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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】下半身トレーニング装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20241022BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G16H50/30
A63B23/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020173076
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064446
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513174416
【氏名又は名称】株式会社ソフトアップJ
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 潤一
【審査官】成瀬 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-029475(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041346(WO,A1)
【文献】特開2018-011727(JP,A)
【文献】特開平09-325674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
A63B 1/00-26/00
A63B 69/00-69/40
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運足条件を表示する表示手段と、
利用者が待機時に左右の足をそれぞれ配置する一対の待機位置を有するベースマットと、それぞれ異なる着色をされた複数枚のマットで構成されるマット部とを含むマットユニットと
前記運足条件に従って前記利用者に運足運動させることにより、当該表示された前記運足条件に関連した機能評価を行う処理手段と、を有する、下半身トレーニング装置であって、
前記処理手段は、
前記表示手段に前記複数枚のマットの配列と同じ配列で表示され、運足するマットの位置を指定するマットオブジェクト、及び、前記表示手段に表示され、運足する足を指定する左右表示オブジェクトによって示される運足条件であって、前記利用者に前記左右の足のうち指定した一方の足を前記ベースマットの前記待機位置から前記マット部の指定した位置のマットへ移動させるステップを複数含む前記運足条件に対応したステップが得られたかのバランス機能評価を行うバランス機能評価部と
前記表示手段に前記複数枚のマットの着色順序と異なる着色順序で表示され、運足するマットの着色を指定するマットオブジェクト、及び、前記表示手段に表示され、運足する足を指定する左右表示オブジェクトによって示される運足条件であって前記利用者に前記左右の足のうち指定した一方の足を前記ベースマットの前記待機位置から前記マット部の指定した着色のマットへ移動させるステップを複数含む前記運足条件に対応したステップが得られたかの認知機能評価を行う認知機能評価部と、
前記バランス機能評価部と前記認知機能評価部との評価結果に基づいて、前記利用者のバランス機能及び認知機能の双方を含めた前記機能評価を行う判定部と、を備えることを特徴とする、下半身トレーニング装置
【請求項2】
前記マット部は、前記利用者の左右方向に並ぶように配列された前記複数枚のマットを有し、
前記マットユニットは、前記マットに対して前記利用者の運足を検知するセンサ部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の下半身トレーニング装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記運足条件として求められた動作が行われるまでの経過時間を計時する計時部を有し、
前記判定部は、前記計時部が計時した経過時間に基づいて、前記利用者の前記バランス機能及び前記認知機能の双方を含めた前記機能評価を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の下半身トレーニング装置。
【請求項4】
前記マット部は、前記ベースマットに対する前記利用者の前方位置に、前記利用者の左右方向に並ぶように配列された4枚のマットを有し、
