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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】3相DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H02M3/28 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021008026
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112262
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-12-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 :令和2年7月2日 掲載アドレス:https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=f247b25af9766bf5b08a9f6caaac5cbd83220ca00cc2b264d99e84fd16a923f0&tgid=IEE-SPC 開催年月日 :令和2年7月9日乃至令和2年7月10日 集会名 :IEICE Technical Committee on Energy Engineering in Electronics and Communications(EE),Online Proceedings
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(73)【特許権者】
【識別番号】304000836
【氏名又は名称】学校法人 名古屋電気学園
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
(72)【発明者】
【氏名】グエン ドゥイ ディン
(72)【発明者】
【氏名】雪田 和人
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102933(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125292(WO,A1)
【文献】特開2014-007942(JP,A)
【文献】特開2018-170845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1正極母線と第1負極母線間に直列接続される第1上側スイッチング素子及び第1下側スイッチング素子とを含む3相の第1ブリッジ回路と、
第2正極母線と第2負極母線間に直列接続される第2上側スイッチング素子及び第2下側スイッチング素子とを備える3相の第2ブリッジ回路と、
前記第1上側スイッチング素子と前記第1下側スイッチング素子との接続点と、前記第2上側スイッチング素子と前記第2下側スイッチング素子との接続点との間に設けられる変圧回路及びインダクタを含む3相変圧回路及び3相インダクタと、を備える主回路と、
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路を制御するための制御回路と、を備える3相DC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
第1期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子の双方をオンさせ、
前記第1期間後の第2期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子の双方をオンさせ、
前記第2期間後の第3期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせ、
前記第3期間後の第4期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子をオンさせ、
前記第4期間後の第5期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子をオンさせ、
前記第5期間後の第6期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせることにより、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子を50%未満のデューティ比で駆動可能に構成される、
3相DC/DCコンバータ。
【請求項2】
第1正極母線と第1負極母線間に直列接続される第1上側スイッチング素子及び第1下側スイッチング素子とを含む3相の第1ブリッジ回路と、
第2正極母線と第2負極母線間に直列接続される第2上側スイッチング素子及び第2下側スイッチング素子とを備える3相の第2ブリッジ回路と、
前記第1上側スイッチング素子と前記第1下側スイッチング素子との接続点と、前記第2上側スイッチング素子と前記第2下側スイッチング素子との接続点との間に設けられる変圧回路及びインダクタを含む3相変圧回路及び3相インダクタと、を備える主回路と、
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路を制御するための制御回路と、を備える3相DC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
第1期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の双方をオンさせ、
前記第1期間後の第2期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子の双方をオンさせ、
前記第2期間後の第3期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせ、
前記第3期間後の第4期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子をオンさせ、
前記第4期間後の第5期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子をオンさせ、
前記第5期間後の第6期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせることにより、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子を50%未満のデューティ比で駆動可能に構成される、
3相DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1期間に前記インダクタに流れる第1方向の電流を増加させ、
前記第2期間に前記インダクタに流れる前記第1方向の電流をゼロに減少させ、
前記第4期間に前記インダクタに流れる第2方向の電流を増加させ、
前記第5期間に前記インダクタに流れる前記第2方向の電流をゼロに減少させる、
請求項1に記載の3相DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1期間に前記インダクタに流れる第1方向の電流を増加させ、
前記第2期間に前記インダクタに流れる前記第1方向の電流をゼロに減少させ、
前記第4期間に前記インダクタに流れる第2方向の電流を増加させ、
前記第5期間に前記インダクタに流れる前記第2方向の電流をゼロに減少させる、
請求項2に記載の3相DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1期間と前記第4期間は同一の長さを有し、
前記第2期間と前記第5期間は同一の長さを有し、
前記第3期間と前記第6期間は同一の長さを有する、
請求項1に記載の3相DC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記第1期間と前記第4期間は同一の長さを有し、
前記第2期間と前記第5期間は同一の長さを有し、
前記第3期間と前記第6期間は同一の長さを有する、
請求項2に記載の3相DC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記制御回路は、前記第1上側スイッチング素子と前記第2上側スイッチング素子との位相差に基づいて、前記第3期間及び前記第6期間の長さを変更可能に構成される、
請求項1に記載の3相DC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記制御回路は、前記第1上側スイッチング素子と前記第2上側スイッチング素子との位相差に基づいて、前記第3期間及び前記第6期間の長さを変更可能に構成される、
請求項2に記載の3相DC/DCコンバータ。
【請求項9】
第1正極母線と第1負極母線間に直列接続される第1上側スイッチング素子及び第1下側スイッチング素子とを含む3相の第1ブリッジ回路と、
第2正極母線と第2負極母線間に直列接続される第2上側スイッチング素子及び第2下側スイッチング素子とを備える3相の第2ブリッジ回路と、
前記第1上側スイッチング素子と前記第1下側スイッチング素子との接続点と、前記第2上側スイッチング素子と前記第2下側スイッチング素子との接続点との間に設けられる変圧回路及びインダクタを含む3相変圧回路及び3相インダクタと、を備える主回路と、
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路を制御するための制御回路と、を備える3相DC/DCコンバータであって、
前記制御回路は、
第1期間において前記インダクタに流れる第1方向の電流を増加させ、
前記第1期間後の第2期間において前記インダクタに流れる前記第1方向の電流をゼロに減少させ、
前記第2期間後の第3期間において前記インダクタに流れる電流をゼロに維持し、
前記第3期間後の第4期間において前記インダクタに流れる第2方向の電流を増加させ、
前記第4期間後の第5期間において前記インダクタに流れる前記第2方向の電流をゼロに減少させ、
前記第5期間後の第6期間において前記インダクタに流れる電流をゼロに維持するように、
前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子を50%未満のデューティ比で駆動可能に構成される、
3相DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3相DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、双方向に電力変換を実現できるDAB方式(Dual Active Bridge)のDC/DCコンバータが知られている。このようなDC/DCコンバータにおいて、ブリッジ回路に設けたスイッチング素子をソフトスイッチングで動作させることによって、高い変換効率を実現している。このようなDC/DCコンバータを電気自動車や太陽光発電システムなど、バッテリを備えた蓄電システムに搭載することにより、電力の伝送効率が高い蓄電システムを提供することが可能になる。
【0003】
特許文献1の図6及び図9、特許文献2の図7、特許文献3の図3などには、1次側ブリッジ回路の上側の半導体スイッチング素子と下側の半導体スイッチング素子を交互にスイッチングするとともに、位相差をもって、2次側ブリッジ回路の上側の半導体スイッチング素子と下側の半導体スイッチング素子を交互にスイッチングする技術が記載されている。
【0004】
特許文献4の図2などには、スイッチング素子をオフからオンにスイッチングする際に、短絡を防止するために、デッドタイムを挿入することが記載されている。
【0005】
特許文献5の図2、特許文献6の図3などには、スイッチング素子を制御する制御信号のデューティ比を変更するPWM(Pulse Width Modulation)制御が記載されている。
【0006】
特許文献7の図2及び図4、特許文献8の図6などには、デューティ比を異ならせながら、1次側ブリッジ回路の上側の半導体スイッチング素子と下側の半導体スイッチング素子を交互にスイッチングするとともに、位相差をもって、2次側ブリッジ回路の上側の半導体スイッチング素子と下側の半導体スイッチング素子を交互にスイッチングさせる3相のDC/DCコンバータが記載されている。
【0007】
非特許文献1及び2には、非対称的にスイッチング素子をスイッチングすることにより、ソフトスイッチング可能な範囲を拡張するADCC(Asymmetric Duty Cycle Control)技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2020/031807号
【文献】国際公開第2015/004825号
【文献】特開2014-187729号公報
【文献】国際公開第2018/029975号
【文献】国際公開第2015/004825号
【文献】特開2015-186360号公報
【文献】特開2016-149834号公報
【文献】特開2016-12970号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】J. Hu, N. Soltau, and R. W. De Doncker, “Asymmetrical duty cycle control of three phase dual active bridge converter for soft switching range extension”, 2016 IEEE Energy Conversion Congress and Exposition (ECCE), IEEE, 2016, pp. 1-8.
