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特許7574979中央給電アンテナアレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】中央給電アンテナアレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20241022BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20241022BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/06
H01P11/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022561095
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020059876
(87)【国際公開番号】W WO2021204362
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,イヴァン
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340939(JP,A)
【文献】特開2005-244961(JP,A)
【文献】特開2019-047238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0157753(US,A1)
【文献】特開2015-207889(JP,A)
【文献】特開2003-229766(JP,A)
【文献】特開昭52-141545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 21/06
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロストリップアンテナ装置であって、
上面及び底面を有する基板と、
前記基板の前記上面に、互いに隣接して構成された、第1の導電構造体及び第2の導電構造体と、
前記基板の底面に構成され、電気的接地面を提供する第3の導電構造体と、を有し、
前記第1の導電構造体は、アンテナの第1のアレイと第1の給電ネットワークを有し、前記第1のアレイの各アンテナは前記第1の給電ネットワークに接続され、
前記第2の導電構造体は、アンテナの第2のアレイ及び第2の給電ネットワークを有し、前記第2のアレイの各アンテナは前記第2の給電ネットワークに接続され、
第1の給電ネットワークと第2の給電ネットワークに信号を供給するスロットラインが前記第3の導電構造体に形成され、
前記第1の給電ネットワーク及び前記第2の給電ネットワークは、結合領域において前記スロットラインに電磁的に結合され、
前記結合領域は、アンテナの前記第1のアレイ及び前記第2のアレイの間の中央に位置し、
前記スロットラインは、結合構造体を介して、前記結合領域において、前記第1の給電ネットワークおよび前記第2の給電ネットワークに結合され、
前記結合構造体は、前記スロットラインの結合部分と、前記第1の給電ネットワークの結合部分と、前記第2の給電ネットワークの結合部分とを含み、
前記スロットラインの前記結合部分は、前記スロットラインの端部を含み、前記端部は円形であり、
前記第1の給電ネットワークの前記結合構造体は、前記第1の給電ネットワークの端部を含み、前記端部は第1の湾曲スタブで終端し、
前記第2の給電ネットワークの前記結合構造体は、前記第2の給電ネットワークの端部を含み、前記端部は第2の湾曲スタブで終端し、
前記湾曲スタブと前記端部は同じ曲率を有する、
マイクロストリップアンテナ装置。
【請求項2】
前記結合構造体はクロスオーバーカプラーを有する、
請求項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の湾曲スタブおよび前記第2の湾曲スタブは、前記スロットラインの端部の前記円形の内側領域上に位置する、
請求項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の給電ネットワークは、1次給電ラインと複数の2次給電ラインを含み、前記1次給電ラインはアンテナの前記第1のアレイの中央領域を通り、前記2次給電ラインは前記1次給電ラインから異なる分岐点で分岐し、
前記第2の給電ネットワークは、1次給電ラインと複数の2次給電ラインとを含み、前記1次給電ラインはアンテナの前記第2のアレイの中央領域を通り、前記2次給電ラインは前記1次給電ラインから異なる分岐点で分岐する、
請求項1ないしいずれか一項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項5】
アンテナの前記第1のアレイと前記第2のアレイは対称軸に関して互いに対称である、
請求項1ないしいずれか一項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項6】
前記結合構造体は、前記第1の給電ネットワークの信号と前記第2の給電ネットワークの信号との間に180°の位相シフトを導入するように構成される、
求項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項7】
前記スロットラインは前記対称軸に沿って延在する、
請求項またはに記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1の導電構造体及び前記第2の導電構造体は、前記マイクロストリップアンテナ装置の動作波長の0.7-0.85倍の範囲の距離だけ互いに離れている、
請求項1ないしいずれか一項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項9】