前記処理手段は、前記ステップを複数含む前記運足条件として、前記利用者の左右の足それぞれに対し、前記待機位置の前方への運足を求める前方ステップ、前記待機位置の側方への運足を求める側方ステップ、前記待機位置に対し他方の足をまたぐ側方への運足を求めるクロスステップの条件を表示し、前記運足条件に対応した各ステップが得られたかに基づいて前記バランス機能評価を行うことを特徴とする、請求項1からのいずれか1つに記載の下半身トレーニング装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記ステップごとの前記運足条件に対する運足結果に基づいて、前記機能評価としての前記バランス機能評価と前記認知機能評価とをそれぞれ行うことを特徴とする、請求項に記載の下半身トレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設、介護福祉施設、トレーニング施設、地域施設で好適に用いられ、画面の指示にあわせて利用者がステップすることにより、当該指示に関連した処理をコンピュータに実行させ利用者の機能評価を行う下半身トレーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、介護施設、精神医療施設でのトレーニング環境において、利用者の身体のトレーニングが多く進められている。しかし、特に下半身に関するトレーニングに関し、介護業界(理学療法士)による歩行評価の方法は、TUG(Timed Up to Go)テスト、開眼片足立ち(秒)、5m通常歩行速度(秒)程度しかなく、客観的にトレーニング結果を評価する手段が少なかった。
【0003】
一方で、下半身のトレーニングについては、介護施設などで用いられるトレーニング装置が種々知られており、例えば、特許文献1(特開2004-305529号公報)などに開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている運動用具は、平板状のマットに格子状に配置された開口部を有し、利用者の運足場所を表示する歩行表示部による表示にしたがって、利用者が当該開口部に脚を動かすことにより、下半身をトレーニングする運動用具である。この運動用具によれば、画面表示にしたがって脚を動かすことでインストラクターがいない場合にも一人で歩行訓練を行うことができ、着地できているかどうかを利用者に認識させることで調整力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-305529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の装置は利用者の下半身トレーニング装置として利用することで、利用者の運動能力の向上には有効であるが、当該装置は利用者が単独で行うため、データの収集及び評価が不十分になりがちであるという問題があった。
【0007】
すなわち、特許文献1の装置では、利用者の運動能力の向上は図れるが、利用者の運動能力を客観的に評価することができないという問題があった。
【0008】
また、特に高齢者については、機能評価として、単なる運動能力のみではなく、入手した情報に対して的確に認識処理を行い、当該認識された情報に対して正確に運動することができているかについての認知機能も求められる。すなわち、高齢者などは、肢体幹の各関節の関節可動域制限や体幹筋力が低下し歩行などの立位での動作の不安定が生じ転倒の危険性が高くなる。そして、認知機能の低下を生じることも少なくない。認知機能の低下は転倒の危険性を高めるとの報告があり、動作の不安定性と認知機能を評価およびトレーニングを実施することは重要である。
【0009】
しかし、特許文献1に記載されている下半身トレーニング装置は、歩行表示部に表示された場所に対して運足することを目的とするものであり、指示された情報を認識処理して運動を求めるという認知機能の評価が含まれておらず、認知機能の評価と動作の不安定性を簡易に同時に評価することができなかった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、利用者が単独で認知予防などに対する有効なトレーニングを行うことができると共に、理学療法士などによる運動能力の評価及び認知機能の評価を客観的に行うことができる下半身トレーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の下半身トレーニング装置を提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、運足条件を表示する表示手段と、
利用者が待機時に左右の足をそれぞれ配置する一対の待機位置を有するベースマットと、
それぞれ異なる着色をされた複数枚のマットで構成され、前記表示手段に表示された運足条件に従った前記利用者の足の移動を判別するマット部と、
前記運足条件に従って前記利用者に運足運動させることにより、当該表示された運足条件に関連した機能評価を行う処理手段と、を有する、下半身トレーニング装置であって、
前記処理手段は、
前記利用者に足の運足方向が異なる複数のステップを求める前記運足条件を指示し、前記運足方向に対応した運足結果が得られたかの機能評価を行うバランス機能評価部と
