(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】シート状物の異物除去装置、シート状物の製造装置およびシート状物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20241022BHJP
D06B 1/02 20060101ALI20241022BHJP
D06B 5/08 20060101ALI20241022BHJP
B08B 11/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B08B5/00 A
D06B1/02
D06B5/08
B08B11/00 C
(21)【出願番号】P 2024514562
(86)(22)【出願日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2024005323
【審査請求日】2024-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2023034339
(32)【優先日】2023-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長崎 絢太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保
(72)【発明者】
【氏名】寺本 祐
(72)【発明者】
【氏名】山野 浩司
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-142517(JP,A)
【文献】特開2022-42761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/345656(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第115432491(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00
D06B 1/02
D06B 5/08
B08B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物を除去するシート状物の表面から間をあけて配置された気体噴射機構を備え、前記気体噴射機構から前記シート状物に向けた気体の噴射によって異物を除去するシート状物の異物除去装置であって、
前記気体噴射機構は、シート状物の表面に向けてそれぞれ気体を噴射する一対の第1の気体噴射孔と第2の気体噴射孔からなる噴射孔ユニットを有し、
前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔の内側の稜線の延長線が前記シート状物の表面よりも前記気体噴射機構側で交差する態様で傾斜している、シート状物の異物除去装置。
【請求項2】
前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔が、それぞれの外側の稜線の延長線が前記シート状物の表面上または前記シート状物の表面よりも前記気体噴射機構側で交差する態様で傾斜している、請求項1のシート状物の異物除去装置。
【請求項3】
前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔の中心軸が60~150°の角度で交差する態様で傾斜している、請求項1のシート状物の異物除去装置。
【請求項4】
前記気体噴射機構が、前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔のそれぞれの出口がシート状物の表面から0.5~20.0mm離れた位置となるように配置された、請求項1のシート状物の異物除去装置。
【請求項5】
前記第1の噴射孔と前記第2の噴射孔のそれぞれの出口の開口直径が0.5~5.0mmである、請求項1のシート状物の異物除去装置。
【請求項6】
前記気体噴射機構をシート状物の幅方向に往復運動させる揺動機構を備えた、請求項1のシート状物の異物除去装置。
【請求項7】
前記気体噴射機構が、シート状物の幅方向に並ぶ複数の前記噴射孔ユニットを有し、
前記揺動機構による前記気体噴射機構の幅方向の移動距離が、前記噴射孔ユニットの配置間隔の2倍以上である、請求項6のシート状物の異物除去装置。
【請求項8】
請求項1のシート状物の異物除去装置を備えた、シート状物の製造装置。
【請求項9】