アンテナの前記第1のアレイおよび前記第2のアレイは、いずれも前記スロットラインに直交する方向に空間的に周期的であり、空間周期は前記マイクロストリップアンテナ装置の動作波長の0.5-0.65倍の範囲にある、
請求項1ないしいずれか一項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1のアレイのアンテナは第1のラティスに構成され、前記第2のアレイのアンテナは第2のラティスに構成される、請求項1ないしいずれか一項に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1のアレイおよび前記第2のアレイのそれぞれはマイクロストリップコムラインアンテナアレイである、請求項10に記載のマイクロストリップアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1ないし11いずれか一項に記載のマイクロストリップアンテナ装置を含むレーダー装置。
【請求項13】
マイクロストリップアンテナ装置を製造する方法であって、
基板の上面に互いに隣接する第1の導電構造体及び第2の導電構造体を形成することであって、前記第1の導電構造体はアンテナの第1のアレイと第1の給電ネットワークを含み、前記第2の導電構造体はアンテナの第2のアレイと第2の給電ネットワークを含み、前記第1のアレイの各アンテナは前記第1の給電ネットワークに接続され、前記第2のアレイの各アンテナは前記第2の給電ネットワークに接続される、形成することと、
電気的接地面を提供するために前記基板の底面に第3の導電構造体を形成することであって、前記第3の導電構造体を形成することは、
前記基板の前記底面に導電層を形成することと、
前記導電層にスロットラインを形成することであって、前記スロットラインは、前記第1の給電ネットワークおよび前記第2の給電ネットワークに信号を供給するのに適している、こととを含む、形成することと
を含み、
前記第1の給電ネットワーク及び前記第2の給電ネットワークは、結合領域において前記スロットラインに電磁的に結合され、
前記結合領域は、アンテナの前記第1のアレイ及び前記第2のアレイの間の中央に位置し、
前記スロットラインは、結合構造体を介して、前記結合領域において、前記第1の給電ネットワークおよび前記第2の給電ネットワークに結合され、
前記結合構造体は、前記スロットラインの結合部分と、前記第1の給電ネットワークの結合部分と、前記第2の給電ネットワークの結合部分とを含み、
前記スロットラインの前記結合部分は、前記スロットラインの端部を含み、前記端部は円形であり、
前記第1の給電ネットワークの前記結合構造体は、前記第1の給電ネットワークの端部を含み、前記端部は第1の湾曲スタブで終端し、
前記第2の給電ネットワークの前記結合構造体は、前記第2の給電ネットワークの端部を含み、前記端部は第2の湾曲スタブで終端し、
前記湾曲スタブと前記端部は同じ曲率を有する、
方法。
【請求項14】
前記スロットラインを形成することは、ラインに沿って前記導電層から導電材料を除去することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置、特にマイクロストリップアンテナ装置に関する。本開示は、スロットライン給電アンテナアレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置を提供し、いくつかの実施例では中央給電アンテナアレイを備える。さらに、本開示は、このようなマイクロストリップアンテナ装置を含むレーダー装置を提供し、このようなマイクロストリップアンテナ装置を製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
通常、複数入力複数出力(MIMO)レーダーは、各物理受信(Rx)または送信(Tx)チャネルにおいて、エッジ入力フィードを有するマイクロストリップ直列給電アンテナアレイを含むマイクロストリップアンテナ装置を活用する。このようなアンテナアレイは製造が簡単で、比較的費用対効果が高い。直列給電アンテナアレイには、進行波と定在波の2種類がある。第1のタイプは後方反射を抑制する終端負荷を使用し、後者のタイプは終端を使用しないため、直接波と反射波の組み合わせの効果としてアレイ全体にわたり定在波が生じる。どちらの方法でも、シリーズアンテナ間の給電電流は、電磁場の比較的高い交差偏極成分を放射する。さらに、どちらのアプローチも主ビームの方向が周波数に依存するという影響を受ける。その他の問題は、放射特性と入力インピーダンス特性が温度変化、エッチング、および誘電公差に強く依存することに関連しており、大量生産における歩留まりの低下を引き起こしている。
【0003】
通常、エッジフィード型アンテナアレイは、1つの列にある複数のオープンスタブを利用する。列は、一方の端で、平行なマイクロストリップ給電ネットワークに導電的に接続される。後者は一連のTee接合であり、最終的に共通の入力マイクロストリップ給電に至る。図12を参照すると、典型的なエッジ給電コムラインアレイを含むマイクロストリップアンテナ装置が示されている。マイクロストリップアンテナ装置は、その下面に導電性接地面が接着された絶縁基板を有し、基板の表面の主要表面にエッチングされたプリント回路のパターンを有する。
【0004】
一例として示した図12のマイクロストリップアンテナ装置は、水平偏波電界を主偏波として放射する。アンテナとアンテナの列の数は、必要な放射特性に応じて、偶数または奇数にすることができる。アレイの中心にマイクロストリップフィードを実装することは、スペースがないため非常に困難である。さらに、フィードからの不要な放射と、アレイの中央アンテナへの強い結合のために、効率も悪い。特に、マイクロストリップエッジフィードを使用するアプローチは、設計、製造、外部コンポーネントへの統合を比較的容易にし、プロトタイピングも費用対効果が高い。しかし、このアプローチは、各素子対の給電電流に関連する相対位相の変動により、主ビームの不要な周波数依存方向にもつながる。
