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  • 特許-レギュレータ 図1
  • 特許-レギュレータ 図2
  • 特許-レギュレータ 図3
  • 特許-レギュレータ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
F16K17/30 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021051730
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149525
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-67216(JP,A)
【文献】特開2016-223624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ本体に貫通して形成した筒状の通路における一方の開口端を高圧流体の導入口、他方の開口端を減圧流体の取出口とし、前記通路における前記導入口の内方に弁座シートを内側に有するとともに前記通路の軸線方向への通孔を形成した弁座シート保持部材からなる弁座を介して調圧室を配置し、前記通路の前記調圧室と前記取出口との間に前記弁座シートに密接可能な先端面を有するとともに両端を開放した筒状の連通通路を有する調圧弁体と前記調圧弁体の前記通路における取出口側の外周に包囲して形成されたピストン部とからなるピストン調圧弁が前記調圧弁体部分の外周面において高圧燃料気密シールを介して前記通路の軸線方向に摺動可能にボディ本体に設置され、且つ前記弁座シートに向けて付勢されており、前記導入口から導入される高圧流体が前記調圧弁体の弁座シート保持部材に形成した通孔を介して弁座シートと前記弁座シートに向かい合うように設けられた調圧室へ導入されて前記調圧弁体の連通通路を介して取出口から減圧流体として取り出されるレギュレータにおいて、
前記調圧弁体の弁座シートへの接触側の先端内周面がフラットであるとともに、前記調圧弁体の外周面における前記高圧燃料気密シールの設置個所に所定の深さと幅とを有する環状溝が形成されて、前記調圧弁体の弁座シートとの接触部である厚みの中心の先端面の径を高圧燃料気密シールの内径と同径にしたことを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
前記調圧弁体の外周面における前記高圧燃料気密シールの設置個所に形成された前記環状溝の深さが前記調圧弁体の厚みの半分であることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【請求項3】
前記調圧弁体の外周面における前記高圧燃料気密シールの設置個所に形成された前記環状溝の幅が少なくとも前記調圧弁体の摺動距離であることを特徴とする請求項1または2記載のレギュレータ。
【請求項4】
前記調圧弁体の弁座シートへの接触側の円形の先端面が、前記調圧弁体の外周面と内周面との中間距離部において先端側に突出した断面が山形の環状突起を有していることを特徴とする請求項1,2または3記載のレギュレータ。
【請求項5】
前記ピストン調圧弁を形成する調圧弁体とピストン部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1,2,3または4記載のレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧の流体を所望の圧力に減圧する際に用いられるレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
調圧室内の圧力変動によりピストン部を介して調圧バルブを開閉し、高圧流体の流量を制御するレギュレータは例えば特開2019-67216号公報などに提示されており、例えば燃料タンクに貯留したCNGなどの高圧燃料をエンジンに供給する際などの調圧器などに利用されている。
【0003】
図3は前記従来のレギュレータの一例を示すものであり、ボディ本体1に貫通して形成した筒状の通路2における一方の開口端を高圧流体の導入口21、他方の開口端を減圧流体の取出口22とし、前記通路2における前記導入口21の内方に弁座シート31を内側に有するとともに通路2の軸線方向への貫通孔32を形成した弁座シート保持部材33からなる弁座3を介して調圧室4を配置し、前記通路2の前記調圧室4と前記取出口22との間に前記弁座シート31に密接可能な先端内周面51を有するとともに両端を開放した筒状の連通通路52を有する調圧弁体5と前記調圧弁体5の前記連通通路52における取出口側の外周に包囲して形成されたピストン部6とからなるピストン調圧弁7が前記調圧弁体5部分で高圧燃料気密シール10を介して前記通路2の軸線方向に摺動可能に且つ前記ピストン部6の周囲において前記調圧室4と同軸上に並行して設けられた大気室61内に配置された所定の荷重を有する調圧ばね8により前記通路2における取出口22方向に付勢されており、前記入口カバー23を備えた導入口21から導入される高圧流体が前記弁座シート保持部材33に形成した貫通孔32を介して弁座シート31と前記弁座シート31に向かい合うように設けられた調圧室4へ導入されて連通通路52が形成された調圧弁体5を通過して前記調圧弁体5と接合されたピストン部6に作用する流体の圧力による荷重と調圧室4とは逆側にピストン部6に作用する調圧ばね8による荷重が釣り合うことにより流体が前記調圧弁体5の弁座シート保持部材33に形成した貫通孔32を介して弁座シート31と前記弁座シート31に向かい合うように設けられた調圧室4へ導入されて前記調圧弁体5の連通通路52から出口カバー24を介して取出口から減圧流体として取り出されるものである。