請求項1のシート状物の異物除去装置を用いて異物を除去する工程を有する、シート状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中のシート状物に向けた気体の噴射によってシート状物から異物を除去するための、シート状物の異物除去装置、シート状物の製造装置およびシート状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムやガラスフィルム、布帛や不織布などのシート状物において、その表層に付着・発生する塵、埃、毛羽等の異物が、そのシート状物が有する機能を低下させる原因となる場合がある。このような異物は、シート状基材の製造プロセスにおいて発生させないことが理想的ではあるが、現実的に困難である場合には、何らかの方法で事後的に除去する必要がある。
【0003】
シート状物から異物を除去する装置として、シート状物の表面に気体を吹き付けると同時に吸引する方法が提案されている。(特許文献1)
さらに異物を除去する強力な方法として、搬送中のシート状物の上流方向と下流方向から超音波エアを噴出してシート状物に衝突させ、その後シート状物の表面で合流させることによって乱流領域を作り出す装置が開示されている。(特許文献2)
また、上記のようにエア等で間接的に異物を除去する方法以外に、直接的に異物を除去する方法として、シート状物表面を吸引しつつ刷毛で刷く方法が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-138136号公報
【文献】特開平7-60211号公報
【文献】特開2008-34295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法により除去できる異物は、シート状物の表面に付着しているもののみで、不織布や布帛などのシート状物の表面から内部に絡まっている異物を除去できるだけのエネルギーまでは有していない。また、特許文献2の装置では、エア同士の衝突により発生するエネルギー領域の密度を高くすることができず、強固に結着した異物を除去できない場合がある。さらに、特許文献3の方法は、シート状物にある程度の剛性があり、かつ、壊れにくい材質であれば適用できるが、薄膜や薄いガラス基板では破損や表面に傷がつく恐れがある。さらにまた、除去された異物を回収するのに高い吸引力が必要となるため、シート状物自体を吸い込み、破壊するおそれが高くなる。
【0006】
本発明は上記の状況に鑑み、シート状物に強固に付着した種々の異物を除去し得るシート状物の異物除去装置、シート状物の製造装置およびシート状物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 上記課題を解決する本発明は、異物を除去するシート状物の表面から間をあけて配置された気体噴射機構を備え、上記気体噴射機構から上記シート状物に向けた気体の噴射によって異物を除去するシート状物の異物除去装置であって、上記気体噴射機構は、シート状物の表面に向けてそれぞれ気体を噴射する一対の第1の気体噴射孔と第2の気体噴射孔からなる噴射孔ユニットを有し、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の内側の稜線の延長線が上記シート状物の表面よりも上記気体噴射機構側で交差する態様で傾斜している。
本発明の異物除去装置は、以下の[2]~[7]のいずれかの態様であることが好ましい。
[2] 上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の外側の稜線の延長線が上記シート状物の表面上または上記シート状物の表面よりも上記気体噴射機構側で交差する態様で傾斜している、上記[1]のシート状物の異物除去装置。
[3] 上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の中心軸が60~150°の角度で交差する態様で傾斜している、上記[1]または[2]のシート状物の異物除去装置。
[4] 上記気体噴射機構が、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔のそれぞれの出口がシート状物の表面から0.5~20.0mm離れた位置となるように配置された、上記[1]~[3]のいずれかの異物除去装置。
[5] 上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔のそれぞれの出口の開口直径が0.5~5.0mmである、上記[1]~[4]のいずれかのシート状物の異物除去装置。
[6] 上記気体噴射機構をシート状物の幅方向に往復運動させる揺動機構を備えた、上記[1]~[5]のいずれかのシート状物の異物除去装置。
