(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ケース及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H05K13/02 D
(21)【出願番号】P 2023522321
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016812
(87)【国際公開番号】W WO2022244537
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021083810
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中川 聖之
(72)【発明者】
【氏名】岩本 耕一
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-156448(JP,A)
【文献】特開平09-283987(JP,A)
【文献】特開2002-274593(JP,A)
【文献】特開2012-070861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を収容する収容空間、及び前記収容空間に対して部品を出し入れするための開口を有するケース本体と、
前記ケース本体にスライド可能に設けられ、スライドすることにより前記開口を開閉するシャッター部材と、
前記ケース本体に、前記シャッター部材のスライド方向に沿って当該シャッター部材と相対的にスライド可能であり、前記ケース本体における前記シャッター部材の外に重畳可能に配置される第1の板状部を含むスライド部材と、を備え、
前記シャッター部材が前記
開口を閉じている状態において、前記スライド部材は前記シャッター部材と一体にスライド可能なように当該シャッター部材に対して重畳して配置される、ケース。
【請求項2】
前記スライド部材の前記第1の板状部には、前記シャッター部材を外部に露出させる操作孔が設けられている、請求項1に記載のケース。
【請求項3】
前記シャッター部材は、0.1mm以上0.5mm以下の厚みを有するフィルム状の部材である、請求項1または2に記載のケース。
【請求項4】
前記シャッター部材には、前記操作孔に連通可能な貫通孔が設けられている、請求項2に記載のケース。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記第1の板状部との間に前記シャッター部材を挟んで当該シャッター部材の内側に配置される第2の板状部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のケース。
【請求項6】
請求項2に記載のケースの使用方法であって、
前記操作孔に通した操作ピンを前記シャッター部材に貫通させ、当該操作ピンを前記シャッター部材の開方向に移動させて前記スライド部材及び前記シャッター部材を連動してスライドさせることにより、前記シャッター部材で閉じられていた前記開口を開く、ケースの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ部品等の電子部品を収容するケース及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を基板に実装する際、電子部品を基板上の所定位置に実装する実装装置が用いられる。このような実装装置には、電子部品を個別に供給する必要がある。例えば特許文献1には、バラの状態の複数の電子部品をまとめて収容し、底部の取出口から自重によって電子部品をフィーダに落下させるケースが開示されている。当該ケースにおいては、上方に開く開口(補充口)から電子部品が収容され、その開口は開閉蓋により開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のケースにおいては、ケース内への異種類の電子部品の混入や、ケースからの不正規な電子部品の抜き取りといった不都合な事態を抑える必要性が生じる場合がある。そのためには、ケース内への電子部品の出し入れ口となる開口を容易に開けることができない構成が求められる。