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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】検出装置、検出システム及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241022BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241022BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01M99/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023503276
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008374
(87)【国際公開番号】W WO2022185469
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】依田 幸英
(72)【発明者】
【氏名】岩野 忠行
(72)【発明者】
【氏名】森 洸遥
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/010251(WO,A1)
【文献】特開2001-059719(JP,A)
【文献】特開2005-241431(JP,A)
【文献】特開2013-072800(JP,A)
【文献】特開2002-152937(JP,A)
【文献】国際公開第2020/255358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号が示す前記電柱又は前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記電柱又は前記鉄塔の周囲における工事の発生を検出する工事検出手段と、
前記振動パターンの時系列変化に基づいて前記光ファイバケーブルの劣化を検出する劣化検出手段と、
を備える検出装置
【請求項2】
前記劣化検出手段は、前記振動パターンを示す時間波形から算出された減衰時間及び前記振動パターンを示す周波数スペクトルから検出されたピーク周波数のいずれか一方と、基準値との比較結果に基づいて前記光ファイバケーブルの劣化を検出する、請求項1に記載された検出装置
【請求項3】
前記劣化検出手段は、前記基準値に対する前記減衰時間又は前記ピーク周波数の変化量に対応する前記光ファイバケーブルの劣化の程度を検出する、請求項2に記載された検出装置
【請求項4】
前記減衰時間に対応する前記基準値は、前記光ファイバケーブルの劣化検出対象箇所に劣化がない場合の振動パターンを示す時間波形における減衰時間であり、
前記ピーク周波数に対応する前記基準値は、前記光ファイバケーブルの劣化検出対象箇所に劣化がない場合の振動パターンを示す周波数スペクトルにおけるピーク周波数である、請求項2又は3に記載された検出装置
【請求項5】
前記工事検出手段により前記工事の発生が検出されたとき、アラートを出力する制御を実行する出力制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検出装置
【請求項6】
前記工事検出手段は、前記工事が発生しているエリアを検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検出装置
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の検出装置と、
前記光ファイバケーブルと、
を備える検出システム
【請求項8】
前記光ファイバケーブルは、架空地線の内部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の検出システム
【請求項9】
前記光ファイバケーブルは、通信用又はセンシング用であることを特徴とする請求項7に記載の検出システム
【請求項10】
光信号受信手段が、電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信して、
工事検出手段が、前記光信号が示す前記電柱又は前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記電柱又は前記鉄塔の周囲における工事の発生を検出し、
劣化検出手段が、前記振動パターンの時系列変化に基づいて前記光ファイバケーブルの劣化を検出する
ことを特徴とする検出方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工事検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
地上における電柱又は鉄塔の周囲にて工事が発生したとき、電柱又は鉄塔に敷設された架空電線が工事の影響を受けることがある。この結果、架空電線が破損することがある。
【0003】
これまでは、作業員が定期的に巡回をすることにより、架空電線が工事の影響を受けているか否かを確認していた。かかる確認の効率を良くする観点から、工事の発生に合わせて巡回をするのが好適である。
【0004】
ここで、地上における工事が行われる場合、原則、市町村に対する事前の届出がなされる。かかる届出がなされることにより、工事の発生場所及び工事の発生日時を事前に把握することができる。このため、工事の発生に合わせて巡回をすることができる。
【0005】
しかしながら、近年、かかる届出がなされない工事(いわゆる「無許可工事」)が多発している。無許可工事においては、工事の発生場所及び工事の発生日時を事前に把握することができない。このため、工事の発生に合わせて巡回をすることが困難である。
【0006】
そこで、届出の有無にかかわらず工事の発生を検出する技術が望まれている。特許文献1には、かかる技術の一例が開示されている。すなわち、特許文献1に記載の技術においては、地中に振動センサが設置される。かかる振動センサにより検出された振動に基づき、地上における工事の発生が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-59719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術においては、送電網又は配電網に沿うようにして地中に振動センサを設置することが要求される。このため、事前に大規模な設置作業が要求される問題があった。
【0009】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、地中における振動センサの設置を不要とした簡単な構成により、電柱又は鉄塔の周囲における工事の発生を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る工事検出装置の一形態は、電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、光信号が示す電柱又は鉄塔の振動パターンに基づき、電柱又は鉄塔の周囲における工事の発生を検出する工事検出手段と、を備えるものである。
【0011】
本開示に係る工事検出方法の一形態は、光信号受信手段が、電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信して、工事検出手段が、光信号が示す電柱又は鉄塔の振動パターンに基づき、電柱又は鉄塔の周囲における工事の発生を検出するものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、簡単な構成により電柱又は鉄塔の周囲における工事の発生を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、複数本の電柱を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。