[7] 上記気体噴射機構が、シート状物の幅方向に並ぶ複数の上記噴射孔ユニットを有し、上記揺動機構による上記気体噴射機構の幅方向の移動距離が、上記噴射孔ユニットの配置間隔の2倍以上である、上記[6]のシート状物の異物除去装置。
[8] 本発明のシート状物の製造装置は、上記[1]~[7]のいずれかのシート状物の異物除去装置を備えている。
[9] 本発明のシート状物の製造方法は、上記[1]~[7]のいずれかのシート状物の異物除去装置を用いて異物を除去する工程を有する。
【0008】
なお、本発明において、「シート状物」とは、プラスチックフィルムやガラスフィルム、布帛や不織布などの、連続的に搬送しつつ製造されるシート状の形態を有する材料の総称として用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート状物に強固に付着した種々の異物を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のシート状物の異物除去装置の一実施形態の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すシート状物の異物除去装置の気体噴射機構の拡大断面図である。
【
図3】本発明のシート状物の異物除去装置の一実施形態の概略断面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態の気流噴射機構の拡大断面図である。
【
図5】揺動機構による気体噴射機構の幅方向の移動距離を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、シート状物としてサンディングベルトを例とし、サンディングベルトから木粉を除去する際に、本発明の実施形態にかかるシート状物の異物除去装置を用いる場合について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの図面に示された実施形態によって何ら限定されるものではない。また、図面に示される特定の実施形態についての説明は、上位概念としての本発明の説明としても理解し得るものである。
【0012】
サンディングベルトは、ベルト状につながれたサンドペーパーを指すものであり、このサンディングベルトをベルトサンダに取り付けることによって、対象物の表面を連続的に研磨することが可能となる。サンディングベルトは、その対象物によって木工用や鉄工用、石材用など選択可能である。一般的にサンディングベルトで木材などの表面を連続的に研磨すると、サンディングベルトの表面が木粉によって目詰まりを起こし、研磨の性能の低下、さらには、研磨不良が発生する。そのため、一定時間使用した後は、サンディングベルトの交換が必要となる。効率よく連続的に表面を研磨するのであれば、研磨と同時に木粉を除去できることが望ましい。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る、大型のベルトサンダに取り付けられたサンディングベルト11から異物、主には木粉12を除去するために用いられるシート状物の異物除去装置1の概略斜視図である。また、
図2は、
図1の実施形態が備える気体噴射機構5の断面模式図である。また、
図3は本発明の一実施形態に係る異物除去装置の概略断面図である。異物除去装置1は、図示しないサンディングベルト11の連結部を有し、サンディングベルト11を大型のベルトサンダで搬送する搬送装置における搬送経路の一部に設置されている。
【0014】
異物除去装置1は、サンディングベルト11に気体を噴射する気体噴射機構5と、サンディングベルト11を搬送する屈曲ロール13を備えている。そして、屈曲ロール13は、気体噴射機構5の噴射面7と、サンディングベルト11の通過面を挟んで対向する位置に設けられている。なお、以下の説明においては、サンディングベルト11が異物除去装置1を通過している状態を想定し、サンディングベルト11の通過面のことを指して単に「サンディングベルト11」と記載する場合がある。
【0015】
気体噴射機構5は、噴射する気体を取り込む空間であるチャンバ6と、チャンバ6のサンディングベルト11の通過面側に設けられるプレート4から構成されている。プレート4は、サンディングベルト11へ気体を噴射する噴射孔2を有するとともに、チャンバ6に気体を供給する気体供給経路14と接続されている。
【0016】
噴射孔2は、プレート4の内部表面からプレート4のサンディングベルト11と対向する外部表面である噴射面7へと鉛直方向から傾きを有して貫通する貫通孔である。
