(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】不審機対処装置、不審機対処システム、不審機対処方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
F41H 13/00 20060101AFI20241022BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20241022BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20241022BHJP
F41H 11/02 20060101ALI20241022BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F41H13/00
B64C13/20 Z
B64U10/13
F41H11/02
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2023534499
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026397
(87)【国際公開番号】W WO2023286186
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】武藤 知之
(72)【発明者】
【氏名】池田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】槻 健一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/017984(WO,A1)
【文献】特開2018-165931(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070897(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 13/00
F41H 11/02
B64C 13/20
B64U 10/13
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の前記監視空域への侵入を検知する検知手段と、
前記不審機を含む対処領域を決定する決定手段と、
前記不審機の前記監視空域への侵入を検知した場合に、前記監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、前
記対処領域から退避させる退避指令を出力し、また、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処指令を出力する指令手段とを備え
、
前記対処領域は、前記対処により前記許可機が影響を受けると想定される領域である、不審機対処装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記監視空域における無人航空機の検知に用いられるセンサとしての電波探知センサとレーダとライダーとカメラとのうちの少なくとも一つから出力される情報を受信し、当該受信した情報に基づいて、前記監視空域への前記不審機の侵入を検知する請求項1に記載の不審機対処装置。
【請求項3】
前記検知手段は、SNS(Social Networking Service)に投稿された情報を取得し、当該取得した情報に基づいて、前記監視空域への前記不審機の侵入を検知する請求項1又は請求項2に記載の不審機対処装置。
【請求項4】
前記検知手段は、さらに、前記不審機の飛行位置を検知する機能を備え、
前記指令手段は、さらに、前記不審機の移動に応じて前記対処領域を可変設定する機能を備える請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の不審機対処装置。
【請求項5】
前記検知手段は、さらに、前記不審機の飛行の軌跡を検知し、当該飛行の軌跡をも用いて、前記監視空域への前記不審機の侵入を検知する請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の不審機対処装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の不審機対処装置と、
前記不審機対処装置から出力される退避指令を受信し、当該退避指令に応じて前記許可機を前記対処領域から退避させる操作装置と、
前記不審機対処装置から出力される対処指令を受信し、当該対処指令に応じて、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処装置とを備える不審機対処システム。
【請求項7】
コンピュータによって、
監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の前記監視空域への侵入を検知し、
前記不審機を含む対処領域を決定し、
前記不審機の前記監視空域への侵入を検知した場合に、前記監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、前
記対処領域から退避させる退避指令を出力し、
また、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処指令を出力
し、
前記対処領域は、前記対処により前記許可機が影響を受けると想定される領域である、不審機対処方法。
【請求項8】
監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の前記監視空域への侵入を検知する処理と、
前記不審機を含む対処領域を決定する処理と、
前記不審機の前記監視空域への侵入を検知した場合に、前記監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、前
記対処領域から退避させる退避指令を出力し、また、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処指令を出力する処理とをコンピュータに実行させ
、