しかしながら上記特許文献1に開示されるケースにおいては、開口は開閉蓋により単に開閉される構成が開示されるのみであり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、ケース内への部品の出し入れ口となる開口を容易に開けることができないケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るケースは、複数の部品を収容する収容空間、及び前記収容空間に対して部品を出し入れするための開口を有するケース本体と、前記ケース本体にスライド可能に設けられ、スライドすることにより前記開口を開閉するシャッター部材と、前記ケース本体に、前記シャッター部材のスライド方向に沿って当該シャッター部材と相対的にスライド可能であり、前記ケース本体における前記シャッター部材の外に重畳可能に配置される第1の板状部を含むスライド部材と、を備え、前記シャッター部材が前記排出口を閉じている状態において、前記スライド部材は前記シャッター部材と一体にスライド可能なように当該シャッター部材に対して重畳して配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケース内への部品の出し入れ口となる開口を容易に開けることができないケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るケースの内部を一側方から見た図である。
【
図4】実施形態に係るケースの前側部分の内部を示す拡大側面図であって、ケースの排出口がシャッター部材で閉じられている状態を示す図である。
【
図5】実施形態に係るケースが備えるスライド部材の配置構造を示す側断面図である。
【
図6】実施形態に係るケースの前側部分の内部を示す拡大側面図であって、ケースの排出口がシャッター部材で開口している状態を示す図である。
【
図7】実施形態に係るケースの前壁部及び排出口の周辺を示す拡大側面図であって、ケースの排出口がシャッター部材で閉じられている状態を示す図である。
【
図8A】実施形態に係るケースが備えるシャッター部材とスライド部材との配置関係を示す側断面図であって、シャッター部材で閉じられている出荷時の状態を示す図である。
【
図8B】実施形態に係るケースが備えるシャッター部材が、スライド部材の操作孔に連通する貫通孔を有する形態を示す側断面図である。
【
図9】実施形態に係るケースが備えるシャッター部材とスライド部材との配置関係を示す側断面図であって、シャッター部材で閉じられ、かつ、スライド部材が後方にスライドした場合を示す図である。
【
図10】実施形態に係るケースの前側部分の内部を示す拡大側面図であって、ケースの排出口を開ける場合の使用方法の一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係るケースの前壁部及び排出口の周辺を示す拡大側面図であって、ケースの排出口が開口している状態を示す図である。
【
図12A】実施形態に係るケースが備えるスライド部材に形成される操作孔の他の形状例を示す図であって、矩形状の操作孔を示している。
【
図12B】実施形態に係るケースが備えるスライド部材に形成される操作孔の他の形状例を示す図であって、円筒形状の操作孔を示している。
【
図12C】実施形態に係るケースが備えるスライド部材に形成される操作孔の他の形状例を示す図であって、星形形状の操作孔を示している。
【
図13】実施形態に係るケースが備えるスライド部材をスライドさせるピンの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るケース1の内部を一側方から見た図、
図2はケース1を前方から見た正面図、
図3はケース1の底面図である。
図4はケース1の前側部分の内部を示す拡大側面図である。
【0010】
図1に示すように、ケース1は、その内部に、部品としての複数の電子部品Mをバラの状態で収容する。複数の電子部品Mを収容したケース1は、不図示のフィーダにセットされ、そのフィーダが振動することによって電子部品Mがケース1内から排出されて実装装置等に供給される。本実施形態の電子部品Mは、例えば長手方向の長さが1.2mm以下の微小な直方体状の電子部品である。そのような電子部品としては、コンデンサやインダクタ等が挙げられるが、本実施形態はこれらに限定されない。
【0011】
なお、
図1、
図2及び
図3のいずれかに記載の矢印X、矢印Y、矢印Zは、上記フィーダにセットされた状態でのケース1の左右方向、前後方向、上下方向をそれぞれ示している。そして、左右方向Xにおいて左方をX1、右方をX2、前後方向Yにおいて前方をY1、後方をY2、上下方向Zにおいて上方をZ1、下方をZ2で示している。
図4~
図11においても、これら左右方向X、前後方向Y、上下方向Zのいずれかを同様に適用している。以下の説明における左右方向、前後方向、上下方向のそれぞれは、上記の矢印で示す方向に基づく。
【0012】
図1に示すように、ケース1は、複数の電子部品Mを収容するケース本体10と、ケース本体10の排出口19を開閉するシャッター部材30と、シャッター部材30をスライドさせるために操作されるスライド部材35と、を備える。排出口19は、開口の一例である。