【0004】
そして、特に、この従来例では、調圧弁体5の弁座シート31側の先端内周面51が先端方向に向けて拡開するテーパ形状に形成されているとともに、前記弁座シート31を摺動性と弾性を有する高分子材料により形成された緩衝材9を介して前記通路2の軸線方向に摺動可能に設置することで、調圧弁体5と弁座シート31の均一な接触を可能として閉鎖時に弁座シート31と調圧弁体5が確実に密接して閉鎖させることができる。
【0005】
ところで、このような従来構造は、弁座シート31と調圧弁体5とを均一に接触させる必要性から生産工程もしくは製品内で弁座シート31と調圧弁体5とを調芯させることが必要である。
【0006】
そのため、組み立て作業に手間を要するばかりか、例えば、図4に示したように摺動性が高く弾性を有した高分子材料からなるO-RINGである高密度の緩衝材9が必要であり、価格増となり、また、使用により緩衝材9が摩耗し或いは永久変形や性能劣化などにより機能を失った場合、レギュレータの調圧機能に影響を与えるという問題があった。
【0007】
また、調圧弁体5の弁座シート31側の先端内周面51が先端方向に向けて拡開するテーパ形状に形成されていることから、調圧弁体5を挿入口21側から通路2に挿通することになり、調圧弁体5とピストン部6とを別体として組み立て時に接合することになり、部品点数の増加と組立工程の増加を招くことにもなっていた。
【0008】
そこで、この種の従来のレギュレータの前記問題を解決するために前記図4に示したように、従来、一般的に行われている調圧弁体5の弁座シート31側の先端内周面51を図3に示すテーパ形状からフラット形状に変更することで組立に図3に示した高密度の緩衝材9を用いた調芯機構を要しない機構として組み立ての簡単化と価格増とを無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-67216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記図4に示した調圧弁体5の弁座シート31側の先端内周面51を拡開形状からフラット形状にした従来のレギュレータにおいては、調圧弁体5のおけるバルブ先端径(シート径)d1が調圧弁体5の外周面54においてボディ本体1の通路2との間に配置される高圧燃料気密シール10の内径d2と同径ではないので、供給圧の変動によって調圧弁体5に加わる圧力による荷重が変化するため、吐出圧に影響を与えるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、調圧弁体5の弁座シート31側の先端内周面51をフラット形状とした場合でも、供給圧の変動による吐出圧への影響を受けないレギュレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた本発明であるレギュレータは、ボディ本体に貫通して形成した筒状の通路における一方の開口端を高圧流体の導入口、他方の開口端を減圧流体の取出口とし、前記通路における前記導入口の内方に弁座シートを内側に有するとともに前記通路の軸線方向への通孔を形成した弁座シート保持部材からなる弁座を介して調圧室を配置し、前記通路の前記調圧室と前記取出口との間に前記弁座シートに密接可能な先端面を有するとともに両端を開放した筒状の連通通路を有する調圧弁体と前記調圧弁体の前記通路における取出口側の外周に包囲して形成されたピストン部とからなるピストン調圧弁が前記調圧弁体部分の外周面において高圧燃料気密シールを介して前記通路の軸線方向に摺動可能にボディ本体に設置され、且つ前記弁座シートに向けて付勢されており、前記導入口から導入される高圧流体が前記調圧弁体の弁座シート保持部材に形成した通孔を介して弁座シートと前記弁座シートに向かい合うように設けられた調圧室へ導入されて前記調圧弁体の通路を介して取出口から減圧流体として取り出されるレギュレータにおいて、前記調圧弁体の弁座シートへの接触側の先端内周面がフラットであるとともに、前記調圧弁体の外周面における前記高圧燃料気密シールの設置個所に所定の深さと幅とを有する環状溝が形成されて、前記調圧弁体の弁座シートとの接触部における先端部の厚みの中心の先端面の径(シート径)を高圧燃料気密シールの内径と同径にしたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、供給圧の変動によって調圧弁体に加わる圧力による荷重が変化することがなく、吐出圧に影響を与えるという問題が解決される。
【0014】
また、本発明において、前記調圧弁体の外周面における前記高圧燃料気密シールの設置個所に形成された前記環状溝の深さが前記調圧弁体の厚みの半分とすることで、きわめて容易に調圧弁体の弁座シートとの接触部における先端部の厚みの中心の先端面の径(シート径)を高圧燃料気密シールの内径と同径に実施することができる。
【0015】
更に、本発明において、前記調圧弁体の外周面における前記高圧燃料気密シールの設置個所に形成された前記環状溝の幅が少なくとも前記調圧弁体の摺動距離とすることで前記調圧弁体の往復運動が確保されるとともに往復運動にわたって前記調圧弁体の弁座シートとの接触部である先端径(シート径)を高圧燃料気密シールの内径と同径に保持させることができる。