【文献】J. Hu, Z. Yang, N. Soltau, and R. W. De Doncker, “A duty cycle control method to ensure soft switching operation of a high power three phase dual active bridge converter”, 2017 IEEE 3rd International Future Energy Electronics Conference and ECCE Asia (IFEEC 2017-ECCE Asia), IEEE, 2017, pp. 866-871.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これら特許文献に記載されるDAB方式のDC/DCコンバータにおいて、単相から複数相に相数を増加することにより、電流のリップルを低減することが可能になる。その結果、バッテリの寿命を向上させることが可能にある。しかしながら、これら特許文献に記載される技術では、依然として、広い範囲にわたりソフトスイッチングを実現することが困難である。また、非特許文献に記載されるDAB方式のDC/DCコンバータでは、上側のスイッチング素子と下側のスイッチング素子のデューティ比が異なるため、電流が非対称になる。その結果、損失分布及び半導体スイッチング素子への負荷が均等にならないという問題が生じる。
【0011】
本開示は、広い範囲にわたりソフトスイッチングを実現することと、スイッチング素子への負荷の均等性を向上させることが可能となる3相DC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、第1正極母線と第1負極母線間に直列接続される第1上側スイッチング素子及び第1下側スイッチング素子とを含む3相の第1ブリッジ回路と、第2正極母線と第2負極母線間に直列接続される第2上側スイッチング素子及び第2下側スイッチング素子とを備える3相の第2ブリッジ回路と、前記第1上側スイッチング素子と前記第1下側スイッチング素子との接続点と、前記第2上側スイッチング素子と前記第2下側スイッチング素子との接続点との間に設けられる変圧回路及びインダクタを含む3相変圧回路及び3相インダクタと、を備える主回路と、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路を制御するための制御回路と、を備える3相DC/DCコンバータであって、前記制御回路は、第1期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子の双方をオンさせ、前記第1期間後の第2期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子の双方をオンさせ、前記第2期間後の第3期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせ、前記第3期間後の第4期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子をオンさせ、前記第4期間後の第5期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子をオンさせ、前記第5期間後の第6期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせることにより、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子を50%未満のデューティ比で駆動可能に構成される、3相DC/DCコンバータを提供する。
【0013】
本開示は、第1正極母線と第1負極母線間に直列接続される第1上側スイッチング素子及び第1下側スイッチング素子とを含む3相の第1ブリッジ回路と、第2正極母線と第2負極母線間に直列接続される第2上側スイッチング素子及び第2下側スイッチング素子とを備える3相の第2ブリッジ回路と、前記第1上側スイッチング素子と前記第1下側スイッチング素子との接続点と、前記第2上側スイッチング素子と前記第2下側スイッチング素子との接続点との間に設けられる変圧回路及びインダクタを含む3相変圧回路及び3相インダクタと、を備える主回路と、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路を制御するための制御回路と、を備える3相DC/DCコンバータであって、前記制御回路は、第1期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の双方をオンさせ、前記第1期間後の第2期間において、前記第1上側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子の双方をオンさせ、前記第2期間後の第3期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせ、前記第3期間後の第4期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2上側スイッチング素子をオンさせ、前記第4期間後の第5期間において、前記第1下側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子をオンさせ、前記第5期間後の第6期間において、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子の全てをオフさせることにより、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子を50%未満のデューティ比で駆動可能に構成される、3相DC/DCコンバータを提供する。
【0014】
さらに、これら3相DC/DCコンバータにおいて、前記第1期間に前記インダクタに流れる第1方向の電流を増加させ、前記第2期間に前記インダクタに流れる前記第1方向の電流をゼロに減少させ、前記第4期間に前記インダクタに流れる第2方向の電流を増加させ、前記第5期間に前記インダクタに流れる前記第2方向の電流をゼロに減少させてもよい。
【0015】
また、前記第1期間と前記第4期間は同一の長さを有し、前記第2期間と前記第5期間は同一の長さを有し、前記第3期間と前記第6期間は同一の長さを有してもよい。
【0016】
さらに、前記第1期間と前記第4期間は同一の長さを有し、前記第2期間と前記第5期間は同一の長さを有し、前記第3期間と前記第6期間は同一の長さを有してもよい。
【0017】
さらに本発明は、前記制御回路は、前記第1上側スイッチング素子と前記第2上側スイッチング素子との位相差に基づいて、前記第3期間及び前記第6期間の長さを変更可能に構成されてもよい。
【0018】
本開示は、第1正極母線と第1負極母線間に直列接続される第1上側スイッチング素子及び第1下側スイッチング素子とを含む3相の第1ブリッジ回路と、第2正極母線と第2負極母線間に直列接続される第2上側スイッチング素子及び第2下側スイッチング素子とを備える3相の第2ブリッジ回路と、前記第1上側スイッチング素子と前記第1下側スイッチング素子との接続点と、前記第2上側スイッチング素子と前記第2下側スイッチング素子との接続点との間に設けられる変圧回路及びインダクタを含む3相変圧回路及び3相インダクタと、を備える主回路と、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路を制御するための制御回路と、を備える3相DC/DCコンバータであって、前記制御回路は、第1期間において前記インダクタに流れる第1方向の電流を増加させ、前記第1期間後の第2期間において前記インダクタに流れる前記第1方向の電流をゼロに減少させ、前記第2期間後の第3期間において前記インダクタに流れる電流をゼロに維持し、前記第3期間後の第4期間において前記インダクタに流れる第2方向の電流を増加させ、前記第4期間後の第5期間において前記インダクタに流れる前記第2方向の電流をゼロに減少させ、前記第5期間後の第6期間において前記インダクタに流れる電流をゼロに維持するように、前記第1上側スイッチング素子、前記第1下側スイッチング素子、前記第2上側スイッチング素子及び前記第2下側スイッチング素子を50%未満のデューティ比で駆動可能に構成される、3相DC/DCコンバータを提供する。
【0019】