【0005】
純粋なエッジフィードのこれらの問題を解決しようとした構成では、ハイブリッドエッジ/センターアレイ励起とインターリーブされたマイクロストリップ伝送線路を備えたマイクロストリップアンテナ装置が導入された。二重給電によるインターリーブ型コムアンテナの構成は、図13に示すように、アレイの中心と側面に導電的に接続された長いマイクロストリップラインによって利用された。しかし、非常に長いマイクロストリップ給電ラインは、特にKバンド以上のマイクロストリップラインネットワークに典型的ないくつかの問題を依然としてもたらしている。特に、アレイからの最終的な放射パターンを歪め、放射される交差偏極成分を増加させる無視できないスプリアス放射は別として、長いマイクロストリップラインと平行なマイクロストリップ分岐間の強い交差結合により固有の高い損失がある。
【0006】
不平衡エッジフィード構成の問題を解決するためのさらなる試みは、放射パターンの全体的なバランス効果を得て、温度と製造上のばらつきに対する耐性を低減するために、アンバランス型コムアレイ群を二重相互接続したマイクロストリップアンテナ装置を提案した。しかし、このアプローチは単純で同一平面上の給電(つまり、1つの絶縁基板のみが必要)を実現するにもかかわらず、2つ以上の入力が必要となるため、外部コンポーネントへの相互接続がより困難になり、給電ネットワーク全体の損失が大きくなる。
【発明の概要】
【0007】
上記の問題点と欠点を考慮して、本発明の実施例は、従来のマイクロストリップアンテナ装置を改善することを目的とする。一目的は、特に主ビームの不要な周波数依存方向を抑制して、より優れた放射性能を持つマイクロストリップアンテナ装置を提供することである。この目的のために、改善された給電構成が望まれる。特に、マイクロストリップアンテナ装置のアンテナアレイのよりバランスのとれた給電を達成することが目標である。理想的には、アンテナアレイの中央給電を可能にするソリューションが望まれる。さらに、マイクロストリップアンテナ装置の給電構成は低損失を示さねばならない。マイクロストリップアンテナ装置の製造も複雑さが低いものでなければならない。さらに、マイクロストリップアンテナ装置の大量生産において高歩留まりを可能にするためには、放射特性および入力インピーダンス特性の温度変化、エッチング、および誘電体公差への依存性を小さくする必要がある。
【0008】
この目的は、添付した独立クレームに記載されている本発明の実施形態によって達成される。本発明の実施形態の有利な実装は、従属クレームにおいてさらに画定される。
【0009】
本発明の第1の側面は、マイクロストリップアンテナ装置を提供する、このマイクロストリップアンテナ装置は、上面及び底面を有する基板と、前記基板の前記上面に、互いに隣接して構成された、2次元の第1の導電構造体及び2次元の第2の導電構造体と、前記基板の底面に構成され、電気的接地面を提供する2次元の第3の導電構造体と、を有し、第1の導電構造体は、アンテナの第1のアレイと第1の給電ネットワークを有し、前記第1のアレイの各アンテナは前記第1の給電ネットワークに接続され、前記第2の導電構造体は、アンテナの第2のアレイ及び第2の給電ネットワークを有し、前記第2のアレイの各アンテナは前記第2の給電ネットワークに接続され、第1の給電ネットワークと第2の給電ネットワークに信号を供給するスロットラインが前記第3の導電構造体に形成される。
【0010】
アンテナの第1のアレイとアンテナの第2のアレイは共に、第1の側面のマイクロストリップアンテナ装置のアンテナアレイを形成することができる。スロットラインはこのアンテナアレイに給電できるものである。スロットライン給電により、マイクロストリップアンテナ装置の放射特性が改善される。特にアンテナアレイのよりバランスのとれた給電が可能になる。これにより、アンテナ装置の主ビームの不要な周波数依存方向を抑制することができる。第1の側面のマイクロストリップアンテナ装置も低損失を示し、製造が容易であるため、大量生産で高歩留まりを得ることができる。
【0011】
第1の側面の実装形態では、前記第1の給電ネットワーク及び前記第2の給電ネットワークは、結合領域において前記スロットラインに電磁的に結合される。
【0012】
スロットラインの配置により、アンテナの第1のアレイと第2のアレイを有するアンテナアレイに対する結合領域の位置を柔軟に選択することができる。これにより、マイクロストリップアンテナ装置の様々な設計が可能となり、主ビームの不要な周波数依存方向を低減することができる。
【0013】
第1の側面の実施形式では、前記結合領域は、アンテナの前記第1のアレイ及び前記第2のアレイの間に位置する。
【0014】
これにより、第1および第2のアンテナアレイを構成するアンテナアレイをバランス良く給電することができる。
【0015】
第1の側面の実施形式では、結合領域はアンテナの第1のアレイと第2のアレイの間の中央に位置する。
【0016】
これにより、第1および第2のアンテナアレイからなる中央給電アンテナアレイを実現することができる。
【0017】
第1の側面の実装形態では、前記スロットラインは、結合構造体を介して、前記結合領域において、前記第1の給電ネットワークおよび前記第2の給電ネットワークに結合され、前記結合構造体は、前記スロットラインの結合部分と、前記第1の給電ネットワークの結合部分と、前記第2の給電ネットワークの結合部分とを含む。
【0018】
第1の側面の実装形態では、結合構造体はクロスオーバーカプラーを含む。
【0019】