図2図2は、第2実施形態に係る工事検出システムの要部を示すブロック図である。
図3図3は、第2実施形態に係る工事検出装置の要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、第2実施形態に係る工事検出装置の要部の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、第2実施形態に係る工事検出装置の要部の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、第2実施形態に係る工事検出装置の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、工事検出部により用いられる電柱情報の例を示す説明図である。
図8A図8Aは、周囲における工事の発生がない電柱の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図8B図8Bは、周囲における工事の発生がある電柱の振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図9A図9Aは、周囲における工事の発生がない電柱の振動パターンに対応する時間波形の例を示す説明図である。
図9B図9Bは、周囲における工事の発生がある電柱の振動パターンに対応する時間波形の例を示す説明図である。
図10図10は、アラートに用いられる画像の例を示す説明図である。
図11図11は、複数本の鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。
図12図12は、第2実施形態に係る他の工事検出システムの要部を示すブロック図である。
図13図13は、第2実施形態に係る他の工事検出装置の要部を示すブロック図である。
図14図14は、第3実施形態に係る工事検出システムの要部を示すブロック図である。
図15図15は、第3実施形態に係る工事検出装置の動作を示すフローチャートである。
図16A図16Aは、光ファイバケーブルの劣化がない場合における振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図16B図16Bは、光ファイバケーブルの劣化がある場合における振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図17A図17Aは、光ファイバケーブルの劣化がない場合における振動パターンに対応する時間波形の例を示す説明図である。
図17B図17Bは、光ファイバケーブルの劣化がある場合における振動パターンに対応する時間波形の例を示す説明図である。
図18図18は、機械学習に用いられるデータの例を示す説明図である。
図19図19は、機械学習に用いられる学習器の例を示す説明図である。
図20A図20Aは、過去の時点における振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図20B図20Bは、他の過去の時点における振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図20C図20Cは、現在の時点における振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図20D図20Dは、未来の時点における振動パターンに対応する周波数スペクトルの例を示す説明図である。
図21A図21Aは、第1実施形態に係る工事検出装置と複数本の電柱を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。
図21B図21Bは、第1実施形態に係る工事検出装置と複数本の鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図21A及び図21Bの各々は、第1実施形態に係る工事検出装置を示す説明図である。図21A及び図21Bを参照して、第1実施形態に係る工事検出装置について説明する。
【0016】
図21Aに示す如く、複数本の電柱1を介する架空方式により、光ファイバケーブル2が敷設されている。または、図21Bに示す如く、複数本の鉄塔7を介する架空方式により、光ファイバケーブル2が敷設されている。光ファイバケーブル2の一端部に工事検出装置5が設けられている。工事検出装置5は、以下のような機能を有する。
【0017】
すなわち、工事検出装置5は、光ファイバケーブル2に光信号を出力する。これにより、光ファイバケーブル2の内部にて後方散乱光が発生する。工事検出装置5は、当該発生した後方散乱光に対応する光信号を受信する。換言すれば、工事検出装置5は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する。当該受信された光信号には、個々の電柱1又は個々の鉄塔7の振動に応じて異なるパターンが含まれる。工事検出装置5は、当該受信された光信号を用いて、かかるパターンに基づき、個々の電柱1又は個々の鉄塔7の周囲における工事の発生を検出する。工事検出装置5の詳細については、第2実施形態にて後述する。
【0018】
このように、工事検出装置5を用いることにより、電柱1又は鉄塔7の周囲における工事の発生を検出することを目的とする。特に、地中における振動センサの設置を不要とした簡単な構成により、かかる工事の発生を検出することができる。
【0019】
[第2実施形態]
図1は、複数本の電柱を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルの架設例を示す説明図である。図2は、第2実施形態に係る工事検出システムの要部を示すブロック図である。図1及び図2を参照して、第2実施形態に係る工事検出システムについて説明する。
【0020】
図1に示す如く、N本の電柱1_1~1_Nを介する架空方式により、光ファイバケーブル2が敷設されている。ここで、Nは、2以上の整数である。図1に示す例においては、N=3である。電柱1_1~1_Nは、送電網又は配電網に含まれる。換言すれば、電柱1_1~1_Nは、送電用又は配電用である。光ファイバケーブル2は、通信用又はセンシング用である。なお、光ファイバケーブル2は、架空地線の内部に設けられたものであっても良い。すなわち、光ファイバケーブル2は、OPGW(Optical Fiber Composite Overhead Ground Wire)を用いたものであっても良い。
【0021】
以下、光ファイバケーブル2が通信用である場合の例を中心に説明する。光ファイバケーブル2は、光通信装置3による通信に用いられる(図2参照)。光通信装置3は、例えば、OPGW用の端末装置により構成されている。光通信装置3は、例えば、OPGW用の局舎に設置されている。
【0022】
図2に示す如く、工事検出システム100は、光ファイバケーブル2、フィルタユニット4、工事検出装置5及び出力装置6を備える。工事検出装置5は、光信号受信部11、工事検出部12及び出力制御部13を備える。
【0023】
