(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】レゾルバ用スナップフィットカバー構造
(51)【国際特許分類】
H02K 24/00 20060101AFI20241022BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20241022BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K5/22
G01D5/20 110X
(21)【出願番号】P 2021007704
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】園田 敦司
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009506(JP,A)
【文献】特開2002-107109(JP,A)
【文献】特開2007-230282(JP,A)
【文献】特開2015-176781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 24/00
G01D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータ(21)の内面(21A)から所定角度間隔毎に内方(21B)に向けて突出する突出磁極(26)と、前記輪状ステータ(21)の第1、第2端面(22,23)に設けられた第1、第2絶縁カバー(24,25)と、前記各突出磁極(26)に前記第1絶縁カバー(24)を介して巻回されたステータ巻線(27)と、前記第1絶縁カバー(24)に一体に設けられ、前記ステータ巻線(27)の端線が接続された端子ピン(30)を有する端子ピン保持部(20)と、前記端子ピン保持部(20)の上部にスナップフィット式に設けられ、前記端子ピン保持部(20)の上部を覆うためのスナップフィットカバー(1)と、を有するレゾルバ用スナップフィットカバー構造において、
前記スナップフィットカバー(1)は、長手板状のカバー部材(3)と、前記カバー部材(3)の長手方向(A)の第1、第2端部(1A,1B)に設けられ、前記長手方向(A)とは交差又は直交する方向に延設された片持ち式の第1、第2アーム(10,10A)と、前記各アーム(10,10A)の先端に形成された第1、第2爪部(11,11A)と、
前記各アーム(10,10A)に沿って形成されたスリット(1C,1D)と、前記カバー部材(3)の前記第1端部(1A)に形成された切欠き部(40)と、を備え、
前記切欠き部(40)により、前記各アーム(10,10A)の剛性を、前記切欠き部(40)が形成されていない時の剛性よりも下げるように構成したことを特徴とするレゾルバ用スナップフィットカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ用スナップフィットカバー構造に関し、特に、カバー部材の一部に切欠きを設けることにより、各アームの剛性を下げ、端子ピン保持部へのスナップフィットカバーの挿入取付けを容易とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のスナップフィットとしては、ここでは図示していないが、例えば、特許文献1に開示された電子回路基板とコネクタの固定構造を挙げることができ、特に、電子回路基板の実装面に載置されるべきフレームをコネクタと一体的に形成し、そのフレームに複数のスナップフィット(相手方に係合するための爪がアームの先端に一体に設けられている構成)が特許文献1の
図7に開示されている。
【0003】
また、
図4で示されるものは、本出願人が製作していたスナップフィットカバー1であり、このスナップフィットカバー1は、長手形状で段部2が形成された板部材からなるカバー部材3を有している。前記カバー部材3の外周には、壁3Aが設けられている。
前記カバー部材3の長手方向Aに沿う第1、第2端部1A、1Bには、前記長手方向Aに対して直交又は交差する方向で一体に延設された第1、第2アーム10、10Aが設けられている。
前記各アーム10、10Aの先端には、各々テーパ状をなす第1、第2爪部11、11Aが一体に形成されている。
前記各アーム10、10Aは、各アーム10、10Aに沿って形成された各スリット1C、1Dにより、矢印Cにて示されるように、内側及び外側に少々曲折できるように構成されている。以上で、従来のスナップフィットカバー1の構成の説明を完了する。
【0004】
次に、前述の従来のスナップフィットカバー1を装着するための端子ピン保持部20を有するレゾルバ1Rについて、
図7と共に説明する。
図7は、前記スナップフィットカバー1を端子ピン保持部20にスナップフィット式(いわゆるパッチン留め式)で取付けることができる方式のレゾルバ1Rを示している。