これら3相DC/DCコンバータにおいて、各スイッチングのデューティ比は、同一にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、広い範囲にわたりソフトスイッチングを実現することが可能でありながら、電流の対称性及びスイッチング素子への負荷の均等性を向上させることが可能となるDC/DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、3相DC/DCコンバータの回路図である。
図2図2は、SPS変調動作において、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図3A図3Aは、バック1動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図3B図3Bは、図3Aの状態1における導通状態を示す簡易化された回路図である。
図3C図3Cは、図3Aの状態2における導通状態を示す簡易化された回路図である。
図3D図3Dは、図3Aの状態3における導通状態を示す簡易化された回路図である。
図4図4は、バック2動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図5図5は、バック3動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図6A図6Aは、ブースト1動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aの状態1における導通状態を示す簡易化された回路図である。
図6C図6Cは、図6Aの状態2における導通状態を示す簡易化された回路図である。
図6D図6Dは、図6Aの状態3における導通状態を示す簡易化された回路図である。
図7図7は、ブースト2動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図8図8は、ブースト3動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。
図9図9は、動作モード選択のための機能ブロック図である。
図10図10は、電圧変換比Mを横軸とし、正規化された出力Pを縦軸とする、動作モードを選択するための図である。
図11図11は、蓄電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0023】
[第1実施形態]
【0024】
図1は、本実施形態に係る3相DC/DCコンバータ10の回路図を示す。この3相DC/DCコンバータ10は、3相絶縁型で、双方向に電力を伝送可能なDAB方式(Dual Active Bridge)のDC/DCコンバータである。この3相DC/DCコンバータ10は、主回路20と、主回路20の出力電圧を制御するための制御回路100とにより構成されている。
【0025】
主回路20は、1次側と2次側の電気的絶縁を確保しつつ、双方向に電力を伝送する。この主回路20は、1次側直流電圧Vがかかる一対の1次側正極端子22A及び1次側負極端子22Bと、2次側直流電圧Vがかかる一対の2次側正極端子24A及び2次側負極端子24Bと、3相の1次側ブリッジ回路30(「第1ブリッジ回路」の一例)と、3相の2次側ブリッジ回路40(「第2ブリッジ回路」の一例)と、1次側ブリッジ回路30及び2次側ブリッジ回路40とを変圧するための変圧回路50及びインダクタ60とを備える。
【0026】
1次側ブリッジ回路30は、1次側正極端子22Aに接続される1次側正極母線26Aと、1次側負極端子22Bに接続される1次側負極母線26Bとの間に、それぞれ、直列に接続される1次側左アーム上トランジスタQ1(「第1上側スイッチング素子」の一例。単に「トランジスタQ1」と呼ぶ場合がある。)及び1次側左アーム下トランジスタQ4(「第1下側スイッチング素子」の一例。単に「トランジスタQ4」と呼ぶ場合がある。)と、トランジスタQ1及びQ4のドレイン及びソース(または、コレクタ及びエミッタ)間にそれぞれ逆並列に接続された還流用のダイオードとを備える。なお、これらダイオードなどはトランジスタQ1などの寄生ダイオードから構成してもよい。
【0027】
トランジスタQ1などのトランジスタは、たとえば、SiCから構成されるパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。ただし、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子からトランジスタを構成してもよい。
【0028】
これらトランジスタQ1及びQ4並びにこれらトランジスタにそれぞれ逆接続されるダイオードから1次側左アームQLが構成される。
【0029】
1次側ブリッジ回路30は、さらに、1次側左アームQLと並列に、1次側正極母線26Aと1次側負極母線26Bとの間に設けられた1次側中アームQMと、1次側右アームQRとを備える。1次側中アームQMは、1次側中アーム上トランジスタQ3(単に、「トランジスタQ3」と呼ぶ場合がある。)、1次側中アーム下トランジスタQ6(単に、「トランジスタQ6」と呼ぶ場合がある。)及びこれらトランジスタにそれぞれ逆接続されるダイオードとを備える。1次側右アームQRは、1次側右アーム上トランジスタQ5(単に、「トランジスタQ5」と呼ぶ場合がある。)、1次側右アーム下トランジスタQ2(単に、「トランジスタQ2」と呼ぶ場合がある。)及びこれらトランジスタにそれぞれ逆接続されるダイオードとを備える。これらの各構成は、1次側左アームQLと同様であるから、説明を省略する。
【0030】
1次側ブリッジ回路30と、2次側ブリッジ回路40は、変圧回路50及びインダクタ60を中心に、左右対称に構成されている。具体的には、2次側ブリッジ回路40は、2次側正極端子24Aに接続される2次側正極母線28Aと、2次側負極端子24Bに接続される2次側負極母線28Bとの間に、並列に設けられた2次側左アームSLと、2次側中アームSMと、2次側右アームSRとを備える。2次側左アームSLは、2次側左アーム上トランジスタS1(「第2上側スイッチング素子」の一例。単に、「トランジスタS1」と呼ぶ場合がある。)、1次側左アーム下トランジスタS4(「第2下側スイッチング素子」の一例。単に、「トランジスタS4」と呼ぶ場合がある。)及びこれらトランジスタにそれぞれ逆接続されるダイオードとを備える。2次側中アームSMは、2次側中アーム上トランジスタS3(単に、「トランジスタS3」と呼ぶ場合がある。)、2次側中アーム下トランジスタS6(単に、「トランジスタS6」と呼ぶ場合がある。)及びこれらトランジスタにそれぞれ逆接続されるダイオードとを備える。2次側右アームSRは、2次側右アーム上トランジスタS5(単に、「トランジスタS5」と呼ぶ場合がある。)、2次側右アーム下トランジスタS2(単に、「トランジスタS2」と呼ぶ場合がある。)及びこれらトランジスタにそれぞれ逆接続されるダイオードとを備える。これらの各構成は、1次側左アームQLと同様であるから、説明を省略する。
【0031】
1次側左アームQL、1次側中アームQM及び1次側右アームQRの上トランジスタと下トランジスタとの接続点には、それぞれ交流端子A、B及びCが設けられる。また、2次側左アームSL、2次側中アームSM及び2次側右アームSRの上トランジスタと下トランジスタとの接続点には、それぞれ交流端子a、b及びcが設けられる。
【0032】
交流端子A、B及びCと、交流端子a、b及びcとの間には、3相の変圧回路50及び3相のインダクタ60が設けられる。
【0033】
インダクタ60は、U相のインダクタ60U、V相のインダクタ60V、W相のインダクタ60Wを備えており、それぞれ、一端が交流端子A、B及びC、他端が変圧回路50の各相の一次巻線に接続される。ただし、インダクタ60は、2次側ブリッジ回路40の交流端子a、b及びcに接続される形態で設けられてもよいし、1次側ブリッジ回路30及び2次側ブリッジ回路40のそれぞれに分割して設けられてもよい。
【0034】
変圧回路50は、1次側ブリッジ回路30と2次側ブリッジ回路40とを変圧する。変圧回路50は、U相の1次巻線、V相の1次巻線、W相の1次巻線及びそれぞれ各相ごとに共通のコアを有するU相の2次巻線、V相の2次巻線、W相の2次巻線を備え、これらの巻線がY-Y結線されている。ただし変圧回路50の構造は限定されない。大容量のDC/DCコンバータ10の場合、変圧回路50は、各相ごとに3つのコアを備えるように設けられてよいが、小容量のDC/DCコンバータの場合、1つのコアに3相の巻線を巻回することにより、変圧回路50を一体化させてもよい。