フィルタユニット4は、光ファイバケーブル2と光通信装置3と工事検出装置5との間に設けられている。フィルタユニット4は、光通信装置3からの光信号が入力されたとき、当該入力された光信号を光ファイバケーブル2に出力する。また、フィルタユニット4は、光ファイバケーブル2からの光信号が入力されたとき、当該入力された信号光のうちの後方散乱光に対応する成分を分離して、工事検出装置5に出力する。フィルタユニット4は、波長フィルタ(より具体的には3ポートの波長分割多重フィルタ)を用いて構成される。かかる波長フィルタにおいて、光通信装置3から入力された光信号(特定の波長を有する。)は、工事検出装置5に出力されることなく、光ファイバケーブル2に出力される。他方、光ファイバケーブル2から入力された光信号のうちの他の特定の波長を有する成分(後方散乱光に対応する成分を含む。)は、光通信装置3に出力されることなく、工事検出装置5に出力される。このようにして、フィルタユニット4の機能が実現される。
【0024】
光信号受信部11は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する。より具体的には、上記のとおり、後方散乱光に対応する成分がフィルタユニット4により分離されて、当該分離された成分を含む光信号が光信号受信部11により受信される。
【0025】
工事検出部12は、光信号受信部11により受信された光信号を用いて、個々の電柱1の周囲における工事の発生を検出する。これにより、かかる工事が発生しているエリアが検出される。工事検出部12による検出方法の具体例については、図7図9Bを参照して後述する。
【0026】
出力制御部13は、工事検出部12により工事の発生が検出されたとき、アラートを出力する制御を実行する。アラートの出力には、出力装置6が用いられる。出力装置6は、例えば、表示装置、音声出力装置及び通信装置のうちの少なくとも一つを含む。表示装置は、例えば、ディスプレイを用いたものである。音声出力装置は、例えば、スピーカを用いたものである。通信装置は、例えば、専用の送信機及び受信機を用いたものである。
【0027】
すなわち、出力制御部13は、アラート用の画像を表示する制御を実行する。かかる画像の表示には、出力装置6のうちの表示装置が用いられる。または、出力制御部13は、アラート用の音声を出力する制御を実行する。かかる音声の出力には、出力装置6のうちの音声出力装置が用いられる。または、出力制御部13は、アラート用の信号を送信する制御を実行する。かかる信号の送信には、出力装置6のうちの通信装置が用いられる。アラート用の画像の具体例については、図10を参照して後述する。
【0028】
このようにして、工事検出システム100の要部が構成されている。
【0029】
以下、光信号受信部11を「光信号受信手段」ということがある。また、工事検出部12を「工事検出手段」ということがある。また、出力制御部13を「出力制御手段」ということがある。
【0030】
次に、図3図5を参照して、工事検出装置5の要部のハードウェア構成について説明する。
【0031】
図3図5の各々に示す如く、工事検出装置5は、コンピュータ21を用いたものである。コンピュータ21は、光通信装置3が設置された場所と同一の場所(例えばOPGW用の局舎)に設けられるものであっても良い。または、コンピュータ21は、他の場所(例えばクラウドネットワーク内)に設けられるものであっても良い。または、コンピュータ21のうちの一部の要素(より具体的には受信機31)が当該同一の場所に設けられるとともに、コンピュータ21のうちの残余の要素が当該他の場所に設けられるものであっても良い。
【0032】
図3に示す如く、コンピュータ21は、受信機31、プロセッサ32及びメモリ33を備える。メモリ33には、コンピュータ21を光信号受信部11、工事検出部12及び出力制御部13として機能させるためのプログラム(受信機31を光信号受信部11として機能させるためのプログラムを含む。)が記憶されている。プロセッサ32は、メモリ33に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これにより、光信号受信部11の機能F1、工事検出部12の機能F2及び出力制御部13の機能F3が実現される。
【0033】
または、図4に示す如く、コンピュータ21は、受信機31及び処理回路34を備える。処理回路34は、コンピュータ21を光信号受信部11、工事検出部12及び出力制御部13として機能させるための処理(受信機31を光信号受信部11として機能させるための処理を含む。)を実行する。これにより、機能F1~F3が実現される。
【0034】
または、図5に示す如く、コンピュータ21は、受信機31、プロセッサ32、メモリ33及び処理回路34を備える。この場合、機能F1~F3のうちの一部の機能がプロセッサ32及びメモリ33により実現されるとともに、機能F1~F3のうちの残余の機能が処理回路34により実現される。
【0035】
プロセッサ32は、1個以上のプロセッサにより構成されている。個々のプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はDSP(Digital Signal Processor)を用いたものである。
【0036】
メモリ33は、1個以上のメモリにより構成されている。個々のメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、MO(Magneto Optical)ディスク又はミニディスクを用いたものである。
【0037】
処理回路34は、1個以上の処理回路により構成されている。個々の処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)又はシステムLSI(Large Scale Integration)を用いたものである。
【0038】
なお、プロセッサ32は、機能F1~F3の各々に対応する専用のプロセッサを含むものであっても良い。メモリ33は、機能F1~F3の各々に対応する専用のメモリを含むものであっても良い。処理回路34は、機能F1~F3の各々に対応する専用の処理回路を含むものであっても良い。
【0039】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、工事検出装置5の動作について説明する。
【0040】
まず、光信号受信部11は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する(ステップST1)。次いで、工事検出部12は、当該受信された光信号を用いて、個々の電柱1の周囲における工事の発生を検出する(ステップST2)。次いで、出力制御部13は、かかる検出の結果に応じてアラートを出力する制御を実行する(ステップST3)。すなわち、出力制御部13は、ステップST2にて工事の発生が「ある」ことが検出された場合、アラートを出力する制御を実行する。
【0041】
次に、図7図8A及び図8Bを参照して、工事検出部12による検出方法の第1具体例について説明する。
【0042】
まず、光通信装置3がパルス状の光信号を出力する。当該出力された光信号は、フィルタユニット4を介して光ファイバケーブル2に入力される。かかる光信号が入力されることにより、光ファイバケーブル2の内部にて後方散乱光が発生する。上記のとおり、光信号受信部11により受信される光信号は、フィルタユニット4により分離されたものであり、当該発生した後方散乱光に対応する成分(以下「後方散乱光成分」という。)を含む。
【0043】
このとき、光信号受信部11により受信される光信号は、光ファイバケーブル2のうちの個々の電柱1に対応する位置にて発生した後方散乱光に対応する成分を含む。換言すれば、当該受信される光信号は、個々の電柱1に対応する後方散乱光成分を含む。かかる後方散乱光成分が受信されるタイミングは、対応する電柱1が設置された位置と、工事検出装置5が設置された位置(より具体的には受信機31が設置された位置)との距離Dに応じて異なる。ここで、距離Dは、光ファイバケーブル2に沿う経路距離である。