噴射孔2の全体形状は特に限定されないが、圧損や噴流の流れを乱さない略円筒形状であることが好ましい。また、噴射孔2の中心線と垂直面での断面形状は、真円や楕円などの種々の円形状であり得るが、真円形状が最も好ましい。噴射孔2の断面形状はスリット状であってもよいが、スリット状にすると噴射孔2の開口面積が大きくなることで同じエアの供給量でもエアの流速が落ち、多量のエアが必要となるため、噴射孔2の断面形状は円形状であることが好ましい。噴射孔2の噴射面7における開口の内接円の直径は、対象とするシート状物と噴射面7との距離によって適宜最適値が決まるものではあるが、サンディングベルト11からの異物除去の場合、0.5~5.0mmの範囲であることが好ましい。
【0017】
サンディングベルト11の表面や砥粒の隙間に付着する木粉12を除去するためには、噴射孔2から噴射した噴流同士を衝突させることによって高エネルギー領域9を形成し、木粉12を振動させることが必要である。そのため、本発明における気体噴射機構5は、少なくとも2つの噴射孔2を備えている。そして、その2つの噴射孔2を第1の噴射孔2a、第2の噴射孔2bとすると、第1の噴射孔2aからの噴流と第2の気体噴射部2bからの噴流の最初の衝突点10Aが、搬送されるサンディングベルト11の表面よりも気体噴射機構5の噴射面7側に存在するよう構成されている。具体的に図を使って説明すると、
図2に示すように、2つの噴流の衝突点10Aは、第1の噴射孔2aと第2の噴射孔2bのそれぞれの内腔により規定される立体形状(噴射孔の断面形状が円形状の場合、円筒形状)を、サンディングベルト11に向かって直線的に延長した仮想領域が最初に交わる点であり、この衝突点10Aが、サンディングベルト11の表面よりも噴射面7側になるよう設計されている。言い換えると、
図2は第1の噴射孔2aの中心軸18と第2の噴射孔2bの中心軸18を含む平面での断面図であるが、この断面において、第1の噴射孔2aの内側の稜線の延長線と第2の噴射孔2bの内側の稜線の延長線が交差する点が衝突点10Aになっており、この衝突点10Aがサンディングベルト11の表面よりも気体噴射機構5の噴射面7側になるように、第1の噴射孔2aと第2の噴射孔2bが傾斜している。サンディングベルト11に付着した木粉12を効率的に除去するためには、噴射孔2から噴射した噴流同士を衝突させることによって得られる高エネルギー領域9の中に木粉12を晒すのが好ましく、そのためには、サンディングベルト11の表面に確実に高エネルギー領域9を発生させることが好ましい。
【0018】
なお、本明細書においては、このように構成された一対の第1の噴射孔2aと第2の噴射孔2bとで、1つの噴射孔ユニット3を形成しているものとして記述する。
また、
図2に示すように、第1の噴射孔2aの中心軸18と第2の噴射孔2bの中心軸18を含む平面での断面において、第1の噴射孔2aの中心軸18と第2の噴射孔2bの中心軸18が交差する角度をαとして、角度αは60°~150°の範囲であることが好ましい。この範囲とすることで、非常に高いエネルギーを有する高エネルギー領域9を形成することが可能となる。角度が60°以上であると、2つの噴射孔2から噴出された噴流同士の衝突エネルギーが高くなり、高エネルギー領域9が形成し易く除去性能が高まる。角度が150以下であると、高エネルギー領域9が形成される位置が、噴射面7に近接した位置ではなくなるので、サンディングベルト11と噴射面7とを離すことができ、噴射面7に形成された噴射孔2に木粉12が詰まることが起こりにくい。角度αの上限は120°以下がより好ましい。角度αが120°以下であると、1つの噴射孔ユニット3の幅を小さくすることができ、後述するように、噴射孔ユニット3を複数配置してより広い面積を処理できるようになる。
【0019】
なお、本実施形態においては、噴射孔2はプレート4の噴射面7に開口しているが、これに限らず、噴射孔2は噴射面7から突出して開口するノズルであってもよい。
衝突点10Aにおいて最初に衝突した2つの噴流8の一部は、反発力によって噴射面7側に戻ろうとする。この反発した噴流8の一部は再度噴射孔2の開口付近に案内され、後から噴射された噴流8と交錯する。このような噴流の衝突および交錯により、複雑な乱流が存在する高エネルギー領域9を形成することができる。
【0020】
また、本実施形態においては、2つの噴射孔2(第1の噴射孔2aと第2の噴射孔2b)のそれぞれの出口とサンディングベルト11までの距離は0.5~20.0mmが好ましく、さらに好ましくは0.9~5mmである。0.5~20mmの範囲とすることで、非常に高いエネルギーを有する高エネルギー領域9を形成し、かつ噴射孔2への木粉12の詰まりを抑制することが可能となる。
【0021】