【0013】
図2及び
図3に示すように、ケース本体10は、第1部材2及び第2部材3が左右に分割される。第1部材2及び第2部材3が合体し、互いに接合されてケース本体10が構成される。
【0014】
図1は、左側の第1部材2が無い状態であって、右側の第2部材3の内部を示す。ケース本体10は、前後方向に長く、左右方向の厚みが薄い偏平箱状の形状を有する。以下の説明では、必要な場合を除いて、第1部材2及び第2部材3を個別に説明せず、第1部材2と第2部材3とが接合された状態での構成を説明する。
【0015】
ケース本体10は、複数の電子部品Mをバラの状態で収容する収容空間11を有する。ケース本体10は、前後方向に延在する天板部12及び底板部13と、上下方向に延在する前壁部14及び後壁部15と、左右一対の側壁部16と、ケース本体10の内部を上下に仕切る傾斜板部17と、を有する。後壁部15は、外面を形成する外側後壁部15aと、外側後壁部の前方の内側後壁部15bとを含む。
【0016】
排出口19は、収容空間11に対して電子部品Mを出し入れするための開口である。排出口19は、前壁部14の下部に設けられている。
図2に示すように、排出口19は、矩形状に形成されている。なお、排出口19は矩形に限定されず、例えば円形状、楕円形状等の開口部でもよい。排出口19は、後述するシャッター部材30により開閉される。
なお、
図1は、収容空間11に所定数の電子部品Mが収容されて排出口19がシャッター部材30で閉じられた出荷時の状態のケース1を示している。
【0017】
傾斜板部17は、左右の側壁部16の間に延び、かつ、内側後壁部15bから排出口19の下部にわたって延びる板部材である。傾斜板部17は、ケース本体10の内部の上下方向中央よりも下側に配置されている。ケース本体10の内部において、傾斜板部17の上側が収容空間11となっており、下側が下側空間18となっている。
【0018】
傾斜板部17は、排出口19に向かって下り勾配で傾斜しており、その上面は排出口19に向かって下り勾配で傾斜する傾斜面17aとなっている。本実施形態において傾斜面17aの傾斜角度θ1は、ケース1が上記フィーダにセットされたときの水平方向に対して10°程度である。傾斜面17aの傾斜角度θ1は、3°以上10°以下が好ましい。なお、傾斜面17aの傾斜角度θ1は、上記フィーダの振動条件等に応じて、適宜調整される。
【0019】
図1に示すように、下側空間18の後部には、前後方向に長い帯状のRFIDタグ27が配置されている。RFIDタグ27は、例えばシール状に構成されて底板部13の上面に貼着される。RFIDタグ27は、送受信部、メモリ及びアンテナ等を有する公知の構成を備えるものである。例えば、ケース1がセットされる上記フィーダには、RFIDタグ27に対して情報を読み書きするリーダーライタが配置される。
【0020】
ケース本体10は、上側把持部28A及び後側把持部28Bを有する。上側把持部28Aは、ケース本体10の上側の前後両端に設けられた前後一対の窪みである。後側把持部28Bは、ケース本体10の後側の上下の両端に設けられた上下一対の窪みである。上側把持部28A及び後側把持部28Bのそれぞれは、例えばロボットハンドによりケース1を運搬する際などにおいて、そのロボットハンドに把持される。
【0021】
図1に示すように、ケース本体10は、上記フィーダに着脱可能にセットするための複数の爪部を底面に有する。本実施形態では、第1爪部61、第2爪部62及び第3爪部63が、底面に前後方向に間隔をおいて設けられている。第1爪部61、第2爪部62及び第3爪部63のそれぞれは、ケース本体10に一体に成形されている。第1爪部61及び第2爪部62のそれぞれは、上下左右に沿う面内での断面において逆T字状をなすT字スロットで構成されている。第3爪部63は、後方に延在する側面視がL字状の板片部である。
【0022】
シャッター部材30は、スライドすることにより排出口19を開閉する。シャッター部材30は、底板部13から前壁部14にわたって連続して延びており、その延在方向に沿ってスライド可能となっている。シャッター部材30は、細長い帯状のフィルム部材である。シャッター部材30は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)等の、ある程度剛性を有し、かつ、湾曲可能な可撓性の材料からなる。このようなフィルム状の部材からなるシャッター部材30の厚みは限定されないが、例えば0.1mm以上0.5mm以下の厚みを有することが好ましい。シャッター部材30の幅は、排出口19の幅より若干大きく、排出口19を隙間なく覆うことができる幅を有する。
図1及び