【0044】
ここで、光信号受信部11により受信される光信号に含まれる後方散乱光成分は、対応する電柱1の振動に応じて異なるパターン(以下「振動パターン」という。)を示す。換言すれば、当該受信される光信号は、個々の電柱1に対応する振動パターンを含む。工事検出部12による工事の発生の検出は、かかる振動パターンに基づくものである。
【0045】
すなわち、個々の電柱1の周囲にて工事が発生していないときは、周囲における環境振動が地面を介して当該電柱1に伝達される。他方、個々の電柱1の周囲にて工事が発生しているときは、かかる工事により発生した振動(例えば建設機械の動作により発生した振動)が地面を介して当該電柱1に伝達される。このため、個々の電柱1について、周囲にて工事が発生しているときの振動パターンは、周囲にて工事が発生していないときの振動パターンに対して変化する。具体的には、例えば、振動パターンを示す時間波形TWにおける減衰時間Tが変化する。または、例えば、振動パターンを示す周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数が変化する。このため、振動パターンに基づき、個々の電柱1の周囲における工事の発生を検出することができる。
【0046】
工事検出装置5(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、個々の電柱1に関する情報(以下「電柱情報」という。)が記憶されている。電柱情報は、個々の電柱1に対応する距離Dを示す情報(以下「距離情報」という。)を含む。また、電柱情報は、個々の電柱1を識別可能な情報(以下「識別情報」という。)を含む。識別情報は、例えば、個々の電柱1に割り当てられた識別子を含む。図7は、電柱情報の例を示している。
【0047】
工事検出装置5は、光通信装置3がパルス状の光信号を出力したタイミングを示す情報を取得する。かかる情報は、例えば、光通信装置3から取得される。工事検出部12は、当該取得された情報が示すタイミングと、光信号受信部11により後方散乱光成分が受信されたタイミングとの時間差を算出する。工事検出部12は、当該算出された時間差に基づき、かかる後方散乱光成分が発生した位置と受信機31が設置された位置との距離D’を算出する。ここで、距離D’は、光ファイバケーブル2に沿う経路距離である。
【0048】
工事検出部12は、当該算出された距離D’を、電柱情報に含まれる距離情報が示す個々の距離Dと比較する。これにより、工事検出部12は、上記受信された光信号に含まれる後方散乱光成分のうち、個々の電柱1に対応する後方散乱光成分を検出する。この結果、個々の電柱1に対応する振動パターンが検出される。より具体的には、個々の電柱1に対応する振動パターンを示す時間波形TWが検出される。
【0049】
次いで、工事検出部12は、当該検出された時間波形に対する高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を実行する。これにより、個々の電柱1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFSが算出される。
【0050】
図8Aは、周囲における工事の発生がない電柱1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFS_1のイメージを示している。他方、図8Bは、周囲における工事の発生がある電柱1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFS_2のイメージを示している。図8AにおけるP_1は、周波数スペクトルFS_1におけるピークを示している。図8BにおけるP_2は、周波数スペクトルFS_2におけるピークを示している。
【0051】
上記のとおり、対応する電柱1の周囲における工事の発生により、周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数が変化する。図8A及び図8Bに示す例において、周波数スペクトルFS_2におけるピーク周波数(図8B参照)は、周波数スペクトルFS_1におけるピーク周波数(図8A参照)と異なる値である。
【0052】
工事検出部12には、ピーク周波数に対する比較の対象となる基準値が設定されている。基準値は、周囲における工事の発生がない電柱1に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数と同等の値に設定されている。具体的には、例えば、基準値は、図8Aに示す周波数スペクトルFS_1におけるピーク周波数と同等の値に設定されている。
【0053】
工事検出部12は、上記算出された周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数を検出する。工事検出部12は、当該検出されたピーク周波数を、上記設定された基準値と比較する。これにより、工事検出部12は、対応する電柱1の周囲における工事の発生の有無を判定する。このようにして、個々の電柱1の周囲における工事の発生が検出される。
【0054】
また、工事検出装置5(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、個々の電柱1が設置された位置を含むエリアを示す情報が記憶されている。工事検出部12は、当該記憶された情報を用いて、周囲における工事の発生があると判定された電柱1が設置された位置を含むエリアを検出する。このようにして、工事が発生しているエリアが検出される。
【0055】
次に、図9A及び図9Bを参照して、工事検出部12による検出方法の第2具体例について説明する。
【0056】
工事検出部12は、第1具体例にて説明した検出方法と同様の検出方法により、個々の電柱1に対応する後方散乱光成分を検出する。この結果、個々の電柱1に対応する振動パターンが検出される。より具体的には、個々の電柱1に対応する振動パターンを示す時間波形TWが検出される。
【0057】
通常、周囲における工事の発生がない場合における振動パターンに対応する時間波形TWは、非周期的に発生するパルス状の波形を含む。これは、環境振動に基づくものである。図9Aは、周囲における工事の発生がない電柱1に対応する振動パターンを示す時間波形TW_1の例を示している。
【0058】
これに対して、周囲における工事の発生がある場合における振動パターンに対応する時間波形TWは、一定周期に発生するパルス状の波形を含む。これは、例えば、建設機械の動作により発生した振動に基づくものである。図9Bは、周囲における工事の発生がある電柱1に対応する振動パターンを示す時間波形TW_2の例を示している。
【0059】
そこで、工事検出部12は、上記検出された時間波形TWを解析することにより、一定周期に発生するパルス状の波形が含まれるか否かを判定する。かかるパルス状の波形が含まれる場合、工事検出部12は、対応する電柱1の周囲における工事の発生があると判定する。そうでない場合、工事検出部12は、対応する電柱1の周囲における工事の発生がないと判定する。このようにして、個々の電柱1の周囲における工事の発生が検出される。
【0060】
次いで、工事検出部12は、工事が発生しているエリアを検出する。かかるエリアの検出方法は、第1具体例にて説明したものと同様である。このため、再度の説明は省略する。
【0061】
次に、図10を参照して、アラート用の画像の具体例について説明する。
【0062】