前記表示手段に前記マット部の着色と異なる配列で表示されたオブジェクトを、当該オブジェクトに対する運足条件を前記運足条件として指示し、前記運足条件に指示された着色の前記マットに運足している運足結果が得られたかを判別して機能評価を行う認知機能評価部と、
前記バランス機能評価部と前記認知機能評価部との評価結果に基づいて、前記利用者のバランス機能及び認知機能の双方を含めた機能評価を行う判定部と、を備えることを特徴とする、下半身トレーニング装置を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記表示手段は、前記運足条件として、
前記バランス機能評価部による機能評価時には前記マット部の配列と同じ配列で、前記認知機能評価部による機能評価時には前記マット部の配列と異なる配列で前記マット部が有する着色と同じ着色のオブジェクトを表示することを特徴とする、第1態様の下半身トレーニング装置を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記処理手段は、前記運足条件として、前記マット部の着色と異なる配列で表示されたオブジェクトのうち、運足させたい色のオブジェクトを指示し、前記異なる配列にある前記マット部に運足できたか否かを判断することを特徴とする、ことを特徴とする、第1又は第2態様の下半身トレーニング装置を提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、前記マット部は、前記利用者の左右方向に並ぶように配列された複数枚のマットと、前記マットに対して前記利用者の運足を判別するセンサ部とを有することを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つの下半身トレーニング装置を提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記処理手段は、前記運足条件として求められた動作が行われるまでの経過時間を計時する計時部を有し、
前記判定部は、前記計時部が計時した経過時間に基づいて、前記利用者のバランス機能及び認知機能の双方を含めた機能評価を行うことを特徴とする、第1から第4態様のいずれか1つの下半身トレーニング装置を提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記マット部は、前記ベースマットに対する前記利用者の前方位置に、前記利用者の左右方向に並ぶように配列された4枚のマットを有し、
前記処理手段は、前記運足条件として、前記利用者の左右の足それぞれに対し、前記待機位置の前方への運足を求める前方ステップ、前記待機位置の側方への運足を求める側方ステップ、前記待機位置に対し他方の足をまたぐ側方への運足を求めるクロスステップの条件を表示し、前記運足条件の各ステップに対し、前記利用者の運足結果に基づいて前記機能評価を行うことを特徴とする、第1から第5態様のいずれか1つの下半身トレーニング装置を提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、前記判定部は、前記ステップごとの運足条件に対する運足結果に基づいて、前記機能評価としての前記バランス機能評価と認知機能評価とをそれぞれ行うことを特徴とする、第6態様の下半身トレーニング装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表示手段に表示された運足条件を利用者に指示し、利用者にベースマットからマット部への運足を行わせることにより、単独で下半身トレーニングを行うことができる。また、当該トレーニング結果は処理手段により機能評価を行うことができ、利用者のトレーニング結果について客観的に評価することができる。
【0020】
さらに、認知機能評価については、前記表示手段に前記マット部の着色と異なる配列で表示されたオブジェクトを用い、当該オブジェクトに対する運足条件を前記運足条件として指示することで、簡単な構成で認知機能評価を行うことが可能である。また、当該評価は、バランス機能評価と認知機能評価を有し両者を比較することで、単なる運動能力の評価だけではなく、運足条件を認識して当該認識通りに運足を行うことができたか否かについての認知評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る下半身トレーニング装置の構成を示すブロック図である。
図2図1の下半身トレーニング装置の表示部に表示される運足条件表示画面の画面表示例である。
図3図1の下半身トレーニング装置のマットユニットの構成を示す模式図である。