前記対処領域は、前記対処により前記許可機が影響を受けると想定される領域である、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行が許可されていない不審な無人航空機に対処する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物流やインフラ点検などにおいて、人手不足が問題となっている。この問題の解決手段として、無人航空機の活用が考えられている。ここでの無人航空機とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船などであって構造上、人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるものである。このような無人航空機は、ドローンやUAV(unmanned aerial vehicle)等とも称される。
【0003】
無人航空機の飛行に関し、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれのある空域や、落下した場合に地上の人などに危害を及ぼすおそれが高い空域においては、安全確保のため、当該空域を飛行するための許可を予め受ける必要がある。しかしながら、無人航空機の活用の増加により、多くの無人航空機が飛び交うようになると、飛行の許可が必要な空域において、許可を受けていない無人航空機(以下、不審機とも称する)の飛行が増加することが懸念されている。
【0004】
特許文献1(国際公開第2020/070897号)には、侵入が禁止されている領域に侵入した無人航空機に対して、操縦不能にしたり、強制的に着陸させたりする技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不審機に対する対処の一つとして、電波妨害がある。すなわち、無人航空機は、当該無人航空機を操作する操作装置と無線通信を行う。この無線通信で用いられる電波(以下、操作電波とも称する)には、無人航空機の操作に関わる信号が含まれている。不審機に対する対処手法として、不審機と操作装置との間の操作電波の通信を妨害することにより、不審機の飛行制御を妨げる対処手法がある。この対処手法は、電波妨害や、ジャミングとも称される。
【0007】
また、不審機に対する別の対処の一つとして、不審機を網(ネット)により捕獲する対処手法がある。この手法では、ネットを備えた無人航空機(以下、捕獲機とも称する)を利用したり、ネットを投射する投射銃を利用したりする。
【0008】
さらに、不審機に対する別の対処手法として、レーザ照射などによって不審機の飛行を妨げる対処手法や、不審機に搭載されている制御装置(コンピュータ)をハッキングにより制御することによって、不審機を強制的に着陸させるというような対処手法もある。
【0009】
前述したように、無人航空機の活用の増加により、多くの無人航空機が飛び交うようになることが想定される。このような場合、飛行の許可が必要な空域において、許可を受けている無人航空機(以下、許可機とも称する)だけでなく、不審機の飛行の増加が懸念されている。そこで、不審機の飛行を検知した場合に、当該不審機に対して前述したような対処手法を実行することが考えられるが、同じ空域に許可機と不審機が混在して飛び交っていると、次のような問題が生じる虞がある。すなわち、その問題とは、不審機に対する対処が許可機にも及んで許可機の飛行に悪影響を与えてしまう虞があるという問題である。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために考え出されたものである。すなわち、本発明の主な目的は、許可機に悪影響を与えることを防止しつつ、不審機に対処するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る不審機対処装置は、その一態様として、
監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の前記監視空域への侵入を検知する検知手段と、
不審機の前記監視空域への侵入を検知した場合に、前記監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、前記不審機を含む対処領域から退避させる退避指令を出力し、また、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処指令を出力する指令手段と
を備える。
【0012】
また、本発明に係る不審機対処システムは、その一態様として、
上記不審機対処装置と、
前記不審機対処装置から出力される退避指令を受信し、当該退避指令に応じて前記許可機を前記対処領域から退避させる操作装置と、
前記不審機対処装置から出力される対処指令を受信し、当該対処指令に応じて、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処装置と
を備える。
【0013】
さらに、本発明に係る不審機対処方法は、その一態様として、
コンピュータによって、
監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の前記監視空域への侵入を検知し、
不審機の前記監視空域への侵入を検知した場合に、前記監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、前記不審機を含む対処領域から退避させる退避指令を出力し、
また、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処指令を出力する。
【0014】
さらにまた、本発明に係るプログラム記憶媒体は、その一態様として、
監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の前記監視空域への侵入を検知する処理と、
