(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】配線基板及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20241022BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20241022BHJP
G02C 9/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
G02B27/02 Z
G02C9/00
(21)【出願番号】P 2024088809
(22)【出願日】2024-05-31
【審査請求日】2024-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】細田 昌太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯村 慶太
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 雅生
(72)【発明者】
【氏名】草原 朱洋
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/140001(WO,A1)
【文献】特開2011-207044(JP,A)
【文献】特開2023-156835(JP,A)
【文献】特開2021-162819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
G02B 27/02
G02C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
透明性を有する基板と、
前記基板上に配置されたメッシュ配線層と、
前記メッシュ配線層に電気的に接続された複数の電子部品とを備え、
前記メッシュ配線層は、
前記基板上に配置された第1暗色層と、
前記第1暗色層上に配置された金属層と、
前記第1暗色層及び前記金属層を覆う第2暗色層とを有し、
前記メッシュ配線層に複数の端子部が形成されており、
複数の前記電子部品は、互いに間隔を空けて配置されているとともに、互いに異なる前記端子部に実装されている、配線基板。
【請求項2】
前記基板のガラス転移温度は、150℃以上400℃以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記電子部品は、発光素子を含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記発光素子は、赤外波長を含む光を照射する、請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記メッシュ配線層は、アンテナとして構成されており、前記電子部品は、アンテナ駆動用の半導体素子を含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記メッシュ配線層は、アンテナとして構成されており、前記電子部品は、発光素子と、アンテナ駆動用の半導体素子とを含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記メッシュ配線層の周囲に、前記メッシュ配線層から電気的に独立したダミー配線層が設けられている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
複数の前記ダミー配線層が設けられ、前記メッシュ配線層及び前記ダミー配線層の開口率は、前記メッシュ配線層から、前記メッシュ配線層に遠い前記ダミー配線層に向けて段階的に大きくなっている、請求項7に記載の配線基板。
【請求項9】
フレームと、
前記フレームに取り付けられた透明な表示装置と、
前記フレームに取り付けられた撮像部とを備え、
前記表示装置は、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線基板と、
前記配線基板に積層された表示部とを有する、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
前記配線基板は、前記フレームに取り付けられる周縁部と、前記周縁部に取り囲まれる中央部とを含み、
前記電子部品は、中央部に配置されている、請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、配線基板及びヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット、スマートグラス(AR、MR等)等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化及び軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、5G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域又はスマートグラスの透過領域に搭載できるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナにおいて、アンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と、非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、従来のフィルムアンテナにおいては、透明基材上に1つ又は複数のメッシュ配線層が搭載される。このようなメッシュ配線層は、無線通信又は視線追跡のような機能のために使用され得る。このため、このような機能の性能を向上させることが求められている。
【0006】
本実施の形態は、性能を向上させることが可能な、配線基板及びヘッドマウントディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[9]に関する。
【0008】
[1]
配線基板であって、
透明性を有する基板と、
前記基板上に配置されたメッシュ配線層と、
前記メッシュ配線層に電気的に接続された複数の電子部品とを備え、
前記メッシュ配線層は、
前記基板上に配置された第1暗色層と、
前記第1暗色層上に配置された金属層と、
前記第1暗色層及び前記金属層を覆う第2暗色層とを有し、
前記メッシュ配線層に複数の端子部が形成されており、
複数の前記電子部品は、互いに間隔を空けて配置されているとともに、互いに異なる前記端子部に実装されている、配線基板。
【0009】
[2]
前記基板のガラス転移温度は、150℃以上400℃以下である、[1]に記載の配線基板。
【0010】
[3]
前記電子部品は、発光素子を含む、[1]又は[2]に記載の配線基板。
【0011】
[4]
前記発光素子は、赤外波長を含む光を照射する、[3]に記載の配線基板。
【0012】
[5]
前記メッシュ配線層は、アンテナとして構成されており、前記電子部品は、アンテナ駆動用の半導体素子を含む、[1]又は[2]に記載の配線基板。
【0013】
[6]
前記メッシュ配線層は、アンテナとして構成されており、前記電子部品は、発光素子と、アンテナ駆動用の半導体素子とを含む、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の配線基板。
【0014】
[7]
前記メッシュ配線層の周囲に、前記メッシュ配線層から電気的に独立したダミー配線層が設けられている、[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の配線基板。
【0015】
[8]
複数の前記ダミー配線層が設けられ、前記メッシュ配線層及び前記ダミー配線層の開口率は、前記メッシュ配線層から、前記メッシュ配線層に遠い前記ダミー配線層に向けて段階的に大きくなっている、[7]に記載の配線基板。
【0016】
[9]
フレームと、
前記フレームに取り付けられた透明な表示装置と、
前記フレームに取り付けられた撮像部とを備え、
前記表示装置は、
[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の配線基板と、
前記配線基板に積層された表示部とを有する、ヘッドマウントディスプレイ。
【0017】
[10]
前記配線基板は、前記フレームに取り付けられる周縁部と、前記周縁部に取り囲まれる中央部とを含み、
前記電子部品は、中央部に配置されている、[9]に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の効果】
【0018】
本開示の実施の形態によると、配線基板及びヘッドマウントディスプレイの性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施の形態によるヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態によるヘッドマウントディスプレイを示す正面図(
図1のII線矢視図)である。
【
図3】
図3は、一実施の形態によるヘッドマウントディスプレイの表示装置を示す断面図(
図2のIII-III線断面図)である。
【
図4】
図4は、一実施の形態によるヘッドマウントディスプレイの表示装置を示す断面図(