図4】本実施形態の下半身トレーニング装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】バランス機能評価で指定される運足条件のステップの種類を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る下半身トレーニング装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の下半身トレーニング装置1は、例えば、医療施設、介護福祉施設、トレーニング施設、地域施設などの各種施設内に配置され、当該施設利用者が視覚を通じて得られた情報に基づいて迅速に適切な動作を行うことをトレーニングするために使用される。
【0024】
下半身トレーニング装置1は、図1に示すように、処理手段である処理演算部10とマットユニット20と表示手段である表示部30とを備える。処理演算部10としては、汎用コンピュータなどを用いることができる。
【0025】
表示部30の一例としては、処理演算部10として用いられているコンピュータに接続されたモニタ装置などを使用することができる。
【0026】
マットユニット20は、後述するように、ベースマット21と、マット部22と、センサ部23とを有しており、処理演算部10に接続されて使用される。
【0027】
処理演算部10は、本実施形態では、汎用コンピュータに後述する処理動作を行うアプリケーションプログラムをインストールすることにより、後述するトレーニング支援処理として機能する。なお、処理演算部10は、汎用コンピュータではなく、専用の処理装置で構成されていてもよい。
【0028】
処理演算部10は、後述するように、当該処理機能に対応する複数の機能ブロックを備えている。機能ブロックとしては、表示制御部11、運足演算部12、バランス機能評価部13、認知機能評価部14、判定部15が含まれる。これらの機能ブロックについての詳細は後述する。
【0029】
表示部30は、液晶表示装置等の各種モニタが使用可能である。表示部30は、使用時に利用者に対して運足するかについての運足条件を表示する。運足条件としては、運足する左右の足の指定及び運足場所の指定が含まれる。
【0030】
図2は、使用時に表示部30に表示される運足条件の画面表示例の一例である。図2の運足条件表示画面40では、運足する左右の足の指定を行う左右表示領域41と、運足する場所を指定するマット表示領域42とが表示されている。
【0031】
左右表示領域41には、運足する足を指定する左右表示オブジェクト41a,41bが表示される。運足条件としては、左右表示オブジェクト41a,41bのいずれか一方を画面に表示させる、又は左右表示オブジェクト41a,41bのうちいずれか一方を強調表示させることによって運足する左右の足の指定を行う。左右表示オブジェクト41a,41bは、図2の例では言語しての「右」、「左」を表示する。ただし、これに限定されるものではなく、例えば足形などを用いて左右の足を識別することができるものであれば使用可能である。
【0032】
マット表示領域42には、後述する4つのマット部22に対応したマットオブジェクト42a、42b、42c、42dの表示がされている。すなわち、マット部22の数に対応した数のオブジェクトが表示されており、当該オブジェクトのみを表示または特定のオブジェクトを強調表示することによって運足する場所の指定を行う。
【0033】
なお、後述するようにマットオブジェクト42a、42b、42c、42dは、色分けされたマット部22と同じ着色で構成されている。ただし、表示される配列順序は特に指定されるものではなく、後述する4色のオブジェクトが一列に配置されていればよい。マットオブジェクト42a、42b、42c、42dとマット部22の配列順序については、詳細を後述するように、機能評価(バランス機能評価及び認知機能評価)に応じて適宜変更される。
【0034】
図3図1の下半身トレーニング装置1のマットユニット20の構成を示す模式図である。マットユニット20は上記の通り、ベースマット21、マット部22、センサ部23を含む。
【0035】
ベースマット21は、本実施形態では、2枚のマット状の部材であり、利用者が待機時に左右の足をそれぞれ配置する。ベースマット21は、一対の待機位置21aを有する。本実施形態では、ベースマット21は一対のマット状部材から構成されているため、待機位置21aはそれぞれのマット状部材21に1つずつ存在する。なお、ベースマット21は、図3に示すように一対のマット状部材で構成される必要はなく、利用者の両足を乗せることができる大きな1枚の部材で構成されていてもよい。なお、この場合は、1枚の部材に左右の足を待機させるための一組の待機位置21aが形成されることとなる。
【0036】
また、本実施形態では、利用者の足が待機位置21aに存在するか否かを検知するセンサは設けられていない。ただし、ベースマット21にセンサを設け、利用者の左右の足が待機位置21aにそれぞれ存在するか否かを検知することもできる。なお、当該利用するセンサの種類は、特に限定されるものではなく、待機位置21aに利用者の足が存在するかを片足ごとに検知することができるものであれば、光学式又は感圧式などその種類は問わない。