【0016】
更に、本発明において、前記調圧弁体の弁座シートへの接触側の円形の先端面が、前記調圧弁体の外周面と内周面との中間距離部において先端側に突出した断面が山形の環状突起を有している場合には前記調圧弁体の弁座シートへの接触側の円形の先端面を均一荷重で弁座シートに接触させることができる。
【0017】
更にまた、本発明は前記調圧弁体の弁座シートへの接触側の先端内周面が平坦であることから前記調圧弁体を取出口側から通路に差し込み可能であり、前記ピストン調圧弁を形成する調圧弁体とピストン部とが一体に形成されているピストン調圧弁を採用することができ、部品点数の減少および組み立ての簡易化による経済性を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によると、調圧弁体の弁座シート側の先端内周面をフラット形状とした場合でも、供給圧の変動による吐出圧への影響を受けないレギュレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における実施の形態の閉弁時を示す断面図。
図2図1に示した実施の形態の開弁時を示すピストン調圧弁部分を拡大した断面部分図。
図3】従来例における閉弁時を示す断面図。
図4】異なる従来例における閉弁時を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1および図2は、本発明における好ましい実施の形態の断面図を示すものであり、全体の構成は前記図3および図4に示した従来例とほぼ同様であり、それらの部分については詳細な説明を省略する。また、前記従来例と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0022】
そして、本発明における実施の形態の特徴は、先ず、前記図3に示した従来例ではテーパ状であった調圧弁体5の先端内周面51が、前記図4に示した従来例と同様にフラット(平坦)状であることである。
【0023】
また、本実施の形態が前記図3および図4に示した従来例と異なる点は、前記調圧弁体5の弁座シート31との接触部における先端部の厚みの中心の先端面53の径(シート径)d1を高圧燃料気密シール10の内径d2と同径にしたことにより、前記従来例では前記調圧弁体5の弁座シート31との接触部における先端部の厚みの中心の先端面53の径(シート径)d1と高圧燃料気密シール10の内径d2との違いにより生じていた供給圧の変動によって調圧弁体5に加わる圧力による荷重が変化することがなく、吐出圧に影響を与えるという問題が解決された点である。
【0024】
更に、本実施の形態では、前記調圧弁体5の外周面54における前記高圧燃料気密シール10の設置個所に所定の深さL1と幅L2とを有する環状溝55を形成することで簡単且つ確実に前記調圧弁体5の弁座シート31との接触部における先端部の厚みの中心の先端面53の径(シート径)d1を高圧燃料気密シール10の内径d2と同径にすることを可能にした。
【0025】
更にまた、本実施の形態の優れた点は、前記環状溝55の深さL1を前記調圧弁体5の厚みの半分とすることで、高圧燃料気密シール10の内周面101が接する環状溝55の内周面56が前記調圧弁体5における肉厚の中心に位置することで前記調圧弁体5の先端面53を弁座シート31に均一な押圧力で接触させることができ、加えて、前記調圧弁体5の弁座シート31への接触側の円形の先端面53が、前記調圧弁体5の外周面54と先端内周面51との中間距離部において先端側に突出した断面が山形の環状突起を有している場合には、前記調圧弁体5の弁座シート31への接触側の円形の先端面53を均一荷重で弁座シート31に接触させることができる。
【0026】
加えて、本実施の形態では、調圧弁体5の外周面54における前記高圧燃料気密シール10の設置個所に形成された前記環状溝55の幅が少なくとも前記調圧弁体5の摺動距離とすることで調圧弁体5の往復運動が確保されるとともに往復運動にわたって前記調圧弁体5の弁座シート31との接触部における先端部の厚みの中心の先端面53の径(シート径)d1を高圧燃料気密シールの内径d2と同径に保持させることができる。
【0027】
殊に、本実施の形態は、調圧弁体5の弁座シート31への接触側の先端内周面51が平坦であることから調圧弁体5の外周面54が平坦であり、調圧弁体5を取出口22側から通路2に差し込み可能であり、また、ピストン調圧弁7を形成する調圧弁体5とピストン部6とが一体に形成されているピストン調圧弁7を採用することができ、部品点数の減少および組み立ての簡易化による経済性を図ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ボディ本体、2 通路、3 弁座、4 調圧室、5 調圧弁体、6 ピストン部、7 ピストン調圧弁、8 調圧ばね、9 緩衝材、10 高圧燃料気密シール、21 導入口、22 取出口、23 入口カバー、24 出口カバー、31 弁座シート、32 貫通孔、33 弁座シート保持部材、51 先端内周面、52 連通通路、53 先端面、54 外周面、55 環状溝、56 内周面、101 内周面、L1 環状溝の深さ,L2 環状溝の幅、d1 調圧弁体の弁座シートとの接触部のシート径、d2 高圧燃料気密シールの内径
図1
図2
図3
図4