図2のIV-IV線断面図)である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による配線基板を示す拡大平面図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図5のVI-VI線断面図)である。
【
図7】
図7は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図5のVII-VII線断面図)である。
【
図8A】
図8Aは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8B】
図8Bは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8C】
図8Cは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8D】
図8Dは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8E】
図8Eは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8F】
図8Fは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8G】
図8Gは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8H】
図8Hは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8I】
図8Iは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8J】
図8Jは、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例による配線基板を示す平面図である。
【
図10】
図10は、第1変形例による配線基板を示す拡大平面図である。
【
図11】
図11は、第2変形例による配線基板を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2変形例による配線基板を示す拡大平面図である。
【
図13】
図13は、第3変形例による配線基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、
図1乃至
図8Jにより、一実施の形態について説明する。
図1乃至
図8Jは本実施の形態を示す図である。
【0021】
以下に示す各図は、模式的に示した図である。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されず、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
【0022】
以下の実施の形態において、「X方向」とは、配線基板の一辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ配線基板の他の一辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向及びY方向の両方に垂直かつ配線基板の厚み方向に平行な方向である。「表面」とは、Z方向プラス側の面であって、ヘッドマウントディスプレイの装着者側の面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面であって、ヘッドマウントディスプレイの装着者側の面と反対側の面をいう。
【0023】
図1乃至
図7を参照して、本実施の形態によるヘッドマウントディスプレイ(以下、単にHMDと記す)の構成について説明する。本実施の形態によるHMDは、透過型(シースルー型)のHMDである。なお、本明細書中「HMD」とは、装着者の頭部に装着されるディスプレイを意味している。このHMDには、スマートグラス(AR、MR等)等も含まれている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態によるHMD90は、フレーム91と、フレーム91に取り付けられた透明な表示装置95と、フレーム91に取り付けられた撮像部99(
図2参照)とを備えている。本実施の形態では、HMD90は、右目用の表示装置95と左目用の表示装置95とを備えており、いわゆる眼鏡型のHMDである。なお、右目用の表示装置95と、左目用の表示装置95とは互いに略同一の構造を有している。また、各表示装置95は互いに同期しており、左右で同じ画像または左右で対応する画像を表示するように構成されている。さらに、2つの表示装置95は、個別に制御可能になっていても良く、2つの表示装置95は、互いに異なる画像を表示しても良い。なお、HMD90は、単一の表示装置95を備える、いわゆるゴーグル型のHMDであっても良い。
【0025】
HMD90のフレーム91は、リム92と、リム92に連結された一対のテンプル93とを有している。各表示装置95は、それぞれ、リム92に嵌め込まれている。本実施の形態では、リム92に、HMD90の無線通信用回路94aが設けられている。
【0026】
また、一対のテンプル93には、各表示装置95を制御するための制御部94bが設けられている。この制御部94bは、映像光を生成する映像表示部(図示せず)を含んでいても良い。本実施の形態では、各テンプル93に、制御部94bがそれぞれ1つずつ配置されている。そして、右側のテンプル93に配置された制御部94bが、右目用の表示装置95を制御し、左側のテンプル93に配置された制御部94bが、左目用の表示装置95を制御するように構成されている。
【0027】
次に、表示装置95について説明する。
図2および
図3に示すように、表示装置95は、基材96と、基材96上に設けられた配線基板10と、配線基板10に積層され、基材96と配線基板10との間に設けられた表示部97とを有している。本実施の形態では、配線基板10は、基材96の全域を覆っている。なお、図示はしないが、配線基板10が、基材96の一部のみを覆っていても良い。
【0028】
基材96の材料としては、可視光線領域での透明性を有する材料であれば良い。基材96としては、例えばガラス基材を用いることができる。本実施の形態では、HMD90が装着者に装着されたとき、基材96は、装着者に遠い側に配置され、配線基板10は、装着者に近い側に配置されるようになっている。すなわち、HMD90が装着者に装着されたとき、配線基板10は、基材96と装着者との間に配置されるようになっている。これにより、例えば装着者がHMD90を装着した際に、HMD90が周囲の構造物や他人に接触した場合であっても、配線基板10が、周囲の構造物等に接触することを抑制できる。このため、配線基板10の後述するメッシュ配線層20の後述する第1方向配線21及び第2方向配線22が、周囲の構造物等に接触することによって断線してしまうことを抑制できる。なお、HMD90が装着者に装着されたとき、基材96が装着者に近い側に配置され、配線基板10が装着者に遠い側に配置されるようになっていても良い。
【0029】
なお、本明細書中「透明性を有する」とは、可視光線の透過率が85%以上であることを意味する。なお、可視光線とは、波長が400nm以上700nm以下の光線のことをいう。また、可視光線の透過率が85%以上であるとは、測定する部材(例えば基材96)に対して吸光度の測定を行った際、400nm以上700nm以下の全波長領域で、その透過率が85%以上となることをいう。吸光度の測定は、分光光度計(日本分光株式会社製の分光器:V-670)を用いて行う。
【0030】
表示部97は、ハーフミラーを含んでいる。このハーフミラーは、表示装置95の前方の外界光と、映像光を生成する映像表示部(図示せず)からの映像光とを重ね合わせる部材である。また、表示部97は、画像が非表示のとき、画像の表示領域が透明になるように構成されており、表示部97を透過する光によって、装着者に外界を視認させることができるようになっている。そして、装着者は、外界を視認しながら、映像光により形成された虚像(画像)を視認できるようになっている。図示された例では、表示部97は、正面視において基材96の略中央部に重なる位置に設けられている(
図2参照)。しかしながら、これに限られず、表示部97は、正面視において基材96の任意の領域に重なる位置に設けられていても良い。
【0031】
なお、表示装置95としては、プリズムやホログラムにより画像を投影する方式の表示装置であっても良く、又は、透過型の液晶ディスプレイ等を用いた表示装置であっても良い。
【0032】
次に、撮像部99について説明する。撮像部99は、例えば被写体を撮像した画像を生成するデジタルカメラ等のカメラであっても良い。本実施の形態では、撮像部99は、赤外光を撮像可能な赤外線カメラである。しかしながら、これに限られず、撮像部99は、可視光を撮像可能なカメラであっても良い。
図4に示すように、撮像部99は、装着者の眼を撮像する。すなわち、後述する電子部品(発光素子)17が装着者の眼に対して照射した赤外光は、装着者の眼で反射し、その反射光が撮像部99に入射する。なお、撮像部99は、装着者の眼で反射した赤外光により得られる像を撮像するように構成されていても良い。
【0033】