【0037】
マット部22は、本実施形態では、一辺t2が20cmの4枚のマット状部材22a,22b,22c,22dである。それぞれのマット状部材22a,22b,22c,22dはそれぞれ異なる着色が施されている。4枚のマット状部材22a,22b,22c,22dは、利用者の左右方向に沿って一列に並べられており、本実施形態ではマット状部材間のピッチt1は50cmである。なお、それぞれのマット状部材の大きさ、配置ピッチは一例であり、利用者の体格や運動能力に応じて設定すればよい。また、マット部22を構成する4枚のマット状部材22a,22b,22c,22dは、図3に示すように、ベースマット21の前方位置において、左右に突出するように配置される。また、4枚のマット状部材22a,22b,22c,22dの配置面の高さは、ベースマット21の配置面と同じレベルである必要はなく、例えば、一段上にマット状部材22a,22b,22c,22dを配置してもよい。これにより、踏み台運動のトレーニングを行うことができる。
【0038】
マット部22を構成する4枚のマット状部材22a,22b,22c,22dの配置順序は、特に限定されず、後述する機能評価に応じて適宜変更することができる。
【0039】
本実施形態では、センサ部23は、マット部22を構成する4枚のマット状部材22a,22b,22c,22dの近傍にそれぞれ独立して配置された4つのセンシング装置で構成されている。それぞれのセンシング装置は、処理演算部10と接続されており、利用者がそれぞれのマット状部材22a,22b,22c,22dに運足したかどうかを検知する。センシング装置により検知された検知結果は、処理演算部10に送信される。
【0040】
本実施形態では、本発明のマット部22の一例を構成するマット状部材22a,22b,22c,22dとセンサ部23を構成するそれぞれのセンシング装置は、別部材として構成されている。本実施形態においては、光学式のセンシング装置が利用されており、センシング部材の近傍に利用者の足が存在するか否かを検出する。
【0041】
本実施形態では、マット部22を構成するマット状部材22a,22b,22c,22dとセンサ部23を構成するそれぞれのセンシング装置が別部材として構成されていることにより、センシング装置に対応して配置されるそれぞれのマット状部材22a,22b,22c,22dを任意に変更することができる。これにより、後述する機能評価に応じて利用時にマット状部材22a,22b,22c,22dの配置順序を自由に変更した場合でもセンシング装置の位置が変化しないため、その演算処理を容易にすることができる。
【0042】
なお、マット部22を構成するマット状部材22a,22b,22c,22dとセンサ部23とはユニット化して一つの装置として構成してもよい。例えば、マット状部材22a,22b,22c,22dとして感圧式のセンシング機能を有するものを利用することもできる。
【0043】
処理演算部10は、本発明の処理手段の一例に相当する。処理演算部10は、利用者に運足運動させるために運足条件を出力し、当該指示された運足条件に基づいた機能評価を行う。具体的には、処理演算部10は運足条件を表示部30に出力するための表示制御部11、運足条件に従って利用者が運足したか否かを検知したセンサ部23からの出力に従って運足結果を演算する運足演算部12、運足演算部12により演算された演算結果により、それぞれ利用者のバランス機能評価を行うバランス機能評価部13、運足演算部12により演算された演算結果により、それぞれ利用者の認知機能評価を行う認知機能評価部14、バランス機能評価と認知機能評価との評価結果に基づいて、利用者のバランス機能及び認知機能の双方を含めた機能評価を行う判定部15を備える。
【0044】
表示制御部11は、表示部30に表示する運足条件を決定し、さらに表示部30への表示制御を行う。運足条件には、後述するマット表示領域42へのマットオブジェクト42a、42b、42c、42dの配列順序及び左右表示オブジェクト41a,41bの表示制御も含まれる。なお、マットオブジェクト42a、42b、42c、42dの配列順序は、前述の通り、機能評価(バランス機能評価及び認知機能評価)に応じて適宜変更される。
【0045】
運足演算部12は、表示制御部11により利用者に通知された運足条件に従って、利用者が運足できているか否かを、センサ部23からの出力に基づいて判別し、運足の可否を記憶して演算、統計する。当該統計の処理については、機能評価(バランス機能評価及び認知機能評価)によって異なる。詳細については後述する。
【0046】
バランス機能評価部13は、運足演算部12により演算された演算結果により、それぞれ利用者のバランス機能評価を行う。