【0035】
図1に示されるように、U相の1次巻線、V相の1次巻線、W相の1次巻線は、インダクタ60U、60V、60Wにそれぞれ接続されている。U相の2次巻線、V相の2次巻線、W相の2次巻線は、2次側ブリッジ回路40の交流端子a、b、cにそれぞれ接続されている。U相、V相及びW相の1次巻線の巻数は同一であり、U相、V相及びW相の2次巻線の巻数は同一であり、1次巻線と2次巻線の巻数比は、それぞれ、n:1である。たとえば、n=1である。
【0036】
制御回路100は、1次側ブリッジ回路30及び2次側ブリッジ回路40の各トランジスタのゲート(またはベース)に制御信号を供給して、これら各トランジスタを制御する。制御回路100は、たとえば、プロセッサなどの演算回路(コンピュータ)と、SRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性半導体記憶素子及びフラッシュメモリなど、一時的でない形態(Non-transitory)で情報を記憶する不揮発性半導体記憶素子からなる記憶素子とを備えるマイクロコントローラから構成することができる。不揮発性半導体記憶素子には、本実施形態に示される各情報と、演算を含む本実施形態に示される各処理を実行するためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムが記憶素子から読み出されプロセッサなどの演算回路によって実行されることにより、本実施形態に示される各処理が行われる。
【0037】
本実施形態に示されるDC/DCコンバータ10は、SPS(Single Phase Shift)変調動作、SDM(Symmetric Duty-cycle Modulation)変調動作の双方を実行可能に構成されている。SDM変調動作は、降圧するためのSDMバック変調動作と、昇圧するためのSDMブースト変調動作を有する。SDMバック変調動作及びSDMブースト変調動作は、それぞれ、3つの動作モードを有する。したがって、DC/DCコンバータ10は、7つの動作モードを実行可能に構成されている。後述するように、制御回路100は、外部から受信する電流指令などに基づいて、適切な動作モードを選択し、その動作モードに基づいて、主回路20を制御するように構成されている。ただし、後述するようにそのうちの2つの動作モードは、ハードスイッチングを伴うものであるから、好適には、これらを除く5つの動作モードを実行可能に構成されている。
【0038】
以下、各変調動作において制御回路100が生成する制御信号及びそのときの電流波形について説明する。
[SPS変調動作]
図2は、SPS変調動作(以下、「SPS動作モード」と呼ぶ場合がある。)において、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。横軸は、時間を示す。また、縦軸は、インダクタ60U(図1)を矢印方向(「第1方向」の一例)に流れるインダクタ電流iの大きさを示す。また、QL、SL、QM、SM、QR、SRは、それぞれ、対応するアームのトランジスタを制御するための制御信号を示す。たとえば、QLには、1次側ブリッジ回路30の1次側左アームQLのトランジスタQ1及びQ4を制御するための制御信号が示されており、具体的には、制御回路100は、トランジスタQ1をオンさせた後、トランジスタQ4をオンさせる。
【0039】
SPS変調動作における各トランジスタQ1~S6のデューティ比は、それぞれ、50%である。すなわち、制御回路100は、1周期のうち、各トランジスタQ1~S6をそれぞれ1周期の50%の時間オンさせるように制御する制御信号を生成し、各トランジスタQ1~S6に供給する。たとえば、QLの軸に示されるように、制御回路100は、トランジスタQ1とこれに直列に接続されるトランジスタQ4のうち、トランジスタQ1を50%の時間オンさせた後オフにスイッチングし、同時にトランジスタQ4をオフからオンにスイッチングする。制御回路100は、トランジスタQ4を50%の時間オンさせた後、トランジスタQ4をオフにスイッチングし、同時にトランジスタQ1をオンさせる。以後、制御回路100は、この動作を繰り返させる。
【0040】
また、SPS変調動作において各トランジスタは、対応するトランジスタから位相シフト量Dだけ位相シフトして動作する。たとえば、QLの軸及びこれに対応するSLの軸に示されるように、制御回路100は、トランジスタQ1をオンさせた後、位相シフト量D経過後に、対応するトランジスタS1をオンさせる。他のトランジスタについても同様である。SPS変調動作において、位相差の正負を異ならせることにより、電力の伝送方向を切り替えることが可能である。図2に示される例では、制御回路100は、1次側ブリッジ回路30のトランジスタQ1などをオンさせてから、所定位相経過後に、2次側ブリッジ回路40のトランジスタS1などをオンさせているので、電力は、1次側ブリッジ回路30から2次側ブリッジ回路40に伝送される。
【0041】
さらに、SPS変調動作において、各相のトランジスタは、120度の位相差で、同じ動作をする。すなわち、制御回路100は、U相に対応するトランジスタQ1をオンさせた後、120度の位相差で、V相に対応するトランジスタQ3をオンさせ、さらに、120度の位相差で、W相に対応するトランジスタQ5をオンさせる。したがって、各相に対応するトランジスタは、120度の位相差で同じ動作を繰り返す。
【0042】
このようなSPS変調動作においてインダクタ60Uに流れるインダクタ電流iの変化について説明する。V相及びW相については、120度及び240度、位相が異なるだけであるため、説明を割愛する。
【0043】
まず、図2の状態1(STATE1)で示される期間において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS4をオンさせる。このとき、インダクタ60Uには、2次側直流電圧Vが巻線比に応じて変圧された電圧と、1次側直流電圧Vとの和が印加される。その結果、インダクタ60Uには、同図に示されるように負から正に増加するインダクタ電流iが流れ、インダクタ60Uがチャージされる。なお、状態1と状態2が切り替わる時のインダクタ電流iの大きさは、位相シフト量Dに基づいて決まる。
【0044】
状態2(STATE2)で示される期間において、制御回路100は、トランジスタS4をオフし、トランジスタS1をオンさせる。このため、トランジスタQ1及びS1がオンの状態となる。このとき、インダクタ60Uには、2次側直流電圧Vが巻線比に応じて変圧された電圧と、1次側直流電圧Vとの差に相当する電圧が印加される。このとき2次側に電流が流れ、インダクタ60Uは、ディスチャージ(放電)される。
【0045】
その後、制御回路100は、トランジスタQ1をオフし、トランジスタQ4をオンさせる(状態3(STATE3))。その結果、トランジスタQ4及びS1がオンの状態となる。このとき、インダクタ60Uには、2次側直流電圧Vが巻線比に応じて変圧された電圧と1次側直流電圧Vとの和に相当する電圧が、負の電圧として印加されるため、インダクタ60Uには、同図に示されるように正から負に減少するインダクタ電流iが流れる。
【0046】
その後は、トランジスタを対称的に動作させることにより、負の方向に同様の電流を流すことが可能である。
【0047】
後述するように、図10に「SPS」と示される範囲内でSPS変調動作に基づいて主回路20を制御することにより、ソフトスイッチングを実現することが可能になる。ソフトスイッチングを実現することにより、EMI(Electro Magnetic Interference)ノイズを抑制することなどが可能になる。
【0048】
[SDM変調動作]
【0049】
SPS変調動作において、所定のインダクタ(たとえばインダクタ60U)に流れる電流は、連続的である。しかしながら、本実施形態に係るSDM変調動作において、インダクタ(たとえばインダクタ60U)に流れる電流は、不連続(インダクタに流れる電流がゼロの期間を有する。)になる。この期間、そのインダクタに対応する2つのアーム(たとえば、1次側左アームQL及び2次側左アームSL)に接続するトランジスタ(たとえば、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4)は、オフにされる。換言すると、所定のインダクタ(たとえばインダクタ60U)に流れる電流がゼロになったときに、対応するトランジスタがオフにされる。
【0050】