制御部94bは、撮像部99が撮像した画像から装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向を検出する。制御部94bは、公知の視線検出技術を用いて、装着者の眼の位置情報及び視線方向を検出しても良い。例えば、制御部94bは、赤外光が装着者の角膜に反射することで得られる基点と、装着者の瞳孔との位置関係に基づいて、装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向を検出しても良い。また、制御部94bは、虹彩又は瞳孔の位置に基づいて、装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向を検出しても良い。なお、撮像部99が装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向を検出する機能を備えていても良い。
【0034】
検出された装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向は、HMD90のキャリブレーション及び装着者の視線追跡機能に適用できる。HMD90のキャリブレーションとは、HMD90の起動時又はアプリケーションの起動時等において、表示部97における映像の表示位置を調整することである。このキャリブレーションでは、例えば、検出された装着者の眼の位置情報を用いることにより、表示部97における映像の表示位置を調整できる。HMD90の視線追跡機能では、例えば、検出された装着者の視線方向を用いることにより、視線追跡を行うことができる。
【0035】
なお、撮像部99が撮像した画像は、外部の情報処理装置へ送信されても良い。この場合、外部の情報処理装置が受信した画像を用いて、装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向を検出しても良い。
【0036】
次に、
図5乃至
図7を参照して、配線基板の構成について説明する。
図5乃至
図7は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0037】
図5乃至
図7に示す配線基板10は、上述した表示装置95(
図1及び
図2参照)に用いられる基板である。配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された複数の電子部品17とを備えている。具体的には、配線基板10は、基板11上に配置されたプライマー層15と、プライマー層15上に配置されたメッシュ配線層20とを備えている。また、メッシュ配線層20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0038】
基板11の形状は、平面視で略長方形であっても良い。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。基板11の厚みT
1(
図6参照)は、例えば2μm以上であっても良く、10μm以上であっても良く、15μm以上であっても良い。基板11の厚みT
1を2μm以上とすることにより、配線基板10の強度を保持し、メッシュ配線層20の後述する第1方向配線21及び第2方向配線22が変形しにくいようにできる。また、基板11の厚みT
1は、例えば200μm以下であっても良く、50μm以下であっても良く、25μm以下であっても良い。なお、基板11の平面形状は、その角部がそれぞれ丸みを帯びた長方形であっても良い。
【0039】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性と電気絶縁性とを有する材料であれば良い。基板11の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート樹脂又はフッ素樹脂材料等の有機絶縁性材料が用いられても良い。ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート等であっても良い。アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレート等であっても良い。ポリオレフィン系樹脂は、シクロオレフィン重合体等であっても良い。セルロース系樹脂は、トリアセチルセルロース等であっても良い。フッ素樹脂材料は、PTFE又はPFA等であっても良い。例えば、基板11の材料としては、シクロオレフィンポリマー、又はポリノルボルネンポリマー(住友ベークライト社製)等の有機絶縁性材料が用いられても良い。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、又はセラミックス等が適宜選択されても良い。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であっても良い。また、基板11はフィルム状の部材であっても良く、板状の部材であっても良い。
【0040】
本実施の形態では、基板11は、透明性を有している。基板11は、可視光線の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であっても良い。なお、基板11の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。基板11の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、配線基板10の透明性を高め、表示装置95を視認しやすくできる。
【0041】
基板11のガラス転移温度は、150℃以上400℃以下であっても良い。ここで、本実施の形態では、後述するように、電子部品17は、フレキシブルプリント基板等を介することなく、メッシュ配線層20に形成された端子部18に直接実装されている。このため、基板11のガラス転移温度が150℃以上であることにより、電子部品17を端子部18に直接実装する際に、基板11が熱により損傷を受けることを抑制できる。また、基板11のガラス転移温度が400℃以下であることにより、製造工程又は完成品の使用環境下における基板11の変色を抑制できる。このため、基板11の黄色度を低く抑えることができ、基板11の透明性を確保できる。
【0042】
次に、プライマー層15について説明する。プライマー層15は、メッシュ配線層20と、基板11との密着性を向上させる役割を果たす。本実施の形態では、プライマー層15は、基板11の第1面11aの略全域に設けられている。これにより、プライマー層15のパターニングが不要になる。このため、プロセス工程数を削減できる。なお、プライマー層15は、基板11の第1面11aのうち、メッシュ配線層20が設けられる領域のみに設けられていても良い。
【0043】
このプライマー層15は、高分子材料を含んでいる。これにより、メッシュ配線層20と、基板11との密着性を効果的に向上できる。この場合、プライマー層15の材料としては、無色透明の高分子材料を用いることができる。
【0044】
プライマー層15は、アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含んでいても良い。これにより、メッシュ配線層20と、基板11との密着性をより効果的に向上できる。プライマー層15がアクリル系樹脂を含んでいる場合、アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体をモノマー成分とするポリマーが挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、2-エチルへキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレート等を主成分として、これらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル等)を共重合したポリマーが用いられても良い。また、上記モノマーの他に、アクリル基若しくはメタクリル基を1分子に2個有するダイマー、又は、多官能ウレタンアクリレート等を、主成分となる樹脂に対して添加しても良く、エポキシ基を1分子に2個以上有する有機分子を主成分となる樹脂に対して添加しても良い。これにより、アクリル系樹脂を架橋することで、樹脂を硬化してプライマー層15を形成できる。硬化形成したプライマー層は、密着性に優れている。また、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性若しくは耐溶剤性、又はこれらの組合せに優れた機能の発現も可能である。このため、メッシュ配線層20と基板11との密着性が、配線形成時又は経時的に低下することを抑制できる。
【0045】
また、プライマー層15の高分子材料は、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線などを高分子材料に対して照射することにより架橋することで硬化されていても良い。これにより、プライマー層15の耐傷性及び耐熱性を向上できる。
【0046】
また、プライマー層15は、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であっても良い。なお、プライマー層15の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。プライマー層15の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、配線基板10の透明性を高め、表示装置95を視認しやすくできる。