図10は、アラート用の画像Iの例を示している。図10に示す如く、画像Iは、光ファイバケーブル2が敷設された地域を示す地図状の画像を含むものであっても良い。また、画像Iにおいては、光ファイバケーブル2のうち、周囲における工事の発生がある電柱1に対応する部位(図中X)の色が、他の部位の色と異なる色により表示されている。これにより、工事検出システム100のユーザは、当該地域における当該工事が発生している位置を視覚的に認識することができる。
【0063】
次に、工事検出システム100を用いることによる効果について説明する。
【0064】
第一に、上記のとおり、個々の電柱1の周囲における工事の発生を検出することができる。このとき、いわゆる「リモート」による検出を実現することができる。すなわち、個々の電柱1の周囲における工事の発生を検出するにあたり、作業員による巡回を不要とすることができる。また、届出の有無にかかわらず、かかる工事の発生を検出することができる。
【0065】
第二に、個々の電柱1の周囲における工事の発生を検出するにあたり、既設の光ファイバケーブル2(例えばOPGW用の光ファイバケーブル2)を用いることができる。これにより、かかる工事の発生を検出するための専用の光ファイバケーブルを不要とすることができる。この結果、かかる光ファイバケーブルを敷設する作業を不要とすることができる。
【0066】
第三に、特許文献1に記載の技術に比して、構成を簡単にすることができる。すなわち、特許文献1に記載の技術が個々の電柱1の周囲における工事の発生の検出に用いられたものとする。この場合、電柱1_1~1_Nを含む送電網又は配電網に沿うようにして、地中に振動センサを設置することが要求される。これに対して、工事検出システム100を用いることにより、かかる振動センサを不要とすることができる。このため、かかる振動センサを設置する作業(すなわち事前の大規模な設置作業)も不要とすることができる。
【0067】
次に、工事検出システム100の変形例について説明する。
【0068】
図1及び図2に示す例においては、光ファイバケーブル2の片端部に光通信装置3、フィルタユニット4及び工事検出装置5が設けられている。これに対して、光ファイバケーブル2の両端部の各々に光通信装置3、フィルタユニット4及び工事検出装置5が設けられているものであっても良い。
【0069】
次に、工事検出システム100の他の変形例について説明する。
【0070】
工事検出システム100は、1本の光ファイバケーブル2に代えて、複数本の光ファイバケーブル(不図示)を用いるものであっても良い。複数本の光ファイバケーブルは、例えば、電柱1_1~1_Nを含む送電網又は配電網における互いに異なる経路に沿うように設けられている。この場合、光信号受信部11は、複数本の光ファイケーブルの各々からの光信号を受信する。工事検出部12は、複数本の光ファイバケーブルの各々について、第1具体例又は第2具体例にて説明した処理と同様の処理を実行する。これにより、電柱1_1~1_Nの各々の周囲における工事の発生が検出される。
【0071】
次に、工事検出システム100の他の変形例について説明する。
【0072】
工事検出装置5は、市町村に対する工事の届出を示す情報(以下「届出情報」という。)を取得するものであっても良い。届出情報は、例えば、個々の工事が発生する予定の場所、及び個々の工事が発生する予定の日時を含む。
【0073】
工事検出装置5は、工事検出部12により工事の発生が検出されたとき、かかる工事が届出情報に含まれるか否かを判定するものであっても良い。これにより、工事検出装置5は、かかる工事が無許可工事であるか否かを判定するものであっても良い。換言すれば、工事検出装置5は、無許可工事の発生を検出するものであっても良い。
【0074】
次に、図11を参照して、工事検出システム100の他の変形例について説明する。
【0075】
図11に示す如く、光ファイバケーブル2は、M本の鉄塔7_1~7_Mを介する架空方式により敷設されているものであっても良い。ここで、Mは、2以上の整数である。図11に示す例においては、M=3である。鉄塔7_1~7_Mは、送電網又は配電網に含まれる。換言すれば、鉄塔7_1~7_Mは、送電用又は配電用である。
【0076】
この場合、工事検出部12は、個々の鉄塔7の周囲における工事の発生を検出する。この場合における工事検出部12による検出方法は、第1具体例又は第2具体例にて説明したものと同様である。このため、再度の説明は省略する。
【0077】
次に、図12を参照して、工事検出システム100の他の変形例について説明する。
【0078】
図12に示す如く、工事検出システム100は、光ファイバケーブル2及び工事検出装置5を備えるものであっても良い。換言すれば、光ファイバケーブル2及び工事検出装置5により、工事検出システム100の要部が構成されているものであっても良い。この場合、工事検出装置5は、光ファイバケーブル2にパルス状の光信号を出力する機能を有するものであっても良い。
【0079】
次に、図13を参照して、工事検出装置5の変形例について説明する。
【0080】
図13に示す如く、工事検出装置5は、光信号受信部11及び工事検出部12を備えるものであっても良い。換言すれば、光信号受信部11及び工事検出部12により、工事検出装置5の要部が構成されているものであっても良い。この場合、出力制御部13は、出力装置6に設けられているものであっても良い。この場合においても、上記のような効果を奏することができる。
【0081】
すなわち、光信号受信部11は、電柱1又は鉄塔7を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブル2からの光信号を受信する。工事検出部12は、光信号が示す電柱1又は鉄塔7の振動パターンに基づき、電柱1又は鉄塔7の周囲における工事の発生を検出する。これにより、個々の電柱1又は個々の鉄塔7の周囲における工事の発生を検出することができる。特に、リモートにより、かかる工事の発生を検出することができる。また、特許文献1に記載の技術において用いられていた振動センサを不要とすることができるため、簡単な構成により、かかる工事の発生を検出することができる。
【0082】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態に係る工事検出システムの要部を示すブロック図である。図14を参照して、第3実施形態に係る工事検出システムについて説明する。なお、図14において、図2に示すブロックと同様のブロックには同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
図14に示す如く、工事検出システム100aは、光ファイバケーブル2、フィルタユニット4、工事検出装置5a及び出力装置6を備える。工事検出装置5aは、光信号受信部11、工事検出部12、出力制御部13a及び劣化検出部14を備える。
【0084】
劣化検出部14は、光信号受信部11により受信された光信号を用いて、光ファイバケーブル2のうちの所定の地点に対応する部位(以下「劣化検出対象箇所」という。)の劣化を検出する。より具体的には、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の有無を検出するとともに、劣化検出対象箇所における劣化の程度を検出する。または、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の予兆を検出する。劣化検出部14による検出方法の具体例については、図16A図20Dを参照して後述する。
【0085】
出力制御部13aは、出力制御部13により実行される制御と同様の制御を実行する。すなわち、出力制御部13aは、工事検出部12により工事の発生が検出されたとき、アラートを出力する制御を実行する。
【0086】