不審機の前記監視空域への侵入を検知した場合に、前記監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、前記不審機を含む対処領域から退避させる退避指令を出力し、また、前記対処領域から前記許可機が退避している状態で前記監視空域における前記不審機に対処する対処指令を出力する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、許可機に悪影響を与えることを防止しつつ、不審機に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の不審機対処装置の構成を表すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の不審機対処装置を備える不審機対処システムの構成を説明する図である。
【
図3】無人航空機の検知に利用されるセンサの例を表す図である。
【
図4】レーダ装置の構成の一例を表すブロック図である。
【
図6】不審機に対する対処手法の一つを説明する図である。
【
図7】第1実施形態の不審機対処システムにおける不審機の対処に関わる動作例を説明するシーケンス図である。
【
図8】第2実施形態の不審機対処装置の構成を表すブロック図である。
【
図9】その他の実施形態の不審機対処装置の構成を表すブロック図である。
【
図10】その他の実施形態の不審機対処システムの構成を表すブロック図である。
【
図11】その他の実施形態の不審機対処装置の動作例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の不審機対処装置の構成を表すブロック図である。第1実施形態の不審機対処装置10は、
図2に表されるような不審機対処システム1に組み込まれ、不審機3に対処する装置である。ここでは、不審機とは、前述したように、飛行の許可が必要な空域において、許可を受けていない無人航空機とする。無人航空機に関しても、前述したように、ここでは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船などであって構造上、人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるものであるとする。無人航空機は、所謂、ドローンや空飛ぶ車を含む。
【0019】
不審機対処システム1は、
図2に表されているように、不審機対処装置10と、検知装置20と、操作装置30と、対処装置40とを備えている。
【0020】
検知装置20は、監視空域における無人航空機を検知するセンサである。監視空域とは、無人航空機の飛行に許可が必要な空域を含む空域であり、監視すべく予め設定される。監視空域の具体例としては、空港、発電所、商業施設、スタジアム、石油コンビナート、官庁施設などの重要施設の上空およびその周辺の空域が挙げられる。また、監視空域の具体例として、飛行の許可を受けた物流関連などの無人航空機の航路や、無人航空機以外の航空機の航路(コリドー)およびその周囲の空域も挙げられる。
【0021】
監視空域における無人航空機の検知に利用されるセンサには複数の種類がある。
図3には、そのような無人航空機の検知に利用されるセンサの具体例が表されている。すなわち、検知装置20に採用されるセンサは、監視空域における建物や設備の有無やその大きさ、電波状況などの環境や、監視空域の広さなどを考慮して適宜に選定されてよいものであるが、検知装置20に採用されるセンサの一つとして、電波探知センサ(パッシブレーダ)がある。電波探知センサは、無人航空機と、当該無人航空機を操作(操縦)する操作装置とが通信する電波(操作電波(つまり、操作装置から無人航空機へ信号を送信する電波や、無人航空機から操作装置へ信号を送信する電波))を探知するセンサである。この電波探知センサによる探知結果を表す情報が出力され、当該情報に基づいて、無人航空機の位置を特定することが可能である。
【0022】
検知装置20が電波探知センサにより構成される場合には、電波探知センサの数は1つでもよいし、複数でもよい。例えば、監視空域が広いために1つの電波探知センサだけでは監視空域全部を探知しきれない場合があり、このような場合には、監視空域全部が探知可能となるように、複数の電波探知センサが設置される。
【0023】
また、検知装置20に採用される別のセンサの一つとして、カメラがある。カメラは監視空域を撮影し、撮影画像を検知結果の情報として出力する。当該カメラによる撮影画像が物体認識技術により処理されることにより、撮影画像から無人航空機の検知が可能である。無人航空機の検知に利用されるカメラとして、例えば、可視光カメラと赤外線カメラがある。
【0024】
検知装置20がカメラにより構成される場合には、カメラは1台でもよいし、複数でもよい。例えば、監視空域内にカメラの視界を遮る建物などの障害物がある場合には、監視空域においてカメラにとって死角となる領域が生じる。このような場合には、監視空域において、死角が無くなるように、検知装置20としての複数のカメラが設置される。このように複数のカメラが用いられることにより、死角をなくすことができる上に、複数のカメラによって互いに異なる方向から監視空域を撮影するから、それらカメラによる撮影画像に基づいて監視空域における無人航空機の位置を特定することが容易となる。
【0025】
さらに、検知装置20として用いられるカメラは、固定されているものに限定されず、例えば、可搬型カメラであってもよい。可搬型カメラの態様は限定されず、例えば、ウェアラブル端末(メガネタイプなど)に組み込まれていてもよいし、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末装置に組み込まれていてもよい。可搬型カメラは、例えば、監視空域を監視している警備員や、監視空域内やその周辺に居る従業員などにより携帯あるいは装着され、手動により、あるいは、コンピュータ制御により監視空域を撮影する。なお、可搬型カメラによる撮影画像をリアルタイムで利用できるように、検知装置20として用いる可搬型カメラを備えた装置(カメラ単体装置、ウェアラブル端末、携帯端末装置など)は、撮影画像を時々刻々と送信する通信機能を備えていることが好ましい。
【0026】