図2に示すように、シャッター部材30の前端部には、排出口19と略同形の開口部31が設けられている。
【0023】
シャッター部材30は、ケース本体10が備える下側ガイド部5及び上側ガイド部4に沿ってスライド可能となっている。下側ガイド部5は、底板部13の上方に配置され、上側ガイド部4は、排出口19の上方に配置されている。シャッター部材30は、その後側が下側ガイド部5に沿って概ね水平方向にスライドし、その前側が上側ガイド部4に沿って上下方向にスライドする。下側ガイド部5及び上側ガイド部4のそれぞれは、シャッター部材30の面方向を左右方向に沿った状態に保持しながらシャッター部材30をスライド可能に保持する通路を形成している。
【0024】
図4に示すように、下側ガイド部5は、排出口19の下方に配置された第1下側ガイド部51と、第1下側ガイド部51の後方に配置された第2下側ガイド部52と、を含む。
【0025】
第2下側ガイド部52は、傾斜板部17の前端部において下方に突出形成された凸部17cと、底板部13との間に形成される隙間で構成される。第1下側ガイド部51は、傾斜板部17の前端面17bと、底板部13の前端部29とにより構成される。
【0026】
シャッター部材30の後側の部分は、第2下側ガイド部52において凸部17cと底板部13との間の隙間を通過する。これにより、シャッター部材30の後側の部分は、底板部13の直上において前後方向にスライドする。第1下側ガイド部51において、シャッター部材30は、前後方向に凹状に湾曲する底板部13の前端部29に沿ってスライドし、さらに傾斜板部17の前端面17bに沿ってスライドすることにより、水平方向から概ね90°の角度で上に向けて屈曲し、上下方向に延びる姿勢に転換する。
【0027】
図4に示すように、上側ガイド部4は、前壁部14に形成された上下方向に延びるガイドスリット41を含む。シャッター部材30の前端部は前壁部14の下端からガイドスリット41内に挿入されており、ガイドスリット41内を上下方向に沿って摺動する。
【0028】
スライド部材35は、シャッター部材30をスライドさせて排出口19の開閉動作を行うための部材である。
図1及び
図4に示すように、シャッター部材30の後端部に、スライド部材35が配置されている。
【0029】
図4に示すように、ケース本体10の底板部13は、その前側に突出板部21を有する。突出板部21は、下方に突出し、かつ前後方向に延在している。突出板部21には、前後方向に延在する長孔21aが設けられている。突出板部21の上方には、突出板部21との間に所定のスペース22を空けてプレート部26が配置されている。プレート部26は突出板部21と略平行であり、底板部13と一体に成形されている。スペース22は、突出板部21、プレート部26及び左右の側壁部16に囲まれている。スライド部材35は、スペース22内に配置されている。プレート部26の前端部には、下方に突出する前側凸部26aが設けられている。プレート部26の後端部には、下方に突出する後側凸部26bが設けられている。
【0030】
スライド部材35は、前後方向に長い長方形状の板片である。スライド部材35には、上下方向に貫通する操作孔36が形成されている。実施形態の操作孔36は、
図3に示すように長径方向が前後方向に沿った楕円状の長孔であるが、操作孔36の断面形状は楕円状に限定されない。例えば
図12Aに示すように矩形状であってもよい。操作孔36は、ケース本体10の長孔21aに連通しており、長孔21aを通して外部に露出している。
なお、操作孔36が設けられていない形態であってもよい。
【0031】
図5に示すように、スライド部材35の上下方向の中間には、前後方向に沿って延在するスリット37が形成されている。スリット37に、シャッター部材30の後端部が挿入される。スリット37は、少なくともスライド部材35の前側に開口しており、後側には開口していない。スリット37は、スライド部材35の左右の側方に開口していてもよい。シャッター部材30の後端部は、スリット37の前端開口37aからスリット37に挿入されている。
【0032】
スリット37の前後方向の長さは、スライド部材35の前後方向の長さの概ね90%前後程度が好ましい。その場合、スリット37の後端37bとスライド部材35の後端面35bとの間の肉厚部分35cの前後方向長さは、スライド部材35の前後方向長さの概ね10%前後程度となる。なお、スリット37の長さはこれに限定されないが、スライドするシャッター部材30の後端部が常にスリット37内に挿入されている状態が保持される長さが必要とされる。
【0033】
