(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01L21/02 A
(21)【出願番号】P 2024501624
(86)(22)【出願日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2023039120
【審査請求日】2024-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 寛士
(72)【発明者】
【氏名】三浦 猛
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0181102(US,A1)
【文献】特開2006-351620(JP,A)
【文献】特開2005-142186(JP,A)
【文献】特開2017-055010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02-H01L21/16
H01L 21/54
H01L 23/00-H01L23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の層と、
前記複数の層の異なる階層に形成された複数のパターンとを備え、
前記複数のパターンは、ID情報の二次元コードが分割されたものであり、
前記複数の層は、互いに透過波長領域の異なる物質からなる第1及び第2の層を有し、
前記複数のパターンは、前記第1の層の中に形成された第1のパターンと、前記第2の層の中に形成された第2のパターンとを有
し、
前記複数のパターンは、少なくとも一部が平面視で互いに重なり合う位置に配置されていることを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
動作時に電流が流れる活性領域と、
前記活性領域に接続された金属電極と、
前記活性領域及び前記金属電極が形成されていない余剰スペースとを備え、
前記余剰スペースに前記複数のパターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記ID情報は、品種、ロットナンバー、ウエハナンバー又はチップアドレスを示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記複数のパターンは、前記複数の層とは異なる物質からなるパターンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記複数のパターンは、前記複数の層の表面を加工した凹凸パターンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記複数のパターンの側面が傾斜面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のトレーサビリティを実現するために、品種、ロットナンバー、ウエハナンバー、チップアドレス等を識別できるID情報を素子内に形成する必要がある。しかし、サイズの小さい素子では、ID情報を形成するスペースを確保できないという問題がある。これに対し、ID情報の二次元コードを分割して素子表面の複数の余剰スペースに配置することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、素子サイズが小さく素子表面に十分な余剰スペースが無い場合、二次元コードを分割しても素子表面に形成しきれないという問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は素子サイズが小さい場合でも二次元コードを形成することができる半導体素子を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体素子は、積層された複数の層と、前記複数の層の異なる階層に形成された複数のパターンとを備え、前記複数のパターンは、ID情報の二次元コードが分割されたものであり、前記複数の層は、互いに透過波長領域の異なる物質からなる第1及び第2の層を有し、前記複数のパターンは、前記第1の層の中に形成された第1のパターンと、前記第2の層の中に形成された第2のパターンとを有し、前記複数のパターンは、少なくとも一部が平面視で互いに重なり合う位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、二次元コードを分割した複数のパターンを素子表面だけではなく素子内部の層間にも形成する。このように素子内の余剰スペースに平面方向だけでなく高さ方向も含む三次元的に二次元コードを分割配置することにより、素子サイズが小さい場合でも二次元コードを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る半導体素子を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体素子の余剰スペースを示す断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体素子の二次元コードを読取る装置を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体素子の二次元コードの読み取り方法の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る半導体素子の二次元コードの読み取り方法の他の例を示す図である。