また、所定のインダクタに流れる電流は、正方向及び負方向に対称的となる。すなわち、正方向に電流がゼロから増加し、その後減少してゼロになったときに、対応するトランジスタがオフにされ、そのインダクタに流れる電流がゼロとなる。その後、反転動作を行うことにより、負方向に電流がゼロから増加し、その後減少してゼロになったときに、対応するトランジスタがオフにされ、そのインダクタに流れる電流がゼロとなる。このような動作によって、所定のインダクタに流れる電流波形は、正方向及び負方向に対称的となる。また、各トランジスタ(たとえば、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4)は、同じ期間にオフされるため、これらトランジスタのデューティ比は、50%未満であり、かつ、同一である。従って、電流の対称性及びスイッチング素子への負荷の均等性を向上させることが可能となる。なお、他の相については、120度、または、240度位相シフトさせて、他の相に対応するトランジスタについて同じ動作を実行させる。
【0051】
[SDMバック変調動作]
SDMバック変調動作は、降圧させる場合、すなわち、1次側直流電圧Vよりも2次側直流電圧Vが小さい場合(後述する電圧変換比M<1の場合)に制御回路100によって実行可能な動作モードである。SDMバック変調動作は、位相シフト量D及びデューティ比に応じて、3つの動作モードを有する。これら動作モードをデューティ比が高い順に、バック1動作モード、バック2動作モード及びバック3動作モードと呼び総称してバック動作モードと呼ぶ。これらは、基本的に同様の動作をするが、位相シフト量D及びデューティ比に応じて、異なる組み合わせのトランジスタがオンされる期間を含むため、異なる動作モードとして取り扱われている。後述するように、制御回路100は、外部から受信する電流指令値Iref図9)などに基づいて、動作モード及び位相シフト量Dを選択する。SDMバック変調動作は、いずれの動作モードにおいても、以下の点において、共通する。
【0052】
まず、第1期間TP1(図3Aなど。以下同様)において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS1の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れるインダクタ電流iを増加させる。次いで、第2期間TP2において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS1の双方をオンさせ、インダクタ電流iを減少させる。その後、第3期間TP3において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにする。その後、反転動作を実行する。すなわち、第4期間TP4において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負のインダクタ電流iを増加させる。次いで、第5期間TP5において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負のインダクタ電流iを減少させる。その後、第6期間において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにする。
【0053】
このような動作により、インダクタ60Uに第1期間TP1及び第2期間TP2にわたり正の方向に流れるインダクタ電流iの電流波形と、第4期間TP4及び第5期間TP5にわたり負の方向に流れるインダクタ電流iの電流波形が対称的な形状を有する。また、第1期間TP1と第4期間TP4の長さを同一またはほぼ等しくし、第2期間TP2と第5期間TP5の長さを同一またはほぼ等しくすることによって、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4のデューティ比をほぼ等しくすることが可能になる。したがって、これらトランジスタへの負荷の偏りを抑制することが可能になる。なお、第2期間TP2及び第5期間TP5は、インダクタ60Uに流れる電流がゼロ(なお、電流などがゼロとは、完全に電流などがゼロになった場合のほか、DC/DCコンバータ10全体への影響が無視できるほど電流などが十分に小さくなった場合を含む。)になるタイミングで終了する。このように構成することにより、電流波形の対称性が向上し、かつ、インダクタ60Uに接続しているトランジスタQ1、Q4、S1及びS4へのスイッチングに伴う負荷が抑制される。その他のトランジスタは、120度または240度の位相差を有することの他は、同様に制御可能であることが当業者に理解できるため、説明を省略する。以下、各動作モードについて説明する。
【0054】
(バック1動作モード)
図3Aは、バック1動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。横軸は、時間を示す。また、縦軸は、電流の大きさを示す。この図では、インダクタ60Uを矢印方向に流れるインダクタ電流iの大きさを実線で示し、インダクタ60U乃至インダクタ60Wを流れるインダクタ電流の合計である出力電流ioutを破線で示す。また、QL、SL、QM、SM、QR、SRは、それぞれ、対応するアームのトランジスタを制御するための制御信号を示す。
【0055】
同図に示されるように、第1期間TP1内において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS1の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる電流を増加させる。ここで、他のトランジスタの動作に応じて電流は増減する。しかしながら、第1期間TP1の始期と終期を比較したときに、終期においてインダクタ60Uに流れる電流は増加する。
【0056】
次いで、第2期間TP2において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS1の双方をオンさせる。このとき、インダクタ60Uには、1次側直流電圧Vと2次側直流電圧Vが巻線比に応じて変圧された電圧との和に相当する電圧が負の電圧として印加されるため、インダクタ電流iは、減少する。
【0057】
図3B乃至図3Dは、図3Aにおける状態1(STATE1)乃至状態3(STATE3)における導通状態を説明するために、主回路20を簡易化させた回路図である。
図3Bに示されるように、状態1において、トランジスタQ1、Q2、S1及びS2が導通している。このとき、インダクタ60Uに流れるインダクタ電流iは増加し、インダクタ60Uは、チャージ(蓄電)される。
【0058】
図3Cに示されるように、状態2において、トランジスタQ1、Q2、Q3、S1、S2及びS3が導通している。このとき、2次側に電流が流れ、インダクタ60Uは、ディスチャージ(放電)される。
【0059】
図3Dに示されるように、状態3において、トランジスタQ3、Q4、Q5、S1、S2及びS3が導通している。このとき、トランジスタQ4及びS1が導通していることから、インダクタ60Uに流れるインダクタ電流iは減衰する。
【0060】
その後、第3期間TP3において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにする。その結果、インダクタ60Uに接続される全てのトランジスタがオフになるため、インダクタ60Uには電流が流れない。なお、制御回路100は、インダクタ60Uの電流がゼロになった時に第2期間TP2を終了し、第3期間TP3を開始するように主回路20を制御する。このように動作させることにより、電流波形の対称性を向上し、かつ、インダクタ60Uに接続しているトランジスタQ1、Q4、S1及びS4へのスイッチングに伴う負荷が抑制される。また、第1期間TP1、第2期間TP2及び第3期間TP3の合計は、180度の位相に相当することが好ましい。このように動作させることにより、電流波形の対称性を向上させることが可能になる。
【0061】
その後、反転動作を実行する。すなわち、第4期間TP4において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS4の双方をオンさせる。第1期間TP1と第4期間TP4とを比較すると、第1期間TP1においては、制御回路100が上側のトランジスタQ1及びS1をオンさせることにより、インダクタ60Uに流れる電流を正の方向に増加させたのに対し、第4期間TP4においては、制御回路100が下側のトランジスタQ4及びS4をオンさせることにより、インダクタ60Uに流れる電流を負の方向に増加させる。このため、第1期間TP1におけるインダクタ電流iの正の方向へ増加する電流波形と、第4期間TP4におけるインダクタ電流iの負の方向へ増加する電流波形は、対称的になる。