【0047】
また、認知機能評価部14は、運足演算部12により演算された演算結果により、それぞれ利用者の認知機能評価を行う。
【0048】
判定部15は、バランス機能評価と認知機能評価との評価結果を比較し、利用者のバランス機能及び認知機能の双方から求められる利用者の認知の程度を評価する。
【0049】
以上のハードウェア構成を前提に、本実施形態にかかる下半身トレーニング装置1によって実行されるトレーニング処理動作手順について説明する。図4は、本実施形態の下半身トレーニング装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態では、アプリケーションプログラムにしたがって利用者が操作の開始を指示すると、処理演算部10は利用者の認証を行う(#1)。利用者の認証は、処理演算部10に格納されている利用者の情報に基づいて行われる。認証の例としては、カードリーダーなどを用いて利用者カードを読み取らせたり、利用者IDとパスワードなどで利用者を特定したりすることも可能である。また、他の認証の方法としては、指紋認証、顔認証、静脈認証、瞳孔認証などが例示される。これらの認証のために必要な利用者のデータベースやハードウェア構成は、処理演算部10に格納されている。なお、利用者のデータベースには、利用者に関する情報及び利用者が行ったトレーニングの履歴やトレーニング結果に関する情報などを記録することもできる。
【0051】
次いで、トレーニングの選択を行う(#2)。具体的には、バランス機能評価及び認知機能評価の選択を行う。トレーニングの選択については、一連の流れとして、処理演算部が自動的に上記2つの機能評価のトレーニングを順番に行うようにしてもよいし、利用者がいずれかの機能評価別のトレーニングを選択できるようにしてもよい。
【0052】
トレーニングを選択すると、トレーニング処理が開始される(#3)。トレーニング処理では、処理演算部10の運足演算部12が、選択されたバランス機能評価及び認知機能評価についての処理を行う。
【0053】
バランス機能評価のトレーニング処理では、運足演算部12は、表示部30のマット表示領域42に表示されるマットオブジェクト42a、42b、42c、42dについて配列を決定し、図2に示すように画面に表示する。利用者は、当該表示部30に表示されているマットオブジェクト42a、42b、42c、42dの配列と同じ配列で、マットユニット20のマット状の部材22a,22b,22c,22dを並べる。なお、マットオブジェクト42a、42b、42c、42dの配置順序は、トレーニングのたびにランダムに変更するように設定されていてもよいし、バランス機能評価においては、常に同じ配列順序とするようにしてもよい。
【0054】
認知機能評価のトレーニング処理では、運足演算部12は、表示部30のマット表示領域42に表示されるマットオブジェクト42a、42b、42c、42dについて、ランダムに配列を決定し、画面に表示する。なお、認知機能評価のトレーニング処理では、マットオブジェクト42a、42b、42c、42dの配置順序は、トレーニングのたびにランダムに変更することが好ましい。利用者は、当該表示部30に表示されているマットオブジェクト42a、42b、42c、42dの配列と異なるように、マットユニット20のマット状の部材22a,22b,22c,22dを並べる。マットユニット20のマット状の部材22a,22b,22c,22dの配列については、その配置順序が運足演算部12に記憶される。
【0055】
マットユニット20のマット状の部材22a,22b,22c,22dの配列が完了すると、運足演算部12は表示部30に運足条件を表示する。具体的には、運足する左右の足と当該指定された足を運足するマット状の部材22a,22b,22c,22dが指定される。利用者は、バランス機能評価では当該表示部30に表示された運足条件に従って、指定された足を指定された位置にあるマット状部材22a,22b,22c,22dへ運足する。
【0056】
利用者の運足の動作は、センサ部23により検知される。センサ部23は、どのマット状部材に利用者が運足したかを検知する。運足演算部12は、当該センサ部23による検知結果が運足条件と一致しているかについて判別する。
【0057】
なお、運足条件の表示からセンサ部23による運足結果の判定については、その経過時間を計測することが好ましい。経過時間の計測は運足演算部12が行い、運足演算部12は、運足条件として求められた動作が行われるまでの経過時間を計時する計時機能を有する計時部として機能する。
【0058】
一方、認知機能評価においても、運足する左右の足と当該指定された足を運足するマット状の部材22a,22b,22c,22dが指定される。利用者は、認知機能評価では当該表示部30に表示された運足条件に従って、指定された足を指定された色のマット状部材22a,22b,22c,22dへ運足する。