第1の側面の実装形態では、前記スロットラインの前記結合部分は、前記スロットラインの端部を含み、前記端部は円形であり、前記第1の給電ネットワークの前記結合構造体は、前記第1の給電ネットワークの端部を含み、前記端部は第1の湾曲スタブで終端し、前記第2の給電ネットワークの前記結合構造体は、前記第2の給電ネットワークの端部を含み、前記端部は第2の湾曲スタブで終端し、前記湾曲スタブと前記端部は同じ曲率を有する。
【0020】
第1の面の一実装形態では、前記第1の湾曲スタブおよび前記第2の湾曲スタブは、前記スロットラインの端部の前記円形の内側領域上に位置する。
【0021】
上記の実装形態の結合構造体は、スロットラインと給電ネットワーク間の非常に良好な電磁結合を実現し、製造の容易さと費用対効果の点で利点を提供する。結合構造体はまた、完全にバランスのとれた放射回路を可能にし、それによってマイクロストリップアンテナ装置の放射特性を改善する。
【0022】
第1の側面の実装形態では、前記第1の給電ネットワークは、1次給電ラインと複数の2次給電ラインを含み、前記1次給電ラインはアンテナの前記第1のアレイの中央領域を通り、前記2次給電ラインは前記1次給電ラインから異なる分岐点で分岐し、前記第2の給電ネットワークは、1次給電ラインと複数の2次給電ラインとを含み、前記1次給電ラインはアンテナの前記第2のアレイの中央領域を通り、前記2次給電ラインは前記1次給電ラインから異なる分岐点で分岐する。
【0023】
第1の側面の実装形態では、結合領域は第1の結合領域であり、マイクロストリップアンテナ装置はさらに、基板の上面に配置された伝送ラインを含み、伝送ラインはマイクロストリップアンテナ装置のフィーダに接続可能であり、伝送ラインは特に第2の結合構造体を介して第2の結合領域のスロットラインに電磁的に結合される。
【0024】
したがって、スロットラインは、一体化された配電線または外部アレイフィーダーに終端を提供してもよい。
【0025】
第1の側面の実施形式では、アンテナの第1および第2のアレイは、対称軸に関して互いに対称である。
【0026】
これにより、第1および第2のアンテナアレイを有する対称アンテナアレイを提供することができる。
【0027】
第1の側面の実装形態では、結合構造体は、第1の給電ネットワークの信号と第2の給電ネットワークの信号との間に180°の位相シフトを導入するように構成される。
【0028】
これにより、アンテナの第1および第2のアレイを構成するアンテナアレイの完全にバランスのとれた放射特性が可能になる。
【0029】
第1のアスペクトの実施形式では、スロットラインは対称軸に沿って延在する。
【0030】
第1の側面の実施形態では、第1の導電構造体と第2の導電構造体は、マイクロストリップアンテナ装置の動作波長の0.7-0.85倍、特に動作波長の0.76-0.82倍の範囲の距離だけ互いに分離されている。
【0031】
第1の側面の実施形式では、アンテナの前記第1のアレイおよび前記第2のアレイは、いずれも前記スロットラインに直交する方向に空間的に周期的であり、空間周期は前記マイクロストリップアンテナ装置の動作波長の0.5-0.65倍の範囲にある。
【0032】
波長の0.5倍未満では、同じ導体上のアンテナ間が極端に近接すると、相互結合が増加し、放射効率と開口効率が低下し、したがって利得が低下する。
【0033】
第1の側面の実装形態では、前記第1のアレイのアンテナは第1のラティスに構成され、前記第2のアレイのアンテナは第2のラティスに構成される。
【0034】
第1の側面の実施形式では、第1のアレイと第2のアレイのそれぞれがマイクロストリップコムラインアンテナアレイである。
【0035】
これにより、第1のアレイと第2のアレイからなるコムラインアンテナアレイも形成される。
【0036】
本開示の第2の側面は、第1の側面またはその実装形態によるマイクロストリップアンテナ装置を含むレーダー装置を提供する。
【0037】
レーダー装置は、レーダー送信機、レーダー受信機、またはレーダー送受信機で構成することができる。レーダー装置は、第1の側面のマイクロストリップアンテナ装置の上記の利点を享受する。
【0038】
本開示の第3の側面は、マイクロストリップアンテナ装置を製造する方法を提供するものであり、この方法は、基板の上面に互いに隣接する2次元の第1の導電構造体及び2次元の第2の導電構造体を形成することであって、前記第1の導電構造体はアンテナの第1のアレイと第1の給電ネットワークを含み、前記第2の導電構造体はアンテナの第2のアレイと第2の給電ネットワークを含み、前記第1のアレイの各アンテナは前記第1の給電ネットワークに接続され、前記第2のアレイの各アンテナは前記第2の給電ネットワークに接続される、形成することと、電気的接地面を提供するために前記基板の底面に2次元の第3の導電構造体を形成することであって、前記2次元の第3の導電構造体を形成することは、前記基板の前記底面に導電層を形成することと、前記導電層にスロットラインを形成することであって、前記スロットラインは、前記第1の給電ネットワークおよび前記第2の給電ネットワークに信号を供給するのに適している、こととを含む、形成することとを含む。
【0039】
導電層は金属層でもよい。金属層は、底面または底面の一部を金属化することによって形成される。マイクロストリップアンテナ装置は、第3の側面の方法で容易に製作できる。
【0040】
要約すると、上記の側面と実装形態(本発明の実施形態)は、非常に弱い摂動を伴う異なる、例えば中心的な励起アプローチを利用することによって、エッジフィードの上記の問題に挑戦するものである。スロットラインを使用する提案された給電構成は、方位角カットと仰角カットの両方におけるアンテナアレイの放射性能の対称化の利点を提供する。
【0041】