これに加えて、出力制御部13aは、劣化検出部14による検出の結果を示す情報(以下「検出結果情報」という。)を出力する制御を実行する。検出結果情報の出力には、出力装置6が用いられる。すなわち、出力制御部13aは、検出結果情報を含む画像を表示する制御を実行する。かかる画像の表示には、出力装置6のうちの表示装置が用いられる。または、出力制御部13aは、検出結果情報に対応する音声を出力する制御を実行する。かかる音声の出力には、出力装置6のうちの音声出力装置が用いられる。または、出力制御部13aは、検出結果情報に対応する信号を送信する制御を実行する。かかる信号の送信には、出力装置6のうちの通信装置が用いられる。
【0087】
このようにして、工事検出システム100aの要部が構成されている。
【0088】
以下、出力制御部13aを「出力制御手段」ということがある。また、劣化検出部14を「劣化検出手段」ということがある。
【0089】
工事検出装置5aの要部のハードウェア構成は、第2実施形態にて図3図5を参照して説明したものと同様である。このため、詳細な説明は省略する。
【0090】
すなわち、光信号受信部11の機能F1、工事検出部12の機能F2、出力制御部13aの機能F3a及び劣化検出部14の機能F4は、プロセッサ32及びメモリ33により実現されるものであっても良い。または、機能F1,F2,F3a,F4は、処理回路34により実現されるものであっても良い。
【0091】
ここで、プロセッサ32は、機能F1,F2,F3a,F4の各々に対応する専用のプロセッサを含むものであっても良い。メモリ33は、機能F1,F2,F3a,F4の各々に対応する専用のメモリを含むものであっても良い。処理回路34は、機能F1,F2,F3a,F4の各々に対応する専用の処理回路を含むものであっても良い。
【0092】
次に、図15に示すフローチャートを参照して、工事検出装置5aの動作について、光信号受信部11、出力制御部13a及び劣化検出部14の動作を中心に説明する。なお、図15において、図6に示すステップと同様のステップには同一符号を付している。
【0093】
まず、光信号受信部11は、光ファイバケーブル2からの光信号を受信する(ステップST1)。次いで、劣化検出部14は、当該受信された光信号を用いて、光ファイバケーブル2の劣化を検出する(ステップST4)。より具体的には、劣化検出部14は、光ファイバケーブル2のうちの劣化検出対象箇所の劣化を検出する。次いで、出力制御部13aは、かかる検出の結果を示す情報(すなわち検出結果情報)を出力する制御を実行する(ステップST3a)。
【0094】
例えば、ステップST4にて、劣化が「ない」ことが検出されたものとする。この場合、ステップST3aにて、劣化が「ない」ことを示す検出結果情報が出力される。または、例えば、ステップST4にて、劣化が「ある」ことが検出されて、かかる劣化の程度が検出されたものとする。この場合、ステップST3aにて、劣化の発生が「ある」ことを示し、かつ、かかる劣化の程度(例えば2段階の値のうちのいずれかの値)を示す検出結果情報が出力される。
【0095】
次に、図16A及び図16Bを参照して、劣化検出部14による検出方法の第1具体例について説明する。第1具体例において、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の有無を検出するとともに、かかる劣化の程度を検出する。
【0096】
工事検出装置5a(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、劣化検出対象箇所に対応する距離Dを示す情報が記憶されている。劣化検出部14は、かかる情報を用いて、光信号受信部11により受信された光信号に含まれる後方散乱光成分のうちの劣化検出対象箇所に対応する後方散乱光成分を検出する。次いで、劣化検出部14は、当該検出された後方散乱光成分に含まれる特徴を検出する。より具体的には、劣化検出部14は、当該検出された後方散乱光成分に含まれる振動パターンを検出する。劣化検出部14による劣化の検出は、かかる特徴に基づくものである。
【0097】
すなわち、劣化検出対象箇所の劣化が発生することにより、劣化検出対象箇所における光学的特性が変化する。これにより、対応する後方散乱光成分に含まれる特徴が変化する。具体的には、例えば、振動パターンを示す時間波形TWにおける減衰時間Tが変化する。また、例えば、振動パターンを示す周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数が変化する。このため、振動パターンに基づき、劣化検出対象箇所の劣化を検出することができる。
【0098】
また、このとき、振動パターンの変化量(例えば減衰時間Tの変化量又はピーク周波数の変化量)は、劣化の程度に応じて異なるものとなる。より具体的には、劣化の程度が大きいほど、変化量が大きい値となる。このため、振動パターンに基づき、劣化検出対象箇所における劣化の程度を検出することができる。
【0099】
劣化検出部14は、上記検出された振動パターンを示す時間波形TWに対するFFT(Fast Fourier Transform)を実行する。これにより、劣化検出対象箇所に対応する振動パターンを示す周波数スペクトルFSが算出される。
【0100】
図16Aは、光ファイバケーブル2(より具体的には劣化検出対象箇所)の劣化がない場合における振動パターンを示す周波数スペクトルFS_3のイメージを示している。他方、図16Bは、かかる劣化がある場合における振動パターンを示す周波数スペクトルFS_4のイメージを示している。図16AにおけるP_3は、周波数スペクトルFS_3におけるピークを示している。図16BにおけるP_4は、周波数スペクトルFS_4におけるピークを示している。
【0101】
上記のとおり、劣化検出対象箇所の劣化が発生することにより、周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数が変化する。図16A及び図16Bに示す例において、周波数スペクトルFS_4におけるピーク周波数(図16B参照)は、周波数スペクトルFS_3におけるピーク周波数(図16A参照)と異なる値である。
【0102】
劣化検出部14には、ピーク周波数に対する比較の対象となる基準値が設定されている。基準値は、劣化検出対象箇所の劣化がない場合における振動パターンを示す周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数と同等の値に設定されている。具体的には、例えば、基準値は、図16Aに示す周波数スペクトルFS_3におけるピーク周波数と同等の値に設定されている。
【0103】
劣化検出部14は、上記算出された周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数を検出する。劣化検出部14は、当該検出されたピーク周波数を、上記設定された基準値と比較する。これにより、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の有無を判定する。このようにして、劣化検出対象箇所における劣化の有無が検出される。
【0104】
また、上記のとおり、劣化検出対象箇所における劣化の程度により、対応する周波数スペクトルFSにおけるピーク周波数の変化量が異なるものとなる。そこで、工事検出装置5a(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、劣化の程度を示す値(例えば2段階の値)とピーク周波数の変化量を示す値との対応関係を示す情報が記憶されている。劣化検出部14は、上記設定された基準値に対する上記検出されたピーク周波数の変化量を算出する。劣化検出部14は、当該記憶された情報を用いて、当該算出された変化量に対応する劣化の程度を判定する。これにより、劣化検出対象箇所における劣化の程度が検出される。