さらに、検知装置20に採用される別のセンサの一つとして、レーダがある。レーダは、電波を発射し、その電波が物体で反射された反射波を受信することにより、電波を発射してから当該電波を反射波として受信するまでの時間と、反射波を受信した方向とに基づき、物体の有無と、物体までの距離とその方向を算出可能である。なお、レーダには、航空管制や気象観測や船舶運航などの社会インフラのシステムに利用されるものがある。レーダは、用途に応じて、電波の周波数や放射の電力が異なる。
【0027】
検知装置20がレーダにより構成される場合には、レーダは1台でもよいし、複数でもよい。レーダは、監視空域を走査するように電波の放射方向を変化させるため、監視空域が広いと、監視空域全体を1回走査するのに要する時間が長くなり、不審機が監視空域に侵入してからレーダで検知されるまでの遅れが長くなる虞がある。このような遅れを短くするために、複数のレーダを用いてレーダそれぞれの電波を走査する領域を狭くすることが考えられる。
【0028】
また、監視空域が例えば空港である場合には、既設の航空管制用レーダの電波との干渉が問題となるため、新たに別のレーダを設けることは難しい。このような場合には、航空管制用レーダが検知装置20としても用いられてもよい。このように新たなレーダを設けることが難しい監視空域によっては、船舶用レーダや気象用レーダなどの既設のレーダが検知装置20としても用いられてもよい。
【0029】
ところで、
図4は、レーダ装置の主要構成を表すブロック図である。
図4の実線で表されているように、レーダ装置50は、アンテナ51と、送受信切り替え部52と、送信部53と、受信部54と、信号処理部55と、制御部56とを備えている。
【0030】
アンテナ51は、電波(例えばマイクロ波)を送受信する構成を備えている。送受信切り替え部52は、アンテナ51を送信部53と受信部54の何れか一方に切り替え接続させる構成を備え、アンテナ51を送信部53に接続させている状態と、アンテナ51を受信部54に接続させている状態とを設定の周期で交互に切り替える。
【0031】
送信部53は、信号処理部55から供給されるパルス信号に基づいて、アンテナ51から放射する電波の基になる送信用の信号を生成する回路構成を備えている。受信部54は、アンテナ51により受信された電波に基づいた受信信号を増幅し、検波することにより、送信側のパルス信号に対する反射信号を抽出し、信号処理部55に出力する回路構成を備えている。
【0032】
信号処理部55は、送信部53にパルス信号を出力したり、受信部54から出力された信号を所定の手法により信号処理したりする回路構成を備え、信号処理によるデジタル信号を制御部56に出力する。制御部56は、PC(Personal Computer)やサーバなどのコンピュータ装置により構成され、信号処理部55から受け取った信号に基づいて、例えば、検知結果を表示装置などに表示させる制御動作を実行する。レーダによる検知結果の情報は、例えば、制御部56から出力される。
【0033】
前述したように、航空管制用レーダ、船舶用レーダあるいは気象用レーダなどの既設のレーダ装置を検知装置20としても用いる場合に、検知装置20のための
図4の点線に示されるような受信側の構成がレーダ装置50に備えられてもよい。つまり、検知装置20として用いられるレーダ装置50は、検知装置20のために、受信部57と、信号処理部58と、制御部59とを備えていてもよい。受信部57は、受信部54と同様の回路構成を備え、信号処理部58は、受信部57から出力された信号を処理する構成を備えている。信号処理部58は、送信側の信号処理のための構成を持たなくともよく、必要に応じて信号処理部55から送信側の信号処理に関わる情報を取得してもよい。制御部59は、信号処理部58から出力された信号(つまり、アンテナ51により受信された信号に基づいたデジタル信号)に基づいて、例えば、無人航空機の検知結果を表示装置などに表示させる制御動作を実行する。このように、不審機対処システム1に組み込まれる検知装置20のための構成がレーダ装置50に設けられる場合には、制御部59から不審機対処装置10に向けて、レーダによる検知結果の情報が出力される。
【0034】
検知装置20のための受信部57と信号処理部58は、既設のレーダ用としての受信部54と信号処理部55などと共通の装置内に設けられている態様であってもよいし、別体の一つの装置の態様と成していてもよい。また、検知装置20のための制御部59は、既設のレーダ用としての制御部56を構成するコンピュータ装置とは同じコンピュータ装置により構成されていてもよいし、別のコンピュータ装置により構成されていてもよい。
【0035】
このように、レーダ装置50に、検知装置20のための受信側の構成をも設けることにより、既設のレーダとしての機能に影響を与えることなく、レーダ装置50に無人航空機の検知機能を持たせることが容易となる。
【0036】
さらにまた、検知装置20に採用される別のセンサの一つとして、ライダーがある。ライダーは、レーザ光を発射し、そのレーザ光が物体で反射された反射光を受信することにより、レーザ光を発射してから当該レーザ光を反射光として受信するまでの時間と、反射光を受信した方向とに基づいて、物体の有無と、物体までの距離とその方向を算出可能である。なお、ライダーは、気象の分野で用いられる場合があり、この場合には、例えば、乱気流などの気流の検知に利用される。このようなことから、ライダーによって無人航空機自体を検知するのではなく、無人航空機の飛行に起因した気流を検知することにより、無人航空機を検知することも可能である。
【0037】
検知装置20がライダーにより構成される場合には、ライダーは1台でもよいし、複数でもよい。ライダーは、監視空域を走査するようにレーザ光の放射方向を変化させるため、レーダと同様に、監視空域が広いと、監視空域全体を1回走査するのに要する時間が長くなり、不審機が監視空域に侵入してから検知されるまでの遅れが長くなる虞がある。このような遅れを短くするために、複数のライダーを用いてライダーそれぞれの電波を走査する領域を狭くすることが考えられる。
【0038】