【
図6】実施の形態2に係る半導体素子の余剰スペースを示す断面図である。
【
図7】実施の形態3に係る半導体素子の余剰スペースを示す断面図である。
【
図8】実施の形態3に係る半導体素子の二次元コードを読取る装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る半導体素子について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体素子を示す平面図である。この半導体素子1は例えば光通信用チップであり、動作時に電流が流れる導波路2などの活性領域を有する。半導体素子1の上面に金属電極3,4,5が形成されている。金属電極3,4,5は活性領域に接続されている。半導体素子1には活性領域及び金属電極3,4,5が形成されていない余剰スペース6が存在する。
【0011】
図2は、実施の形態1に係る半導体素子の余剰スペースを示す断面図である。半導体素子は積層された複数の層を有する。具体的には、半導体基板7の上に半導体層8が形成され、半導体層8の上に絶縁膜9が形成されている。半導体基板7と半導体層8の層間にパターン10が形成されている。半導体層8と絶縁膜9の層間にパターン11が形成されている。絶縁膜9の上にパターン12が形成されている。即ち、半導体素子の複数の層の異なる階層に複数のパターン10,11,12が形成されている。複数のパターン10,11,12は、品種、ロットナンバー、ウエハナンバー又はチップアドレスを示すID情報の二次元コードが分割されたものである。
【0012】
パターン10,11,12の各々は例えば18個×18個のドットからなる。ドットの大きさは例えば3μm以上である。パターン10,11,12は上下方向に互いに一部が重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
【0013】
半導体基板7は例えばInP基板であるが、Si基板又はSiC基板等でもよい。半導体層8は例えばInP層であるが、BCB又はポリイミド等の絶縁性樹脂膜でもよい。絶縁膜9は例えばSiO2又はSiN等であるが、BCB又はポリイミド等の絶縁性樹脂膜でもよい。
【0014】
パターン10,11はInGaAsPであり、それらの周囲の半導体基板7、半導体層8、絶縁膜9とは異なる物質からなる。パターン12はSiO2又はSiN等の絶縁膜の残しパターンである。なお、パターン10,11をSiO2又はSiN等の絶縁膜に変更してもよい。
【0015】
通常の半導体素子の製造工程には、InP基板上にInP層及びInGaAsP層等の半導体結晶を成長させる工程と、成長した結晶を加工してパターニングする工程と、半導体結晶を成長した後に絶縁膜を形成する工程とが存在する。この半導体素子のInGaAsP層をパターニングする工程と同時にパターン10,11を形成することができる。また、半導体素子の絶縁膜をパターニングしてパターン12を形成することができる。
【0016】
図3は、実施の形態1に係る半導体素子の二次元コードを読取る装置を示す図である。この装置は、反射型顕微鏡と透過型顕微鏡を有する。反射型顕微鏡では、反射照射用光源13から出射した光を対物レンズ14を介して半導体素子1に照射する。半導体素子1で反射した光を結像レンズ15を介してカメラ16で観察する。一方、透過型顕微鏡では、透過照明用光源17から出射した光を集光レンズ18を介して半導体素子1に照射する。半導体素子1を透過した光をカメラ16で観察する。
【0017】
反射照射用光源13の出射光は例えば可視光であり、透過照明用光源17の出射光は例えば赤外線である。可視光も赤外線も金属を透過しないため、余剰スペース6として金属電極3,4,5が形成されていない余剰スペース6に二次元コードが形成される。例えば、透過波長の短い絶縁膜からなるパターン12を可視光反射顕微鏡で観察し、赤外線が透過しないパターン10,11を赤外透過顕微鏡で観察すれば、高コントラストな二次元コード像を取得することができる。
【0018】
図4は、実施の形態1に係る半導体素子の二次元コードの読み取り方法の一例を示す図である。パターン10,11,12が赤外線に対して透明であっても、透過率が100%ではないため、各パターンの位置で焦点を合わせて観察することでパターンの認識が可能である。そこで、赤外透過型顕微鏡等を用い、焦点位置を変えながら各層のパターン10,11,12を読取る。読み取った複数のパターン10,11,12を画像処理して元の二次元コードに復元してID情報を読み取る。
【0019】