また、本発明の実施形態においては、第1の噴射孔2aと第2の噴射孔2bのそれぞれの出口の開口直径が0.5~5.0mmであることが好ましい。この範囲とすることで、噴流を適正なエア流量にて形成することが可能となる。開口直径が0.5mm以上だと、形成される高エネルギー領域9を木粉12の大きさよりも大きくできるので、確実に木粉12を処理することができる。また、開口直径が小さくなると流路圧損が高くなるため、噴流の供給元の供給圧を高くする必要があり、装置が高額となる。開口直径が5.0mm以下だと、木粉12を処理するために必要な、高エネルギー領域9を確実に形成した上で、消費する噴流の消費流量を抑えることができるため、エネルギー効率がよい。
【0022】
サンディングベルト11は一般的には幅方向に300mm以上の長さを有しているため、噴射孔ユニット3は、サンディングベルト11の幅方向に合わせてプレート4に複数設けられていることが好ましく、この場合、各噴射孔ユニット3は均等な距離で配置されていることが好ましい。隣り合う噴射孔ユニット3の配置間隔Xは、噴射孔2の開口直径により適宜選択することができるが、5mm~50mmであることが好ましく、5mm~30mmであることがより好ましい。
図2に示すように隣り合う噴射孔ユニット3の配置間隔Xとは、噴射孔ユニット3の2つの噴射孔2から噴出された噴流8の衝突点10Aを通る軸を噴射孔ユニット3の中心軸として、隣り合う噴射孔ユニット3のそれぞれの中心軸間の距離である。配置間隔が5mm以上だと、隣り合う噴射孔ユニット3が形成する高エネルギー領域9の影響を受けることなく、狙った範囲の木粉12を除去できる。また、50mm以下だと、広範囲のサンディングベルト11の木粉12を同時に、かつ、漏らすことなく効率的に除去することができる。
【0023】
サンディングベルト11の幅方向に一列に配置された複数の噴射孔ユニット3は、サンディングベルト11の搬送方向に複数列配置されていてもよい。さらに、この場合、噴射孔ユニット3は一列ごとに幅方向にずらして配置されていてもよい。これにより、一度の処理で木粉を漏れなく除去することができる。さらには、1組の噴射孔ユニット3が処理する面積を減らすことができ、単位時間当たりの処理面積を増やすことできる。
【0024】
気体噴射機構5は、
図1に示すように、噴射孔2が形成されたプレート4が、チャンバ6に着脱可能に取り付けられた構成であることが好ましい。噴射孔2が形成されたプレート4を着脱可能とすることで、噴射孔2が破損した際や、処理するサンディングベルト11の幅が変わった際に、プレート4のみを交換することで容易に対応することが可能になる。
【0025】
また、
図3に示すように、気体噴射機構5は、サンディングベルト11の幅方向に揺動するように、揺動機構17に固定されていることが好ましい。気体噴射機構5を幅方向に揺動することにより、噴射孔ユニット3によって発生する高エネルギー領域9がサンディングベルト11の表面を幅方向に走査するように移動するので、1つの噴射孔ユニット3で処理可能な面積を増やすことができる。これにより、噴射孔ユニット3の数を増やさずともサンディングベルト11の全面を処理することができる。気体噴射機構5を揺動させる場合、周波数は、サンディングベルト11の搬送速度や、噴射孔ユニット3の配置間隔、気体噴射機構5が揺動する距離によって決定することができるが、周波数1~30Hzで揺動することが好ましく、5~20Hzで揺動することがより好ましい。
【0026】
図5を参照して、気体噴射機構5の揺動の移動距離について説明する。噴射孔ユニット3A、3B、3Cおよび3Dは配置間隔Xで隣り合って配置されている。噴射孔ユニット3Bに注目すると、気体噴射機構5は、噴射孔ユニット3Bが、噴射孔ユニット3Aの方向へ距離Yだけ移動して再び元の位置に戻り、引き続いて噴射孔ユニットCの方向へ距離Yだけ移動して再び元の位置に戻る揺動を繰り返す。1つの噴射孔ユニット3に欠陥が生じた際に、その噴射孔ユニット3の両隣の噴射孔ユニット3で補填できるように、距離Yは配置間隔X以上であることが好ましく、1.4X≦Y≦1.6Xであることがより好ましい。距離Yが配置間隔X以上であれば、仮に、噴射孔ユニット3Cに欠陥が生じて噴流を噴射できなくなったとしても、噴射孔ユニット3Bと噴射孔ユニット3Dとで、噴射孔ユニット3Cが揺動し、気体を噴射する領域を補填できる。距離Yが配置間隔Xの1.4倍以上であれば、噴射孔ユニット3Cが揺動する領域を確実に補填でき、木粉12等の異物を除去する効果が落ちない。また、距離Yが配置間隔Xの1.6倍以下であれば、揺動するための機構が大きくなり過ぎず、装置自体が大型化して装置のコストが高くなることも避けられる。