【0047】
プライマー層15の厚みT
2(Z方向の長さ、
図5参照)は、0.05μm以上0.5μm以下であっても良い。プライマー層15の厚みT
2が0.05μm以上であることにより、メッシュ配線層20と、基板11との密着性を効果的に向上できる。また、プライマー層15の厚みT
2が0.5μm以下であることにより、配線基板10の透明性を確保できる。
【0048】
本実施の形態において、メッシュ配線層20は、電磁波の送受信部(アンテナ)として構成されていても良い。この場合、メッシュ配線層20は、アレイアンテナとして構成されていても良い。このように、メッシュ配線層20を、アレイアンテナとして構成する場合、直進性の高いミリ波を送受信するミリ波用アンテナ性能を高めることができる。なお、アレイアンテナとは、複数のアンテナ素子(放射素子)を規則的に配置したアンテナであって、素子の励振の振幅及び位相を独立して制御できるアンテナをいう。
【0049】
図5乃至
図7に示すように、メッシュ配線層20は、基板11上に形成されている。図示された例においては、メッシュ配線層20は、基板11の全面に存在する。しかしながら、これに限られず、メッシュ配線層20は、基板11上の一部領域のみに存在していても良い。
【0050】
メッシュ配線層20は、ミリ波用アンテナの他、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。なお、配線基板10が電波送受信機能を有していない場合、各メッシュ配線層20は、例えばホバリング機能、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を果たしても良い。なお、ホバリング機能とは、使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能をいう。
【0051】
図5に示すように、メッシュ配線層20は、それぞれ金属線が格子状又は網目状に配置されたパターン形状を有している。このパターン形状は、X方向及びY方向に繰り返し配置されている。すなわちメッシュ配線層20は、第1方向(例えば、Y方向)に延びる部分(後述する第1方向配線21)と、第2方向(例えば、X方向)に延びる部分(後述する第2方向配線22)とから構成されるパターン形状を有している。
【0052】
図5に示すように、メッシュ配線層20は、複数の配線を有している。具体的には、メッシュ配線層20は、複数の第1方向配線21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22とを有している。複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、格子状又は網目状の形状を形成している。各第1方向配線21は、一方向(Y方向)に直線状に延びている。各第2方向配線22は、一方向に直交する他の方向(X方向)に直線状に延びている。なお、第1方向配線21及び第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれにも平行でない方向に延びていても良い。
【0053】
メッシュ配線層20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。これにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。
【0054】
各開口部23の平面形状は、それぞれ、平面視で略正方形である。すなわち、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP1は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP2は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、メッシュ配線層20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、メッシュ配線層20を肉眼で視認しにくくできる。また、第1方向配線21のピッチP1は、第2方向配線22のピッチP2と等しい。このため、各開口部23は、それぞれ平面視略正方形状となっており、各開口部23からは、透明性を有するプライマー層15及び基板11が露出している。このため、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23の一辺の長さL3は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに直交しているが、これに限らず、互いに鋭角又は鈍角に交差していても良い。さらに、開口部23の形状は、全面で同一形状同一サイズとしても良く、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0055】
図6に示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形又は略正方形となる形状を有している。この場合、第1方向配線21の断面形状は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。
図7に示すように、各第2方向配線22は、その長手方向に垂直な断面(すなわち、Y方向断面)が略長方形又は略正方形であり、上述した第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一の形状を有している。この場合、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。第1方向配線21の断面形状と第2方向配線22の断面形状とは、必ずしも略長方形又は略正方形でなくても良い。例えば、第1方向配線21の断面形状と第2方向配線22の断面形状とが、表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形、あるいは、幅方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0056】
本実施の形態において、第1方向配線21の線幅W
1(
図6参照)及び第2方向配線22の線幅W
2(
図7参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。ここで、第1方向配線21の線幅W
1は、その長手方向に垂直な断面における幅(X方向の長さ)であり、第2方向配線22の線幅W
2は、その長手方向に垂直な断面における幅(Y方向の長さ)である。例えば、第1方向配線21の線幅W
1は0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択でき、0.2μm以上2.0μm以下であっても良い。また、第2方向配線22の線幅W
2は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択でき、0.2μm以上2.0μm以下であっても良い。
【0057】
第1方向配線21の高さH
1(
図6参照)及び第2方向配線22の高さH
2(
図7参照)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。ここで、第1方向配線21の高さH
1及び第2方向配線22の高さH
2は、それぞれZ方向の長さである。第1方向配線21の高さH
1及び第2方向配線22の高さH
2は、それぞれ例えば60nm以上5.0μm以下の範囲で選択できる。
【0058】
ここで、
図6及び
図7に示すように、メッシュ配線層20は、第1暗色層21c、22cと、金属層21m、22mと、第2暗色層21d、22dとを有している。このうち、金属層21m、22mは、第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとを含んでいる。なお、第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとは、互いに同一の金属により構成され得る。この場合、第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとは、互いに区別できなくても良い。なお、第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとは、互いに区別できても良い。
【0059】
上述した第1暗色層21c、22cは、基板11上に配置されている。具体的には、第1暗色層21c、22cは、プライマー層15上に配置されている。第1金属層21a、22aは、第1暗色層21c、22c上に配置されている。第2金属層21b、22bは、第1金属層21a、22a上に配置されている。第2暗色層21d、22dは、第1暗色層21c、22c、第1金属層21a、22a及び第2金属層21b、22bを覆っている。すなわち、第1方向配線21は、プライマー層15上に配置された第1暗色層21cと、第1暗色層21c上に配置された第1金属層21aと、第1金属層21a上に配置された第2金属層21bと、第1暗色層21c、第1金属層21a及び第2金属層21bを覆う第2暗色層21dとを有している。また、第2方向配線22は、プライマー層15上に配置された第1暗色層22cと、第1暗色層22c上に配置された第1金属層22aと、第1金属層22a上に配置された第2金属層22bと、第1暗色層22c、第1金属層22a及び第2金属層22bを覆う第2暗色層22dとを有している。