本発明の実施形態は、一般に、第1および第2のアレイ(水平および垂直面)の完全に対称なアーキテクチャと、部分的に対称な幾何学的構成を持つ第1および第2のアレイ(垂直面のみ)の両方に適用することができる。本発明の実施形態は、放射部(第1および第2のアレイ)の直下のスロットラインフィーダをアレイの接地面に統合することに依存している。埋め込みスロットラインフィードは、長いマイクロストリップ共平面ソリューションと比較して、アンテナの第1および第2のアレイ、ひいてはこれらのアレイによって形成されるアンテナアレイのパフォーマンスに関連する摂動を導入せず、全体的に非常に単純なスタックアップを維持する。
【0042】
なお、本出願に記載されているすべての装置、要素、ユニット及び手段は、ソフトウェア若しくはハードウェアの要素又はこれらの任意の種類の組み合わせにより実装することができる。本出願に記載されている様々なエンティティによって実行されるすべてのステップと、様々なエンティティによって実行されるように記載されている機能は、それぞれのエンティティがそれぞれのステップと機能を実行するように適合または構成されていることを意味することを意図している。以下の特定の実施形態の説明において、外部のエンティティが行う特定の機能やステップが、その特定のステップや機能を実行するそのエンティティの特定の詳細な要素の説明に反映されていない場合でも、これらの方法や機能は、それぞれのソフトウェアやハードウェアの要素、またはそれらの任意の種類の組み合わせで実装できることは、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
以上のような側面や実施形態については、以下の具体的な実施形態の説明において添付した図面を参照して説明する。
図1】本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置を示す。
図2】本発明の一実施形態による図1のマイクロストリップアンテナ装置を示す。
図3】本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置を示す。
図4】本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置のハイブリッドスロットライン/マイクロストリップクロスオーバ電力スプリッタを示す。
図5】本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置で使用される、スロットラインからマイクロストリップへの遷移の典型的なSパラメータを示す。
図6】本発明の一実施形態による、(a)エッジフィードアレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置、(b)対称中央給電フルマイクロストリップアレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置、(c)対称中央給電アンテナアレイを備え、地上統合スロットライン給電ネットワークを備えたマイクロストリップアンテナ装置における性能比較に使用される構成を示す。
図7】(a)方位角、(b)仰角の異なる周波数におけるエッジ供給アレイを構成するマイクロストリップアンテナ装置の正規化された放射パターンを示している。
図8】中央給電フルマイクロストリップアレイを構成するマイクロストリップアンテナ装置の、(a)方位角、(b)仰角の異なる周波数における正規化された放射パターンを示す。
図9】対称中央給電アンテナアレイを構成するマイクロストリップアンテナ装置の正規化された放射パターンを示しており、(a)方位角、(b)仰角に対する異なる周波数での本発明の一実施形態による、接地統合スロットライン給電ネットワークを備えている。
図10】(a)方位面、(b)仰角面で異なるアレイを構成するマイクロストリップアンテナ装置のメインビームにおける共極対交差極比を示す。
図11】本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置の製造方法を示している。
図12】エッジ給電アレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置の例を示す。
図13】インターリーブされたセンター/エッジフィード型コムラインアレイを備えたマイクロストリップアンテナ装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1および図2は、本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置100を示す。図1はマイクロストリップアンテナ装置100の平面図を示し、図2(a)はマイクロストリップアンテナ装置100の側面図/断面図を示し、図2(b)はマイクロストリップアンテナ装置100の一部を平面図で示す。
【0045】
マイクロストリップアンテナ装置100は、上面101aと底面101bを有する基板101を備える。基板101は、例えば誘電体のような電気的な絶縁基板であってもよい。また、アンテナ装置100は、基板101の上面101aに隣接して配置された、2次元の第1の導電構造体102aと2次元の第2の導電構造体102bとを備える。第1および第2の導電構造体102a、102bは金属で構成されていてもよく、基板101の上面101aの金属化によって形成されていてもよい。アンテナ装置100はさらに、基板101の底面101bに配置され、電気的接地面を提供する2次元の第3の導電構造体102cを含む。また、第3の導電構造体102cは金属よりなってもよく、基板101の底面101bの金属化によって形成されてもよい。
【0046】