【0059】
上記のように、認知機能評価においては、画面表示中の着色されたオブジェクトとマット状部材の着色配置とが異なるので、利用者は画面表示された位置が異なる。利用者は、当該指定されたオブジェクトの表示位置に惑わされることなく、指定された色のマット状部材に運足する必要がある。利用者の運足の結果は、センサ部23により検知される。センサ部23は、どのマット状部材に利用者が運足したかを検知する。運足演算部12は、当該センサ部23による検知結果が運足条件と一致しているかについて判別する。
【0060】
運足演算部12により判別された検知結果は、処理演算部10に設けられている図示しないメモリ内に蓄積される(#4)。バランス機能評価部13及び認知機能評価部14は、後述するように処理演算部10に蓄積された結果に基づいて、利用者の機能評価を行う(#5)。
【0061】
次に、バランス機能評価及び認知機能評価の具体的な処理手順について説明する。
【0062】
バランス機能評価は、上記の通り、表示部30に表示されているオブジェクトとマット状部材が同じ配列となっている。すなわち、両者の着色順序が共通する。そして、運足条件としては、運足する左右の足の指定と、当該指定された足を運足する位置を示すオブジェクトが指定される。利用者は、当該指定された運足条件に従って、指定されたマット状部材へ指定された足を運足させる。
【0063】
指定される運足条件としては、本実施形態では、4種類のステップにより評価する。具体的には、前方ステップ、側方ステップ、2種類のクロスステップから構成される。図5は、バランス機能評価で指定される運足条件のステップの種類を説明する模式図である。前方ステップ25は、利用者の左右の足それぞれに対し、待機位置の前方への運足を求めるステップである。側方ステップ26は、待機位置の側方への運足を求めるステップである。2種類のクロスステップ27,28は、待機位置に対し他方の足をまたぐ側方への運足を求めるステップである。クロスステップには、小さいクロスを求める通常のクロスステップ27と、大股でのクロスを求める大股のクロスステップ28の2種類が含まれる。なお、図5では指定された運足する足が左足の場合について示しているが、右足の場合も同様である。
【0064】
図5に示すそれぞれのステップとなる運足条件は、ランダムに出力され、その運足結果は、当該ステップの種類ごとに区別されてメモリに蓄積される。
【0065】
本実施形態では、出力される運足条件は、上記4種類のステップがランダムに指定される。そして、運足演算部12は、指定した各運足条件について、ステップの種類と応答時間と運足結果(正しいマットオブジェクトへ運足できたか否か)とを上記メモリに蓄積する。本実施形態では4種類のステップがそれぞれ16問(左右の足について8問)ずつ出力され、当該64問分の運足結果を記憶する。なお、出力される運足条件の問題数は、一例であり、適宜増減することができる。また、ステップの種類別に同数としているが、これをそれぞれ異ならせもよい。
【0066】
バランス機能評価部13は、メモリに蓄積された運足結果に基づいて、当該利用者のバランス機能評価を行う。具体的には、前方ステップが困難、前方ステップができる、側方ステップができる。クロスステップができる、大股でクロスステップができる、の5項目の評価とする。各項目については、単に正誤の判断だけではなく、多段階のレベル評価としてもよい。なお、各ステップについて、利用者が対応できているか否かの判断については、運足結果の正誤率、計時手段による応答時間などを加味して判断する。
【0067】
バランス機能評価部13により判定されたバランス機能評価の結果は、一時的にメモリに蓄積され、後述する総合評価に利用される。
【0068】
認知機能評価は、上記の通り、表示部30に表示されているオブジェクトとマット状部材が異なる配列となるように、着色順序を異ならせた状態で行われる。そして、運足条件としては、運足する左右の足の指定と、当該指定された足を運足する色を示すオブジェクトが指定される。利用者は、当該指定された運足条件に従って、指定された色を有するマット状部材へ指定された足を運足させる。上記のように、認知機能評価では、オブジェクトとマット状部材が異なる配列順序であるので、運足条件で指定されたオブジェクトの位置と運足するマット状部材野市が異なる。利用者は、当該運足条件に含まれる位置に惑わされることなく、色を判断して運足する必要がある。
【0069】
本実施形態では、指定される運足条件にステップの違いについての評価も含まれる。具体的には、運足条件としては、どの色のマット状部材に運足できるかを評価するだけではなく、バランス機能評価で行った各ステップについての判別も行われる。
【0070】
なお、ステップの判別は機能評価から除外してもよく、この場合は、簡易な判定を行うために、足の指定を運足条件から除外することもできる。運足条件によるマット状部材の色の指定は、ランダムに出力され、その運足結果は、メモリに蓄積される。
