量に対応する劣化の程度を判定する。これにより、対応する鉄塔1における劣化の程度が検出される。
【0061】
次に、図10及び図11を参照して、劣化検出部12による検出方法の第3具体例について説明する。第3具体例において、劣化検出部12は、個々の鉄塔1における劣化の有無を検出するとともに、かかる劣化の程度を検出する。
【0062】
第3具体例は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いるものである。より具体的には、第3具体例は、教師あり学習により生成された学習済みモデルを用いるものである。以下、かかる機械学習について説明する。
【0063】
第一に、機械学習に用いられる訓練入力データとして、複数の振動パターンを示すデータ(以下「振動データ」という。)が用意される。振動データは、個々の鉄塔1における個々の劣化状態に対応する振動パターンを含む。第二に、機械学習に用いられる教師データ(すなわち正解データ)として、振動データに含まれる個々の振動パターンに対応する鉄塔1及び劣化状態を示すデータが用意される。図10は、これらのデータ(初期訓練データ)の例を示している。
【0064】
図10に例示される初期訓練データのうちの複数の振動データが専用の学習器に入力される(図11参照)。学習器は、これらの振動データを訓練入力データとして用いた機械学習を実行することにより、学習済みモデルを生成する。例えば、学習器は、個々の鉄塔1に対応する振動パターンを示す訓練入力データを受け付ける。学習器は、かかる訓練入力データに対して、機械学習を実行し、所定の精度で正解データが得られるまで、個々の鉄塔1に対応して学習処理を繰り返す。この結果、個々の鉄塔1に対応する学習済みパターンが生成される。次に、学習器は、新規の振動データである入力データを、学習済みパターンの入力データとして用いて、個々の鉄塔1に対応する劣化の有無及び劣化の程度を分類する。その結果、学習器は、個々の鉄塔1における劣化の有無及び劣化の程度を示す情報を出力する。図11は、学習器における機械学習の学習処理と分類処理の例を示している。このようにして、学習済みモデルが生成される。
【0065】
なお、学習器における機械学習には、公知の種々の技術、例えば、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)またはニューラルネットワークを用いることができる。これらの技術についての詳細な説明は省略する。
【0066】
劣化検出部12は、光信号受信部11により受信された光信号を用いて、個々の鉄塔1に対応する振動パターンを検出する(第1具体例参照)。劣化検出部12は、当該検出された振動パターンを示すデータを生成する。ここで、劣化検出部12は、上記生成された学習済みモデルを備える。劣化検出部12は、当該生成された振動データを、かかる学習済みモデルに入力する。これに対して、かかる学習済みモデルは、対応する鉄塔1における劣化の有無及び劣化の程度を示す情報を出力する。これにより、個々の鉄塔1における劣化の有無が検出されるとともに、個々の鉄塔1における劣化の程度が検出される。
【0067】
次に、図12A図12Dを参照して、劣化検出部12による検出方法の第4具体例について説明する。第4具体例において、劣化検出部12は、個々の鉄塔1における劣化の予兆を検出する。
【0068】
劣化検出部12は、第1具体例によるピーク周波数の検出を定期的に実行する。これにより、例えば、複数個の過去の時点におけるピーク周波数、及び現在の時点におけるピーク周波数が検出されたものとする。図12Aは、過去の時点(例えば2年前)における周波数スペクトルFS_P_1の例を示している。図12Bは、他の過去の時点(例えば1年前)における周波数スペクトルFS_P_2の例を示している。図12Cは、現在の時点(例えば今年)における周波数スペクトルFS_Cの例を示している。図12AにおけるP_P_1は、周波数スペクトルFS_P_1におけるピークを示している。図12BにおけるP_P_2は、周波数スペクトルFS_P_2におけるピークを示している。図12CにおけるP_Cは、周波数スペクトルFS_Cにおけるピークを示している。
【0069】
劣化検出部12は、これらのピーク周波数に基づき、未来の時点におけるピーク周波数を予測する。かかる予測には、例えば、最小二乗法が用いられる。図12Dは、未来の時点(例えば来年)における周波数スペクトルFS_Fの例を示している。図12DにおけるP_Fは、周波数スペクトルFS_Fにおけるピークを示している。
【0070】
劣化検出部12は、当該予測されたピーク周波数を、第1具体例における基準値と同様の基準値と比較する。これにより、劣化検出部12は、個々の鉄塔1について、未来の時点における劣化の有無を予測するとともに、未来の時点における劣化の程度を予測する。
【0071】
例えば、未来の時点における劣化があると予測されたものとする。この場合、劣化検出部12は、対応する鉄塔1について、劣化の予兆があると判定する。他方、未来の時点における劣化がないと予測されたものとする。この場合、劣化検出部12は、対応する鉄塔1について、劣化の予兆がないと判定する。このようにして、個々の鉄塔1における劣化の予兆が検出される。
【0072】
次に、鉄塔劣化検出システム100を用いることによる効果について説明する。
【0073】
第一に、上記のとおり、個々の鉄塔1の劣化を検出することができる。このとき、いわゆる「リモート」による検出を実現することができる。すなわち、個々の鉄塔1の劣化を検出するにあたり、作業員が個々の鉄塔1に登る作業、及び作業員が直接目視により劣化を検出する作業などを不要とすることができる。
【0074】
第二に、個々の鉄塔1の劣化を検出するにあたり、既設の光ファイバケーブル2(例えばOPGW用の光ファイバケーブル2)を用いることができる。これにより、かかる劣化を検出するための専用の光ファイバケーブルを不要とすることができる。この結果、かかる光ファイバケーブルを敷設する作業を不要とすることができる。
【0075】
