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特許7575020通電路パターン、変化計測システム及び軸部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】通電路パターン、変化計測システム及び軸部材
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20241022BHJP
   G01L 1/22 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01L5/00 103D
G01L1/22 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023183355
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2019077410の分割
【原出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2023178442
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-11-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02392293(US,A)
【文献】特開昭61-051504(JP,A)
【文献】実開昭48-100179(JP,U)
【文献】特公昭32-000297(JP,B1)
【文献】特表2001-522031(JP,A)
【文献】特開2002-296126(JP,A)
【文献】米国特許第04579007(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00,1/22,5/00,3/10
G01B 7/16,
G01K 7/18,
G01N 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる軸体に、該軸体の変化を計測するための通電路を上記軸体の軸方向に沿って往復するように延び、軸方向に折り返しながら、上記軸体の周方向に沿って設けた計測部を形成し、
上記軸体の少なくとも一端側は、雌ねじ体を螺合可能な条及び/又は溝を有し、
上記通電路は、両端部が上記軸体の軸方向に沿って互いに相異なる向きに延在し、
上記端部が端子接触部であることを特徴とする通電路パターン。
【請求項2】
前記両端部の内の少なくとも一方の端部に形成される前記端子接触部は、前記軸体の外周面に沿って無端状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の通電路パターン。
【請求項3】
測定対象となる軸体に、該軸体の変化を計測するための通電路を直接的に配設した計測部を形成し、
上記通電路は、少なくとも一端が上記軸体の外周面に沿った無端形状であることを特徴とする通電路パターン。
【請求項4】
前記軸体が断面円形状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の通電路パターン。
【請求項5】
前記軸体が回転可能に軸支されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の通電路パターン。
【請求項6】
前記軸体は、その軸方向に沿って伸縮可能に支持されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の通電路パターン。
【請求項7】
前記軸体の一端側が、少なくとも前記計測部を配設した箇所の径よりも大径であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の通電路パターン。
【請求項8】
前記計測部は、前記通電路が所定方向に沿って往復しながら、周回状に延びることで形成されることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の通電路パターン。
【請求項9】
請求項1乃至の何れかに記載の通電路パターンを有する前記軸体と、
前記通電路の端部の端子接触部に接触可能な接触子を有し、前記計測部を介した前記軸体の変化を計測する計測装置と、を具えることを特徴とする変化計測システム。
【請求項10】
請求項1乃至の何れかに記載の通電路パターンが直接的に形成されることを特徴とする軸部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電路パターン、変化計測システム及び軸部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物のセンサ構造付部材のセンサ構造を利用し、センサ構造付部材に生じる変形や歪み等の物理的な変化を検知する計測システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-040777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に部材に設ける端子や通電路は、部材の種類に応じて適切な配設位置や配設パターンが異なる。例えば長尺状の部材においては、入力側と出力側の端子を長手方向の一方に集約する必要はなく、長手方向に沿って一方側と他方側に端子を離間させた方が良い場合がある。また端子が点形状である場合、端子が情報収集装置と通電可能に接続するように、部材の配設向きや、情報収集装置との間に設ける配線の位置を調整する必要がある。