第1の導電構造体102aは、アンテナの第1のアレイ104aと第1の給電ネットワーク105aを有する。第1のアレイ104aの各アンテナは、第1の給電ネットワーク105aに接続されている。第2の導電構造体102bは、アンテナの第2のアレイ104bと第2の給電ネットワーク105bを有する。第2のアレイ104bの各アンテナは、第2の給電ネットワーク105bに接続されている。したがって、マイクロストリップアンテナ装置100は、アンテナ104aの第1のアレイとアンテナ104bの第2のアレイを含むアンテナアレイを有してもよく、第1の給電ネットワーク105aと第2の給電ネットワーク105bを含むこのアンテナアレイの給電ネットワークを有してもよい。
【0047】
さらに、スロットライン106が第3の導電構造体102cに形成され、これは、第1の給電ネットワーク105と第2の給電ネットワーク106に信号を供給するためのものである。したがって、第3の導電構造体102cは複数の機能を果たす。まず、マイクロストリップアンテナ装置100の接地面として機能する。また、第1および第2の給電ネットワーク105a、105bに信号を供給する役割を果たす。また、統合配電線や外部アレイフィーダーなどに終端を提供する場合もある。
【0048】
上記によれば、本開示は、マイクロストリップアンテナ装置100において、アンテナ104a、104bの第1および第2のアレイを有するアンテナアレイの給電アーキテクチャを提供し、これは接地統合スロットライン106を採用する。これにより、アンテナアレイを給電する場所を柔軟に選択することができ、例えば、アンテナ104a、104bの第1および第2のアレイを構成するアンテナアレイを中央給電することができる。特に、これはアンテナアレイの放射部への少ない摂動で達成される。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態によるアンテナ装置100を示しており、図1および図2に示した実施形態に基づいている。マイクロストリップアンテナ装置100は、提案されたスロットライン106給電方式の実用的で例示的な実装である。
【0050】
特に、一例として、基板101の上に設けられたNxMマイクロストリップアンテナアレイを考える。特に、マイクロストリップアンテナアレイを形成するアンテナ104a、104bの第1のアレイと第2のアレイは、スロットライン106に直交する方向に空間的に周期的である。より具体的には、アンテナ104a、104bの第1のアレイと第2のアレイは、それぞれ複数のアンテナ列、合計N列からなる。アンテナの各列は複数のアンテナで構成されており、この例では各列にM個のアンテナが含まれており、M個のアンテナは列方向に沿って順次配置され、M個のアンテナは2次給電ラインで相互接続されている。この点において、第1の給電ネットワーク105aと第2の給電ネットワーク105bはそれぞれ1次給電ラインと複数の2次給電ライン(給電ネットワークごとにN/2本)を有し、1次給電ラインはそれぞれアンテナ104a、104bの第1のまたは第2のアレイの中央領域を通り、2次給電ラインはそれぞれの1次給電ラインから異なる分岐点で分岐する。
【0051】
接地面一体型スロットライン106分配回路を使用すると、外部ソースからの信号を、たとえばアンテナアレイの内部領域に到達させることができる。特に、スロットライン106は、結合領域300内の給電ネットワーク105a、105bに電磁的に結合することができる。結合領域300は、アンテナ104aの第1のアレイとアンテナ104aの第2のアレイとの間に位置してもよく、特に、これらのアレイ104a、104bの中央に位置してもよく、より具体的には、アンテナ104a、104bの第1のアレイと第2のアレイによって形成されるアンテナアレイの中央に位置してもよい。図3に示すように、アンテナ104a、104bの第1のアレイと第2のアレイは対称軸に関して互いに対称であってもよく、スロットライン106はこの対称軸に沿って延在してもよい。
【0052】
アンテナ104a、104bの第1および第2のアレイを構成するマイクロストリップアンテナアレイとスロットライン106との間のエネルギー伝達は、結合領域300(例えば、配列の形状に応じて、balanced型またはsingle-ended型)での適切なスロットラインからマイクロストリップへの遷移によって実現することができる。特に、エネルギー(特に前述の信号)は、例えば適切なスロットライン対マイクロストリップスプリッタ(すなわち、完全に対称なアレイの場合は差動クロスオーバーパワースプリッタ、非対称な形状の場合はシングルエンドのスロットラインからマイクロストリップへの遷移)によって、スロットライン106から第1および第2の給電ネットワーク105a、105bへ、またその逆へと結合領域300内で結合することができる。
【0053】
アンテナ列間の間隔Δxは、方位角放射パターンに強い格子ローブが形成されないように選択することができる。アンテナの第1のアレイ104aとアンテナの第2のアレイ104bの間の中心相互距離Δxは、(「バックボーン」給電ラインとして画定される)接地金属化における垂直スロットラインと中心列のオープンスタブとの間の十分なクリアランスを可能にするために、Δxとはわずかに異なってもよい。いずれにしても、Δxは、方位角カット上のサイドローブレベルの無視できない劣化を避けるのに十分に小さくてもよい。例えば、Δxはマイクロストリップアンテナ装置100の動作波長の0.5-0.65倍であってもよい。Δxは、マイクロストリップアンテナ装置100の動作波長の0.7-0.85倍、特に0.76-0.82倍、より具体的には0.79-0.80倍であってもよい。
【0054】
基板101の異なる二層(上面101aと底面101b)上の放射部(アンテナ104a、104bの第1および第2のアレイ)から主給電部(スロットライン106)を分離する利点は、給電部自体からの放射損失の明確な低減につながる。さらに、中央給電によって可能になる完全対称アンテナアレイのバランス給電は、交差偏波放射、製造公差と温度変化に対する感度、および放射特性の周波数依存性の大幅な低減に繋がる。スロットラインのバックボーンは、例えば、基板101のスタックアップの上面101aまたは底面101bに任意に実装できる(第2の結合領域では;例えば、2番目のクロスオーバーカプラーによって実現される)さらなる標準スロットライン/マイクロストリップ遷移によって、任意の外部コンポーネント(例えば、送受信チップセットモジュール)に簡単に接続することができる。