検知装置20は、上記したような1種類のセンサにより構成されるとは限らず、複数種のセンサの組み合わせにより構成されてもよい。すなわち、検知装置20として採用可能なセンサのそれぞれは、長所と短所も持つ。このことから、短所を補完し合うように複数種のセンサを組み合わせて検知装置20が構成されてもよい。例えば、電波探知センサとレーダとライダーのうちの少なくとも一つと、カメラとを組み合わせて検知装置20が構成されてもよい。カメラは、無人航空機の外観や形状を検知しやすいが、飛行位置を検知しがたい。これに対し、電波探知センサとレーダとライダーは、無人航空機の飛行位置を検知しやすいが、無人航空機の外観の取得は難しい。このようなことから、電波探知センサとレーダとライダーのうちの少なくとも一つと、カメラとを組み合わせることにより、無人航空機の飛行位置の検知と、外観や形状の取得とが容易となる。なお、検知装置20を構成する複数種のセンサの組み合わせは、上記した組み合わせに限定されない。
【0039】
図2に表されている不審機対処システム1を構成する操作装置30は、無人航空機との無線通信により、無人航空機を操作する装置である。ここでは、操作装置30は、許可機4を操作するものとする。
【0040】
操作装置30の構成は無人航空機の種類に応じた構成を有する。無人航空機には、大別して、コンピュータ制御タイプと手動操作タイプとの種類がある。コンピュータ制御タイプとは、無人航空機に搭載されているコンピュータ装置が、位置検知センサなどのセンサ出力を用いながら、予め与えられているコンピュータプログラムに従って、無人航空機の飛行を制御するタイプである。手動操作タイプとは、無人航空機と無線通信する
図5に表されているようなコントローラー32を用いた操縦者の遠隔操作により、無人航空機の飛行が操作されるタイプである。
【0041】
第1実施形態では、許可機4は、コンピュータ制御タイプと手動操作タイプとの何れかに限定されず、何れの場合もあり得るものとし、操作装置30は、監視空域を飛行することが想定される許可機4の種類に応じた構成を持つ。また、不審機対処システム1に含まれる操作装置30は1台とは限らず、複数である場合もあり、操作装置30の数は、監視空域を飛行予定の許可機4の数や種類数などによって適宜に設定される。
【0042】
第1実施形態では、不審機対処装置10から操作装置30に、不審機3の対処に関わる指令が出力される。操作装置30は、不審機対処装置10からの指令に基づいた動作を実行する機能を備える。例えば、許可機4がコンピュータ制御タイプであり、当該許可機4には、その不審機対処装置10からの指令に対応するコンピュータプログラムが予め与えられている場合には、操作装置30は、不審機対処装置10からの指令を受信し、当該指令を許可機4に転送する。これにより、許可機4は、不審機対処装置10からの指令に応じた動作を実行する。
【0043】
また、許可機4がコンピュータ制御タイプであっても、当該許可機4には、その不審機対処装置10からの指令に対応するコンピュータプログラムが与えられていない場合があることが想定される。さらに、許可機4が手動操作タイプである場合も想定される。このような場合には、例えば、許可機4の操縦者が携帯している例えば
図5に表されるような端末装置33に、不審機対処装置10からの指令が送信される。端末装置33には、不審機対処システム1における操作装置30の一部として機能するためのアプリケーションプログラムが与えられている。端末装置33は、不審機対処装置10からの指令を受信すると、そのアプリケーションプログラムに従って、当該指令に基づいた情報を表示部に表示する。この表示に従って、許可機4の操縦者がコントローラー32を用いて許可機4を操作することにより、許可機4は、不審機対処装置10からの指令に応じた動作を実行する。このような場合には、操作装置30は、コントローラー32と、端末装置33とを有して構成される。
【0044】
対処装置40は、不審機3に対処する装置である。不審機3に対する対処手法の一つとして、前述したように、電波妨害や、ジャミングとも称される手法がある。この対処手法では、不審機3と当該不審機3を操作する操作装置(図示せず)との間の操作電波を妨害することにより、不審機の飛行制御を妨げる。この対処手法(ジャミング)に基づいて不審機3に対処する場合には、対処装置40は、操作電波を妨害する妨害電波を生成し、当該妨害電波を不審機3に向けて放射する構成を備える。
【0045】
また、不審機3に対する別の対処手法の一つとして、網(ネット)により不審機3を捕獲する対処手法がある。この対処手法では、例えば、無人航空機である
図6に表されるような捕獲機5を利用する場合や、ネットを不審機3に向けて投げる投射銃(図示せず)を利用する場合がある。捕獲機5を利用する場合には、対処装置40は、不審機3をネットにより捕獲すべく、無線通信を利用して捕獲機5を操作する構成を備える。投射銃を利用する場合には、対処装置40は、不審機3をネットにより捕獲すべく、例えば、投射銃の向きやネットを投射するタイミングを制御する構成を備える。
【0046】
第1実施形態では、不審機対処装置10から対処装置40に、不審機3の対処に関わる指令が出力される。これにより、対処装置40は、さらに、不審機対処装置10からの指令に基づいた動作を実行する機能を備える。例えば、対処装置40は、不審機対処装置10からの指令の受信をトリガとして、不審機3への対処動作を開始する。また、操作者による手動操作によって、対処装置40が不審機3への対処動作を開始する場合には、例えば、その操作者が携帯している端末装置に、不審機対処装置10からの指令が送信される。端末装置には、不審機対処システム1における対処装置40の一部として機能するためのアプリケーションプログラムが与えられている。当該端末装置は、不審機対処装置10からの指令を受信すると、そのアプリケーションプログラムに従って、例えば不審機3への対処開始の指示を表示部に表示する。この表示に従って、操作者が妨害電波の放射を開始したり、捕獲機5や投射銃を操作したりすることにより、不審機3への対処が実行される。このような場合には、不審機対処装置10からの指令を受信する端末装置は、対処装置40の一部として機能する。
【0047】
不審機対処装置10は、コンピュータ装置であり、上記したような検知装置20と操作装置30と対処装置40と接続され、これらの装置を用いて、不審機3に対処する不審機対処システム1の動作を制御する機能を備える。この不審機対処装置10は、