【0062】
次いで、第5期間TP5において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負の電流を減少させる。第2期間TP2におけるインダクタ電流iが減少するときの電流波形と、第5期間TP5における負のインダクタ電流iが減少するときの電流波形は、対称的になる。
【0063】
その後、第6期間TP6において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにする。上述したのと同様の理由により、制御回路100は、インダクタ60Uの電流がゼロになった時に第4期間TP4を終了し、第5期間TP5を開始するように主回路20を制御する。また、第4期間TP4、第5期間TP5及び第6期間TP6の合計は、180度の位相に相当することが好ましい。
【0064】
以上のようなバック1動作モードによれば、図3Aに示されるように、トランジスタQ1乃至S6の全てのトランジスタのデューティ比を同一にしながら、かつ、第1期間TP1及び第2期間TP2の正側のインダクタ電流iと、第4期間TP4及び第5期間TP5の負側のインダクタ電流iを対称的な波形にすることが可能となる。また、第3期間TP3及び第6期間TP6において、インダクタ電流iが流れない期間を設けるから、インダクタ電流iは、不連続である。なお、出力電流ioutは、図3Aに示されるように、60度ごとにピークを有する電流波形となる。
【0065】
(バック2動作モード)
図4は、バック2動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。バック1動作モードに関する説明と同様であることが当業者に理解できる点については説明を省略または簡略化する。
【0066】
同図に示されるように、バック2動作モードにおいても、第1期間TP1内において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS1の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる電流を0から正の値に増加させ、第2期間TP2において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS1の双方をオンさせ、インダクタ電流iをゼロに減少させる。第3期間TP3において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにさせ、インダクタ60Uに電流が流れない期間を設ける。続いて反転動作に移り、第4期間TP4において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS4の双方をオンさせ、インダクタ電流iをゼロから負の方向に増加させ、第5期間TP5において、トランジスタQ1及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負の電流を0に減少させ、その後、第6期間TP6において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにさせ、インダクタ60Uに電流が流れない期間を設ける。
【0067】
制御回路100は、インダクタ電流iがゼロになった時に第5期間TP5を終了し、第6期間TP6を開始するように主回路20を制御する。また、第4期間TP4、第5期間TP5及び第6期間TP6の合計は、180度の位相に相当することが好ましい。
【0068】
なお、同図において状態1(STATE1)のとき、インダクタ60Uはチャージされ、状態2(STATE2)のとき、2次側に電流がながれ、インダクタ60Uはディスチャージされ、状態3(STATE3)のとき、インダクタ電流iは減衰する。
【0069】
(バック3動作モード)
図5は、バック3動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。バック1動作モードに関する説明と同様であるため、説明を省略または簡略化する。ただしバック3動作モードは、バック1動作モード及びバック2動作モードと比較してデューティ比が小さいことから、第1期間TP1内においてインダクタ電流iがゼロになる状態3(STATE3)が発生する。このとき、トランジスタQ1及びS1のみがオンされているから、インダクタ電流iは流れない。ただし、バック3動作モードでは、ハードスイッチングが発生するため、好適には、制御回路100は、バック3動作モードを選択しないように構成される。
【0070】
なお、同図において状態1(STATE1)のとき、インダクタ60Uはチャージされ、状態2(STATE2)のとき、2次側に電流がながれ、インダクタ60Uはディスチャージされ、状態3(STATE3)のとき、インダクタ電流iは流れない。
【0071】
[SDMブースト変調動作]
本実施形態に係るSDMブースト変調動作においても、デューティ比は、50%未満となる。SDMブースト変調動作は、昇圧させる場合、すなわち、1次側直流電圧Vよりも2次側直流電圧Vが大きい場合(電圧変換比M>1の場合)に制御回路100によって実行可能な動作モードである。SDMブースト変調動作は、位相シフト量D及びデューティ比に応じて、3つの動作モードを有する。これら動作モードをデューティ比が大きい順に、ブースト1動作モード、ブースト2動作モード及びブースト3動作モードと呼び総称してブースト動作モードと呼ぶ。後述するように、制御回路100は、外部から受信する電流指令値Iref図9)などに基づいて、動作モード及び位相シフト量Dを選択する。SDMブースト変調動作は、いずれの動作モードにおいても、以下の点において、共通する。
【0072】
まず、第1期間TP1(図6Aなど。以下同様)において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れるインダクタ電流iを増加させる。次いで、第2期間TP2において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS1の双方をオンさせ、インダクタ電流iを減少させる。その後、第3期間TP3において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにする。その後、反転動作を実行する。すなわち、第4期間TP4において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS1の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負のインダクタ電流iを増加させる。次いで、第5期間TP5において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負のインダクタ電流iを減少させる。その後、第6期間TP6において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにする。このような動作により、インダクタ60Uに第1期間TP1及び第2期間TP2にわたり正の方向に流れるインダクタ電流iの電流波形と、第4期間TP4及び第5期間TP5にわたり負の方向に流れるインダクタ電流iの電流波形は、対称的になる。また、第1期間TP1と第4期間TP4の長さを同一またはほぼ等しくし、第2期間TP2と第5期間TP5の長さを同一またはほぼ等しくすることによって、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4のデューティ比をほぼ等しくすることが可能になる。したがって、これらトランジスタへの負荷の偏りを抑制することが可能になる。また、他のトランジスタも120度または240度の位相差で動作させることにより、全てのトランジスタへの負荷の偏りを抑制することが可能になる。
【0073】
第2期間TP2及び第5期間TP5は、インダクタ60Uに流れる電流がゼロになるタイミングで終了する。このように構成することにより、電流波形の対称性が向上し、かつ、インダクタ60Uに接続しているトランジスタQ1、Q4、S1及びS4へのスイッチングに伴う負荷が抑制される。その他のトランジスタは、120度または240度の位相差を有することの他は、同様に制御可能であることが当業者に理解できるため、説明を省略する。以下、各動作モードについて説明する。