【0105】
次に、図17A及び図17Bを参照して、劣化検出部14による検出方法の第2具体例について説明する。第2具体例において、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の有無を検出するとともに、かかる劣化の程度を検出する。
【0106】
劣化検出部14は、第1具体例にて説明した検出方法と同様の検出方法により、劣化検出対象箇所に対応する後方散乱光成分に含まれる特徴を検出する。より具体的には、劣化検出部14は、かかる後方散乱光成分に含まれる振動パターンを検出する。
【0107】
ここで、当該検出された振動パターンに対応する時間波形TWにパルス状の波形が含まれるとき、劣化検出対象箇所における劣化の有無に応じて、かかるパルスの減衰時間Tが異なる値となる。また、かかる劣化の程度に応じて、かかるパルスの減衰時間Tの変化量が異なる値となる。これは、第1具体例にて説明したとおりである。
【0108】
図17Aは、光ファイバケーブル2(より具体的には劣化検出対象箇所)の劣化がない場合における振動パターンを示す時間波形TW_3のイメージを示している。他方、図17Bは、かかる劣化がある場合における振動パターンを示す時間波形TW_4のイメージを示している。図17AにおけるT_3は、時間波形TW_3におけるパルスの減衰時間を示している。図17BにおけるT_4は、時間波形TW_4におけるパルスの減衰時間を示している。
【0109】
劣化検出部14には、減衰時間Tに対する比較の対象となる基準値が設定されている。基準値は、劣化検出対象箇所の劣化がない場合における振動パターンを示す時間波形TWにおける減衰時間Tと同等の値に設定されている。具体的には、例えば、基準値は、図17Aに示す時間波形TW_3における減衰時間T_3と同等の値に設定されている。
【0110】
劣化検出部14は、上記検出された振動パターンに対応する時間波形TWにパルス状の波形が含まれるとき、かかるパルスの減衰時間Tを算出する。劣化検出部14は、当該算出された減衰時間Tを、上記設定された基準値と比較する。これにより、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の有無を検出する。
【0111】
また、工事検出装置5a(より具体的にはメモリ33又は処理回路34の記憶領域)には、劣化の程度を示す値(例えば2段階の値)と減衰時間Tの変化量を示す値との対応関係を示す情報が記憶されている。劣化検出部14は、上記設定された基準値に対する上記算出された減衰時間Tの変化量を算出する。劣化検出部14は、当該記憶された情報を用いて、当該算出された変化量に対応する劣化の程度を判定する。これにより、劣化検出対象箇所における劣化の程度が検出される。
【0112】
次に、図18及び図19を参照して、劣化検出部14による検出方法の第3具体例について説明する。第3具体例において、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の有無を検出するとともに、かかる劣化の程度を検出する。
【0113】
第3具体例は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いるものである。より具体的には、第3具体例は、教師あり学習により生成された学習済みモデルを用いるものである。以下、かかる機械学習について説明する。
【0114】
第一に、機械学習に用いられる訓練入力データとして、複数の振動パターンを示すデータ(以下「振動データ」という。)が用意される。劣化検出対象箇所における個々の劣化状態に対応する振動パターンを含む。第二に、機械学習に用いられる教師データ(すなわち正解データ)として、振動データに含まれる個々の振動パターンに対応する劣化状態を示すデータが用意される。図18は、これらのデータ(初期訓練データ)の例を示している。
【0115】
図18に例示される初期訓練データのうちの複数の振動データが専用の学習器に入力される(図19参照)。学習器は、これらの振動データを訓練入力データとして用いた機械学習を実行することにより、学習済みモデルを生成する。例えば、学習器は、個々の振動パターンを示す訓練入力データを受け付ける。学習器は、かかる訓練入力データに対して、機械学習を実行し、所定の精度で正解データが得られるまで、学習処理を繰り返す。この結果、劣化検出対象箇所に対応する学習済みパターンが生成される。次に、学習器は、新規の振動データである入力データを、学習済みパターンの入力データとして用いて、劣化検出対象箇所における劣化の有無及び劣化の程度を分類する。その結果、学習器は、劣化検出対象箇所における劣化の有無及び劣化の程度を示す情報を出力する。図19は、学習器における機械学習の学習処理と分類処理の例を示している。このようにして、学習済みモデルが生成される。
【0116】
なお、学習器における機械学習には、公知の種々の技術、例えば、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)またはニューラルネットワークを用いることができる。これらの技術についての詳細な説明は省略する。
【0117】
劣化検出部14は、光信号受信部11により受信された光信号を用いて、劣化検出対象箇所に対応する振動パターンを検出する(第1具体例参照)。劣化検出部14は、当該検出された振動パターンを示すデータを生成する。ここで、劣化検出部14は、上記生成された学習済みモデルを備える。劣化検出部14は、当該生成されたデータを、かかる学習済みモデルに入力する。これに対して、かかる学習済みモデルは、劣化検出対象箇所における劣化の有無及び劣化の程度を示す情報を出力する。これにより、劣化検出対象箇所おける劣化の有無が検出されるとともに、かかる劣化の程度が検出される。
【0118】
次に、図20A図20Dを参照して、劣化検出部14による検出方法の第4具体例について説明する。第4具体例において、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所における劣化の予兆を検出する。
【0119】
劣化検出部14は、第1具体例によるピーク周波数の検出を定期的に実行する。これにより、例えば、複数個の過去の時点におけるピーク周波数、及び現在の時点におけるピーク周波数が検出されたものとする。図20Aは、過去の時点(例えば2年前)における周波数スペクトルの例を示している。図20Bは、他の過去の時点(例えば1年前)における周波数スペクトルの例を示している。図20Cは、現在の時点(例えば今年)における周波数スペクトルの例を示している。図20AにおけるP_P_1は、周波数スペクトルにおけるピークを示している。図20BにおけるP_P_2は、周波数スペクトルにおけるピークを示している。図20CにおけるP_Cは、周波数スペクトルにおけるピークを示している。
【0120】
劣化検出部14は、これらのピーク周波数に基づき、未来の時点におけるピーク周波数を予測する。かかる予測には、例えば、最小二乗法が用いられる。図20Dは、未来の時点(例えば来年)における周波数スペクトルの例を示している。図20DにおけるP_Fは、周波数スペクトルにおけるピークを示している。
【0121】
劣化検出部14は、当該予測されたピーク周波数を、第1具体例における基準値と同様の基準値と比較する。これにより、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所について、未来の時点における劣化の有無を予測するとともに、未来の時点における劣化の程度を予測する。