第三に、特許文献1に記載の技術に比して、構成を簡単にすることができる。すなわち、仮に、特許文献1に記載の技術が個々の鉄塔1の劣化の検出に転用されたものとする。この場合、パルス発生装置を設置することが要求されるとともに、測定装置を設置することが要求される。また、測定装置が電気式センサを用いるものであるところ、専用の電源を設置することも要求される。これに対して、鉄塔劣化検出システム100を用いることにより、これらの機器を不要とすることができる。特に、鉄塔劣化検出システム100は、電気式センサに代えて光ファイバセンシングを用いるものである。このため、電気式センサに係る専用の電源を不要とすることができる。
【0076】
次に、鉄塔劣化検出システム100の変形例について説明する。
【0077】
図1及び図2に示す例においては、光ファイバケーブル2の片端部に光通信装置3、フィルタユニット4及び鉄塔劣化検出装置5が設けられている。これに対して、光ファイバケーブル2の両端部の各々に光通信装置3、フィルタユニット4及び鉄塔劣化検出装置5が設けられているものであっても良い。
【0078】
次に、鉄塔劣化検出システム100の他の変形例について説明する。
【0079】
鉄塔劣化検出システム100は、1本の光ファイバケーブル2に代えて、複数本の光ファイバケーブル(不図示)を用いるものであっても良い。複数本の光ファイバケーブルは、例えば、鉄塔1_1~1_Nを含む送電網又は配電網における互いに異なる経路に沿うように設けられている。この場合、光信号受信部11は、複数本の光ファイケーブルの各々からの光信号を受信する。劣化検出部12は、複数本の光ファイバケーブルの各々について、第1具体例、第2具体例、第3具体例又は第4具体例にて説明した処理と同様の処理を実行する。これにより、鉄塔1_1~1_Nの各々における劣化が検出される。
【0080】
次に、図13を参照して、鉄塔劣化検出システム100の他の変形例について説明する。
【0081】
鉄塔情報は、図7に示す例に限定されるものではない。換言すれば、鉄塔情報に含まれる情報は、距離情報及び識別情報に限定されるものではない。鉄塔情報は、距離情報及び識別情報に加えて、他の情報(以下「追加情報」という。)を含むものであっても良い。図13は、追加情報を含む鉄塔情報の例を示している。図13に示す例において、追加情報は、個々の鉄塔1の材質を示す情報、個々の鉄塔1の高さを示す情報、及び個々の鉄塔1の建築年度又は設置年度を示す情報を含む。
【0082】
第1具体例にて説明したとおり、個々の鉄塔1に対応する振動パターンは、劣化の有無及び劣化の程度に応じて異なる。これに加えて、個々の鉄塔1に対応する振動パターンは、材質、高さ及び建築年度又は設置年度などに応じて異なり得る。
【0083】
そこで、例えば、劣化検出部12は、第1具体例、第2具体例又は第4具体例にて説明した処理を実行するとき、以下のようにして基準値を設定する。すなわち、劣化検出部12は、追加情報が示す高さ、材質及び建築年度又は設置年度に応じて、鉄塔1毎に基準値を設定する。かかる基準値は、所定のルールに基づき設定される。かかる基準値を用いることにより、個々の鉄塔1の劣化をより正確に検出することができる。
【0084】
次に、図14を参照して、鉄塔劣化検出システム100の他の変形例について説明する。
【0085】
図14に示す如く、鉄塔劣化検出システム100は、光ファイバケーブル2及び鉄塔劣化検出装置5を備えるものであっても良い。換言すれば、光ファイバケーブル2及び鉄塔劣化検出装置5により、鉄塔劣化検出システム100の要部が構成されているものであっても良い。この場合、鉄塔劣化検出装置5は、光ファイバケーブル2にパルス状の光信号を出力する機能を有するものであっても良い。
【0086】
次に、図15を参照して、鉄塔劣化検出装置5の変形例について説明する。
【0087】
図15に示す如く、鉄塔劣化検出装置5は、光信号受信部11及び劣化検出部12を備えるものであっても良い。換言すれば、光信号受信部11及び劣化検出部12により、鉄塔劣化検出装置5の要部が構成されているものであっても良い。この場合、出力制御部13は、出力装置6に設けられているものであっても良い。この場合においても、上記のような効果を奏することができる。
【0088】
すなわち、光信号受信部11は、鉄塔1に敷設された光ファイバケーブル2からの光信号を受信する。劣化検出部12は、光信号が示す鉄塔1の振動パターンに基づき、鉄塔1の劣化を検出する。これにより、個々の鉄塔1の劣化を検出することができる。特に、リモートにより、かかる劣化を検出することができる。また、特許文献1に記載の技術において用いられていた電気式センサ用の電源等を不要とすることができるため、簡単な構成により、かかる劣化を検出することができる。
【0089】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0090】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0091】
[付記]
[付記1]
鉄塔に敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号が示す前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記鉄塔の劣化を検出する劣化検出手段と、
を備える鉄塔劣化検出装置。
[付記2]
前記劣化検出手段は、前記鉄塔の構造的異常に基づく前記劣化を検出することを特徴とする付記1に記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記3]
前記構造的異常は、前記鉄塔におけるねじのゆるみ、前記鉄塔における塗装の剥がれ及び前記鉄塔における錆の発生のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする付記2に記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記4]
前記光信号受信手段は、複数本の前記鉄塔に敷設された前記光ファイバケーブルからの前記光信号を受信することを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記5]