【0074】
(ブースト1動作モード)
図6Aは、ブースト1動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示しており、インダクタ60Uを矢印方向に流れるインダクタ電流iの大きさを実線で示し、インダクタ60U乃至インダクタ60Wを流れるインダクタ電流の合計である出力電流ioutの大きさを破線で示す。また、QL、SL、QM、SM、QR、SRは、それぞれ、対応するアームのトランジスタを制御するための制御信号を示す。
【0075】
同図に示されるように、第1期間TP1内において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる電流を増加させる。第1期間TP1の始期と終期を比較したときに、終期においてインダクタ60Uに流れる電流は増加する。
【0076】
次いで、第2期間TP2において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS1の双方をオンさせる。このとき、インダクタ60Uには、2次側直流電圧Vが巻線比に応じて変圧された電圧との差に相当する電圧が印加されるため、ブーストする場合、インダクタ電流iは、減少する。
【0077】
図6B乃至図6Dは、図6Aにおける状態1(STATE1)乃至状態3(STATE3)における導通状態を説明するために、主回路20を簡易化させた回路図である。
図6Bに示されるように、状態1において、トランジスタQ1、Q2、Q3、S1、S2及びS6が導通している。このとき、2次側に電流が流れ、したがってインダクタ60Uがディスチャージ(放電)されながら、インダクタ電流iに流れる電流は減少する。
【0078】
図6Cに示されるように、状態2において、トランジスタQ1、Q2、Q3、S1、S2及びS3が導通している。このときも、2次側に電流が流れ、したがってインダクタ60Uは、ディスチャージ(放電)されながら、インダクタ電流iに流れる電流は減少する。
【0079】
その後図6Dに示されるように、第3期間TP3(状態3(STATE3))において、制御回路100は、トランジスタQ2、Q3、S2及びS3をオンさせる。一方、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4は、オフされる。その結果、インダクタ60Uに接続される全てのトランジスタがオフになるため、インダクタ60Uには電流が流れない。なお、制御回路100は、インダクタ60Uの電流がゼロになった時に第2期間TP2を終了し、第3期間TP3を開始するように主回路20を制御する。このように動作させることにより、電流波形の対称性を向上し、かつ、インダクタ60Uに接続しているトランジスタQ1、Q4、S1及びS4へのスイッチングに伴う負荷が抑制される。また、第1期間TP1、第2期間TP2及び第3期間TP3の合計は、180度の位相に相当することが好ましい。このように動作させることにより、電流波形の対称性を向上させることが可能になる。
【0080】
その後、反転動作を実行する。すなわち、第4期間TP4において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS1の双方をオンさせる。第1期間TP1と第4期間TP4とを比較すると、第1期間TP1においては、制御回路100がトランジスタQ1及びS4をオンさせることにより、インダクタ60Uに流れる電流を正の方向に増加させたのに対し、第4期間TP4においては、制御回路100がトランジスタQ4及びS1をオンさせることにより、インダクタ60Uに流れる電流を負の方向に増加させる。このため、第1期間TP1におけるインダクタ電流iの正の方向へ増加する電流波形と、第4期間TP4におけるインダクタ電流iの負の方向へ増加する電流波形とが対称的になる。
【0081】
次いで、第5期間TP5において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負の電流を減少させる。
【0082】
その後、第6期間TP6において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにさせる。上述したのと同様の理由により、制御回路100は、インダクタ60Uの電流がゼロになった時に第5期間TP5を終了し、第6期間TP6を開始するように主回路20を制御する。また、第4期間TP4、第5期間TP5及び第6期間TP6の合計は、180度の位相に相当することが好ましい。
【0083】
以上のようなブースト1動作モードによれば、図6Aに示されるように、トランジスタQ1乃至S6の全てのトランジスタのデューティ比を同一にしながら、かつ、第1期間TP1及び第2期間TP2の正側のインダクタ電流iと、第4期間TP4及び第5期間TP5の負側のインダクタ電流iを対称的な波形にすることが可能となる。また、第3期間TP3及び第6期間TP6において、インダクタ電流iが流れない期間を設けるから、インダクタ電流iは、不連続である。なお、出力電流ioutは、図6Aに示されるように、60度ごとにピークを有する電流波形となる。
【0084】
(ブースト2動作モード)
図7は、ブースト2動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。ブースト1動作モードに関する説明と同様であることが当業者に理解できる点については説明を省略または簡略化する。
【0085】
同図に示されるように、ブースト2動作モードにおいても、第1期間TP1内において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる電流を0から正の値に増加させ、第2期間TP2において、制御回路100は、トランジスタQ1及びS1の双方をオンさせ、インダクタ電流iをゼロに減少させる。第3期間TP3において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにさせ、インダクタ60Uに電流が流れない期間を設ける。続いて反転動作に移り、第4期間TP4において、制御回路100は、トランジスタQ4及びS1の双方をオンさせ、インダクタ電流iをゼロから負の方向に増加させ、第5期間TP5において、トランジスタQ4及びS4の双方をオンさせ、インダクタ60Uに流れる負の電流を0に減少させ、その後、第6期間TP6において、制御回路100は、トランジスタQ1、Q4、S1及びS4の全てをオフにさせ、インダクタ60Uに電流が流れない期間を設ける。制御回路100は、インダクタ電流iがゼロになった時に第5期間TP5を終了し、第6期間TP6を開始するように主回路20を制御する。また、第4期間TP4、第5期間TP5及び第6期間TP6の合計は、180度の位相に相当することが好ましい。
【0086】
なお、同図において状態1(STATE1)及び状態2(STATE2)のとき、2次側に電流がながれ、インダクタ60Uはディスチャージされ、状態3(STATE3)のときインダクタ60Uには、実質的に電流が流れない。
【0087】
(ブースト3動作モード)
図8は、ブースト3動作モードにおいて、制御回路100により生成される制御信号を示す図である。ブースト1動作モードに関する説明と同様であるため、説明を省略または簡略化する。ただしブースト3動作モードは、ブースト1動作モード及びブースト2動作モードと比較してデューティ比が小さいことから、第1期間TP1内においてインダクタ電流iがゼロになる状態が発生する。このとき、トランジスタQ1及びS1のみがオンされているから、インダクタ電流iは流れない。その後、状態1(STATE1)においてインダクタ60Uは、チャージされ、状態2(STATE2)においてディスチャージされ、状態3(STATE3)においてインダクタ60Uには、実質的に電流が流れない。
【0088】
[動作モードの選択]
以下、上述した動作モードを選択するための方法について説明する。図9は、制御回路100内の動作モード選択のための機能ブロック図である。
【0089】
まず、制御回路100は、1次側と2次側との電圧変換比Mを決定する。具体的には、制御回路100は、外部から供給される2次側直流電圧V(に巻線比nを乗じた値)を1次側直流電圧Vで除算することにより電圧変換比Mを取得する。図9においては、CHAdeMO(登録商標)規格に基づいて表記がなされており、同図におけるVbatが2次側直流電圧Vに相当し、Vdcbusが1次側直流電圧Vに相当する。なお、3相DC/DCコンバータ10がバッテリーに接続されるとき、1次側直流電圧Vは、たとえば、380Vである。