【0005】
本発明は、外部への接続が容易で且つ利便性を向上させるための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の通電路パターンは、測定対象となる軸体に、該軸体の変化を計測するための通 電路を周回状に配設した計測部を形成し、上記軸体の少なくとも一端側は、雌ねじ体を螺合可能な条及び/又は溝を有し、上記通電路は、両端部が上記軸体の軸方向に沿 って互いに相異なる向きに延在し、上記端部が端子接触部であることを特徴とする。
【0007】
上記通電路パターンは、前記両端部の内の少なくとも一方の端部に形成される前記端子接触部が前記軸体の外周面に沿って無端状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記通電路パターンは、測定対象となる軸体に、該軸体の変化を計測するための通電路を直接的に配設した計測部を形成し、上記通電路は、少なくとも一端が上記軸体の外周面に沿った無端形状であることを特徴とする。
【0009】
上記通電路パターンは、前記軸体が断面円形状であることを特徴とする。
【0010】
上記通電路パターンは、前記軸体が回転可能に軸支されていることを特徴とする。
【0011】
上記通電路パターンは、前記軸体がその軸方向に沿って伸縮可能に支持されていることを特徴とする。
【0012】
上記通電路パターンは、前記軸体の一端側が、少なくとも前記計測部を配設した箇所の径よりも大径であることを特徴とする。
【0014】
上記通電路パターンは、前記計測部が前記通電路が所定方向に沿って往復しながら、周回状に延びることで形成されることを特徴とする。
【0015】
上記通電路パターンは、前記所定方向が前記軸体の軸方向であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の変化計測システムは、上記通電路パターンを有する前記軸体と、前記通電路の端部の端子接触部に接触可能な接触子を有し、前記計測部を介した前記軸体の変化を計測する計測装置と、を具えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の軸部材は、上記通電路パターンが直接的に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構造によって、外部機器との接続が容易とすることで利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の通電路パターン付軸部材を示す側面図である。
図2】本実施形態の通電路パターン付軸部材を示す斜視図である。
図3】二つの部材間で軸支された通電路パターン付軸部材を示す図である。
図4】部材の締結に用いる(a)雌ねじ体の斜視図、(b)雌ねじ体の断面図、(c)雄ねじ部の正面図である。
図5】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部と回路基板との接続を示す図である。
図6】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部の他の形状例を示す斜視図である。
図7】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部の他の形状例を示す側面図である。
図8】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部の他の形状例を示す側面図である。
図9】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部の他の形状例を示す側面図である。
図10】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部の他の形状例を示す側面図である。
図11】本実施形態の通電路パターン付軸部材の端子部の他の形状例を示す斜視図である。
図12】軸部表面を展開した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の通電路パターンを有する通電路パターン付軸部材の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本実施形態の通電路パターン付軸部材を示す側面図、図2は本実施形態の通電路パターンを示す斜視図である。
【0021】
図1、2に示す通電路パターン付軸部材1は、円柱状の軸部(軸体)2と、軸部2よりも大径の両端部において形成された雄ねじ螺旋溝(又は雄ねじ螺旋条)から成る雄ねじ部4a、4bとを有し、軸直交方向の最大寸法に比して軸方向の長さが長い形状を有する部材である。ここでは軸部2の軸方向に沿った一方側には、雄ねじ部4aが配設され、他方側には雄ねじ部4bが配設される。
【0022】