図1に表されるように、制御装置11と、記憶装置15とを備える。
【0048】
記憶装置15は、データや、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも記す)16を記憶する記憶媒体を備えている。記憶装置には、磁気ディスク装置や、半導体メモリ素子などの複数の種類があり、さらに、半導体メモリ素子には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの複数の種類があるというように、多数の種類がある。不審機対処装置10が備える記憶装置15の種類は1つに限定されるものではない。コンピュータ装置には複数種の記憶装置が備えられることが多い。ここでは、不審機対処装置10に備えられる記憶装置15の種類や数は限定されず、その説明は省略される。また、不審機対処装置10に複数種の記憶装置15が備えられる場合には、それらをまとめて記憶装置15と記すこととする。
【0049】
制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成される。当該制御装置11は、記憶装置15に記憶されているプログラム16を読み出して実行することにより、当該プログラム16に基づいた様々な機能を持つことができる。ここでは、制御装置11は、機能部として、検知部12と、指令部13とを有している。
【0050】
検知部12は、検知装置20から出力される情報を受信し、当該情報に基づき、監視空域における無人航空機の飛行を検知する機能と、それら無人航空機の中に不審機3が含まれているか否かの検知、つまり、監視空域への不審機3の侵入を検知する機能とを備えている。例えば、検知装置20がカメラにより構成されている場合には、カメラによって撮影された監視空域の撮影画像(動画)が検知装置20から不審機対処装置10に例えば予め設定されたフレームレートでもって送信される。検知部12は、検知装置20から受信した撮影画像のすべてのフレームあるいは予め設定されたフレーム枚数毎に、物体認識処理を実行し、撮影画像から、監視空域における無人航空機の有無、および、監視空域への不審機3の侵入を検知する。
【0051】
監視空域における無人航空機の飛行の有無や、監視空域への不審機3の侵入を撮影画像から検知する手法は特に限定されないが、例えば、AI(Artificial Intelligence)技術を利用する。この場合には、予め、撮影画像から無人航空機と、無人航空機のうちの不審機3とを検知する検知用のモデルが不審機対処装置10に与えられる。検知用のモデルは、多種多様な無人航空機およびそのうちの不審機3あるいは許可機4の画像を機械学習することによって生成され、撮影画像を入力とし、無人航空機およびそのうちの不審機3を検知結果として出力するモデルである。検知部12は、AI技術を用いる場合、そのような検知用のモデルを用いて、撮影画像から、監視空域における無人航空機の飛行を検知し、また、監視空域への不審機3の侵入を検知する。
【0052】
なお、不審機3と、許可機4との外見が似ているために、撮影画像だけでは不審機3と許可機4との区別が難しい場合がある。このような場合を想定し、例えば、不審機対処装置10は、許可機4を操作(運航)しているシステムに接続し、監視空域における許可機4の飛行状況(運航状況)を取得してもよい。そして、検知部12は、検知用のモデルの出力だけでなく、必要に応じて、監視空域における許可機4の飛行状況(運航状況)の情報を参照することにより、監視空域への不審機3の侵入を検知してもよい。
【0053】
また、検知装置20が電波探知センサやレーダやライダーにより構成されている場合には、検知部12は、電波探知センサやレーダやライダーから出力された情報に基づいて、監視空域における無人航空機の飛行を検知し、また、監視空域への不審機3の侵入を検知する。この場合にも、検知部12における監視空域における無人航空機の飛行の有無や監視空域への不審機3の侵入の検知手法は特に限定されず、その説明は省略される。また、検知部12は、監視空域への不審機3の侵入の検知等の処理において、必要に応じて前述したような監視空域における許可機4の飛行状況(運航状況)の情報を参照してもよい。
【0054】
さらに、検知装置20が、電波探知センサとカメラとレーダとライダーのうちの複数の組み合わせにより構成されるという如く、複数種のセンサにより構成される場合がある。この場合には、検知部12は、例えば、検知装置20を構成する複数種のセンサそれぞれから出力される情報に基づいた処理を実行し、さらに、それら処理により得られた複数の情報に基づいた処理を実行する。このようにして、検知部12は、監視空域における無人航空機の飛行を検知し、さらに、監視空域への不審機3の侵入を検知する。
【0055】
さらにまた、検知部12は、不審機3を検知した場合に、直ちに、不審機3であると確定せず、不審機3であると思われる無人航空機の飛行の軌跡を取得し、予め与えられている正規の飛行パターンと当該軌跡が異なっている場合に不審機3であると確定してもよい。つまり、検知部12は、無人航空機の飛行の軌跡を検知し、当該軌跡をも用いて、監視空域への不審機3の侵入を検知してもよい。
【0056】
なお、不審機対処装置10は、
図1の点線に示されるような表示装置6や端末装置7に接続されていてもよい。端末装置7は、例えば、PC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末などである。検知部12は、例えば、検知結果を表示装置6や端末装置7に向けて出力し、表示装置6や、端末装置7の表示部に検知結果を表示させてもよい。
【0057】
指令部13は、検知部12において監視空域への不審機3の侵入が検知されたことにより、監視空域に許可機4も飛行していること(つまり、不審機3と許可機4が混在していること)を検知した場合には、対処領域Sから許可機4を退避させる退避指令を出力する。対処領域Sとは、不審機3を含む領域であって、対処装置40が不審機3への対処を実行する場合に、その対処により許可機4が影響を受けると想定される領域である。つまり、対処手法がジャミングである場合には、対処領域Sは、妨害電波の影響を受けると想定される領域であり、不審機3の位置と妨害電波の送信電力などに基づいて決定される。対処手法がネットによる捕獲である場合には、対処領域Sは、捕獲機5により不審機3の捕獲が実施される、あるいは、投射銃からのネットの投射ルートと想定される領域であり、不審機3の位置や飛行速度などに基づいて決定される。なお、対処領域Sは、監視空域内とは限らず、例えば、不審機3の飛行位置が監視空域の端に近いというような場合には、監視空域内から監視空域外にも広がっている場合がある。