スライド部材35は、スリット37の下側、すなわちケース本体10におけるスリット37の外側に配置される第1の板状部38と、スリット37の上側、すなわちケース本体10におけるスリット37の内側に配置される第2の板状部39と、を含み、第1の板状部38と第2の板状部39は一体となって形成される。スリット37に挿入されるシャッター部材30の後端部は、下側(外側)の第1の板状部38と上側(内側)の第2の板状部39との間に挟まれた状態となる。
【0034】
スライド部材35は、スペース22内に、前後方向に移動可能に配置されている。ここでの前後方向は、シャッター部材30のスライド方向である。底板部13の突出板部21、プレート部26及び左右の側壁部16に摺動することによりガイドされて、スライド部材35は前後方向に移動可能となっている。スライド部材35を前後方向にガイドする構造はこれに限定されない。例えば、スライド部材35の両側面に設けたフランジ状の板片を、両側の側壁部16の内面に設けた溝に挿入して摺動させるなどの構造でもよい。
【0035】
スライド部材35の上面、すなわち第2の板状部39の上面の前端部には、前側凹部32aが設けられており、この前側凹部32aの前側には、前側段部32bが設けられている。また、第2の板状部39の上面の後端部には、後側凹部33aが設けられており、この後側凹部33aの後側には、後側段部33bが設けられている。前側凹部32a及び後側凹部33aは、いずれも左右方向に延びる溝状の凹部である。前側段部32b及び後側段部33bは、いずれも左右方向に延びる凸条である。
【0036】
図5は、スライド部材35がスペース22内において、プレート部26の前側凸部26aと後側凸部26bとの間で前後方向にスライド可能な状態である。この状態から、スライド部材35が前方にスライドすると、前側段部32bがプレート部26の前側凸部26aに当接し、さらに前方にスライドすると、前側凸部26aが前側段部32bに乗り上げた後に前側凹部32aに入り込んで係合する。
図1及び
図4に示すスライド部材35は、そのときの状態を示している。これにより、スライド部材35はそれ以上の前方へのスライドが規制される。
【0037】
一方、スライド部材35が後方にスライドすると、後側段部33bがプレート部26の後側凸部26bに当接し、さらに後方にスライドすると、後側凸部26bが後側段部33bに乗り上げた後に後側凹部33aに入り込んで係合する。
図6に示すスライド部材35は、そのときの状態を示している。これにより、スライド部材35はそれ以上の後方へのスライドが規制される。
【0038】
このように、スライド部材35の前側凹部32aにプレート部26の前側凸部26aが係合するとき、及びスライド部材35の後側凹部33aにプレート部26の後側凸部26bが係合するときのいずれの場合も、スライド部材35をスライド操作する者はクリック感を得ることができる。以下の説明では、前側凹部32aにプレート部26の前側凸部26aが係合したときの位置をスライド部材35の前端位置といい、後側凹部33aにプレート部26の後側凸部26bが係合したときの位置をスライド部材35の後端位置という場合がある。
【0039】
上述したように、シャッター部材30の後端部は、スライド部材35のスリット37に前端開口37aから挿入されている。シャッター部材30は、スリット37内において前後方向にスライド可能である。すなわち、シャッター部材30とスライド部材35とは、互いに相対的にシャッター部材30のスライド方向である前後方向にスライド可能である。換言すると、シャッター部材30とスライド部材35とは、互いに独立して非連動の状態で独自に前後方向にスライド可能となっている。スリット37にシャッター部材30が挿入された状態で、スライド部材35の第1の板状部38はシャッター部材30の外に重畳し、第2の板状部39はシャッター部材30の内側に重畳する。
【0040】
図1及び
図4に示すように、ケース1が出荷時の状態において、シャッター部材30は前方にスライドした閉位置に位置付けられる。閉位置におけるシャッター部材30は、開口部31が排出口19の上方に配置され、シャッター部材30における開口部31の下方部分によって排出口19は閉じられる。
図7に示すように、シャッター部材30が排出口19を閉じているときにおいて、シャッター部材30の開口部31の下端縁31aと排出口19の上端縁19aとの間の閉じ代Hを設けることで、排出口19が確実に閉じられる。閉じ代Hは、少なくとも3.9mmの長さが確保されることが好ましい。
【0041】
また、出荷時のスライド部材35は、
図4に示すように前端位置に配置される。このとき、
図8Aに示すように、シャッター部材30の後端30bとスリット37の後端37bとの間には、間隔G2が確保される。この間隔G2は、少なくとも0.3mmとされることが好ましい。これにより、シャッター部材30がスライド部材35に当接して変形することが抑えられる。また、このときには、