【0055】
基板101の向かい合う二つの面に配置された異なる伝送ラインタイプ間の接続は、垂直相互接続を必要とせずに実現できる。実際、基板101の反対面の導電構造体102a、102b、102c間のエネルギー移動は、中央のスロットラインからマイクロストリップへの遷移によって制御される反応性結合機構があるため可能である。
【0056】
本発明の実施形態によって達成される効果を実証するための概念実証として以下に記述される一例は、(アンテナ104a、104bの第1および第2のアレイで構成される)完全に対称なマイクロストリップ「コムライン」アレイを含むマイクロストリップアンテナ装置100である。マイクロストリップアレイ素子(アンテナ)の水平および垂直振幅テーパリングおよび電流は、放射パターンにおけるサイドローブの十分に低いレベルを保証するように最適化される。
【0057】
図4は、クロスオーバーパワースプリッタを示し、これは本発明の実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置100において、アンテナアレイに中央給電を提供し、信号をスロットラインモードからマイクロストリップモードに、またその逆に変換するバランス型のストリップラインからマイクロストリップへの遷移として使用することができる。クロスオーバーカプラーは結合構造体401を含む。結合構造体401は、スロットライン106の結合部分402を含み、スロットライン106の端部を含むことができ、図4に示すように円形であってもよい。結合構造体401はさらに、第1の給電ネットワーク105aの結合部分401aを含むことができ、これは第1の湾曲スタブで終端することができる第1の給電ネットワーク105aの端部を含むことができる。結合構造体401は、第2の給電ネットワーク105bの結合部分401bを含むこともでき、これは第2の湾曲スタブで終端することができる第2の給電ネットワーク105bの端部を含むことができる。図4に示すように、第1および第2の湾曲スタブは、円形の形状を持つスロットラインの端部と同じ曲率を持つことができる。
【0058】
結果として、非常に単純な積み重ね(例えば、上面101aと底面101bに二つのメタライゼーションを持つ一つの誘電体基板101aのみ)のみが必要であり、製造の容易さと費用対効果の点で明確な利点がある。現在のケースでは、完全バランス型放射回路では、クロスオーバースプリッタから得られる出力電流が、相互に180°のブロードバンド位相差とゼロ振幅アンバランスを提供する必要がある。このような挙動はクロスオーバースプリッタのスロットラインTee接合における電界線の反転によって容易に得られる。通常、スロットライン/マイクロストリップハイブリッドクロスオーバースプリッタの相対インピーダンス帯域幅はかなり大きい(50%のオーダーである)。180°クロスオーバーパワースプリッタの振幅と位相における典型的なSパラメータを図5に示す。
【0059】
放射性能と数値比較の例を以下に示す。
【0060】
この目的のために、図6に示す次の構成を考える:(a)Δx1=0.65λ0の等距離列を持つ完全なマイクロストリップ技術で実装された15x9エッジフィードコムラインアレイを含むマイクロストリップアンテナ装置1200(図2と同様のもの);(b)列間距離Δx=0.65λおよびΔx=0.8λを有する完全なマイクロストリップフィードを持つ、16x8中央給電対称コムラインアレイを含むマイクロストリップアンテナ装置600;(c)本発明の一実施形態による、ハイブリッドマイクロストリップ/スロットラインフィードを備えた16×8中央給電コムラインアレイを含むマイクロストリップアンテナ装置100。アンテナの列間距離もΔx=0.65λとΔx=0.8λである。λはそれぞれのマイクロストリップアンテナ装置の動作波長である。すべての構成は、中心周波数fで同じ周波数帯域[fmin、max]で動作する。すべての構成は、同じタイプの二重積層の絶縁基板を使用しており、厚さ17.5μmの電着銅、相対誘電率εr=3、損失正接tanδ=0.001、および基板の厚さh=0.127mmである。フルマイクロストリップ技術における中央給電アレイ(図6(b))は、マイクロストリップ/スロットラインハイブリッドアレイ(図6(c))と同様のアーキテクチャを使用し、すべてのスロットラインベースのコンポーネント(垂直バックボーンスロットラインとクロスオーバースプリッタリング)をマイクロストリップの対応するものに置き換えただけである。
【0061】
以下に説明する結果は、本発明の実施形態によるグラウンド統合スロットライン給電が、完全に同一平面のマイクロストリップのいずれかの側面または中央給電よりもはるかに優れた放射性能を提供することを実証する。
【0062】
図7図8、および図9の放射パターンは、合計相対帯域幅1.3%以内の異なる周波数fmin、f、およびfmaxにおける3つの構成の動作比較を示している。図7(a)および(b)は、(図6(a)のような)エッジフィードアレイの方位角および仰角の正規化放射パターンを示す。予想されるように、エッジフィードはfminからfmaxまで約2°の固有のビームスクイントを受ける。広帯域レーダーの用途では、相対帯域幅は約6.5%に達する可能性があるため、全周波数依存のビームスクイントは10°のオーダーになる可能性がある。
【0063】