【0060】
このうち、第1暗色層21c、22cは、メッシュ配線層20に対して基板11側から入射する可視光の反射を抑制することにより、メッシュ配線層20を肉眼で視認しにくくするための層である。
【0061】
第1暗色層21c、22cは、例えば黒色等の暗色の層であっても良い。第1暗色層21c、22cは、スパッタリング法又は蒸着法等によって形成された金属層に、暗色化処理(黒化処理)を施すことにより形成されても良い。この場合、第1暗色層21c、22cは、金属酸化物又は金属硫化物からなる層として形成されても良い。また、第1暗色層21c、22cは、パラジウム又はテルルを含む層として形成されても良い。また、第1暗色層21c、22cは、暗色の金属層として、スパッタリング法又は蒸着法等によって、プライマー層15の表面上に形成されても良い。このとき、第1暗色層21c、22cは、銅、ニッケル又はクロム(以下銅等とも記す)からなる層であっても良い。また、第1暗色層21c、22cは、銅等の合金、銅等の単体金属の窒化物若しくは酸化物、又は、銅等の合金の窒化物若しくは酸化物等からなる層であっても良い。
【0062】
第1暗色層21c、22cの表面粗さSa(面の算術平均高さ)は、5nm以上200nm以下であっても良い。第1暗色層21c、22cの表面粗さSaが5nm以上であることにより、第1暗色層21c、22cにおける可視光の反射を抑えることができる。このため、メッシュ配線層20を観察者の肉眼で視認しにくくできる。第1暗色層21c、22cの表面粗さSaが200nm以下であることにより、第1暗色層21c、22cのヘイズ値が高くなりすぎることを抑制できる。これにより、第1暗色層21c、22cの存在を観察者が認識しにくくできる。このため、メッシュ配線層20を観察者の肉眼で視認しにくくできる。第1暗色層21c、22cの表面粗さSaを測定する場合、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK-X1000))を用いて、ISO 25178に基づいて、第1暗色層21c、22cの裏面における表面粗さSaを測定する。第1暗色層21c、22cの表面粗さSaを測定する際、まず、配線基板10に対して、レーザーが基板11の第2面11b側から照射されるように、配線基板10をレーザー顕微鏡にセットする。対物レンズの倍率は50倍にセットする。この場合の測定領域は、約270μm×200μmである。次に、配線基板10に対して、基板11の第2面11b側からレーザーを照射する。このようにして、第1暗色層21c、22cの表面粗さSaを測定する。このような測定方法によれば、第1暗色層21c、22c上に第1金属層21a、22aと第2金属層21b、22bとを積層した後でも、第1暗色層21c、22cの表面粗さSaを測定できる。
【0063】
第1暗色層21c、22cの厚みd1c、d2cは、0.1μm以上5.0μm以下であっても良く、0.2μm以上4.5μm以下であっても良く、0.3μm以上4.0μm以下であっても良い。第1暗色層21c、22cの厚みd1c、d2cが0.1μm以上であることにより、プライマー層15と第1暗色層21c、22cとの密着性、及び第1暗色層21c、22cと第1金属層21a、22aとの密着性を向上できる。また、第1暗色層21c、22cの厚みd1c、d2cが5.0μm以下であることにより、第1暗色層21c、22cのヘイズ値が高くなりすぎることを抑制でき、第1暗色層21c、22cの存在を観察者が認識しにくくできる。このため、メッシュ配線層20を観察者の肉眼で視認しにくくできる。また、第1暗色層21c、22cの厚みd1c、d2cが5.0μm以下であることにより、メッシュ配線層20の形成時間を短縮できる。
【0064】
第1金属層21a、22aは、基板11とメッシュ配線層20との密着性を向上させる役割を果たす。また、第1金属層21a、22aは、第2金属層21b、22bを電解めっきによって形成する際のシード層としての役割を果たす。第1金属層21a、22aは、スパッタリング法又は蒸着法等によって形成されていても良い。また、第1金属層21a、22aは、第1暗色層21c、22cと同様の方法によって形成されていても良い。
【0065】
第1金属層21a、22aの厚みd1a、d2aは、10nm以上1000nm以下であっても良く、30nm以上500nm以下であっても良く、50nm以上300nm以下であっても良い。第1金属層21a、22aの厚みd1a、d2aが10nm以上であることにより、第2金属層21b、22bを第1金属層21a、22a上に形成する際に、第2金属層21b、22bを効果的に支持できる。また、第1金属層21a、22aの厚みd1a、d2aが1000nm以下であることにより、メッシュ配線層20の形成時間を短縮できる。
【0066】
第2金属層21b、22bは、第1方向配線21の高さH1及び第2方向配線22の高さH2を高くする役割を果たす。これにより、第1方向配線21及び第2方向配線22の抵抗値を低減できる。第2金属層21b、22bは、めっき法等によって形成されていても良く、電解めっき法によって形成されていても良い。
【0067】
第2金属層21b、22bの厚みd1b、d2bは、50nm以上4990nm以下であっても良く、100nm以上2000nm以下であっても良く、200nm以上1800nm以下であっても良い。第2金属層21b、22bの厚みd1b、d2bが50nm以上であることにより、第1方向配線21の高さH1及び第2方向配線22の高さH2を高くでき、第1方向配線21及び第2方向配線22の抵抗値を低減できる。第2金属層21b、22bの厚みd1b、d2bが4990nm以下であることにより、メッシュ配線層20の形成時間を短縮できる。
【0068】
第1暗色層21c、22cと、第1金属層21a、22aとは、同一の結晶特性を有していても良い。一方、第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとは、互いに異なる結晶特性を有していても良い。第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとは、結晶分率、結晶構造、結晶子の大きさ及び結晶面間隔のうちの少なくとも1つが互いに異なっていても良い。例えば、第1金属層21a、22aは、CuKα線をX線源として用いて測定される(111)面の回折角2θが、第2金属層21b、22bの(111)面の回折角2θよりも大きくても良い。例えば、第1金属層21a、22aは、CuKα線をX線源として用いて測定される(111)面の回折角2θが、43.430°以下となる結晶特性を有していても良い。これにより、第1暗色層21c、22cと、第1金属層21a、22aとの密着性を向上できる。この場合、上述した回折角2θは、43.420以下であっても良く、43.410°以下であっても良い。また、上述した回折角2θの下限は特に限定されないが、43.250°以上であっても良く、43.300°以上であっても良く、43.350°以上であっても良い。なお、回折角は、X線回折装置(株式会社リガク社製、Smart Lab、9kWタイプ)を用いて測定する。第1金属層21a、22aの(111)面の回折角2θ、及び、第2金属層21b、22bの(111)面の回折角2θは、それぞれ、給電部40において測定する。後述するように、給電部40は、第1金属層21a、22aを構成する第2金属膜51の一部、及び第2金属層21b、22bを構成する第3金属膜52の一部によって、第1金属層21a、22a及び第2金属層21b、22bと同時に形成される。このため、給電部40において、第1金属層21a、22aの(111)面の回折角2θ、及び、第2金属層21b、22bの(111)面の回折角2θを測定できる。この場合、線幅W1、W2が比較的狭いメッシュ配線層20において、第1金属層21a、22aの(111)面の回折角2θ等を測定する場合と比較して、第1金属層21a、22aの(111)面の回折角2θ等を正確に測定できる。以下、測定条件を示す。
測定モード:2θ/θ測定(Out-Plane)
X線源:Cu-Kα 45kV-50mA
光学系:集中法
入射側光学系1:ソーラースリット 5deg
入射側光学系2:可変スリット(IS)1deg
長手制限スリット:10mm
受光側光学系1:可変スリット(RS1)1deg、(RS2)0.3mm
受光側光学系2:PSA OPEN/ソーラースリット 5deg
検出器:シンチレーションカウンター
測定範囲:35-80deg
ステップ:0.02deg
計測時間:2.0deg/min
【0069】
第2金属層21b、22bは、CuKα線をX線源として用いて測定される(111)面の回折角2θが、43.4°未満となる結晶特性を有していても良い。これにより、第2金属層21b、22bをエッチングによって形成する際に、第2金属層21b、22bの成形性を向上できる。第2金属層21b、22bの(111)面の回折角2θは、43.390°以下であっても良く、43.380°以下であっても良く、43.370°以下であっても良い。
【0070】