【0090】
また、制御回路100は、出力Pを決定する。具体的には、制御回路100は、外部から供給される電流指令値Irefと2次側直流電圧Vに基づいて定まるVbatを乗じることにより出力Pを取得する。
【0091】
制御回路100のモード選択部100Aは、電圧変換比M及び出力Pに基づいて、動作モードを選択する。図10は、電圧変換比Mを横軸とし、正規化された出力Pを縦軸とする、動作モードを選択するための図である。この図において、「SPS」「SDM Buck1」「SDM Buck2」「SDM Buck3」「SDM Boost1」「SDM Boost2」「SDM Boost3」と示される領域は、上述したSPSモード、SDM変調動作における、バック1動作モード、バック2動作モード、バック3動作モード、ブースト1動作モード、ブースト2動作モード、ブースト3動作モードにそれぞれ相当する。制御回路100の記憶素子には、たとえば、電圧変換比Mを関数とする各領域の境界を規定するための情報が記録される。なお、図10におけるQは、Q値を示している。
【0092】
たとえば、電圧変換比Mが1であり、正規化された出力Pが0.6である場合、モード選択部100Aは、SPS動作モードを選択する。同図の、「SPS」で示される領域は、SPS動作モードにおいて、ソフトスイッチングを実現できる領域に相当する。この領域の外で、仮に、SPS動作モードを選択すると、ハードスイッチングするスイッチング素子が現れる。このため、モード選択部100Aは、「SPS」で示される領域の外では、SDM変調動作における各動作モードを選択する。なお、ソフトスイッチングとは、たとえば、スイッチング素子において、共振現象などを利用し、電圧または電流がゼロになるタイミングでスイッチング素子のスイッチング(オン/オフの切り替え)を行うことを含む。ソフトスイッチングを満足する条件は、知られている。
【0093】
たとえば、電圧変換比Mが1.5であり、正規化された出力Pが0.6である場合、モード選択部100Aは、電圧変換比M=1.5のときの、各領域の境界となる出力値、すなわち、ブースト3動作モードとブースト2動作モードとの境界となる出力値、ブースト2動作モードとブースト1動作モードとの境界となる出力値及びブースト1動作モードとSPS動作モードとの境界となる出力値を算出し、制御回路100により取得された出力P=0.6であることに基づいて、ブースト2動作モードを選択する。
【0094】
同様に、たとえば、電圧変換比Mが0.5であり、正規化された出力Pが0.4である場合、モード選択部100Aは、バック2動作モードを選択する。
電圧変換比Mに対し、動作モード間の出力Pの境界(出力境界)を与える式は、表1に示される。ただし、Pは、1次側直流電圧V、インダクタ60Uのインダクタンス(たとえば、4μH)、周波数f(たとえば、50kHz)で定まる係数である。
【表1】
【0095】
バック1動作モード、バック2動作モード、ブースト1動作モード及びブースト2動作モードでは、ソフトスイッチングが実現される。このため、本実施形態に係る3相DC/DCコンバータ10は、SDS動作モードがソフトスイッチングを実現できる領域を超えた領域において、ソフトスイッチングを実現することが可能になる。なお、バック3動作モード及びブースト3動作モードでは、2次側ブリッジ回路40においてハードスイッチングが発生する。このため、モード選択部100Aは、これら動作モードを選択しないように構成される。ただし、モード選択部100Aがこれら動作モードを選択することを妨げるものではない。
【0096】
図9に戻り、制御回路100の位相シフト量決定部100Bは、位相シフト量Dを決定する。位相シフト量Dは、対応するトランジスタ(たとえば、トランジスタQ1とトランジスタS1)間の位相シフト量を示しており、図3Aなどに示されるように、たとえば、トランジスタQ1がオンにスイッチングされた後に、トランジスタS1がオンにスイッチングされるまでの期間に相当する情報である。具体的には、位相シフト量決定部100Bは、電流指令値Irefと、フィードバック電流値ibat(2次側の電流値であるIに相当)の差分に基づいて、位相シフト量Dを決定する。表1には、電圧変換比Mに対する位相シフト量Dの領域が、動作モードごとに示される。この表に示されるように、動作モードの境界において、位相シフト量Dは、同一である。たとえば、バック3動作モードとバック2動作モードの境界において、位相シフト量Dは、(2-M)/6である。したがって、バック3動作モードからバック2動作モードに移行するとき(あるいはバック2動作モードからバック3動作モードに移行するとき)、位相シフト量Dが不連続に変動しないから、損失を低減することが可能になる。
【0097】
制御回路100の変調部100Cは、位相シフト量D、モード選択部100Aによって選択された動作モード及び電圧変換比Mに基づいて、トランジスタのオン時間を示すパラメータD及びD図3Aなど)を決定する。動作モードごとにパラメータD及びDを決定するための式は、表2に示される。
【表2】
【0098】
変調部100Cは、パラメータD、D及び位相シフト量Dに基づいて、トランジスタQ1乃至S6を制御するための制御信号を生成し、制御回路100のドライバ(不図示)は、トランジスタQ1乃至S6のゲート(またはベース)に駆動信号を供給する。
【0099】
以上のとおりであるから、3相DC/DCコンバータ10によれば、たとえば、電圧変換比Mが0.5以上2.0以下の広範囲にわたり、ソフトスイッチングを実現することが可能になる。たとえば、図11は、3相DC/DCコンバータ10の1次側正極端子22A及び1次側負極端子22Bを電源であるPSU(Power Supply Unit)200に接続し、2次側正極端子24A及び2次側負極端子24Bを負荷(バッテリ300)に接続して構成される蓄電システム400を示している。
【0100】
このような蓄電システム400においてバッテリを充電する場合、2次側の電流値であるIを一定に制御する場合、図10において、電圧変換比M及び出力Pが比例するように両者は推移する。このとき、電圧変換比M及び出力Pが上昇するにつれて、バック2動作モード、バック1動作モード、SPSモード、ブースト1動作モード、ブースト2動作モードと、動作モードを推移させながら、3相DC/DCコンバータ10を動作させることにより、ソフトスイッチングを実現しながら、バッテリ300を充電することが可能となる。また、動作モード間の境界で位相シフト量Dpは、連続的なので、効率の低下を抑制できる。さらに上述したように、スイッチング素子への負荷の均等性を向上させることも可能となる。
【0101】
なお、3相DC/DCコンバータ10において、電力の伝送方向を変更する場合、1次側ブリッジ回路30と2次側ブリッジ回路40を入れ替えて動作させればよい。すなわち、トランジスタQ1などをトランジスタS1などとし、トランジスタS1などをトランジスタQ1などとして、同様に動作させることにより、電力の伝送方向を変更することが可能となる。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。たとえば、図3Aなどに示されるバックモードにおけるトランジスタQ1とQ4をスイッチングさせる時(第1期間TP1と第2期間TP2との間及び第4期間TP4と第5期間TP5との間)などに、それぞれ、デッドタイムを挿入してもよい。同様に、図6Aなどに示されるブーストモードにおいても同様である。その他、上述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件などは、例示したものに限定されるわけではなく当業者の通常の創作能力の発揮内において、適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0103】
10 DC/DCコンバータ
20 主回路
22A 1次側正極端子
22B 1次側負極端子
24A 2次側正極端子
24B 2次側負極端子
26A 1次側正極母線
26B 1次側負極母線
28A 2次側正極母線
28B 2次側負極母線
30 1次側ブリッジ回路
40 2次側ブリッジ回路
50 変圧回路
60 インダクタ
100 制御回路
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11