図8(a)および(b)は、(図6(b)のような)中央給電フルマイクロストリップアレイの方位角および仰角正規化放射パターンを示す。ビームスクイントは完全に除去されるが、バックボーンマイクロストリップ給電ラインの強く非対称なスプリアス放射に悩まされる。さらに、非対称マイクロストリップクロスオーバディバイダは、その右側の最も近い列に関して、隣接する左側の列に対して異なる結合レベルを持つ。これらの効果は、放射パターンの著しい非対称性とサイドローブ抑制レベルの劣化をもたらす。
【0064】
図9(a)および(b)は、本発明の実施形態、すなわち(図6(c)のような)中央給電ハイブリッドスロットライン/マイクロストリップアレイによるマイクロストリップアンテナ装置100の方位角および仰角正規化放射パターンを示す。予想されたように、ビームスクイントは周波数帯域幅全体で完全に排除され、バックボーンスロット線からの放射はフルマイクロストリップ構成と比較してはるかに弱い。スロットラインは中央列に弱く結合されているため、方位角と仰角の両方のパターンが完全なマイクロストリップアーキテクチャよりもはるかにバランスが取れている。
【0065】
共極対交差極比(X-pol比)については、図10に示されているように、(図6(a)のような)エッジフェッドアレイが最悪の性能を提供することは明らかである。(図6(b)のように)エッジフェッドアレイとフルマイクロストリップ中央給電アレイの方位性能は類似しているが、(図6(c)のような)本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置100のアーキテクチャは、15dB以上の平均的な改善を提供する。仰角面では、その違いははるかに明白であり、エッジフィードアレイは、各列の垂直マイクロストリップラインからのアンバランスな給電と放射の影響を受けるため、X-pol比は19dBを超えない。フルマイクロストリップ中央給電アレイは、各列でのバランス給電のおかげで、約30dBまでの改善が可能である。それにもかかわらず、スプリアス交差偏極場を放射する垂直電流を伝導するバックボーンマイクロストリップラインからの2次放射効果を依然として受けている。仰角面における最良のX-pol比は、本発明の実施形態による、グラウンド一体型スロットライン106を備えたバランスのとれたアーキテクチャによって提供される。実際、スロットラインからの低いスプリアス放射とバランスのとれた給電の利点の両方のおかげで、仰角におけるX-pol比は60dB以上の値に達する。
【0066】
本発明の提案された実施形態は、アレイの中心をグランドシールドされた給電ラインで給電する多層アプローチ(放射素子へのスプリアス結合および給電からの不要な放射)と比較して、製造工程の数を最小化する。実際、スタックアップの複雑さを4層から2層に減らすのに役立ち、大量生産コストと複数層間の不整合許容度の大幅な削減につながる。
【0067】
これに関して、図11は、本発明の一実施形態によるマイクロストリップアンテナ装置100の製造方法1100を示している。方法1100は、基板100の上面101aに2次元の第1の導電構造体102aと2次元の第2の導電構造体102bを互いに隣接して形成するステップ1101を含む。第1の導電構造体102aは、アンテナの第1のアレイ104aと第1の給電ネットワーク105aから成る。第2の導電構造体102bは、アンテナの第2のアレイ104bと第2の給電ネットワーク105bとを有し、第1のアレイ104aの各アンテナは第1の給電ネットワーク105aに接続され、第2のアレイ104bの各アンテナは第2の給電ネットワーク105bに接続されている。
【0068】
方法1100はさらに、電気的接地面を提供するために、基板101の底面101bに2次元の第3の導電構造体102cを形成するステップ1102を含む。2次元第3の導電構造体の形成1102は、基板101の底面101bに導電層を形成するステップ1103と、導電層にスロットライン106を形成するステップ1104から構成され、スロットライン106は、第1の給電ネットワーク105aおよび第2の給電ネットワーク105bに信号を供給するのに適している。
【0069】
要約すると、本発明の実施形態の利点は、
● 埋め込みスロットライン106は、アンテナ104a、104bのアレイに対するスプリアス放射と干渉を低減する。
● このようなグラウンド一体化スロットライン中央給電を使用するアンテナ104a、104のアレイの強化された放射性能(主ビーム方向の周波数依存性なし、対称なサイドローブ、低い交差偏波)。
● スロットライン給電はまた、中央給電による(アンテナ104a、104bの第1および第2のアレイを含む)完全対称マイクロストリップアンテナアレイのより簡単で効果的な設計を可能にし、公差変動(すなわち、エッチング公差、基板の高さなど)に対する堅牢性の向上につながる。
● ハイブリッドマイクロストリップ/スロットライン構造体は、給電ラインとアレイ素子間の不要なクロスカップリングを回避するために1つの誘電体基板のみを必要とするため、スタックアップは費用対効果が高く、シンプルに維持される。
【0070】
本発明は、様々な実施例および実装と併せて説明されている。しかしながら、他のバリエーションは、図面、本開示及び独立したクレームの研究から、当業者であり、クレームされた発明を実施する者によって理解され、効果を得ることができる。クレーム及び明細書において、「有する」という語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除しない。単一の要素または他の単位は、クレームに記載されているいくつかの実体または項目の機能を果たすことができる。相互に異なる従属請求項において特定の措置が言及されているという事実だけでは、これらの措置の組み合わせが有利な実施において使用できないことを示すものではない。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13