図4に示すように、シャッター部材30と、スライド部材35の第1の板状部38及び第2の板状部39とは重畳している。さらに、
図7に示すように、シャッター部材30の前端30aとガイドスリット41の上端41aとの間には、間隔G1が確保される。この間隔G1は、少なくとも0.6mmとされる。これにより、シャッター部材30がケース本体10に当接して変形することが抑えられる。
【0042】
上述したように、シャッター部材30とスライド部材35とは、互いに非連動の状態で独自に前後方向にスライド可能となっている。ここで、仮にシャッター部材30が出荷時の閉状態において、スライド部材35を後方にスライドさせ、スライド部材35を後端位置に配置した場合、
図6に示すように、シャッター部材30は動かず、排出口19はシャッター部材30で閉じられた状態が保持される。このとき、シャッター部材30の後端部はスリット37に入り込む状態が確保される。
図9に示すように、このときのシャッター部材30の後端部がスリット37に挿入されている長さ、すなわちシャッター部材30の後端30bとスリット37の前端開口37aとの間の距離L1は、少なくとも1mmが確保されていると、シャッター部材30がスライド部材35から外れないため好ましい。
【0043】
ここで、シャッター部材30及びスライド部材35がともに出荷時の状態において、双方を連動させてスライド部材35を後端位置までスライドさせた場合には、
図10に示すように、シャッター部材30の開口部31が排出口19に合致し、排出口19が開口する。このようにして排出口19が開口した場合、
図11に示すように、シャッター部材30の前端30aとガイドスリット41の上端41aとの間には、間隔G3が確保される。この間隔G3は、11.6mm程度が確保されると好ましい。
【0044】
以上の構成を備えた実施形態に係るケース1の供給を受けた使用者は、例えば次のようにして出荷時のシャッター部材30を開ける開封作業を行うことができる。
図10に示すように、スライド部材35の操作孔36に、操作ピン60を挿入し、さらにその操作ピン60でシャッター部材30を突き破って貫通させる。操作ピン60をシャッター部材の開方向、すなわち後方に移動させる。これにより、スライド部材35とシャッター部材30とは一体かし、連動してスライドする。スライド部材35を後端位置までスライドさせると、シャッター部材30で閉じられていた排出口19にシャッター部材30の開口部31が合致し、排出口19が開口する。操作孔36を露出させるケース1の長孔21aは、排出口19が開口するまで操作ピン60をスライドさせることができる長さを有する。
【0045】
シャッター部材30が、0.1mm以上0.5mm以下程度の厚みを有するフィルム部材の場合、ピン60によって突き破ることを容易とする。シャッター部材30は、スライド部材35の操作孔36及びケース本体10の長孔21aを通して外部に露出しているが、手掛かりになるような孔や凸部あるいは凹部のような部分はなく平坦面が露出するため、ピン60で突き破るなどの手間をかけないと、シャッター部材30をスライドさせることは困難である。実施形態のケース1によれば、このようにシャッター部材30を操作し難くすることにより、排出口19を容易に開口できないものとなっている。
【0046】
なお、
図8Bに示すように、操作孔36に連通する貫通孔30cをシャッター部材30に予め形成し、シャッター部材30を突き破ることなく、ピン60を貫通孔30cに挿入してシャッター部材30をスライドさせて排出口19を開口するようにしてもよい。この場合には、ピン60でスライド部材35を突き破る手間を省くことができる。
【0047】
シャッター部材30を操作し難くするには、スライド部材35の操作孔36の断面形状を複雑な形状、あるいは特殊な形状として、そのような孔形状に対応する操作ピンのみしか挿入できないようにすることによっても可能である。そのような操作孔としては、例えば、
図12Bに示すような断面円筒形状の操作孔36や、
図12Cに示すような断面星形形状の操作孔36などが挙げられる。
また、逆に特殊な形状の操作ピンでしかスライド部材35をスライドできないような手段を用いてもシャッター部材30を操作し難くすることができる。例えば
図13に示すような、クランク形状の操作ピン70でしかスライド部材35を操作できないように構成してもよい。
【0048】
以上説明した実施形態に係るケース1によれば、以下の効果が奏される。
【0049】