雄ねじ部4a、4bは、所定のリード角及び/又はリード方向の螺旋溝を形成した第一雄ねじ螺旋構造と、この第一雄ねじ螺旋構造のリード角及び/又はリード方向が相異なるリード角及び/又はリード方向に螺旋溝が設定される第二雄ねじ螺旋構造を重畳的に有している。ここでは、対応した右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成した右ねじとなる第一雄ねじ螺旋構造と、対応した左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される左ねじと成る第二雄ねじ螺旋構造との二種類の雄ねじ螺旋構造が、通電路パターン付軸部材1の軸方向における同一領域上に重複して形成される。
【0023】
勿論、第一雄ねじ螺旋構造と第二雄ねじ螺旋構造を、互いに右ねじのリード方向が同じ螺旋構造とし、リード角を相異なるように設定してもよい。
【0024】
本実施形態において、雄ねじ部4a、4bは、各々が右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となる。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部4a、4bの詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0025】
軸部2は、中央部分が両端部分に対して括れた外形形状を成す。即ち、軸部2は、雄ねじ部4a、4bの谷径或いは有効径と同程度の径の円柱状の中央部分と、中央部分よりも大径に設定されて雄ねじ部4a、4bが形成された両端部分とを有して成るように外形が設定される。軸部2の円柱部分には、外周面の略全周に亘って通電路パターン(計測部)10が直接的に形成されている。通電路パターン10は、一連の通電路から成り、軸部2の物理変化を検出する物理変化検出手段を構成するものであり、導電材料のゲージから成る抵抗体12、端子部14(端子接触部)を有する。
【0026】
抵抗体12は、軸部2の軸方向の略中間において、所定のパターン(格子状)に形成された薄膜であり、物理変化によって抵抗値等の電気的特性が変化を生じる受感部分である。即ち、通電路パターン10は、抵抗体12の電気的特性の変化を検出することで、物理変化検出のための各種センサとして利用される。
【0027】
なお、電気的特性の変化によって検出される物理変化は、熱・温度変化、湿度変化等であってもよい。例えば、通電路パターン10の電気抵抗値の変化から環境温度を計測する場合、通電路パターン10は所謂抵抗温度計の構成部品として用いることを意味する。また同様にして抵抗変化型の電気湿度センサとして湿度を計測してもよい。
【0028】
また抵抗体12が形成される範囲は、軸部2の略全周に亘る。即ち、抵抗体12は、軸部2の軸方向に沿って往復するように延び、軸方向に折り返しながら、軸部2の周方向に沿って周回状に延在して形成される。これにより、抵抗体12が軸部2の軸方向に沿って変形する状態を検出することが可能となる。また、抵抗体12は、両端部が軸部2の軸方向に沿って互いに相異なる向きに延在する。
なお、抵抗体12と端子部14とは、同一工程において同一材料により一体に形成することができるものであるが、これに限定されず、例えば、端子部14は、耐摩耗性の素材等で構成したり、良導体素材を用いて構成したりしても良い。
【0029】
端子部14は、抵抗体12の両端部から延在し、軸部2の外周面の全周に亘って無端状(環状)を成すように形成される。端子部14は、物理変化により生じる抵抗体12の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等と電気的に接続される。また抵抗体12の両端部は、軸部2の軸方向に沿った相異なる向きに延在する。従って、一対の端子部14は、各々が軸方向に沿った相異なる位置に配設される。即ち一対の端子部14の内、一方の端子部14が抵抗体12から軸方向の一方側に離間した箇所に配設され、他方の端子部14が抵抗体12から軸方向の他方側に離間した箇所に配設される。
【0030】
次に、通電路パターン10の形成例について説明する。先ず通電路パターン10は、軸部2の表面に直接形成するものである。従って軸部材1の母材が導電性を有する場合、軸部2の表面に電気絶縁層を被膜形成し、当該電気絶縁層上に電気伝導性が良好な材料である導電材料によって通電路パターン10を形成する。
【0031】
電気絶縁層は、例えば積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)等を用いて形成し得る。または例えば所定のマスクを配置した状態で絶縁材料をスパッタリングによって被膜形成したり、シリカ材料を塗布して加熱処理したり、ポリィミド系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系等の有機絶縁材による層を形成する等の手法を用いてもよい。
【0032】
通電路パターン付軸部材1の母材(或いは軸部2)が電気伝導性を有する場合には、その母材表面を酸化処理することによって酸化皮膜化し電気絶縁層としても良い。また母材がアルミニウム系の場合にはアルマイト処理によって電気絶縁層を設けても良い。勿論電気絶縁層は、これらの手法によって形成するものに限定するものではない。また通電路パターン付軸部材1の母材が電気絶縁性を有する場合には、電気絶縁層を形成せず、母材に直接通電路パターン10を成す導電部を形成してもよい。