以上を気体噴射機構5全体の往復運動で説明すると、気体噴射機構5は往路で距離2Yだけ移動し、復路で距離2Yだけ移動する。したがって、気体噴射機構5の往路および復路の移動距離2Yは、配置間隔Xの2倍以上であることが好ましく、1.4・2X≦2Y≦1.6・2Xであることがより好ましい。
【0027】
噴流8に用いる気体は空気であることが好ましく、圧縮空気であることがより好ましい。噴流8の流量は、1組の噴射孔ユニット3あたり10NL/min~50NL/mであることが好ましい。
【0028】
本実施形態において、屈曲ロール13は、異物除去装置1の搬送系に一部に組み込まれたロールであり得るが、本発明においては異物除去装置1の一部を構成する。屈曲ロール13は、サンディングベルト11が気体噴射機構5を通過する時に、サンディングベルト11を、気体噴射機構5が鈍角側に位置するように円弧形状に屈曲させるために設置されている。屈曲ロール13に抱かれることで、サンディングベルト11の砥粒の隙間に内包されている木粉12に外力が加わることで結着が解除され、木粉12を表出させやすくなる。
【0029】
屈曲ロール13の直径は100~500mmであることが好ましい。屈曲ロール13の直径が小さくなると、サンディングベルト11を屈曲させすぎてしまい、サンドペーパーの種類によっては、破断につながるおそれがある。一方、屈曲ロール13の直径が大きすぎると木粉12を突出させにくくなる。屈曲ロール13のより好ましい直径は、130~230mmである。
【0030】
屈曲ロール13の幅は、サンディングベルト11の幅よりも大きいと、噴流8同士を衝突させた際にサンディングベルト11が曲がったり、ばたついたりすることを防ぐことができるため好ましい。
【0031】
屈曲ロール13の材質は金属材料であることが好ましい。屈曲ロール13を用いる場合、噴射孔ユニット3は、噴流8の衝突点10Aと屈曲ロール13の中心を通る線A(
図1参照)と同一直線状に、配置することが好ましい。
【0032】
なお、除去された木粉12は、吸引機構によって回収されることが好ましい。気体噴射機構5によって木粉12を吹き飛ばすのみでは、空気の流れによっては木粉12が再びサンディングベルト11上に舞い戻ってしまい、除去した効果が減殺されてしまう。除去した木粉12を、装置周辺に撒き散らさないようにするには、
図3に示すように、気体噴射機構5および屈曲ロール13で支持されたサンディングベルト11の処理面を処理箱15の中に配置し、さらに処理箱15に吸引機構16を接続するなどして、処理箱の中を陰圧にすることも好ましい形態である。この形態であれば処理箱15の掃除が不要であり、木粉12の除去処理を連続的に行うことができる。
【0033】
図4は、本発明の異物除去装置の別の実施形態における気流噴射機構の拡大断面図である。
図4の異物除去装置1Aは、第1の噴射孔2aの中心軸18と第2の噴射孔2bの中心軸18を含む断面において、第1の噴射孔2aの外側の稜線の延長線と第2の噴射孔2bの外側の稜線の延長線が交差する点10Bが、サンディングベルト11の表面上または表面よりも気体噴射機構5側で交差するように、第1の噴射孔2aと第2の噴射孔2bが設けられている。高エネルギー領域9とサンディングベルト11との間では、高エネルギー領域9よりは除去性能が低下し噴射面7から距離が離れるほどエネルギーが減衰するものの、除去するためのエネルギーは保持されている。そこで、このような構成とすることで、噴射面7とサンディングベルト11の距離が離れ、木粉12の除去能力は低下するが、サンディングベルト11が装置の振動や異常で噴射面7方向に揺れたときに、噴射面7と接触することが回避でき、噴射面7と噴射孔2の円形断面形状を保護することができる。噴射面7にサンディングベルト11が接触して噴射孔2の円形断面を傷つけてしまうと、噴流8の流速が低下したり、第1の噴射孔2aの中心軸18と第2の噴射孔2bの中心軸18がズレて噴流が衝突しなくなる可能性がある。そうなると、高エネルギー領域9が得られなくなり、木粉12が除去できなくなってしまう。さらに、噴射面7あるいは気体噴射機構5を交換しなければならず、時間や金額のロスが発生してしまう。そのため、噴射面7とサンディングベルト11を一定の距離を空けて設置することも好適な形態である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0035】
[実施例1]