前記レゾルバ1Rは、輪状ステータ21の第1、第2端面22、23に射出形成された第1、第2絶縁カバー24、25を有しており、前記各絶縁カバー24、25のうちの一方の前記第1絶縁カバー24には、この第1絶縁カバー24と一体で、かつ、輪状ステータ21の外側(半径方向に沿って)に向けて突出する前記端子ピン保持部20が設けられている。
【0005】
前記輪状ステータ21の内面21Aには、所定角度間隔で内方21Bに向けて突出する多数の突出磁極26が設けられており、各突出磁極26には、各絶縁カバー24、25を介してステータ巻線27が巻回して設けられている。
前記端子ピン保持部20には、前記ステータ巻線27の端線(図示せず)が接続された複数の端子ピン30が設けられ、この端子ピン30に接続されたリード線28が輪状ステータ21外に導出されている。
前記輪状ステータ21の各突出磁極26の内側には、周知のVR型のロータが回転自在に設けられている。
【0006】
以上で、レゾルバ1Rの概略の説明を終え、次に、前記スナップフィットカバー1を、組立て完了後の前記レゾルバ1Rの端子ピン保持部20の上部に対して、装着する場合について説明する。まず、前記スナップフィットカバー1の各爪部11、11Aを前記端子ピン保持部20の側部に装入すると、各爪部11、11Aを介して各アーム10、10Aが外側に拡開し、スナップフィットカバー1を奥迄装入することができる。各爪部11、11Aが前記側部にロックされると同時に、各アーム10、10Aが元の状態に戻ってスナップフィットカバー1の前記端子ピン保持部20への装着が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のスナップフィット構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1に開示されているスナップフィット構造は、この特許文献1の
図7に示されているように、バネ板に対して係止突起が係合する構成であるため、本発明における端子ピン保持部に適用するためには、不適切であった。
【0009】
また、
図4から
図6に示されている従来のスナップフィットカバー構造においては、前記カバー部材の剛性が高く、そのために、各アームの付け根部分に大きい曲げ応力が発生し、アーム自体の破損のリスクが発生していた。また、カバー部材の剛性が高いために、各アームの剛性も高く、スナップフィットカバーを端子ピン保持部に装着することも容易ではなかった。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、カバー部材の一部に切欠きを設けることにより、各アームの剛性を下げ、端子ピン保持部へのスナップフィットカバーの挿入取付けを容易とするようにしたレゾルバ用スナップフィットカバー構造を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるレゾルバ用スナップフィットカバー構造は、輪状ステータの内面から所定角度間隔毎に内方に向けて突出する突出磁極と、前記輪状ステータの第1、第2端面に設けられた第1、第2絶縁カバーと、前記各突出磁極に前記第1絶縁カバーを介して巻回されたステータ巻線と、前記第1絶縁カバーに一体に設けられ、前記ステータ巻線の端線が接続された端子ピンを有する端子ピン保持部と、前記端子ピン保持部の上部にスナップフィット式に設けられ、前記端子ピン保持部の上部を覆うためのスナップフィットカバーと、を有するレゾルバ用スナップフィットカバー構造において、前記スナップフィットカバーは、長手板状のカバー部材と、前記カバー部材の長手方向の第1、第2端部に設けられ、前記長手方向とは交差又は直交する方向に延設された片持ち式の第1、第2アームと、前記各アームの先端に形成された第1、第2爪部と、前記各アームに沿って形成されたスリットと、前記カバー部材の前記第1端部に形成された切欠き部と、を備え、前記切欠き部により、前記各アームの剛性を、前記切欠き部が形成されていない時の剛性よりも下げるようにした構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるレゾルバ用スナップフィットカバー構造は、以上のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
すなわち、輪状ステータの内面から所定角度間隔毎に内方に向けて突出する突出磁極と、前記輪状ステータの第1、第2端面に設けられた第1、第2絶縁カバーと、前記各突出磁極に前記第1絶縁カバーを介して巻回されたステータ巻線と、前記第1絶縁カバーに一体に設けられ、前記ステータ巻線の端線が接続された端子ピンを有する端子ピン保持部と、前記端子ピン保持部の上部にスナップフィット式に設けられ、前記端子ピン保持部の上部を覆うためのスナップフィットカバーと、を有するレゾルバ用スナップフィットカバー構造において、前記スナップフィットカバーは、長手板状のカバー部材と、前記カバー部材の長手方向の第1、第2端部に設けられ、前記長手方向とは交差又は直交する方向に延設された片持ち式の第1、第2アームと、前記各アームの先端に形成された第1、第2爪部と、前記カバー部材の前記第1端部に形成された切欠き部と、を備え、前記切欠き部により、前記各アームの剛性を、前記切欠き部が形成されていない時の剛性よりも下げるように構成したことにより、切欠き部を形成していない時のアームの剛性よりも、その剛性を大幅に下げることができ、スナップフィット時のアームの高すぎる剛性を外形寸法の変更もなく下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態によるレゾルバ用スナップフィットカバー構造のスナップフィットカバーを示す斜視図である。