【0033】
導電部は、導電性ペーストを利用した積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング、CVD法、PVD法等によって電気絶縁層に直接形成される。また導電部は、通電路パターン10の形状に合わせたマスキングを施してエッチングすることで、形成されるものであってもよい。このように導電部を電気絶縁層に直接形成することで、長時間に亘って、導電部が剥離しないように構成される。
【0034】
以上のように通電路パターン10を物理変化検出の対象物である通電路パターン付軸部材1における軸部2の外面上に形成することで、対象物が著しく長尺であっても何等の問題も無く高精度なセンシング機能を有する長尺状部材を得ることが出来る。そして通電路パターン10の端子部14を不図示の回路基板と接続させることで、該回路基板に搭載したブリッジ回路や演算回路等によって抵抗体12での抵抗値変化に基づく検出情報を取得することが可能となる。このような回路基板には、例えばICチップ等を用いることができる。
【0035】
また、軸部2における通電路パターン10を配した箇所を中央部分としたことで、軸部2が軸方向に引張力を受けた場合の軸部2に生じる物理変化を確実に検出することができる。即ち、軸部2は、外形が両端部分と比較して中央部分が小径となっているので、中央部分において引張による荷重が集中するので、通電路パターン10による軸部2に生じる物理変化を確実に検出することができる。
【0036】
次に図3を参照して通電路パターン付軸部材1の設置例を説明する。例えば、離間して配置された二つの部材間に通電路パターン付軸部材1を設ける場合は、二つの部材100、102に設けた孔(図示せず)に雄ねじ部4a、4bを挿通させて固定する。このとき、雄ねじ部4a、4bの各々に雌ねじ体20を螺合させ、部材100、102を締結する。ここで雌ねじ体20には、通電路パターン付軸部材1に対する相対回転を防止するための逆回転防止機構を形成する。
【0037】
具体的に雌ねじ体20には図4(A)及び(B)に示すように、逆回転防止機構として、雄ねじ部4a、4bに向かって半径方向内向きに延設される突出部22を有する。この突出部22の突端縁は、雌ねじ体20の内周雌ねじ部24のリード方向と相異なるリード方向に設定される。
【0038】
一方で図4(C)に示すように、雄ねじ部4a(雄ねじ部4bも同様である)は、第一雄ねじ螺旋構造40が雌ねじ体20の雌ねじ部24と螺合するように形成される。また、第一雄ねじ螺旋構造40とリード角及び/又はリード方向が相異なるリード角及び/又はリード方向に設定される第二雄ねじ螺旋構造42は、突出部22と断続的又は連続的に螺合する。この第二雄ねじ螺旋構造42と突出部22の螺合により、第一雄ねじ螺旋構造40に沿って雌ねじ体20が緩もうとしても、相異なるリード角及び/又はリード方向が互いに干渉し合う結果、緩み方向の相対回転が係止される。なお、締結方向の相対回転は、突出部22が半径方向外側へ弾性変形して、雄ねじ部4aのねじ山を乗り越えて進むことができる。なお、逆回転防止機構は、他にもラチェット構造等を利用して逆回転を防止することができる。
【0039】
雌ねじ体20を雄ねじ部4a、4bにそれぞれ螺合して部材100、102を締結した場合、通電路パターン付軸部材1を部材100、102間に架設できる。更に通電路パターン付軸部材1に対して雌ねじ体20が緩まないように螺合しているため、通電路パターン付軸部材1は、部材100、102間で軸方向に変位することなく強固に固定される。
【0040】
このように、通電路パターン付軸部材1を設置することで、通電路パターン付軸部材1の軸方向に沿って作用する引張力を正確に計測できる。即ち、通電路パターン付軸部材1に作用する軸力の変化において、雌ねじ体20が緩みによる影響を受けることがなく、通電路パターン10における電圧値(或いは抵抗値)の変化を、引張力等による軸部2の延び(変形)として取得することができる。
例えば、部材100、102が軸部2の軸方向に沿って振動又は変位し得、通電路パターン付軸部材1が軸方向に沿って引張力または圧縮力を受けて伸縮可能に支持されている場合には、電圧値の増減によって通電路パターン付軸部材1の変形が、伸びによる変形であるか、圧縮による変形であるかを容易に特定し、その変形量についても特定することができる。
【0041】
また、端子部14を軸部2の全周に亘って形成したことによって、図5に示す回路基板104から延びる配線110を端子部14に接続するとき、配線110の先端を軸部2の軸方向に沿った位置を合わせるだけで周方向のどの位置でも配線110を端子部14に接続することができる。また、通電路パターン付軸部材1が部材100、102によって軸支される回転軸であって、且つ配線110に対して相対回転する場合でも、配線110と端子部14との接続を維持することができる。即ち、通電路パターン付軸部材1がその軸心を中心に回転している場合でも、通電路パターン付軸部材1の軸方向に沿って位置合わせがなされた配線110は、端子部14に常時接触し、通電路パターン付軸部材1の相対回転を許容しつつ、電気的な接続状態を維持することができる。