(1)実施形態に係るケース1は、複数の電子部品Mを収容する収容空間11、及び収容空間11に対して電子部品Mを出し入れするための開口としての排出口19を有するケース本体10と、ケース本体10にスライド可能に設けられ、スライドすることにより排出口19を開閉するシャッター部材30と、ケース本体10に、シャッター部材30のスライド方向に沿って当該シャッター部材30と相対的にスライド可能であり、ケース本体10におけるシャッター部材30の外に重畳可能に配置される第1の板状部38を含むスライド部材35と、を備え、シャッター部材30が排出口19を閉じている状態において、スライド部材35はシャッター部材30と一体にスライド可能なように当該シャッター部材30に対して重畳して配置される。
【0050】
これにより、シャッター部材30に重畳する第1の板状部を含むスライド部材35をスライドさせてもシャッター部材30をスライドさせることができないため、排出口19を容易に開けることができない。その結果、ケース1内への異種類の電子部品Mの混入や、ケース1からの不正規な電子部品Mの抜き取りといった不都合な事態を効果的に抑制することができる。
【0051】
スライド部材35に操作孔36を設けない形態とすれば、スライド部材35も容易にスライドさせることができないため、シャッター部材30による排出口19の閉塞状態を一層確保することができる。
なお、スライド部材35に操作孔36を設けない形態においては、シャッター部材30を開く際に、スライド部材35に工具等を用いて孔をあけ、さらにシャッター部材30に上記実施形態のように操作ピン60によって孔をあける。この後、ピン60を用いてスライド部材35及びシャッター部材30を後方にスライドさせれば、排出口19を開口することができる。
【0052】
(2)実施形態に係るケース1においては、スライド部材35の第1の板状部38には、シャッター部材30を外部に露出させる操作孔36が設けられていることが好ましい。
【0053】
これにより、操作孔36を通してシャッター部材30に孔をあけることができ、スライド部材35とシャッター部材30とを操作ピン60により連動してスライドさせる開封操作を、容易、かつ的確に行うことができる。
【0054】
(3)実施形態に係るケース1においては、シャッター部材30は、0.1mm以上0.5mm以下の厚みを有するフィルム状の部材であることが好ましい。
【0055】
これにより、シャッター部材30を操作ピン60で突き破りやすく、開封操作を円滑に行うことができる。
【0056】
(4)実施形態に係るケース1においては、シャッター部材30には操作孔36に連通可能な貫通孔30cを設けてもよい。
【0057】
これにより、シャッター部材30を突き破ることなく、操作ピン60をシャッター部材30に通してシャッター部材30をスライド部材35と容易に一体化させることができ、シャッター部材30の開封操作を円滑に行うことができる。
【0058】
(5)実施形態に係るケース1においては、スライド部材35は、第1の板状部38との間にシャッター部材30を挟んで当該シャッター部材30の内側に配置される第2の板状部39を含むことが好ましい。
【0059】
これにより、スライド部材35自身がシャッター部材30のスライドをガイドする機能を有することになるため、構成の簡素化が図られるとともに、スライド部材35によりシャッター部材30を所定の位置に保持することができる。
【0060】
(6)実施形態に係るケース1の使用方法は、スライド部材35の操作孔36に通した操作ピン60をシャッター部材30に貫通させ、当該操作ピン60をシャッター部材30の開方向に移動させてスライド部材35及びシャッター部材30を連動してスライドさせることにより、シャッター部材30で閉じられていた排出口19を開く。
【0061】
これにより、スライド部材35とシャッター部材30とを操作ピン60により連動してスライドさせる開封操作を、容易、かつ的確に行うことができる。
【0062】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、シャッター部材30はスライド部材35のスリット37に挿入されているが、スライド部材35の上面にシャッター部材30を重畳させて両者を相対移動可能としてもよい。
スライド部材35の下面に凸部あるいは凹部を設けることにより段部を設け、その段部を利用してスライド部材35をスライドできるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ケース
10 ケース本体
11 収容空間
19 排出口(開口)
30 シャッター部材
30c 貫通孔
35 スライド部材
36 操作孔
38 第1の板状部
39 第2の板状部
60 操作ピン
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