次に、第2暗色層21d、22dについて説明する。第2暗色層21d、22dは、メッシュ配線層20による可視光の反射を抑制することにより、メッシュ配線層20を肉眼で視認しにくくするための層である。第2暗色層21d、22dは、メッシュ配線層20の全域を覆っている。この第2暗色層21d、22dは、給電部40の全域を覆っていても良い。
【0071】
第2暗色層21d、22dは、例えば黒色等の暗色の層であっても良い。また、第2暗色層21d、22dは、表面が粗化された層であっても良い。
【0072】
第2暗色層21d、22dの表面粗さSaは、5nm以上100nm以下であっても良い。第2暗色層21d、22dの表面粗さSaが5nm以上であることにより、第2暗色層21d、22dの表面における可視光の反射を抑えることができる。このため、第2暗色層21d、22dに覆われたメッシュ配線層20を観察者の肉眼で視認しにくくできる。第2暗色層21d、22dの表面粗さSaが100nm以下であることにより、第2暗色層21d、22dのヘイズ値が高くなりすぎることを抑制できる。これにより、第2暗色層21d、22dの存在を観察者が認識しにくくできる。このため、第2暗色層21d、22dに覆われたメッシュ配線層20を観察者の肉眼で視認しにくくできる。この場合、表面粗さSaは、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK-X1000)を用いて、ISO 25178に基づいて求める。
【0073】
第2暗色層21d、22dは、例えば、メッシュ配線層20又は給電部40を構成する金属材料の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施すことにより、メッシュ配線層20又は給電部40を構成していた一部分から形成されても良い。この場合、第2暗色層21d、22dは、金属酸化物や金属硫化物からなる層として形成されても良い。また、第2暗色層21d、22dは、暗色材料の塗膜、又は、ニッケル若しくはクロム等のめっき層として、メッシュ配線層20又は給電部40の表面上に形成されても良い。さらに、第2暗色層21d、22dは、メッシュ配線層20又は給電部40の表面を粗化することにより、形成されても良い。
【0074】
第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であれば良い。すなわち、第1暗色層21c、22c、第1金属層21a、22a、第2金属層21b、22b及び第2暗色層21d、22dの材料は、導電性を有する金属材料であれば良い。本実施の形態において第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄若しくはニッケルなどの金属材料、又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。また、第1金属層21a、22aの材料と、第2金属層21b、22bの材料とは、互いに同一の材料であっても良い。これにより、第1金属層21a、22aと、第2金属層21b、22bとの密着性を向上できる。
【0075】
メッシュ配線層20の全体の開口率Atは、例えば87%以上100%未満の範囲であっても良い。メッシュ配線層20の全体の開口率Atをこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保できる。メッシュ配線層20の全体の開口率Atは、95%以上100%未満であっても良い。これにより、配線基板10の導電性を確保しつつ、配線基板10の透明性を高くできる。なお、開口率とは、所定の領域(例えばメッシュ配線層20の全域)の単位面積に占める、開口領域の面積の割合(%)をいう。開口領域とは、第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域をいう。
【0076】
このようなメッシュ配線層20には、複数の端子部18が形成されている。端子部18は、第1方向配線21及び第2方向配線22のそれぞれに形成されている。この端子部18は、第1方向配線21及び第2方向配線22と同一の材料により形成されていても良い。端子部18は、第1方向配線21の線幅W1及び第2方向配線22の線幅W2よりも大きい寸法を有していても良い。
【0077】
次に、電子部品17について説明する。本実施の形態では、電子部品17は、例えばLED等の発光素子であっても良い。この場合、発光素子は、赤外波長を含む光を照射しても良い。この場合、発光素子(LEDチップ)は、主波長840nmに輝度ピークを有していても良く、780nm未満の発光強度をほぼ含まなくても良い。なお、発光素子は、可視光帯域の光を照射しても良い。
【0078】
複数の電子部品17は、互いに間隔を空けて配置されているとともに、互いに異なる端子部18に実装されている。本実施の形態では、電子部品17は、フレキシブルプリント基板等を介することなく、端子部18に直接実装されている。また、各々の電子部品17は、等価回路が2極となるように、2つの端子部18に接続されている。この場合、電子部品17は、第1方向配線21に形成された端子部18と、第2方向配線22に形成された端子部18とに接続されている。
【0079】
このような配線基板10は、フレーム91に取り付けられる周縁部10a(
図2の網掛け部)と、周縁部10aに取り囲まれる中央部10bとを含んでいる。周縁部10aは、フレーム91からの距離が100mm以下となる領域であっても良い。本実施の形態では、上述した電子部品17は、中央部10bに配置されている。これにより、各々の電子部品17(発光素子)から光を照射する際に必要とするエネルギーを少なくできる。
【0080】
なお、図示しないが、プライマー層15上であって、メッシュ配線層20を覆うように保護層が形成されていても良い。保護層は、メッシュ配線層20を保護するものであり、基板11のうち少なくともメッシュ配線層20を覆うように形成される。保護層の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0081】
再度
図2を参照すると、メッシュ配線層20に、給電部40が電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄若しくはニッケルなどの金属材料、又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。この給電部40は、配線基板10がHMD90に組み込まれた際、HMD90のフレーム91に設けられた無線通信用回路94a(
図2参照)と電気的に接続される。ここで、給電部40は、HMD90の正面視において、フレーム91のリム92に重なる位置に設けられていることが好ましい。これにより、メッシュ配線層20と無線通信用回路94aとの接続を更に容易にできるとともに、外界の視認性が妨げられることを抑制できる。
【0082】
次に、
図8A乃至
図8Jを参照して、本実施の形態による配線基板10の製造方法について説明する。
【0083】
まず、
図8Aに示すように、第1面11aと第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む基板11を準備する。基板11は、透明性を有する。
【0084】
次に、
図8Bに示すように、基板11上に、プライマー層15を形成する。この際、プライマー層15は、基板11の第1面11aの略全域に形成されても良い。プライマー層15を形成する方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、スロットダイコート、ダイコート、ナイフコート、インクジェットコート、ディスペンサーコート、キスコート、スプレーコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷を用いても良い。
【0085】
次に、プライマー層15上に、複数の第1方向配線21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22とを含むメッシュ配線層20を形成する。
【0086】
この際、まず、
図8Cに示すように、プライマー層15の表面の略全域に第1金属膜55を積層する。この第1金属膜55は、第1暗色層21c、22cを形成するための膜である。第1金属膜55は、例えば、銅等、銅等の合金、銅等の単体金属の窒化物若しくは酸化物、又は、銅等の合金の窒化物若しくは酸化物等を用いて、スパッタリング法又は蒸着法等によって形成されても良い。第1金属膜55の厚みは、10nm以上1000nm以下であっても良い。本実施の形態において第1金属膜55は、銅を含んでいても良い。
【0087】
図8Dに示すように、第1金属膜55の表面の略全域に第2金属膜51を積層する。この第2金属膜51は、第1金属層21a、22aを形成するための膜である。第2金属膜51は、例えば、スパッタリング法によって形成されても良い。第2金属膜51の厚みは、10nm以上1000nm以下であっても良い。本実施の形態において第2金属膜51は、銅を含んでいても良い。
【0088】
次に、
図8Eに示すように、第2金属膜51上に、第3金属膜52を積層する。この第3金属膜52は、第2金属層21b、22bを形成するための膜である。第3金属膜52は、第2金属膜51をシード層として、電解めっき法を用いて形成されても良い。第3金属膜52の厚みは、50nm以上4990nm以下であっても良い。本実施の形態において第3金属膜52は、銅を含んでいても良い。なお、上述した第1金属膜55を積層する工程(