【0042】
なお、上述した実施形態においては、軸部2の軸方向の相異なる位置に端子部14を配設したが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように両端子部14を軸部2の軸方向の一方側に配設してもよい。ここで一方の端子部14を軸部2の外周に全周に亘って延在させた場合、他方の端子部14は、抵抗体12の一方の端部に交差するのを避けるように一部が途切れて周方向に延在する形状とする。
【0043】
また、上述した実施形態においては、円柱状の軸部2に通電路パターン10を形成する場合を例に説明したが、勿論軸部2の形状は適宜設定し得る。即ち、軸部2は、円筒状であってもよく、またその断面形状が真円以外の長円や楕円等の円形或いは略多角形状を成すものであってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態においては、軸部2に一つの通電路パターン10を設けたが、勿論複数の通電路パターン10を設けても好い。例えば図7に示すように、軸方向に沿って三つの抵抗体12が並ぶように三つの通電路パターン10を配設してもよい。このとき各抵抗体12は、軸部2の軸方向に沿って変形する状態が検出できるように軸方向に往復させ且つ周方向に延在させた形状に設定する。なお、各抵抗体12による変形が検出可能な方向は、軸方向に限定されるものではなく、軸方向に直交する方向の変形を検出可能なものを含めるように設定してもよい。例えば、複数の抵抗体12の内、少なくとも一つを軸部の軸方向に直交する方向に沿って変形する状態を検出可能な形状、即ち、周方向に沿って往復する抵抗体12を配設するようにしてもよい。
【0045】
また、各通電路パターン10の端子部14は、図7に示すように、軸方向に沿った一方側に配設してもよく、図8に示すように軸方向に沿った相異なる向きに離間して配設してもよい。また複数の通電路パターン10を設けた場合の各端子部14は、図8に示す点形状であってもよく、また図9に示す周方向に延在させた形状であってもよい。
【0046】
端子部14を周方向に延在させた場合において、他の抵抗体12に交差し得る端子部(図9に示す端子部14b、14c)は、当該他の抵抗体12を避けた形状とする。即ち、他の抵抗体12と交差しない位置の端子部14aを全周に亘って延在する形状とするのに対し、他の抵抗体12に交差し得る位置に配設される端子部14b、14cは、一部が途切れた略環状、或いは軸部2の周方向に沿った幅広形状等とする。
【0047】
以上説明したように、軸部に複数の通電路パターンを配設することで通電路パターンを配設した箇所毎の物理変化を検出することができるので、より詳細な通電路パターン付軸部材1の変化(変形)の情報等を取得することができる。
【0048】
また、複数の通電路パターン10を配設した場合に、各抵抗体12は、一対の端子部の内、一方の端子部が同一となるように、一端側を連結させるようにしてもよい。即ち、図10に示すように、複数の通電路パターン10の各抵抗体12は、一方の端子部14dに向かって各々の一端部を連結させる構成としてもよい。このようにすれば、複数の通電路パターン毎に一対の配線を配するよりも、少ない配線数で回路基板と複数の通電路パターンとを接続することができる。
【0049】
また、上述した実施の形態においては、端子部を軸部2の中央部分に形成したが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示すように中央部分よりも大径の軸部2の両端部分に端子部14を配設してもよい。
【0050】
また、複数の通電路パターン10を設けた場合において、各抵抗体12の配設位置や、往復ピッチは適宜設定し得る。ここで図12は軸部表面を展開した展開図であり、(a)は複数の抵抗体12が各々点状の端子部を有している場合を示し、(b)は複数の抵抗体12の一端が端子部14dで連結している場合を示している。また図12において、矢印Xで示す方向が周方向、矢印Yで示す方向が軸方向であり、軸部2の左端Lと右端Rは同じ位置を示している。
例えば、図12(a)に示すように、各抵抗体12が異なる端子部14に接続されている場合には、各抵抗体12の位置を周方向に沿って位相をずらして配設することが好ましく、このようにすれば、抵抗体12毎の軸方向に沿った往復数を所定数で一致させることができる。
また各抵抗体12の一端が端子部14dに連結している場合に、各抵抗体12を周方向に沿って位相をずらした位置に配設すると、軸方向に沿った往復数が異なってしまう場合がある。そこで図12(b)に示すように、抵抗体12毎に軸方向に沿った往復のピッチを異ならせ、往復数を所定数で一致させるように設定してもよい。これによって、各抵抗体12における軸方向に沿った変形量と抵抗値(或いは電圧値)との相関関係を略一致させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…通電路パターン付軸部材、2…軸部、4a、4b…雄ねじ部、10…通電路パターン、12…抵抗体、14…端子部、20…雌ねじ体、22…突出部、24…雌ねじ部、100,102…部材、110…配線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12