サンディングベルトとして、黒色のサンドペーパー粒度320のものを使用した。サンディングベルトはループ状であり、幅は1000mmである。このサンディングベルトを1200mmの距離を離した2つのφ200mmの屈曲ロールに掛けて、屈曲ロールの駆動軸に直結されたモータによって屈曲ロールを回転させ、サンディングベルトを500m/分の速度で搬送を実施した。この時、屈曲ロールは互いの距離が離れる方向への位置調整機構を有しており、これによりサンディングベルトに張力を付与し、サンディングベルトが弛まないようにしている。2つの屈曲ロールの片方の頂点に、幅900mmで長さ5000mmの木材を接近させ、1m/分の速度で送り、連続的にその表面を研磨した。これにより研磨された木粉がサンディングベルトの表面および砥粒の隙間に付着した。この時に、屈曲ロールのもう1方の頂点に向けて、気体噴射機構を設置した。気体噴射機構の幅はサンディングベルトの幅方向に対して、中心が揃うように長さ1100mmとした。気体噴射機構の噴射孔径はφ1.0mmの円形で、第1の噴射孔の中心軸と第2の噴射孔の中心軸とがなす角度が90°、第1の噴射孔の内側の稜線の延長線と第2の噴射孔の内側の稜線の延長線が噴射面の表面から3mm離れた位置で交差し、第1の噴射孔の外側の稜線の延長線と第2の噴射孔の外側の稜線の延長線が噴射面の表面から4.4mm離れた位置で交差するように、第1の噴射孔と第2の噴射孔を設けた。また第1の噴射孔と第2の噴射孔は、気体噴射機構の幅方向に一例に並ぶように開孔を設けている。1対の噴射孔ユニットは、2つの噴射孔から噴射する噴流の衝突点が16mmのピッチになるように設置し、その個数は69セットとした。噴射面からサンディングベルトの距離を4mmと設定した。1対の噴射孔ユニットから、50NL/minの流量となるよう設定した。この状態で、揺動機構を介して揺動幅24mm、揺動周波数を15Hzに設定した。気体噴射機構の周囲をカバーで覆いそのカバーにブロワから接続されたホースを取り付け、気体噴射機構によって除去された木粉を回収した。
【0036】
サンディングベルトに木粉が付着すると白色化する。これを気体噴射機構によって異物除去処理すると元のサンドペーパーの黒色に戻るため、一連の効果を確認することができる。気体噴射機構から空気を噴出させて木片の除去を行った。サンディングベルトの表面を、機長方向に100mmの等間隔で14箇所、機幅方向に100mmの等間隔で5箇所の計70箇所を、デジタルマイクロスコープを用いて200倍で観察した。その結果、木粉が全て除去され、残存する木粉の個数は1であり、元のサンドペーパーの砥粒を確認した。ここで、サンディングベルトに残存する木粉の個数が0個の場合は除去性能が非常に良好、1個以上10個以下の場合は非常に良好、11個~49個は良好、50個以上の場合は不良と判断した。
【0037】
[実施例2]
噴射面からサンディングベルトの距離を6mmに変更した以外は実施例1と同じ条件を用いて、サンディングベルトの木粉の除去処理を実施した。実施例1と同様の方法で木片の除去を行った後のサンディングベルトの表面を観察した。その結果、残存する木粉の個数は8個で除去性能は良好であった。
【0038】
[比較例1]
第1の噴射孔の内側の稜線の延長線と第2の噴射孔の内側の稜線の延長線が噴射面の表面から5mm離れた位置に交差するように、第1の噴射孔と第2の噴射孔を設けた以外は実施例1と同じ条件を用いて、サンディングベルトの木粉の除去処理を実施した。実施例1と同様の方法で木片の除去を行った後のサンディングベルトの表面を観察した。その結果、木粉が除去されず、残存する木粉の個数は74個で除去性能は不良であった。
実施例1、2、比較例1の結果を表1にまとめた。
【0039】
【符号の説明】
【0040】
1 異物除去装置
2、2a、2b 噴射孔
3 噴射孔ユニット
4 プレート
5 気体噴射機構
6 チャンバ
7 噴射面
8 噴流
9 高エネルギー領域
10A、10B 衝突点
11 サンディングベルト
12 木粉
13 屈曲ロール
14 気体供給経路
15 処理箱
16 吸引機構
17 揺動機構
18 中心軸
X 隣リ合う噴射孔ユニットの配置間隔
Y 気体噴射機構の往路および復路の移動量の半分
【要約】
プラスチックフィルムやガラスフィルム、布帛や不織布などのシート状物に強固に付着した種々の異物を除去し得る異物除去装置を提供する。本発明のシート状物の異物除去装置は、シート状物の表面に向けてそれぞれ気体を噴射する一対の第1の気体噴射孔と第2の気体噴射孔からなる噴射孔ユニットを有する気体噴射機構を備えており、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の中心軸を含む断面において、上記第1の噴射孔と上記第2の噴射孔の内側の稜線の延長線が上記シート状物の表面よりも上記気体噴射機構側で交差する態様で傾斜している。