図5は、実施の形態1に係る半導体素子の二次元コードの読み取り方法の他の例を示す図である。半導体素子の複数の層は互いに透過波長領域の異なる物質からなる。ここで、半導体層及び絶縁膜などの各材料では固有の透過波長領域があり、透過波長領域では光を透過する。ここで、光のエネルギーEと波長λはE=hc/λ(h:プランク定数、c:光速)の関係がある。従って、E[eV]=1240/λ[nm]となる。一方、材料固有のバンドギャップエネルギーをEgとすると、E<Egを満たす光が材料を透過し、λ[nm]>1240/Eg[eV]を満たす波長λの光が材料を透過すると考えられる。例えばInPの場合、Eg=1.35eVとするとλ≒919nmが透過波長下限となる。ただし、結晶の均一性及び不純物の混入などにより透過波長下限は変動する。また、In
1-xGa
xAs
yP
1-yなどの四元混晶では元素の組成比によって透過波長下限は1.0~1.7umの範囲で変化する。
【0020】
赤外透過顕微鏡の出射光の波長をA,B,Cと変えて、複数の層にそれぞれ形成されたパターン10,11,12を読取る。これにより読取り時に高コントラストを確保することができ、二次元コードの復元精度、読取り精度を向上することができる。例えば、波長Aは反射顕微鏡を用いる場合は可視光帯380nm~780nm、赤外透過顕微鏡を用いる場合は1000nm以上であり、波長B,Cは1400nm以上である。
【0021】
以上、説明したように、本実施の形態では、二次元コードを分割した複数のパターンを素子表面だけではなく素子内部の層間にも形成する。このように素子内の余剰スペースに平面方向だけでなく高さ方向も含む三次元的に二次元コードを分割配置することにより、素子サイズが小さい場合でも二次元コードを形成することができる。この結果、トレーサビリティを実現することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、積層された3つの階層に二次元コードを分割形成しているが、これに限らず2つ以上の階層に二次元コードを分割形成すればよい。二次元コードの分割数と形状は任意である。
【0023】
また、パターン10,11,12は、少なくとも一部が平面視で互いに重なり合う位置に配置されている。これにより、最小限の余剰スペースに二次元コードを形成することができる。ただし、重なり合う位置に配置するパターン10,11,12の材料は、非透過材料ではなく、透過波長領域が同等の材料であることが望ましい。
【0024】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る半導体素子の余剰スペースを示す断面図である。パターン10は半導体基板7の表面を加工した凹凸パターンである。パターン11は半導体層8の表面を加工した凹凸パターンである。パターン10,11を凹凸の加工パターンにすることにより、半導体素子の層間に別の物質を形成することが不要となり、工程を簡略化することができる。なお、パターン12は残しパターンであるが、これに限らず絶縁膜9の最上層を残しつつ1つ下の層の表面を加工した凹凸パターンにしてもよい。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0025】
実施の形態3.
図7は、実施の形態3に係る半導体素子の余剰スペースを示す断面図である。複数のパターン10,11,12の側面が傾斜面である。その他の構成は実施の形態2と同様である。なお、実施の形態1の残しパターンの側面を傾斜面にしてもよい。
【0026】
図8は、実施の形態3に係る半導体素子の二次元コードを読取る装置を示す図である。この装置は微分干渉顕微鏡である。光源19から出射した光を偏光板20(ポラライザ)、DICプリズム21及び集光レンズ22を介して半導体素子1に照射する。半導体素子1を透過した光を対物レンズ23、DICプリズム24及び偏光板25(アナライザ)を介してカメラ16で観察する。
【0027】
このように微分干渉顕微鏡の光源19側又はカメラ16側に偏光板20,25を設け、微分干渉と呼ばれる原理を利用してパターン10,11,12を読み取る。微分干渉では、光源19からの光が偏光板20とDICプリズム21で2つの偏光に分けられ、2偏光が半導体素子1のわずかに異なる2点を通過した後、再びDICプリズム24で合成され、2偏光の間に光路差があると干渉が起こる。パターン境界などの勾配部では2偏光の光路差が大きくなり、干渉も生じやすく高いコントラストが得られる。そこで、パターン10,11,12のドットパターンの側面を傾斜面にする。このようなドットパターンを微分干渉顕微鏡で観察する場合、コントラストが強調されて二次元コードの読取り精度が向上する。
【符号の説明】
【0028】
1 半導体素子、2 導波路(活性領域)、3,4,5 金属電極、7 半導体基板、8 半導体層、9 絶縁膜、10,11,12 パターン
【要約】
半導体素子(1)の積層された複数の層(7,8,9)の異なる階層に複数のパターン(10,11,12)が形成されている。複数のパターン(10,11,12)は、ID情報の二次元コードが分割されたものである。