前記劣化検出手段は、個々の前記鉄塔における前記劣化を検出することを特徴とする付記4に記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記6]
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする付記1から付記5のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記7]
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする付記1から付記5のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記8]
前記劣化検出手段による検出の結果を示す情報を出力する制御を実行する出力制御手段を備えることを特徴とする付記1から付記7のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出装置。
[付記9]
付記1から付記8のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出装置と、
前記光ファイバケーブルと、
を備える鉄塔劣化検出システム。
[付記10]
前記光ファイバケーブルは、架空地線の内部に設けられていることを特徴とする付記9に記載の鉄塔劣化検出システム。
[付記11]
前記光ファイバケーブルは、通信用又はセンシング用であることを特徴とする付記9に記載の鉄塔劣化検出システム。
[付記12]
光信号受信手段が、鉄塔に敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信して、
劣化検出手段が、前記光信号が示す前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記鉄塔の劣化を検出する
ことを特徴とする鉄塔劣化検出方法。
[付記13]
前記劣化検出手段は、前記鉄塔の構造的異常に基づく前記劣化を検出することを特徴とする付記12に記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記14]
前記構造的異常は、前記鉄塔におけるねじのゆるみ、前記鉄塔における塗装の剥がれ及び前記鉄塔における錆の発生のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする付記13に記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記15]
前記光信号受信手段は、複数本の前記鉄塔に敷設された前記光ファイバケーブルからの前記光信号を受信することを特徴とする付記12から付記14のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記16]
前記劣化検出手段は、個々の前記鉄塔における前記劣化を検出することを特徴とする付記15に記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記17]
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする付記12から付記16のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記18]
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする付記12から付記16のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記19]
出力制御手段が、前記劣化検出手段による検出の結果を示す情報を出力する制御を実行することを特徴とする付記12から付記18のうちのいずれか一つに記載の鉄塔劣化検出方法。
[付記20]
コンピュータを、
鉄塔に敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号が示す前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記鉄塔の劣化を検出する劣化検出手段と、
として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。
[付記21]
前記劣化検出手段は、前記鉄塔の構造的異常に基づく前記劣化を検出することを特徴とする付記20に記載の記録媒体。
[付記22]
前記構造的異常は、前記鉄塔におけるねじのゆるみ、前記鉄塔における塗装の剥がれ及び前記鉄塔における錆の発生のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする付記21に記載の記録媒体。
[付記23]
前記光信号受信手段は、複数本の前記鉄塔に敷設された前記光ファイバケーブルからの前記光信号を受信することを特徴とする付記20から付記22のうちのいずれか一つに記載の記録媒体。
[付記24]
前記劣化検出手段は、個々の前記鉄塔における前記劣化を検出することを特徴とする付記23に記載の記録媒体。
[付記25]
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする付記20から付記24のうちのいずれか一つに記載の記録媒体。
[付記26]
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする付記20から付記24のうちのいずれか一つに記載の記録媒体。
[付記27]
前記プログラムは、前記コンピュータを、前記劣化検出手段による検出の結果を示す情報を出力する制御を実行する出力制御手段として機能させることを特徴とする付記20から付記26のうちのいずれか一つに記載の記録媒体。
【符号の説明】
【0092】
1 鉄塔
2 光ファイバケーブル
3 光通信装置
4 フィルタユニット
5 鉄塔劣化検出装置
6 出力装置
11 光信号受信部
12 劣化検出部
13 出力制御部
21 コンピュータ
31 受信機
32 プロセッサ
33 メモリ
34 処理回路
100 鉄塔劣化検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16