【0071】
認知機能評価では、表示部30に表示されている色順とマット状部材の色順を変えることで、色の概念にとらわれることなく、色を位置情報として変換して運足する能力が必要となる。この課題を行うことで、単純な運動課題化から認知機能に焦点をあてた運動に関して機能評価を行うことができる。
【0072】
本実施形態では、出力される運足条件は、運足する足及び色の指定がランダムに指定される。そして、運足演算部12は、指定した各運足条件について、足の指定と応答時間と運足結果(正しく運足できたか否か)とを上記メモリに蓄積する。本実施形態では、一回の機能評価で全64問の運足条件が指定され、それぞれの運足結果がメモリに記憶される。なお、出力される運足条件の問題数は、一例であり、適宜増減することができる。
【0073】
認知機能評価部14は、メモリに蓄積された運足結果に基づいて、当該利用者の認知機能評価を行う。具体的には、実施困難、常に助言を必要とする、時折助言を必要とする、間違えることがあるが自己修正ができる。間違えることなく実施できる、の5項目の評価とする。なお、上記の認知機能評価において、利用者が対応できているか否かの判断については、運足結果の正誤率、計時手段による応答時間などを加味して判断する。
【0074】
認知機能評価部14により判定された認知機能評価の結果は、一時的にメモリに蓄積され、後述する判定部15による総合評価に利用される。
【0075】
上記のようにして得られたバランス機能評価と認知機能評価の結果に基づいて、利用者の認知度の評価をすることができる。色の配列のみが異なり他の条件が共通した運足条件を比較することで、認知評価を行うことができる。一般的には、色の認識を行ってから運足を行うため、バランス機能評価に比べて認知機能評価野結果は低くなる。当該低下の割合により認知度を評価することができる。判定部15は、上記のようにして得られた2つの機能評価を比較して、当該認知度の評価を行う。これにより認知機能評価と動作の不安定性を簡易に同時に評価することができる。
【0076】
判定部15が行う認知機能判定は、単に認知結果の正誤率のみの比較ではなく、正答までにかかった所要時間等を含めて行ってもよい。また、4つのステップについてそれぞれ独立して比較を行ってもよく、この場合は、運動能力との関係を考慮した認知判定を行うことができる。
【0077】
判定部15による認知度の評価は、バランス機能評価と認知機能評価の結果に基づいて両者の判定結果の差分により体系的に行われる。すなわち、バランス機能評価による運動能力と位置に惑わされることなく色を判定する認知機能評価とを比較することで、運動能力のトレーニングと認知機能の確認とを同時に行うことができる。
【0078】
判定部15が行う認知度の判定は、バランス機能評価と認知機能評価の結果の正誤率や、統計的に出力される経過時間とを過去の結果履歴情報と、現在の結果履歴情報とを比較してもよい。例えば、以前の正誤率と較べ、最近の正誤率が落ちてきていることが顕著な場合などは機能低下であると判断する。過去の正誤率と最近の正誤率の判断期間については、利用者が本装置を使った年数、使用頻度などによって適宜判断すればよい。正誤率や経過時間などを用いた機能判定は、単に数字の比較ではなく、過去の数値変化の挙動なども含めて統計的に行われ、機能低下が所定の割合で確かである場合に機能低下であると判定することができる。
【0079】
以上説明したように、上記各実施形態に係る下半身トレーニング装置1によれば、利用者が単独でトレーニングを行うことができる。また、単なる運動能力の向上だけではなく、認知機能の評価を同時に行うことができる。さらに、両者を比較することにより、運動能力を考慮した認知度の判定を行うことができる。これにより、単なる運動能力の評価だけではなく、運足条件を認識して当該認識通りに運足を行うことができたか否かについての認知評価することができる。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。上記実施形態では、本発明に係る下半身トレーニング装置が行う、機能判定については、上記実施形態に係る情報をすべて使用する必要はなく、判定したい機能に応じて適宜選択して使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 下半身トレーニング装置
10 処理演算部
11 表示制御部
12 運足演算部
13 バランス機能評価部
14 認知機能評価部
15 判定部
20 マットユニット
21 ベースマット
22 マット部
22a,22b,22c,22d マット状部材
23 センサ部
30 表示部
41 左右表示領域
41a,41b 左右表示オブジェクト
42 マット表示領域
42a、42b、42c、42d マットオブジェクト
図1
図2
図3
図4
図5