【0058】
指令部13は、退避指令を操作装置30に向けて出力する。また、指令部13は、退避指令を操作装置30に向けて出力する場合に、対処領域Sの位置や広さなどを知らせる情報も操作装置30に向けて出力する。操作装置30は、指令部13により出力された退避指令を受信したことにより、退避指令に基づいて、許可機4を対処領域Sから退避させる動作を実行する。
【0059】
さらに、指令部13は、検知部12によって監視空域への不審機3の侵入が検知された場合に、対処指令を対処装置40に向けて出力する。対処指令は、対処領域Sから許可機4が退避している状態で監視空域における不審機3に対処することを指示する指令である。指令部13が対処指令を出力するタイミングは、退避指令と同様なタイミングであってもよい。あるいは、対処指令の出力タイミングは、例えば、退避指令の出力から、許可機4が対処領域Sから退避したと想定される時間が経過した以降、あるいは、許可機4が対処領域Sから退避したことが検知された以降の適宜なタイミングであってもよい。対処装置40は、指令部13により出力された対処指令を受信したことにより、対処指令に基づいて、対処領域Sから許可機4が退避している状態で不審機3への対処動作を実行する。
【0060】
なお、指令部13は、検知部12により監視空域への不審機3の侵入が検知されると、退避指令や対処指令を、直ちに出力してもよいし、監視空域への不審機3の侵入が予め設定された期間(例えば5分間)、連続又は断続的に検知された場合に出力してもよい。
【0061】
第1実施形態の不審機対処装置10およびそれを備える不審機対処システム1は上記のように構成されている。次に、不審機対処システム1における不審機3に対する対処動作の一例を、
図7を参照しつつ説明する。
図7は、不審機対処システム1における不審機3に対する対処動作の一例を表すシーケンス図である。
【0062】
例えば、検知装置20は、電波探知センサやレーダやカメラやライダーなどのセンサによって監視空域における無人航空機の検知動作を継続的に実行し、かつ、その検知結果(センサ出力)を不審機対処装置10に例えば連続的に出力する(
図7におけるステップS101)。
【0063】
不審機対処装置10の検知部12は、検知装置20からの検知結果を用いた検知処理を実行する(ステップS102)。検知部12による検知処理では、監視空域において無人航空機が飛行しているか否かが判断され、また、それら無人航空機の中に不審機3が含まれているか否か、つまり、監視空域に不審機3が侵入しているか否かが判断される。
【0064】
そして、検知部12により監視空域への不審機3の侵入が検知されたことにより、指令部13は、操作装置30に退避指令を出力する(ステップS103)。そして、操作装置30は、退避指令を受けて退避処理を実行する(ステップS104)。つまり、操作装置30は、許可機4を対処領域Sから退避させる動作を実行する。
【0065】
また、不審機対処装置10の指令部13は、対処装置40に対処指令を出力する(ステップS105)。指令部13が対処指令を出力するタイミングは、退避指令の出力と同様なタイミングであってもよいし、あるいは、退避指令の出力から、許可機4が対処領域Sから退避したと想定される時間が経過した以降の適宜なタイミングであってもよい。あるいは、対処指令の出力タイミングは、許可機4が対処領域Sから退避したことが検知された以降の適宜なタイミングであってもよい。この場合には、例えば、
図7の点線に示されるように、不審機対処装置10から検知装置20に検知結果の問合せが行われ、これにより、検知装置20から検知結果が不審機対処装置10に出力される(ステップS110)。この検知結果を利用して、許可機4が対処領域Sから退避したことが検知された以降の適宜なタイミングで、指令部13が対処装置40に対処指令を出力する。このように出力された対処指令を受けて、対処装置40は対処処理を実行する(ステップS106)。つまり、対処装置40は、ジャミングやネット捕獲等により、不審機3の飛行を妨げる動作を実行する。
【0066】
第1実施形態の不審機対処装置10およびそれを備える不審機対処システム1は、監視空域への不審機3の侵入が検知された場合、上記のように許可機4を対処領域Sから退避させた後に、不審機3に対する対処処理を実行する。このため、不審機対処装置10および不審機対処システム1は、許可機4に悪影響を与えることを防止しつつ、ジャミングやネット捕獲等により、不審機3の飛行を妨げることができる。
【0067】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態の説明で用いた名称と同一名称の構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0068】
第2実施形態における不審機対処装置10および不審機対処システム1は、第1実施形態で説明した無人航空機および不審機3の検知に関わる構成に加えて、あるいは、その構成に代えて、次のような検知構成を備える。すなわち、第2実施形態における不審機対処装置10は、
図8に表されているようなSNS(Social Networking Service)情報源8に接続される。そして、不審機対処装置10は、SNSに投稿された情報、つまり、コメント(以下、投稿コメントとも称する)や写真(以下、投稿写真とも称する)を取得する機能を備える。第2実施形態では、検知部12は、SNS情報源8から取得された投稿コメントや投稿写真を解析し、監視空域における無人航空機の飛行の有無と、その無人航空機の中における不審機3の有無とを検知する機能を備える。投稿コメントや投稿写真を解析する手法の一つとして、AI技術の利用が挙げられる。AI技術を利用する場合には、解析用モデルが不審機対処装置10に与えられる。解析用モデルは、無人航空機に関わる多数の投稿コメントや投稿写真を機械学習することにより生成され、投稿コメントや投稿写真を入力とし、監視空域における無人航空機の有無と無人航空機が検知された場合の不審機3の有無とを出力するモデルである。