【
図2】
図1のスナップフィットカバーの平面図である。
【
図3】
図1の矢視A図及び
図2の矢視A図を示す構成図である。
【
図4】従来のレゾルバ用スナップフィットカバー構造のスナップフィットカバーを示す斜視図である。
【
図6】
図5の矢視A図及び
図6の矢視A図を示す構成図である。
【
図7】本発明及び従来に用いるレゾルバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるレゾルバ用スナップフィットカバー構造は、カバー部材の一部に切欠き部を設けることにより、各アームの剛性を下げ、端子ピン保持部へのスナップフィットカバーの挿入取付けを容易に行うことができる構成である。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバ用スナップフィットカバー構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明し、
図7の構成については、本発明の説明にそのまま援用する。
図1において、符号1で示されるものは、スナップフィットカバーであり、このスナップフィットカバー1は、長手形状で段部2が形成された板部材からなるカバー部材3を有している。前記カバー部材3の外周には、壁3Aが設けられている。
前記カバー部材3の長手方向Aに沿う第1、第2端部1A、1Bには、前記長手方向Aに対して交差又は直交する方向で一体に延設された片持ち式の第1、第2アーム10、10Aが設けられている。
【0016】
前記各アーム10、10Aの先端には、各々テーパ状をなす第1、第2爪部11、11Aが一体に形成されている。
前記各アーム10、10Aは、矢印Cにて示されるように、各アーム10、10Aに沿って形成された各スリット1C、1Dにより、内側及び外側に少々曲折できるように構成されている。
前記カバー部材3の第1端部1Aには、前記第1アーム10の付け根部分10aに切欠き部40が形成されている。
【0017】
前述の
図1の場合、前記各アーム10、10Aのうち、前述の第1アーム10の付け根部分10aのみに切欠き部40が形成されており、この切欠き部40によって前記第1アーム10の曲げ剛性が切欠き部40が形成されていない時と比較して低くなり、前記スナップフィットカバー1を
図7の端子ピン保持部20に装着する場合に、一方の第1アーム10が、切欠き部40が形成されていない第2アーム10Aよりも剛性が低いため、第1アーム10が外側に逃げ、円滑な装着を達成することができる。
【0018】
従って、前記スナップフィットカバー1の樹脂材料によっては、第1アーム10用の切欠き部40(
図1)で十分に必要な剛性レベルに変更できるが、他の樹脂材料によっては、前記第2端部1B側に切欠き部40を形成することもある。
また、本発明において、数値解析を行って応力が低減することを確認しているため、
図1の1個の切欠き部40によって十分な作用効果を確認している。
【0019】
また、
図2の構成は、
図1の平面図であり、前記切欠き部40が前記カバー部材3の
図2の状態で見て左側に形成されている。
図2で見て前記カバー部材3の右側には何も形成されていないが、前述のように、樹脂の特性によっては、この右側にも前記切欠き部40を設ける場合もある。
また、
図3においては、
図1及び
図2における第2アーム10Aがスリット1Dによって
図1の矢印C方向に撓むことができるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるレゾルバ用スナップフィットカバー構造は、カバー部材3の前記第1アーム10の付け根部分に切欠き部40が形成されているため、第1アーム10の剛性が低減され、端子ピン保持部20へのスナップフィットカバー1の取付けが極めて容易となる。
【符号の説明】
【0021】
1 スナップフィットカバー
1A 第1端部
1B 第2端部
1C、1D スリット
1R レゾルバ
2 段部
3 カバー部材
3A 壁
10 第1アーム
10A 第2アーム
10a 付け根部分
11 第1爪部
11A 第2爪部
20 端子ピン保持部
21 輪状ステータ
21A 内面
22 第1端面
23 第2端面
24 第1絶縁カバー
25 第2絶縁カバー
26 突出磁極
27 ステータ巻線
28 リード線
30 端子ピン
40 切欠き部
A 長手方向