図8C)及び第2金属膜51を積層する工程(
図8D)は、図示しない真空チャンバ内で行われても良い。一方、第3金属膜52を積層する工程(
図8E)は、図示しない真空チャンバ外で行われても良い。
【0089】
次いで、
図8Fに示すように、第3金属膜52の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト53を供給する。この光硬化性絶縁レジスト53としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂が挙げられる。
【0090】
続いて、
図8Gに示すように、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト53をパターニングし、絶縁層54(レジストパターン)を形成する。この際、第1方向配線21及び第2方向配線22に対応する第3金属膜52が露出するように、絶縁層54を形成する。
【0091】
次に、
図8Hに示すように、基板11の第1面11a上の、絶縁層54に覆われていない部分に位置する第3金属膜52、第2金属膜51及び第1金属膜55を除去する。この際、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸・塩酸等の強酸、過硫酸塩、過酸化水素若しくはこれらの水溶液、又はこれらの組合せ等を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の第1面11aが露出するように第3金属膜52、第2金属膜51及び第1金属膜55をエッチングする。このウェット処理において、第3金属膜52及び第2金属膜51に使用する液と、第1金属膜55に使用する液とは、異なっていても良い。
【0092】
続いて、
図8Iに示すように、絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドン、酸又はアルカリ溶液等を用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、第3金属膜52上の絶縁層54を除去する。
【0093】
次に、
図8Jに示すように、第2暗色層21d、22dを形成する。この場合、第2暗色層21d、22dは、第1金属膜55、第2金属膜51及び第3金属膜52の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施すことにより、形成されても良い。また、第2暗色層21d、22dは、暗色材料の塗膜、又は、ニッケル若しくはクロム等のめっき層として、第1金属膜55、第2金属膜51及び第3金属膜52の表面上に形成されても良い。さらに、第2暗色層21d、22dは、第1金属膜55、第2金属膜51及び第3金属膜52の表面を粗化することにより、形成されても良い。
【0094】
このようにして、基板11と、基板11の第1面11a上に設けられたプライマー層15と、プライマー層15上に配置されたメッシュ配線層20とを有する配線基板10が得られる。この場合、メッシュ配線層20は、第1方向配線21及び第2方向配線22を含む。このとき、第1金属膜55、第2金属膜51及び第3金属膜52の一部によって、給電部40が形成されても良い。
【0095】
その後、フレーム91のリム92に嵌め込まれた基材96に配線基板10を取り付けることにより、
図1に示すHMD90が得られる。なお、基材96がフレーム91のリム92に嵌め込まれる前に、基材96に配線基板10を取り付けても良い。
【0096】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0097】
図1及び
図2に示すように、配線基板10は、表示装置95の構成要素としてHMD90に組み込まれる。HMD90の制御部94bは、撮像部99が撮像した画像から装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向を検出する。検出された装着者の眼の位置情報及び装着者の視線方向は、例えば、装着者の視線追跡機能に適用できる。
【0098】
本実施形態によれば、配線基板10が、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された複数の電子部品17とを備えている。また、メッシュ配線層20が、基板11上に配置された第1暗色層21c、22cと、第1暗色層21c、22c上に配置された第1金属層21a、22aと、第1金属層21a、22a上に配置された第2金属層21b、22bと、第1暗色層21c、22c、第1金属層21a、22a及び第2金属層21b、22bを覆う第2暗色層とを有している。また、メッシュ配線層20に複数の端子部18が形成されている。そして、複数の電子部品17は、互いに間隔を空けて配置されているとともに、互いに異なる端子部18に実装されている。これにより、電子部品17から照射される光を視認し難くできる。
【0099】
ここで、赤外波長の光は、通常は装着者の眼には視認されない。一方、高輝度LEDを発光させた場合、網膜が光を検出することにより、装着者が明るさを感じる可能性がある。そして、装着者が明るさを感じることにより、装着者の視野に光源が入り込むおそれがある。このように、装着者の視野に光源が入った場合、HMD90の視認性が低下する。とりわけ、暗所又は夜間の使用時に、HMD90の視認性が低下する。また、例えば、光子を検出できる網膜の視神経が多数の光子を同時に受光した場合、視神経が、当該光子を、赤外波長よりもエネルギーが高い光として認識する可能性が考えられる。また、視野の1点の方向から眼に向けて光が照射された場合、光束としての光の密度が高くなり、実効的に高輝度の輝点となると考えられる。例えば、2光子が網膜の錐体に飛び込んだ場合、2倍のエネルギーの1光子として感じられ得る。この場合、赤外波長である900nmの光が、半波長の450nmの緑色の光に感じられてしまう可能性がある。
【0100】
これに対して本実施の形態では、複数の電子部品17を、互いに間隔を空けて配置し、互いに異なる端子部18に実装させている。これにより、低照度の光源を用いた場合であっても、所定の照度を維持できる。このため、所定の照度を維持しつつ、装着者が明るさを感じることを抑制できる。また、低照度の光源を用いて拡散光にすることができるため、光源が視認されにくくなると推察される。
【0101】
また、本実施の形態では、電子部品17は、フレキシブルプリント基板等を介することなく、端子部18に直接実装されている。この場合、不透明なフレーム91等に電子部品17を配置する形態と比較して、電子部品17を高密度に実装でき、かつ、配置の自由度を高めることができる。また、構造上の効率だけでなく、設置場所が重要な、無線通信又は視線追跡のような機能において、性能向上に貢献することが可能になる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、HMD90において、配線基板10が、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20とを有するので、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10がHMD90に組み込まれたとき、メッシュ配線層20の開口部23から外界を視認できるので、外界の視認性が妨げられることがない。
【0103】
なお、上述した実施の形態において、電子部品17が発光素子である例について説明したが、これに限られない。例えば、電子部品17は、アンテナ駆動用の半導体素子であっても良い。この場合、配線基板10は、複数種類の電子部品17を備えていても良い。例えば、電子部品17は、発光素子と、アンテナ駆動用の半導体素子とを含んでいても良い。
【0104】
次に、配線基板の変形例について説明する。
【0105】
図9及び
図10は、配線基板の第1変形例を示している。
図9及び
図10に示す変形例は、メッシュ配線層20の周囲にダミー配線層30が設けられている点が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図8Jに示す形態と略同一である。
図9及び
図10において、
図1乃至
図8Jに示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0106】
図9に示す配線基板10において、メッシュ配線層20の周囲に沿ってダミー配線層30が設けられている。このダミー配線層30は、メッシュ配線層20とは異なり、実質的にアンテナとしての機能を果たすことはない。
【0107】
図10に示すように、ダミー配線層30は、所定の単位パターン形状をもつダミー配線30aの繰り返しから構成されている。すなわち、ダミー配線層30は、複数の同一形状のダミー配線30aを含んでおり、各ダミー配線30aは、それぞれメッシュ配線層20(第1方向配線21及び第2方向配線22)から電気的に独立している。また、複数のダミー配線30aは、ダミー配線層30内の全域にわたって規則的に配置されている。複数のダミー配線30aは、互いに平面方向に離間するとともに、基板11上に突出して配置されている。すなわち各ダミー配線30aは、メッシュ配線層20、給電部40及び他のダミー配線30aから電気的に独立している。各ダミー配線30aの形状は、それぞれ平面視で略L字形である。