【0069】
なお、検知部12は、投稿コメントや投稿写真を用いた検知処理においても、必要に応じて、第1実施形態で述べたような、監視空域における許可機4の飛行状況(運航状況)の情報を参照することにより、監視空域への不審機3の侵入を検知してもよい。
【0070】
第2実施形態における不審機対処装置10および不審機対処システム1における上記以外の構成は、第1実施形態の不審機対処装置10および不審機対処システム1の構成と同様である。
【0071】
第2実施形態における不審機対処装置10および不審機対処システム1は、監視空域への不審機3の侵入が検知された場合、第1実施形態と同様に、許可機4を対処領域Sから退避させた後に、不審機3に対する対処処理を実行する。このため、第2実施形態においても、不審機対処装置10および不審機対処システム1は、第1実施形態と同様に、許可機4に悪影響を与えることを防止しつつ、ジャミングやネット捕獲等により、不審機3の飛行を妨げることができる。
【0072】
また、第2実施形態の不審機対処装置10は、SNSに投稿された投稿コメントや投稿写真を利用して、監視空域における無人航空機の有無、および、無人航空機が検知された場合には当該無人航空機のうちの不審機3の有無を検知する。投稿コメントや投稿写真には、監視空域を様々な方向から見た情報が含まれていると想定される。このため、検知装置20から出力される電波探知センサやレーダやライダー等の検知結果だけでなく、投稿コメントや投稿写真から得られる情報をも利用することにより、検知部12は、監視空域における不審機3の侵入の検知に対する信頼性を高めることができる。
【0073】
<その他の実施形態>
本発明は、第1や第2の実施形態に限定されず様々な実施の形態を採り得る。例えば、不審機対処装置10は、第1や第2の実施形態における構成に加えて、不審機3の移動に追従して対処領域Sを移動させる構成を備えていてもよい。例えば、不審機対処装置10の記憶装置15には、不審機3の飛行位置に基づいて当該不審機3を含む対処領域Sを可変設定するコンピュータプログラム(対処領域設定用プログラム)が予め格納される。
【0074】
検知部12は、監視空域への不審機3の侵入を検知した以降も引き続き、不審機3を検知する検知処理を継続し、不審機3の飛行位置を表す情報を継続的に出力する。指令部13は、退避指令を操作装置30に向けて出力した以降に、不審機3の飛行位置を表す情報を検知部12から受け取ると、例えばその度に対処領域設定用プログラムに従って対処領域Sを可変設定する。さらに、指令部13は、設定した対処領域Sを表す情報を操作装置30に出力する。操作装置30では、指令部13から継続的に受信する対処領域Sの情報に基づき、当該対処領域Sから許可機4が退避するように許可機4を操作する。なお、検知部12は、検知装置20から出力される例えばレーダやライダーの検知結果に基づいて、不審機3の飛行速度をも算出してもよい。また、指令部13は、算出される不審機3の飛行速度をも考慮して、対処領域Sを設定してもよい。
【0075】
また、第1や第2の実施形態では、不審機対処システム1は、検知装置20を備えているが、不審機対処システムは、検知装置を含まない場合もある。例えば、不審機対処装置10の検知部12が、既設のレーダからの出力や、既設の監視カメラの撮影画像を利用する場合には、それらレーダや監視カメラは無人航空機の検知処理に用いる情報の情報源ではあるが、不審機対処システムには含まれないとする。
【0076】
図9は、その他の実施形態における不審機対処装置の構成を表すブロック図である。この不審機対処装置70は、例えばコンピュータ装置であり、機能部として、検知部71と指令部72を備えている。検知部71は、監視空域での飛行が許可されていない無人航空機である不審機の監視空域への侵入を検知する。指令部72は、不審機の監視空域への侵入を検知した場合に、監視空域での飛行が許可されている無人航空機である許可機を、不審機を含む対処領域から退避させる退避指令を出力する。また、指令部72は、対処領域から許可機が退避している状態で監視空域における不審機に対処する対処指令を出力する。
【0077】
このような不審機対処装置70は、
図10に表されるような不審機対処システム60に組み込まれる。不審機対処システム60は、不審機対処装置70と、操作装置80と、対処装置90とを備える。操作装置80は、不審機対処装置70から出力される退避指令を受信し、当該退避指令に応じて許可機を対処領域から退避させる。対処装置90は、不審機対処装置70から出力される対処指令を受信し、当該対処指令に応じて、対処領域から許可機が退避している状態で監視空域における不審機に対処する。
【0078】
図11は、不審機対処装置70における不審機の対処に関わる動作の一例を表すフローチャートである。例えば、不審機対処装置70は、電波探知センサやレーダやライダーやカメラなどの、無人航空機の検知に利用されるセンサからの検知結果の情報を受信する。この受信した情報に基づいて、検知部71が監視空域への不審機の侵入を検知すると(
図11のステップS201)、指令部72が退避指令を出力する(ステップS202)。この退避指令は、操作装置80に向けて送信され、操作装置80は、退避指令を受信し、当該退避指令に応じて許可機を対処領域から退避させる。また、指令部72が対処指令を出力する(ステップS203)。この対処指令は、対処装置90に向けて送信され、対処装置90は、対処指令を受信し、当該対処指令に応じて、対処領域から許可機が退避している状態で監視空域における不審機に対処する。
【0079】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,60 不審機対処システム
3 不審機
4 許可機
10,70 不審機対処装置
12,71 検知部
13,72 指令部
30,80 操作装置
40,90 対処装置