【0122】
例えば、未来の時点における劣化があると予測されたものとする。この場合、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所について、劣化の予兆があると判定する。他方、未来の時点における劣化がないと予測されたものとする。この場合、劣化検出部14は、劣化検出対象箇所について、劣化の予兆がないと判定する。このようにして、劣化検出対象箇所における劣化の予兆が検出される。
【0123】
次に、工事検出システム100aを用いることによる効果について説明する。
【0124】
工事検出システム100aを用いることにより、個々の電柱1又は個々の鉄塔7の周囲における工事の発生を検出することができるのはもちろんのこと、光ファイバケーブル2(より具体的には劣化検出対象地点)の劣化を検出することができる。すなわち、光ファイバケーブル2のうちの任意の地点に対応する部位における劣化を検出することができる。このとき、リモートによる検出を実現することができる。また、特許文献1に記載の技術に比して、簡単な構成による検出を実現することができる。
【0125】
次に、工事検出システム100aの変形例について説明する。
【0126】
劣化検出部14は、互いに異なる距離Dに対応する複数個の劣化検出対象地点について、当該複数個の劣化検出対象地点の各々の劣化を検出するものであっても良い。
【0127】
次に、工事検出システム100aの他の変形例について説明する。また、工事検出装置5aの変形例について説明する。
【0128】
工事検出システム100aは、第2実施形態にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。例えば、工事検出システム100aは、図12に示す例と同様に、フィルタユニット4及び出力装置6を含まないものであっても良い。すなわち、光ファイバケーブル2及び工事検出装置5aにより工事検出システム100aの要部が構成されているものであっても良い。
【0129】
工事検出装置5aは、第2実施形態にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。例えば、工事検出装置5aは、図13に示す例と同様に、出力制御部13aを含まないものであっても良い。すなわち、光信号受信部11、工事検出部12及び劣化検出部14により工事検出装置5aの要部が構成されているものであっても良い。
【0130】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0131】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0132】
[付記]
[付記1]
電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号が示す前記電柱又は前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記電柱又は前記鉄塔の周囲における工事の発生を検出する工事検出手段と、
を備える工事検出装置。
[付記2]
前記工事検出手段により前記工事の発生が検出されたとき、アラートを出力する制御を実行する出力制御手段を備えることを特徴とする付記1に記載の工事検出装置。
[付記3]
前記工事検出手段は、前記工事が発生しているエリアを検出することを特徴とする付記1又は付記2に記載の工事検出装置。
[付記4]
前記光信号に含まれる特徴に基づき、前記光ファイバケーブルの劣化を検出する劣化検出手段を備えることを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の工事検出装置。
[付記5]
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする付記4に記載の工事検出装置。
[付記6]
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする付記4に記載の工事検出装置。
[付記7]
付記1から付記6のうちのいずれか一つに記載の工事検出装置と、
前記光ファイバケーブルと、
を備える工事検出システム。
[付記8]
前記光ファイバケーブルは、架空地線の内部に設けられていることを特徴とする付記7に記載の工事検出システム。
[付記9]
前記光ファイバケーブルは、通信用又はセンシング用であることを特徴とする付記7に記載の工事検出システム。
[付記10]
光信号受信手段が、電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信して、
工事検出手段が、前記光信号が示す前記電柱又は前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記電柱又は前記鉄塔の周囲における工事の発生を検出する
ことを特徴とする工事検出方法。
[付記11]
出力制御手段が、前記工事検出手段により前記工事の発生が検出されたとき、アラートを出力する制御を実行することを特徴とする付記10に記載の工事検出方法。
[付記12]
前記工事検出手段は、前記工事が発生したエリアを検出することを特徴とする付記10又は付記11に記載の工事検出方法。
[付記13]
劣化検出手段が、前記光信号に含まれる特徴に基づき、前記光ファイバケーブルの劣化を検出することを特徴とする付記10から付記12のうちのいずれか一つに記載の工事検出方法。
[付記14]
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする付記13に記載の工事検出方法。
[付記15]
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする付記13に記載の工事検出方法。
[付記16]
コンピュータを、
電柱又は鉄塔を介する架空方式により敷設された光ファイバケーブルからの光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号が示す前記電柱又は前記鉄塔の振動パターンに基づき、前記電柱又は前記鉄塔の周囲における工事の発生を検出する工事検出手段と、
として機能させるためのプログラムを記録した記録媒体。
[付記17]
前記プログラムは、前記コンピュータを、前記工事検出手段により前記工事の発生が検出されたとき、アラートを出力する制御を実行する出力制御手段として機能させることを特徴とする付記16に記載の記録媒体。
[付記18]
前記工事検出手段は、前記工事が発生したエリアを検出することを特徴とする付記16又は付記17に記載の記録媒体。
[付記19]
前記プログラムは、前記コンピュータを、前記光信号に含まれる特徴に基づき、前記光ファイバケーブルの劣化を検出する劣化検出手段として機能させることを特徴とする付記16から付記18のうちのいずれか一つに記載の記録媒体。
[付記20]
前記劣化検出手段は、前記劣化の有無を検出するとともに、前記劣化の程度を検出することを特徴とする付記19に記載の記録媒体。
[付記21]
前記劣化検出手段は、前記劣化の予兆を検出することを特徴とする付記19に記載の記録媒体。
【符号の説明】
【0133】
1 電柱
2 光ファイバケーブル
3 光通信装置
4 フィルタユニット
5,5a 工事検出装置
6 出力装置
7 鉄塔
11 光信号受信部
12 工事検出部
13,13a 出力制御部
14 劣化検出部
21 コンピュータ
31 受信機
32 プロセッサ
33 メモリ
34 処理回路
100,100a 工事検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B