【0108】
この場合、ダミー配線30aは、上述したメッシュ配線層20の単位パターン形状(
図5参照)の一部が欠落した形状をもつ。これにより、メッシュ配線層20とダミー配線層30との相違を目視で認識しにくくでき、基板11上に配置されたメッシュ配線層20を見えにくくできる。
【0109】
図10に示すように、ダミー配線30aは、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びている。具体的には、ダミー配線30aは、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31aと、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32aとを含んでいる。第1部分31aは、第1方向配線21の一部が欠落した形状をもつ。また、第2部分32aは、第2方向配線22の一部が欠落した形状をもつ。なお、第1部分31a及び第2部分32aのその他の構成は、第1方向配線21及び第2方向配線22の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。このように、ダミー配線30aが、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びていることにより、基板11上に配置されたメッシュ配線層20をさらに見えにくくできる。ダミー配線層30の開口率は、メッシュ配線層20の開口率と同一であっても良く、異なっていても良い。ダミー配線層30の開口率がメッシュ配線層20の開口率と異なっている場合、ダミー配線層30の開口率は、メッシュ配線層20の開口率に近くても良い。
【0110】
このように、メッシュ配線層20の周囲に、メッシュ配線層20から電気的に独立したダミー配線層30が設けられていることにより、メッシュ配線層20の外縁を不明瞭にできる。これにより、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線層20を見えにくくでき、HMD90の使用者がメッシュ配線層20を肉眼で認識しにくくできる。
【0111】
図11及び
図12は、配線基板の第2変形例を示している。
図11及び
図12に示す変形例は、メッシュ配線層20の周囲に互いに開口率が異なる2つ以上のダミー配線層30A、30Bが設けられている点が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図10に示す形態と略同一である。
図11及び
図12において、
図1乃至
図10に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0112】
図11に示す配線基板10において、メッシュ配線層20の周囲に沿って互いに開口率が異なる複数(この場合は2つ)のダミー配線層30A、30B(第1ダミー配線層30A及び第2ダミー配線層30B)が設けられている。具体的には、メッシュ配線層20の周囲に沿って第1ダミー配線層30Aが配置され、第1ダミー配線層30Aの周囲に沿って第2ダミー配線層30Bが配置されている。このダミー配線層30A、30Bは、メッシュ配線層20とは異なり、実質的にアンテナとしての機能を果たすことはない。
【0113】
図12に示すように、第1ダミー配線層30Aは、所定の単位パターン形状をもつダミー配線30a1の繰り返しから構成されている。また、第2ダミー配線層30Bは、所定の単位パターン形状をもつダミー配線30a2の繰り返しから構成されている。すなわち、ダミー配線層30A、30Bは、それぞれ複数の同一形状のダミー配線30a1、30a2を含んでおり、各ダミー配線30a1、30a2は、それぞれメッシュ配線層20から電気的に独立している。また、ダミー配線30a1、30a2は、それぞれダミー配線層30A、30B内の全域にわたって規則的に配置されている。各ダミー配線30a1、30a2は、それぞれ互いに平面方向に離間するとともに、基板11上に突出して配置されている。各ダミー配線30a1、30a2は、それぞれメッシュ配線層20、給電部40及び他のダミー配線30a1、30a2から電気的に独立している。各ダミー配線30a1、30a2の形状は、それぞれ平面視で略L字である。
【0114】
この場合、ダミー配線30a1、30a2は、上述したメッシュ配線層20の単位パターン形状(
図5参照)の一部が欠落した形状をもつ。これにより、メッシュ配線層20と第1ダミー配線層30Aとの相違、及び、第1ダミー配線層30Aと第2ダミー配線層30Bとの相違を目視で認識しにくくでき、基板11上に配置されたメッシュ配線層20を見えにくくできる。
図12に示すように、ダミー配線30a1、30a2は、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びている。具体的には、ダミー配線30a1は、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31a1と、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32a1とを含んでいる。ダミー配線30a2は、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31a2と、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32a2とを含んでいる。
【0115】
なお、第1ダミー配線層30Aの各ダミー配線30a1の面積は、第2ダミー配線層30Bの各ダミー配線30a2の面積よりも大きい。この場合、各ダミー配線30a1の線幅は各ダミー配線30a2の線幅と同一であるが、これに限らず、各ダミー配線30a1の線幅は各ダミー配線30a2の線幅よりも太くても良い。なお、ダミー配線30a1、30a2のその他の構成は、第1変形例におけるダミー配線30aの構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0116】
本変形例では、メッシュ配線層20及び2つ以上のダミー配線層30A、30Bの開口率は、メッシュ配線層20から、メッシュ配線層20に遠いダミー配線層30A、30Bに向けて段階的に大きくなっていても良い。言い換えれば、各ダミー配線層の開口率は、メッシュ配線層20に近いものから遠いものに向けて、徐々に大きくなっていても良い。この場合、第1ダミー配線層30Aの開口率は、メッシュ配線層20の開口率よりも大きくても良い。第2ダミー配線層30Bの開口率は、第1ダミー配線層30Aの開口率よりも大きくても良い。これにより、メッシュ配線層20及びダミー配線層30A、30Bの外縁をさらに不明瞭にできる。このため、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線層20をさらに見えにくくできる。
【0117】
このように、メッシュ配線層20から電気的に独立したダミー配線層30A、30Bが配置されていることにより、メッシュ配線層20の外縁をより不明瞭にできる。これにより、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線層20を見えにくくでき、画像表示装置60の使用者がメッシュ配線層20を肉眼で認識しにくくできる。なお、メッシュ配線層20の周囲に、互いに開口率が異なる3つ以上のダミー配線層が設けられていても良い。
【0118】
図13は、配線基板の第3変形例を示している。
図13に示す変形例は、メッシュ配線層20の平面形状が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図12に示す形態と略同一である。
図13において、
図1乃至
図12に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0119】
図13は、第3変形例によるメッシュ配線層20を示す拡大平面図である。
図13において、第1方向配線21と第2方向配線22とは、斜め(非直角)に交わっており、各開口部23の形状は、平面視で菱形である。第1方向配線21及び第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれにも平行でないが、第1方向配線21及び第2方向配線22のうちのいずれか一方がX方向又はY方向に平行であっても良い。
【0120】
上記実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【要約】 (修正有)
【課題】性能向上が可能な、配線基板及びヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】配線基板は、透明性を有する基板と、基板上に配置されたメッシュ配線層と、メッシュ配線層に電気的に接続された複数の電子部品とを備えている。メッシュ配線層は、基板上に配置された第1暗色層と、第1暗色層上に配置された金属層と、第1暗色層及び金属層を覆う第2暗色層とを有している。メッシュ配線層に複数の端子部が形成されている。複数の電子部品は、互いに間隔を空けて配置されているとともに、互いに異なる端子部に実装されている。
【選択図】
図5